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エンタープライズ エピソードガイド
第20話「閉ざされたオアシス」
Oasis

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・イントロダクション
料理を口にしたタッカー。「ケイジャン料理よりクるな。」
アーチャーも口に入れ、かむのを止めた。
アーチャーを見るトゥポル。
アーチャー:「ドゥマール※1…何と言ったかな、この…スパイスは。」
同席している異星人。「ハウジャーラン※2です。プリーノス※3の将軍は、これで度胸を試す。あなたもどうぞ一口。」
トゥポル:「度胸を試す必要などありません。」
ドゥマール:「ではほかの物で取り引きを。あ、これはどうです。最高級のトライアクシアン・シルク※4。交換の品物は…タンパク質再配列機では?」
タッカー:「きっと似合うぞ? トライアクシアン・シルク。」
アーチャー:「機関室で使う物が必要なんだ。」
「…デュラテニウムや、ダイリチウムは?」
ドゥマール:「すみませんが、ご紹介できるのは…こういった物だけです。ああ、ただし…ここから 2日のところに小さな星系がある。そこで調達できるかもしれません。」
トゥポル:「長距離センサーでは有人惑星は感知できませんでしたが?」
「ええ、人はいません。一人も。」
アーチャー:「というと?」
「…うん、素晴らしい味だ。何でしたっけ。」
「コーヒーだ。そんなに気に入ったなら、特別にシェフに言って何キロか包ませよう。…さっきの話だが、もっと詳しく教えてくれないか。」
「船長、私は…別に出し惜しみをしてるわけじゃないんです。行かない方が身のためだ。」
「……10キロ包もう。」
「私も偶然見つけただけなんです。」
タッカー:「何を。」
「船ですよ。星系内の惑星に不時着してた。生命反応がなかったんで、シメシメと思い…すぐ部品調達に向かいました。」
「何があった?」
「貨物輸送船です。ひどく損傷してました。片っ端から奪えば、大儲けできた。」
トゥポル:「できたとは?」
「そこのクルーに、止められてね。」
アーチャー:「生命反応はなかったと言わなかったかね?」
「その通りです。生きてる者は、一人もいなかった。」
タッカー:「お…じゃあ幽霊でも見たってことかな?」
ドゥマールはタッカーを見た。


※1: D'Marr
(トム・バージェロン Tom Bergeron ENT第96話 "Demons" 「テラ・プライム(前編)」のコリダン大使 (Coridan Ambassador) 役) 声:福田信昭

※2: hajjlaran

※3: Preenos

※4: Triaxian silk

・本編
惑星に到着したエンタープライズ。
トゥポル:「大気は薄いが、呼吸は可能です。」
アーチャー:「生体反応は?」
「やはりありません。全く。」
リード:「輸送船を発見しました。」
アーチャー:「見てみよう。」
地上の船が映し出された。
トゥポル:「パワーサインも皆無です。…やはり誰もいません。」
タッカー:「だがセンサーじゃ幽霊は感知できないぞ。今んとこドゥマールの言う通りです。デュラテニウム、ベリリウム感知。それと…ダイリチウム。」
サトウ:「なぜ不時着したんでしょう。」
アーチャー:「そばで見ないと、何とも言えんなあ。」
タッカー:「じゃあ行きましょうよ。」
メイウェザー:「危なくないんですかね。」
サトウ:「ほんとに幽霊が出ると思ってるの?」
「クルーがどうなったかわからない。あの船は墓場かも。わざわざ行って、部品を調達する必要が?」
タッカー:「死体が転がってるとは言ってなかった。船長、エンタープライズは想像以上にダメージを受けています。デュラテニウムをごっそり調達してくれば、修理に役立つ。」
アーチャー:「…行ってみるとしよう。幽霊さんに嫌がられたら、戻ってくればいい。マルコム、ブリッジを頼む。」
リード:「了解。」
「トラヴィス。操縦を。」

船の近くに着陸するシャトルポッド。
ライトを持ったアーチャーは、ドアを開けた。上陸班は皆、ジャケットを着ている。
アーチャー:「トゥポル。」
トゥポル:「反応なし。」
タッカー:「ドゥマールによれば、機関室はこの奥です。」
アーチャー:「君とトゥポルで行ってくれ。めぼしい物を見つけたら連絡を頼む。それと…クルーを見かけてもな?」
「了解。」
向かう 2人。
アーチャーは後ろを向いていたメイウェザーに尋ねた。「異常はないか。」
メイウェザー:「はい、船長。ただ妙なことに、ハッチがしっかり閉まってるんです。…ドゥマールは慌てて逃げ出したのに。」

機関部に着いたトゥポルたち。
トゥポルは物音に振り向いた。
タッカー:「どうした?」
トゥポル:「何か聞こえたわ。」
「…ネズミだろ?」
調べるトゥポル。「違う。」
タッカー:「じゃあ妄想じゃないのか?」
「…ヴァルカン人には無縁です。」
「別に恥ずかしいことじゃない。船は気味悪いし、クルーはいない。オマケに周りは真っ暗だ。誰だってゾッとするさ。」
「…『ゾッとする』?」
「背筋が凍る、身の毛がよだつ。何か怖いと思ったことはないのか?」
「ないわ。」
「ほんとに一度も?」
「ない。」
「残念だな。結構いいもんだぜ?」 ライトを顔の下から当てるタッカー。

メイウェザーは尋ねた。「船長、ドゥマールはほんとに幽霊を見たんでしょうか。」
アーチャー:「さあなあ。先に…もうこの船に目をつけてた奴がいて、追っ払おうとしたのかも。」
「でももしそうだとしたら、船の中はスッカラカンになってるはずじゃないですか?」
「お前の怪談話を仕入れに来たわけじゃないんだぞ。」
「もってこいだけどな。」
笑うアーチャー。「…どう思う。コンピューターの端末か?」
スキャナーを使うメイウェザー。「そうです。パワーは停止。データモジュールは無傷です。」
アーチャー:「船に持ち帰ろう。事情がわかるかもしれない。」

調べるタッカー。「ダイリチウムだ。……ああ。」
トゥポル:「不都合でも?」
「いや。結晶の状態も完璧だ。ちょっと手を加えればまた飛べるよ。」
トゥポルは目の前に映り込んだ人影を見た。すぐに振り返るが、誰もいない。
タッカー:「どうした。」
トゥポル:「誰かいました。」
「生体反応はないんだろ?」
「ありません。」
「俺を驚かそうとしてくれてんなら気持ちは嬉しいが。」
何者かの影が見えた。走っていく。
コミュニケーターを使うタッカー。「タッカーから船長。」
アーチャー:『どうした。』
「誰かいるようです。」
『すぐ向かう。』
人物が消えた方は、行き止まりだった。
トゥポル:「この後ろにスペースがあります。」
フェイズ銃を調整し、焼き切るタッカー。

パネルを外し、中に入った。
ロックを開けるトゥポル。
ドアの中は植物であふれていた。明るくなっている。
タッカー:「どうして感知できなかったんだろう。」
トゥポル:「このセクションには妨害フィールドが張られているようです。」
「ジェネレーターは。」
「…感知はしていますが、位置の特定はできません。」
「急いで探してくれ。」
分かれるトゥポル。
タッカーが歩いていると、女性が立っていた。「やあ。」
何も言わない女性。
フェイズ銃を収めるタッカー。「ごめん、大丈夫だ。何もしやしない。」
だが女性は逃げ出した。
タッカー:「おい。トゥポル!」
追うトゥポル。
タッカーは部屋の中に入った。トゥポルも入り、入り口が閉まる。
そこには大勢の人々がいた。みな銃を向けている。
さっきの女性も、老人のそばに立っていた。

貨物輸送船。
異星人のクーラン※5が話す。「コタラバラー※6のコロニーから母星へ戻る途中、この星系で攻撃に遭ったんです。」
アーチャー:「誰にです。」
「さすがに、自己紹介はされなかった。」
老人※7:「我々は補給船だ、大した武器は装備してない。とても応戦はできません。」
異星人の老婆※8。「だから船長の判断で不時着を。全員生き残れたなんて奇跡だわ?」
メイウェザー:「救難信号を出しました?」
クーラン:「出せばまた、居場所を突き止められる。」
タッカー:「妨害フィールドは身を隠すためか?」
老婆:「私たちを襲った奴らが戻ってくるかもしれないから。」
トゥポル:「どのくらいここに?」
老人:「もう 3年になります。」
アーチャー:「3年? じゃもう家も同然ですねえ。」
クーラン:「選ぶ余地はない。」
「今はある。我々の船で、お送りしましょう。母星へ。」
「ご配慮、感謝します。しかし母星までには 1年かかる。」
メイウェザー:「ここへおいてはいけませんよ。」
「さっきも言った通り、もうここが家なんだ。」
アーチャー:「…エンジンの状態は?」
タッカー:「ダイリチウムマトリックスは安定してます。反物質の残りも多い。船を飛ばすことは可能です。」
老人:「何度も試しましたが、駄目でした。」
アーチャー:「…我々にならできることがあるかもしれません。やらせて下さい。」
「ありがとう、船長。」

機関室で作業するタッカー。
物音に気づき、ライトをつけた。見回しても、誰もいない。
戻ろうとすると、あの女性が立っていた。
タッカー:「ああっ! ……おどかすなよ。これで今日二度目だ。……何とか言ってくれ。言葉がわからないっていうなら、無理なことを言って謝るよ。」
女性はタッカーについてくる。
作業に戻るタッカー。
女性:「そこは駄目! …パワーは、そのリレーを通して送られてるの。触ると危険だわ?」
タッカー:「やっと口を聞いてくれて嬉しいよ。ありがとう。」
「どういたしまして。」
「君は…船のシステムに詳しいの?」
「父がエンジニアで、いろいろ教わったから。」
「じゃあついててくれよ。またヤバいとこ触りそうになったら注意して。」
老婆の声。「リアナ※9? 仕事のお邪魔よ?」 いつの間にか来ていた。
タッカー:「…構わない。いい話し相手だ。」
老婆:「娘にも仕事がありますの。」
老婆についていくリアナ。タッカーは微笑んだ。


※5: Kuulan
(ルドルフ・ウィルリック Rudolph Willrich TNG第72話 "Menage a Troi" 「愛なき関係」のライタン・グラックス (Reittan Grax)、DS9第84話 "Paradise Lost" 「地球戒厳令(後編)」のアカデミー校長 (Academy Commandant) 役) 声:長克巳

※6: Kotara Barath

※7: 名前は Ezral (レネ・オーバージョノー Rene Auberjonois DS9 レギュラーのオドー (Odo)、映画 ST6 "The Undiscovered Country" 「未知の世界」のウェスト大佐 (Colonel West) 役) ですが、言及されていません。声:加藤精三、DS9 オドー

※8: 名前は Maya (Claudette Sutherland) ですが、言及されていません。声:磯辺万沙子、TNG ルーサ、コンピューターなど

※9: Liana
(Annie Wersching) 声:日野由利加

作業するトゥポル。「リレーがつなぎ直されてます。」
タッカー:「必要なセクションにパワーを送るためらしい。例えば、操舵制御分を、栽培室に。」
「素晴らしい。…でもブリッジにもパワーが必要です。」
「リアナに手伝いを頼もう。」
「必要ありません。」
「その方が早い。」
「独りで大丈夫です。」
「彼女は船のシステムを知り尽くしてる。さっきもプラズマに焼かれるところを、助けられたんだ。」
「ではあなたの助手を頼むといい。」
「そりゃどういう意味だよ。」
「私にそれだけ熱心に勧めるということは、彼女の腕を『高く』評価してるんでしょうから。」
「彼女は有能だ。」
「ジリリアン船の女性技師※10も有能でした。」
「君は随分執念深いんだなあ。」
「…単に思い出しただけです。あなたが『有能』だと言った女性の、子供を身ごもったことをね?」
リアナがやってきた。「お邪魔かしら?」
トゥポル:「とんでもない。…ちょっとタッカー少佐と話してただけです。過去の…苦労話について。」
「…お腹が空いたかと思って。」
「結構です。」 タッカーに向き直るトゥポル。「ブリッジのパワー分離機を取り除いてきます。」 機関室を去った。
リアナ:「……いかが?」
タッカー:「ありがとう。」 料理を口にする。「うん。美味いよ、何だい?」
「ロレラ※11って言って、栽培室で育ててるの。…外じゃ何もできないから。」
「そうだろうな? よくこんな所で生き抜いてきたよ。」 笑うタッカー。「何か動物園で餌もらってる気分。」
「あ…ごめんなさい、私ったら。」
「うん、いいんだ。女性に見つめられるのは大歓迎。」
「知り合いは多いの?」
「まあ…クルーの 3分の1 は女性だけど?」
「じゃ母星には? …何て言ったかしら。」
「地球だ。女友達ならいるけど…特定の女性はいない。もう今は。君の星はどう? あ…カンターレ※12?」
「どうって何が?」
「船のエンジンが直ったらすぐにでも戻れる。友達に会えるぞ? さぞ楽しみだろうな。」
何も言わないリアナ。
クーランがやってきた。「少佐。修理が進んだと聞いたが。」 他のカンターレ人もいる。
タッカー:「もう少しで終わります。」
「…実はほかにも力を貸して欲しいことがあるんだ。」
タッカーはうなずいた。

クーランは部屋に招き入れた。
トゥポル:「船の中枢ですか?」
クーラン:「全て生命維持機能を制御してる。環境システム、メインパワー。我々の命綱だ。」
「…これがオプトロニックリレー※13で?」
「そう、システムが劣化して、いつダウンしても不思議じゃない。」
タッカー:「前にも直したことがある。…ジリリアン船のだ。」
「じゃ直せるか。」
「ええ、恐らく。エンタープライズに道具を取りに行かなきゃ。一緒にいかがです? …ランチを御馳走するよ。」
微笑むリアナ。
クーラン:「気持ちは忙しいが、みな忙しくてね。」
タッカー:「ここにはもう 3年もいるんだ、たまには違う景色を見に行っては?」
「また今度。」
「わかった。…すぐに戻ってきますよ?」
トゥポルも出ていった。
リアナ:「どうして駄目なの?」
老人:「わかってるだろ?」
「いいじゃない、船を見たりクルーに会ったりするくらい。」
「クルーにならもう会ったろう、彼らだけで十分だ。」
「…みんないい人たちよ? 協力的だし。……何も言わないって約束する。」

司令室のリード。「ここです、彼らはこの部分を撃たれたと。」
アーチャー:「ひどいダメージだ。」
「だが、衝撃痕です。焼けた痕はありません、溶けた痕も。攻撃で受けたダメージとは思えない。」
「…我々の知らない武器で攻撃されたのかもしれん。」
「まあ…そうですが。自分たちの居場所を隠すため救難信号を送らなかったとも言ってました。」
「それも嘘だと?」
「不時着したのは 3年前です。攻撃した相手はとっくに消えてますよ。隠れる必要はない。」
「…多少用心深いからといって、裏があると決めつけるのは良くないな。」
「…栽培室の件もあります。」
「どうした。」
メイウェザー:「あの船のクルー全員を養える規模じゃありません。しかも 3年間も。」
リード:「どうやって生き延びてきたんでしょう。常識じゃ考えられない。」
アーチャー:「回収したデータモジュールは?」
メイウェザー:「まだ、シャトルポッド1 に。」
「すぐにダウンロードしろ。何かわかり次第、知らせるように。」
「了解。」

機関室。
リアナ:「クルーは何人いるの?」
タッカー:「83人。」
「全員人間?」
「ほとんどね。トゥポルは、ヴァルカン人だ。で、ドクター・フロックスは、デノビラっていう星の出身…」
「会える?」
「当然! 全員に紹介するまで帰すもんか。…それから、ポートスもいる。船長のイヌだ。」
「イヌ?」
「君たちは見たことないか。哺乳類で、特徴は…4本足に大きな耳。すごく可愛い。」
「何をするの?」
「別に何も? 船長のペットだから。」
「そうなの、ペットね? イヌなんて一度も見たことない。会わせて?」
「俺にも時間を取っといてくれよ?」
「どうかしら? 何だか忙しくなってきちゃった。」
笑うタッカー。「それで、カンターレはどんな星?」
リアナ:「退屈よ、あなたはどこに行った?」
「任務は始まったばかりだから、まだそんなに星は回ってない。」
「次はどこへ?」
「…わからない。それが楽しいんだ。」
「一番お気に入りの星は?」
「パッと浮かぶのは…この星かな。」
呼び出しが入った。『アーチャーから、タッカー少佐。』
応えるタッカー。「どうぞ?」
アーチャー:『作戦室へ頼む。』
「わかりました。ビリー※14。リアナを案内してやってくれ。食堂で会おう、ランチを御馳走しなきゃ。」
機関部員についていくリアナ。

作戦室のアーチャー。「リアナと過ごす時間が多いようだが、本当か?」
タッカー:「…トゥポルがそう言ったんですか? 船長…紳士にあるまじき行為は一切してません。」
「それはよくわかってる。君に聞きたいのは、全く…別のことだ。」
「ああ。」
「彼女やほかの仲間と過ごしてて、何か不審に思ったことは…なかったかね。」
「不審にって、どういうことです?」
リード:「ホシが彼らのデータモジュールを翻訳したんです。不時着する前に何があったのか、突き止めました。」
「もう聞いたじゃないですか。」
アーチャー:「これによると…攻撃はなかった。船内で事故があったようだ。」
「事故ってどんな。」
リード:「データは完全じゃありませんが、どうやら致命的な…機能不全が起きたようです。大規模な減圧が原因で、不時着したらしい。」
「不時着の衝撃でデータもダメージを受けたんじゃないのか?」
アーチャー:「ほかにも判明したことがある。」
リード:「まだ彼らを疑う前に、船長から船のスキャンを命じられていたんです。船体プレートの酸化率によれば、船が不時着したのは、3年より遥かに前です。」
「もう 22年近くもあそこにいるそうだ、トリップ?」
タッカー:「そんな馬鹿な。」
リード:「ご自分で見てみては?」 パッドを渡す。
「何でリアナは黙ってた。」
「彼らは何機もの脱出ポッドを発射させています。不時着する直前に。」
アーチャー:「1機発見した。軌道上にあったんだ。既に回収済みだ。」

シャトル発射ベイに来たフロックス。「中にいる人物が亡くなっているのは明らかです。わざわざ開けて何になるんです?」
アーチャー:「私にもわからん。」
指示するアーチャー。リードが操作し、ハッチを開けた。
中には遺体が入っていた。
フロックス:「やはり、私の出る幕はないようです。」
タッカー:「シラト※15です、船長。1時間前に会ったばかりだ。生きてたのに。」


※10: アーレン (Ah'Len) のこと。ENT第5話 "Unexpected" 「予期せぬ侵入者」より

※11: lorella

※12: Kantare

※13: optronic relays

※14: Billy
ENT "Unexpected" などで言及されたタッカーの部下。初登場ですがエキストラ

※15: Shilat

カンターレ船。
作業中のトゥポル。何かの反応があった。
カンターレ語が表示されている。スキャナーを使うトゥポル。
席を立った。

食堂に入るタッカー。リアナが食事している。
タッカーは近づいた。「バニラか。」
リアナ:「ほかにもあるの?」
「もう何百ってね? ロッキー・ロード※16が美味い。」
「何でか変な名前。どんな意味があるの?」
「考えたこともないな。ナッツが入ってるからかもしれない。ああ、それと…マシュマロも入ってるけど、名前とは関係ないだろう。」
「マシュマロって?」
「小さくて、あ…えーと、砂糖でできてる。俺にもよくわかんねえや……。それで、ツアーは楽しんだ?」
「ええ、とっても。医療室が一番楽しかった。ドクターとコウモリに餌をやったの。」
「ほう!」
「ランチにも招待されたのよ? あなたが遅くなるなら受ければよかった。」
「すまない、ああ……問題が起こってね。」
「どうしたの?」
「リアナ。いつこの星に来たんだ。」
「…船長から聞いたでしょ?」
「君に聞きたい。」
「どうして。」
「うちのスキャンによれば君たちは 22年前に不時着したことになる。」
「スキャンが間違ってるのよ。」
「俺もうちの船長にそう言った。君たちが嘘をつく理由はないって。そうだろ?」
無言になるリアナ。
タッカー:「君らの脱出ポッドを、発見した。」
リアナ:「もう戻らなくちゃ。」 立ち上がる。
「リアナ。」
「船に帰して。」
「中には何年も前に亡くなった遺体が。シラトだ。わけを説明してくれ。」
「できない。」
「何が起きてるんだ…」
「ごめんなさい、でも言えない。お願い、家に帰して。」
うなずくタッカー。ため息をついた。

暗い通路を歩いているトゥポル。
振り返った。誰もいない。
更に進む。
突然シラト※17が立っていた。「何かお探しで。」 さっきまで誰もいなかった場所だ。
トゥポル:「いいえ。」
「オプトロニックリレーを修理していたのでは。」
「ここでできることは終わりました。エンタープライズへ戻ってデータをスキャンしてきます。それでは失礼。」
反対側にもカンターレ人たちが立っていた。
クーランも。「何する気だ。」
トゥポル:「船と連絡を取りたいんです。」
「何か見つけたからか。」
「それはどういうことです。」
「君は見てはいけないものを見た。」

着陸するポッド。
船に入るアーチャー。「トゥポルを探せ。私は船長と話す。」
リード:「いえ、単独行動は危険です。」
リアナ:「ねえ、何する気? 危険なことなんかないわ?」
アーチャー:「君らが隠し事をしなきゃその言葉も信じられた。」
「船を直したらすぐに消えて?」
タッカー:「本気で言ってるのか? ここへ来た時いくつだった。5歳、6歳? ほんとの家を覚えてるか。」
「家はここよ?」
クーラン:「リアナ。」 老人たちカンターレ人が集まっていた。武器を持っている。
「私は何も言ってない。」
アーチャー:「その通りだ。だが今後も助けが必要なら質問に答えてもらう。」
シラト:「我々に答える義務はない。」
クーラン:「武器を奪え!」
近づいてくるカンターレ人。
リアナ:「お願い、逃がしてあげて! そういう計画だったじゃないの。」
「修理が終わったらな。」
連れて行かれるタッカー。
リアナ:「船長を止めて、パパならできるわ?」
クーラン:「船に戻れ。」
アーチャー:「部下をおいては戻れん。」
「交渉する余地はない。」
引き返すアーチャーとリード。
2人を見るリアナに、老人は言った。「リアナ。」

コンピューター室に入れられるタッカー。
シラト:「早く直せ!」
タッカー:「トゥポルは。」
老人:「心配はいらない。」
「手伝いがいる。」
「独りでできるはずだ。」
「彼女に会うまでは何もしないぞ。」
「言う通りにしなければ、二度と彼女には会えなくなる。」
「オプトロニックリレーって何だ。俺たちの命より大事なのか。」
「君には理解できんよ。」
「何を隠してようが構わない。ここへ来て何年だろうが知ったことか。だがリアナのことは別だ。彼女を家に帰してやれよ。」
「いいからリレーを直したまえ。」
「友達の作り方を学んだ方がいい!」
「…友達ならもう十分間に合ってる。」 出ていく老人。

栽培室で話すリアナ。「私のためなんていう台詞は聞き飽きたわ? もう信じられない。」
老婆:「お父さんがいたから生きてこられたんでしょ?」
「彼らに真実を話すべきだわ。」
「話せるわけないじゃない…」
「パパにできないことなんかない。ママとは違う。」
「…やっぱり行かせるんじゃなかった。」
「私のせいだって言うの?」
「あの機関主任に気があるんでしょ? 何も言わなかったって誓える?」
「誓えるわ、言ってない。」
「修理が終われば、何もかも元に戻る。」

シャトル出発ベイに入るアーチャー。「船の南側の山に、シャトルを着陸させる。」
メイウェザー:「探知されないでしょうか。」
「奴らの妨害フィールドで、向こうも探知はできない。」
リード:「しかしそのおかげで、転送装置も使えません。」
「脱出ポッドポートを抜けよう。機関室と、コンピューター室の近くに行ける。」
「運が良ければ、副官と少佐に会えるでしょう。」
アーチャーたちはシャトルポッドに乗り込んだ。

作業するタッカー。「まるでマジックだな? 今ここで俺を見張ってるあんたの死体が、エンタープライズにあるポッドの中で眠ってる。どんな技を使ってるんだ?」
リアナがコンピューター室に入った。「外で待ってて?」
シラト:「離れるなと言われてる。」
「いいから。」
出ていくシラト。リアナはドアを閉めた。「私の言いなりなの。」
タッカー:「じゃ俺を解放しろって言ってくれよ。」
「言いたいわ。」
「…何で俺は死んだ男に見張られてるんだ?」
「…私は今まで、これが真実だと思いこもうとしてた。…嘘を、ついてる意識がなかったの。…間違ってた。あなたが…やっとそれに気づかせてくれたわ? …言ったわよね、幽霊だと思ったって?」
うなずくタッカー。
リアナ:「ある意味…当たってる。」

カンターレ船内に戻ったアーチャー。「君は左舷側を通っていけ※18。トゥポルを見つけたら連絡を。気をつけろよ。」
メイウェザー:「了解。」 保安部員と共に向かう。
リードと進むアーチャー。

突然リードが背後から撃たれた。
アーチャーは反撃するが、ビームが相手の身体を突き抜けてしまう。
リードをかばいながら逃げていく。

話すタッカー。「だから必死でこれを直そうとしたのか。」
リアナ:「そう。」
銃声が聞こえてきた。
タッカー:「すぐに止めるんだ。」

武器から逃げるアーチャー。リードは苦しんでいる。
アーチャー:「大丈夫か。」
リード:「はい。どこから来たんでしょう。」
「いい質問だ。」
やはり敵の身体には武器が効かない。

クーランに命じる老人。「船から追い出せ!」

隠れるアーチャー。
クーランたちが撃ってくる。
反撃するが効果はない。

リアナに言うタッカー。「リアナ、頼む。俺の友達を殺させるな。お願いだ。」

シラトが壁を突き抜けて現れた。リードに飛びかかる。
シラトを殴るアーチャー。

リアナはコンピューターの部品を取り外した。

クーランの近くにいたカンターレ人たちが消滅し、持っていた武器だけが床に落ちる。
気づく老人。

また部品が外される。

同時に消えていく映像。クーランのもなくなった。

アーチャーに殴りかかろうとしたシラトも、そのまま消滅した。

老人はため息をついた。

全ての部品が取り外されている。

独り残った老人は、アーチャーたちに近づいた。


※16: Rocky Road

※17: Shilat
(Donald Sage Mackay) 声はドゥマール役の福田信昭さんが兼任。なぜかクレジットされておらず、公式サイトにも掲載されていません

※18: 「ポートを抜けていけ」と訳されています

尋ねるアーチャー。「クルーに何があった。」
老人:「消えたんです、船長。あなたも見たでしょ。」
「本物のクルーは。」
「ああ。本物には見えませんか。私が作ったんです。時間と労力を、かけて。触れるし、人をおどかすし、冗談も言う。」
タッカー:「だがホログラムです。」
「彼らは友達であり、家族だった。この 20年以上の間。」
リアナ:「私は彼らしか知らなかった。この父以外は。あなたに会うまで。」
アーチャー:「だが、元はみんな生きていたはずだ。この船のクルーは、どこへ行った。」
老人:「私が丘に埋めたよ。不時着の後見つかった遺体は。私が死なせて、私が埋めた。」
リアナ:「そうじゃないわ…」
「お前は覚えてない、子供だったから。クーランが言ったように、母星へ戻る途中だった。でも攻撃されたんじゃない。イオンストームに遭ったんだ。それが原因でプラズマコンジットがオーバーロードした。私は主任機関士として修理を一任されたが…オーバーロードは、予想よりずっと深刻で…プラズマが漏れ、船内が燃えだした。空気もなくなり始め、クーラン船長はこの星へ向かうしかなかった。」
アーチャー:「あなたは精一杯手を尽くしたのでは?」
「…だが全員死んだ。この私のミスが原因で。」
リアナ:「私のせいだわ。」
「いいや、違う。私が決めたことだ。リアナは、最下層の…部屋にいた。不時着すれば、その衝撃で死ぬことは明らかだ。だから連れに行った。」
アーチャー:「父親なら誰でもそうするさ。」
「私は持ち場を離れたんだ。プラズマ漏れは広がり爆発が起こった。クルーの半分はその場で即死。私の妻もな。何人かはポッドで脱出したが、その後は…。」
「その…決断で、どんなに苦しんだかはわからない。だが昔のことだ。もっと娘さんのことを考えろ。」
「なぜこんなことをしたと思う。事故はなかったと、自分に言い聞かせるためだと思うか? 2年もの歳月を、船の修理に費やしたんだ。娘が…たった一人で大きくなるのを、見ながら。だから彼らを作ったんだ。この子の母親、クーラン船長、ほかのクルー。私は何でもやった。この子のためだと、思うことを。」
タッカー:「それだけじゃ足りない。」
「…必要なものは全て与えてきたつもりだ。」
「あなたが死んだら。」
リアナ:「トリップ、やめて。」
「リアナにあなたの遺体を埋めさせるのか。そして彼女が死ぬまで、ホログラムと過ごせと。またリレーが故障したらどうなる。今度こそ本当に独りだ。」
老人:「私の娘だ、君には関係ない!」
「彼女が怪我をしたら、今度はどうする。ホログラムの、医者でも作るんですか。」
「ここの暮らしに不自由はない。」
「あなたはそうでも、リアナの気持ちはどうなんです。ただ生きていられればいいんでしょうか。」
トゥポルたちがやってきた。
アーチャー:「大丈夫か。」
うなずくトゥポル。
アーチャー:「あなたが望むなら、ホログラフィックシステムは修理しよう。だが我々にはそれ以上のこともできる。しばらくは誰もここへは来てくれないぞ。」

エンタープライズ。
作戦室のチャイムが鳴った。
アーチャー:「どうぞ。」
老人が入る。
立ち上がるアーチャー。「ようこそ。」
老人:「ありがとう、船長。…この船は、実に美しい。」
「我々も、誇りに思ってる。」
「…座っていいですか。」
「もちろん。」
「ああ…。もう何年も宇宙には出ていないので、妙な…気分です。心地いいが、何か落ち着かない。」
「何か飲みますか。お茶か…」
「結構です。…それより…おたくの機関主任は、随分はっきり言う人だ。」
「それは…見方によるのでは?」
「…これまで娘には何でも、話してきた。あの子の住むオアシスの外に、何があるのかも…話してきました。あの船を、出たいと言ったことはない。一度も。だがあの機関主任は私たちに外へ出て行けと言う。…22年ですよ、船長。もうここに 22年も住んでいるんです。あの船は、あなた方からすればただの…部品の山でしょうが、私には…家なんです。あの家を出たくありません。私は十分幸せです。…快適です。…だがタッカー少佐は私のこの考えを非難し、利己主義だという。今がいいチャンスだからこの星を去った方がいい、リアナのためにもそうすべきだと。…私もそろそろ変化を恐れるのをやめる時かもしれません。…あなたの力を貸して頂けますか?」
「責任をもって、あなた方の船を直しましょう。」
「ありがとう、船長。だが必要なのはこれらの部品です。うちにだってクルーは大勢いる。非常に有能な機関士も揃ってます。心配いりません。」

老婆に指示しているリアナ。「…ここを磨いてくれる?」
タッカーがやってきた。「どんな感じ?」
リアナ:「順調よ? 反物質インジェクターを再編成するところ。」
「そりゃ早いなあ。」
「…これは?」
「タンパク質再配列機だ。同じ物ばっかり食べてちゃ、飽きると思って。アイスクリームも、作れるようにしておいた。味は、5種類だけど。俺のお薦め。」
「ロッキー・ロードは?」
「それがなくちゃ、贈る意味がないだろ。」
笑うリアナ。「ありがとう。」
うなずくタッカー。「ほんとに、もう用はないのかい? 力を貸すよ。」
リアナ:「旅が待ってるでしょ?」
「君らにも。」
二人はキスをした。
おでこをつけるタッカー。「外の世界で会おう。」
リアナ:「そうね。」

シャトルポッドは飛び立った。



・感想
先週のフィリップスやコムズなどに続き、レネ・オーバージョノーがメインゲストとして出演しています。今回は声優も統一されている配慮が嬉しいですね。
ストーリーとしては「どこかで観たことあるような」…というより、DS9「幻影の村」にそっくりです。そのエピソードもオドーが主役でしたから、わざとかと思ってしまうぐらい。俳優しか観るべきところがないというのも…。
タッカーの「ホログラムの医者でも作るんですか」というのは、EMH を思わせるセリフですね。


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