※ストーリーのネタバレに触れています。
スター・トレック:スターフリート・アカデミー シーズン1 第6話 “Come, Let’s Away” 「さあ行こう」について、海外インタビュー記事の紹介です。
ポール・ジアマッティ:悪役としての変貌と狡猾な戦略
・ポール・ジアマッティは、自身が演じるヌース・ブラッカのキャラクター像が、これまでの「派手な詐欺師」から「底知れぬ邪悪さを持つ悪役」へと変貌を遂げた点に触れています。第1話「今どきの子供たち」では、ブラッカは宇宙大作戦やスター・トレック:ディスカバリーのハリー・マッドのようなペテン師として描かれていましたが、今回のエピソード「さあ行こう」を通じて、「羊たちの沈黙」(1991) のハンニバル・レクターに近い冷酷で知的な脅威へと進化しました。脚本を読んだ際、道化のような振る舞いの下に隠された本物の脅威を感じ取り、意図的にこの変化を演じたと語っています。「道化を演じることで、自分が脅威ではないと思わせるよう人を騙しているんだ」 (Gold Derby)
・エピソードのクライマックスで明らかになるブラッカの裏切りについて、ジアマッティは視聴者や登場人物への「顔をひっぱたくような衝撃」になればと考えながら演じたそうです。撮影現場では、対立するナーラ・アーケ役のホリー・ハンターとの間に奇妙な引力を感じながら演技をしており、相手を翻弄するような物理的な距離の詰め方を模索したとのこと。ブラッカが単なる犯罪者ではなく、アーケに対して個人的な憎しみと奇妙な敬意の両方を抱いている複雑な人間であることを強調しています。アーケに話す最後のメッセージのシーンについて、「本当に酷い言い草だね」 (Gold Derby、Collider)
ホリー・ハンター:型破りな指揮官とナーラの過去
・ホリー・ハンター演じるナーラ・アーケ学長が船長席で丸まったり、裸足で過ごしたりするという、従来の艦隊士官らしからぬ型破りな所作について、ポール・ジアマッティはそれが深い内面を映し出したものだと解説しています。この演出の一部は脚本に指定されていましたが、422歳という年月を生きてきたナーラの「他人の目を気にしない余裕」を表現しているとジアマッティは称賛。ハンターはアーケがかつて大勢の命を守るために自分の息子を犠牲にしたという過去に触れ、「ナーラは自分でも耐えられないほどの過ちを犯したのだと思う」と、彼女の静かな怒りと悲しみの背景を表現しました。 (ScreenRant、The D-Con Chamber、Collider)
・共演したハンターとの緊張感あふれる一対一のシーンについて、ジアマッティは舞台演劇のように撮影されたこの経験が、俳優として非常にエキサイティングだったと振り返っています。最終的にブラッカに完全に裏切られ、機密技術を奪われるという展開について、アーケがブラッカを中途半端に疑っていたということではなく、心底打ちのめされる必要があったとハンターも語りました。「みんなを驚かせたい。彼女は一撃を食らっても、まずは受け止めるしかない」 (Gold Derby、Collider)
ゾーイ・ステイナー:覚醒するタリマとバスケットボールの舞台裏
・ゾーイ・ステイナーは、自身の演じるタリマ・サダルが抑制されていた強大なテレパス能力を解放する場面を、キャラクターにとって極めて重要な成長の瞬間だったと振り返っています。タリマは幼少期に能力を暴走させ、父親の聴覚を損なわせてしまったトラウマから、これまで首の神経抑制器で力を抑え続けてきましたが、仲間の危機を救うために自らその装置を引き抜く決断を下しました。ステイナーはこのシーンを、タリマが自分の力を弱点ではなくアイデンティティの一部として受け入れ始めた象徴的な出来事だと捉えています。「彼女はその繊細さを強みとして、あるいはスーパーパワーとして見ることができるようになった」 (Den of Geek)
・インタビューでは第3話「ヴァイタス・リフラクス」で披露されたタリマの驚異的なバスケットボールのシュートシーンが、映画「エイリアン4」(1997) のシガニー・ウィーヴァーにインスパイアされたものだったと明かしています。脚本にはなかった「後ろ向きでゴールを決める」というスタントを思いつき、自ら練習を重ねて撮影に臨んだそうです。実際に使用された3Dプリント製のボールは弾力性がなく、扱いが非常に難しかったものの、撮影現場ではスタッフの間で「何テイクで決められるか」という賭けが行われるほど注目を集めました。「結局、一度で成功した。だから自分を誇りに思うし、これはシガニーへの素敵なオマージュだったと思う、絶対にね」 (ScreenRant)
サンドロ・ロスタ:新人俳優としての挑戦と精神世界の撮影
・サンドロ・ロスタは、エピソード冒頭のタリマとの親密なシーンや、精神世界の撮影における舞台裏を披露しています。この精神世界のシーンには、最新のVFX技術であるARウォールではなく多くの実物セットが使用されており、大量の黄色い造花で埋め尽くされていたそうです。セットの構造上、一度ベッドに入るとカメラのセッティングの間も動くことができず、その場でじっとしていなければならないという俳優ならではの苦労もあったとのこと。アーケ役のホリー・ハンターとの共演については、大女優の存在感に圧倒されつつも、初対面から対等なコラボレーターとして接してくれたおかげで緊張が解けたと語っています。「ホリーのすばらしいところは、その威圧感をすぐに解消してくれることだ」 (Cinemablend、Cinemablend)
・ロスタは、自身の演じるケイレブ・ミルが、タリマによって心の奥底の記憶を覗かれることへの複雑な感情についても分析しています。長年、誰にも頼らず一人で生き延びてきたケイレブにとって、タリマの能力はその防衛本能を無意識に突破してしまうものでした。ケイレブにとって、タリマといる時は感情的に解放され、強い安心感を得られることが全く新しい感覚だと表現。ケイレブの戸惑いに触れ、「もし愛する人がとてつもない破壊能力を持っていると気づいたら、それは根幹を揺さぶられるような体験だ」。 (Inverse、Den of Geek)
アレックス・カーツマン(製作総指揮):エピソードの設計
・製作総指揮のアレックス・カーツマンは、「さあ行こう」がシリーズ全体のトーンを大きく変える転換点になるよう意図して制作したと語っています。これまでのエピソードが学園生活の楽しさや若者のドラマに焦点を当てていたのに対し、今回は「候補生が踏み入れる世界には本物のリスクがある」という現実を彼らに突きつける必要がありました。ブラッカ役のジアマッティとアーケ役のハンターという二人のオスカー級俳優を揃えたことで、シーズン最長となる対話主体のシーンが実現。キャラクターの深層心理に深く踏み込むことが可能になったとのこと。「ヌースは長いコンゲームを仕掛けており、ナーラは本当に賢い。だから、綿密に構築する必要があった」 (TV Insider、Gold Derby、Polygon)
制作の舞台裏とトリビア:U.S.S.ミヤザキ、フューリーズ
・タイトルはウィリアム・シェイクスピアによる表現で、中でも「リア王」第5幕第3場の “Come, let’s away to prison.” が有名だとされています。訳例は「(牢屋へ) 行こう、さ」(「シェイクスピア全集 7 (悲劇 2)」 P.234、筑摩書房、1974年、斎藤勇 訳。国立国会図書館デジタルコレクション)
・候補生たちが探索する廃船 U.S.S.ミヤザキ。劇中ではコミックと関連していることもあってか、「明らかに」宮崎駿監督1へのオマージュとしている記事ばかりです。また、ミヤザキのブリッジセットはスター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールドのエンタープライズのセットを改装したもの。 (TrekMovie.com、TrekCore.com)
・登場したコミック「フロンティアからの物語」について、一部の視聴者の間で「生成AIで作られたのではないか」という疑念が浮上しました。しかし、アート部門のグラフィックデザイナー、スチュアート・ピアースが手作業で制作した小道具であり、AIは使用されていないとのこと。現在スタートレックのコミックを手がけるIDWも関わっていません。劇中では、1世紀前の船である U.S.S.ミヤザキのコンピュータを再起動させるための「歴史的記録」としてこのコミックがスキャンされますが、そのデザインが1960年代の宇宙大作戦スタイルだったのは、人々に希望を与える「伝説」としての側面を強調する形になっています。31世紀に23世紀への「先祖返り」があったのかも。 (TrekMovie.com)
・「さあ行こう」で新たに登場した敵対勢力「フューリーズ」は、ヴァンス提督によれば「地球人と異星人のハイブリッド」。この名称は1996年の小説シリーズ “Star Trek: Invasion!”2 に登場する異星人種族の共同体でも使われていますが、直接のつながりはありません。 (Nerdist)
- 過去のシリーズではノーシカン (新スタートレック シーズン2「愚かなる欲望」、S6「運命の分かれ道」) が「風の谷のナウシカ」(およびギリシア神話のナウシカア) に由来していたり、トトロという惑星名がモニターに映ったり (新スタートレックS2「限りなき戦い」) しています。逆に「魔女の宅急便」(1989) では、冒頭に登場するキキのお父さんの車がエンタープライズの番号と同じ1701です (ComicBook.com)。 ↩︎
- 未訳。当時の全4シリーズ (宇宙大作戦、新スタートレック、ディープ・スペース・ナイン、ヴォイジャー) それぞれの計4部からなるクロスオーバー小説。フューリーズは、復讐の女神エリニュエス (エリニュス) にちなんでスポックが名づけたという設定。 ↩︎
スター・トレック:スターフリート・アカデミー シーズン1は2026年2月現在、Paramount+ (WOWOW オンデマンド/J:COM STREAM/Amazon Prime Video サブスクリプション/Lemino チャンネル) で配信中です。※Paramount+ は3月末でサービス終了予定