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TOS エピソードガイド
第60話「悪魔の弟子達」
And the Children Shall Lead

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・イントロダクション
※1惑星軌道上のエンタープライズ。
『航星日誌、宇宙暦 5029.5※2。惑星トリアカス※3の科学植民地から救助を求める緊急連絡を受け、調査に向かうことになった。』
転送されるカーク、スポック、マッコイ。
すぐそばに、何人も倒れていた。煙の跡が見える。
トリコーダーで調べるスポック。脈を取るカーク。
すると、岩に隠れていた一人が立ち上がった。フェイザーを持っている。
カーク:「スターンズ教授※4。」
うめくスターンズ。
カーク:「カークです。」
スターンズはそのまま倒れた。
マッコイ:「駄目だ、死んでる。」
カーク:「私に気づかなかった。」 スターンズが持っていたトリコーダーを手にする。
目を向けるカーク。そばの女性の遺体に近づく。
女性が口にくわえていた、小さな容器の臭いを嗅ぐ。マッコイに渡した。
女性の身体はあざだらけだ。
マッコイ:「サイアロジン※5だ。」
カーク:「自殺してる。」
トリコーダーの映像を再生するカーク。乱れている。
音声が聞こえた。『自ら、命を絶たねばならない。宇宙人がいる。宇宙人の力が、私達に…』
カーク:「なぜだ。薬を飲んで。…これは、集団自殺だ。」
突然、笑い声が聞こえた。子供だ。
そばの洞窟※6から一斉に出てきた。「早くいらっしゃい…」「待てよ…」
一番大きな子供。「誰だい?」
カーク:「カークだ、エンタープライズの船長の。」
「僕はトミー・スターンズ※7。これはメリー※8に、スティーヴ※9に、レイ※10に、ドン※11だよ…」
「こんにちは。」
メリー:「ねえ、一緒に遊びましょうよ。さあ。」
子供たちはカークを取り囲み、手をつないで回り始める。「まーわれ回れ、みんなで回れ、はーいよ、灰よ。空に散れー!」 笑う。「まーわれ回れ、みんなで回れ、はーいよ、灰よ、空に散れー!」


※1: ハヤカワ文庫のノヴェライズ版は、「宇宙大作戦 上陸休暇中止!」収録「そして子らは導く」になります

※2: 吹き替えでは「0403.6008」

※3: Triacus

※4: Professor Starnes
(ジェイムズ・ウェルマン James Wellman) 声:岡部政明 (一部資料では部政明と誤記)

※5: cyalodin

※6: 入口のセットは、TOS第61話 "Spock's Brain" 「盗まれたスポックの頭脳」などで再利用

※7: Tommy Starnes
(クレイグ・ハンドレー Craig Hundley TOS第29話 "Operation - Annihilate!" 「デネバ星の怪奇生物」のピーター・カーク (Peter Kirk) 役。映画第1作 "The Motion Picture" 「スター・トレック」、ST2 "The Wrath of Khan" 「カーンの逆襲」 (エンサイクロペディアのトミーの項目では、ST3 と誤記) でサブ音楽を担当) 声:野沢雅子

※8: メリー・ヤノフスキー Mary Janowski
(パメリン・ファーディン Pamelyn Ferdin) 声:栗葉子

※9: スティーヴ・オコンネル Steve O'Connel
(シーザー・ベリー Caesar Belli ゴーガン役メルヴィン・ベリーの息子) 原語では愛称の「スティーヴィー (Stevie)」と呼んでいる個所もあります。声:DVD 補完では恵比寿まさ子。資料では恵比寿さんは「オドーナ」役の補完も担当していますが、どの役のことか不明

※10: レイ・チン・タオ Ray Tsing Tao
(ブライアン・トーチ Brian Tochi TNG第91話 "Night Terrors" 「謎めいた狂気」のケニー・リン少尉 (Ensign Kenny Lin) 役) 姓は墓碑銘では「チン・タオ」と区切られていますが、エンサイクロペディアでは一続きに「チンタオ (Tsingtao)」。吹き替えでは「レイ」とも聞こえます。声:DVD 補完では浅井淑子

※11: ドン・リンデン Don Linden
(マーク・ロバート・ブラウン Mark Robert Brown) 声:沢田和子

・本編
惑星連邦の旗※12を持つカーク。
そばに作られた墓碑。それぞれに名前が刻まれている。
「ヤノフスキー」、「オコンネル」、「チン・タオ」。
『航星日誌、補足。スターンズ探検隊メンバーの埋葬が終わった。一体このトリアカスで何があったのか。我々は、この謎の悲劇に胸を痛めた。』
旗を立てるカーク。
子供たちは隣の子を順番に小突いている。
メリーはささやいた。「早く遊びに行きましょうよ。」
うなずくドン。みんな走り出し、遊び始めた。
カーク:「子供たちの心は。」
マッコイ:「悲しみの跡はどこにも見当たらないな。」
「恐怖心は。」
「ないね、何一つ恐れてないようだ。」
「君はそれを強烈なショックを受けた結果だと言いたいのか?」
「断定はできないが、その可能性は大いにあると思う。」
「自分の両親が死んだのに子供が何の反応も示さないとは、とても信じられん。」
※13スポック:「人間は自分の信じることを選ぶ才能をもっていますからね。悲しみや苦痛に目をふさぐわけです。」
「だが子供たちがここまで徹底できるとは思えんな。」

マッコイ:「でもこの子供たちは想像もできないようなことを見たはずだから、その反応も常識では説明できんはずだよ。強度の記憶喪失※14かもしれん。私はそう診断するね? …厳密なテストをするまではその診断でいきたい。」
「よろしい…現在一応、君のその意見を支持しよう。…彼らを尋問したらどうだ。」
「…ショックの影響が薄れるまでは許可できんね。…下手をすると別の反応が現れてくるかもしれん。…悲惨な経験を思い出して一生廃人になってしまった例もある。」
「…わかった、待とう。」
近づいてきた子供に注意するカーク。「危ないよ。」
ドン:「あっ。」 旗を倒してしまった。「…ごめんなさい、船長さん。」
刺し直したカーク。「みんな。…ちょっとみんな聞いてくれ。…もう遅いから、そろそろ船へ上がろう。」
ドン:「チェ、つまんないの。」
メリー:「だって、これから面白くなるとこなのに。」
レイ:「もう少しいいだろう?」
カーク:「…残念だが、今日は終わりだ。…ドクターと上がりなさい。」
マッコイ:「さあおいで、船へ行こう。」 連れて行った。
「ここで起こったことは、子供たちの心に閉じ込められているんだ。」
スポック:「スターンズ探検隊に対する攻撃は、何の正当性もなかったはずです。」
「攻撃。表面的には、集団自殺に見えるが。」
「表面的にはそうです。しかし、自殺を促した者がいます。…外部の力で、自殺を強制されたんです。」
「どんな力だ。」
「細菌を振りまいたか、あるいは何か特殊な薬品を用いて心理的な抑圧を与え、自殺したい状態に追い込んだと思われます。」
「子供だけ、なぜ免れたんだ?」
「わかりません。しかし、ありうることです。」
「その何者かは、子供が生き残るように計画したわけか。」
「可能性のある推測だと思います。」
「子供たちの行動は、罰を恐れる結果だと証明できるか。」
「あるいは報酬を、約束されたか。」
「生物が存在しない惑星で、未知の何者かに攻撃された。我々の情報では、この惑星には生物は存在しない。そうだったな…」
「そうなっています。」 トリコーダーの反応を確認するスポック。「おかしい。」
「反応か。」
「…何かが存在するようですねえ。その、洞窟の中です。」
中に入る 2人。

洞窟のカーク。「何かの生命形態の反応は。」
スポック:「明らかに人類ではありませんね。何者であるか断定することは不可能です。現在我々が有してる知識では、判別できない生物と思われます。」
「どうもおかしい。…待てよ。何かある。ここへ入ったら、なぜか急に不安を感じるようになった。…科学的には…説明がつかない。しかし…不安だ。なぜか…。」
「私は何も感じません。」
「トライコーダーに、反応を示したのはきっとこれなんだ。」
「私は不安を感じませんし、不安がトライコーダーに反応を示すとは思えません。」
「いや……何かがいる。不安だ。…恐ろしい。私の心を不安にする。何かがいるんだ!」 外に出たカーク。
「船長、大丈夫ですか。」
「ああ、大丈夫だ。治った。」 カークは笑う。「何かが、存在するのではなくただそう感じただけかもしれん。さあ、船へ戻ろう。スターンズ教授が遺したトライコーダーのテープを早くチェックしたい。…その後、問題の子供たちを尋問する。」

エンタープライズ。
娯楽室※15のクリスチン・チャペル看護婦※16。「さあみんな? このカードはアイスクリームのフレーバーなの。好きなカードを選んでコンピューターに入れればアイスが出てくるわ? はい、みんなどのアイスがいい?」
トミー:「僕バニラがいい。」
それぞれチップ状のテープを取っていく子供たち。「僕チェリーがいい…」「チョコ…」「バニラ…」
チャペル:「ケンカしないでよ…順番にね?」
メリー:「あたしこれ。」
フードスロットに挿入する子供。出てきたアイスクリームを持っていった。
残ったスティーヴに話すチャペル。「じゃあ、あなたにはとっておきのをあげる。はいこれ。」
出てきたアイスを手にするスティーヴ。「…ココナツとバニラ? 白いのばっかだ。」
チャペル:「あら、ごめんなさいねスティーヴ。…とっておきだから喜んでくれると思ったんだけど。あんまり好きじゃなかったみたいね。…じゃあ、あなたはどのアイスが好きなの?」
「チョコマーブル※17と、ピスタチオのアイス。」
「お安い御用だわ?」 テープを取り替えるチャペル。
「それとピーチ。」
「…いいわよ? トリプルなんてすごいじゃないの。」
スティーヴはアイスを入れ替えて、歩いていった。
ため息をつくチャペル。

ターボリフトから出てくるマッコイ。「テストしたが子供たちは嘘をついてない。行動にもおかしな点は見られないし、身体検査の結果も問題はない。あの星で何か生化学的な影響を受けた様子は全く見られないんだ。私からは何も言えんね。」
カーク:「いや、何かある。」
「ここで調べるより最寄りの基地で、小児科専門のドクターに診てもらった方がいい…」
「いや何があったか突き止めるまでは、この星を離れるわけにはいかない。ああ。」
「子供たちは繊細だ、尋問するのはいいがほどほどにしてくれよ?」
「これも、船とみんなを守るためだ。手を抜く気はない。」
「慎重にやれよ。」

アイスを食べる子供たち。「こんなに食べちゃった…」
チャペル:「さあ、食べたらまたみんなで遊びましょうね?」
カークが娯楽室に入った。
子供:「…早く遊ぼうよ…」「うん…」
チャペル:「コンピューターからアイスクリーム出すの面白かったでしょう。」
トミー:「面白かったよ…」
「さあみんな…」
カーク:「おお、みんな楽しそうにやってるね。お邪魔じゃなかったら入れてもらおうかな。いいかい?」
メリー:「ええ、どうぞ?」
「よーし、私も何か食べよう。」
チャペル:「どうぞ。」
「何か軽いものを、ほんの少しでいいな。…トリアカス星よりいいだろう。」
ドン:「あんな汚い惑星大っ嫌い。」
レイ:「あそこが好きな人なんていないよ。」
メリー:「そうよ、おじさんたち住んだことないから知らないでしょう。」
カーク:「うーん。じゃあパパやママたちも、あそこが嫌いだったかな?」
トミー:「好きだったよ。」
スティーヴ:「うちのパパたちもそうだよ?」
ドン:「大人ってバカなことが好きなんだよ。」
チャペル:「あら、そうは思わないわ? …大人は子供が好きよ?」
メリー:「ええ? おばさんがそう思うだけよ。」
カーク:「…パパたちは君たちが好きだからこそ、トリアカス星へ連れてきたんじゃないかなあ。…長い間、子供と別れて暮らすのが辛かったんだよ。…親にとってはそれが一番悲しいんだ。君たちだって、別れたら寂しいはずだよ?」

静かになる子供たち。
トミーは音を口ずさみ始めた。「ブンブン…」
笑う子供。一緒に唱え、テーブルを離れて遊び出す。
ドン:「何だと思う?」
チャペル:「知ってるわ、ハチの大群でしょ?」
メリー:「…危ないわよ気をつけて、針で刺すから!」
カークは抱き上げた。指先でつつくメリー。
カーク:「おーい、ちょっと待った。」
トミー:「もっとアイスクリームもらえる?」
「いやあ夕食が近いからまた今夜だ。」
「な、言っただろ? いつもこれなんだよ。」
メリー:「あーあ。」
カーク:「…今日はね、いろんなことがあって疲れたろうから部屋へ行って少し休みなさい。クリスチンが案内してくれる。」
チャペル:「はい、それがいいですわね?」
ドン:「あーあ…」
「いらっしゃい?」
「チェ、行かなきゃダメ?」
「今日はダメよ、また明日ね。さあ行きましょう?」 チャペルは連れて行った。
カーク:「ああトミー、ちょっと待ってくれ。君に聞きたいことがあるんだ。さあ、座りなさい。…君が見たことを話してくれないか。」
トミー:「…どこでだい?」
「洞窟だ。トリアカス星の、洞窟の中だ。」
「何もないよ。」
「今日お父さんに会ったかい?」
「会ったよ?」
「変じゃなかったかい。」
「何かすごく興奮してたね。」
「なぜだ。」
「それは聞かなかったよ。」
「何があったからそんなに興奮してたのかなあ。」
「知るわけないよ。しょっちゅう怒ってたから。船長さんみたいにさ?」
「…いや、私は何も君たちのことで怒ったりしてないよ。その証拠に君たちをここへ呼んだろ。君たちが嫌いなら、呼んだりしないはずだ。」
「そんなの関係ないな。」
「トリアカス星を離れるのは悲しくないのかい?」
「あんなとこ、大人の惑星だよ。」
「何とも思わないの? お父さん達を残してきて。」
「だって大人は、あの星が好きなんだよ。バカみたいに。…いたいんだって。もう行ってもいい? 疲れちゃったよ。」
「よーし、いいよ。案内しよう。」
「知ってるよ。」 トミーは出ていった。
「カークから保安部。…子供たちに見張りをつけろ。今後常に厳重な監視を続けろ。」

手を組んで回る子供たち。「万歳万歳、火の海と雪。天使を呼んで、行きましょう。遥か遠くの宇宙の果てへ。僕らの天使、来てちょうだい。…万歳万歳、火の海と雪。天使を呼んで、行きましょう。遥か遠くの宇宙の果てへ。僕らの天使、来てちょうだい。」
すると、部屋の中に一人の男が現れた。
声が響く。『よろしい、みんな非常によくやった。』 「天使」ゴーガン※18の身体は半透明だ。『やらねばならぬことをやったのだ。今や諸君はエンタープライズに乗った。…我々の目標は地球連邦※19の植民地だ。カーク船長は近くの宇宙艦隊基地へ行こうとするだろうが、それを許してはならない! マーコス12※20 には何百万の人間が住んでいる。うち百万が我々の友達となり、あとは敵に回るはずだ。しかし新しい百万の友達と力を合わせ、敵を全滅させるのだ。トリアカス星で全滅させたように。マーコスで百万の友達ができれば我々は無敵になる。』
微笑む子供たち。
ゴーガン:『そうなれば何を食べてはいけないとか、いつ寝ろとか言う者はいない。…宇宙は全て私が支配し諸君は自由に遊べるようになる。…この偉大な使命を全うするため、まずエンタープライズを支配しなければならん。船を支配するためには乗組員を支配しなくてはならん。…方法はわかっているな? …私を信じれば何でもできる。任務を全うするのだ、任務を全うするのだ、任務を全うするのだ、任務を全うするのだ、任務を全うするのだ、任務を全うするのだ、任務を全うするのだ、任務を全うするのだ…』 繰り返し唱える。
テーブルを一斉に叩く子供。


※12: UFP (United Federation of Planets の略) と書かれており、13個の星が見えます。TOS で連邦旗が登場するのは今回だけ

※13: TOS の旧国内オンエア分では、カット部分が存在しています。DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります (CS版との比較)。LD では基本的に、その部分だけ字幕収録です

※14: 脱漏性健忘症 lacunar amnesia

※15: 娯楽室として、このセットが使われるのは唯一。TOS第62話 "Is There in Truth No Beauty?" 「美と真実」では、植物園として改装されました

※16: Nurse Christine Chapel
(メイジェル・バレット Majel Barrett) 前話 "The Enterprise Incident" 「透明宇宙船」に引き続き登場。声:北見順子、DVD 補完では田中敦子

※17: chocolate wobble

※18: Gorgan
(メルヴィン・ベリー Melvin Belli 息子のシーザーは、スティーヴを演じています。弁護士。1996年7月に死去) 名前は訳出されていません。声:大木民夫、旧ST4 スポック、VOY ブースビー、新旧ST2 カーン、旧ST5 サイボック、叛乱 ドアティなど

※19: 今回の連邦 (Federation) の訳語

※20: マーコス12号星 Marcos XII
TNG第25話 "Conspiracy" 「恐るべき陰謀」での宇宙艦隊本部の星図内にもあるそうですが、画面上では読み取れません

ブリッジ。
スクリーンに映るトリアカス。
スールー:「周回軌道を維持しています。」
カーク:「トリアカスへ派遣した調査班から何か連絡は来たか。」
ウフーラ:「まだ何にもありません。」
スポックが入り、テープを見せる。「船長、スターンズ教授のテープから重要な部分を抜き取りました。」
カーク:「よし。」
「…明らかな証拠は不足ですが、教授は非科学的な一つの仮説を提示しています。」
「聞いてみよう。」
モニターに映るスターンズ。『宇宙暦 5025.3。このトリアカス星に到着してから私は、何かの不安感が募ってくるのを感じる。…最初これは新しい計画に従事してるためにもたらされた神経作用かと判断していたのだが、探検隊のメンバー全員が同様に感じていると知って私は驚いた。影響を受けていないのは子供たちだけなのだ。…彼らはこの、トリアカス星での任務を素晴らしい冒険だと思っているらしい。私も子供になりたい。』
映像は終わった。
カーク:「もっと聞きたいな。教授の非科学的な仮説とやらを。」
次のテープを入れるスポック。
スターンズ:『5032.4。我々が経験している問題の不安感は、次第に強くなる。』
スポック:「もう一個所ありますが、これが最も興味深いものと判断します。」
『5038.3※21。ウィルキンス教授※22の調査が今日終了した。以前この惑星に存在した文明は自然の激変によって破壊されたと思われるが、その時一人が洞窟に逃げ込んで助かったらしい。』
レズリー※23保安部員の監視の下、トミーがブリッジに入った。
スターンズ:『我々は今、非常に不思議なことを体験している。』
するとトミーは拳を握り、胸の前で振り始めた。
スターンズ:『まるで目に見えない何かの力が、我々を…』 映像が乱れ、終わった。
カーク:「どうした。」
スポック:「わかりません。」
カークのすぐ前に立つトミー。
カーク:「…知らなかったな、いつ入った?」
トミー:「船長、僕たちをマーコス12 へ連れてってくれない?」
「…いやあ、宇宙艦隊の基地へ送り届けようと思ってる。」
「マーコス12 に親戚がいるんだよ。」
「その、残念ながらマーコス12 はパトロール範囲外の惑星だ。スポック、私の部屋へ来てくれ。」
「船長さん、しばらくここで見てていい? 邪魔しないから。」
「よーし、いいだろう。大尉※24、ドクターを私の部屋へ出頭させろ。会議を開く。」 レズリーに命じるカーク。「頼むよ。」
スポックもターボリフトに入った。
周りを見るトミー。操舵席に近づいた。
スールー:「こんにちは。」
トミー:「どうも。」
トミーはまた腕を振り始めた。スールーの目が泳ぐ。
スイッチに手を伸ばすスールー。宇宙航行機を操作した。
トリアカスを離れるエンタープライズ。
トミーはチェコフに向けても腕を振っている。保安部員と共に、メリーもやってきた。
操縦を続けるスールー。メリーはトミーと顔を見合わせ、微笑んだ。
トミー:「何だい、あれ。」
スクリーンにはトリアカスが映ったままだ。
スールー:「惑星だよ。トリアカスだ。」
トミー:「周回軌道に乗ってるといつも見えるの?」
チェコフ:「ああ、そうだよ? …必ずスクリーンに映るんだ。」
ささやくメリー。「トリアカスが映ってると思ってんのね?」
トミー:「自分で思ってるだけだよ。」
スクリーンには宇宙空間しかなかった。
ふとウフーラはスクリーンを見た。トリアカスが見えない。
ウフーラ:「ミスター・スールー、周回軌道を外れてるわよ?」
腕を振るトミー。ウフーラは目を閉じた。
トリアカスが見えている。
頭を振るウフーラ。
メリー:「マーコス12 にはいつ着けんの?」
トミー:「すぐだよ。」

副司令室。
トミーと同じように手を振るドン。前にいるクルーは気づいていない。
ドンは歩いていった。
クリップボードを持って中に入るスコット。
状況に気づく。「いつコースを変えたんだ?」
また近づくドン。
機関部員※25:「コースは変えてません。」
スコット:「お前本気でそんなこと言ってるのか。コントロールモニターを見てみろ。」
「まだ周回軌道です。」
「バカな、目が見えなくなったのか。位置が全然違うじゃないか!」 手を伸ばそうとするスコット。
機関部員は止める。「いえ! …コントロールに触らないで下さい。」
スコット:「お前いつから頭が変になったんだ?」
「ブリッジから命令が来ない限り周回軌道を維持します。」
「何を寝ぼけてるんだ。…目の前のものが見えないのか、これは周回軌道じゃない!」
もう一人の機関部員※26も、意に介さないようだ。
機関部員:「ブリッジの命令に背くわけにはいきません。」
スコット:「ブリッジの命令に今背いてるじゃないか。邪魔だ、どけ!」
「…頭が変なのはそちらじゃないですか!」
「ふざけるな…」 スコットは無理矢理どかした。
するともう一人がスコットにつかみかかる。
スコットは殴って操作しようとするが、起きてきた機関部員に倒された。
一部始終を監視していたドン。

コンソールに映るスターンズ。『バカげたことをするように、何かの力に強制されているようだ。宇宙艦隊司令部に報告を提出し、宇宙船を輸送用に使いたいとさえ要請した。…ところが何を輸送するのか自分でもわからないのだ。私の心は何かの力の思い通りに動いている。…だから私は、宇宙艦隊に非常報告※27を送ることにした。神よ許したまえ。自ら命を絶たねばならない。…宇宙人がいる。…宇宙人の力が、私達に…』
映像は終わった。
スポック:「彼の記録は途中で終わり、報告も送られぬまま※27集団自殺に進みました。そしてテープの最後には、隊員が子供たちと遊んでいる姿があります。彼らを冒した力は、猛烈なスピードで作用したと思われます。でなければ、教授はもっと正確に記録できたでしょう。彼は非常に優れた科学者で、真実の追究に飽くことを知りませんでした。」
カーク:「だから死なねばならなかった。」
「恐らくそうでしょう。悪魔は真実を求める者を迫害して、権力を保つのです。」
マッコイ:「あるいは無知な者を利用してだ。」
カーク:「『無知な者を利用して』? そうか。」
「あの子たちが、利用されていると言いたいのか。」
「…多分そうだ。スポック、トリアカスにはどんな人種が住んでいた。」
スポック:「伝説によるとトリアカスに住んでいたのは好戦的な種族で、イプシロン・インディ※28星系は戦いが絶えなかったようです。しかし何世紀かを経て、それまで略奪を続けてきた被害者たちに逆に滅ぼされてしまいました※29。」
「それで終わりか。」
「いいえ。ほかの伝説同様、これにも恐るべき終幕があります。生き残った悪魔は、媒体が現れるのを待ちそれに乗り移って行動し再び宇宙を略奪するというのです。」
「その悪魔が、子供たちに乗り移って動き出したのか。」
「これは単なる、伝説に過ぎません。」
「多くの伝説は事実を基礎にしてるんだ。」
マッコイ:「考えられることだな。しかし医者として警告したいが子供たちがショックから解放されて心理的に正常な状態に戻る前にだ、手を出すのは危険だよ。」
「子供たちが悪魔の道具と化していたらどうだ。エンタープライズを救うためには、強硬手段を執らざるをえない。」

カークの部屋を出て行くマッコイ。
カーク:「トリアカス星を訪れた探検隊はほかにもいるのか。」
スポック:「連邦の記録によりますと、これが最初です。」
「…スターンズ教授は、確か見えない力が働いていると言っていたなあ?」
「はい、見えない力に強制されていると言っています。それに気づいて彼は、戦う決心をし船の要請もキャンセルしました。」
「『船』の、そうだ。トリアカスへ船を派遣しろと言ってきたな。…何のためだ。…カークから保安部、トリアカスの警備班を交代させろ。交代要員は転送ルームへ。警備班が戻ってきたら直ちに詳しく尋問したい。スターンズ教授が言っている見えない敵は必ず存在する。まだ下にいるか、それとも既に船に乗り込んだか。行こう。」

転送室。
中に入るカークは、転送台に立っている保安部員たちに説明する。「今後は全員一時間ごとに交代する。常に通信の準備をし得体の知れぬものを見たらすぐに報告しろ。調査する必要はない。よし、転送しろ。」
転送される 2人。
カーク:「続いて、トリアカスの交代要員を収容。」
作動する転送機。だが現れない。
カーク:「スポック。」
代わりに操作するスポック。
カーク:「どうした。」
スポック:「トリアカス星の、転送予定地点にロックできません。」
「なぜだ。」
「船はトリアカスの周回軌道を離れているようです。」
「…ありえないことだ。もしトリアカスを離れているなら、いま転送した部下は…死んだ※30。」
「トリアカスの周回軌道を離れたのは明らかですね。」
「モニタースクリーンのスイッチを入れろ!」
モニターに出たのは、宇宙空間だけだ※31
カーク:「カークからブリッジ。スールー、トリアカスの周回軌道を離れているぞ。」

スクリーンに映るトリアカス。
スールー:「いえ、船は周回軌道を回っています。スクリーンにトリアカスが映っていますが?」
ブリッジには子供たちが全員集まっている。

カーク:「コースを修正しろ、すぐそちらへ行く。」

子供たちは再び手を組んでいる。「万歳万歳、火の海と雪。…天使を呼んで、行きましょう。…遥か遠くの宇宙の果てへ。僕らの天使、来てちょうだい。万歳万歳、火の海と雪…」
微笑んでその様子を見つめるウフーラ。
カークが来た。「スールー。」
子供:「天使を呼んで、行きましょう。遥か遠くの宇宙の果てへ。僕らの天使、来てちょうだい。」
音が響き、ブリッジの中央にゴーガンが現れた。


※21: スターンズの記録にある 3つの宇宙暦のうち、あとの 2つは冒頭の航星日誌 (脚注※2) よりも大きな数字になってしまっています。吹き替えでは順に「0403.5810」「0403.5828」「0403.5936」となっており、冒頭との矛盾はありません

※22: ウィルキンズ教授 Professor Wilkins

※23: ミスター・レズリー Mr. Leslie
(エディ・パスキー Eddie Paskey) 前話 "The Enterprise Incident" に引き続き登場。セリフなし、ノンクレジット

※24: 吹き替えでは「尉」。TOS では基本的に中尉は存在しないと考えられます

※25: 技師その1 1st Technician
(ルー・エリアス Lou Elias TOS第11話 "Dagger of the Mind" 「悪魔島から来た狂人」の囚人看守 (Inmate Guard)、第64話 "The Tholian Web" 「異次元空間に入ったカーク船長の危機」の発狂クルー (Crazed Crewman)、第74話 "The Cloud Minders" 「惑星アーダナのジーナイト作戦」のトログライトその1 (Troglyte #1) 役。スタント)

※26: 技師その2 Technician #2
(ディック・ダイアル Dick Dial TOS第26話 "The Devil in the Dark" 「地底怪獣ホルタ」のサム (Sam)、第38話 "The Apple" 「死のパラダイス」のカプラン (Kaplan) 役。スタント代役) セリフなし、ノンクレジット

※27: 吹き替えでは順に「非常報告」、「報告隊も出発せぬまま」。なお報告は送られなかったと言っていますが、救難信号は送信されています (そもそもエンタープライズは信号を受けて来ているため)

※28: インディアン座イプシロン星 Epsilon Indi
初言及。現実に太陽系から 11.82光年の近さにある恒星

※29: 前にスターンズの発言では、「この惑星に存在した文明は自然の激変によって破壊されたと思われる」となっていました

※30: 赤シャツ

※31: スポックが手を下ろすとき、宇宙空間の合成映像の方が前に被って、手が隠れてしまっています

ゴーガンは子供たちに言った。『諸君、我々は遂に危機を迎えるに至った。敵は、我々の計画に気づいたのだ。だが既に遅く船を支配しているのは彼らではなく、我々だ。我々が支配した。彼らは我々の望むところへ連れて行ってくれる。…では、配置に戻って船をコントロールしたまえ。敵が抵抗を試みれば恐怖心を突け、そうすれば従順に動くだろう。彼らのもっている恐怖心を利用し我々の奴隷とするのだ。トリアカスの出来事を思い起こせ。抵抗すれば、ここでも同じ結果になる。…私が必要なときは呼べ、すぐに現れる。我々の目標はマーコス12 だ、マーコスに未来がある。行かなくてはならない。』 消えた。
トミー:「…全員配置に戻れ、メリーは僕とここにいる。」
出ていくほかの 3人。
カーク:「…スールー。スクリーンを信用するな、君は幻影を見ているんだ。コースを第4基地※32に取りたまえ。」
腕を振るトミー。
スクリーンの宇宙空間に、たくさんの剣が現れた。中心から放射状に広がっている。
カーク:「スールー、聞こえたか。」
スールー:「はい。」
何本も通過していく剣。
カーク:「ウフーラ大尉、宇宙第4基地に連絡。子供たちを連れて行くと伝えろ。子供たちの精神は明らかに、宇宙人に冒されているため基地到着と同時に厳重な調査を依頼したい。」
ウフーラ:「わかりました。」
目の前に映った自分の顔を見るウフーラ。
トミーはまた腕を振った。
顔に手で触れるウフーラ。自分が見ている姿は、年老いたものになっていた。
カークは近づいた。「大尉。…何を見てる。」
ウフーラ:「自分の死に顔です。…恐ろしい、死です。…病に、冒されて。…自分の死に顔が見えます…」
「大尉! それも単なる幻影だ。」
「船長…恐ろしい顔です! 船長。」
「…スポック、宇宙艦隊に急報しろ。」
ウフーラは顔を押さえた。
カーク:「なぜコースを変更しないんだ。」
スールーはまだ剣を見ていた。カークには宇宙空間しか見えない。
カーク:「スールー…」
スールー:「船長! コントロールに触らないで下さい! エンタープライズが破壊されます!」
「何もないじゃないか、よく見ろ!」
スポック:「船長、艦隊への連絡はやめましょう。」
近づくカーク。「船長命令だぞ。」
スポック:「船には何の異常もありません。」
「何だと。」
「完璧な状態です。」
「…周りを見てみろ。」
スポックはコンピューターに手を伸ばそうとしたが、トミーが腕を振った。
動きを止めるスポック。スイッチに触れることができない。
震える手を戻した。「船長の命令には従えません。」
顔を起こすウフーラ。やはり年老いた自分が見える。
また泣き崩れた。
取り囲む剣を見つめ続けるスールー。
レズリーに命じるカーク。「スールーをキャビンへ連れて行け。…当分休養させる。」
腕を振るトミー。
レズリーには、カークの声が理解できない。全く何を言っているかわからない※33
無言のままのレズリー。トミーは腕を振り続ける。
その様子を見るスポックは、自分のこめかみに指を当てた。
目を閉じるスポック。
レズリーにつかみかかるカーク。「おい、聞こえないのか!」
トミーに近づこうとしたカークも、動きを止めた。腕を振るトミー。
怯えた表情をするカーク。近づくスポックに驚く。
スポック:「船長、ブリッジにいてはいけません。」
カーク:「…私は、指揮できない。指揮をする能力を失っていく。エンタープライズを失う…。」
スポックはターボリフトに入れた。
スポックの腕をつかむカーク。「指揮できない。エンタープライズを失う。私の船はどんどん進む。」 壁に身を寄せた。「私は独りだ。…独りだ。…指揮できない。」
スポック:「船長。」
「…指揮できない。エンタープライズを失った…。」
「…船長。」
カークはため息をついた。「指揮できるぞ。私の船だ。…これは、私の船だ…。」
スポック:「その通りです。」
到着するターボリフト※34
廊下に出たスポック。「どこへ行きます。」
カーク:「補助コントロールだ、コースを修正しなければならん。誤ったコースを進んでいる。」

スコットがいる副司令室に入るカーク。「スコッティ、ブリッジのナビゲーション装置をここから修正し第4基地へコースを取れ。」
スコット:「そんなことはできません。」
「…なぜだ。」
「これは非常に微妙な装置なんですよ? …そんなことをしてバランスが狂ったらどうしますか。…永久に宇宙の迷子になってしまいます!」
奥を見るカーク。
そこにはドンがいて、腕を振っていた。
スコット:「行って下さい、仕事の邪魔をすると殺しますよ。」
カーク:「スコッティ、聞きたまえ。エンタープライズには今宇宙人が侵入しているんだ。…彼らはマーコス12 へゆきたがっている。もし連れて行けば何百万人が殺されることになる! スコッティ。」
腕を振るのをやめないドン。
カークは無理矢理操作しようとしたが、機関部員に押しのけられた。スポックやスコットたちも取っ組み合う。
押しのけるカークとスポックは、外へ逃げた。
無言で見つめるドン。

廊下のカーク。「もう大丈夫だ、私の恐怖心は消え去ったよ。二度と、戻らないだろう。」
スポック:「エンタープライズに子供たちがいる限り危険は去りません。…彼らは媒体なんです。」
「スポック、彼らはエイリアンではなく利用されている子供たちだ。」
「彼らは手足です。手足がなければ、悪魔は動けません。」
「彼らは子供だ。」
「エンタープライズには 430名の人間が乗り組んでいるんですよ。…乗組員と船が、その子供たちによって危険にさらされているんです。」

「彼らは、自分たちの行為の意味を知らないんだ。」
「そうかもしれません。しかし、彼らの中の悪魔は広がっています。それを取り除く方法を発見できないならば。」
「殺すよりない。」
目を向ける 2人。
トミーがチェコフと保安部員たちを引き連れ歩いてきた。
チェコフはフェイザーを装備している。「カーク船長。」
カーク:「どうしたんだ。」
「船長とミスター・スポックを逮捕するように、命令を受けました。」
「誰の命令だ。」
「艦隊司令部です。」
「いつどこでその命令を聞いたんだね。」
チェコフが顔を向けた方には、トミーがいた。
カーク:「よく聞きたまえ。これは私の命令だ。全員ただちに配置に戻るんだ!」
チェコフ:「申し訳ありませんが船長とミスター・スポックに、速やかに留置セクションへ来ていただきます。」
「目を覚ませ!」
チェコフはフェイザーを取り出した。
腕を振るトミー。
チェコフ:「私に船長を殺させないで下さい! …船長、容赦はしません。」


※32: 第4宇宙基地 Starbase 4
初言及。「宇宙第4基地」と訳されている個所もあります

※33: 原語でも日本語でも、音声を逆再生させて表現しています。吹き替えでは、次のように言っています。「おい、私の言ってることが聞こえないのか。君は保安部員なんだぞ。恐れることなど何もないんだ。いま君たちが見ているのはただの幻影に過ぎん。相手はただの子供じゃないか。おい、しっかりしろ! 私はこの船の船長なんだぞ? どうして船長の言うことが聞けないんだ! 君たちは立派な乗組員じゃないか! 君たちほどの乗組員がどうして船長の言うことを聞かんのだ! 私の言うことを聞いてるのか」

※34: 行き先を指示した様子はありませんでした

トミーは腕を振り続ける。
チェコフ:「反抗をやめて来て下さい、船長。」
カーク:「チェコフ、聞きたまえ。君は偽の命令を受けている。」
「私は一度も、命令に背いたことはありません。それは船長が一番よく…」
「いや君が一度も命令に背いたことがないのはよく知っているが、これは宇宙人が出した偽物の命令なんだ…」
「司令部の命令です、司令部の命令に背くことはできません!」
「司令部の命令ではない、偽だ!」
「司令部の命令は船長に優先します!」
スポックはフェイザーを叩き落とした。カークにつかみかかる保安部員。
トミーは腕を振っている。
スポックは保安部員の腕をひねり、ヴァルカン首つかみをした。カークももう一人を倒す。
フェイザーを拾うスポック。「船長。」
トミーは逃げ出した。
カーク:「チェコフたちを監禁しろ。そしてブリッジへ来たまえ。」
3人を連れて行くスポック。

トミーは船長席に座っていた。カークが戻る。
ウフーラはまだ顔を押さえている。ナビゲーターはハドレイだ。
カーク:「エンタープライズはマーコス12 へ行かないぞ? 無駄なことはやめろ。」
トミー:「乗組員たちが連れてってくれるさ。」
「乗組員はね! まだ気づいていないんだ。…私のように事実に気づいたら、マーコスへなど行かんぞ!」
メリー:「行くわよ行くわよ、必ずマーコス12 に連れてってくれるわ。ほんとよ、行くわよ…」
トミー:「みんなでマーコスへ行くんだ、マーコス12 へ行くんだ…」
トミーを降ろすカーク。「絶対に行かん!」
トミー:「友達と行くんだよ!」
「友達? どこにいるんだ、友達は。友達ならなぜ隠れる。」
メリー:「出てくるわ、私達が呼んだら。」
トミー:「呼ぶ必要ないよ。お前たちなんか怖くないぞ?」
カーク:「ほう? その言葉を聞いて安心した。しかし君たちのリーダーは怖がっているぞ、なぜだ。」
メリー:「あの人は誰も怖がってないわ?」
トミー:「怖いものなんか何にもないよ!」
カーク:「見られるのが怖いんだ。乗組員は彼を見たら、自分たちの友達ではないことがわかり態度を変える。」
「僕らの友達だよ!」
「じゃあ堂々と姿を見せたらどうなんだ? 呼び出せ! そして私の友達でもあると証明できたら、どこへでもついていこう! …宇宙の果てでも構わんぞ!」
「ダメだよう!」
スポックがブリッジに入った。
カーク:「ああ。…スポック、子供たちが悪魔※35を呼び出すときに唄った歌をかけたまえ。」
スポックによって、テープが再生される※36。『万歳万歳、火の海と雪。…天使を呼んで、行きましょう。遥か遠くの宇宙の果てへ。僕らの天使、来てちょうだい。万歳万歳、火の海と雪。天使を呼んで、行きましょう。遥か遠くの宇宙の果てへ。僕らの天使、来てちょうだい。』
ほかの 3人の子供も、ブリッジにやってきた。
音と共にゴーガンが現れようとする。だが今度は姿がはっきりしない。
カーク:「真実を見せなければならないときがきたんだ。…出ろ。」
姿が現れた。『私を呼んだのは誰だ。』
カーク:「カーク船長だ、私の恐怖心は去った。真実の光に照らされて力を失ったんだ。私はもう免疫だ。この船の指揮は、私が執る。」
『そうはいかん、私が指揮を執る。私の部下たちは強く、忠実で従順だ。…だからいずこへ行っても私の望みは必ず叶えられる。』
スポック:「隠れ蓑に身を隠して、略奪するのか。」
カーク:「貴様の正体は、わかった。」
ゴーガン:『ならば勝ち目のないこともわかったろ。』
「団結すれば必ず勝てる!」
『愚か者、自滅するがいい。できればお前たちも仲間にしたいが、お前たちは優しい。それが欠点なのだ。』
「私達には力もあるぞ?」
『たとえあっても優しさに消されてしまうんだ。…あまりにも善良すぎる、お前などはその典型的な例だ。お前は子供たちの親に似ている。…抹殺しなければならない※37。』
子供たちに話すカーク。「君たちがトリアカス星にいたときのフィルムがあるんだがちょっと見せようか、面白いぞ? …スポック、映したまえ。」
ゴーガン:『映してはならん。』
スポック:「何を恐れてる。」
『恐れてはいない!』
カーク:「さあスポック、映したまえ? みんな待ってるぞ。」
映像がモニターに映った。それは、子供たちだけでなく大人と一緒になって遊んでいる姿だった。
微笑んで見つめるトミーたち。
スターンズが転んだトミーの頭を払っている。
メリーを抱き上げる父親。
ドンやレイも、親の姿を見て楽しそうだ。スティーヴも笑っている。
トミーの表情から笑みが消えた。大人が全員死んでいる映像になっている。
誰も生きてはいない。ゴーガンを見る子供たち。
ゴーガン:『我々を手伝おうとしなかった。…反抗したからだ。…抹殺する必要があった。』
映像を切り換えるスポック。
墓碑だ。「スターンズ」とある。
見つめるトミー。
スポック:「トミーのお父さんはお前を倒せたが、気づくのが遅すぎたんだ。」
ゴーガン:『残念ながらお前たちもそうだ。…優しさが命取りになる。』
「ヤノフスキー」の墓を、涙を浮かべて見つめるメリー。
カーク:「今度ばかりは少し違うぞ?」
「オコンネル」の墓。涙を流すスティーヴ。
カーク:「もうごまかしは利かん。子供たちは真実を見た、真実を知ったんだ。」
「チン・タオ」の墓を見るレイ、「リンデン」のドン。
カーク:「みんな目覚めたんだ。」
ゴーガン:『君たちは将軍になれるんだぞ、私と一緒に大軍を指揮するんだ。』
涙をぬぐうトミー。
ゴーガン:『配置につけ、偉大な勝利は目前に迫っている。期待しよう。マーコスには百万の仲間が待っているんだ。…反抗する者は一人残らず抹殺する!』
カークは泣くメリーを抱き上げた。
ゴーガン:『我々の立派な目標に泥をかける奴らは、許しておけないのだ。協力しない者、我々を理解しない者は宇宙から消し去るのみだ!』
カーク:「怖くないぞ、奴を見ろ!」
ゴーガンの顔に異変が現れた。突起物が見える。
カーク:「君たちがいないと、奴は死ぬ。」
さらに醜く変貌するゴーガンの顔。
カーク:「自ら悪に冒されてるんだ。」
髪が乱れたゴーガン。『何をしているんだ。…早く命令を聞け、配置につけ。任務を遂行しろ。…反抗すると抹殺するぞ? 私のために尽くすより、生き延びる道はないんだ!』
カーク:「見ろ、ほんとはあんなに恐ろしい奴なんだ。…しかしもう怖くはないぞ?」
目の位置も崩れきったゴーガンの顔※38。『死ね、みんな死ね。みんな死ね、みんな死ね、みんな死ね、みんな死ね…』 消滅した。
スールーは自分が見ていた剣が消えるのを目にした。
顔をなでるウフーラ。
マッコイが来た。
子供をなだめるカーク。「もう大丈夫。」
マッコイ:「泣いてるじゃないか、これで本来の姿に戻ったんだよ。」
「さあ、もう心配ないから元気を出して? あとはドクターに任せるぞ。」
「よーし、引き受けた。最善を尽くそう。」
船長席に座るカーク。
スールー:「マーコス12 に接近しました。」
カーク:「コースを逆に取りたまえ。」
「はい。」
ターボリフトに入るマッコイと子供たち。
スールー:「反転しました。」
カーク:「宇宙第4基地※39に向けてフルスピードで前進。」
「はい。」
向かうエンタープライズ。


※35: 原語ではこの時初めて、ゴーガンという名前を呼んでいます。カークがいつ知ったのかは不明。吹き替えでは訳出されていないため、幸い関係ありません

※36: この録音は子供たちがブリッジで歌ったときのもの…と思ってしまいがちですが、原語では最初の部分が "Hail, hail" となっています。ブリッジの時は "Hi, hi (High, high とも)" だったので、そうなると初めに子供たちが自室で呼び出した時のものということに…

※37: 最後の部分は、吹き替えでは原語とセリフの位置がずれています

※38: 予告編にも同じシーンがありますが、緑色の特殊効果は見られません

※39: まだトリアカスに残してきた保安部員がいたはずですが…

・感想など
"Charlie X" 「セイサス星から来た少年」などと同様、「まーた嫌な子供」という印象をもたざるをえない話です。超生命体が関わっているところも、お決まりになってしまってますね。本来の人気順では 79位、つまり堂々の最後です。
原題は旧約聖書 (イザヤ書、11章6節) に由来し、旧題は "The Children Are Waiting" 「子供たちが待っている」。LD などではシャトナーや監督の子供が出演しているとなっていますが、やはり似通ったエピソード "Miri" 「400才の少女」の配役と混同しています。吹き替えで注目すべきは、「孫悟空」野沢雅子と「みなしごハッチ」栗葉子。このコンビ、後に始まる「ど根性ガエル」ではひろしと京子を担当しました。


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