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TNG エピソードガイド
第76話「戦士の休息」
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・イントロダクション
※1『航星日誌、宇宙暦 44012.3。ボーグとの戦いで打撃を受けたエンタープライズは、マッキンリー基地※2で大々的なオーバーホールを行っている。整備は順調に進んでおり、間もなく通常の任務に戻ることができるだろう。』
エンタープライズはマッキンリー基地に入っている。地球軌道上だ。
ライカーはクルーにパッドを渡した。「ありがとう、機関部に持っていってくれ。」
観察ラウンジに来るウォーフ。「フェイザーの改良が終わりました。」
ライカー:「早いなあ。」
「今は動力の整備に取りかかっています。」
「君の仕事の速さには驚くよ。」
「光栄です。」
「…その調子で続けてくれ。これが、各自の休暇予定と転送スケジュールだ。…そういえば君の御両親がいらっしゃるとか?」
「…まさか。」
「訪問者リストに載ってるぞ? 知らんのか。」
「聞いてません。…クリンゴンの戦士が任務中に家族と会うなどもってのほかなのに。…育ての親は地球人なのでわからないのです。」
「そう熱くなるな、ウォーフ。ここはクリンゴン船じゃないんだ。両親に会うか会わないかは君の自由だが、久しぶりの地球じゃないかあ。ご両親がいらしてる間、休暇にすればいいだろ。」
「いいえ。副長、その必要はありません。」
「…好きにしろ。」 呼び止めるライカー。「ミスター・ウォーフ※3。クリンゴン星での事件を知られるのを恐れてるのか。」
「違います。追放※4処分の件でしたら、既に地球の両親には知らせてあります。…だが地球人には、私の気持ちが理解できるとは思えません。」 出ていくウォーフ。
ライカーはため息をついた。

服を取り出すピカード。
トロイ:「それで? どちらへいらっしゃるんですか?」 鏡に写っている。
私服のピカード。「うーん? 何だ。ああ…ああフランスの、ラベール※5。生まれ故郷だ。」
トロイ:「おうちに?」
「ああ。20年ぶりに帰ることにした。」
「いいことですわ?」
「…カウンセラー。」
「ただいいことだと言っただけです。ここ 3年間というもの御自分から休暇を取ろうなどとなさらなかった艦長が、どういう心境の変化かと。」
「…地球に来たから帰るんだ、ほかに理由はないさ。」
「とてもそうは思えませんわ?」
「…君のおかげで、私は随分回復したよ。ほら、どうだ。見てくれ…元気だろ?」 両腕を曲げるピカード。「傷も治ったしな。」
「ええ、目に見える傷は。」
「悪夢は終わった。後は時間が、癒してくれるだろう。」
「その通りです。休暇を取るのは私も賛成です。心配なのは…ゆき先に、生まれ故郷を選ばれた艦長の心理状態です。」
「私がボーグの一件で傷ついたから弱気になって故郷に帰るんだと君はそう言いたいのか?」
「そう思われてるのは艦長ですわ?」
「…君には勝てないよ。」
「艦長? …焦ることはありません。こんなに短い時間で、完全に治るわけがないんですから。あれだけの痛手を受ければ、誰だって回復にはかなり長い時間を必要とします。自分自身を取り戻すまで。」
「それには生まれ故郷の町で過ごすのが一番だとは思わないか?」
「…いいことですわ?」
ため息をつくピカード。
トロイは笑った。「よい休暇を、艦長。」 頬にキスする。
ピカードの部屋を出て行くトロイ。ピカードは蔵書を手に取ったが、棚に戻した。
カバンを持って出ていく。最後に一度、部屋の中を見た。


※1: このエピソードは 1991年度エミー賞で撮影賞にノミネートされました

※2: 地球マッキンリー・ステーション Earth Station McKinley
前話 "The Best of Both Worlds, Part II" 「浮遊機械都市ボーグ(後編)」より。初登場。Rick Sternbach デザイン

※3: 吹き替えでは「(ウォーフ) 尉」。第3シーズン以降、ウォーフの階級は大尉です

※4: discommendation
TNG第65話 "Sins of the Father" 「クリンゴン戦士として」より

※5: ラバール Labarre
なお現在、実在する地名ではありません

・本編
転送室。
ウォーフが入る。「…連絡は入ってないのか。」
オブライエン※6:「まだです。」
「…母は時間通りに来たことがないんだ。…全く。地球人の女は。」
「もうすぐ来るでしょう。」
「…待ち遠しいわけじゃない。…さっさと来て早く帰ってもらいたいだけだ。」
「わかりますよ、大尉※3。」
「ほんとか。」
「うちの父親が来た時には、スタントン看護婦※7を追っかけ回して大恥をかかされましたからねえ。」
「幸いうちの父は看護婦を追いかけ回す癖はないようだが。」
「うーん。まあ親も人間ですからね、フン。」
通信が入る。『エンタープライズ、こちら地球バブルスク基地※8。2名転送します。』
オブライエン:「転送しろ。」
2人が転送されてきた。
ウォーフ:「母さん、父さん。」
養母のヘレナ・ロジェンコ※9。「ウォーフ。」
養父のセルゲイ・ロジェンコ※10。「元気そうじゃないか。」
キスするヘレナ。
握手するロジェンコ。「…ちょっと太ったかな。」
ウォーフ:「いえ。」
「肉がついてガッチリした。相変わらずホロデッキでモンスターと格闘してるのか。」
「船室の方へ。」
笑い、オブライエンと握手するロジェンコ。「はじめまして、どうも。息子がいつもお世話になってます。セルゲイ・ロジェンコです、U.S.S.イントレピッド※11におりました。」
オブライエン:「マイルズ・エドワード※12・オブライエンです、お会いできるとは光栄です。」
「いやいや、下っ端の怠けもんでしたから。」 笑う 2人。
ヘレナ:「そんなこと言って。この人ったらウォーフが士官になった時は、はしゃいで大変だったの。」
ロジェンコ:「わしみたいな下士官の息子がこんなに立派になるなんて信じられますか。」
笑うオブライエン。
ヘレナ:「行きましょう、あなた。おしゃべりなら後でいくらでもできるでしょう? お父様ねえ、今日をすごく楽しみにしてたの…。」
ロジェンコ:「そうそう、船を隅から隅まで見ようと思ってな。来る前にギャラクシー級宇宙船の設計図を頭に叩き込んできたよ。」
ウォーフ:「…オーバーホールの最中なんだ、全部の見学は無理ですよ。」
「…お前から艦長に頼んでくれれば…」
「そんな…」
ヘレナ:「ウォーフを困らせないって約束したでしょ? それに船を見に来たんじゃなくて、ウォーフに会いに来たのよ?」
ロジェンコ:「ああ…それもそうだ。」
「髪の毛が伸びたわねえ、似合うわよ?」
ウォーフは一度オブライエンを見て、出ていった。

独り、木の下の道を歩くピカード。
横の木が揺れている。ピカードが歩くのに従って、ついてくる。
ピカード:「隠れたってちゃんとわかってるぞ。」
子供が出てきた。
両手を挙げるピカード。「おー、金ならやる。助けてくれ。」
少年:「…何?」
「助けてくれ! 旅行者を襲う盗賊だろ。…ここ何百年かは出ていなかったようだが?」
「僕、盗賊じゃないよ。」
「あー…そりゃ助かった。」
「僕あなたを知ってる。」
「ほう、誰かな。」
「僕の甥っ子のジャン・リュックだ。エンタープライズから来たの?」
「じゃあ君はレネ※13おじさんか。」
レネ:「ああ違う、僕が甥だった。逆に言っちゃったんだ。」
「何だ、わざとじゃないのか。」
「何でずっと帰ってこなかったの?」 ピカードの荷物を持つレネ。
「うーん、仕事が忙しくてね。」
「ほんとは、うちが嫌いだからでしょ。」
「嫌いじゃないさ。」
「知ってるんだよ、パパが言ってた。」
「ああ。…君のパパとは…いろいろ誤解も解かなきゃな。」
「おじさん、パパが言ってるほど…あ、えーと…何だっけ。」
「わがまま?」
「それ。わがまま。そんな風に見えないな。よく聞かされてたんだ。わがままで自分のことしか…」
「その話はまた後にしよう。」
「うん。ママー! おじさんだよ!」 屋敷に走っていくレネ。「ママー! おじさん。」
並ぶ大樽の前にいた女性。「ジャン・リュック。」
ピカード:「マリー※14。」
マリー:「ああ。」 キスする。「おかえりなさい。顔が見られて嬉しいわ?」
「…私も。」
「…具合はどう?」
「ああ、元気さ。」 精一杯の笑顔を浮かべるピカード。
「ロベールも、あなたが来るって聞いて大喜びだわ?」
「あ、その…迷惑じゃないかな? 押しかけたりして、何ならどこかに宿を取って…」
「いやあね、何を言ってるの。ここはいつだってあなたのうちよ?」
周りを見るピカード。
マリー:「昔と変わった?」
ピカード:「いいや? ちっとも変わらないんで驚いてるくらいだ。何もかもが私が覚えているとおり。うちも、丘も。…木々や茂みも。何一つ昔と変わっていない。」
「ロベールがね、変えちゃいけないって。…あの人頑固だから。」
「…親父もそうだった。」
レネ:「…僕も、大きくなったら艦長になるんだ。」
「レネは、兄さんの小さい頃にそっくりだなあ。見てると思い出すよ。一緒に遊んでた子供の頃を。」
マリー:「ロベールが待ってるわよ?」
「ああ、早く会いたいよ。…どこにいる。」
「…ブドウ畑よ? もう入り浸りなの。」

ブドウをつかみ、口にする男性。
畑を歩いてきたピカード。
一瞬ピカードを見たが、座ったまま話すロベール・ピカード※15。「来たか、ずいぶん遅かったな。…ようこそ艦長。」
ピカード:「ただいま。」
「…お前…シャトルで来たのか?」
「いいや、歩きたくてね。…途中でレネに会った。」
「そうか。で?」
「兄さん。……会いたかった。」
振り向くロベール。「…疲れたろ。」
ピカード:「いや。」
「ゆっくりしろ。お前のうちだ。飯は 8時頃。俺はもうちょっと、このブドウの世話をせにゃならん。また後でな。」
ピカードは立ち去った。そのブドウ畑※16は、辺り一面に広がっている。


※6: マイルズ・オブライエン Miles O'Brien
(コルム・ミーニー Colm Meaney) 前話 "The Best of Both Worlds, Part II" 「浮遊機械都市ボーグ(後編)」に引き続き登場。声:辻親八

※7: Nurse Stanton
吹き替えでは「看護婦」のみ

※8: 地球ボブルイスク・ステーション Earth Station Bobruisk
ボブルイスクはベラルーシの都市。この通信の声はクラッシャー役の一城さんが兼任

※9: Helena Rozhenko
(ジョージア・ブラウン Georgia Brown 1992年7月に死去) 初登場。声:片岡富枝、DS9 3代目ウィンなど

※10: Sergey Rozhenko
(セオドア・バイケル Theodore Bikel フォークシンガーとしても活躍) 声:小関一、ST5 コードなど

※11: U.S.S. Intrepid
エクセルシオール級、NCC-38907。TNG第65話 "Sins of the Father" 「クリンゴン戦士として」より。吹き替えでは「宇宙艦隊におりました」。「はじめまして…」の個所は、原語では「下士官 (Chief Petty Officer) 仲間に会うのはいつも嬉しいもんです」と言っています。これは後の DS9 とは符合するセリフですが、この時点ではオブライエンは大尉の階級章をつけているため、どうして CPO とわかったのかは謎です。先に聞いていたのでしょうか

※12: オブライエンのファーストネームおよびミドルネームが言及されるのは、今回が初めてです。リック・バーマンの知り合いの少年にちなんで。吹き替えでは訳出されておらず、「大先輩にお会い…」

※13: レネ・ピカード Rene Picard
(デイヴィッド・トリスティン・バーキン David Tristan Birkin TNG第133話 "Rascals" 「少年指揮官ジャン・リュック・ピカード」の少年ジャン・リュック・ピカード役) 初登場。声:林原めぐみ

※14: マリー・ピカード Marie Picard
(サマンサ・エガー Samantha Eggar) 後にも言及。ピカードの家は、カリフォルニア州エンシーノのヴェンチュラ通りにある、個人宅がロケ撮影に使われています。声:久保田民絵

※15: Robert Picard
(ジェレミー・ケンプ Jeremy Kemp) 後にも言及。声:矢田耕司、TNG スポックなど

※16: ピカードの家とは異なり、エドワーズ空軍基地の南西、カリフォルニア州ランカスター付近にある個人の乾燥農業地で撮影。ロケは合わせて 2日間でした。この遠景はマットペインティングで補完されています。TNG第177話 "All Good Things..., Part I" 「永遠への旅(前編)」同様、フランスとカリフォルニアとのブドウは異なるため変だという指摘もあるようですが、24世紀まで気候などが変わっていないとは限りませんね

レプリケーターからグラスを取り出すクラッシャー。「トロイは休みを取って地球に降りないの?」
トロイ:「そのうちね? ウィリアムと、エンジェルの滝※17に行こうかって言ってるんだけど。」
「あのヴェネズエラの滝?」 ドアチャイムに応えるクラッシャー。「どうぞ。待ってたのよ、ありがとう。」
クルーから受け取った容器を開けるクラッシャー。「ジャック・R・クラッシャー※18少佐/U.S.S.スターゲイザー NCC-2893」と書かれている。
入っているのは制服らしい。
トロイ:「地球から届いたの?」
クラッシャー:「いいえ、ずっとしまっておいたジャックの形見なの。…変な物ばっかり。」 本を取り出す。
「…結婚してもキャリアを伸ばす方法※19?」
「彼のプレゼント。私がまだ医学生だった頃にくれたの、プロポーズの言葉の代わりよ。」
クラッシャーは、次にチップを手にした。
トロイ:「それは?」
クラッシャー:「ウェスリーへのメッセージ。…忘れてた、忘れようとしてたのかもね。」
「なぜ?」
「…ジャックはウェスリーが生まれてすぐこのメッセージを記録したの。大きくなったら見せるんだって、毎年作るって言ってたのに。これ一つきり※20。」
「…中身を見るのが怖いの?」
「いいえ? ただウェスリーのことが心配なの。初めて父親の死に直面するのよ。」
「ウェスリーにはたくさん疑問があるはずよ。あなたにも答えられないことが。父親からしか学べないこともあるわ?」

修理が進む機関室。
ロジェンコ:「いきなり学校に呼び出されたもんだから驚いた。ウォーフが怪我でもしたのかと心配でねえ。ところが何てこった。校長室の中には 14、5歳の上級生が 5人と、7歳のウォーフが座ってて、上級生はみんな顔中傷だらけ。」
笑うラフォージ。
ヘレナ:「校長先生も困った顔で、『お子さんはまだ小さいから大目に見ましょう』だって。」 また笑う 3人。
ウォーフ:「…あんまり少佐の御邪魔をしても悪いし。」
ラフォージ:「いいんだよ、今日は結構暇なんだ。」
ロジェンコ:「…ちょっと昔話をしただけだ。」
ヘレナ:「おしゃべりはこれぐらいにしましょう。」
「あ、わかったわかった。…昔話はおいといて。…新しいエンジンコアを見せてくれませんかね。エクセルシオール級の船じゃ、ワープエンジンの専門家だったんですよ。」
ラフォージ:「お見せしましょう、ご一緒にどうぞ?」
ヘレナ:「遠慮するわ、2人で行って。父さんと行くと長いからね?」
ロジェンコ:「うーん…」
「ウォーフ、植物園を案内してくれない?」
ウォーフ:「ラフォージ少佐、呼んでいただければ……父を、引き取りに行きます。」
ロジェンコ:「独りでも戻れるさ、第4ターボリフトは確か…あちらの方向だろう。船の見取り図は頭に入ってるんだ。」
歩いていくウォーフとヘレナ。
ラフォージ:「シータ・マトリックス構成装置※21の結晶処理速度は、エクセルシオール級の船の 10倍に高められています。」
ロジェンコ:「素晴らしい。…少佐。お時間があれば、少しお聞きしたいことがあるんですが。」
ラフォージ:「何ですか?」
「…息子のことで。」

夜のピカード家。
料理を運ぶマリー。「そういえばルイス※22が、あなたが落ち着いたら会いたいって。懐かしがってたわあ?」
ピカード:「海底を上げる研究をしてるんだろ?」
「相変わらずね? 研究チームまでできて、今じゃ主任研究員よ? いい気になるなって奥さんがたしなめても聞かないんですって。」 笑うマリー。
ロベール:「これ以上地球に大陸を作って、何になるのかわからないね。」
ピカード:「画期的な事業じゃないか。自分たちの星の未知の領域を開拓できるなんて素晴らしいよ。」
「残念ながら、開拓の必要性が理解できん。」 グラスにワインを注いでいくロベール。
マリー:「…市長さんがね、あなたのパレードをしたいって。」
皿を受け取るレネ。「ありがとう。」
ピカード:「パレード。」
マリー:「名誉市民にしたいって。」
「困る。とんでもないよ。」
ロベール:「もっと強く押せば首を縦に振るさ。おだててみろ。」
「うーん、お断りだ。家族とゆっくり過ごしに来たんだから。」
マリー:「市長には決める前に相談してって釘刺しといたわ?」
「ありがとう。」
ロベール:「さあ、乾杯※23。」
ピカード:「乾杯。」
マリー:「乾杯。」
レネ:「乾杯。」
ピカード:「…46年?」
ロベール:「…47。宇宙じゃどうせ人工の酒ばっかり飲んでるんだろ? お前の舌も…鈍ったな。情けない。」
「お言葉だが、合成アルコール※24には味覚を鋭敏にしてくれる作用があるんだ。」
「…うーん…美味いよ、マリー。」
マリー:「ありがとう。」
ピカード:「フランス一の名コックを奥さんにもって…幸せだな?」
ロベール:「ああ。…だが近頃じゃ料理という芸術も、テクノロジーのせいで消えつつある。」
マリー:「…フードディスペンサーを買う買わないで、ロベールとは何度も議論したのよ?」
ピカード:「…そういえば、親父も同じことでよく『議論』してた。」
ロベール:「うーん、親父には物事を見抜く目があった。大切なものが失われれば取り返しのつかないことになると、ちゃんと感じ取ってたんだ。」
「…別に何も失うわけじゃないさ、便利になるだけだ。」
「お前はそう言うが、俺に言わせりゃ…何でもかんでも便利にする必要がどこにある。」
マリー:「……この話をしてたら切りがないわ。」
「うん? …そうだな?」
レネ:「…学校の作文で宇宙船のことを書いたんだよ。」
マリー:「優秀賞もらったの。」
「すごくよく書けてるって、先生に褒められたんだ。」
ピカード:「大したもんだ。…そういえば、私も小さい頃宇宙船のことを書いた。」
「優秀賞もらった?」
「…覚えてない。」
ロベール:「謙遜してるつもりかもしれんが気に入らんな。お前はいつも最優秀賞だったろ?」
レネ:「…ねえ、まだそれもってる?」
ピカード:「…うん?」
「作文。」
「…なくしたよ。」
「僕は、取ってある。」
マリー:「じゃあ持ってきておじさんに読んで聞かせてあげれば?」
「うん。」 テーブルから離れるレネ。
ロベール:「…あの子をそそのかすなよ。…レネの奴、お前にあこがれて将来宇宙に出たいと言ってる。」
ピカード:「…そそのかしてなどいない。…兄さんは視野が狭いな、もっとあの子に広い世界を見せてやれよ。」
「レネは俺の息子だ、お前の子じゃない。俺のやり方で育てるさ。」


※17: Angel Falls

※18: Jack R. Crusher

※19: How to Advance Your Career Through Marriage

※20: これだとウェスリーが 1歳になる前に殉職したようにも取れますが、TNG第132話 "True-Q" 「TRUE Q」で 5歳の時だと言及されます。任務で忙しかったりして作れなかったんでしょうね。5歳なら、TNG第53話 "The Bonding" 「悲しみの幻影」でウェスリーがジャックの顔を忘れそうになる (つまり覚えている) というセリフにも矛盾しないでしょう

※21: theta-matrix compositer

※22: Louis

※23: 原語ではフランス語の気軽な挨拶 "Salut."。フランス語での乾杯は "(A votre) sante!" だそうです

※24: synthehol
TNG第44話 "Up the Long Ladder" 「新たなる息吹」など

ブドウ畑。
男性:「ああ…見事だ、まさにパラダイスだなあ。」
ピカード:「ロベールと、親父のな? 私には縁がない。」
笑う男性。「お前ほどブドウに無関心な奴も珍しいよ、全く。」
ピカード:「そんなことはないぞ、ルイス※25。興味はあった。…ワイン作りの家業も、誇りに思ってたよ。伝統を担う仕事だとね? ただ伝統に縛られたくなかっただけさ。」 一緒に歩いてきた。
ルイス:「ああ…お前は常に未来を見つめて、兄貴は過去を見つめてる。」
「…人生にはどっちも大事だ。…そういうお前はどうなんだ、転職して好きな仕事やってるらしいな。」
笑うルイス。「水耕栽培※26の研究なんて面白くないからなあ。」
ピカード:「だからやめとけって言ったのに。」
「だがお前の言うことを聞いてたら、ブルームの美人姉妹※27とも出会えなかったぞ?」
「姉さんに振られて?」
「妹と結婚。」
「…アトランティス・プロジェクト※28の主任研究員になったって?」
「200人もいる、主任の一人だよ。なのに女房は俺がリーダーだと勘違いしてる。」
「ああ、だが実に画期的なプロジェクトだなあ。定期報告は読ませてもらってるよ。」
「ほんとに?」
「うん。だがな? …一つ不思議で仕方ないんだが、お前確か泳げないんだろ?」 二人は笑った。「よく海の中に潜る気になったな。」
「…人間その気になれば恐怖も克服できるもんさ。」
「…真面目な話、地殻※29に影響を与えずにマントルの形成を加速するにはどういう方法を取るつもりなんだい?」
「驚いたなあ、詳しいじゃないか。うーん実のところわからないんだ、まだな。」
「うーん。以前、ドラマ4号星※30の地殻変動を抑制するのに共振調整装置を使って成功したことがある。その原理を応用したらどうかな…」
「お前には参るよ。政府は、このプロジェクトの新しいリーダーを捜してる。行き詰まった計画を引っ張ってくれる男をな? お前なら適任だよ、ジャン・リュック。…でも宇宙艦隊を辞めるわけがないだろうしなあ?」
「…ああ、それは無理な相談だ。」
「…そうだと思ったよ。じゃあ、研究結果を送るから検討して少しアドバイスをくれないか。それなら、構わないだろ? お前も興味があるようだし。」
「…わかった。」

テン・フォワードのカウンターにいるロジェンコ。「いい仲間をもったなあ、お前を大事にしてくれる。」
ヘレナ:「…本当にいい人たち。」
ウォーフ:「母さん、父さん。……お願いがあるんだ。もう少し…控えめに、過ごして欲しいんだ。」
「…ごめんなさい、ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったわね。」
ロジェンコ:「すまん、つい嬉しくてな。」
通信が入る。『ライカーからウォーフへ。』
ウォーフ:「はい副長。」
ライカー:『フェイザーの検査結果のことで話がある。』
「すぐ参ります。……何かあればガイナンに言ってくれれば大丈夫だから。」 出ていくウォーフ。
ロジェンコ夫妻は不安な表情を浮かべ、立ち上がった。
ロジェンコ:「ヘレナ、やっぱりあのことには触れない方が…」
ヘレナ:「このまま放っておけるわけないでしょう? 私の息子よ?」
ヘレナの肩に手を置くロジェンコ。
ガイナン※31:「…もうしばらくすると、クルーが集まってきます。」 窓のそばにいた。「みんな思い思いに窓から、星を眺めるんですよ? 見つめてるのは、自分の故郷の星。その星がどんなに遠くにあっても、懐かしさは…変わりません。ガイナンです。」 握手する。
ヘレナ:「まあ。」
「はじめまして。ウォーフの御両親ね?」
ロジェンコ:「セルゲイです、妻のヘレナ。」
「ようこそ、お座りになって? …一つお聞きしたいんですが。」
ヘレナ:「ええどうぞ。」
「どうして、プルーンジュース※32を飲ませなかったの? ウォーフに。」
笑うヘレナ。「どういうことなの?」
ガイナン:「ここに来て初めて飲んだって。もう大好物よ。」
「本当?」
ロジェンコ:「…小さい頃は地球人の食べ物は受け付けなかったのに。何でもクリンゴン流だった。」
「それで、ロケッグ・ミートパイ※33の作り方を習ったの。」
「…作ってもわしらには、食べられなかったがな。」 笑うロジェンコ。
「そうねえ? …思春期は苦労したわ?」
ガイナン:「でも乗り越えた。」
ロジェンコ:「いやあ、特別なことはしとらん。」
「そうかしら。ウォーフを見て? やっぱり彼は特別よ。」
ヘレナ:「…それが悩みでもあるのよ。お手本になるクリンゴンもいない環境で育ったでしょう?」
ロジェンコ:「クリンゴンの伝統や文化はウォーフが自力で身につけるしかなかった。…自分で道を切り開くしか。」
ガイナン:「…あなた方に勇気づけられる親は、多いでしょうね?」
ヘレナ:「ただ…私達には自分を理解しきれないって、あの子はそう思ってる。」
「半分はそう感じてるでしょうけど、そう悲観するほどじゃないわ。プルーンジュースを飲むと、本音が出るみたい。…窓から故郷の星を探すでしょ? その方向はクリンゴン星じゃなく、両親のいる地球。」
ヘレナはロジェンコの腕に手を置いた。微笑むガイナン。

コンソールに、大西洋に現れる大陸の図が出た。
近づくマリー。「ジャン・リュック。…どうかした?」
ピカード:「自分がまさかこんな気持ちになるとは。…ルイスのプロジェクトチームが、新しいリーダーを捜しているそうなんだ。……誘われて正直言って心が動いたよ。」
「…迷ってるの?」
「ああ。エンタープライズは、捨てられん。」
「あなたはもう十分やったじゃない。」
「いやそういうことじゃない。…疲れたか。」
「その話、ぜひ受けて欲しいわ? 時間さえかければ…ロベールとの間のわだかまりも消えて、仲直りできるわよ。」
笑うピカード。「全く、兄さんはいい奥さんをもらったよ。私を家族の一員のように扱ってくれて、姉さんには心から感謝している。」 呼び鈴が聞こえる。
マリー:「何バカなこと言ってるの、ジャン・リュック。あなたはうちの家族じゃない。」
ドアを開けるロベール。「お客さんだぞ。」
ルイス:「ロベール。」
「やあ。」
マリー:「いらっしゃい、ルイス。ワインを持ってくるわ? …お仕事の話?」
ロベール:「仕事?」
ピカード:「何の用だい、ルイス。」
ルイス:「例の研究の感想を聞こうと思って。」
「まだざっと見ただけで大したことは言えないが…2、3 提案したいことが…」
「さすがだねえ。お偉方との会議があるんだ、出席してくれよ。」
「会合?」
「まあ手始めに顔合わせってとこさ、明日だが。」
「顔合わせだと?」
「…実はな。お前がプロジェクトに興味あるって話をしたら、どうしてもリーダーに迎えたいって。」 話を聞いているロベール。
「私は受けると言った覚えはないぞ?」
「話を聞くぐらいならいいだろう?」
「……わかったよ、ルイス。…話だけは聞こう。」
「ありがとう、悪い話じゃないぞ。じゃあ、明日な。」 握手し、家を出ていくルイス。


※25: Louis
(デニス・クリーガン Dennis Creaghan) 姓は不明。声はオブライエン役の辻さんが兼任

※26: 吹き替えでは「エアコン」

※27: ブルーム姉妹 Bloom sisters

※28: Atlantis Project

※29: 正確には「構造プレート (tectonic plates)」

※30: Drema IV
TNG第41話 "Pen Pals" 「未知なるメッセージ」より

※31: Guinan
(ウーピー・ゴールドバーグ Whoopi Goldberg) 前話 "The Best of Both Worlds, Part II" 「浮遊機械都市ボーグ(後編)」に引き続き登場。声:東美江

※32: prune juice
TNG第63話 "Yesterday's Enterprise" 「亡霊戦艦エンタープライズ'C'」より

※33: ロケッグ・ブラッドパイ rokeg blood pie
TNG第34話 "A Matter of Honor" 「錯綜した美学」より

チップを手にしているクラッシャーは、医療室にいる。
ウェスリー:「そのメッセージって、どんな内容?」
クラッシャー:「私も知らないの。…あなたが生まれて間もなく作ったのよ。」
「どうして?」
「…生まれてきた子に、何か言いたいと思ったんでしょうね。…その気持ちを忘れないために、こんな形で。」
「見てないの?」
「ええ。18歳になったら見せるって言ってたわ? 渡しとくわね?」
ウェスリーはチップを握り締めた。

鏡でひげを見ていたウォーフは、ドアチャイムに応えた。「どうぞ。」
ロジェンコ夫妻が入る。
ロジェンコ:「邪魔じゃないかね。」
ウォーフ:「いや、別に。…もう部屋に戻って眠ったかと思ってた。」
ヘレナ:「ちょっと話がしたくてね?」
「座って? …最初、父さんたちが来ると聞いた時…素直に嬉しいとは思えなかった。……今は心から嬉しいと思う。」
「どうしても来たくて。」
ロジェンコ:「いても立ってもいられなかった。お前がクリンゴンの元老院から追放処分を受けたと聞いてから。」
「もう何がどうなってるのかわからなくって。」
「話さなくてもいい。お前は間違ったことはせん。」
「そうですとも。仕方ない事情があったんでしょ?」
ウォーフ:「…これは、俺一人の問題だ。父さんたちには関係ない。」
ロジェンコ:「ウォーフ、それは違うぞ?」
ヘレナ:「完全には理解してあげられないかもしれないけど…独りで苦しまないで。私達はいつでもお前の味方よ?」
「お前を誇りに思い…いつも愛してる。」
「息子ですもの。」
ウォーフは微笑み、手を差し出した。握るロジェンコとヘレナ。

ピカードはワインを飲んでいる。ロベールが鼻歌を唄いながら帰ってきた。
ロベール:「気をつけろ? 本場の酒は飲みつけていないんだろ。人工酒とは、違うからな? あれはいくら飲んでも酔っぱらわないそうじゃないか。」
ピカード:「ああ、そうだ。」
「こいつは、違うぞ。」
ため息をつくピカード。
ロベール:「丁度いい、前から一度見てみたいと思ってたんだ。」
ピカード:「…何が。」
「誉れ高き艦長が酔っぱらう様をさ。」
頭を抱えるピカード。
ロベール:「一つ聞いてもいいか。…お前の身に何が起こったんだ。」
ピカード:「…心配してくれてるのか?」
「いいや? 好奇心だ。…何があった。」
「…聞いたんだろ?」
「全部ではない。屈辱を受けたとは、聞いたがな。お前みたいな奴にはいい薬だ。一度は挫折ってもんを、味わってみた方がいい。」
ピカードは立ち上がった。追いかけるロベール。

外に出たピカード。
ロベール:「どうして逃げる。…お前らしくないじゃないか。」
ピカード:「言い争うのに疲れたんだ。」
「疲れた?」
「そうだよ!」
「そうか、エンタープライズにも疲れたか。宇宙艦隊の偉大なるピカード艦長もついに地に落ちたな。ルイスと共に、海の底に沈むのもよかろう。俺の知ってる弟とは別人だ。でもまお前にとっちゃ理想的なパターンだよな、あ? 小さな町から出世して、20年後に英雄として華々しく帰ってこられる。」
「英雄じゃない!」
「英雄さ、認めろ。…昔から一番じゃなきゃ気が済まんくせに。」
「そんなことはない!」
「パレードの件だって、謙遜などしおって!」
「違う! あれは…バカ騒ぎが嫌いなだけだ!」
「そうか。学校で生徒会長に立候補したのは誰だった※34。運動会でヒーローになって派手なガッツポーズをして見せなかったか?」
「バカバカしい、何を言ってる。子供の頃の話じゃないか。ねたんでたのか?」 立ち止まるピカード。
「そうさ、知らんだろ。ずっとお前がねたましかった、俺はお前の犠牲になってきたんだからな。」
「犠牲?!」
「出来のいい弟と比較されて、お前が注目を浴びるのも、親父が作った家の決まりをことごとく破るのもただ黙って見てるしかなかったんだ。」
「兄さんも破ればよかったんだ!」
「できるか。俺は長男だ、年上だからな。弟の面倒を見てやらなきゃならん。」
「バカを言うな、兄だからって威張り散らして!」
「そうかもしれんな。そうとも。確かにお前をいじめて、憂さを晴らして楽しんだこともあったよ。」
「…それなら、今やったらどうだ!」
「なぜ帰ってきた、ジャン・リュック。帰ってくれば俺がお前の面倒を見てやるとでも思ったのか。」
「…黙れ!」 ピカードはロベールを殴った。
樽につまづくロベール。二人は取っ組み合う。
ロベールは泥の中に押し倒す。倒れるブドウの木。
泥まみれになり、倒れた二人。突然笑い出した。
泥をぶつけ合う。
ピカード:「わざとケンカをふっかけたんだな…。」
ロベール:「どうだ、スッキリしただろ。お前ときたら、えらくピリピリして見ちゃいられなかったぜ。」
ピカードの笑い声は、涙声に変わっていく。「兄さんには、わからない。…わからないよ。……て、抵抗できなかったんだ。……意のままに動かされて、仲間を殺すように仕向けられ…どうすることもできなかった。……何とかして…何とかして止めようとしたのに。……私は弱…弱かった。…情けない男だ! …奴らに負けて言いなりになった。…私さえもっと強く…。」
ロベール:「結局…何だかんだ言っても、お前もしょせん人間だってことさ。」
泣き続けるピカード。
ロベール:「その傷はこれからずーっとしょっていかなきゃならんぞ? ずーっとな。…傷を抱えて生きるんだ。…道は、二つに一つ。選べよ、ルイスと海に潜るか? …エンタープライズで空を飛ぶか?」
互いの手を取り、立ち上がる二人。
ピカード:「…兄さん…自分がなぜ帰ってきたかわかったよ。…兄さんに助けて欲しかったんだ。」
ロベール:「…言っとくが、俺はお前が嫌いなんだからな。」
笑う二人。


※34: 原語では卒業生総代とも言っています

※35が聞こえる。家の中まで続く、汚い足跡。
マリーが帰ってきた。「…何なの、これ。」
後を追うマリー。ピカードとロベールは椅子に座り、歌いながらワインを飲んでいる。
マリー:「一体これどういうこと?!」
布を身にまとったロベール。「…ああ、そのこれはだなマリー…」
ピカード:「…全部私が悪いんだ、マリー。」
「実はその俺が畑で転んで、そしたらこいつも…」
「ああそうそう、二人で一緒に転んじゃったんだよ、一緒に…」
「抱き起こそうとしたら今度は二人一緒に…ああそうそうそう。」
ロベールの額についた泥に触れるマリー。「あなたたちケンカしたの?」
ロベール:「…ケンカ? まさかするわけない…」
ピカード:「いやあ、いやあ!」
マリー:「いい歳してもう。お父様がこんな格好見たら何て言うかしらね。」
「…間違いなく夕食は抜きだなあ。」
「…あなたまで一緒になってどうしちゃったの?」
「ああ…どうかしてたんだ。ハ、目が覚めた。ルイスの、仕事の話は断るよ。会議もキャンセルしてくれるよう頼む。もう行かねば。」
「船に戻るの?」
「ああ。そろそろ地球を離れる時間だ。…自分の場所に戻るよ。……もしまた心が揺れたら、帰ってくる。」
マリーはうなずいた。

ウェスリーは少し考えた後、パネルに触れた。「コンピューター。プログラム※36をロードしろ。」
コンピューター※37:『ホロデッキ、プログラム準備完了。』
ホロデッキの中は、本来の格子状の模様が見える。
だが中央に、一人の男性が立っていた。
ウェスリー:「プログラム実行。」
ジャック・クラッシャー※38は話し出した。「やあウェスリー。これは君が、生後 10週間の時の記録だ。…君に今日の、私の姿を見せたかった。君がこの記録を見る頃、私は存在しないかも。もし生きていれば、年を重ねた一人の父親がいる。これを記録したのは、君がこの世に生まれた日の父親を見て欲しかったからだ。揺りかごで眠る君を見ていて、父親として何もわからない自分に気づいた。この先親としていろいろ、間違うこともあるだろうが許して欲しい。私は留守がちだが、そばにいなくても健やかに育っておくれ。制服を着てるのはそういうわけだ。私にとって、宇宙艦隊がどんなに大切か上手く説明できない。いつか大きくなれば、君にもわかるだろう。同じ道を、目指してくれるかもしれないな?」
ウェスリーは自分の制服を見て微笑んだ。
ジャック:「それとも、ママのように医者を目指すかな? 赤ん坊というのは、すごい存在だ。…君の小さな顔の中に、私の愛する全ての人が見える。ビヴァリーや、私の両親や…家族の顔が。自分自身の姿もだ。…子供をもつとは、こういうことか。言葉では上手く言えないが、強い絆が…ここにある。紛れもなく…私は君の一部なんだよ?」 笑う。「さあ、少しはわかってもらえたかな。最初だから上手くないけど、次に期待しててくれ。…愛してるよ、ウェスリー。」
ウェスリーは近づき、ジャックに手を伸ばした。だが映像は消える。
ウェスリー:「さよなら、パパ。」

ラベール。
制服に戻ったピカード。
マリー:「またいつでも帰ってきてね? …いってらっしゃい。元気でね?」
ピカードはマリーとキスを交わし、レネと握手する。「元気でな、おじさん?」
レネ:「またね。」 荷物を渡す。「僕も、大きくなったら宇宙船の艦長になるよ。」
「うーん…まだたっぷり時間はある。別の夢が見つかるかもしれんぞう?」
首を振るレネ。
ロベール:「…ジャン・リュック。47年ものだ、持ってけ。一度に飲むんじゃないぞ? 酔っぱらいには、艦長は務まらんからな※39。」
二人はキスし、抱き合った。その様子を見ているマリーとレネ。
歩いていくピカード。

エンタープライズ。
廊下を歩くヘレナ。「欲しい物があったら地球から送るわよ?」
ウォーフ:「…いや。…じゃあ、もしできればロケッグ・ミートパイを。」
「うーん、久しぶりだわ? 作り方思い出さなきゃ。」 ロジェンコと笑う。
ピカードが転送室から出てきた。
ロジェンコ:「おお。」
ウォーフ:「ああ、艦長。おかえりなさい。」
ピカード:「やあ大尉※3。」
「ご紹介します、私の父と母です。」
握手するピカード。「ああ、はじめまして。ようこそ。」
ロジェンコ:「…素晴らしい船をおもちだ。」
「存分に、見られましたか?」
「いやあ、実は整備中で見られない部分がいくつかありまして…」
ヘレナ:「時間よ、さあ失礼します。」
「ああそうか。わかった、押すな。」
「ほーら。」
「ああ艦長、私はこの船の設計図を…」
ドアが閉まった。笑うピカード。

テーブルについているマリー。「あの子まーだ外よう?」
ロベール:「うーん。」
「宇宙船に乗って冒険する夢でも見てるのね。」
マリーの肩を抱くロベール。
マリー:「呼んでこなきゃ。」
ロベール:「いいさ。夢を見させておこう。」

レネは木にもたれかかり、星空※40を見ていた。流れ星が落ちる。


※35: フランス民謡の「ブロンド娘のそばで (Aupres de ma blonde)」。ケンカする前にロベールが歌っていたのも同じ歌。吹き替えでは「ボン、ボン…」とほとんど鼻歌にしか聞こえません

※36: 原語では「クラッシャー1」とプログラム名も呼称

※37: 声はトロイ役の高島さんが兼任

※38: ジャック・R・クラッシャー Jack R. Crusher
(ダグ・ワート Doug Wert) 初登場。階級章は大尉ですが、形見を入れていた箱 (注釈※18) では少佐となっていました。制服は古い ST2型で、記章 (コミュニケーター) は現在の TNG型です。2345年に当たるエンタープライズ-C のクルーは古い記章だったので (TNG第63話 "Yesterday's Enterprise" 「亡霊戦艦エンタープライズ'C'」)、ウェスリーが生まれた 2349年までの間に変わったことになります。とはいえ、製作/脚本のロナルド・ムーアは単なるミスだと発言しています。ちなみにウェスリーがホロデッキに入った直後 (遠くに見えている時) はコミュニケーターが見えないのに、その後はついています。声はラフォージ役の星野さんが兼任

※39: このピカード家が作っているワイン銘柄は言及されていませんが、シャトー・ピカード (Chateau Picard)。この時のボトルは TNG第80話 "Legacy" 「革命戦士イシャーラ・ヤー」、第89話 "First Contact" 「ファースト・コンタクト」で登場。シャトー・ピカードは映画第10作 "Star Trek Nemesis" 「ネメシス/S.T.X」でも

※40: 空にはオリオン座が見えます。ブドウの状況などからして季節は夏、オリオン座が冬の星座なので変だという指摘もあります。もっとも宇宙暦では 1月に相当したりしますので、劇中で季節を考えるのはナンセンスという気もします

・感想など
ボーグ前後編の実質的な完結作。全話を通してブリッジが全く登場しないという唯一のエピソードで、初放送の視聴率も第4シーズン中最低 (それでも 9.6%もありますが) でした。とはいえ「スタートレック」というタイトルさえ超越した人間ドラマは、極めて人気があります。エピソードガイド作成上の裏話を明かすと、実際の人気は「戦士の休息」→「浮遊機械都市ボーグ(前)」→「無限の大宇宙」→(5話ほど空いて)「浮遊機械都市ボーグ(後)」という順位でした (ボーグ関連が連続していたので、放送順に手がけています)。
恥ずかしながら (第3シーズン・フィナーレを見逃した) 初見当時、あまり面白いとは思いませんでした。ですが改めて観ると、これぞ ST、これぞムーア脚本という印象を受けます。ピカード兄弟と同じかそれ以上に、ウォーフと養父母のシーンが良かったですね。もう一つのウェスリーと亡父の部分は、エンドロールに名前のある Susanne Lambdin の草稿が基になっています。ロベールと声優も有名なレネは、映画 "Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」で悲劇的な運命を迎えることに…。
製作順では第4シーズン 4話目になります。船が中心でもない直接の続編を描くことはバーマンになかなか受け入れられず、科学的なストーリーを盛り込む案もありました。その一つは "Remember Me" 「恐怖のワープ・バブル」へと進化しています。


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