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TOS エピソードガイド
第68話「惑星スカロスの高速人間」
Wink of an Eye

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・イントロダクション
※1惑星※2軌道上のエンタープライズ。
スコット:『航星日誌※3、宇宙暦 5710.5※4。技術主任スコット記録。惑星スカロス※5より救難信号を受信※6。しかし、船からの探知では住民のいる気配はなく、整然とした美しい都市が見られただけであった。そのためカーク船長以下、調査班が探査に赴いた。』
船長席に座っているスコット※7。ナビゲーターはハドレイだ。
カーク:『カークよりエンタープライズ、探知装置の反応は。』

都市※8の中にいるカーク。
スコット:『反応は出ていますが、それが何かはさっぱりわかりません。』
カーク:「説明してくれ。」
『それが駄目なんです。位置も定まらないので、装置の故障かもしれません。いま回線をチェックしてみます。』
「そうしてくれ。ウフーラ大尉※9、救難信号の発信地点は我々の今いる位置に間違いないな? チェックしてくれ。」

ウフーラ:「はい、現在もまだスクリーンに出ています。こちらから見えるのにそちらにいないんですか。」
スクリーンに映っている異星人たち。『我々は今いる地域の地下壕に避難しているが、滅亡へと…』
カーク:『もう一度、位置を知らせる。座標の確認を、間違いないか。』
ウフーラ:「座標は確かに一致します。」

カーク:「しかし我々のほかには、誰もいない。スカロス人※10など、一人も見当たらないぞ?」
ウフーラ:『救難信号は依然として続いています。繰り返し救助を求めていますが。』
「装置の故障かもしれん。チェックしてくれ、以上。」 コミュニケーターを閉じるカーク。
人工の水場の近くにいるマッコイは、トリコーダーを使っている。「装置の読み違いじゃないのか? 住民どころか、植物もろくにない。動物だって怪しいものだ。」
カーク:「コンピューターで分析してみれば、何かわかるだろう。」 音に手を払う。「だが、虫はいるらしいぞ。」
「トライコーダーに反応はないな。」
「羽音が聞こえる。…スポック、反応はなしか。」
スポック:「文明はかなり高度のものですねえ。工業度は、7 と出ています。絵画などから見て住民は地球人に類似し、文学書類も豊富にあります。翻訳は、可能と思いますが。…なお、建物も調査しましたが最近まで居住していたものと長く廃墟となってるものとがあります。」
「それで、生命反応はないのか。」
「ありました。しかし非常に特殊な反応で、しかも断続的なものです。形態や位置は全くつかめません。全く不可解な現象です。…もう少し、詳しく研究しなければわかりませんね…」
マッコイの後ろにいるクルーのコンプトン※11は、水で手を洗って口をぬぐった。
カーク:「確かに何かいる、スクリーンにも出ているんだ。現在も救難信号は継続しているという報告だ。説明は。」
スポック:「今のところできません。」
「スポック、これから君は船のあらゆる探知装置を動員してこの惑星を徹底的に探査…」
また羽音が聞こえてきた。すると、コンプトンが消えてしまった※12
マッコイ:「コンプトン!」
カーク:「…どうした。」
「わからん。確かに今までそこにいたんだ。…それが急に消えてしまった。」


※1: ハヤカワ文庫のノヴェライズ版は、「宇宙大作戦 惑星ゴトスの妨害者」収録「まばたき」になります

※2: TOS第36話 "Wolf in the Fold" 「惑星アルギリスの殺人鬼」のアルギリス2号星の使い回し

※3: "Ship's Log"

※4: 吹き替えでは「0404.8068」

※5: Scalos

※6: 原語では「銀河系の外縁領域を探索中に」とも言っています

※7: この映像は TOS第63話 "The Empath" 「恒星ミナラの生体実験」のワンシーンを使い回したもので、原語ではスコットの元のセリフが小さく聞こえます。後ろの通信士官はウフーラではありませんし、少し後のスクリーンのシーンでは今回登場していないはずのチェコフの後ろ姿が映ります

※8: マットペインティングは、TOS第23話 "A Taste of Armageddon" 「コンピューター戦争」のエミニア7号星のものを再利用

※9: 吹き替えでは「尉」。TOS では基本的に中尉は存在しないと考えられます

※10: Scalosians

※11: Compton
(ジェフリー・ビニー Geoffrey Binney) 赤シャツ。声:石森達幸

※12: 予告編でも同じシーンがありますが、映像処理が異なっており一瞬で消えます

・本編
エンタープライズ。
ブリッジに戻るカーク。「ウフーラ大尉、救難信号に応答するんだ。スコッティ、転送機の制御装置の故障は直ったか?」
スコット:「はい。ミスター・スポックは今そこにいますか。」
「いやあ、医療室にいる。ドクターが調査班の検診をしてるんだ。どうした、大尉。」
ウフーラ:「故障みたいです。」
「スールー、スキャナーは。」
「ああ、元に戻りました。」
スールー:「船長、ハンガーデッキにトラブル発生しました。…制御が利きません。」
カーク:「修理班を配備してくれ。」
「はい。」
ウフーラ:「テープの準備できました。」
カーク:「かけてくれ。」
スポックがターボリフトを出た。
スカロス人が映る。『惑星スカロスより、通信距離内にいる全宇宙船に救助を求む。我々は今危機に晒されている。ここにいる我々は、このスカロス最期の住民。かつて栄えた文明社会の生き残りだ。』 仲間※13に近づく。『我々は今いる地域の地下壕に避難しているが、滅亡へと追いやられた原因については不明だ。生存者はわずか 5名。かつては 90万の人口を誇っており…』
カーク:「そこでストップ。」
『この年…』 映像が止まった。
スポック:「救難信号はあらかじめ録音されていたと考えられますね。我々の救援が間に合わなかったものと、思われます。」
ウフーラ:「信号の継続はそれで説明がつきます。それから調査班しか探査装置に現れなかったわけも。」
カーク:「とにかく我々があの場所で彼らを発見できなかったのは事実だ。だが一つ大きな謎が残る。コンプトンの行方不明の件だ。」
スポック:「我々に探知不可能な何らかの力、あるいはものが働いていると推測できますね?」
「…スールー。…各部門に待機命令だ、この件を徹底的に調査する。」
スールー:「船長、デフレクター使用不能です。制御装置が利きません。」
「…スコッティ、点検は。…スポック、我々がスカロスから戻って以来各部門の装置に異常を来している。原因を突き止めてくれ。」
通信が入る。『マッコイよりカークへ、検査のため医療室へ来てくれ。』
カーク:「ちょっと待てないか。」
『君の命令だろ、ここは皆済んだ。』
「で何かつかめたか。」
『ここでは話せん。』
「よし、いま行く。スポック、後を頼む。」

医療室に入るカーク。「どうした。」
マッコイ:「君から直接報告してくれ。」
クリップボードを持っているクリスチン・チャペル看護婦※14。「誰かキャビネットを開けて、薬品類を全部動かしたようなんです。」
カーク:「なくなった物は。」
「ありませんけど、全部一つずつ試してみたような形跡があります。」
「わかった。」
マッコイ:「横になってくれ。」 回転するベッド。
「ほかの一連の異常と関連してるな。」
マッコイは装置を使い、モニターに状態が出る。
カーク:「ドクター、ほかの者には何か異常はなかったか。」
マッコイ:「ああ、全員正常だ。コンプトンの身に何があったか知らんが、ほかの者は影響を受けてないのは確かだ。」
「では誰も、戻ってから異常は訴えていないというのか。」
「ああ、別にないようだ。」
また羽音が聞こえてきた。すぐに収まる。
マッコイ:「おい、まだ済んでないぞ…」
カーク:「待ってくれ。……ドクター。私に幻覚を起こすような症状があるか。」
「…どうしたんだ。」
「さっきも 2度ばかり何かに触られたような気がした。だが何も見えない。今またそんな感じがした。気のせいか、異常なのか。」
「別に、身体的に異常はないがね。」
「じゃ精神的におかしいのか。」
「…そうは思えんな。」
「…では何者かが忍び込んだ。」 聞こえてくる音。「目に見えない敵だ!」 呼び出しに応えるカーク。「カークよりスポック。スポックいるか。」
乱れるスポックの音声。『船長、生命維持装置に異常反応です。』
カーク:「スポック、聞こえないぞ。チェックしてくれ、回線の異常じゃないか。」
ウフーラ:『船長、船内通話装置が不安定です。』
「大尉、全船に指令だ。連絡には通信機を使用。全乗組員フェイザー装備だ。スポック、報告を。」
スポック:『生命維持装置に異常な反応が…』
「よし、すぐ来てくれ。」

保安部員※15に続いて廊下を歩いてきたスポックは、医療室を出たカークにフェイザーを渡した。
突然音がし、前を行っていた保安部員はエネルギーを受けたように倒れた。意識はある。
カーク:「スポック。」
スポック:「一種の、電磁スクリーンですねえ。初めて見る種類のものです。…トライコーダーに、さっきスカロスで探知されたものと全く同じ生命反応が見られます。位置も相変わらず不明です。」
「フェイザーをセット。掃射するんだ。」
一斉にフェイザーを撃つ。通れるようになった。
だが保安部員 2人だけが反応した。手を差し出すカーク。
スポック:「どうやら相手は、我々 2人しか通過させまいとしているようですね。用心すべきです。」
そのままの態勢で進むカーク。「環境制御室」とある。
その場で待機する保安部員たち。

部屋※16に入った 2人。装置に管がつながっており、別の装置がついている。
カーク:「何だ。」
スポック:「わかりません。しかし明らかに外部から持ち込まれた装置です。」
「生命維持装置につないである。妨害するためだろう。」
「装置にまだ異常はありません。取り付けは完了していないものと思われます。」
「取り外せ。」
スポックは手を近づけたが、見えないフィールドに遮られた。
カーク:「破壊するんだ。」 スポックと共にフェイザーを向けるが、フェイザーが手から消えた。
さらに後ろに押しやられる。
カーク:「これはスクリーンじゃないぞ。何かが押し戻したんだ、何かいるんだ。おい! ここで何をしている! 姿を見せろ!」
羽音がしたが、すぐに聞こえなくなった。
2人は装置に手を伸ばそうとするが、やはり無理だ。
スポック:「どうも、触れるのはいけないらしいですね。ただ見せるだけです。」
カーク:「力の誇示か。」
「ええ、これを取り除くのは不可能だと悟らせるためでしょう。そのために我々を、ここに通したものと思われます。」

ブリッジでチップ状のテープを扱うスポック。
カーク:「データをコンピューターにかけてみてくれ。」
スポック:「はい。」
「答えは。」
「コンピューター、分析の結果は。敵は侵入しているか?」
コンピューター※17:『しています。』
「敵の形態および性質はわかるか。」
『データ不足です。』
「では敵の数、その勢力は。」
『データ不足です。』
「侵入の目的は。」
『当面の目的は、エンタープライズの乗っ取りと乗組員の身柄の拘束です。最終目的※18についてはデータ不足です。』
「コンプトンの行方不明の件とこれには何か関係があるのか?」
『データ不足です。』
「我々は現時点でこれに対抗できるか。」
『できません。』
「では何か対策は。」
『抵抗は不可能につき、交渉するほかありません。』
カーク:「交渉などもってのほかだ。どうだ、スコッティ。」
スコット:「そうですよ。」
「君は、スポック。」
スポック:「ほかに対策はあると思いますか。」
船長付下士官が、飲み物を運んできた。
カーク:「ああ、ありがとう。コーヒーを入れる装置は、まだやられていなくて助かった。このまましばらく、相手の出方を待って決めよう。」 船長席に座る。※19
また羽音が聞こえる。耳を押さえるカーク。
※20すると、カップの中のコーヒーが揺れ出した。収まる音。
コーヒーを口にするカーク。顔をしかめた。
カークはふと、スコットのいる機関コンソールを見た。全体が傾いていく。
羽音が続く。ゆっくりと動くスコット。

スポックも気づいた様子はない。後ろ姿を見つめ続けるカーク。
スポックもゆっくりと動いているように見える。
カークは椅子を降りた。ウフーラがこちらを見ている。
スポックに近づくカーク。「スポック。」
だがスポックはテープを手にしたまま、動かない。
女性の声。「船長?」 ターボリフトの前に立っていた。
カークは見つめ、近づいた。「これはどういうわけだ。」
女性はいきなりキスし、抱きついた。
離すカーク。「君は誰だ。」
女性:「ディーラ※21。あなたの敵。」


※13: 右端はスカロス人 Scalosian
(エド・ハイス Ed Hice 映画 ST4 "The Voyage Home" 「故郷への長い道」のスタント) セリフなし、ノンクレジット

※14: Nurse Christine Chapel
(メイジェル・バレット Majel Barrett) 前話 "Plato's Stepchildren" 「キロナイドの魔力」に引き続き登場。声:北見順子

※15: 右側は Secutiry Guard (リチャード・ギアリー Richard Geary) TOS "The Empath" 以来の登場。エンサイクロペディアでは誤って「スカロス人」として掲載されています。セリフなし、ノンクレジット

※16: 環境制御室のセットは、会議室を改装したもの

※17: コンピューター音声 Computer voice
(メイジェル・バレット Majel Barrett) バレットはチャペルとしても出演しており、こちらはノンクレジット。声:芝田清子

※18: 吹き替えでは「最初の目的」と聞こえます

※19: ターボリフトのドアが開きっぱなしになっています

※20: TOS の旧国内オンエア分では、カット部分が存在しています。DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります (CS版との比較)。LD では基本的に、その部分だけ字幕収録です

※21: Deela
(キャシー・ブラウン Kathie Browne 2003年4月に死去) 声:沢田敏子、DS9 初代・3代目・5代目ウィンなど

尋ねるカーク。「それじゃ君の仕業か。」
ディーラ:「ええ。船に戻るときあなたについてきたの。処理には手間がかかったけど、何とか上手くできたわ…」
「一体部下をどうした。」
「どうもしないわ?」
「どうもしない? …スポック。」
わずかに動くスポック※22
カーク:「スコッティ。…これで何もしないのか!」
ディーラ:「みんな別に異常はないのよ。今までと変わりなくやってるわ? 変わったのはあなたの方。」
動かないウフーラに近づくカーク。「大尉。スールー。これでも変わりないのか!」
ディーラ:「みんなにはもう聞こえないわ、聞こえても虫の羽音ぐらいにしか。さっきのあなたの表現を借りればね、いい例えではないけど。本当よ、あなたの部下に異常はないのよ。」
「一体何をしたんだ。」
「あなたを変えたの。私と同じレベルにね。乗組員にはもう見えないわ? 私もあなたも、速度の違いなのよ。目に止まらぬ早さで※23動いてるの。そう、理論では説明できそうもないわね? …ただ肝心なことは、あなたが私を見て話もできるってこと。…あとは問題じゃないわ。」 肩に触れるディーラ。
「なぜだ。」
「あなたが気に入ったから。わからない? それとも目に見えない相手にキスされてる方がいいの?」 ディーラはまた口づけする。
「ディーラ。…そのためにこの船を破壊したのか。」
「これは破壊とはちょっと違うわね? ただ、私達に向くよう多少変えただけなのよ。」
「『私達』。」
「ええ、そうね? 科学主任のラエルと部下。私は女王ってわけ。これからあなたは王になるのよ。」 笑うディーラ。「スカロスの生活はきっと気に入るわ?」
「エンタープライズはどうなる、乗組員は。」
「そう、彼らの時間で数秒後にあなたの消えたことに気がつくわ? そして探し始める。だけど無駄だわ。…あなたは加速されて彼らの目にはもう止まらないの。…その内みんなあきらめるわ。あなたもあきらめるのね。もう元には戻れないのよ、永久に。…それはそんなに恐ろしいことかしら?」
フェイザーをセットするカーク。「殺すつもりはない、だが相当ショックを受けるはずだ。」
ディーラ:「残念だけどそれは効かないわ。…嘘だと思うならやったら? …構わないわ、狙っても。」
発射するカーク。
ビームがゆっくりと伸びていき、ディーラは易々と避けた。「…そんな原始的な武器で私の反応に間に合わないのよ。…それに防御も、ちゃんと考えてるわ?」 服から装置※24を取り出した。「これも同じように破壊と衝撃に使い分けできるの。」
※25が響き、フェイザーが飛んでいった。
ディーラ:「あきらめて。私の言うとおりにしてちょうだい。あなたにはもうどうすることもできないのよ。」
カーク:「……君の言い分に同意すれば、エンタープライズを解放してくれるか? あの機械を生命維持装置から外すか?」
「…バカなこと言わないで、しばらくすれば気持ちも落ち着くわ? いつもみんなそうなの。初めは気が転倒するのね。だけどすぐに、馴染んで喜ぶようになるわ? あなたもそうよ。」
ターボリフトへ向かうカーク※26
ディーラは首につけた小型装置に触れた。「今そっちへ行ったわ。丁重に扱ってね?」

※27話すウフーラ。「船長。…カーク船長! いないわ。」
誰もいない船長席。
スポック:「ウフーラ大尉、君見ていたのか。」
ウフーラ:「この椅子に掛けてました。そして今コーヒーを飲んでカップを置くと、ほらここにあります。それから急に、消えてしまったんです。」
「ミスター・スールー、君も見たか?」
スールー:「ええ、確かに今までここにいました。それが急に見えなくなってしまったんです。」
カップを手にするスポック。

廊下を走ってきたカーク。環境制御室の前で待機したままの保安部員。
クルーが出てきた。「カーク船長、来られましたね。」
カーク:「コンプトン。…君も加速されたのか。」
「そうです。」
「彼らは生命維持装置に何か取り付けたんだ。彼らは今いない。機械を取り除こう、来い。」
コンプトンは遮った。「駄目です、ここには入れません。」
カーク:「誰の命令だ。」
「指揮官のです。それ以上近づかないでください!」
「指揮官はこの私だぞ。そこをどけ、これは命令だ。」
「すいません、あなたはもう違います。」
「じゃあ誰だ。ディーラか? 君は今彼らに従ってるのか。」
スカロス人の女性が歩いて中へ入っていった。
コンプトン:「初めは拒否しました。…でもしばらくして無駄と悟りました。あの子に会ってから。スカロス人の一人で、素晴らしい女性です。船に連れ戻してくれたんで、制御装置や生命維持装置の機能や操作方法を教えました。…それらを知りたいと言ったんです。初めはわかりませんでしたが、今は意義を認めています。船長もそうなります。」
カーク:「そうか、わかった。」 去る振りをしてコンプトンを蹴り、倒した。
環境制御室に入るカーク。
中にいたスカロス人のラエル※28は、救難信号を送っていた人物だ。「気絶させろ。」
隣のスカロス人※29が装置を使う。カークは前の保安部員と同じエネルギーを受け、その場に倒れた。
戻ってきたコンプトンはスカロス人に抵抗するが、ラエルに装置で切られた。
ラエル:「止めろと命令したはずだぞ、なぜ従わなかった。」
コンプトン:「止めようとしました。」 首を怪我している。「怪我をさせたんですか。」
「暴力を振るうのを阻止したまでだ。」
「しかし元の、上官です…」 倒れたコンプトン。
スカロス人:「細胞破壊です。」
ラエル:「もう一人別のを選ぶがいい。」
うなずき、歩いていく女性。

カップを調べるスポック。「痕跡反応を調べたが、惑星上のものと類似している。スールー、君はコーヒーを飲んだかね?」
スールー:「はい。」
「ほかに飲んだ者は。」
スコット:「ええ、私も。」
「カップを。」
「コーヒーのせいですかね。じゃ、我々も今に船長みたいにパッと…」
「分析結果が出るまでは、はっきりしたことは言えない。」
「でも、それじゃもう手遅れかも…」
「船長はさっき、次に相手はどう出るか見てから対策を考えると言った。これが向こうの答えだ。これを元に我々は対策を立てねばならない。スコット、指揮を頼む。私は医療ラボ※30にいる。」 ブリッジを出ていくスポック。

倒れたままのカークのそばにいるディーラ。「この人たちの扱い方は知っているはずよ? 力を加減しなきゃ駄目じゃないの。…特に彼は慎重に扱って。…これだけ頑固な種族なら、長生きしてくれるかもしれない。」
ラエル:「そうかもな?」
「きっとそうよ。みんなすぐ死んでしまうけど、彼には長生きして欲しいわ? 素敵だもの。」
「下等な種族じゃないか。」
「いいえ? 私はそうは思わない。」
「思い入れが強すぎると、傷つくのは自分だぞ。」
「私が誰を気に入ろうが私の自由よ。お願い、そんなこと言わないで。…嫉妬なんかしないでよ。」
「仕事をしてるだけだ。」
「私もよ? ただ仕事に楽しみを見つけてるだけ。」
意識を取り戻すカーク。
ディーラ:「お目覚め?」
カーク:「…その装置で何をする気だ。」
ラエル:「…ディーラに聞くんだな。」
ディーラ:「何でも聞いてくれて構わないわ? きっと気に入るから。」
カーク:「気に入るだと? こんな捕虜の身で。」
「違うわ、あなたは好きに行動していいのよ?」
装置が稼働し始めた。
ラエル:「さあ、どうぞ? 生命維持装置への接続はこれからだが、動くことは動く。好きなだけ見てくれ。ただし、触らん方がいいぞ。」

手を伸ばすカーク。やはり前と同じでエネルギーが走り、手を引っ込めた。
それでもカークは両手で触れた。音が激しく鳴る。
やめさせようとするディーラ。しばらくして、カークは手を離した。
ディーラ:「触るなって言われたでしょ。手を御覧なさい、凍りつくとこだったわ。でもすぐ治るわ。」
ラエル:「この装置※31は自動的に防御システムが働くようになっている。だから注意したんだ。」
倒れたコンプトンを見るカーク。その姿は老人化し、白髪になっていた。
ラエル:「2人で揉み合ったとき、君はコンプトンにダメージを与えた。」
近づくカーク。
ラエル:「我々と同じレベルに加速した直後は、細胞破壊が起きやすい。急速に歳を取り死んでしまうのだ。」
カーク:「…あんな若い男が。」
「そうだ。」
「それが君たちの目的なのか。」
「いずれ死ぬ身だ、スカロス人も同様。」
環境制御室を出ていくカーク。
ディーラ:「なぜ嘘をついたの? あの男を駄目にしたのはあなたでしょ。」
ラエル:「暴力を振るわせないためだ。」
「今以上に気持ちを動揺させる必要ないわ。」
「どうしてそれほど気を遣うんだ。」
「ラエル、彼は同類じゃないのよ? 一時の間に合わせ。」 通信機を使うディーラ。「いま医療ラボの方へ行ったわ。きっと部下と連絡を取るつもりなのよ。あの種族は愛情を強く感じるの。」
「ああ、そうらしいな?」
「私達に対してそれを見せるかどうかね? …ラエル、すねるのはやめて。…受け入れるのよ、それが私達の使命なの。ことを面倒にしないで。」
ラエルはディーラとキスした。一度口を離して、また続けようとする。
ディーラ:「仕事に戻って?」 歩いていく。

装置の前にいるカーク。「カークよりスポックへ。」
医療ラボのカークの前にはスポックたちがいるが、動かない。
カーク:「これまで確認あるいは推測しうる限りの情報を、コンピューターバンクに入れる。」
ディーラが来た。「続けて。…それは今役に立たないけど、歴史的資料としては意味ありそうね?」
カーク:「この問題を解く鍵は、超高速度※32だ。…侵入したのは 5名に過ぎないが船の制御権を握り、我々は皆彼らの支配下に入っている。…彼らは我々を、同じ高速状態のレベルに引き上げることができる。…この私とコンプトンがその例だ。目的は我々を、隷属させること。…なおこのレベルに加速され引き上げられてしばらくすると、みな彼らに従順になる。だが、もし…」
「傷つけば。」
「傷つけば、たちまち老化して死んでしまう。あたかも、生命現象が…」
「燃え尽きるように。」
「燃え尽きるように。コンプトンは、燃え尽きて死んだ。…例の生命維持装置に連結した機械は、非常に冷たい寒気を発生させる装置で私の推測ではエンタープライズを凍結し、乗組員をそのまま保存するためと思われる。…その目的は、スカロス人にしかわからない。」
「かなり正確ね?」
「その機械は防御スクリーンをもち、直接接触することを妨げている。破壊する方法は不明だが、いかなる方法にせよ破壊することが必要である。」
「装置は間もなく作動し、この記録を読むときには既に手遅れのはずである。」


※22: 本来、少しでも動くのは変かもしれません。すぐ後のスールーもスロー描写が見られます。また、ウフーラのイヤリングが揺れていたり、スコットの顔の向きがディーラが現れたときと変わったりしています

※23: "in the wink of an eye" 「瞬く間に」。原題の由来

※24: TOS "The Cloud Minders" で、アーダナ人の武器として再利用

※25: クリンゴン・ディスラプターの発射音を使い回し

※26: カークはターボリフトから外へ向かったはずですが、足音はずっと続いています。別の出口もあるんでしょうか?

※27: この個所のブリッジのシーンは、旧国内オンエア版では次のシーンと入れ替わっています。恐らく次のカットに関連した処置だと思われます。本来の順番のままだと、カークが倒された直後にいつの間にか立ち直っていることになってしまうため

※28: Rael
(ジェイソン・エヴァース Jason Evers 2005年3月に死去) 声:嶋俊介、TOS カイル、ムベンガ、旧ST5 マッコイなど。DVD 補完では星野充昭、TNG ラフォージ、ジャックなど

※29: 名前は Ekor (エリック・ホーランド Erik Holland) ですが、言及されていません。なぜか「エール」になっている日本語資料もあります。声:井上弦太郎、TOS チェコフなど

※30: 吹き替えでは全て「医療

※31: エンサイクロペディアでは「凍結装置 (refrigeration unit)」として掲載。吹き替えではこの語も使われています

※32: hyperacceleration

止まったままのスポック、マッコイ、チャペル。
ディーラ:「相当分析力はおありのようね、船長。推測は大体のところ当たってるわ。」
カーク:「目的は何だ。」
「ほんとに知りたいの? さっきまでは気にも留めなかったようだけど、現状に満足してたんでしょ? コンプトンのように。」
「理由を知りたい。」
「ほんとに、粘り強い人ね? …私達がやむをえずやってることは察しがつくと思うけど。…かなり前までは、私達の惑星もあなたたちと同じだったわ。それがあるとき、火山の爆発によって絶滅に追い込まれた。水は汚染され、放射能が漏れてその結果私達は今のように変化したの。…子供は皆死に、女性の大部分は子供が産めなくなるの。男性は皆生殖能力を破壊された。それで種族保存を外部に頼るようになり、宇宙船が来る度に救難信号で呼び寄せたの。…でも同じレベルに加速すると皆すぐに老化するの。これでわかったでしょ? これ以上説明はいらないわね? …あなたを惑星へ連れ帰るつもりよ? 多分ほかの乗組員も 2、3人。…わかったでしょ? みな大事に扱って、傷つけたりしないわ。あなたが気に入ってるのよ。」
「…残りの乗組員はどうなる。」
「このまま凍結してここに閉じ込めておきます。…何の害も受けないわ。将来また必要になった場合に備えて取っておくの。あなたも永久には生きないわ、それはわかってるわね? …私達にも生きる権利はあるわ!」
「他人を殺してまでか!」
「それはあなたたちだって同じだわ。生命維持装置に異常を発見した途端、攻撃に出てきたでしょ? …できたら私達を皆殺しにしていたはずよ。」
「侵入者から船を守るためだ!」
「私達も同じよ。」
「いや、それは違う! …君たちのトラブルは、全て内輪のことだ。」
「好きで起こしたわけじゃない、私達の罪じゃないわ。これしか生き残る方法がないからやってるのよ。私達の親もその前もずっとこうしてきたわ。」
「それで解決できたのか、今まで! ほかの方法を試したのか。…ディーラ、今すぐあの機械を取り外し破壊するように言うんだ。君たちのためにあらゆる援助をすると、約束する。ほかの惑星へ移住させてもいい。惑星連盟※33に呼びかけ、専門家に君たちの問題を解決させる。だから…」
「ほかの方法も試したのよ。あなた方のレベルに戻る方法も。今まで 2、3 の人がね。でもその人たちみんな死んだわ。私達に出口はないの、今のあなたと同じように。あなたには悪いと思ってるわ、でも仕方ないのよ。これしか方法はないわ。」
ラエルの通信が入る。『ディーラ、転送ルームへ行ってくれ。転送台に行ったら、合図の信号を。』
ディーラ:「船長もでしょ。」
カークは密かに、コンピューターからテープを抜いた。
ラエル:『…そうだ、装置の連結スイッチを入れたら私も行く。船を出るまでの時間は確保するようセットした。だから遅れんように。』
カークはテープをスポックの前のコンピューターにセットし、後ろに下がる。
ディーラ:「言われるまでもないわ、なぜそんなことを。…船長がいないわ?」

ラエル:「早く捜すんだ!」

追うディーラ。

話すマッコイ。「いやあ、もう疑問の余地はないね。これを見てくれ、スポック。カークのコーヒーには、スカロスの水と同じ成分が含まれてるが、ほかのカップの中身には全くそれが入ってない。」
スポック:「うーん。」

コンソールの下で作業しているカーク。転送室だ。
カークは立ち上がった。
ディーラがやってきて、武器を向けた。「なぜ逃げたの。」
カーク:「急に怖くなってね。」
「信じられないわ。」
「例の装置が作動する前にこの船を出たいのはやまやまだ。」
「転送ルームに来たわ、始めてちょうだい。」
ラエル:『よーし、すぐに転送しろ。』
操作するディーラ。「さあ行って?」
転送台に載るカーク。
ディーラは操作を続けるが、反応がない。「装置に何か細工したのね。」
カーク:「前には正常に動いた。もう一度やれば。」
やはり駄目だ。
ディーラ:「転送機が働かないわ。」

ラエル:「その男の仕業か?」
ディーラ:『そんな暇なかったわ。多分機械の、故障か何かよ。調べてちょうだい。…凍結装置はまだスイッチ入れないで。』

転送台を降りたカーク。
ディーラ:「どこが故障したか見当がつく?」
カーク:「うちの技術主任が、前に出力が落ちたと報告していたが。」
「出力が落ちたせいかもしれない。」
ラエル:『聞こえてる、こいつを信用するのか。』
「チェックしてとにかく原因を調べてちょうだい。」 通信を終えるディーラ。「もし私が疑い深い性格だとしたら時間を稼ぐためにあなたが細工した、そう思うところよ?」
カーク:「だろうな。」
「でも 2人とも違うでしょ? …私ずる賢い人って、嫌いなの。」
ディーラの髪に触れるカーク。「ま何事も正直な方が私も好きだ。」


医療ラボのスポック。「クリスチン今までのデータをプログラムして、中和剤の発見の可能性を調べてくれ。」
音が聞こえてきた。耳のそばを払うスポック。「ドクター、今の音は…」
マッコイ:「この音なら、スカロスから戻って以来ずっと聞こえていたぞ?」
「うーん。これでわかった。スカロスから、持ち込んできたんです。…ちょっと失礼します、ブリッジに用がありますんで。」

カークの部屋のディーラ。「この部屋はあなたに似てるわね。飾り気がなくて機能的で、そのくせ一種美しさがあるわ?」
カーク:「住む者の性格を反映するものさ。」
「本当ね。身なり整えていい? あちこち飛び回って髪もクシャクシャ。しばらく休むのはあなたのためにもいいわね。」 髪を解かすディーラ。「船長、あなた結婚は? 家族もなし、意中の人もない。」
鏡に写っているカーク。「うん。」
ディーラ:「…わかるわ、仕事一筋に打ち込んで女には目もくれないんでしょ?」
「いや? 美人ならいつでも、関心がある。」
「いつお世辞言ってくれるかと待ってたわ。…これで少しはマシになって?」
うなずくカーク。「まあね?」
ディーラ:「あなたに見られないでキスするのはとっても楽しい経験だったわ? だけど…」
腕をつかむカーク。「だけど何。」 口づけした。手を引き寄せ、また続けようとする。
ディーラは離れ、手元の武器を見せた。「これを渡すわけにはいかないわ、たとえ全面的に信頼したとしてもね。…でも狙わなかったらきっと失望したわね。」
カーク:「それほど、見え透いていたかな。」
「二度としないことね? 今あなたを傷つけたらおしまい。私は引っかくだけで、済むのよ?」
指から逃げる振りをするカーク。「ああ、わかってる。」
ディーラ:「これで意見は一致したわね。今にあなたは私達の考えを受け入れるわ。それが早ければ早いほど、いいのよ。」
2人はキスを続ける。

ブリッジのスポック。「ウフーラ大尉、スカロス人の救難信号をスクリーンに出してくれないか。」
ウフーラ:「はい。」
ラエルの映像。『惑星スカロスより、通信距離内にいる全宇宙船に救助を求む。…我々は今、危機に晒されている。ここにいる我々は、このスカロス最期の住民。かつて栄えた文明社会の生き残りだ。』
コンピューターに触れると、コンプトンが消えたときの様子が映った。あの音が聞こえる。
マッコイ:『コンプトン!』
カーク:『どうしたんだ。』
『わからん。確かに今までそこにいたんだ。それが急に消えてしまった。』
またラエルに戻る。『我々は今いる地域の地下壕に避難しているが、滅亡へと追いやられた原因については不明だ。生存者は 5名。かつては 90万の人口を誇っ…』 再生速度が遅くされる。

巻き戻し、今度は速度を上げる。
映像が見えなくなるほど速く繰り返されると、ラエルの声が羽音に聞こえてきた。
そしてカークが地表にいた時の映像。
カーク:『だが虫はいるらしいぞ。』
マッコイ:『トライコーダーに反応はないな。』
『羽音が聞こえる。』
『住民どころか、植物もろくにない。動物だって怪しいものだ。』

マッコイは医療ラボのコンピューターからテープを取った。気になる様子で、一枚を戻す。
再生すると、羽音が響いた。切るマッコイ。「マッコイよりスポック。」
スポック:『スポックです。』
「ここのコンピューターにテープが入っていた。かけてみたら例のブンブン言う音がするんだ。」
『すぐそれをブリッジに持ってきてください!』

カークがモニターに映っている。『生命維持装置に連結した機械は、非常に冷たい寒気を発生させる装置でエンタープライズを凍結し、乗組員をそのまま保存するためと思われる。…その機械は防御スクリーンをもち、直接接触することを妨げている。破壊する方法は不明だが、いかなる方法にせよ破壊することが必要である。』
ディーラ:『機械は間もなく作動し、この記録を読むときには既に手遅れのはずである。』
スポック:「ウフーラ大尉、全船にこれを伝えてくれ。」
ウフーラ:「はい。」
スコット:「フェイザーで壁を焼き切り、あの電磁スクリーン※34を迂回すれば機械に近づけますよ。」
スポック:「しかし、我々の今のレベルでは対抗できない。」
「じゃあ向こうのレベルになる方法を見つければ。」
「それは、非常に論理的提案だ。転送ルームで待機してもらいたい。」

転送コンソールを直すラエル。
スカロス人がやってきた。「どこにも異常はありません。エネルギーも転送には十分です。」
スコットは転送室の入口で突っ立った状態になっている。
ラエル:「やはりここの故障か。ほかの連中を皆集めてくれ。」 連絡する。「ディーラ? ……ディーラ! …ディーラ!」 出ていく。

ブーツを履くカーク。ディーラは髪を解かしている※35
髪に触れるカーク。また口づけを始めた。
その時、ラエルがカークの部屋に入った。
ディーラ:「ラエル!」
カークに殴りかかってくるラエル。カークは枕で抵抗する。
ディーラ:「やめて。」 武器を取り出す。
ラエルはカークを追い詰め、手を振り上げた。


※33: 今回の連邦 (Federation) の訳語

※34: この原語ではフォースフィールドと言っている個所、吹き替えでは何と言っているかよく聞き取れません。「陸戦地場 (りくせんちば) 」?

※35: このある種「過激」な描写は、当時の規準では本来ならカットされるという説もあります

椅子を持ち上げるカーク。「やるか。」
ディーラはラエルに向けて武器を使った。エネルギーが当たり、ラエルは武器を取り落とす。
まだカークに向かおうとするラエルに、ディーラは再び武器を使った。「やめて!」
ふらつくラエル。
ディーラ:「やめなさい! 船長、怪我はしなかった?」
カーク:「ああ。」
「あなたにとっても幸いよ、ラエル。…こんなこと二度としてもらいたくないわ。軽蔑すべき行為よ。」
ラエル:「じゃ苦しめないでくれ。気持ちはわかってるはずだ。」
「あなたの気持ちなど関係ないわ、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ? 私の行為は必要なもので、あなたにとやかく言う権利はないわ。選んだ相手に好意をもつのは当然のことよ。……転送機は直ったの。」
「いや、もう少し調べないと。」
「それに早くかかるべきね。」
カークを見るラエル。カークの部屋を出て行った。
ため息をつくディーラ。「…私を愛してるの。小さい頃は尊敬してたわ。今でも変わりはないけど。でもあなたの方が礼儀をわきまえてるわね。」
カーク:「どうかな。」
「いま何ってった?」
「いやあ別に、そう思われてよかったと。」
「これでもう、問題はないわね。」
カークは首を振った。「どうしてこの部屋に。」
ディーラ:「出発が遅れたのよ。覚えてないの? あなたが転送機を壊したのよ?」
「そうだ、まずいことをした。」
「…やっとわかったのね。」
「これからスカロスへ行くんだろ?」
「行きたいの?」
「もちろん。」
「ほかの乗組員がどうなるか心配じゃない?」
「大丈夫、やっていく。」
「ああ!」
「どうかしたのか。」
「別に? ようやく現状を受け入れたみたいね。しかも熱心に。」
「それは、間違ってるのか?」
「違うわ? でも前のあなたの方が好き。頑固で粘り強く抵抗する、ラエルのようにね。」
「しかしそれは欠点のはずだ。」
「それに惹かれてたんだわ。ラエルの場合も同じよ。」 連絡するディーラ。「ラエル? 船長のことはもう心配いらないわ。完全に順応したわ。」

医療ラボのマッコイ。「できた。」
受け取った液体を水に入れ、トリコーダーで調べるスポック。「ええ、例の物質を完全に中和してますね。」
マッコイ:「ともかく実験ではね。しかし、問題は体内に入った場合も効果があるかどうかだ。それともう一つ、どうやってカークに飲ませるか。」
「スカロスの水を飲んで、捜すんです。」 いきなり飲むスポック。
「おいスポック、その効果もまだはっきりとは…」
「味は多少、刺激的です。」 音が響いてきた。片眉を上げるスポック。「視界は変わり、皆ゆっくり動いてるように見えます。……面白い※36。」
スポックは歩いていった。動きを止めるマッコイとチャペル。
少しして、チャペルは言った。「消えました!」
マッコイ:「ああ。…コンプトンと同じだ。」

転送機を操作するラエル。転送されていくスカロス人 3人。

ラエル:「ほかの者は転送した。」
ディーラ:『じゃ修理は済んだのね。なぜ早く知らせないの?』
「邪魔したくなかった。いつでも来ていい。用意できたら知らせてくれ。」

ディーラ:「こっちはいいわ。」
ラエル:『生命維持センターへ行って、連絡スイッチを入れる。』

ディーラ:『ラエル。ごめんなさい。』
ラエル:「…いいんだよ。」

まだ転送室の入口にいるスコット。ディーラとカークが入る。
ディーラ:「では行きましょう? この船ともお別れね?」

装置のスイッチが入れられた。
ラエル:「装置は作動を開始した。すぐ惑星に戻ろう。」

ディーラ:「心配ないわ、乗組員のことはね。」
カークはおもむろにディーラの腕に手を伸ばし、武器を奪った。「すまないな。」 外へ向かう。
ディーラ:「船長が逃げたわ、武器を取って!」

ラエル:「よし、わかった。」

廊下を歩くスポック。フェイザーを構えた。
カークが合流する。環境制御室へ向かった。
武器を使うラエル。避けるカークたち。
ラエルが環境制御装置の方を向いた隙に、カークはエネルギーを浴びせた。倒れるラエル。
さらに武器によって、スカロス人の装置は破壊された。
ディーラも来た。「さすが頭が切れるわね、上手くだまされたわ。順応すると信じたのが誤りだった。…私達をこれからどうするつもり?」
カーク:「処置を決めるまで、例の機械で凍結することにしてもいい。」
「あなたの場合生存のためじゃないわ。」
「そう、その通り。君たちはどうして欲しいのかな?」
「私達は生存のために闘って、敗れたのよ。」
「君たちをスカロスへ送り返せばまた同じ策略で、別の宇宙船を獲物にするだろう。」
「もう来る望みはないわ。警告して、この空域には近づかないようにさせるつもりでしょ?」
「ああ、それは当然だ。」
「やがて私達は死に、問題は片付くわ。…すっかりね。」

転送室。
ディーラ:「決心は変わらない、船長? そちらの意見はどう?」
スポック:「もしあなたがスカロス内でのみ問題を解決するとおっしゃるなら、我々としてもエンタープライズの問題のみ専念します。」
「スカロスに来れば生活は非常に、快適です。」
カーク:「だがすぐに終わる。」
「それはここでも同じことよ。前のレベルにはもう戻れないわ?」
スポックはカークを見た。
ディーラ:「答えないようね、船長。そんなに気分を害した?」
カーク:「とんでもない。できるなら君と一緒に、いつまでもいたい。ただ、すぐに…死ぬのが困るんだ。」
転送台のラエルの隣に立つディーラ。
カーク:「では転送。」
ディーラ:「さよなら、船長。」
転送される 2人。
カーク:「スポック、どうしてここに。」
スポック:「ドクターと協力して、次元を変えるスカロスの水の中和剤を発見しました。残念ながら、テストする時間はありませんでしたが?」 筒を取り出した。
「いま、試すさ。」 口にするカーク。
見つめるスポック。
カークは首を振った。「別に変わらんな。」
音が響く。
スポック:「…船長の動きが遅くなってきはじめたようです。」
ゆっくりと聞こえるカークの声。「スポック…。」 元に戻った。「スポック!」
スコットが動き出した。「船長! 一体どっから現れたんですか。」
カーク:「それはちょっと説明できないんだ。」
「ミスター・スポックは戻らないんですか。」
「スコッティ。」 2人とも転送室を出る。

ブリッジに戻るカークたち。
『航星日誌、宇宙暦 5710.9※37。スポックは船の修理のため、加速された次元に留まっていた。』
明滅するモニター。
スールー:「各計器板を誰かが調整しているみたいです。」
スコット:「すごいスピードだ、あっという間に直りました船長。」
カーク:「ああ、わかってる。これで、スポックの所在は見当がついた。大尉、君の方の回線は直ったか。」
ウフーラ:「はい。」
「警報解除だ、スールー。」
スールー:「はい。」
「全チャンネルオープン。船長より乗組員へ、目下スポック副長が修理を行っている。まもなく、船の機能は正常に戻ると思う。」
すると、ブリッジの中央にスポックが現れた。
カーク:「スポック。任務は成功だ、君に礼を言う。」
スポック:「ありがとうございます。…おかげで、私も興味ある体験をしました。」
「ああ。もう異常はないと思うが。」
スクリーンにディーラたちが映っている。
カーク:「ウフーラ大尉。」
ウフーラ:「ああ、申し訳ありません、誤ってテープのスイッチを入れました。すぐ消します。」
「それは、故障じゃないな?」
笑うウフーラ。「そうです。」
スクリーンのディーラは、真っ直ぐこちらを見つめている。
カーク:「さよなら、ディーラ。」
スカロスを離れるエンタープライズ。


※36: "Fascinating."

※37: 吹き替えでは「0404.8068」で、なぜか最初の数字 (脚注※4) と変わっていません

・感想など
邦題では思い切りネタバレしていますが、SF らしいアイデアを利用した一作。もっとも原題も内容を示唆していますし、旧題は "The Accelerator" 「加速器」でしたが。水を飲んだだけで発動するというお手軽さなど科学的には「?」な描写があったり、カークの作戦があからさまだったりするのも第3シーズンならではってとこでしょうか。
原案の Lee Cronin は、ジーン・L・クーンのペンネーム。VOY の佳作 "Blink of an Eye" 「超進化惑星の煌き」でも、タイトルを含めてオマージュ的に再現されていますね。旧国内版では、カークがコーヒーを飲むシーンがカットされているのは致命的です。なぜか DVD 資料に、ディーラの補完吹き替えの声優が掲載されていませんね。


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