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ディープスペースナイン エピソードガイド
第18話「反逆のテレパス・エネルギー」
Dramatis Personae

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・イントロダクション
司令官室。
シスコはドアチャイムに応えた。「どうぞ。」
キラ:「司令官、今ヴァレリアン※1の輸送船が、ステーションへのドッキング許可を求めて来ているんですが。」
「その口調は、許可を出して欲しくないって口ぶりだね?」
「だってヴァレリアンは、ベイジョーを占領していたカーデシアにドラマイド※2を供給していたんですよ?」
「そりゃあ知ってるよ。」
「ヴァレリアンは、今でもカーデシアに武器輸出を続けています。ベイジョー攻撃に使われないとも限りません。」
「心配するのはよくわかる。しかし裏づける証拠がない以上は…」
「証拠ならあの輸送船にあります。探索してみて、もしドラマイドが発見されたら全て没収すべきです。」
「そうは言うがドラマイドはパワージェネレーターやリアクター、近距離転送機にも使われているんだぞ。」
「それに武器にもです。」
「だが純度の高いものだけだろ。」
「…じゃ見逃すんですか?」
「いや、そうは言ってない。ただ強制的に没収なんてことは不可能だ。」
「…それじゃどうするんですか?」
「…ヴァレリアンが武器用のドラマイドを売買しているという証拠があがれば、惑星連邦から外交的圧力をかけて中止させよう。」
「そんなことでやめるかしら。」
「連邦から制裁を受けたくなければ、やめるだろう。」
「わかりました。おっしゃるとおりにします。」
「よろしい。ではそのヴァレリアンの輸送船に、ドッキング許可を出してきてくれ。」
「……わかりました。」

司令室のダックス。「チーフ、奥様から亜空間通信が届いたわ? 無事にベイジョーへ着いたそうよ?」
司令官室から出てくるキラ。
オブライエン:「ラズマ※3にある穀物加工センターの見学に 11人生徒を連れて行ってるんです。僕にはできないなあ。」
オドーが来た。「少佐。ヴァレリアンの輸送船のキャプテンに関する資料です。」
キラ:「ほかにも何かわかったら教えて。」
ダックス:「…ワームホールにおけるニュートリノ数値の増大を探知。何かが出てくるようです。」
「スクリーンオン。」
ワームホールが開き、一隻の船が出てきた。
キラ:「キラより司令官へ。至急おいで願います。」
出てくるシスコ。
ダックス:「クリンゴン船のトーカート※4です。」
キラ:「帰還予定は 1ヶ月後なのに。」
シスコ:「宇宙チャンネルオープン。」
だが姿勢を失ったそのヴォルチャ級攻撃巡洋艦は、爆発した。
オブライエン:「…転送機のシグナルをキャッチ。爆発する瞬間に誰かが脱出したようです。」
転送台にクリンゴンの転送ビームが見える。だが消滅していく。
シスコ:「チーフ・オブライエン。」
オブライエン:「再物質化のプロセスが妨害されています。」
ダックス:「こちらの転送シグナルで捕捉します。環状抑制フィールドを出力アップ。」
「もう一息です。」
カーデシア型のビームに包まれ、クリンゴン人※5が実体化した。
倒れる男。
調べるベシア。「何らかの武器によって重傷を負っています。急いで極低温治療室※6へ。」
クリンゴンは身体を起こした。「我らの勝利だ。」
だが再び横になる。
ベシアのトリコーダーから高い音が響く。「死亡しました。」


※1: Valerian

※2: dolamide

※3: Lasuma

※4: I.K.S.トーカート I.K.S. Toh'Kaht

※5: ホンティル Hon'Tihl
(トム・トーレス Tom Towles VOY第61話 "Rise" 「謎の小惑星」のヴェトム博士 (Dr.Vatm) 役) 声:笹岡繁蔵、TNG デュラスなど

※6: cryostasis

・本編
『ステーション日誌、宇宙暦 46922.3。死んだクリンゴン人の身元がわかった。ホンティルという副長※7だった。死んだ原因や、なぜ船が爆発したのかはまだわからない。』
司令室。
ベシア:「トリタニウム合金の破片が、胸と腕に刺さっていました。それだけなら助かったのですが、武器による火傷が重すぎて。」
シスコ:「どんな武器かを特定することはできないか。」
「今ミクロ組織を分析しています。2時間ほどで結果が出ます。」
キラ:「死ぬ前に『我らの勝利だ』って言ったけどどういうことかしら。」
ダックス:「クリンゴンの高等司令部によればトーカートはガンマ宇宙域に生物調査に行ってたそうなの。」
オブライエン:「生物調査で『我らの勝利』?」
オドー:「そういえばトーカートはメンテナンスチェックを申請していました。」
シスコ:「その生物調査が、どんなものだったのか聞き込みをしてくれ。…ダックスとオブライエンはシャトルを出して、トーカートの任務レコーダーを回収しに行ってくれ。どうして船が爆発したのか知りたい。」
オブライエン:「わかりました。」
ダックスは独りテーブルに残り、なぜか微笑んでいる。
先にターボリフトに乗ったオブライエン。「大尉?」
ダックス:「なーに?」
「行きますよ?」
「…ああ、ごめんなさい。」 笑うダックス。「気にしないで。」

出発するランナバウト。

コンソールの前に立っているキラ。呼び出し音が鳴った。「何よ、もう来たの?」
通信が届く。『ディープ・スペース・ナイン。こちら、ヴァレリアン船のシャーヴァル・ダス※8。ベイジョー星系へ入りました。ドッキングの許可を。』 モニターに映る異星人※9
キラ:「直ちに許可は出せません。許可が出るまで待機して。」
ヴァレリアン:『メンテナンスの必要があるんです。長旅でしたのでね。』
「ええそれはわかりますが、こちらの体制が整うまで待ってもらいます。」
通信に割り込むシスコ。「スタンバイ、シャーヴァル・ダス。」 キラに言う。「一体どういうつもりだ。」
キラ:「でもまだあの船の足取りのチェックが終わっていないんです。」
「だからってドッキング手続きを遅らせることは許さん。」
「船はファリーナ3※10 とマライア4※11 に立ち寄ってます。カーデシアにドラマイドを供給していた頃立ち寄っていた星です。もし最後に、精製プラントのあるウルティマ・サル※12に立ち寄っていれば…今でも武器用のドラマイドを取り扱っているっていう証拠になるんです。」
再び連絡するシスコ。「シャーヴァル・ダス、ドッキングを許可する。」
ヴァレリアン:『感謝します、司令官。通信を終了します。』 その姿は消えた。
「勝手は許さん。」 シスコは離れた。
不満なキラ。

クワークに話しかけるオドー。「で、クワーク? 噂じゃあ、この前クリンゴン人が来た時ここで一騒ぎあったそうじゃないか。」
クワーク:「痛いのが好きな奴らだ、付き合えんよ。そりゃ、ちょぴっとならたまにはいいがな? でもクリンゴンの野郎どもホロスイートで暴れて家具を壊しやがってよう。まだ 6号室の壁は修理中なんだぜ? …そりゃ金は落としてってくれたさ。だけどな、修理代を差し引きゃやっとトントンってとこだよ。」
「クリンゴン人にはとにかくうぬぼれ屋が多いからな?」
「ヘ。」
「威張り散らすし、すぐ自慢したがるし。」
「この前の奴ら最低だった。全く威張りやがってよう。『ガンマ宇宙域へ生物調査に行く』のがそんなに偉いのかってんだい。」
「…そいつら、何か言ってたか。」
「……腹の探り合いはよそうぜ。あのクリンゴン人どものことを調べてんだろ? もし俺が情報を教えれば、見返りに何をもらえる?」
「バカを言うな、お前の情報なんか役に立つかどうかもわからんのに。」
「いいのかなあ、そんな強気に出ちまって。」
「修理中のホロスイートだがな。確か修理は第7班のクルーが担当していたはずだよな?」
「…ああ。」
「だが第7班のクルーにはもっと大事な仕事を割り振ろうかって思ってるんだ。実は保安本部の隔壁も修理が必要な状態なんでね?」
「……奴らはな、ガンマ宇宙域から戻ってくる時は…クリンゴンの敵を震え上がらせるような物を持って帰るって、そう言ってたぜ?」
「嘘じゃないだろうな。」
「誓ってほんとだ。」
「ご協力感謝するよ。」
「ケ。…俺が言ったって言うなよ。」
オドーがクワークの店を出ようとした時、突然苦しみ始めた。声を上げる。
クワーク:「…オドー?」
オドーの顔が一瞬液状に乱れる。そのまま倒れてしまった。
近づくクワーク。「…ドクター・ベシア? ドクター・ベシア、ドクター・ベシアー!」 医療室へ駆け込む。


※7: 吹き替えでは First Officer が、全て「一等航海士」と訳されています

※8: Sherval Das

※9: ヴァレリアン Valerian
(スティーブン・パー Stephen Parr) 声:大川透、DS9 ガラックなど

※10: ファリーナ3号星 Fahleena III

※11: マライア4号星 Mariah IV

※12: Ultima Thule
スペース1999「永遠の生命の怪」に登場する惑星と同名。ギリシャ語の「この世の終わり」に由来

オドーを診察するベシア。
突然オドーは目を開いた。
驚くベシア。「ああオドー、気がついてよかった。」
オドー:「具合はどうです。」
「気分はいいかい?」
「…何とか。」
「よかった。君の身体は分析できないから、待ってて不安だったよ。」
両手を見るオドー。起き上がる。「…何も覚えてないんですが。…元に戻ったんですか。」
ベシア:「僕こそそれを聞きたいね。とにかく君の身体のことは、僕にはわからない。実際、何も治療はしていないんだよ。」
「そうですか、でも御世話になりました。」
「ああ、そうだ。オドー。…君もヴァレリアン人の一件は心配してるんだろ?」
「心配?」
「もちろん意味はわかるよね。」
「いえはっきり言って下さい。遠回しじゃわかりませんよ。」
「元々もろいつながりだったのが、今度のことで一気に溝が深まるってことも考えられるからね。」
「溝って一体何のことです。」
「シスコ司令官と、キラ少佐だ。僕の見たとこじゃ、対立は避けられないよ。」
オドーはベシアに近づく。「何が根拠でそんなことおっしゃるんですか、ドクター。」
笑うベシア。「君は、なかなか頭がいいね。…確かにどっちにつくかを明らかにするには時機が早すぎるかもしれないな。」
オドー:「おっしゃることはそれだけですか?」
「構造分析機※13に入っていかないか、君の身体に興味あるからね。」
「いいえまたの機会にします。」 一度振り返り、診療室を後にするオドー。

司令官室に入るキラ。「尻尾をつかまえました。」
シスコは何か作業をしていた。見ていた紙を隠す。「誰の。」
キラ:「ヴァレリアン人のです。…シャーヴァル・ダスは、1週間前にウルティマ・サルに立ち寄ってました。これで確実です。ドラマイドの売買をしてるんです。」
「だから?」
「だからって…武装チームをシャーヴァル・ダスに派遣します。ドラマイドを没収し、直ちに強制送還します。正直なところ、ベイジョーへ連れて行って罰を受けさせたいですけどね?」
「誰の権限で。」
微笑むキラ。「…何もする気はないんですね?」
シスコ:「もちろんだ。」 紙が張られているパネルを裏返した。「君にもさせないぞ。」
「…あの船は、ベイジョーの利益に反した行為をしています。…このステーションは、ベイジョーの所有物ですよ?」
「だが運営は惑星連邦に委託されている。司令官は私だ。君は命令に逆らうつもりなのかね?」
「…いいえ、中佐?」
「よろしい。」

ランナバウト。
ダックス:「近距離センサーが船の残骸を探知。」
オブライエン:「デュラニウム合金のようです。クリンゴン船の副船体のかけらでしょう。」
「この残骸の中に任務レコーダーもあるかもしれないわ? デュラニウムからの磁気が探知を邪魔してるのかも。」
「もっと近寄ってみましょう。……最近、キラ少佐はシスコ司令官に対して反抗的ですよね。ステーションの方針について。」
「意見の相違はよくあることよ?」
「単に意見の相違ならいいんですけど。でもキラ少佐が連邦士官の追放に動いたらどうするんですか。ベイジョーのステーションだし。」
「そんなことはしないでしょ。連邦のプレゼンスがなければ、ベイジョーはカーデシアにはとても対抗できないわ?」
「でも自分たちの力を過信して突っ走らないとも限りませんよ?」
無言になるダックス。
オブライエン:「最近、少佐と仲が良さそうですね。違います?」
ダックス:「私が? そうねえ、キラと仲が悪いとは言えないわね?」
「あまり情が移るようなことはしない方がいいですよ。我々は連邦の士官なんです。」
「わかってるわよ。ベンジャミンとはもう長いこと手と手を取り合ってやってきた仲だもの。…私は何があろうと彼の味方よ? そう言えば初めて私達が…」
「よかった。…司令官の敵は私にも敵ですから。…弱いですが亜空間トランスポンダー※14信号をキャッチ。任務レコーダーを発見。」

保安室に入るキラ。「元気、オドー?」
オドー:「ご用でしょうか。」
「あなたはいつだって私を助けてくれたわね? ねえ、オドー? 私達なかなかいいコンビだって思わない?」
「ええ。キラ少佐とはいろいろ協力してやってきて、信頼しています。」
「それなのよ。私が今必要なものはそれなの。協力と信頼。…シャーヴァル・ダスが、ドラマイドを輸送してるのは間違いないわ? でもまだ状況証拠しかないのよ。確たる証拠が欲しいの。…オドー、あなたなら…シャーヴァル・ダスのセキュリティシステムをかいくぐって、貨物室へ忍び込めるわ?」
「シスコ司令官はシャーヴァル・ダスへの一切の介入を禁止したって聞いてますがおかしいですね。方針を変えたんですか?」
「そうよ。」
「珍しいな。…わかりました。任務の報告は司令官と少佐にすればいいですか?」
「いいえ、そんな必要ないわ? シスコ司令官はお忙しいから邪魔をしたら悪いでしょ?」
オドーは振り返った。
微笑むキラ。「やっぱりあなたはだませないわね?」
オドー:「まさか、司令官に黙って独断でことを運ぼうとするなんてなぜ。」
「…悪かったわ。忘れてちょうだい。」 笑い、外へ向かうキラ。「…でもあなたならどっちにつく? …できれば私について欲しいものね。」


※13: phoretic analyzer

※14: subspace transponder
吹き替えでは「亜空間トランポンダー」

DS9 には異星人船、シャーヴァル・ダス※15がドッキングしている。
オブライエン:『個人日誌、マイルズ・オブライエン。宇宙暦 46923.1。クリンゴン士官の日誌の一部の回収に成功。このことはすぐにキラ少佐の耳に入った。すごい情報網だ。』
司令室のスクリーンに、乱れたホンティルの映像が映っている。『キャプテンは正気を失っている。また 2人クルーを処刑した。きっと、医療士官の…。私の部屋で…暴力。サルタナ※16から持ち帰った、テレパス・エネルギードーム※17を開けたのが原因だ。思うに、キャプテンのスパイは…私を…』 映像は途切れた。
司令官室の前に座っているシスコ。「これだけ見れば十分だ。」
オブライエン:「まだあります。」
キラ:「任務に失敗したのが原因で、仲間割れを起こしたのかもしれないわね。」
シスコ:「クリンゴン船に何が起きたかなんか興味はないね。」
オブライエン:「でもクリンゴンは知りたいでしょう。今ダックス大尉と欠けているデータを復元しているところです。時間はかかりますが。」
「何もそこまで。」
集中していないダックス。「でも面白いことがわかるかもしれないわよ? ベンジャミン、あの時のこと覚えてる…」
シスコ:「わかった。君たちがやりたければやればいい。勝手にしろ。」 司令官室へ入った。
解散する一同を見るオドー。

グラスに酒を注ぎ、ダックスに出すクワーク。「さあどうぞ。食前酒のモデーラ※18です。色も綺麗で、味もスイート。ダックス大尉みたいだ。お勘定ツケときます。」
キラが来た。「それぐらいおごってあげたらいいじゃないの。」
クワーク:「ああ…我がステーションが誇る美女が 2人も来るなんて普段の行いがいいからだな。自信もっちゃう! …ところで御注文は?」
「とっとと消えて。」
「…可愛くねえ。」 離れるクワーク。
笑うキラ。「調子はどう、ダックス?」
ダックス:「…一体急にどうしたの? 前線のステーションだもの、いろいろあるけど郷にいれば郷に従えってとこよ?※19
「…まあ確かにね? でも、前から聞きたかったんだけど。今に満足?」
「…そういうことを考えるのはやめてるのよ。」
「でもそれはおかしいわ? 私に言わせればあなたはこのステーションで一番優秀な士官だもの。飲んでいい?」
「ええ、どうぞ?」
モデーラ食前酒を口にするキラ。「うん、悪くないわ? クワークにしては…。」
ダックス:「ええ、いけるでしょ?」
「…あなたがいなければこのステーションはやっていけないわ?」 キラは更にグラスに注ぐ。
「…さっきから何が言いたいわけ?」
「…私と司令官が対立してるのはあなたも気づいてるでしょ? とにかく一度こうと決めると頑固なんだもの。」
「ええ、てこでも動かないわね? そういえば昔…ロシャニ3※20 で、カリアン人※21に追いつめられたことがあったわ…向こうは敵意丸出しでね、でもベンジャミンが…」
「ねえ、その話ならもう今朝聞かされたわ?」
「あら…そういえばそうだったわね?」
「…あなたから宇宙艦隊司令部に言ってもらえない? ベイジョー人が今回のシスコのやり方に不満をもってるってこと。あなたの意見なら聞くわ。」
「私は初めての任務で勲章をもらったの。提督はヴァルカン人だった。そのおかげで…授与式の間中ずっとね…」
「ダックス。シャーヴァル・ダスを拘留したいの。…そして船を探索して、ドラマイドを没収したいの。そう宇宙艦隊司令部に言ってよ。ベイジョーを守るためなのよ。連邦のためにもなるわ。」
「…私はベンジャミンとは随分長い付き合いになるわ? …もう何年にもなる。…私にとって彼は、息子みたいなものなの。甥っ子というか、ごく親しい身内みたいな存在なのよ。」
「ジャッジアよく聞いてちょうだい。…シスコには出て行ってもらうわ、どんな手を使ってでもね? でも私はあなたまで追放したくないのよ。」
突然響いたグラスの音に、驚くキラ。
それはクワークが立てたものだった。笑うクワーク。
微笑み、近づくキラ。モーンたちが見ている前で、クワークの首元をつかむ。「あんたも一緒に飲まない?」
クワーク:「離して下さいよ…。」
「何か聞いたの?」
「何も。…何も聞いてねえ。」
キラはクワークを突き飛ばした。倒れるクワーク。
キラ:「…じゃあね。」 クワークの店を出ていく。
ため息をつくダックス。

保安室。
オドーは入ってきた者を見た。
クワークが首元に機械をつけ、うめいている。
オドー:「何だそりゃ、フェレンギで流行ってるファッションか?」
クワーク:「…キラ少佐に首を絞められたんだよう。」 痛みながら座る。「ありゃ殺人未遂だぜ。」
「原因は何なんだ。」
「陰謀を聞いちまったんだよ。」
「……陰謀だと?」
「ダックスを味方につけようとして口説いてたんだ。謀反を起こす気さ…。」
「それでダックス大尉は承知したのか。」
「…どっちだって関係ねえ、俺は襲われたんだぞ。」
「いいから質問に答えろ!」
「…どっちとも言えねえな…迷ってたみてえだ。」
「…キラ少佐の行動は最近おかしいって思わないか? ほかのみんなもだ。シスコ司令官もおかしい、クリンゴンの任務レコーダーに何の興味も示さないなんて。ドクター・ベシアもだ。私を治療してくれた時のドクターは何だか変だった。」
「…何だよ、その目は。俺は中立だぞ。」
「ああ…そうらしいな? …司令官と話をしてくるよ。」 外へ向かうオドー。
「オドー、待て。オドー。待てよ、オドー。」
オドーはそのまま、ターボリフトに乗った。
クワーク:「オドー! 殺人未遂はどうしてくれる!」 うなる。

司令室に入るオドー。
ホンティルの声が流れている。『…デッキの倉庫から 12番通路を通り、兵器庫へ。キャプテン・テルパー※22も、私も死ぬ。しかしまだ…この船を、支配しているのは私だ。何とかしてこの船を…』
ダックスがボーッと見ている、ホンティルが映っているモニターに注目するオドー。「司令官は。」
ホンティル:『…これは想像もしていなかった。恐ろしい事態だ。私がやるしかない。』
司令官室のドアチャイムに触れるオドー。
中にはオブライエンがいた。「どうぞー。」
コンソールでホンティルの映像を再生する。『キャプテンはもう、正気を失ってしまっているように思える。』
オドー:「司令官はどこです。」
オブライエン:「ご自分の部屋にいらっしゃる。」
ホンティル:『…可能性は少ない。しかし…リアクター近くの第26デッキに何とか、サルメライト※23装置を仕掛けることができた。敵の捕虜になるより、船を爆破しビーム転送で安全圏へ逃げ出すつもりだ。医療士官のキーボル※24の言うとおりだったのかもしれない。あの、エネルギードームを開けたのが失敗だった。だがこうなった以上、キャプテンのテルパーには死んでもらう。記録終了。』
コンソールを切るオブライエン。
オドー:「どうやら権力闘争があったようですね。何らかの乗っ取りがあったのかもしれない。」
オブライエン:「部下の反乱だろうな、クリンゴンの船じゃ珍しくない事件だ。」
「でも、惑星連邦が管理しているステーションでは反乱はまずありませんよ。」
「心配するな。キラが何か始めたらこっちも黙っちゃいない。」
「……日誌の復元が全部終わるのはいつになりますか。」
「今の処理スピードだと早くても後 7時間はかかる。エントリーを一つずつ処理してるから。復元されたものは随時読めるようにしてある。」
「…お願いします。」
「いいんだよ、オドー。司令官も私も、君のことは高く買ってるんだ。」
オドーは笑うオブライエンを見て、外へ出た。再び中を見る。

廊下を歩いてきたオドー。部屋の前に、2人の宇宙艦隊の保安部員が立っていた。
オドー:「ここで何をしてる。」
保安部員※25:「チーフ・オブライエンの命令です。」
2人を見て、ドアチャイムを押すオドー。
中にいるシスコ。「どうぞ?」 パネルを持っている。
オドー:「…司令官。」
「何だ、オドーか。調子はどうかね。」
「非常に心配です。」
「こんな気持ちのいい日にかね? 悩み事とはもったいないな。」
「…司令官、全員ではないですがみんなの様子が…変なんです。クリンゴンの士官が船の爆発から逃れてきた時から、なぜか一部のスタッフの言動や、態度が…異常なんです。」
全く聞いていない様子のシスコ。
オドー:「…どうも爆発したクリンゴンの船では反乱が起こっていたようなんです。無論このステーションで、反乱が起きるというのではありません。しかし…2、3…気にかかる点が、共通しているんです。」
シスコ:「もしも気になることがあるんなら、オブライエンに言いたまえ。それが彼の仕事だからな。」 描いていたパネルの紙を見せた。「どうだい見てくれ。」
その図に見入るオドー。「……何ですか。」
シスコ:「時計だよ! ……素晴らしい出来だろ……。」


※15: TNG第78話 "Suddenly Human" 「宇宙孤児ジョノ」に登場した、タラリア戦艦の使い回し

※16: Saltah'na

※17: サルタナ・エネルギードーム Saltah'na energy spheres

※18: Modela aperitif

※19: 原語ではダックスのセリフは全て「こういう言葉があるの。靴は右足から履け、でもバスタブには左足から入れ」と意味不明なことを口走っています。そのためキラが意味をつかめないという表情をします

※20: Rochani III

※21: Kaleans

※22: Tel'Peh

※23: thalmerite
VOY第8話 "Ex Post Facto" 「殺された者の記憶」でも言及。吹き替えでは「爆破 (装置)」。また、「第27デッキ」と誤訳

※24: Kee'Bhor

※25: Guard
(ランディ・フラグ Randy Pflug) 普段はエキストラで保安部員を演じており、Randy James という名前を使うこともあります。DS9第148話 "Time's Orphan" 「時の迷い子」ではジョーンズ大尉 (Lieutenant Jones) という名前を与えられており、第155話 "Chrysalis" 「愛に目覚める者」でもセリフをもらっています。声はヴァレリアン役の大川さんが兼任

保安室にオドーが戻ると、テーブルに足を投げ出して座っている者がいた。
キラだ。「友達を待たせるなんて誉められたことじゃないわよ?」
オドー:「…お約束を、していましたか?」
「……私とあなたの間で約束なんて固いこと必要ないでしょ?」 背伸びするキラ。「…助けて欲しいのよ。…シャーヴァル・ダスは捕まえたわ。」
「どういうことです。」
「ドッキングクランプをロックしてやったの。だから私がいいって言うまで出られないわけよ。解除するにはオブライエンでも最低一日はかかるわ。一日あれば十分よ。」
「…シスコに取って代わるつもりですか?」
「オブライエンにもよ? 2人の代わりに、こっちの言いなりになる人材を連邦から派遣してもらうか…私がやるかよ。私が司令官なら…あなたには何でも好きなようにやらせてあげるわ? クワークが目障りだっていうなら宇宙へ放り出してやればいい。…騒々しいプロムナードが嫌いなら閉鎖してもらって構わない。…ステーションの警備は全面的にあなたに任せる。何の干渉もしないわ。」
「…それで作戦は?」
「……オドー。もちろんあなたを一番信頼してるわ? あなたには賄賂が効かないもの。…でも今は周りは敵だらけだから…あなたにも秘密を漏らすわけにはいかない。…でも時機が来たら…教えてあげるわ? ……私を裏切らないでね。」 出ていくキラ。
「…コンピューター、艦隊司令部へチャンネルを開け。」
コンピューター:『惑星連邦テリトリーへの亜空間通信は現在通じなくなっております。』
「なぜだ。」
『キラ・ネリス少佐の御命令です。』
「ああ…ではベイジョーの議会へチャンネルを開け。」
『ベイジョーへの通信も現在通じなくなっております。』
「…チーフ・オブライエンの命令でか。」
『その通りです。』
「…コンピューター、クリンゴン副長の記録の復元はもう全て終わったのか。」
『データ復元は完了しました。』
「スクリーン、オン。」 ホンティルが映る。「コンピューター、どんなエイリアンでもいいから接触したという記録がある個所を検索してくれ。」
『1個所見つかりました。』
「再生せよ。」
早送りされ、再生が始まる。『副長日誌、日付 22。第5惑星の探索は残念ながら時間の無駄に終わった。植民地にするだけの価値はない土地だ。我々が発見したのは一連のエネルギードームだけで、ドームにはテレパスによって公文書が保管されていた。古代の権力闘争によって、サルタナという種族が滅んだ過程が記されていた。探索の結果は、科学班に送付することにする。』
映像を切り、出ていくオドー。

時計を組み立てているシスコ。
オブライエン:「キラはシャーヴァル・ダスを足止めし、ステーションの半分を自分の支配下におきました。」
シスコ:「いつのことだ。」
「一時間前です。プロムナードに放った部下の情報では…キラは司令官の命を狙ってるようです。」
「…なら全員逮捕しろ。キラはもちろんステーションのベイジョーの士官全員をだ。シンパは誰か徹底的に調べろ。」
「それは賢明な作戦とは言えません。…ベイジョー人の方が多いんですから。下手に動けば多勢に無勢でやられます。」
「…ではどうすればいいんだ。」
「ステーションを出るんです。」
立ち上がるシスコ。「ダメだ! フェイザーをよこせ、私がキラを殺す!」
オブライエン:「落ち着いて下さい! 出るって言っても、連邦軍を組織して戻ってくるんです。そうすれば、ベイジョー軍など取るに足りません。」
また時計を組み立てるシスコ。「どうやって脱出する。」
オブライエン:「シャーヴァル・ダスのロック解除に後数時間。もうキャプテンに話しました。連邦のテリトリーまで連れて行ってくれます。」
「準備ができたら呼んでくれ。」
司令官室を出るオブライエン。時計は動き始める。

ベシアはベイジョー人少尉※26に、小さな道具を渡した。「これを使えばいい、2分で効くよ。効果も強い。これなら…」
オドーが診療室に入った。
ベシア:「これならぐっすり眠れるようになると思うよ?」
少尉:「ありがとうございます。」 もらった物を隠し、出ていく。
「慢性の不眠症でね、ホルモンが原因らしい。で、どうしたの。」
オドー:「例のクリンゴン人の解剖は終わってるでしょうね?」
「もちろん。ところでオドー、この前僕が言ったとおりの事態になってきてるだろ? そろそろ旗色を明らかにしないと、孤立する羽目になっても知らないよ?」
「あのクリンゴン人、何かわかりましたか。」
「ちゃんと死んでたよ、心配しなくても。」
ベシアの身体をつかむオドー。「下らない冗談はよすんだ! 解剖の結果で、誰がステーションを牛耳るのか※27わかるかもしれないんだぞ?」
ベシア:「…何で。」
「その説明は後だ。まず、クリンゴン人のことが知りたい。」
「解剖した。結果は大したことはなかったけど…でも脳幹の円柱形細胞の、膜の透水性がなかった。」
「その原因は何だ。」
「いろいろ考えられる。」
「テレパシーと関係はないかな? クリンゴン人は古代種族のテレパス公文書を調べていたらしいんだ。」
「もしそれが自活能力のあるエネルギー母体の中に入っていたのなら、クリンゴン人の脳の変化も説明がつく。」
「…そのエネルギー母体の影響で古代種族のサルタナ人が滅んだ時の、権力闘争が再現されたってことはないか。」
「ありえるけど、何が言いたいんだ。」
「ドクター、そのエネルギー母体がステーションに入ってきているんだ。司令室スタッフも私以外は感染している。私は人間じゃないから、受け付けなかったんだ。」
「…非常に面白い仮説ではあるけどね。…僕は、そんなものに感染なんかしてないよ?」
「ええ、ドクターはね? でも、感染していないのが私とドクターだけだとしたら。」
「僕らは有利な立場になるね。」
「その通りです。」
「それで、どうする。」
「まずはみんなの症状を引き起こしているフィールドを、取り除くのが先決ですね?」
「せっかく有利になったのにか?」
「でもステーションを爆破されるよりいいでしょう。」
「…それは言えるな。」
「エネルギー母体を操っているパワーこそが、今このステーションを支配しているんです。」
「そのテレパスフィールドの自然共鳴周波数さえ特定できれば、フィールドを消し去る妨害シグナルを作れるかもしれないぞ!」
「よかった。じゃ御願いします。ヒーローになれますよ。」
取りかかるベシア。

司令官室を出るシスコ。「オブライエン、まだできないのか。」
オブライエン:「後もう少しです。もう一つレベルが上のロックを解除すれば、シャーヴァル・ダスは発進できます。」
ベイジョー人少尉が戻ろうとしたシスコに近づく。「司令官、ご命令の武器スキャナーの報告書※28を持ってきました。」
シスコ:「オブライエンに渡せ。」
「でも、ご自分で御覧になった方がいいかと。」
少尉は、密かに手に隠した物をシスコの背中に近づける。
気づくオブライエン。「司令官!」
少尉が持っているのは、ベシアからもらった薬だった。
少尉を殴るシスコ。階段を転がり落ちる少尉。
ダックス:「ダックスよりキラ。」
オブライエンはダックスを殴り倒した。
少尉をつかむシスコ。「キラなのか、キラに命令されたのか!」
少尉:「違う!」
何度も少尉を殴るシスコ。少尉は下の区画に倒れ込んだ。
シスコはそれでも追いかけ、壁に押しつける。「ほんとのことを言え! 素直に吐くんだ。」 少尉が落とした薬をつかんだ。「これを刺すとどうなるかな。」
その時、シスコの脇をエネルギー兵器がかすめた。
キラが撃ったものだ。「手を下ろしなさい。」 他のベイジョー人と共に司令室へ入る。「早く。」


※26: Ensign
(ジェフ・プルート Jeff Pruitt) 階級は言及されていません。声:小杉十郎太

※27: 吹き替えでは「牛耳ってるのか」。オドーは現在のことではなく、これから先のことを言っています

※28: 吹き替えでは「武器スキャナー」のみ。ただパッドを持ってきているだけです

シスコは薬を投げ捨てた。
キラ:「連行せよ。」
目を覚ますダックス。
オブライエンを見るシスコ。
するとオブライエンはコンピューターに触れた。シスコも転送されていく。
キラ:「ダックス! 何で転送機をオフにしておかなかったのよ。」
ダックス:「気づかなかった。」

廊下を歩くオブライエン。「シャーヴァル・ダスに近づけないよう、キラがフォースフィールドを張ったんです。だからここへ転送されたんでしょう。」
シスコ:「どうやって船に行くんだ。」
「オドーに頼みましょう。オドーならフィールドを解除できる。」
コミュニケーターに触れようとする、オブライエンの手を取るシスコ。「しかし信用できるのか。」
オブライエン:「でもほかにはもう方法が。」
「…シスコよりオドー。」

その声に聞き入るベシア。
オドー:「…こちらオドー。」
シスコ:『キラが反乱を起こした。ダックスもキラについた。助けてくれオドー。何とかして、シャーヴァル・ダスまでたどり着きたいんだ。』
「第1クロスオーバーブリッジから貨物室を通り、第4ドッキングポートへ。ロックは開けておきます。」

シスコ:「よし、通信終了。」 コミュニケーターを投げ捨てた。「バッジは捨てていこう。…心配しなくたって大丈夫だ。キラなんかに負けるものか。」 オブライエンのコムバッジも取る。
オブライエン:「はい、中佐。」

DS9 の図を見るダックス。「まだエアロックの第6通路にいるわ?」
キラ:「何をやってるのかしら。」
「あきらめたのかも。」
「ハ、まさかあのシスコが。…ありえないわよ。あ…きっと通信バッジを捨てたんだわ。でもそんなに遠くには行っていないはずよ。」
「こっちのフォースフィールドが解除されたわ?」
図上のフォースフィールドが、道なりに解除されていく。
キラ:「誰かセキュリティコードを知っている者の仕業ね? ……キラよりオドーへ。」

オドー:「…何です、少佐。」
キラ:『あなたは一体どっちにつく気なの?』
「もちろんあなたです。」

キラ:「あらほんと。じゃなぜシスコが逃げるのを助けるの。」
オドー:『その逆ですよ。第4貨物室に閉じこめるつもりなんです。少佐へのプレゼントにね?』
「疑って悪かったわ? じゃ貨物室で。通信終了。」

ベシア:「上手いもんだ。…まんまと引っかかったねえ。さすがだな、オドー。」
オドー:「もう時間がありませんよ、ドクター。」
「ああ、もうすぐ終わるって。第4貨物室にイオン妨害シグナルをセットした。テレパスフィールドの共鳴周波数に対応させてあるから、これでエネルギー母体の影響から解放されるはずだ。」
「それからどうなるんです。」
「シグナルが出ている限り、テレパスフィールドは活動できない。」
「それだけわかれば十分だ。行きましょう!」 コンピューターを操作し、診療室を出るオドー。

第4貨物室に入るシスコとオブライエン。
反対側から抜けようとするが、ドアが開かない。
シスコ:「どうした!」
オブライエン:「シールドされてます。私じゃありません、キラの仕業かも。きっと、私達がバッジを捨てたのに気づいたんでしょう。」 ドア近くのパネルを開ける。「ああ、完全に閉じこめられた。誰かが、レベル5 のセキュリティを作動させたんだ。…司令官以外にレベル5 で作動できるのは一人だけですから。」
「オドーだ!」
キラ:「そうカッカしないで。オドーももうすぐ来るわ?」 ダックスやベイジョー人保安部員も来ている。
「私を、ここで殺す気か。」
「…ええそうよ?」
「信じられないね。君は恩知らずだな。君たちベイジョー人のために、あれほど…尽くしてきたのに。感謝されるどころか、裏切られるとは。しかし私は、そう簡単には負けはしないぞ。君と違って私は、歴史というものを知っている。私の名前は永遠に輝き続けるだろう。君たちのケチな謀反が忘れ去られてもな。」
「言い残すことはそれだけなの。」
閉まっていたドアから、ベシアと共にオドーがやってきた。「待って下さい!」
キラ:「いま処刑するところよ。」
「コンピューター、オドー1 を実行せよ。」
貨物室中に、高いノイズが響き渡った。オドー以外の全員は、耳を押さえて苦しむ。
シスコの頭から、エネルギーフィールドが出ていく。他の者も同様だ。
エネルギー母体は空中を漂っている。
落ち着いたシスコ。「どうした、オドー。」
オドー:「何かしっかりしたものにつかまって!」
言われたとおりにする一同。オドーがコンソールを操作すると、強い風が巻き起こった。
宇宙空間へ通じているドアが開き、空気が排出されていく。
飛ばされないように身体を支えるシスコたち。エネルギー母体は吸い出されていった。
オドーがコンソールを再び叩くと、ドアが閉まっていく。風も収まった。※29
オドー:「皆さんお帰りなさい。」

『ステーション日誌、宇宙暦 46924.5。取りつくものがなくなったテレパスエネルギーの母体は、宇宙へと消え去った。ディープ・スペース・ナインでは全てが正常に戻り、みんないつものように働き始めた。』
司令室。
キラは司令官室に入った。「…司令官が作ったんですか?」
シスコ:「どうやらそうらしい。」 前に時計※30が置かれている。
「なぜ?」
「私にもわからんよ。」
「…あの時の私達の行動は、自分の意思で取ったものでないにせよ、でも…私司令官に謝りたいんです。」
「謀反のことか。」
「ええ、まあ…そうです。」
「お互い水に流そう。今回はね。」
うなずき、出ていくキラ。
シスコは時計を動かし始めた。
時を刻む音が、響き続ける。


※29: ここのシーンのみ、なぜかシスコのコミュニケーターが復活しています。オドーのセリフの後、また消えています

※30: エンサイクロペディアではサルタナ時計 (Saltah'na clock) とされています。真鍮と青銅でできており、下級イラストレーター Ricardo Delgado デザイン。製作には監督の Cliff Bole、小道具担当 Joe Longo、上級イラストレーター Rick Sternbach も関わっています。全部で 3つ作られ、組み立て中のシーンで使われました。最終的な物は、後のエピソードでも司令官室に置かれています

・感想
原題は「登場人物」という意味の、これまた初期らしく、かつ DS9 ならではエピソード。旧題は "Ritual Sacrifice" 「(宗教的な) いけにえ」でした。クルーがおかしくなるプロットはありがちですが、今までにはない連邦のシスコとベイジョーのキラという組み合わせを最大限に生かしています。この頃の描写からすると、反乱がある意味シャレになってないところが面白いです。結局シスコについたのはオブライエンだけというのが…。
DS9 では初めてとなるベテラン監督 Cliff Bole は、以前にドラマ「私立探偵スペンサー」(1985〜88) でブルックスを演出したことがあります。普段とは違う演技というのは視聴者はもちろん俳優も嬉しいものでしょうが、監督自身も楽しんだそうです。


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