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特別エピソードガイド
「スター・トレック 叛乱」 (3)
Star Trek: Insurrection

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・8. メタフェイズ放射
エンタープライズに転送されるピカードとデータ。待っていたウォーフに早速話しかけるピカード。「ミスター・ウォーフ、人質は報告で遮蔽された船について何か話したか?」
全く心当たりのないウォーフは、「いいえ」と答える。
「もう一度報告させろ」と言い歩いていこうとしたピカードは、ウォーフの顔に赤い部分があるのに気付いた。「ケンカしたのか、ミスター・ウォーフ?」
ウォーフは答えにくそうに、「いいえ。ゴーチ※64です」という。そのクリンゴン語を知らないピカードは、「ゴーチ?」と聞き返す。ウォーフは口を開いたが答えない。代わりにデータが、ピカードの耳元でささやいた。「ニキビです。」
ピカードはまじまじとゴーチを見つめた後、「ああ、えー、その、あー…ほとんど目立たないぞ」と言った。目を合わせられ、データも慌てて首を振る。歩いていくピカード。データは一瞬ウォーフの顔を見て、後に続いた。目を閉じるウォーフ。
ピカード、ウォーフ、データに続いて、別の通路からライカーが合流した。そのあごには、髭がない。データも気付いた。ライカーは自分のあごをさすり、「アンドロイドのケツくらい滑らかだろ、な、データ?」と微笑んだ。「なんですって?」と聞き返すデータを無視し、ライカーはピカードに話す。「ダワティ提督がまだ離れていない理由を知りたがっています。」
「我々はどこへも行くつもりはない。」

4人はターボリフトに乗る。「第5デッキ」と指示するピカード。ライカーもウォーフのゴーチに気付いた。「フム。クリンゴン人には小さなものはないんだな?」
ウォーフは何も答えず、ピカードに「ドクター・クラッシャーが、艦長が戻ってきたらお話ししたいとおっしゃっていました」と伝える。うなずき、連絡を入れるピカード。「ピカードよりクラッシャー。」
医療室のクラッシャーが応える。「艦長、ソーナ人の人質は診察を謝絶しています。部屋に監禁しました。」
「我々の仲間は?」
「元気です。むしろ、元気以上です。新陳代謝率が上昇、筋肉の状態が向上、高い活力…我々はとても幸運でしたね。」 ラフォージの目を調べるクラッシャー。
「本当に良かった、ドクター。ピカード、以上。」 ターボリフトが着いた。「ウォーフ。ソーナ人士官は私がアーダー・ルアフォと話すまでは解放するな」と命じるピカード。
「了解。」
データはライカーを呼び止めた。「副長。よろしいですか? ちょっと?」 あごを出すライカー。撫でるデータ。だがデータは首を振り、ニヤついた。

自室に入るピカード。「コンピューター、音楽を。」 ピアノ曲が流れ始める。
「いや、いや、そうじゃない。何かラテン系を。」
『特定してください。』
「マンボ※65を。」
流れて来る音楽。「ムム。これはいいな。」 曲に合わせて踊り出すピカード。体を回転させる。
鏡の前に立ったピカードは、顔に張りが戻っていることに気付いた。

扉を叩く。出て来たのはアニージだ。ピカードは尋ねた。「あなたは何歳なんですか?」

ソージェフが話す。「私たちは自滅寸前の恒星系からやってきました、テクノロジーが全生命の殺戮を脅かすような兵器を作り出したのです。小人数のグループが新しい故郷を見つけるために旅立ちました…他の世界の脅威から隔離された故郷を。それが 309年前のことです。」 部屋にはピカード、アニージ、ターネル、そしてアーティムがいる。
ピカード:「そしてあなた方はそれ以来 1日も年を取らなかった。」
ソージェフ:「実際は、私たちがたどり着いた時には私はもっと年老いていました、体調的な面からも。」
アニージ:「異常なメタフェイズ放射が惑星の輪から発生しています。それが連続的に私たちの細胞組織を再生させます。既に効果に気づいているはずです。」
ピカード:「我々は気づき始めたところです。」
飲み物を差し出すアーティムに、「とすると君は 75歳なのかな」と尋ねる。
アーティム:「違うよ、12歳。」
ターネル:「メタフェイズ放射は成人になるまでは効果が始まりません。」
ピカード:「ほとんどの外界者※66にとって、あなた方がここで手に入れたものは…金箔のラチナムより価値があります。それが何者かがあなた方の世界を奪おうとしている理由でしょう。」
アーティム:「人工生命体は正しかったんだね。」
ピカード:「もしデータがいなければ、もう移住させられていたかもしれない。」
ターネル:「一体どうやって私たちを守れるでしょうか?」
ソージェフ:「武器を取り上げた瞬間に、私たちは彼らと同じになってしまう。何もかも失う。」
ピカード:「それは起こらないでしょう。明らかに、この陰謀の計画者は秘密を守ろうとしています…あなた方からだけではなく、私たちの仲間からも同様に。私は野放しにはさせません。」

夜道をピカードと共に歩くアニージ。「私たちは最初から、生き残るためには離れなければならないことを知っていたわ。容易なことではないの。多くの若者たちは外界について詳しく知りたがるのよ。より速いペースの生活の話に魅力を感じるのね。」
「その速い生活を送っている私の仲間の多くは、生活を遅らせられるなら魂を売る者もいる。」
「でもあなたは違う?」
「月日が流れた。」
笑うアニージ。「あなたは外界者の評判とは違っているわね、ピカード。」
「ああ、外界者を弁護して言うが、私のような人間はたくさんいる。」
「永遠なる若さの約束に誘惑されない人なんているのかしら? 私はそう思わないわ。」
「君は私が値するよりも誉め過ぎているな。ああ、もちろん私も誘惑される。されない人などいるだろうか? だが、私の世界における歴史の最も暗い章の中には、大きなグループの要求を満たすために小人数を無理矢理移住させることに結びついているものもある。私は願っていた…我々が間違いから学んだということを、だが中には学んでいない者もいるようだ。」
ピカードはふと、近くにあった芸術的な布細工に目を奪われた。「これは驚くべき技能だ。」
「それは生徒たちの作品なの。もうすこしで見習いになるところね。30年か40年すれば、生徒の中には職人を始める者もいるでしょう。」
「30年の見習いか。」
再び歩きながら、尋ねるピカード。「君たちの種族の精神的な訓練はここで発達したのか?」
「また質問ね。いつも探検家。もしあなたが十分ゆっくりすれば、変わるでしょう。」
「変わる?」
「昨日起こったことを振り返るのをやめ、明日の予定を立てることをやめる。一つ質問させて。完璧な瞬間を経験したことはある?」
「完璧な瞬間?」
「時が止まったようになり、その瞬間まさに生きているような時よ。」
ピカードは少し考え、答えた。「初めて宇宙から、私の故郷の惑星を見た時だ。」
「そう…その通り。知覚よりわかりにくいものはないわ。あなたたちは宇宙を探検する。私たちは時間のわずかな一瞬、それ自身の中に宇宙がありうることを発見したの…強い力に満ちていることを。多くの人々は注目すべき今でさえ、十分に意識していない。」
「私は学ぶために何世紀も使えたらと思うよ。」
「学ぶために何世紀も必要ないということを学ぶのに、私たちは何世紀もかかったわ。」
「一つ私が理解できないことがある。300年の間に、君は泳ぎ方を学ばなかったのか?」
アニージは笑い、「単に暇がなかっただけよ」と答えた。扉の前に立つアニージ。「あなたは自分が他人に起こさせる信頼に気付いているのかしら、ジャン・リュック・ピカード? 私の経験では、珍しいわね…」
言葉を引き継ぐピカード。「外界者にしては?」
「そんなに若い人にしては。」
アニージは扉を開け、ピカードを一度振り返ってから中に入っていった。立ち去るピカード。

ピカードは橋の上に立ち、夜明け前の薄暗い風景を見渡していた。赤い空を背景にした丘の上に、誰かがいる。
「ジョーディ?」と声をかけるピカード。
「艦長。結局、私のインプラントには全く悪いところはありませんでした。良いところはありました…私の眼には。」
一呼吸おいて、話し始めるラフォージ。「ドクター・クラッシャーが眼球接続を取り除くと、気付かれたんです、視神経の周りの細胞が…」
「再生を始めていた」といい、うなずくピカード。
「持続はしないかも…もし持続しなくても、私は一度…私は一度、離れる前にと思ったんです…ご存知の通り、私は日の出を見たことがありません。少なくとも…艦長が見ているような形では。」
ラフォージの目は、再び赤い空に向けられた。彼の黒い目には、涙が浮かんでいた。
※64: gorch

※65: mambo

※66: offlander
吹 訪問者、外から来る者、よそ者
字 異邦人、外部の者



・9. 艦隊の誓いの放棄
バクーの惑星軌道上では、エンタープライズに付くようにしてソーナの様々な船※67が飛行している。
作戦室のチャイムが鳴った。「入れ」というピカード。ルアフォとダワティが入ってくる。
「私の部下を解放していないのが理解できないんですがね、艦長?」と尋ねるルアフォ。ピカードは一呼吸置き、ダワティに向かって言った。
「我々はホロシップ※68を見つけました。」
「ルアフォ、艦長と私だけで…」というダワティ。だがルアフォは叫んだ。「だめだ!」 興奮したせいか、額の小さな傷から赤い血液が滴り落ちる。それを拭うルアフォ。目をそらすピカード。
ルアフォは続ける。「この任務中、次から次へと連邦のヘマばかりだ。私の部下を返さないと、この同盟はお前の船の破壊をもって終わるだろう。」 そうピカードに言い残し、ルアフォは部屋を出ていった。
見送ったダワティが口を開く。「調子良さそうだな、ジャン・リュック…レスティド (休息) 。」
「私は彼らを移住させません、提督。このことを連邦評議会に伝えます。」
「私は連邦評議会からの命令で動いている。」
「どうして艦隊の誓いを放棄するような命令があるのでしょうか?」
「艦隊の誓いは適用されない。住人はこの惑星の原住民ではない。不死と運命付けられているわけではない。我々は単に彼らを自然の進化に戻そうとしているだけだ。」
ピカードは立ち上がり、強い口調で言った。「住人の次の進化の道を決定する我々とは、一体何者なんですか?」
「ジャン・リュック、地上には 600人いる。我々がこの放射の再生特性を利用すれば、何十億の人々を助けることができるだろう。ソーナ人は惑星の輪からメタフェイズ粒子を収集する手順を開発した。」
「連邦領域にある惑星です。」
「その通りだ。我々には惑星がある。彼らにはテクノロジーがある…我々が真似できないテクノロジーが。それが我々に必要なことはわかるだろう? パートナーだよ。」
歩きながら話すピカード。「我々のパートナーはケチな悪党に過ぎません。」
「地球では…かつて石油がケチな悪党を世界の指導者に変えた。ワープドライブはロミュランの悪党グループを帝国に一変させた。我々はソーナ人に対処できる。私は心配していない。」
「おそらく誰かがロミュランについて、1世紀前に同じことを言ったでしょう。」
「メタフェイズ技術があれば、寿命は倍になるだろう。あらゆる新しい医療科学が進化する。私は君の主任機関士が生まれて初めて目を使ったことを知っている。君は彼から取り上げるのか?」
ピカードは首を振った。「メタフェイズ放射はイバラの茂みのどこにでもあります。なぜこの一つの惑星が必要なのですか?」
「輪の濃度が、こいつの全ての原因なのだ。説明させないでくれ。私が知っているのは、彼らが輪の中に何かを注入すれば、熱分解反応※69が始まるということだけだ。それが終わると、惑星は何世代にも渡って居住不能になる。」
「提督、手順を遅らせてください。私の部下にテクノロジーを調べさせます。」
「我々の最高の科学班が既にやった。我々にはいかなる別の方法も見つけることはできない。」
「それなら我々が見つけるまで、ソーナ人は惑星に隔離コロニーを作ればいいでしょう。」
「通常の照射では、彼らの状態を回復させ始めるには 10年かかる。その期間、生き延びることのできない者もいる。それに、彼らはイバラの茂みの真ん中に住みたいと思うだろうか? 誰が思うかね?
「バクー人です」とピカードは言った。何も言わないダワティ。ピカードは続ける。「我々は連邦が設立された当初からの原理に背こうとしています。まさにその精神への攻撃です。そしてバクーを壊滅させます…過去の歴史において、強制移住で壊滅させられたあらゆる他の文化と全く同じように。」
「ジャン・リュック、我々はたった 600人を移住させているだけだ。」
「提督、何人であれば、移動させても悪くないのでしょうか? フム? 1,000人? 50,000人? 100万人? 何人であれば移動させても、提督?」
しかしピカードの質問を無視し、ダワティは言った。「私は君にゴラン星系へ行くように命じる。また、ソーナ人士官の解放も命じる。抗議したいなら何でも提出すれば良い、艦長。」 部屋を出て行くダワティ。「その時までには、全て終わっているだろう」と言い残して。

ピカードは自室に戻って来た。そして、襟の階級章を、一つずつ外した。大佐を表わす、4つのボタンだ。

ソーナ人に人工の歯が埋め込まれている。同じ部屋にいるルアフォのところに、ガラティンがやってきた。
「ガラティン。そうか…あの正義の宇宙艦隊艦長がやっとで解放したか。」
「はい。」
「地上で何か問題に出くわしたか?」
「いいえ…ですが彼らの中にいるのは容易なことではありませんでした。」
「そうだろうな。奴らが我々にしたことを絶対に忘れるな。」
うなずくガラティン。ルアフォはベッドの上に取り付けられた機械を操作しながら話す。「我々は 1日か2日で奴らを一斉に捕える。連邦のホロシップにもう邪魔される必要もない。監房室を用意しろ。」
「了解。」
「このちょっとした我々の皮膚伸長作業がなくなると寂しくなるな、君」と、そばにいるターラック人の女性に話しかけるルアフォ。女性はパネルを操作した。高い音と共に、ルアフォの顔のしわが引き延ばされていく。


※67: 小型のが初めから出ているルアフォの船 (ソーナ偵察船 (Son'a scout ship))。2隻あるのが攻撃用のソーナ艦 (Son'a ship)。大型のが後に使用される収集機 (ソーナ収集艦 (Son'a collector ship))。これらの船はプロダクション・デザイナーのハーマン・ジマーマン指揮の下、イラストレーターのジョン・イーヴスがデザイン

※68: ホロ船 holoship
字 幻像船

※69: thermolytic reaction


・10. 鍵を締めて乗り込め
箱がたくさん置かれた区画。台の上に、さらに新しい箱が転送された。パッドを置いたピカードが近づく。箱を開ける私服のピカード。中には何丁もフェイザーライフルが入っている。箱を台から下ろし始める。その時音がして、データの声が聞こえてきた。
「探知を避けるため転送グリッドを別経路にするのは賢い方法です。しかしながら、転送機は午前2時以降には稀にしか使われません。」
ハッチが開き始める。そこにいるのはデータだけではない。ラフォージ、ライカー、トロイ、ウォーフ、そしてクラッシャー。ハッチが完全に開き、ピカードに近づく部下たち。
トロイ:「艦長用ヨットでお出かけですか?」
ウォーフ:「ウルトリティウム※70爆発物を 7メートルトン、テトリオンパルス発射機※71を 8機、等磁分解機※72を 10機。」
ライカー:「艦長は狩りでもする計画のようですね。」
全員ヨットの中に入った。「自室に戻れ」というピカード。だが誰も動こうとしない。「命令だ。」
「制服なしでは、命令もなしです」とライカーは言った。
ラフォージ:「艦長、私の視力がここの人々を犠牲にすると知って、また日の出を見ることなんてどうしてできますか?」
データ:「私はこの環境的特質が、ある種の若者にありがちな反抗本能を促したかもしれないことを指摘する義務があるように思います。全員の判断に影響しています、私を除いてですが、もちろん。」
クラッシャーは尋ねた。「OK、データ。私たちはどうすればいいと思う?」
「鞍を置け」といい、データはフェイザーを手に取った。「鍵を締めて乗り込め。」
全員を見て、ピカードは満足げに微笑んだ。説明を始める。「奴らは惑星にまだ人が居住している間は手順を始めないだろう、だから我々の仕事は惑星を居住させた状態にしておくことだ。ウィル、ジョーディ、戻ってここで起こっていることを明るみに出してくれ。評議会にバクーを見せるんだ。知らない人々の苦難を見て見ぬふりをするのは非常にたやすいことだ。」
「艦長が気付かないうちに戻ります」とライカーは答えた。ラフォージと共に戻る。
「我々はできるだけ引き延ばす」というピカード。

エンタープライズの下部から、艦長用ヨット※73が部品を外すように現れた。そのままバクーへ向かう。

画面上に、バクーの惑星の輪の映像が映し出されている。次々に波紋が広がるように、輪が乱れていく。部屋に入るガラティン。ルアフォが早速口を開く。
「注入機は全シミュレーションで完璧に機能している。」
ガラティンはうなずくが、すぐに報告する。「アーダー、エンタープライズが軌道を離れた際、補助船の一隻が地表に向かいました。」
「何?」
パッドを渡し、「艦長用ヨットのようです、5人が乗船しています」というガラティン。
「我々は朝までは待たない。今夜シャトルを派遣して地表の全員を捕えろ。」
パッドを受け取り、部屋を出ていこうとするガラティンをルアフォは呼び止めた。「ガラティン。もしピカードや部下が邪魔したら、排除しろ。」
ガラティンは無言でうなずき、扉は閉まった。


※70: ultritium
化学性爆発物。TNG第45話 "Manhunt" 「魅せられて」など
吹字 ウルトリチウム

※71: tetryon pulse launcher
吹 テトリオンパルスランチャー
字 単に「発射機」のみ

※72: isomagnetic disintegrator
吹 アイソマグネティック核崩壊機
字 単に「粉砕機」のみ

※73: captain's yacht
エンタープライズD にも設定はされていましたが、未登場に終わった緊急用の船。この艦長用ヨットの名前は「クストー」 (Cousteau) といい、フランス人海洋学者に因んで命名。製作者のリック・バーマンによって名づけられたこの名前は、船内の記念銘版に書かれています (後の脚注参照)。ハーマン・ジマーマンとジョン・イーヴスによるデザイン
吹字 艦長のヨット


・11. 村の避難
夜。村の高い塔で、ターネルが叫ぶ。「村を離れる! 必要なものだけを持っていくんだ! 食べ物がいるぞ! 何日も戻れないかもしれない!」
大きな鐘が鳴らされる。バクー人たちは慌ただしく荷物を持って移動している。エンタープライズのクルーも手伝う。
データとトロイは共同で機械を作動させた。ソージェフがそれを見たが、何も言わずに立ち去る。音と光を発する機械を見つめるアーティムに、データが説明する。
「転送抑制機だ。宇宙船が地表からみんなを転送するのを…」 だがアーティムは歩いていった。「妨げるんだ。」

ソージェフとアニージに説明するピカード。「丘に沿って走っているケルボナイトの鉱脈が彼らの転送機を妨害します、地形上ケルボナイトの埋蔵物から離れざるを得ない場合は、我々が代わりに転送抑制機を使います。山脈にはケルボナイトが最も高い濃度で存在しています。そこへ着いてしまえば、転送を実質的に不可能にさせるでしょう。」
「この山脈には洞窟があるわ」というアニージ。やってきたアーティムの肩を持つソージェフ。
話を続けるピカード。「それから我々が着いたら長い間抵抗しなければなりませんが、簡単に行かせてはくれないでしょう。」
データが報告する。「艦長。我々は村中で転送抑制機を作動させました。」
「よし。」
突然、低い唸るような音が聞こえて来た。見上げると、遠くにソーナのシャトル※74が夜空に浮かんでいる。
「みんな、移動するぞ!」とピカードは叫んだ。

地表へ猛スピードで近づく 2隻のシャトル。「転送機が機能していません」とガラティンに言うエローラ人※75の部下。
「奴らは何らかの抑制機でビームを阻止している。位置を特定して破壊せねば」とガラティンは言った。

子供をかばいながら逃げる母親。武器の発射音にウォーフも気付いた。データはフェイザーを片手に、バクー人を先導する。ソージェフは荷物をたくさん抱えたアーティムに気付いた。「待て、待て。アーティム、持ち過ぎだ。これから長い山登りになるぞ。」
シャトルからのエネルギー兵器が、橋を直撃した。その衝撃で川に落ちる人々。シャトルは次々と転送抑制機を狙っていく。
ウォーフがピカードに報告する。「我々は 3機の転送抑制機を失いました。領域に隙間があります。」
ラマに似た動物に荷物を載せ、一緒に逃げるバクー人。転送抑制機を失った部分で、データの目の前で人々がソーナ人の転送ビームに包まれた。
攻撃の勢いで倒れるバクー人たち。シャトルの攻撃は容赦なく続き、川からは水柱が上がる。
ソージェフについて橋を渡るアーティム。しかし転んでしまい、小動物を落としてしまう。「アーティム!」と手を差し出すソージェフ。しかしアーティムを残し、周りの人々と一緒にソージェフは転送されてしまった。倒れたまま「父さん!」と叫ぶアーティム。データはアーティムを起こし、一緒に逃げる。
抑制機を伝うように、バクー人が列を作って丘を登っていく。


※74: ソーナ・シャトル Son'a shuttle

※75: エローラ人士官 その2
(グレッグ・ポーランド Greg Poland)


・12. 君の船を派遣しろ
ルアフォの部屋に入り、報告するガラティン。「奴らはケルボナイト堆積物を伝っています、我々の転送機を阻止するためにケルボナイトの妨害を使っているのです。」 「提案は」というルアフォ。
同じ部屋で座っているダワティが「私を降ろしてくれ。ピカードと話す」という。それを聞いて、もっていたパッドを机の上に置くルアフォ。「ははあ、話す! 我々は攻撃隊を降ろして力ずくで捕えるべきです。」
「それは承認できる選択肢ではない。もし人々が傷つけば、連邦での我々の全ての協力は…」
言葉をさえぎるルアフォ。「連邦の協力、連邦の手順、連邦の規則。」 立ち上がって話を続ける。「鏡をご覧なさい、提督。連邦は年老いていますよ。過去 24ヶ月に、彼らは宇宙域のあらゆる主要な勢力によって挑戦され続けて来ました…ボーグ、カーデシア人、ドミニオン。皆連邦の死の匂いをかぎつけているんです。だからあなたは我々の提案に応じた…なぜなら、それが親愛なる連邦に新しい生命力を与えるからだ。ぜひとも欲しいんでしょう、提督? そのためには辛い選択も必要…それは今です。もしエンタープライズが、無防備なバクー人のために彼らの勇ましい艦長が果敢に苦闘しているというニュースを伝えたら、あなたの連邦の政治家は動揺するでしょうな。あなたの連邦の世論は公開討論を開かせる。あなたの連邦の同盟国は言い分を求める。あなたの…。続けますかね?」
ガラティンが口を開いた。「総力攻撃ではなく、代わりの方法があります。アイソリニアタグ※76を使えば我々の転送機で奴らをロックできます。」
だがルアフォは納得しない。「奴ら一人一人にタグを付けるのか。時間がかかり過ぎる、そんな時間はない。」
再びダワティを睨み付ける。「エンタープライズが連邦との通信圏に入るまで、あと 19時間しかありません。」
「私がライカーに戻るように命じる」というダワティ。あきれるルアフォ。「ピカードの副長。本当に彼が応じると思っているのですか? 私の船はエンタープライズが外縁部に着く前にさえぎることができます。派遣することもできますよ…エンタープライズを護衛して連れ戻すために。」 ダワティに顔を近づけるルアフォ。「だがライカー副長は来たくないかも知れませんが。」
ダワティは言った。「君の船を派遣しろ。」


※76: isolinear tag
字 転送マーカー

・13. 機械は遊ぶの?
ピカードを先頭にし、バクー人の長い列が山を登っている。要所要所に転送抑制機が置かれている。アーティムはデータと一緒にいる。
データに質問するアーティム。「機械でいるのは好き?」
「私以上のものになることを熱望している。」
「わかるよ…そしたら僕たちみたいな人がもう怖がらないもんね。」
歩いていくアーティム。データは「たぶん」と答えた。

アーティムの質問は続く。「疲れたことはないの?」
「私の発電池が絶えずそれ自身を再充電しているんだ。」
アーティムは列を離れ、近くの岩に腰かけた。「機械ってどんな風か想像できないよ。」
「たぶん私が子供がどんなものか想像しようとしていると知ったら君は驚くだろうね。」
「ほんと?」
データはうなずき、「本当だ」と言う。
「例えば、足はほかのみんなより短いよ。」
「でも絶え間なく成長段階にある。君は適応するのに難しいと感じないかい?」
意味を理解できないアーティム。「適応?」
「子供の設計はある瞬間から次の瞬間まで同じということが決してありえない。君が自分の足につまずかないのが不思議だ。」
「時々つまずくよ」と恥ずかしそうにいうアーティム。データはアーティムの横に座りながら話す。
「私の足は正確に 87.2センチメートルの長さがある。作られた日にも 87.2センチメートルだった。オフラインになる日も 87.2センチメートルだろう。私の動作は変わらない設計に頼っている。私は成長や…自分の足につまずく経験もしないだろう。」
「でも大人にいつも何かしろとか、寝る時間だとか、嫌いな食べ物も食べろとか言われないよ。」
「私は子供がどんなものかを知るのと引き換えになら、寝る時間の要求を喜んで受けるよ。」
アーティムは少し考え、こう尋ねた。「機械は遊ぶの?」
「ああ。私はヴァイオリンを弾く。それに私のチェスルーチンはかなり進歩している。」
「違うよ。つまり、ただ遊んだことはないの…楽しみのために?」
「アンドロイドは…楽しまない」と困った顔をするデータ。
「いい? もし子供ってどんなものか知りたいなら、遊び方を学ばなきゃね。」
列に戻るアーティム。データは「フム」とつぶやいた。

ウォーフが走っている。ピカードに追いつき、「艦長」と呼びかける。
「ミスター・ウォーフ、髪を切らないとな。」 ウォーフの髪は胸の辺りまで伸びていた。
「髪の伸びが速くなるのは、クリンゴン人がジャクタラ※77の時期によく経験します。」
ピカードの後ろのアニージが尋ねる。「ジャクタラ?」
意味を教えるピカード。「大まかに訳せば、『思春期』だ。だがクリンゴン人にとっては、ほとんど正しくないだろうな。」
ウォーフに向き直り、「危険な気分の変化とか、異常に攻撃的な傾向が少しでもあったら、すぐに知らせるんだぞ」というピカード。
「わかりました。バクー人はそろそろ休憩が必要です、艦長。地形スキャンによれば、ここがこれから数キロメートル以内で最も安全な地域です。」
「ちょうどいいな。1時間とろう。少し食料を出して配ってくれ。」
「了解。」


※77: jak'tahla

・14. 完璧な瞬間
双眼鏡を使って、先の山を調べるピカード。アニージが地形について教える。「あの尾根を越えた右側が、洞窟が始まっているところよ。何日かは隠れられるわ。」
「今頃は、ソーナ人はこの地域をスキャンし終わっているだろう。我々が知っていることも調査済みのはずだ。」
アニージはピカードの頭に目が行った。そして撫でながら言う。「前に禿げた男性を見てから 300年経ったわね。」
微笑むピカード。「どうして君は結婚しなかったんだ? 単に暇がなかっただけとは言わないでくれよ。」
「どうして急ぐの?」とアニージは言った。
「注意しておくが、私はいつも年上の女性に惹かれるんだ。」 ピカードはアニージを見つめた。
アニージは片手で、ピカードの手を握り締める。その瞬間、近くを流れていた滝の流れが、ゆっくりと落ちていくように変わった。
アニージは足元の花を取り、口に近づけて息を吹きかけた。ピカードの目の前には、花粉の一粒一粒が綺麗に広がる。
目を奪われ、静かに尋ねるピカード。「どうやってこれを?」
「もう質問はなし」とアニージは言った。何かを見つめている。ピカードも見た。ゆっくりと羽ばたきながら蜜を吸う、ハチドリの姿を。




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