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エンタープライズ エピソードガイド
第8話「彗星は去り行くとも」
Breaking the Ice

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・イントロダクション
※1食堂。
子供が描いた、エンタープライズの絵を持っているフロックス。
タッカー:「今ワープ4 越えてるなあ。」
フロックス:「人間の子供は想像力豊かだ。」
「うん。」
呼び止めるフロックス。「副司令官。」
タッカー:「4年生の甥っ子のクラスから届いた。地球での盛り上がり具合を、クルーのみんなも見たいかって。」
「医療室に飾らせてもらおう。副司令官もいかがです?」
トゥポル:「遠近法は未成熟だが、驚くほど正確です。」
タッカー:「ああ、才能ある子が大勢いる。どれが欲しい。これもいいよなあ。それか、こっちかな? ファースト・コンタクト。」 怪物のような生命体と、人間が握手している絵。「もしくは、これなんかどう。」 耳のとがった、緑色の人物。
トゥポルはタッカーを見る。変化に気づいた。「ワープが解除された。」
外を見るクルー。
アーチャーの通信が流れる。『窓の近くにいない者は、窓付近に移動してみろ。右舷に素晴らしいものが見えるぞ。』
食堂の者たちは、皆立ち上がった。

ブリッジのスクリーンに、彗星が映されていた。
アーチャー:「…上級士官は、ブリッジへ集合してくれ。」
リード:「データベースを調べました。未発見のものです。」
サトウ:「第一発見者ですね。」
メイウェザー:「アーチャー彗星※2だ。」
アーチャー:「接近してみよう。」
「了解。」
巨大な彗星に近づくエンタープライズ。


※1: このエピソードは、2002年度のエミー賞、特殊映像効果賞にノミネートされました

※2: Archer's Comet

・本編
ブリッジに入るトゥポルとタッカー。
アーチャー:「こんなでかいの天文学の本で見たことあるか?」
タッカー:「わー。」
笑うアーチャー。
タッカー:「巨大な雪の玉だ。」
スコープを使ったトゥポル。「直径は 82.6キロメートルです。」
アーチャー:「彗星を、追うのが夢だった。2、3日追跡するのも悪くないな。」
「ヴァルカンと地球でもう何百という彗星が調査されています。されています。岩と氷以外には何もありません。」
「しかしだ。こいつは、発見された中で最大の彗星だ。眺める価値はあるだろ。ついてけ、トラヴィス。」
メイウェザー:「了解。」

部屋に入るトゥポル。首を押さえる。
コンソールに近づき、表示されたヴァルカン語を読む。

皿に置かれた料理。
窓を開けたタッカーは、匂いをかいだ。「うん。」 取り出し、コップを機械に置く。「ミルク、アイス。」
パッドを持ったトゥポルが食堂に入る。
タッカー:「熱心に読書か?」
トゥポル:「お茶を飲む。」
「ザリフィアン・ブレンド※3はやめとけ? 3日は眠れなくなるからな。」
「カフェインはヴァルカン人にはさほど影響しない。グリーンティー、ホット。」
椅子を示すタッカー。「座らないか? 独りより…」
トゥポル:「疲れてるので。」
「俺もだよ。機関室で火消しに追われるは、晩飯逃すわで。シェフがペカンパイ作ったって聞いて、やっと人生に光が差したね。ガキの頃から大好物でさあ。一口食うか?」
「結構です。」
「美味いぞ?」
「ほとんど砂糖でしょ?」
「ヴァルカンに甘党はいないのか。…体には良くないが、心には最高。」 口にするタッカー。「…うーん。癒されるねえ。…面白い本らしいなあ。…大丈夫か?」
「…ええ、何でもない。おやすみ。」 出て行くトゥポル。
「いい夢を。」

彗星を追うエンタープライズ。
アーチャー:「アイシリウム※4?」
トゥポル:「稀にしか存在しない鉱物です。それが、この彗星には大量に含まれるようです。」
「聞いたことがないな。」
「ヴァルカンではごく少量しか手に入らず、まだ詳しい調査はされていません。」
「いいチャンスだなあ。転送機でサンプルを、採取できるか。」
「ただアイシリウム鉱脈は、地殻の下 20メートルの位置にあります。」
タッカー:「深すぎてロックは無理です。」
リード:「ポータブルの掘削機があります。」
メイウェザー:「大型彗星だから着陸できる。シャトルで行けますよ。」
トゥポル:「…着陸するなら極に近い位置がいいでしょう。」 図を指す。「恒星の光が届かない場所なら、氷が安定しています。」
アーチャー:「どのくらいかかる。」
リード:「3、4時間で済むかと。」
「彗星へ、散歩に行ってくるか。」
「はい、ぜひとも。」
「準備しろ。」
サトウ:「船長? 船が一隻、接近してきます。…ヴァルカンです。」
トゥポル:「…ティムール※5です。」
アーチャー:「交信だ。」
船の映像が切り替わり、ヴァルカン人が映し出された。
アーチャー:「エンタープライズ※6船長、ジョナサン・アーチャーです。」
名乗るヴァルカン人。『ヴァニク※7船長だ。』
アーチャー:「よろしく。」
ヴァニク:『地球からは遠いが、迷ったのか?』
「いえ、まさか。彗星を追いかけてるだけです。」
『2日前にセンサーで捉えたが、我々も調査することにする。』
「そうですか。ヴァルカン人は彗星には興味がないと、科学士官から聞いたんですがねえ。」
『我々は、彗星に対する人間の興味を調べる。』
「フン。彗星に掘削班を上陸させ、サンプルを収集する予定です。参加なさいますか。」
『もし不都合でなければ、我々は船から観察したい。』
「お好きにどうぞ?」
回線を切るヴァニク。
アーチャー:「フン、トゥポル。」

2人は作戦室に入る。
アーチャー:「…彼らの本当の目的が何なのかを知りたい。…いきなり現れて、何か不自然だと思わないか?」
トゥポル:「純粋な好奇心でしょう。」
「好奇心? およそヴァルカンらしくない。嗅ぎ回りに来たのはこれが初めてじゃない。3週間前の惑星状星雲の時も。」
「あれは単なる調査船でしたが。」
「呼びかけに応えなかったぞ? 私たちが近づくとワープで逃げた。我々の行動に少し干渉が過ぎる。ちょっと…鼻についてきたな。」
「単なる偶然です。」
「そうかな? まあいい。ヴァニクが覗き見趣味ならそうすりゃいい。…どうぞ。」

シャトルポッドが発進し、彗星へ向かった。
環境服を着たリード。「彗星に立ったことはないな。」
メイウェザー:「だーれもでしょ?」
「かもしれない。」
「僕は人生で 2回しか雪を見てない。」
「せっかくだから、何か記念になることをしたいな。」
「旗を立てるとか?」
「いやあ、ありふれてる。」
「じゃあ雪合戦は?」
「宇宙服じゃ楽しめないだろ? まあ、行ってみてその時の気分で決めるとしよう。」

彗星に着陸するシャトル。
環境服のライトをつける。周りを見るリードとメイウェザー。

機関室に来たサトウ。「少佐。お呼びですか?」
タッカー:「これを見てくれないか。さっきからチェックしてて、通信アレイに妙なパワーサージを見つけたんだ。」
「暗号化した、信号みたい。」 コンピューターを操作するサトウ。「ヴァルカン船から来てます。」
「…誰宛てだ?」

パッドを見るアーチャー。「彼女宛てで間違いないのか?」
タッカー:「残念ながら。何か、話は聞いてますか。」
「いや、何も。取り決めを交わしたはずだ。ヴァルカンと交信する際は、報告することになってる。」
「約束は守られてないようですね。」
「うーん…。」
「ホシに解読させますか?」
「うん。最優先で頼む。」
パッドを受け取り、作戦室を出るタッカー。


※3: Zariphean blend

※4: eisilium

※5: Ti'Mur
吹き替えでは「ティムール

※6: 吹き替えでは「エンタープライズ

※7: Vanik
(William Utay) 声:小山武宏

操作するサトウ。「準備できました。」
パッドを読んでいたアーチャー。
タッカー:「ほんとに俺必要ですか? 忙しいんですけど。」
アーチャー:「いいから、いろ。大事なことだ。」 船長席に座り、咳をする。「録画開始。」 スクリーンに向かって話し出した。「…こんにちは。アイルランド、ケリー郡※8ケンメア※9、ウォーリー小学校※10 4年生の、マルヴィン先生※11のクラスの皆さん。宇宙船エンタープライズ※6船長の、アーチャーです。全クルーを代表して、君たちからの手紙に、感謝します。みんなの絵や手紙で大いに、楽しませてもらいました。面白い質問がたくさんあった。全部に答えられるといいんですが、そうすると…探検をする暇がなくなります。そこで、いくつかを選んで、答えることにします。ここでの生活が少しでも伝わると、いいと思います。」 パッドを見るアーチャー。「リアム・ブレナン※12君の質問。何を食べてますか。うん、ほとんどは…地球と同じ物です。船のシェフは優秀で、ピーナツバターサンドイッチから七面鳥まで? …何でも、料理してくれます。船には水耕栽培の温室があるので、果物や野菜を育ててます。それからほかに…タンパク質再配列機※13で、複製できる食べ物もあります。…次は? ジェフ・マイルズ※14君の質問。…デートはしてもいいんですか? これは…禁止じゃない。でも宇宙船には、あまりプライバシーがありません。クルーの部屋はほとんど一人部屋ではないし? 交際に…何というか、不便なんです。しかし、もし心から…好きな人ができた場合には、一緒に星を見たりする場所が、船にもたくさんあります。次は、クロエ・オシャナン※15さん。エイリアンと、どう話するんですか。この質問の答えは? 通信士官の、ホシ・サトウ少尉に任せます。」
サトウ:「クロエ? とてもいい質問ね。ユニバーサル翻訳機※16という装置を使うの。数百の言語がプログラムされた、異星人語の辞書のようなもので、新言語もすぐ覚えるけど…ダメな時もあるの。その時は、私が翻訳することになります。大変なのは、きっとわかってくれるわね? 一つ単語を間違えただけで、『手を取って』が、『命を取れ』になることもあります。これまでのところ、上手くいってます。」
「ありがとう、ホシ。次は、モリー・マクック※17さんから。うーん…流したトイレの水は、どこへ行くの? これは、機械関係の問題だな? 答えるのは、機関主任、チャールズ・タッカー少佐です。うん。トリップ?」
笑っていたタッカーだが、自分が指名されて驚く。「…ポーズ頼む。」
一時停止するサトウ。
タッカー:「トイレの質問ですかあ? …ワープリアクターとか、転送機にして下さいよ。」
アーチャー:「大勢が、疑問に思ってるんだ。」
記録を再開させるタッカー。「最初に知っといて欲しいのは、船ではほとんどの物をリサイクルします。排泄物も…含めて。排泄物を流すとまず…最初に、バイオ物質再配列機※18という機械で処理されることになります。それで細かい分子に……止めて。」
また停止するサトウ。
タッカー:「トイレ係のエンジニアだと思われますよ!」
アーチャー:「いい調子だ。」
「ああ…」 記録を戻すタッカー。「それで、排泄物は細かい分子に分解され、再配列されて、船で使える物に生まれ変わることになります。貨物のコンテナや、断熱材、ブーツ…何でもね?」
「…とてもわかりやすかったね? …ガブリエル・ウィッティー※19君の質問は、バイ菌は宇宙で生きられますか。」
フロックス:「ああ…これは私が答えましょう。」 立ち上がる。「皆さん、こんにちは。船医のドクター・フロックスです。デノビラ・トライアクサ※20という星系出身です。この重要な任務に参加できて、とても光栄です。…バイ菌ねえ。フフン、細菌は小さくとも有機体の中では最も生命力が強い。キッチンカウンターでも? 爪の間でもどこでも生きられます。この宇宙の、真空でも 2億以上の微生物が生息しているのが知られています。宇宙の塵の粒の中にも細菌が住んでいます。ポリコクシス・アーストリス※21です。フフン、休眠状態で数百万年も漂った後でも、ひどい風邪の原因になります。…フーン、ああ…あ、そういえば、以前に細菌の巨大な群生を見つけました。あれは、ある船の…」
さえぎるアーチャー。「ドクター、ありがとう? 素晴らしかった。あまり授業時間を奪っても申し訳ない。ところで、今調査中の彗星の写真を一緒に送ります。地球でもヴァルカンでも、これまでに発見された最大の彗星です。エンタープライズでの一番の楽しみはそこです、次々に新しい発見がある。…ありがとう。手紙を読んで、地球へ戻った気分になりました。船長アーチャー、以上。」 ため息をつく。「どうだった?」
微笑むサトウ。タッカーは目を押さえる。

彗星上のリード。「氷は白いページのように全てを記録に残す。掘り進んでいけば、時代をそっくりさか上れる。」
メイウェザー:「大尉?」
「何だ?」
「どう思います?」 そこには、雪だるまがあった。
笑うリード。「プラズマトーチ※22を貸して?」 目と口を描いた。鼻にはトーチを突き刺す。また大きく笑う。
通信が入った。『アーチャーよりリード大尉?』
我に返るリード。「はい、船長。」
アーチャー:『調子はどうだ?』
「爆弾をセットするところで。」

ブリッジのアーチャー。「観察されてるのは、念を押すまでもないな?」
リード:『はい。』 スクリーンには、しっかり雪だるまが映っている。
「全てスムーズに事を進めたい。印象よくな?」

応えるリード。「はい。」
アーチャー:『それで? 彫刻家は誰だ?』
「…すぐ処分します。」

通信を終えるアーチャー。「アーチャー、以上。」

取りかかるリードたち。

タッカーは尋ねた。「どうだった。」
サトウ:「遅くなってすみません。複雑な暗号で。」
「内容は。」
「ヴァルカン語です。後は、翻訳マトリックスにかけて下さい。」
「読まなかったのか?」
「…いけない気がして。」
「…お疲れ。」
タッカーはコンピューターにセットし、翻訳された文章を読み始めた。
ため息をつく。

作戦室のアーチャー。「入れ。」
タッカーが入る。「例の…暗号を解読しました。」
アーチャー:「それで?」
「ちょっと、予想外のものでしたね。…手紙です。」
「どんな。」
「それが…私信です。」
「私信?」
「とてもプライベートな。」
「ああ…。」
「命令なら内容を言いますが、後悔すると思いますよ?」
「何で暗号化されてた。」
「俺も知りたいですよ! ヴァルカンじゃ、手紙も暗号化するんじゃないすか? あれなら別に、私信ってマークして、普通に送ってくれりゃ調べなかったのに。それを、暗号化するから、盗み読みしちまった。クッキーつまみ食いして見つかった気分ですよ。」
「気にするな。悪気はなかったんだ。」
「…無理ですよ。……彼女に言います。」
「事態が良くなるか?」
「でも言うべきですよ。でなきゃこれからまともに、目を見て話せなくなる。」
「…いい奴だな?」
作戦室を出るタッカーに言うアーチャー。「フェイズ銃持ってった方がいいかもな。」
タッカー:「本当ですね。」

ブリッジ。
タッカーはトゥポルに話しかけた。「話がある。…プライベートで。」
一緒に作業をしていたクルーに命じるトゥポル。「外して下さい。」
タッカー:「今まで……勘違いで、洒落にならないことを……やったって経験は?」
トゥポル:「ない。」
「…それじゃあ…あ…こうじゃないかと予測して、それに対処するために、ある行動を取ったが…でも、予測してたことと違ってたことは…」
「何が言いたい?」
「…ヴァルカンからあんたへのメッセージを見つけた。」
「…プライベートなことです。」
「何で艦隊の通常チャンネルで来なかったんだ。」
「それでは時間がかかる。急だったもので。」
「だから暗号にしたのか? それがどんなに疑わしく見えるかわかるか。」
「…読んだんですか?」
「すっかり自己嫌悪に陥ってるよ。」
「ほかにも部屋に手紙を保管してある。それも読みます?」
「…謝りに来たんだけどね。」
通信が入る。『アーチャーよりトゥポル。』
トゥポル:「はい、船長。」
アーチャー:『作戦室へ来てくれ。』
行く前に尋ねるトゥポル。「ほかに誰か手紙を読んだ?」
タッカー:「誰も。」
「……人には話さないで下さい。」
「もちろん、約束する。」

アーチャーは切り出した。「ヴァニク船長を、この船へ招こうと思う。我々の行動に興味があるなら、実際見た方が早いだろう。我々が銀河系を吹き飛ばしたりしないとわかれば、ほっといてくれるかもしれない。」
トゥポル:「好意として受け取るとは思います。」
「うん。親しくなるには、食事がいい。君から、シェフにメニューの…提案をしてくれないか。」
「わかりました。」
「食事に? ワインも、少々。」
「ヴァルカンはワインを飲みません。」
「だがわかるだろ? 奴を追っ払いたい。手伝ってくれ。」

医療室。
診察するフロックス。「症状が出たのは?」
トゥポル:「2日前です。」
「うん、妙な態勢で寝たんでしょう。」
「ずっと眠っていません。」
「2日間も? 心配事ですか。…頭痛は、そのせいですね。ここで話すことは守秘義務で守られます。心配事があるなら話してくれませんか。」
「いえ。」
「この船に相談できる相手がいるかどうかわかりませんが、誰かに話せばずっと気が楽になると思いますよ?」 ハイポスプレーを打つフロックス。「ただの鎮痛剤です。今夜眠れるように後で薬を出しましょうか?」
「お願いします。」 出て行くトゥポル。

雪だるまのそばで作業を続けるリード。
雪だるまには大きなとがった耳がつけられている。
メイウェザー:「耳がいいですね。」
リード:「そうだろ?」
「…やっぱり外はいいな。」
「気に入ったようだな。でもこの景色は、じき変わるからな。エンタープライズへ。」
アーチャー:『何だ。』
「爆薬セット。」

命じるアーチャー。「待機だ。これからうるさい音を立てると、ヴァルカンに知らせてくれ。」
サトウ:「了解。」
「リード大尉。」
リード:『はい。』
「吹っ飛ばせ。」

リードは応じた。「了解。」
2人は氷の陰に隠れた。起爆させる。
大きな爆発が起こった。


※8: County Kerry

※9: Kenmare

※10: Worley Elementary School

※11: Ms. Malvin

※12: Liam Brennan

※13: protein re-sequencer

※14: Geoff Miles

※15: Chloe O'Shannon

※16: Universal Translator
この訳が使用されたのは初めて

※17: Molly McCook

※18: bio-matter re-sequencer

※19: Gabrielle Witty

※20: Denobula Triaxa

※21: polycocyx astris

※22: plasma torch

穴を覗き込むメイウェザー。「お見事。」
リード:「まあ、もう少し均等だとよかったなあ。」
笑うメイウェザー。「ドリル持ってきます。」
降りていくリード。

食事をしているアーチャー。「確か…あなたの船は、スロク級※23ですね。」
ヴァニク:「ああ、間違いない。」
「うん。ワープは、6 か、それ以上で?」
「それ以上だ。」
「うん…」
タッカー:「ナセルの中を見てみたいなあ。」
笑うアーチャー。
ヴァニク:「ワープシステムは、機密事項だ。」
アーチャー:「……うん…2、3年前、メイモラ級※24の船に、乗せてもらいました。ヤラーラ※25。トク船長※26は、ご存じで?」
「名前だけは。」
「ああ…あの時は、暗黒星雲へ行ったんですが…テレスコープの設置を手伝った。宇宙遊泳が楽しくてねえ。ヴァルカンの宇宙服は最高だ。小さな宇宙船で、飛んでるみたいなんだよ。」
「何にでも感心するな。」
「……ポク・ター※27はお口に合いませんか。」
「いいや?」
「…もしお好きでなければ、シェフに何か…別の物を作らせますが。」
「食事は済ませた。」
タッカー:「デザートは食べて欲しいな。」
アーチャー:「……食事の後、船の中を…ご覧になりますか。スロク級の船とは、いきませんが…それでも、いい船です。」
ヴァニク:「また今度にしよう。」
「紅茶は?」
「私は水しか飲まない。」
「ああ…しかし、探検はしないヴァルカン人にしてはあちこち出没してますねえ。」
「我々の存在が不都合なら言ってもらいたい。」
「とんでもない。逆に安心ですよ。宇宙がどんなに広くとも、いつもそばにヴァルカン船がいる。」
いらだつアーチャーに気づいたタッカー。「あのう…簡単に、自己紹介はどうでしょう。」
ヴァニク:「何だって?」
トゥポル:「地球では、会ったばかりの人物と個人情報を交換するのが習慣です。」
アーチャー:「それに、食事中に会話する、妙な習慣もある。」
ヴァニク:「そのようだ。何を知りたいのだ。」
タッカー:「何でも。出身地とか、船に何年とか…まあ、趣味とか。」
「ヴァルカン宇宙計画※28で仕事をして 76年、ティムールの指揮を執って 15年だ。」
トゥポル:「ヴァニク船長は地球の船に乗ったのは初めてでいらっしゃいます。」
アーチャー:「我々に、何か…質問がおありなら答えますが?」
ヴァニク:「特にない。個人的には人間に興味をもったことはない。」
「…やあ…あっという間でした。楽しい時は早い。早く御自分の船に戻りたいことでしょうから、あと一つだけ質問して切り上げることにしよう。」 立ち上がるアーチャー。「いつまで我々をスパイするつもりだ!」
「もしも、スパイを…するなら、あなた方に気づかれはしない。その経験不足と傲慢さは、命取りになりかねないな。」
アーチャーはドアを開けた。保安部員が入る。
アーチャー:「ヴァニク船長を出発ベイへ御案内しろ。」
出て行く前、ヴァニクはヴァルカン語でトゥポルに話した。
タッカー:「何て言った。」
トゥポルは何も言わず、船長用食堂を去った。
ため息をつくタッカー。

ブリッジに戻ってきたアーチャーに、サトウが言う。「船長、これを見て下さい。」
コンピューターに彗星の状態が表示されている。

ドリルを操作するメイウェザー。
通信だ。『アーチャーより、リード大尉。』
リード:「何でしょう。」
『調子は。』
「マグネサイトの層に当たり、ドリルを損傷。取り替えました。」
『少し急いだ方がいいな。』
「というと?」
『爆発を起こしたために彗星の回転軸がずれたんだ。およそ…2時間で、シャトルポッドは恒星の方角を向く。気温が、200度ほど跳ね上がるだろう。その前に撤収してくれ。』
「余裕をもって終わらせます。」
『頼むぞ? 以上だ。』

部屋で瞑想しているトゥポル。ドアチャイムが鳴る。「どうぞ。」
タッカーがやってきた。「ヴァニクが何と言ったんだ?」
トゥポル:「そこに、座って下さい。」
「君の部屋初めてだな。落ち着くね。…船で火を燃やしちゃいけないの知ってるだろ?」
「船長に許可をもらっています。瞑想のためです。」
「…で、俺に何の用だい。」
「ドクターに言われた。個人的な問題について、信頼できる人物に打ち明ければ、気が楽になるというので。」
「それで、俺呼んだの?」
うなずくトゥポル。
タッカー:「だけど、その…ああ、俺じゃ力になれないと思うな。つき合った 3人とは全部悲惨な結末だ。ホシにでも話した方がいいんじゃないかな。キンボル少尉※29は、既婚者だ。」
トゥポル:「別の人物をと思いましたが、話をすれば、またもう一人に私の状況を教えなければならなくなる。」
「やるだけやるか。問題って。」
「手紙読んだでしょ?」
「まあ。」
「…私が今すぐエンタープライズを下りなければ、結婚の予定がキャンセルされます。」
「相手とは、その…」
「コス※30。」
「そのコスとはもう話したのか?」
「もう何年も話していません。ヴァルカンの結婚は子供の頃に決められます。コスとは 4回しか会っていません。」
「4回しか会ったことがなくて愛せるのか?」
「互いへの愛情は徐々に育てていくものと言われています。」
「で…向こうの親から最後通牒か。コスの意見は。」
「親が結婚を予定した。決めるのは親です。」
「俺の星じゃあ、そんな習慣奴隷制と共に消えたぞ。」
「助言を求めたのであって、伝統の評価のことではありません。」
「だけど大体向こうは何で破談にするって息巻いてんだ。」
「式は来週執り行う予定でしたが…私がエンタープライズに残ると決めたため、延期を申し入れました。人間の船で働くのが理由というのは、コスの両親には侮辱だったようです。」
「ヴァニクの船で帰れば? コスと式を挙げてから、戻ればいい。」
「夫婦となれば、ヴァルカン年で少なくとも 1年、共に暮らすのが習慣です。」
「エンタープライズに連れてきたら。」
「彼は建築家です。宇宙船で暮らすのは、非論理的です。」
「この結婚自体が非論理的だろ。」
「…知った上で少佐の助言は?」
「君はどうしたい。」
「それは無関係です。」
「どこが無関係だ。関係大ありだ。ヴァルカンへ帰ってその男と結婚し、一年、十年、百年暮らしたいのか。エンタープライズに残りたいか、どっちだ。」
「義務の問題です。」
「自分自身に対する義務もあるだろ。去年一年人間と過ごして、人間は自由に物事を選ぶってことも学んだだろ。自分のことは自分で決めるんだよ。」
「少佐もヴァルカンで 1年過ごせば、伝統が個人の選択より重いことを学んだでしょう。」
「文化は尊重するよ。でも子供の頃決めた結婚なんて無意味だ。いろいろ経験して人は変わるだろ。」
「ヴァルカンは変わりません。」
「そうか。」
「文化や遺産を継承していく、義務がある。それが何よりも大切です。」
「…ならもう結論は出てるじゃないか。…何で俺を呼んだんだ。」
「間違いでした。謝罪します。」 立ち上がるトゥポル。
ドアの前に来たタッカー。「そもそも結婚の延期を申し入れたのは、無意識に逃げ出したかったからなんじゃないのか?」
トゥポル:「それでは無意識が私の決断を左右することになる。それはありえません。」
「…人間にはしょっちゅうあるけどな? 悪い癖が移っちまったんじゃないか?」 タッカーは出て行った。

彗星。
メイウェザーはケースを穴から運び、自分も登っていく。だが足を滑らせてしまった。
リード:「トラヴィス!」
痛むメイウェザー。「大丈夫。…ああ!」
降りてきたリード。「どうした。」
メイウェザー:「ひざが。」
「じっとしてろ…。」
「大丈夫です。」
「わかった。ポッドへ戻ろう。装備は時間があれば、取りに戻る。」
「サンプル持ってかないと。手ぶらじゃ船に帰れませんよ。ああ…。」
サンプル棒を手に取るリード。

恒星の光が迫る。
支えるリード。「もうすぐだ。」
メイウェザー:「宇宙服じゃなきゃ、早いのに。」
「ああ。冷えるしな。」
光が近づいてきているのが、2人にも見えた。

辺りは メイウェザーは音に気づいた。「今のは?」 だんだん大きくなる。 地面が割れだした。あちこちにヒビが入る。
※23: Suurok-Class

※24: Maymora-Class

※25: Yarahla
吹き替えでは「ヤラーラ

※26: Captain Tok

※27: Pok Tar
訳出されていません

※28: Vulcan Space Program

※29: Ensign Kimball

※30: Koss

急ぐ 2人。
地面のひび割れは広がっている。
周りが揺れだした。シャトルポッドまで少しだ。
地面に穴が開く。
メイウェザー:「雪は二度と見たくない。」
シャトルへ入る 2人。

エンジンが起動される。
中では警報が鳴る。
突然、ポッドは崩れた床に沈んでしまった。
落下していく。
地下にぶつかり、停止した。
立ち上がるリード。「大丈夫か?」
メイウェザー:「スラスターを点火したせいです。」
「離陸するには仕方ない。」
呼び出し音が鳴る。揺れは続く。
応えるリード。「リードです。」
アーチャー:『無事か。』
「何とか。落下距離は。」

ブリッジのアーチャー。「18メートルほどだ。すぐ助け出す。ちょっと、待っててくれ。」

了解するリード。「じっとしてますよ。」

アーチャーは命じた。「グラップラーを用意しろ。」
タッカー:「穴の入り口が狭すぎます。」
「できるだけ接近する。」 アーチャーはクルーと操舵席を交代し、操縦桿を手前に出した。ため息をつく。

彗星に近づくエンタープライズ。
アーチャー:「見えるか。」
タッカー:「あと 50メートル、近づいて下さい。」
操縦するアーチャー。
タッカー:「右舷に 2メートル。もう少しです。」
サトウ:「ヴァルカン船から通信です。」
アーチャー:「聞いておけ、今忙しい。」
「協力が必要かと聞いてきています。」
「我々だけで大丈夫だと言っておけ。」
タッカー:「そこだ、そこです。回転を同期させます。」 状況を確認する。「もうちょっとだ。」
一致した。
船の下部から、2本の鎖が発射された。
だが、シャトルポッドを捉えたのは一本だけだ。

シャトル内に揺れが伝わる。

報告するタッカー。「一つ外れました。」
アーチャー:「何とかなる。引き上げろ。」

中でも、上がっていくのがわかる。
身体を支えるリードたち。
動きが止まった。

タッカーは首を振る。「鉱脈にぶつかりました。引っかかってる。左舷に移動して下さい。迂回して引き上げます。」
持ち上げようとするが、岩が邪魔をする。
タッカー:「アイソリウム鉱石がマグロックを妨害しています。」
アーチャー:「下へ降ろせ。」

しかし、グラップラーが外れてしまう。
ポッドは落下し、また叩きつけられる。

トゥポルは言った。「更に 9メートル落下です。」
アーチャー:「…もう一度!」
「船長。恒星の光から外れ、氷が再結晶化します。」
タッカー:「1時間以内に穴は氷でふさがれます。」
アーチャー:「なら急ぐしかない。」
トゥポル:「方法はあります。ヴァニク船長です。」
「彼は巻き込みたくない。」
「トラクタービームがあり、アイシリウムの影響は受けません。」
「グラップラー用意だ。」
トゥポルはアーチャーに近づいた。「向こうが申し出た援助を受けても恥ではありません。」
アーチャー:「自力で対処できるよ。」
タッカー:「俺もあいつは好きじゃありませんが、今トラクタービームがあれば相当助かります。」
トゥポル:「ヴァニクは船長が拒否すると思っています。…人間は傲慢だと、見ているからです。逆を突きましょう。部下を救うか、自分のプライドを守るかです。人間には、選ぶ自由があります。」
アーチャーはトゥポルを見た。

変化に気づくメイウェザー。「ロックしたぞ。」
応えるリード。「エンタープライズ、どうぞ。」
だがアーチャーではない。『ヴァルカン船ティムール、船長ヴァニクだ。エンジン点火の用意をし、エンタープライズへ戻れ。』
ビームによって、空中へ上がっていくシャトルポッド。

彗星近くのティムールとエンタープライズ。
アーチャー:「彗星で収集したデータを、そちらへ送りますか? 助けてもらったせめてものお礼です。」
ヴァニク:『そちらの科学士官が言ったように、我々は彗星に興味はない。』
タッカー:「…でもトラクタービームはさすがですねえ。いつか設計図を見せてもらえるなんてことは、ないですか?」
『それは機密事項だ。』
「だと思いました。」
『1時間後には出発する。ほかに手伝えることはあるか?』
アーチャー:「…いいえ、もう十分です。…それではまた。」
通信を終えるヴァニク。
タッカーはトゥポルに小声で言った。「時間ないぞ。…荷造りしたんだろ?」
トゥポル:「…船長。ヴァルカン宛てのメッセージをティムール※5に送りたいのですが。よろしいでしょうか。」
アーチャー:「ああ、構わん。」
「感謝します。」
トゥポルに対し、微笑むタッカー。トゥポルはブリッジを去った。
アーチャー:「何だったんだ。」
タッカー:「プライベートです。」
うなずくアーチャー。

部屋のろうそく。
私服のトゥポルの前には、ペカンパイがあった。



・感想
シャトルポッドが着陸できるほどの巨大彗星と、TOS でも触れられたヴァルカン人の婚約・結婚問題。お得意の並行ストーリーで、原題も上手いですね。面白いデザインのヴァルカン船も登場しますし、「観ておくべき」エピソードだと思います。
このエピソードから、しばらく製作総指揮コンビ (リック・バーマン&ブラノン・ブラガ) が脚本クレジットに含まれていない話が続きます。ENT に多い 2人の脚本態勢が自分に合うのかどうか、もしくは誰の脚本であっても同じように楽しめるのか、判断できるかもしれません。


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