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ディープスペースナイン エピソードガイド
第26話「エレージアン星人」
Melora

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・イントロダクション
ベシア:『医療日誌、宇宙暦 47229.1。今回連邦から派遣される、宇宙図作成士官、メローラ・パズラー少尉は、エレージアン人※1としては初めて連邦士官になった女性である。僕は彼女のために、いろいろと準備を整えた。』
診療室。
ダックス:「…車椅子※2を見るのは 300年ぶりだわ? でもよくレプリケーターにデータが残ってたわねえ。」
ベシア:「違うよ、メローラから設計図を送ってもらったんだ。」 乗って操縦している。
「ほんとに車椅子が必要なの?」
「彼女が普段使ってる反重力ユニットが、ここでは使えないんだよね。ここはカーデシア仕様だろ、互換性がないんだ。」 調整するベシア。
キラ:『司令室よりベシア。イエローストーン※3が第14エアロックに到着したわ。』
ベシア:「すぐに行きます。」 車椅子を押して出ていく。

ダックスに話すベシア。「考えてもごらんよ、表面重力がほとんどない星で生まれ育ったメローラが、ここまで来るのがどんなに大変か。」
オブライエンが合流する。「ドクター。タラップは、何とかなりそうです。しかし設計がカーデシア仕様なので困りますよ。」
ベシア:「この車椅子は段差は 3センチ、スロープなら 56度までは大丈夫なんだけどね。」
「それでもクリアできない場所が、たくさんありますよ?」
ダックス:「移動には、ビーム転送を使えばいいのに。」
「私もそう思います。でも、パズラー少尉※4はそれだけは絶対にヤだって。」
「なぜかしら。」
ベシア:「いかにもメローラらしいなあ。アカデミーに通っていた時も、どうしても無理なこと以外は全部自分でこなしていた。すごい女性だよ。」
「まるで古い知り合いみたいな言い方ね?」
「何だかそんな気がするんだ?」
ダックスはオブライエンと微笑み合った。
ベシア:「…彼女に関するデータには全て目を通したから。部屋の用意はできてるかい?」
オブライエン:「ああ、バッチリ。フワフワですよ?」
笑うオブライエンとダックス。
ベシア:「ありがと、チーフ。」
オブライエン:「何かあったら呼んで下さい。」
装置を車椅子に入れるベシア。「喜んでくれるかなあ。これで重力を切れば、部屋を飛び回れるんだ。」

エアロックでは、女性が独りで苦しんでいた。壁につかまり、一歩ずつ外へ向かって歩く。
その身体には、外骨格※5のような機械がつけられている。
手にした杖を使ってゆっくりと進む。
ベシアたちがやってきた。
女性:「…メローラ・パズラー※6少尉、到着いたしました。」
ダックス:「DS9 へようこそ。科学士官のジャッジア・ダックスです。こちらは…」
パズラー:「ドクター・ベシアですね、どうぞよろしく。」
ベシア:「こちらこそ、よろしく。」
「車椅子を用意して下さいました?」
「ああ、希望通りに。」
ダックス:「大丈夫?」
パズラー:「平気です、ありがとう。」 自分の力だけで歩き、車椅子に座る。「すごくいいけど、型が違うわ。」
ベシア:「ああ、動かしやすいように変えたんだよ。」
「…前の型で、一ヶ月も練習してきたのに。」
「前の型がよければ、すぐ造り直せるけど。」
「いいえ? すぐ慣れるから平気です。」 進み始めるパズラー。
後を追う 2人。

話すダックス。「測量には私が同行するから。」
パズラー:「せっかくですけど、そんな必要はありません。シャトルの操縦なら独りでできます。」 廊下の段差には、スロープが置かれている。
「でも、シスコ司令官から…」
「独りじゃ何もできないってお思いならそれは偏見です。司令官にも、特別扱いは必要ないっておっしゃって下さい。」
「でも司令官は到着したばかりの少尉に独りでガンマ宇宙域へ行くことは許さないと思うわ?」
「でも科学士官には、ガンマ宇宙域の測量を手伝うよりほかに、仕事があるんじゃないですか?」
ベシア:「ああ、この部屋だよ。」 ドアを開ける。
「反重力ユニットには下手な改良はしてませんよね?」
「ああ、何もしてないよ? 重力はこのコントローラーで調節できるようになっていて…」
受け取るパズラー。「わかりました、ありがとう。お二人とも御苦労様。」
ドアは閉まった。


※1: エレージアン、エレージア人 Elaysians

※2: セット装飾家 Laura Richarz が買い付け、プロップマスター Joe Longo が改造

※3: U.S.S.イエローストーン U.S.S. Yellowstone
セコイア級、NCC-70073。1872年に制定されたアメリカ最大・最古の国立公園にちなんで。VOY第21話 "Non Sequitur" 「現実への脱出」で可能性の未来に登場したランナバウトもイエローストーン (イエローストーン級、NX-74751)

※4: ここを含めて何度か「メローラ少尉」と吹き替えされています。姓はパズラーなので変ですね

※5: 関節は上級イラストレーター Rick Sternbach によるデザイン

※6: Melora Pazlar
(ダフネ・アッシュブルック Daphne Ashbrook) 声:藤木聖子、TNG ロー、ベトール、VOY 3代目セスカなど

・本編
金色の指輪を手にする異星人のアシュロック※7。「パルトリスはこれを 80個しか作ってない。そのどれも、まさに傑作だあ。」
クワーク:「そのうち 42個は俺がもってる。」
「42個。ははあ…君の名前は、パルトリスの指輪※8を故郷に帰した恩人と知れ渡るだろう。」
「名前が知れ渡ろうが渡らなかろうが俺にはどうでもいいこった。」 指輪を手に取るクワーク。「それよりラチナムの延べ棒、199本だ。」
「ああ…情け容赦のないお人だねえ。」
「199本で文句ないな? もう一杯飲むか?」
「ああ…。」
「ありがとよ。」
クワークは店に来た客に対応する。「悪いけどまだ店は開けてないんだ…。」
その異星人は、無言でクワークを見た。
慌てて瓶からアシュロックに注ぐクワーク。「これは俺のおごりだ。」 異星人のもとに戻る。「ファリット・コット※9。ほんとにお前かよ。…久しぶりだなあ…。」
コット:「全くだ。長い 8年だった。」
「もうそんなになるかね。それにしても、えらく男らしくなった。日に焼けて、たくましくなって。顔もスッキリ痩せて引き締まってよう。」
「8年間苦労してきたからなあ。」
「ああ…すぐにまた出発するんだろ。ガンマ宇宙域で商売か? これからはやっぱガンマ宇宙域だよなあ…」 飲み物を注ぐクワーク。
「いいや、俺が用ありなのはガンマ宇宙域なんかじゃない。お前だ。」
「俺に用?」
「そう。…お前を殺しに来た。」 グラスを掲げるコット。
「あ…あ…。」

司令官室のダックス。「メローラの任務記録を読んだ限りでは実に優秀だわ?」
シスコ:「それはわかる。しかしここでの任務は初めてだ。独りでやらせるのはやはり…」 ターボリフトが到着した。「メローラだ。」
司令室の士官がパズラーを見る。
出迎えるシスコ。「ステーションへようこそ。私が司令官のシスコだ。」 手を差し出す。
車椅子を降りるパズラー。「遅刻しました?」
シスコ:「いや、時間通りだ。」
「でももうミーティングを始めてらしたわ?」
「ドクターから聞いたが君は独りで、任務に当たりたいそうだね。」
立ち上がるパズラー。「あ…そのことなら、私のいる場で…話題にして頂きたいわ?」
シスコ:「今していたのは司令部のスタッフのミーティングなんだ。何も君をのけ者にしたわけではない。」
司令官室に入るパズラー。「…大騒ぎすると、お思いでしょうが…黙っていると『特別扱い』されてしまうので。でもそんなお気遣いはしないで下さい。私は大丈夫なんです。……私が来ることになって、ベシア中尉がいろいろと準備をして下さったのはありがたく思っていますが…正直言って、なぜミーティングにドクターが同席する必要があるんでしょうか。」
ダックス:「あなたの状態を一番よくわかってるのは彼だからよ?」
「私の状態なら私が一番よくわかっています。」
シスコ:「少尉。」
「私を病人のように扱うのはやめて下さい。」
「誰もそんなことはしていない。」
「車椅子に座ってみて下さい! そうすれば私の気持ちがおわかりになると思うわ? ……ああ…私は故郷を出て以来ずーっと車椅子です。…出発する時、家族は…餞別にってガーラニックの木※10でできたこの杖をくれました。…外の世界の重力がどれほど重いのか、全然わかっていなかったんですね。自分の星から出たエレージアン人は、今でも数えるほどしかいません。でも私は広い宇宙を見てみたかった。その夢を叶えるためなら、辛くたって、孤独だって、どんな過酷な任務だって、絶対に負けたりしないつもりです。」
「君が非常に優秀だということは、記録を見て知っている。」
「私はここまで他人の力を全く借りずにやってきました。正直言って、独りの方が楽なんです。その方が仕事をしやすいんです。」
「…しかし独りでガンマ宇宙域に行かせるのは心配だ。」
「司令官。私は独りの方が仕事に集中できるんです。その方が、ほかの人に気兼ねしなくて済みますし。」
「ダメだ、ダックスを同行させる。」
「…わかりました。」 ドアへ向かうパズラー。「いつ出発しますか?」
ダックス:「あなたのスケジュールに合わせるけど。」
「では明日、7時半に。」 パズラーは出ていった。

廊下を歩くベシア。ためらいがちにドアチャイムを鳴らした。
室内の機械音が小さくなる。
ドアが開くと、パズラーは車椅子に座ったところだった。装置を納める。
ベシア:「動いてるかなあ。低重力フィールド装置。今、切っただろ?」
パズラー:「ええ、順調です。」
「じゃあ今まで。」
「ああ、ああ…。私にとっては、一日の終わりがお風呂みたいなものです。」
「ほんと。…僕はシャワー専門なんだ? この写真。」 写真立てに、男性のエレージアンと空を飛んでいるパズラーが写っている。※11「ご主人かな。恋人?」
「ドクター? 怒ってらっしゃるなら、謝ります。」
「…何だい?」
「あなた個人を攻撃するつもりは全然ないんです。」
「そりゃ君にそのつもりがなくても、さっきの言動というのは…個人攻撃そのものだと思うよ?」
「きついことをおっしゃるわね、ドクター?」
「ジュリアンだ。今は勤務時間外だよ。」
「…それはどうも。…いつもそうやって口説くの?」
「ウー、今のも攻撃? にっこり笑って撃ってくるから、撃たれたのに気づかない時がある。」
「ああ…私はそんなつもりじゃ…」
「そんなつもりだろ?」
「…それはどういう意味?」
「君は撃とうと思って撃ってる。そうやって撃ちまくっておけば、相手は守りに気を取られて前に出てこないからね? そうだろ? いい作戦だ。」
「そうですね。…いつもそれで勝てるんですけど…今日は負け。」
「…やっと優しい言葉をかけてくれたね。報われたよ。お腹は空いてない? …実は君を夕食に誘いに来たんだけど。」
「そして食事の後はダンスに誘うの?」
「ウー、警戒警報。」
「あ…ああ、ごめんなさい。」
「…いいだろ? クリンゴン人の店※12ができたんだよ。もし、クリンゴン料理でよければ。」
「じゃあ後で。」
微笑むベシア。


※7: Ashrok
(ドン・スターク Don Stark 映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」の鼻のニッキー (Nicky the Nose) 役) 声:大川透、DS9 ガラックなど

※8: Rings of Paltriss

※9: Fallit Kot
(ピーター・クロンビー Peter Crombie) 声:中村秀利、VOY ジョン・トレス、ENT Shran など

※10: garlanic tree
この部分は訳出されていません

※11: サンファーナンドヴァリー西端にあるサンタ・スザンナ山脈の写真と、フォトショップで合成したもの

※12: Klingon restaurant
エンサイクロペディアでは "Klingon kiosk"

モーンたちでにぎわうクワークの店に、コットがいた。
そのテーブルに白い布がかけられる。
クワーク:「お待たせいたしましたあ。」
コット:「注文してないぞ。」
「疲れた旅人の、お腹を…ヘヘ…優しくいたわるにはやはり、美味しい手作り料理が一番だろ? まずは、デリケートな味の…ヴァク・クローヴァースープ※13だ。」
コットは皿を手に取り、スープを床に流した。皿も落として割る。
クワーク:「…スープじゃ物足りないよな、ヘヘ…。じゃあ次の料理を。ジャンボ・ヴァルカン・タコ※14だ。バターでソテーしたものでこの珍味を食べてから死ねって言われてるぐらいだ。あ、いやその、それほど美味いってことさ。ダボはできるか、ファリット。すごく簡単に覚えられるゲームだが面白いんだぞ?」 指を鳴らす。「ダボの指導をしてくれる先生を、2人お呼びしてあるんだ。」
2人の女性がやってきて、コットにキスをする。
クワーク:「『2倍儲けるコツ』があるからちゃーんと教えてもらえよ?」 笑う。「俺の好意だ、受けてくれ。せっかく来てくれたんだ、ここにいる間は…羽を伸ばして、思いっきり楽しんでくれ。さて。再開を祝って乾杯しようじゃねえか。俺たちの、友情に乾杯!」
コット:「借りに乾杯。」
笑みの消えるクワーク。

クリンゴン人※15はクリンゴン語で叫んだ。「(何にする?)」
メニューを手にしているベシア。「僕が、注文していい?」
パズラー:「どうぞ?」
「それじゃまずラクト※16を、一人前頼む。」
注文を繰り返し、生き物を手づかみで皿に置いていくクリンゴン人。
ベシア:「それから、グラドゥストー※17を。2人前、ソースなしで。それから、そうだなあ、ジルムカッハ※18をもらおうかな。2人には多すぎるかなあ。」
構わず皿に入れ、差し出すクリンゴン人。「(どうぞ)」
パズラー:「見せて?」
ベシア:「美味しそうだよ。」
ラクトを手にするパズラー。「ああ、悪いけどこれは食べられないわ?」
ベシア:「いやあ、見かけと違って…」
突然パズラーはクリンゴン語を使った。「(これが新鮮なの?)」
クリンゴン人:「(何か問題か?)」
「(食べ物じゃないわ)」
「(イヤなら食うな)」
「(活きの良いのを)」
クリンゴン人は皿を一瞬見てから、笑い出した。「見る目のある客はシェフをその気にさせる…。」 皿を取り、後ろに放り投げた。別のラクトを見せる。
笑うパズラー。「(いいわ)。鮮度の落ちたラクトは最悪よ。」
ラチナムを払うベシア。
クリンゴン人は歯で噛んで確認し、容器に投げ入れた。次のパクレド人に尋ねる。「(何にする?)」

最後のラクトを口にするベシア。「10歳の時、僕の父は外交官としてインヴェルニア2※19 に赴任した。」 後ろにはパクレド人たちの姿が見える。「ある日、一家で郊外に出かけた時、巨大なイオン嵐に遭遇したんだ。ちょっと離れたところに、同い年ぐらいのインヴェルニアの少女が、倒れていた。嵐が過ぎ去った後、父が助けに行ったがもう手遅れだった。死ぬのを見てるしかなかった。でも後で地元の人から、その病気ならそこら中に生えてる薬草で簡単に治せたことを教えられたんだ。…もう愕然としたよ。」
パズラー:「…それで医学を、志すようになったんですか?」
「実はね。初めはテニスをやろうと思った。」
「テニス?」
「テニスのプロになるつもりだったのさ?」
「へえ、すごいですね。」
「自分は上手いと思ってたんだ。…でも初めて大きな大会に出た時、相手のサーブに一歩も動けなかったんだ。手も足も出ないんだよ。相手の得点がアナウンスされるのを聞いて、こりゃダメだと思ったね? で結局テニスはあきらめて、医者になった。」
笑うパズラー。見つめ合う二人。
パズラー:「ん…私、明日は…任務で朝が早いんです。…もう休まなきゃ。」
ベシア:「…ああ、そうだね。」

廊下。
荷物を持ったダックスは、ドアチャイムを押した。反応がない。
連絡しようとするダックス。「ダックスよりメローラ。…コンピューター、ドアロックを解除して。」 中に入る。「パズラー少尉?」 姿はない。
ダックス:「コンピューター、パズラー少尉の現在位置は。」
コンピューター:『ドッキングレベル22、第14セクションです。』
「第14セクション。」

やってきたダックスは、荷物を置いて急いだ。車椅子だけが置かれている。
その先にはパズラーが倒れていた。身体に取り付けられた機械は、同じ動きを繰り返している。
パズラーの身体を起こすダックス。「治療室へ行った方がいいわね。」
頭を怪我しているパズラー。「私が悪かったの。もう一つ、予備の分として宇宙測量アレイを持っていった方がいいと思って、倉庫に取りに行ったんです。任務のことで頭がいっぱいで。足下を…注意するのをすっかり忘れていたの。多分ブーツが、ドアに引っかかったんだわ? で、倒れて動けなくなって。※20
パズラーを車椅子に戻したダックス。「ダックスよりベシア、メローラが怪我をしたの。大したことないけど、治療室へ連れて行くわ?」
ベシア:『了解、スタンバイします。』
パズラー:「全く腹が立つわ? どのドアにも出っ張りがあるんだもの。どういう設計者なのかしら…。」

ベッドで治療されるパズラー。「ガンマ宇宙域に飛び出す前に、こんなヘマをしちゃって。」
ベシア:「大丈夫。脳震盪は起こしてないから、任務は明日に延ばせば。」
「だけど……壊れたオモチャみたいな気持ちになったわ? あんな姿を見られたくなったけど立ち上がれなくて。」
「…何でダックスを待ってなかったんだ? スロープのないところは危ないよ。」
「…独りだって大丈夫。もっと気をつけてれば。」
「メローラ。…どんなに強い人だって、独りでは生きていけないんだよ。宇宙に出たら、お互いに助け合わなくちゃやっていけないんだ。」
「私だってもっとみんなの役に立ちたいの。」
「十分立ってるよ。だから君も、僕らを信用してくれないか。」
「信用?」
「僕らだって役に立つ。」
微笑むパズラー。

廊下で話すベシア。「低い重力圏の種族について、30年前に発表された研究を知ってるかい?」
パズラー:「神経筋適合術※21? でもあれは成功しなかったんです。」
「まあね。でも理論としては正しいし、当時より神経化学は進歩してるよ。」
「じゃあいつか私も立って、歩けるようになる?」 部屋に入るパズラー。
「理論的には、あり得るね。」
「……寄っていきません?」
「いやあいいよ、少しでも早く重力を切りたいだろうし。」
「……いいんです、遠慮しないで。」
中に入るベシア。
装置を手にするパズラー。「…慣れるまでは何かにつかまってた方がいいですよ?」
壁に手を伸ばすベシア。パズラーはスイッチを入れた。
音と同時に、パズラーは車椅子を離れた。空中を漂い、ベシアに近づく。
笑う 2人。パズラーは回転した。喜ぶベシア。
パズラー:「さあ、ドクター。」
ベシア:「でも、どうすればいい。」
「壁を、手で押せばいいの。やってみて?」
不安定な態勢のまま、空中に浮かぶベシア。「ああ…ああ…すっごくいい気持ちだね。一度でいいからやってみたかったんだ。ああ…」
近づくパズラー。「みんなそう言うわね? 何だか鳥になったような気分になるから。クセになるから部屋に人は入れないのよ?」
ベシア:「そりゃあ光栄だな、入れてくれて。」
「…うん。彼は兄なの。」
「誰?」
写真立てを示すパズラー。
ベシア:「ああ。」
パズラーはベシアと口づけした。キスを続ける二人は、抱き合ったまま浮かんでいく。


※13: Vak clover soup

※14: Vulcan mollusks
mollusk =軟体動物

※15: クリンゴン人シェフ Klingon Chef
(ロン・テイラー Ron Taylor) 後にも登場。声はアシュロック役の大川さんが兼任

※16: racht

※17: gladst

※18: zilm'kach

※19: インヴェルニア2号星 Invernia II

※20: "I fell on my controls." が「コントローラーを落として」と訳されています。コントローラーは部屋で重力を切るための物

※21: 神経筋適合理論 neuromuscular adaptation theory

ワームホールを出るランナバウト。
パズラー:「コース 28※22、マーク 142。」
ダックス:「設定完了。」
「……コンピューター? データにヴァルカンのエチュードはある?」
コンピューター:『収録されています。』
「構わないかしら。…何かデルヴォック※23の曲をかけて?」 音楽が流れ始める。
笑うダックス。「ヴァルカン人の曲とは思えないわよね? あふれるほど、感情が詰まってるもの。」
パズラー:「…綺麗だわ?」
窓の外には宇宙空間が広がっている。
パズラー:「…ちょっと聞きたいんですが…現役の連邦士官でも、恋愛をしていいと思います?」
ダックス:「ええ、もちろんよ?」
「したことは?」
「うーん、何回かね。」
「それで、長く続いた?」
「ああ! ああ…恋してるのね?」
「ええ…」
「そうねえ、かなり長続きしたのは…うーん 150年前ね?」
「ああ…ずいぶん昔の話。」
「もしかしてドクター・ベシアと何かいいことでもあったのかしら?」
「…でも私達エレージアン人は…特殊だし。」
「恋にそんなことは関係ないわ? 水素呼吸のロスラ人※24の男性が、酸素呼吸の女性に恋したの知ってるもの。」
「ほんとに? でも同じ部屋にいられないじゃない。」
「呼吸器なしで一緒にいられるのは一日に 40分間。でも二人は 57年連れ添ったわ?」
「でも仕事の、問題があるでしょう? …アカデミーの同級生同士が婚約したんです、違う船に配属になるってわかってるのに。」
「亜空間通信恋愛?」
「うん。」
「ああ…それはきついわ?」
「一年以上も会えないし、やっと会えたって休暇はたった数週間でしょ?」
「ああ…あまり距離がある恋愛は、何というかその…」
「温もりに欠けますよね。」
「心だけじゃねえ?」
「ここでの任務が終わったら、また別のところへ。…恋愛なんか生まれるはずもないわ?」
「それは、あなた次第よ?」
「…そうかしら。」

保安室のオドーのところへ、クワークがやってきた。
オドー:「何だ、お前か。」
クワーク:「そんな嫌そうな顔すんな。」
「私は正直なんだ。」
「オドー。ステーションに恐ろしい犯罪者が来てる。」
「それはファリット・コットのことか? ロミュラン・エール※25の荷を盗んで 8年間服役したが最近出所してきた。確か起訴状には奴と並んでお前の名前も、あったはずだがなあ?」
「おらあ直接の関係はねえよ? ただ間に入った、それだけだ。」
「お前は盗んだ品物を売りさばいていたんだろ、服役して当たり前だったのに…仲間を売って自分だけ助かったのさ。」
「そりゃああんまりってもんだ。正義は勝つって言うだろ。」
「それもそうだな、ファリット・コットも正義は勝つって信じていたいだろうよ。」
「…俺を殺すってんだ。」
オドーは微笑んで振り返った。
クワーク:「何だよ!」
オドー:「いや別に? ちょっと楽しくなってね。」
「奴は本気なんだ。」
「フン。」
「どうしても俺を殺すつもりでいるんだよう。どうにかしてくれよ。」
「警備はするから安心してろ。」
「ああ。」 出ていくクワーク。
「懲りない奴だな?」

診療室のモニターを見ているベシア。
パズラーがやってくる。「ラクト食べに行く?」
ベシア:「よく来てくれたね、見せたいものがあるんだ。」
「…なーに、これ。」
「脳の運動皮質から出されるインパルスを、コンピューターでモデル化したものだ。これで、アセチルコリン※26の吸収を促して筋力を増す。」 脳の図が表示されている。
「神経筋適合術のことね?」
「30年前の理論だけど、当時より医療技術が進歩してるから、難しい治療じゃない。ただ、どの医者もトライしてみたことがなかっただけの話だ。今まではね。」
「…でも…上手くいくのかしら。」
「いくさ、そうなれば…走り回れるよ?」
喜ぶパズラー。


※22: 吹き替えでは「208」

※23: Delvok

※24: lothra
吹き替えでは「ロスラ

※25: Romulan ale
映画 ST2 "The Wrath of Khan" 「カーンの逆襲」など

※26: 吹き替えでは「アセルコリン」と言っているような… (後のは正しく訳されています)

保安部員がコットを保安室に連れてきた。パッドを操作するオドー。
コット:「何で俺を呼びつけたんだ。」
オドー:「まあそうカッカするな。…実は相談があってね。」
「相談?」
「クワークは私も嫌いだが…殺させるわけにはいかん。」
「殺す? クワークがあんたにそう言ったのか?」
「過去の因縁があるそうじゃないか。」
「昔のことは昔のことさ、もう忘れたよ。」
「この仕事をしてるとなあ、歩き方で何を考えてるかわかるのさ。」
「…俺の歩き方は?」
「肩に重い荷物をしょってる歩き方だな?」
「8年間強制労働キャンプで煉瓦を運ばされたせいさ。」
「だろうな?」
「だが歩き方で逮捕はできないぞ、だろ?」 ドアへ向かい、振り返るコット。
オドーはドアを開けた。

コットを見送るオドー。
クワークが近づく。「どうだった。」
オドー:「失うものは何もないって感じだな?」
「やっぱりやる気か?」
「でも今のところは何もしてないんだから逮捕はできない。もちろん目は離さないがね? 念のため、通信バッジを持ち歩いた方がいい。何かあったらすぐ呼ぶんだ。」 渡すオドー。
「でも呼んでも間に合わなかったらどうする気だよう!」
「フェレンギ人は死ぬと身体をバラバラにして売りに出すよなあ?」
「そうだ。」
「一つ買ってやるよ。」 戻るオドー。
「……ハ!」

ベッドに寝ているパズラー。「鼓動が早いわ。」
ベシア:「それは僕が近くにいるんで胸が高鳴るからじゃないの?」
「じゃ背中が熱くなってきたのもそのせいかしら?」
笑うベシア。「いやあ、それは運動皮質の働きが活発になって、神経筋組織が刺激されたせいさ? 一回目はこれぐらいでいいだろう。君の筋肉は、ここの重力に慣れてきてるから、すぐに適応できるさ。」
パズラー:「うん。」
「前とは違うだろ?」
「…いいえ。」
「全く、同じ?」
「ごめんなさい?」
「ああ…アセチルコリン吸収は 14%アップしてるのになあ。当然筋力もアップするはずなんだけど。」
その時、パズラーの足が動き始めた。「ジュリアン! …ああ、足がもち上がるわ。」
ベシア:「神経経路が適応を始めたんだ。」
「ああ…」
「完全に適応するにはしばらくかかるけど、一時間もすれば立って歩けるよ。」
笑うパズラー。

司令官室から出てくるシスコ。「進み具合はどうだ。」
オブライエン:「標準 EPS の 70%までは上がってきたんですが。このままのペースだと…。こりゃ驚いた。」
ベシアと共に、自分で立っているパズラーがやってくる。「初日の、測量結果の報告書ができましたので。」
シスコ:「ご苦労だった。」
ダックス:「ジュリアン、一体どうやって…」
ベシア:「ああ、脳の運動皮質からのインパルスを増強したんだよ。理論としては昔からあったもので、簡単なんだ。」
オブライエン:「でもこの快挙は絶対学会誌に載るよ?」
「そりゃあまあね。」
パズラー:「ジュリアン。悪いんだけど私何だか、急に力が抜けて…」
シスコと共に支えるベシア。「大丈夫だよ。まだ長いこと持続はできないんだ。」 パズラーの外骨格のスイッチを入れる。
パズラー:「ありがとう。」
「そろそろ部屋に戻って休んだ方がいい。身体が疲れてるからね。」
「ああ…そうするわ。」
「居住区、第14レベル。」
見送るシスコ。

部屋に入るベシア。「毎日続けて同じ処置を受けていくに連れて、持続時間もだんだん長くなる。」
車椅子に座るパズラー。「ああ…重力を切っていい?」
ベシア:「いやあ、低い重力に戻ると、運動皮質が混乱するから。」
「…わかったわ。……ジュリアン?」
「…君は僕を初めて飛ばせてくれた人だ。」
「うん。」
「今度は僕が…君を歩かせる…。」 キスするベシア。「じゃまた明日。」 出ていく。
浮かない顔をするパズラー。

部屋に戻るクワーク。「ライト。…おいコンピューター!」 持っていたグラスとパッドを置く。
ドアに向かって走り出すのと同時に、コミュニケーターを叩く。「オドー!」
だがコットに後ろからつかまれ、バッジは投げ捨てられた。「誰も来やしねえよ、俺とお前だけだ。」
クワーク:「ファリット…ああ、いきなり現れるんで驚いたよ。くつろいでくれ。」
「くつろいでるよ?」
「何でも、好きな物をやるよ。何でも言ってくれ。」
「往生際が悪いぜ! 俺が欲しいのは、クワーク…貴様の命さ。」
「待て! 話し合えばわかる。ああ…殺すより、生かしておいた方が役に立つぜ!」
「なぜだ!」
「頼む…助けてくれたらラチナムの延べ棒、199本やろう…。」
コットはクワークを離した。
クワーク:「ああ!」
コット:「もらってやるよ。」
「ああ…。」



診療室。
また処置を受けているパズラー。「岩の上に寝てるみたいで、体中の筋肉が痛くて眠れなかった。」
笑うベシア。「それもだんだん楽になるから、がんばって? 今日の治療効果は昨日よりも長くもつと思うよ?」 器具を外す。
パズラー:「…そのうちに、元の身体に戻れなくなるのね?」
「メローラ。もし治療が嫌なら…」
「違うの、嫌なんじゃないけど何となくこれでほんとにいいのかなあって思えて。」
「自分の気持ちを、隠しちゃダメだよ。」
「……一晩中考えてたの。ああ…これは私じゃないって。」
「でももし昔のような生活に、さよならしたいなら…低い重力はあきらめなきゃダメだ。両立は不可能なんだよ。」
「納得してたつもりだったの。…でももう二度と飛べないなんて。…最後に一度だけ…」
「重力の異なる環境を行き来することは、運動皮質に…損傷を受ける恐れがあるんだ。」
「どういうこと?」
「身体を動かすことができなくなるかもってことだよ。」
「…ああ…。」
「あと 2、3日の内なら戻れるし、元に戻っても何の後遺症もない。でもその時期を過ぎてしまえば、運動皮質のインパルスは固定化されてしまう。永久にね。」
ため息をつくパズラー。

ランナバウト。
パズラーは自分の身体を支えた。外骨格のスイッチを入れる。「効果が切れたようだわ。」
席に戻り、苦しい表情を浮かべるパズラー。「自分でも自分がわからない。何で引き返したくなるのかしら。人に頼らなくて済むようになるのに。それが願いだったのに。…でも二度と故郷に、帰れないのかと思うと…一時的な帰省は別として、もう故郷に住めないのは。」
ダックス:「…人魚姫※27みたい。」
「…人魚姫?」
「アンデルセンって作家が書いたおとぎ話で、人魚姫は魔女から脚をもらう代わり、海の世界での暮らしを…あきらめるのよ?」
「それで最後は幸せになるの?」
ダックスは答えない。ため息をつくパズラー。

エアロックから出てきたアシュロック。
クワーク:「アシュロック。時間通りだな?」
アシュロックはクワークの隣を示す。
クワーク:「俺の昔ながらのビジネスパートナー、ファリット・コットだ。」
袋をクワークに渡そうとするが、コットに取られるアシュロック。「ああ…。」
クワークも持ってきた袋を渡した。「中身を調べてくれ。」
コットはラチナムを確かめている。
指輪を一つ取り出すアシュロック。「確かに本物だあ。」
クワーク:「じゃこれで取引完了だな。」
だがコットは銃をアシュロックに向けた。「ちょっと待て! そっちの指輪もよこせ。」
アシュロック:「罠にハメたのか!」
クワーク:「そりゃ誤解だ! 俺は取引のルールだけは守る※28男だぜ? ファリット、ラチナムの延べ棒 199本で十分じゃ…」
コットはアシュロックを撃った。指輪の袋は宙を舞い、クワークの手の中に収まる。
コット:「おい、早く運ぶんだ! 急げ、早くしろ! さあ! 急げ! 行くぞ。」

エアロックの異常に気づくオドー。「保安チーム、レベル22 の第5セクションへ急行せよ。」 向かう。

エアロックで待ちかまえる保安部員たち。
コットとクワークがやってくる。撃ち合いになった。
コットはクワークを盾に使い、別の方へ歩いていった。

ランナバウトを出るダックス。「ジュリアンならわかってくれるわ? それに、最初の治療効果だけでも論文は書けるわよ。」
コットがやってきた。「2人とも船に戻るんだ、急げ。」
従うダックスたち。
クワークと一緒に乗り込むコット。「早くしろ!」

コットはリオグランデの中に入った。「グズグズするな。早く船を出すんだ。」
クワーク:「逆らったらヤバいよ、本気だから。俺は後ろにいる…」
「駄目だ、見えるところにいろ。どうした急げ!」
パズラー:「これ以上早くは無理よ。」
ダックス:「乱暴しないで、彼女はエレージアン人なのよ?」
コンピューターが起動される。

報告するオブライエン。「オリノコに乗ってます。クランプは解除済み、エンジン始動開始。」
シスコ:「ビーム、スタンバイ。チャンネルオープン。」
キラ:「完了。」
「こちらはシスコ司令官。ただちにステーションへ戻れ。」
だがスクリーンに映ったオリノコは、そのまま飛び去った。
キラ:「応答なし。」
シスコ:「よーし、トラクタービーム発射!」

揺れるオリノコ。
ダックス:「トラクタービームにつかまったわ。」
コット:「よーし、司令官にチャンネルを開け。」
モニターに映るシスコ。
コット:「ビームを解除しないと、人質を殺す。」
シスコ:『君との交渉には応じよう。ただしまず人質を…』
「うるさい、聞こえなかったのか?」
頭に銃を向けられ、怯えるクワーク。
コット:「やめとこう、お前はあっさり殺すには惜しい。」

スクリーンを見守るシスコたち。
コットはパズラーを狙い、発射した。
椅子から転げ落ちるパズラー。
ただ見つめることしかできないベシア。
コット:『俺は本気だからな。ビームを解除しろ、今すぐ!』 通信は終わった。
シスコ:「ドクター、チーフ、行くぞ! リオグランデへ転送だ。転送後 10秒待ってからビームを解除しろ。」
キラ:「わかりました。…転送準備。」
転送パッドから転送される 3人。

また揺れるオリノコ。
ダックス:「解除されたわ?」
コット:「ワームホールだ。」
中へ入る。

ワームホール内部を通るオリノコ。

ガンマ宇宙域へ出た。すぐにリオグランデも続く。
揺れるオリノコ。
コット:「今のは。」
ダックス:「わからないわ。」
「何なんだ!」
「追っ手がワームホールから出てきたのよ。」
その時、倒れたパズラーの指が動き始めた。誰も気づいていない。
コット:「ワープで逃げろ。」
ダックス:「まだコースも設定してないのに?」
「コースなんかどうでもいいからワープだ!」
「コースを設定しないでワープすれば、異次元へ入ってしまうかもしれないのよ?」
「ならコースを設定しろ。早くワープに入るんだ。」

リオグランデのオブライエン。「ワープに入るようです。」
シスコ:「見失うな?」
「ワープエンジン始動。」
ベシア:「ビームで転送できないか。」
「そりゃあちょっと危険です。」

ワープを続けながら、リオグランデに追われるオリノコ。
パズラーは横になったまま、少しずつ動き始めた。
気づかずに命じるコット。「フェイザー砲準備。」
ダックス:「私は撃たないわよ?」
「命令に逆らうと殺すぞ。死にたいのか?」
「殺せば? あとはあなたが操縦しなさい。」 立ち上がったダックスは、パズラーが動いていることに気づいた。
「いいから座って言うとおりにしろ! 早く!」
席に戻るダックス。「クワーク、この人とどういう知り合い?」
クワーク:「昨日までは友達だった奴です。」
「ベンジャミンがあっさり追跡をあきらめるはずがないってことあなたからも説明してよ。」
「その通りだぞ、司令官はしつこいからな。」
コット:「なら全員死ぬまでだ。」
「ああそう! この場を逃げ切ったって、どうせ俺のことは殺すつもりだろうし、逃げ切れない場合は、みんなと一緒にここで死ぬんだし、同じことじゃねえか。」
「うるさいぞ、クワーク…」
少しずつ移動していたパズラーは、コンピューターのボタンに触れた。同時に、オリノコ内の重力が切れる。
コットは浮かび上がっていく。すぐにエンジンを切るダックス。クワークも驚いている。
空中に浮かんだパズラーは、一直線にコットに体当たりした。
天井に叩きつけられるコット。

報告するオブライエン。「ワープをやめました。」
シスコ:「通常エンジン。」
「重力ジェネレーターを切ったようですが?」
ベシア:「メローラが生きてるんだ!」
「重力が戻りました。全エンジン停止。」
シスコ:「行くぞ、ドクター。」

クワークはコットに銃を向けている。
オリノコに転送されてくるシスコとベシア。
クワーク:「ご心配なく、危機は乗り切りましたよ、司令官?」
シスコ:「シスコより、リオグランデ。事件は無事解決したようだ。」
オブライエン:『了解、コースをワームホールに設定します。』
パズラーを診察するベシア。

DS9。
パズラー:「なぜ死ななかったのかしら。」
ベシア:「わからないな。神経筋増強剤を注入してたおかげかも。」
「私もそうだと思うわ?」
「今までには知られていなかった効果だな。調べてみる価値は…」
「ジュリアン? …私、治療はもう受けないわ。」
「…それじゃまた君の気が向く時を待つよ。」
「いいえ? もういいの。…私は自分の足で、歩けるなら何を失っても…いいと思ってた。…でももしそうなったら私はもうエレージアン人じゃなくなるわ? 自分じゃなくなるのよ。それに今は昔みたいに何もかも自分でやらなきゃって気負わなくなったの。人に頼るのもいいものよね? …そう思えるようになったのもあなたのおかげよ、ジュリアン? 誰だって独りじゃ生きていけないのよね?」
「…その通りだ。」
楽器が鳴らされ、歌が聞こえ始めた。どちらもクリンゴン人のものだ。
パズラーとベシアに近づく。
ベシア:「ああ、今日は疲れただろ。あ…そろそろ帰る?」
パズラー:「いいえ、まだ。歌を聴いて行きましょう?」
暗い表情を浮かべるベシア。
パズラーはベシアの手を握る。「あなたのこと忘れないわ。」
ベシアは、パズラーを見つめた。


※27: The Little Mermaid

※28: 訳出されていませんが、金儲けの秘訣第16条 "A deal is a deal."。なお一部資料では "A deal is a deal... until a better one comes along." (直訳すると「契約は契約だ…より良いものが現れるまでは」) と続きますが、実際は前半部分だけです

・感想
ベシアの一話限りの恋愛もの。テニス好きだというエピソードがさらりと出てきますね。俳優二人を釣り上げた装置は、第5シーズンの始めにディファイアントの機関部が拡張されるまで、残されたままだったそうです。
メローラの設定は、DS9 当初リック・バーマンやマイケル・ピラーによって、主要キャラクターとする案もありました。結局単発ゲストで終わりましたが、新たな種族の登場、そして現実の障害者・介護問題にもつながるところはスタートレックらしいですね。


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