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TOS エピソードガイド
第16話「タロス星の幻怪人」(後)
The Menagerie, Part II

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・イントロダクション
カーク:『個人日誌、宇宙暦 3013.1※1。過去 24時間に起こった出来事が信じられない。ミスター・スポックの真意は、どこにあるのだろうか。』
審理室。
メンデス:「非合法的手段で当宇宙船を指揮した罪は認めるかね。」
スポック:「認めます。」
「当宇宙船のコンピューターに細工し、タロス4番星にコースをセットした罪は認めるか。」
「認めます。」
「パイク大佐をタロス4番星に運ぼうとしている罪は認めるかね?」
「認めます。」
カーク:『なぜだ。スポックはなぜ、エンタープライズの前船長を、禁断の惑星タロス4番星へ連れて行こうとするのか。身動き一つできない生きた屍のようなパイク大佐を、なぜ禁じられた世界へ連れて行くのだろう。スポックの回答はただ一つ。モニタースクリーンに映し出される映像である。そこには、13年前のエンタープライズ※2と、パイク大佐と、スポック自身が映し出されている。エンタープライズは、タロス4番星を訪れた唯一の宇宙船であり、その時の模様が克明にスクリーンに再現されているのだ。エンタープライズは、十数年前に行方不明になった宇宙船の遭難信号をキャッチし、生存者の救出にタロス4番星へ向かったのだが、これは全て罠であった。現地で発見した生存者たちもキャンプも、全ては幻影だったのだ。タロスに住む謎の生物は、思うがままの幻影を作り出す能力をもっていたのだ。そしてパイク船長は、ついに囚われの身となってしまった。』
カーク:「じゃあ、いま見ていたあの映像は。」
スポック:「タロスから送られたものです。」
メンデス:「タロス4番星との接触に関する命令は君も知っているはずだ。君は自ら死刑になる結果を招いた。」
カーク:「君があのスポックか。※3気は確かか。
スポック:「船長、お願いです。止めないで下さい。最後までやらせて下さい。パイク大佐の命が、全てがかかっています。タロスからの映像を最後まで見て下さい。」


※1: 吹き替えでは「0401.8711」。また、「航星日誌」になっています。この導入部は最初の方だけ新たな映像ですが、次は前編の映像にカークのナレーションを被せ、締めくくりは映像・音声共に前編のままです。TNG 以降の後編冒頭にある「あらすじ」とは異なっていますね

※2: 吹き替えでは「エンタープライズ

※3: TOS の国内オンエア分では、カット部分が存在しています。完全版ビデオ (第1シーズンの一部) および DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります (スーパーチャンネル版との比較)。LD では基本的に、その部分だけ字幕収録です。ここの「君があのスポックか」の部分は、前編ではまとめてカットされています

・本編
カーク:『ミスター・スポックを裁く軍法会議は引き続き行われ※4、タロス4番星からは依然として映像が送信されてくる。』
審理室。
メンデス、カーク、パイク、そしてスポックの 4人が集まる。
メンデス:「タロス4番星との接触は厳重に禁止されてる。例外は認められない。」
スポック:「認めざるをえません、残念ですが。…船のスクリーンは既に彼らがコントロールしています。これでおわかりですか?」
パイク:「(イエス)」
「ご覧のように、パイク船長は意識を失い、タロス星人の捕虜となりました。」 映像を再生させるスポック。
パイクがベッドの上で目覚めた。

立ち上がるパイク。先の方まで洞窟の道が続いているが、目の前には見えない壁がある。
体当たりしても、低い音が響くだけだ。
エレベーターからタロス人たちがやってきた。それぞれ別の区画にも、閉じ込められている大きな動物や植物が見える。
パイク:「……おい聞こえるか。…私はクリストファー・パイクだ。この銀河系の反対側にある星※5の宇宙船、エンタープライズの船長だ。…我々は平和を望む。私の言うことがわかるか?」
タロス人の声が聞こえるが、口は動いていない。『長官。この標本の知性は、驚くほど限られているようですね。』
長官:『我々の罠に簡単にかかってここへ来たのですからそれは当然考えられます。あの生存者やキャンプ地は全て我々が与えた幻影だったことを、今頃になって気づき始めていますね。』
パイク:「なぜお前たちの話が聞こえるんだ。」
『我々には思考を伝達する能力があります。』
「テレパシーの一種だな。この方が手間が省けて結構だ。警告しておくが、私がお前たちに誘拐されたことが部下にわかったら…」
『これは恐怖に対する非常に原始的な反応です。…標本は自分の力と宇宙船の武力を誇示しようとしていますね。やがて…焦りから、自分の体力に訴えたくなり透明スクリーンに身体を投げかけてくるでしょう。』
行動を読まれてやめようとしたが、何度もぶつかるパイク。「…中に入れられたらお前たちもこうするに決まってる! 檻には必ず出口がある、見つけるぞ!」
長官:『ほかの惑星から来た標本よりも、かなりの順応性があるようですね。すぐに実験を始めましょう。』
パイクはどうすることもできない。

スクリーンに映し出される惑星。
スポック:「この星の住民は、地底深くに住んでいるようです。食料などの生産も地下で行っているのでしょう。地表には動植物の存在はほとんど見受けられず、生物が生息するには過酷な環境と思われます。」 地表の映像に切り替わる。
ナンバー・ワン:「生存者がいるように見えたのは幻だったの?」 会議室には J・M・コルト秘書※6も立っている。
「その通り、幻覚です。この星の住人が仕掛けたものだ。」
ボイス:「まんまとだまされた。我々が見たいと望むものを見せられたわけだ。力強く勇敢に生き抜いた人間たち。実によくできた幻だ、キャンプの建物も身にまとったボロ切れも。」
ため息をつくナンバー・ワン。
ボイス:「これで、彼らが危険な存在だということははっきりした。我々の心を読み取り、その思考や記憶、体験を元に幻影を作り上げることができる。人の心に潜んだ欲望からも、幻を作り出せるのだ。それもあまりにもリアルで、とても見過ごすことのできない幻をねえ。」
タイラー:「船長を放ってはおけない。助けないと。」
スポック:「下手に彼らを刺激すると、恐るべき超能力の餌食になりかねん。こんな船など、ハエのように潰されてしまうぞ。」
「レーザー※7ガンでは歯が立たなかったけど、船の全エネルギーを集めて照射すれば、山をも砕けるはずだ。」
ナンバー・ワン:「…やりましょう。船のエネルギー回路を全て、レーザー砲に接続するのよ。」
解散する一同。

パイクが壁を探っているのが見える。
タロス人:『あの動物の思考を読み取り、調査しました。長官、記憶力が非常に優れています。』
長官:『…最近身の危険にさらされ命を守るために戦ったようです。ならば今度は、もっと守り甲斐がある対象を与えてみましょう。』


パイクの周りの景色が、突如変わった。ジャケットを着ている。
そこは屋外で、巨大な建造物が建っていた。空には惑星か、大きな衛星が見える。
女性の声。「いらっしゃい、早く隠れなきゃ駄目。さあ、早く。急いで。あの中に武器や食べ物があるかもしれないわ。」 駆け寄ってきた。
パイク:「ライジェル7番星※8だ。」
女性はドレスを着たヴィーナだった。「ねえ、早く隠れないと危ないわ。」
パイク:「今まで動物園の檻のようなところにいたのに。急にどうしたんだ。」
「早く!」
「奴らは私の心を探って、思い出の場面を作り出したのか。」
奇妙な咆哮が聞こえた。
ヴィーナ:「ほら来たわ!」
パイク:「2週間前に体験したことだ。」
「早く!」
「君はいなかったが。」

ヴィーナを追いかけるパイクが映っている。
スポック:「パイク船長の予想通り船長は檻の中にいて、これは第2 の幻影だったんです。だが傍観はできません。」
カーク:「脳をコントロールされていたのか。」
「彼らは思い通りに場所や、時間や、事件を作り出すことができます。そこに投げ込まれた船長は、現実としてそれを体験しなければなりません。」
パイクはヴィーナに話している。『髪も長く、衣装も変わったが君に違いない。ヴィーナと呼ばれていたあの女だ。』 また動物のような声。『君も幻影かもしれんがなぜまた出てきた。なぜほかの女を作り出さない。』

すると毛皮をまとった戦士、ケイラー※9が現れた。斧と盾を持っている。
ヴィーナ:「早く、見つからないうちに不意を突くのよ。」
パイク:「でもこれは夢なんだ。」
ケイラーは扉を壊し、中を探っている。
ヴィーナ:「殺さなきゃ駄目! …前にここで殺したように。」
パイク:「こんなバカげた罠にかかるもんか。餌に釣られて演技する動物ではない!」
「どう思おうと勝手だけど、これは現実と同じ意味をもってるのよ? 自分の身体で現実に感じとらなければならないの。」
大きな音が響く。ケイラーは戻ってきた。
パイクはヴィーナを押しやり、落ちていた棍棒を手にした。
襲いかかってくるケイラー。パイクも盾を取り、相手をする。
棍棒は折られてしまった。
剣も歯が立たず、突き落とされるパイク。
ケイラーはヴィーナに近づく。叫ぶヴィーナ。
パイクはその隙に剣を手にし、ケイラーの背中目がけて投げた。
ヴィーナも必死に殴る。パイクの方へ飛び降りてくるケイラー。
だが先にパイクは地面に大きな刃を突き立てていた。ケイラーはその上に倒れ込む。
ケイラーは死んだ。目を背けるヴィーナ。

再び場所が変わり、ヴィーナの服装なども元に戻った。「…終わったわ。」
パイクに抱きつくヴィーナだが、タロス人に気づいてすぐに離れた。

それを見ていたタロス人は、エレベーターへ去っていく。
映像が切られた。パイクはうなだれている。
メンデス:「誰であれ、なぜ映像を消した。」
スポック:「パイク大佐の疲れを考慮してでしょう。後ほど、また送ってきます。」
カーク:「彼らは大佐をかばっているのかね。」
目を覚ますパイク。
スポック:「いえ、パイク大佐に戻って欲しいんです。」
メンデス:「理由を説明したまえ。」
「焦らずにお待ちになれば、やがて答えが。」
「自分が裁かれていることを忘れたか。全ての質問に素直に答えたまえ。」
「いま、答えを申し上げても信じていただけないでしょう。残念ですが、残りを見ていただくほかありません。」


※4: 原語では「非公開審議で開かれ」と言っており、そのため保安部員を除くと 4人だけになっています

※5: 設定が固まっていないためですが、現在の感覚だと、タロス星群はガンマまたはデルタ宇宙域に位置するイメージになりますね

※6: J・M・コルト秘書 (下士官) Yeoman J.M. Colt
(ローレル・グッドウィン Laurel Goodwin) 名前は言及されていません。声:丸山祐子、DVD・完全版ビデオ補完では三浦智子

※7: laser
前編で既に使われていますが、フェイザーではありません。TOS第2話 "Where No Man Has Gone Before" 「光るめだま」の 2265年までに切り替わったと思われ、TNG第109話 "A Matter of Time" 「26世紀のタイム・トラベラー」によると 22世紀までに (2200年) フェイザーはできていません。ENT (2151年〜) ではフェイザーの先祖的なものとしてフェイズ銃が使われています

※8: Rigel VII
初登場 (前編の脚注※41 参照)。背景は後に TOS第76話 "Requiem for Methuselah" 「6200歳の恋」でのフリントの城として再利用

※9: Kaylar
(マイク・デューガン Mike Dugan) 名前は訳出されていません。声優なし

カーク:『個人日誌、宇宙暦 3013.2※10。ミスター・スポックを裁く軍法会議は続行され、かつてない不思議な証拠が提出された。あと一時間の距離に迫った謎の惑星タロス4番星から、パイク大佐の物語が送信されてきたのだ。』
審理室。
集まるカークたち。パイクの車椅子も保安部員によって運ばれる。
再びタロス人が去るところから再生される。
パイク:『何しに来たんだ。』
ヴィーナ:『もてなしに。』
『…本物か、君は。』
『それはあなた次第よ…』
『駄目だ、それは答えになっていない。君は会ったことも想像したこともない女だ。』

ヴィーナ:「じゃあ多分忘れた夢から作られた女じゃない?」
パイク:「奴らと同じ、金属のドレスを着た夢の女か?」
「お望みに従って何でも着るわよ。何にでもなってみせるわ。」
「標本の行動を観察するためか。私の反応を研究したいんだろ。」
「あなたには何か、子供の頃から望んでいた一生の夢のようなものはないの?」
「ただ私を観察するだけではなくて奴らは…共に感じるのか。」
「どんな夢でも、すぐに叶えられるのよ? 私はどんな女にでも、あなたの望み通りの女になってみせるわ。あなたが欲しいと思うものは何でも手に入るのよ。私と、楽しみましょ。」
「楽しみたいのならそうだなあ…奴らのことを話せ。…心を見抜かれないようにする方法はあるのか。奴らのコントロールから逃れる方法は。…なぜそんな顔をする。何か方法があるのか。」
「…あなたってバカよ。」
「どうせ君は幻影なんだから、こんな話をしても何の意味もないがねえ。」

コミュニケーターを使うナンバー・ワン。「全回路接続完了。」
スポック:『退避して下さい。』
「全員待避。」 みなゴーグルをつけ、その場を離れる。
『10、9、8、7、6、5、4、3、2、1!』
パワーが充填され、レーザー砲が火を吹いた。
継続して爆発的なエネルギーが照射される。
ナンバー・ワン:「エネルギーを最大レベルに上げて!」
真っ赤になる岩山のドア。
ナンバー・ワン:「効果がないわ、もっと上げて。」
スポック:『回路が過熱してきました。止めないと危険です!』
「…照射中止!」
ドアの色も、すぐに元に戻った。
ナンバー・ワン:「普通の岩なら一瞬のうちに飛び散るのに。」
ボイス:「恐ろしい岩だ。やはり私の予測が現実になった。彼らの計り知れない力に、私達は見るものやすることに、確信がもてない。」

檻で話すヴィーナ。「いいわ。私に教えられることがあれば、教えてあげるわよ。」
パイク:「奴らはどの程度まで私をコントロールできる。」
「それを言えば、私と一緒にあなたの素晴らしい夢の中で楽しく暮らす?」
「…そうだな。」
「あなたが絶対嫌だと思うことは強制できないの。」
「でも幻影を使って罠をかけてくる。」
「それでも協力的にならなかったら罰を与えるの。やがてわかるでしょうけど。」
「…奴らは地上に住んだことがないのか? …なぜ地下へ潜ったんだ。」
「戦争のためよ、何十万年も昔の。」
「だから地上はあんなに荒れてるのか。」
「最近までは、地上では生物は住めなかったの。」
「仕方なく地下へ潜ったタロス星人は、もっぱら精神力を発展させることに力を注いだわけか。」
「そしてその結果に気づいた時は、もう遅かったのよ。夢が現実より重要な意味をもつようになってくると、自分で何かを作り出すことを忘れてしまうのね。先祖が残してくれた機械の直し方までわからなくなってしまうわ。ただ座って、夢の人生ばかりに生きながら…思考の世界に取り残されてしまうの。」
「私のような標本の心をもてあそびながらか?」
「彼らにとっては御芝居を観るより楽しいのよ、幻影を作ってあなたの反応や感情を自分のものとして味わうのが。だから彼らは、この銀河系のほとんど全てのものの標本を手に入れて、子供を産ませて何千年も飼ってるのよ。」
「…というとそれぞれの標本は 2匹ずついるわけだな?」
「…やめて。」
「私の相手をする人間の女も必要なわけだがどこで手に入れる。」 タロス人長官がやってきた。
「約束はどうしたの、あなたの質問に答えたら…」
「君が相手では約束など何の意味もない。だって君は幻影なんだろ。」
「……私は本物よ? この中身はあなたと同じ本物の人間だわ。…私達は丁度、アダムとイヴよ。だから……やめて! できる限りのことはしてるのよ!」 苦しむヴィーナ。
そのまま消えてしまった。

パイクはタロス人を見た。戻っていく。
メンデス:「地球の女か。…じゃあ君と彼女はつがいとして。」
パイク:「(イエス)」
カーク:「なぜだ。動物園の標本を増やすためにか。」
スポック:「それだけではありません。」
また壁を探るパイクが映る。
音がした。壁の一部が開いたようだが、手で開けることはできない。
そばに一本の瓶が落ちていた。

タロス人長官が来ていた。「その瓶には栄養の豊富な複合タンパク質が入っています。」 今度は口を使って話しているが、声は不思議に響いている。
パイク:「動物園の飼育係としては栄養が気になるか。」
「もし型や色が食欲をそそらないのなら、望み通りの食べ物の型に変えてあげます。」
「もし飢え死にしたいと言ったら…」
「無駄です。非協力的な場合は当然の結果として罰を与えます。」
パイクは苦しみだした。
辺り一面が炎に包まれている。熱湯が手にかかる。
元の檻に戻った。
タロス人:「反抗すれば罰を受けるのは当然です。※11今度は栄養素を飲みますね?」
パイク:「だったら、飲みたいようにコントロールしたらどうなんだ。そこまではできないんだろ。お前たちの力にも限界があるんだ。」
「私達の意向を無視し、さらに反抗を続けるなら、さらに不愉快なことが起こるでしょう。」
口にするパイク。うなずくタロス人。
パイクは怒りの形相を浮かべ、タロス人に向かっていく。
後ずさりするタロス人。壁を叩く音だけが響く。
パイク:「どうしたんだその顔は。」
タロス人:「問題の女性ですが。」
「どうしたんだ? 私の心を読めなかったな…」
「あなたの推測通り、地球の宇宙船がここに墜落しましたが生存者はわずかに一人でした。」
「話を逸らせないで欲しいな。さっき私はお前を殺すことしか考えなかったんだぞ?」
「その生存者の傷を治した結果、地球の動物に興味をもったのです。」
「憎悪とか殺意とかいった原始的な考えは読めないんだな…」
「そして今度は男性が欲しくなりました。」
「これじゃいつまで経っても話は平行線だ。断っておくがいくら彼女を魅力的に見せても私は誘いには乗らんぞ。」
「人間を存続させるために相手が必要です。」
「私が彼女を好きになって受け入れたら全ては予定通りか。」
「標本が幸せな新生活を送ることを望みます。」
「ずいぶん聞こえがいいなあ。本当は私達に何を望んでる。人間という標本を永久に存続させるための行為か。単に子孫を作らせるだけではなく、人間の家族や社会を作らせて飼い慣らしたいんだろ。」
「女性は受け入れる準備が整っています。」 戻っていくタロス人。
「お前たちが強制しているんだ! …協力しないのは私なんだから私を罰したらどうだ。」
「まず、本能的に自己を守ろうとし、次に同情か。素晴らしい。」 タロス人はエレベーターに乗った。

場所が変わった。パイクは制服を着ていない。
ヴィーナ:「コーヒーでもいかが?」 白い服になっている。
そこは森の中※12だった。
ヴィーナはピクニックの準備をしている。「あら、ポットを倉に置いたままだわ。」
パイクはつながれている馬に近づいた。鳴く馬。
パイク:「…タンゴ※13! おい、どうしてた。ああ…好物の砂糖がないな。」 ポケットに入っていた。「何でもお見通しってわけか?」
ヴィーナ:「…やっぱり故郷はいい?」
「奴らもいいところを狙う。故郷か。君に協力さえすればもっと素晴らしいことがあるのか。」
「何て穏やかな日なんでしょう、素敵だわ。…その気になれば、いつまでもここにいられるのよ?」
「これは本物じゃない、幻影だ! 私達は動物園の檻にいるんだぞ。」
「違うわ!」
「君がそういう態度を取るなら 2人とも助からんぞ。奴らが幻影を使うことは君が自分で話したじゃないか。先祖が残した機械の直し方さえ忘れたと言った。私達人間を、奴隷に使うつもりなんだ。」
「やめて! …怒らせたらひどい目に遭わされるわ。」
「さっき檻にいた時、奴らにも私の心を読めない瞬間があったようだった。憎悪とか殺意とかいった、そういう原始的な感情は奴らの読心力を妨害するのか?」
「…そうよ。あの人たちは、原始的な感情があると見通せないの。でもいつまでもそんな感情もってるわけにはいかないわ。私もやったの。でもあの人たちはあきらめないでしつこく追いかけて、罠をかけたり苦しめたりして。…私とうとう負けたわ。征服されたの。…そんな人間は大っ嫌いでしょ。」
「いやあ、そうは言った覚えはない。それどころか同情するよ。」
「…同情では駄目なの。わからないの? 彼らは、私の心を読み取ってしまったのよ。私の理想の男性像も彼らにはわかってるの。…だからあなたを選んだの。私はあなたを一目見て…理想の男性を愛すなと言っても無理よ。」
「私も惹かれてることは奴らにもわかってるはずだ。君を一目見た時に、私の胸は高鳴った。」

その様子を見ているタロス人たち。
パイク:『可愛い。野獣のように新鮮で。』
ヴィーナ:『どうして効果がないのかやっとわかってきたわ。故郷へ帰ったり、さっきはライジェル星で戦ったり、みんな既に経験したことよ。人間の一番大きな望み、自分にはできないことを夢見ることじゃないかしら。そうだわ、船長って言うのはいつも礼儀正しく、上品で任務に忠実でなければならない御仕事でしょ? そういったことを全て忘れて、自由になってみない?』
手をかざす長官。

またパイクがいる場所が変わった。派手な服装だ。
※14がいる。にやついた宇宙艦隊士官※15も。
音楽が演奏される中、全身が緑色の女性が踊っていた。肌も露わな服だ。
士官:「なかなかいいところを御存知ですな。」
踊っているのは、ヴィーナだった。
パイク:「ヴィーナ!」

ヴィーナの映像を見るカーク。「あれもヴィーナか。オリオンの奴隷女※16になってるな。」
パイク:「(イエス)」
メンデス:「オリオンの女はしなやかで動物的だ。陥落しない男はいないと言われている。」
目を見張るパイクが映る。


※10: 吹き替えでは「0401.8712」。また、「航星日誌」になっています

※11: 原語では「あなたが子供の頃に聞いた、童話の一場面です」

※12: 後ろに見える都市は、後に TOS第13話 "The Conscience of the King" 「殺人鬼コドス」での惑星 Q の背景都市として再利用

※13: Tango
吹き替えでは「タン

※14: 地球の商人 Earth trader
(ジョゼフ・メル Joseph Mell 1977年8月に死去)

※15: 宇宙士官 (オリオン) Space officer (Orion)
(ロバート・フィリップス Robert Philips) クレジットでは "Starfleet officer" ではありません。この人物は明らかに宇宙艦隊のマークがついた服を着ていますが、幻影とはいえ何してるんでしょう…

※16: Orion slave girl
初登場。前編では (Orion) animal women とも言っていました (前編の脚注※47 参照)。初期の撮影テストではナンバー・ワン/チャペル役のメイジェル・バレットが全身緑色のメイクを施されており、写真も残っています。DVD・完全版ビデオでは「オリオンの踊り子」に修正

オリオン人となったヴィーナの映像は続く。
『航星日誌、補足。※17スクリーンには依然として過去の不思議な映像が映し出されている。人間を繁殖させて奴隷社会を作ろうと企むタロス星人は、地球の女を武器にパイク大佐を誘惑しようとしているのだ。次第に積極的になるこの誘惑に、大佐の決意も揺らぎ始めた。』

パイクを見る士官。「無限の宇宙には快楽が満ちあふれ、これはささやかな一つのサンプルに過ぎない。」
男:「あの女のためなら魂を売ってもいい。」
目を逸らそうとするパイク。
その場を離れた。扉の奥には洞窟が広がっている。
ふと音楽が消えた。扉も消え、ただの岩壁になっている。
仕方なく洞窟を進む。
たいまつを持ったヴィーナが近づいてきた。

エンタープライズに戻ったナンバー・ワン。「全員、状況はわかりましたね。※18私達はタロス星人の地底社会の中に転送してもらいます。」
スポック:「もし私達の観察も全て幻影だとしたら、硬い岩の中に転送されてしまう危険が考えられます。」
「志願を取り消したい人は今ならまだ間に合います。」
声を上げるクルーは誰もいない。転送台に乗る。
転送機を操作するピトケアンたち。
転送されていく。だが消えていくのはナンバー・ワンとコルトだけだ。
手を広げるスポック。※19「どうした!」
慌てて操作するピトケアン。男性クルーだけは残ったままだ。

檻の中に実体化する 2人。
ナンバー・ワン:「船長! 船長。」
パイクに抱きついていたが、宙に叫ぶヴィーナ。「ダメ、邪魔しないでちょうだい!」
ナンバー・ワン:「あの、上陸班は 6名だったのに、私達女だけが転送されたの?」
ヴィーナ:「ズルいわ、部下を呼んだりして。」
パイクはコルトのジャケットを開け、レーザー銃を取り出した。
ナンバー・ワンのも確認する。「役に立たん。」
ナンバー・ワン:「フルチャージされてるはずなのに。」 コミュニケーターを使う。「駄目だわ、連絡もできない。どうしたんでしょう。」
「静かに、何もしゃべるな。奴らのあの奇形な頭※20を殴ってる場面を想像してやる。ほかのことは何も考えないぞ。」 レーザー銃を放り捨てるパイク。「原始的な感情で奴らの目を曇らせるんだ。私は奴らを憎む!」
ヴィーナ:「そんな感情がいつまでもつと思うの。一分間、それとも一時間? およそ無駄なことだわ。」
コルト:「邪魔しないで。」
「…どっちが邪魔なの、彼はもう私を選んだのに。」
「選んだ? どういう意味、わからないわ。」
「立派な子孫を作るために私を相手に選んだって意味よ。」
「子孫を? 子供って意味?」
ナンバー・ワン:「じゃ船長はアダムの役をするの? そうなの?」
ヴィーナ:「あなたの魅力じゃイヴになれないわね、コンピューターで彼の好みを調べたら?」

「それよりも時間の計算をしてみたいわ。探検隊にヴィーナという女性隊員がいたことがわかったのよ。あれから 18年経ってるから当然あなたの年は、確か…」
タロス人長官がやってきた。
ヴィーナ:「こんなのズルいわ、言われたとおりにしてるのに!」
タロス人:「その標本が気に入らないらしいので、選択権を与えます。」
パイク:「今にこの檻を抜け出して貴様を捕まえてやる! 貴様たちの血は何色だ。そのうち見てやるぞ。」
「新しい 2人の標本はそれぞれ特徴を備えています。ナンバー・ワンと呼ばれる女は精神的に優れ、知性に富んだ子供を産んでくれるでしょう。」
「今にその醜い頭を締め上げてやる! この考えが読めるか。貴様たちを憎んで、殺して!」
「もう一人の標本は、あなたは近づきがたい男だと思っていましたがその考えも変わってきました。その標本の特徴は若さと体力、そして桁外れに強い女としての欲望です。」 コルトは恥ずかしそうな表情を見せる。
「ついでに私の心を読んだらどうだ。あまり原始的で貴様にはわからんだろ! …貴様たちを殺して…」
苦しむパイク。目を押さえるヴィーナ。
タロス人:「反抗には罰を与えます。従えば価値ある報酬を与えられるでしょう。それを忘れず、慎重に行動して下さい。」 帰って行った。
ナンバー・ワン:「船長…」
パイク:「いいや、ほっといてくれ。精神を集中するんだ、奴らに心を読まれないように。」

檻の中で、4人はそれぞれ寝ている。エレベーターが開き、タロス人長官がいた。
タロス人は横に歩いていく。檻の入り口が開く。
そばでパイクが落とした、レーザー銃を拾おうとしているらしい。
目を覚ましたパイクは、タロス人につかみかかった。檻に引き入れる。
首を絞めるパイク。「暴れるとこの首を…」
ヴィーナ:「ひどいことしないで、悪い人たちじゃないのよ。」
「私には野獣としか思えない。」
タロス人の姿が変わり、動物のような醜い生き物に変わった。恐ろしい声を上げる。
驚くナンバー・ワンたち。
パイク:「早く幻影を消さないと首をねじ切るぞ?」
タロス人は元の姿に戻った。
パイク:「…よーし。今度また下らん幻影を作ったら首をへし折る! それを忘れるな。」
苦しむタロス人。「宇宙船を…その手を、離さないと宇宙船を破壊します。」
ヴィーナ:「これは脅かしじゃないわよ、乗組員に幻影を見せて操作を誤らせたり危険なボタンを押させたりすれば簡単に破壊できるわ。」
パイク:「貴様には私達を殺せん、それは殺す理由がないからだ。」 ナンバー・ワンにタロス人を預ける。
レーザー銃を見えない壁に向けて撃ってみるパイク。2丁とも効果がない。
出力を上げても無駄だ。
パイク:「しかしこっちには理由がある。レーザーガンが空に見えるのも、貴様たちが作り出した幻影だろう。透明スクリーンに穴を開けたのに、貴様たちが見えないようにしてるに違いない! 空かどうか貴様の頭で試そうか。」
すると、壁に大きな穴が見えるようになった。
コルト:「船長!」
タロス人を連れ、抜け出すパイクたち。

映像が終わった。
スクリーンは真っ白なままだ。
メンデス:「……どうした、肝心なところで終わりなのか。」
スポック:「皆さん、少し待って下さい。」
カーク:「……どうした、いつまで待つ。」
パイクに尋ねるメンデス。「君の判決を聞こうか。」
スポックはパイクに言う。「待てと合図して下さい。…大佐の生命に関わる問題です。生きるチャンスをつかんで下さい。」
カーク:「生きるチャンスとか生命とか言ってるが、パイクは向こうでどうなるんだ。…捕虜か、それとも…動物園の標本か。幻影に生きて彼らを楽しませるのか。」
「違います、それだけではありません。見て下さい。」

スクリーンに変化はない。
メンデス:「有罪かどうか。」
パイク:「(イエス)」
「イエスか。…わしも起訴通り有罪と認める。…カーク船長は?」
カーク:「……有罪です。起訴通り。」


※17: 原語では含まれておらず、いきなりカークのセリフです

※18: 吹き替えでは「後はあなたの判断に任せましょう」

※19: これも「らしくない」ですね

※20: DVD・完全版ビデオでは「奴らの頭」に修正

ブリッジのスクリーンに、タロス4号星が映った。※21
ハンセン:「ブリッジから司令官へ。」

受けるカーク。
メンデス:「メンデスだ。」
モニターにハンセンが映る。『タロス4番星の周回軌道に入りました。』
スポック:「既に、タロス星人がコントロールしています。13年前と同じですね。続きを見て下さい、今度は答えがわかります。」
エレベーターに乗るパイクたちが映る。
辺りが大きく壊れた、岩山に出てきた。
パイク:『ナンバー・ワン、船と連絡。』
ナンバー・ワン:『レーザーで爆破できてたのね。幻影で隠してたんだわ。船長。』 コミュニケーターを見せる。
タロス人:『わかりましたか。船で脱出しようとしても無駄なことです。』
パイク:『船と連絡を取りたい。』

タロス人:「あなたにはこの地上で暮らしてもらいたいのです。選んだ女性一人と共に、我々の意向に沿う人生を送って下さい。」
パイク:「まず貴様を殺してからだ。」
「どうぞ御自由に。地上の再開発に協力するため、わたくしどもの動物園から様々な植物を提供しましょう。」
「取引しようじゃないか。お前を殺さないから、部下 2人を助けて欲しい。…船が無事だという証拠を見せて 2人を送り返せ。そうすれば私は残る。」
ナンバー・ワンはレーザー銃を起動し、出力を上げた。「人間を家畜のように扱うなんて、許せないわ。」

タロス人:「危険なことはやめなさい。自分を破壊する結果になりますよ…」
ヴィーナ:「何、それは。」
パイク:「エネルギーを蓄積して過剰になると大爆発を起こす。…まだ地下へ潜る時間はあるぞ。早く行け!」 ヴィーナを押しやる。「…これで人間がいかにバカな動物かよくわかったろ。…君も一緒に行け。」
「いいえ。あなたが命を懸けるほど大事なことなら、私も一緒に死ぬわ? 私が残れば、またこの人たちは同じことするでしょう。」
レーザー銃の音が高くなる中、エレベーターがまたやってきた。タロス人たちが乗っている。
パイク:「待て。」
レーザー銃を止めるナンバー・ワン。
やってきたタロス人の一人。『人間の記録保存の方法は野蛮で時間がかかる。同化の準備はいいですか?』
うなずく長官。「……予測通り成功しませんでした。地球人の、歴史は囚われの身となることを嫌う習慣を示していますが、このようないい条件でもなお好んで死を選ぶとは驚きました。やはり私達の要求を満たすには危険すぎるようですね。」
ヴィーナ:「つまり人間は、利用できないって意味よ。もう大丈夫、船へ戻れるわ。」
パイク:「…ずいぶん簡単だなあ。謝りもしないで。人間を檻に入れて脅迫したくせに。」
タロス人:「人間の協力を得られないことによりタロス星人はやがて滅びます。この悲劇を、理解できますか?」
長官:「ほかの動物には人間のような適応性がありません。人間が最期の望みでした。」
パイク:「正式に申し込んだらどうなんだ。地球の協力を。」
「人類は幻影を作る力を学び取り全てを破壊するでしょう。」
ナンバー・ワンのコミュニケーターが鳴った。「船長、転送の準備ができました。」
タロス人たちを見るパイク。「さあみんな船へ戻ろう。」
長官はヴィーナを見る。
ヴィーナ:「私は駄目、私は行けないの。」

転送室のピトケイン。「急にエネルギーが戻って今度はスイッチが切れません。」
呼び出しに応えるスポック。「スポックだ。」
クルー:『エネルギーが戻り、舵をコントロールできるようになりました。』
転送機が働き、コルトだけが転送されてきた。
続いてナンバー・ワン。
ガリソン:「船長は?」

パイクはまだ地表にいた。ヴィーナを見るタロス人長官。
ヴィーナの姿が変わっていく。皺が増え、髪が白くなる。タロス人はパイクを見る。
身体は歪み、顔には大きな傷跡が見えるヴィーナ。「これで行けないわけがわかったでしょ。」
タロス人:「これがこの女の本当の姿です。」
「…墜落した宇宙船の、破片の中でうめいてたのよ。バラバラになって。それを助けて、再生してくれたの。…でも人間を見たことがなかったんで…どうつなげばいいか…それがわからなかったんだわ。」
後ろを向き、洞窟へ戻っていくヴィーナ。振り返る。
タロス人:「自発的に残留を望んでいることをあなたに証明したかったのです。」
パイク:「幻影でもいい、元に戻してくれ。」
「わかりましたね?」
ヴィーナは前の姿に戻った。
微笑むパイクとタロス人。

報告するピトケイン。「ミスター・スポック、また自然にスイッチが入りました。」
転送台に、パイクが現れた。

出迎えるコルトが映っている。『ヴィーナはどうしましたの?』
ナンバー・ワン:『後で来るんですか?』
パイク:『いや…彼女には来られない理由がある。』
ブリッジに戻るパイク。『全デッキ、緊急速度※22に備えろ。』
ナンバー・ワン:『準備できました。』
『…出発!』
13年前のエンタープライズはタロス4号星を離れ、映像は終わった。
スポックに近づくカーク。「……准将、どうでしょう。」
すると、メンデスの姿が消えてしまった。
声が響いた。『カーク船長、これからあなたの耳に入るのは私の思考伝達です。』 スクリーンにタロス人長官が映っていた。『准将がエンタープライズに乗った事実はなく、連絡船にいた准将も全て幻影に過ぎませんでした。ミスター・スポックがあなたの心を私どもに伝達してくれたのです。このため、架空の軍法会議を開くことにより、あなたが性急な行動に出るのを防ぎました。私どもは、パイク大佐を無条件で歓迎します。ここなら幸せな人生を送れるでしょう。決定は、あなたと本人に任せます。』
微笑み、うなずくタロス人。通信は終わる。
カークはパイクを見た。「ミスター・スポック、たとえ軍規に触れる行為であっても、なぜ一言私に相談をしてくれなかったんだ。」
スポック:「船長にも死刑になれと頼むんですか? 死刑は一人でたくさんです。」
呼び出しに応えるカーク。「カークだ。」
ウフーラ:『第11宇宙基地※23から連絡です。「タロス4番星からの映像を受信。宇宙探検に印したパイク大佐の歴史的業績を考慮し、タロス4番星との接触を禁じる宇宙指令 7号を今回に限り解除。スポックの行為を承認する最善の方法を取られよ。発信人、准将 J・I・※24メンデス、第11宇宙基地※23。」』
カークはパイクに近づいた。「パイク。向こうへ行きたいか。」
パイク:「(イエス)」
「ミスター・スポック。パイク大佐を転送ルームへ連れて行きたまえ。……任せる。」
スポック:「感謝します。大佐に代わって。」
パイク:「(イエス)」
カークは呼び止めた。「ミスター・スポック、大佐を見送ったらまたここへ来てくれ。話がある。最近君は、残念ながらかなり感情に支配されたような行動を取りがちだぞ?」
スポック:「私を侮辱するのはやめて下さい。今回の行為は全て論理に裏づけされたものです。」 パイクの車椅子を押し、出ていった。
その直後、タロス人の声が聞こえてきた。『カーク船長。』
元気な姿のパイクが、同じく若い姿のヴィーナと共に岩山へ向かっているのが映る。
二人はタロス人たちが見守る中、エレベーターに乗った。
タロス人:『パイク大佐は、たとえ幻影であろうとも幸せを手に入れました。あなたの現実にも幸あらんことを。』
うなずくタロス人。映像は終わった。
カークは笑みを浮かべていた。


※21: このシーン、操舵士がハンセンとは違うような…。ハドレイが座っている場面の使い回しかも

※22: 原語では hyperdrive

※23: 吹き替えでは「宇宙基地 M11

※24: イニシャルは訳出されていません

・感想など
TOS 唯一の前後編で、その完結編となります。本文中の脚注 (前編分も多少修正しています) なども含め、感想も本来は "The Cage" 「歪んだ楽園」のものとして書くべき部分もありますが、とりあえず最初から STらしい要素・雰囲気が確立されているのは驚きです。パイクは強さと同時に弱さもあるところが魅力ですね。最初にドクター・ボイスとの会話の中で出てきた内容が、次々と幻影によって映像化されるのが上手いです。
この二部作ならではの部分というとスポックの反乱ですが、これまでの性格を知っておいた方が楽しめることは言うまでもありません。メンデスの落ちはあんまり意味がないようにも思えるものの、幻だったからこそ逆にあれほど強行だったんでしょうね。
後編の監督クレジットは Robert Butler になっていますが、これは "The Cage" を演出したことによる一種のオマージュ的な表記で、その他の「現在」の部分は前編でクレジットされている Marc Daniels が全て監督しています。


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