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ヴォイジャー エピソードガイド
第74話「心の傷を越えて」
The Raven

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・イントロダクション
※1「見かけほど難しくはないわ。一番大事なのは、粘土を怖がらないこと。」 ジェインウェイが話している。ホロデッキのレオナルド・ダ・ヴィンチの工房※2の中だ。モナリザの絵がある。話している相手はセブン・オブ・ナイン※3。「怖いものなどない。」 「失敗するのを恐れてはだめってことよ。粘土には心に浮かんだイメージがそのまま現れるの。全ては手と、この粘土に任せること。」 台の上に、人型の頭が粘土で作られている。セブンは差し出された一欠けらの粘土を受け取る。「はい。やってみて。鼻をもう少し足したらどうかしら。」 セブンは鼻の部分に、ぶっきらぼうに粘土を付けた。「上出来だわ。続けて」というジェインウェイ。セブンは粘土を整えようとする。「実に非生産的な行為だ。何の役にも立たず、何の成果も上げられはしない。時間の浪費だ。くだらない。」 ジェインウェイはいう。「それは個人の見方によるんじゃない? 私は心が解き放たれるわ。リラックスできる。」 「そのリラックスという概念は非常に理解しがたい。」 粘土の鼻を整えるジェインウェイ。セブンはそのまま話し続ける。「私はボーグとして常に任務を遂行し、一つ終えればすぐ次へと移った。効率的だ。」 「同じことよ。私は一時ヴォイジャーを忘れることで、仕事の効率が上がるの。」 形を整い終えた。「とてもレオナルド先生にみて頂ける代物じゃないけど、自分の手で何かを生み出している瞬間が、一番幸せ。」 粘土に布をかぶせた。セブンは言う。「この雑然とした部屋でか。古臭いオブジェが無秩序に散らばった、この環境で?」 「そうよ。
Frankly, it's refreshing to take myself out of the twenty-fourth century every now and then. And a little... disorganization can be very encouraging to the imagination. You might want to try it sometime."

24世紀から抜け出すのは、いい息抜きになるわ。この雑然さこそが、私のイマジネーションを刺激してくれるの。あなたも何か作れば?」
「私にホロデッキのプログラムを組んでみろと言うのか。」 「きっと楽しめるわ。自分のいろいろな力を発見できるはずよ。ボーグのままでは決してみつけられないような、イマジネーション、独創力、空想力。」 「なぜそんなものが必要なのかわからない。」 「必要ってわけじゃないわ。でもとても大切なものよ。イマジネーションは心を解き放ち、ひらめきや解決策を与えてくれる。大きな喜びをもたらしてくれる。人間に進歩が、心があるのはイマジネーションのおかげよ。私は昔、絵の勉強をしてた。モデルを使ったりもしたわ。レオナルド・ダ・ヴィンチは心の師なの。」 「忙しい男のようだ。」 「そうよ。多作の芸術家で、科学者でもあったわ。遥か、遥か昔のことよ。」 セブンは天井に飾ってある、翼状の羽根に目を留めた。「そのデザインもすばらしいでしょ」というジェインウェイ。「彼は飛行機の時代がくることを、その何世紀も前に予知してたの。セブン?」 セブンはその飛行機を、じっと見つめる。
「お前を同化する。」 ボーグが迫ってくる。ボーグ艦の中を逃げるセブン。鳥の目。「抵抗は無意味だ。※4お前の機能が我々に加わるのだ。」 ボーグを押しのけて進むセブン。男の叫ぶ声。「アニカーー!」 黒い鳥が飛んでいる。「お前を同化する。お前を同化する。」 セブンは行き止まりに来た。「お前を同化する。」 黒い鳥が鳴きながら迫ってくる。
ホロデッキの中。セブン、どうしたのというジェインウェイ。セブンはわからない、と答えた。ジェインウェイも天井の飛行機を見つめた。

※1: TNGラフォージ役のレヴァー・バートン監督です

※2: VOY第68・69話 "Scorpion, Part I and II" 「生命体8472(前)(後)」より

※3: 服装が前回までの銀色から、茶色のものに変わりました

※4: 「無駄だ」より、この「無意味だ」の方が良いですね。"Scorpion, Part II" 「生命体8472(後)」では「無駄だ」と訳されていました

・本編
医療室。これで 3度目の体験だ、場所も時間も特定はしていないというセブン。「浮かぶのは、いつも支離滅裂なイメージばかりだ。」 トリコーダーで検査しながら、「詳しく話してくれ」と言うドクター。「一種の幻覚なのかね?」 「幻覚の経験はない。どうもボーグの船にいるようなのだが。私は彼らを恐れている。3回とも同じだった。ボーグに追われ、同化を迫られるのだが、私は必死で逃げながら、いつも同じ…鳥を見る。」 ジェインウェイは、鳥を、と言う。「そうだ、大きな黒い鳥だ、私に向かって飛んでくる。鳴きながら。」 心的動揺が表れているというドクター。「どういう意味だ。」 「君の人間としての生理機能が蘇り始めているんだよ。心が様々な形で主張しようとしているんだ。そう、夢や幻覚、入眠時退行を通してね。」 「入眠時退行?」 「フラッシュバック。心的外傷後、ストレス障害の可能性が。」 ジェインウェイは「無理ないわ。あなたはボーグに同化されていた。長期に囚われていた分、大きなトラウマになってるんだわ」という。「私はボーグに育てられたのだ。親同然の彼らに、なぜ恐怖を感じる。」 「わからん」というドクター。「このようなフラッシュバックは続くのか?」 「神経スキャンを続けるとしよう。ところで、消化組織が復活したようだ。そろそろ固形や液体の栄養物を摂ってみてはどうかな。」 「食事は非効率的だ。」 「そりゃあホログラムなら必要ないだろう。でも人間には必要なんだ。必要な栄養素をリストアップしよう。ニーリックスに渡すといい。彼の料理は勧められんが、仕方ない。」 オフィスに入るドクター。「実に不快な感覚だ。自分に起きていることがわからない。追いつめられてる気分だ」とジェインウェイに話すセブン。ジェインウェイに通信が入る。お客様がご到着です、会議室に来るように伝えるチャコティ。すぐ行くわ、ボーマー※5の首相よ、彼らの領域を通してもらいたいんだけど、なんだかんだいって通してくれないのというジェインウェイ。私はここでドクターのリストを待つというセブン。私がついてるわ、がんばりましょうといい、医療室を出ていくジェインウェイ。
ヴォイジャーのそばを 3隻の小型船が飛行している。「それで、お考え頂けましたでしょうか」と首相に話すジェインウェイ。「おめでとう艦長。検討した結果、ボーマー独立国※6は、あなたの船が領内を通過することを許可する。」 「クルーを代表して感謝します。航海を 3ヶ月短縮できますわ。」 「もちろんこちらの提示する条件に従えばの話だがね。」 「できる限りご協力します。」 「当然だよ艦長。領内では、ワープ3 以上出してはならない。武器システムは全て解除してもらう。それから不必要なスキャン、また調査活動は一切禁止する。絶対に領内の探査を試みないこと。また軍用機以外の船隊との交信も禁ずる。」 もう一人のボーマー人※7が「船の針路図もこちらで用意しました」という。立ち上がり、コンピューターを操作する。画面にはクネクネと蛇行するルートが表示された。「何週間かかるかわかりませんよ」というパリス。「何ヵ月かも」というチャコティ。「わがボーマーの民が暮らす有人惑星や、産業エリアを避けて設定してあります。いかなる変更ももちろん認められません。」 首相が付け加える。「君らが自由に視察できるポイントも、全部で 17個所用意した。」 ジェインウェイは立ち上がる。「ゴーメン※8首相、ちょっとよろしいですか。針路設定への配慮は感謝しますわ。でももしよろしければ変更させて頂けません? もっと…短く。」
ニーリックスが調理しているところへ、セブンが食堂に入って来た。おっと、こりゃまたお珍しいというニーリックス。「わが食堂へようこそ。グルッと案内しようか?」 「生理機能が固形栄養物を必要としだしたらしい。ドクターが必要な栄養素を挙げてくれた。作ってくれないか。」 「ん? じゃ、ちょっと見てみよう。えー糖タンパク 250グラム、ポリペプチド 53%、繊維質のグリコーゲン 26%で構成されているもの、と。これじゃ食欲がなくなるや。それより俺が料理するシャドレカブ※9は栄養的にも問題ないし、その上作ってるこっちまで喜びを味わえるってしろもんだ。」 「喜びは必要ない。」 「おっと、そりゃ違うぞ。美味い飯っていうのは単に栄養を摂取するだけとはわけが違う。」 「何が違う。」 「あ、ちょ、そ、そりゃ…満足度に決まってるだろうが。心のこもった料理は味が違う。ま、一度食ってみりゃわかるって。シャドレカブをどう調理するかだな。茹でるか焼くか炒めるか…。」 「調理は必要ない。」 「必要あるんだなぁ、これが。あんたはもう長い間、口からものを食べていない。少しでも消化しやすくしないとな。蒸すか。」 料理を始めるニーリックス。「よおしと。このレシピはな、うちの家族、秘伝のレシピってやつなんだ。俺たちは繊細だからねぇ。」 「タラクシア人。」 「あー、その通り。」 「生命体218※10。」 「そうだっけ?」 「お前たちの特殊性は、既に我々に同化された。」 神妙な顔になるニーリックス。「そりゃ、知らなかったな。」 「ドルマイン星域※11で 39人が乗った貨物船を襲ったのだ。簡単に同化できた。高密度の筋肉組織はボーグにもってこいだった。」 「そ。そりゃ良かった。ほい、できあがり。おいで。」 料理と花を持ち、テーブルへ誘う。食器を並べ、椅子の横に立つ。「どうぞ。」 「何がだ?」 「食べる時は、座るって決まってんの。」 ぎこちなく座るセブン。ニーリックスが「あのう、どうかした?」と尋ねる。「慣れていないだけだ。ボーグは座らない。」 「まあ、今日はまだ 1日目だからね。はい。」 ナプキンを足に置く。「じゃあ、食べてごらん。」 やり方がわからないセブン。ニーリックスはフォークを指差す。「あ、ああ、これ持って。それで料理をすくうんだ。ん? やって。そう、そしたら、口へ運んで。ね。偵察機がスーッとシャトルベイに入っていくみたいに。ハーッて。」 言われるままに口に入れるセブン。「出して。口閉じたままね。そうそうそう。噛んで。モグ、モグモグモグモグモグ。そして飲み込む。あ、だから……」 飲み込む動作をするニーリックス。口から腹を指差す。セブンも飲み込んだ。「不思議な感覚だ。」 「すぐ慣れるよ。もっと食べて。」 2口目を食べ終えた。ふいにセブンは動きを止める。慌てて「ほかのもん持ってこようか? 少しお茶でも飲む?」というニーリックス。セブンの意識が再び飛んだ。
ボーグ。口を大きく開き、鳥の鳴き声を出している。
ニーリックスは、セブンの右腕に気づいた。皮膚の下で何かが動いている。そのボーグのインプラントは皮膚を飛び出し、放射状に広がった。痛みに腕を押さえるセブン。「お前を同化してやる。抵抗は無意味だ!」 ニーリックスは突き飛ばされた。食堂を出ていくセブン。周りのクルーがニーリックスに駆け寄る。「大丈夫か、おい」

※5: B'omar

※6: B'omar Sovereignty

※7: 名前は Dumah
(ミッキー・コトレル Mickey Cottrell TNG第121話 "The Perfect Mate" 「究極のパートナー」のオーリック首相 (Chancellor Alrik) 役) 声:辻親八、TNG/DS9 オブライエン、叛乱 ルアフォなど

※8: Gauman
(Richard J. Zobel, Jr.) 声:宝亀克寿

※9: chadre kab

※10: Species 218

※11: Dalmine Sector

会議室。画面に短いルートが表示された。「このコースでしたら条件には合います。有人惑星からは 3光年も離れている」と話すチャコティ。だがゴーメンは「話にならん。これではアグラット・モット星雲※12を通ることになる」と受け入れない。「あの星雲はナソーディン※13との貿易交渉のキーだ。」 星図を作ってみます、できるだけ…というパリスだが、ボーマー人は言った。「失礼ですが、あなたの翻訳機は故障しているのでは?」 トゥヴォックから通信が入った。ジェインウェイは失礼ですが、といいブリッジへ戻る。
「報告。」 「保安部員から通報があり、ニーリックス、およびクルー 3名がセブンから攻撃を受けました。」 「ジェインウェイからセブン。セブン、聞こえたら応答してちょうだい。」 返事はない。現在地を尋ねるチャコティに、第6デッキ、セクション28アルファと答えるトゥヴォック。チャコティはすぐに向かうよう命じ、保安コンソールに代わりにつく。ターボリフトに乗るトゥヴォック。何かあったのかねと尋ねるゴーメンに、こっちが聞きたいですわというジェインウェイ。チャコティに第6デッキの封鎖を指示する。
通路を歩いているセブンに声が聞こえてくる。『セブン・オブ・ナイン、お前を同化する。』 前からボーグが歩いて来た。『抵抗は無意味。抵抗は無意味。』 実際は保安部員だ。フェイザーが発砲される。だがセブンにはほとんど効き目がない。もう 1発。今度は緑色のシールドが発生し、全く効果がない。保安部員を無視し、そのまま歩いて行くセブン。2人が同時にフェイザーを撃つが、やはりシールドで防がれてしまう。
ブリッジに情報が入る。『保安部より艦長。セブン・オブ・ナインを発見。ボーグ・シールドで武装し、フェイザー銃も効果ありません。』 ジェインウェイは了解し、全保安部員にフェイザーの波長をランダムにセットするよう伝える。麻痺以外は使用禁止だ。「ボーグ? 船内にボーグがいるのか」というゴーメン。「彼女はもうクルーの一員です。集合体からは解放しました。もうボーグじゃありません。」 「じゃあなぜボーグ・シールドを装備している。」 「わかりません。」
通路を歩き続けるセブン。フォースフィールドでさえ、たやすく通過してしまう。
セキュリティフィールドを突破しました、武器庫に侵入したようですと報告するチャコティ。
セブンはフェイザーライフルを持ち、ターボリフトに入る。第10デッキ、と指示した。パネルの操作を始める。
ターボリフトに乗ったことを伝えるキム。ターボシャフトの電源を切るようにいうジェインウェイ。だがボーグ・コードでブロックされている。「ジェインウェイからトゥヴォック、セブンは第10デッキへ向かってるわ。先回りできる?」
「現在、向かっているところです。」 トゥヴォックは部下に、ドアの前で待機するよう命じる。ターボリフトが到着し、セブンが出て来た。「武器を下ろし、後ろへ下がれ」というトゥヴォック。セブンは何も言わない。トゥヴォックは「撃て」と命じた。フェイザーライフルから 2発連続して発砲されるが、シールドで効果はなかった。セブンは反撃する。トゥヴォックは避けたものの、2人の部下は撃たれてしまった。
「トゥヴォックよりブリッジ。作戦失敗です。負傷者 2名。セブンはジャンクション32アルファへ。」 シャトルベイね、というジェインウェイ。チャコティはフォースフィールドを張り、キムに第10デッキにパワーを集中させるようにいう。完了するキム。
セブンはシャトルベイに着いた。手をドアに近づけると、フォースフィールドが反応する。セブンは近くのコンピューターを操作し始めた。
シャトルへ転送する気です、というキム。
シャトルの中へ転送されるセブン。
サイト・トゥ・サイトで転送したらしい、既にシャトル内ですというチャコティ。エンジン起動。シャトルベイ封鎖を命じるジェインウェイ。
閉じられたままのスペースドア。しかしシャトルが中からそれを突き破った。大きな穴が開く。トラクタービームというジェインウェイだが、効果なし、シャトルシールドを増幅させていますというチャコティ。ボーマー・スペースに向かっており、ワープで消えた。イオン粒子の痕跡を消していて、追跡できませんというパリス。見失った。

※12: Agrat-Mot Nebula

※13: Nassordin

作戦室。「彼女を全力で追っています。早期解決のため、ボーマー・スペースでの捜索を許可頂けませんか」とゴーメンに尋ねるジェインウェイ。「話を整理させてもらおう。君らは無断でわが領域に現れ、領内を通過させろと要請し、野蛮なボーグを一匹野放しにした上、今度はそれを見つける手助けをしろと。」 「今回のことは謝りますが、私たちは誰も野放しになどしてません。力を貸して頂ければ、この状況をすぐに解決します。」 「失礼ながら、君にはとても、その力があるとは思えん。」 「私の船にいるということをお忘れなく。」 ボーマー人は「あなたのたった 1隻の船を、わが軍が取り巻いていること」という。 ゴーメンは君のボーグはすぐに見つかるだろう、わが軍が既に追跡中だといった。追跡、どうやってというチャコティ。いかなる船も物体も、宇宙の塵でさえ我らが領内に入り込んだ未確認のものは直ちに境界線グリッドで追跡されることになっているのですと説明するボーマー人。「ボーグは発見次第、抹殺する」というゴーメン。「首相!」 「情報を共有する気はない。従って今後も君らの船はわが領域の境界線から 5光年の位置に留まり、わずかな移動でも我々への攻撃行為とみなす。」 「副長、お客様を転送ルーム※14へご案内して。」
「艦長日誌、補足。貨物室を隅から隅まで調査するため、特別チームを組織した。過去 2ヶ月間、セブン・オブ・ナインの部屋も同然だったこの場所なら、彼女の行動を解明する何らかの手がかりが見つかるに違いない。」
多数のクルーが貨物室を調べている。トリコーダーを使っているトレスは、キムに話しかけた。「結構ショックなんじゃない?」 「どういう意味。」 ため息をつくトレス。笑い、「彼女はただの仕事仲間」というキム。「何むきになってるわけ?」 「君は誤解してる。」 「誤解してるって、どんな?」 「もういい。」 トレスのトリコーダーに反応があった。アルコーヴから一つの部品を取り外す。「ねえ、これ見て。」 キムに渡す。ジェインウェイがやってきた。「どうかした?」 「ボーグのデータリンクです。彼女の日誌も入力されています。ボーグの特殊コードで」というトレス。ボーグ語には自信があります、翻訳しましょうかというキム。ジェインウェイはお願い、といった。チャコティも貨物室に入り、ジェインウェイに報告する。「ボーマーにはよほど嫌われたようです。1時間で境界のパトロール船は 2倍に、境界線グリッドは 36%パワーアップされました。」 「随分手厚い歓迎ね。」 「ドクターがセブンの転送時のパターンを分析しました。見せたいものがあるそうです。仕方ありませんよ。彼女がヴォイジャーにいたがっても、ボーグの部分が許さない。インプラントを取り除いても、彼女のコアの部分は、集合体の一部なんです。」 「いいえ。そんなことないわ。」 2人は第2貨物室を出てターボリフトに乗る。
「第5デッキ」と指示するジェインウェイ。「セブンは心を開いてた。初めて集合体の外側の人間と接触をもったの。この環境にもクルーにも適応していたわ。なのにどこへ。さっき 40光年先までスキャンしてみたけど、ボーグ艦の痕跡はなかったわ。集合体と接触できるはずない。」 「ボーグ・スペースに戻ろうとしているのでは?」 「1万光年も離れてるのに? まさか。別の理由があるはずよ。何か見逃してるはずだわ。」 「今もボーマーが追跡中です。捕まれば、戦闘は必至です。」 「どっちにしても、早く見つけなくちゃ。」 ターボリフトを出る。
医療室でドクターに尋ねるジェインウェイ。「見せたいものって?」 「驚くべき発見です。これは最後にセブンが転送を試みた時の身体データです。ご覧ください。脊髄とリンパ組織中のボーグ細胞の濃度が異常に高まっています。」 モニターにナノプローブも表示される。「活動を休止していた細胞内のナノプローブが再活動を始め、血球を生成し、新たなインプラントを作り出してるんです。3週間前に取り除いたボーグ・テクノロジーの 13%が復活するのは、時間の問題です。」 ナノプローブは休止していたと言ったな、なぜ再活動を、と尋ねるチャコティ。「だがその生成は止められます。遺伝子再配列ヴェクター※15をハイポスプレーで注射し、ナノプローブを中和するんです。」 セットしたハイポスプレーをジェインウェイに渡す。「まずはこれが打てる距離に行かなくちゃ。」
ジェインウェイはブリッジに戻り、トゥヴォックに報告を求める。「境界線グリッドを調査しました。精巧ですが、弱点がないわけではない。グリッドを通り抜けるには、シールドの周波数を設定し直せばいいんです。」 パリスが続ける。「問題はエネルギーサインですが、ヴォイジャーでは大きすぎてもシャトルがある。シールド調整を行いエンジンをパワーダウンさせれば、見つけることなくドリフトできます。」 ジェインウェイはよく発見したわ、進めてという。「このハイポスプレーを打てばしばらく彼女を落ち着かせることができるわ。一旦境界線から出たら、ヴォイジャーとは一切交信をしないこと。独断で行動を。」 トゥヴォックは「艦長、遺伝子の再配列も効果がないかもしれません」という。「そうね。効果もなく、説得にも失敗した場合は、いかなる手段を用いても彼女を止めてちょうだい。」 「わかりました。」 2人はブリッジを出ていく。
セブンのシャトル。意識が飛ぶ。
ボーグが近づく。『セブン・オブ・ナイン、第12サブセクション 3・9・2、お前を同化する。』 セブンはテーブルの下で、怯えている。
意識が戻ると、コンピューターが警報を鳴らしていた。シャトルの前には、何十隻ものボーマー船が迫っていた。

※14: 普通に「転送室」でいいような?

※15: genetic resequencing vector

セブンのシャトル。ボーマー人から通信が入る。『ボーグの兵士よ。お前はわがボーマー独立国の領域に無断で侵入した。エンジンのパワーを切り、シールドを弱めるのだ。これからそちらへ向かう。それ以上の侵攻は許さん。おとなしく我々の…』 だがシャトルからはフェイザーが発射された。強力なシールドを使い、ボーマー船に次々と体当たりしながら切り抜けていく。ボーマーの武器は全く歯が立たない。
「武器のサインを探知。連邦とボーマーのものだ。現在、ボーマー機 5機が漂流、ダメージ大。生命反応は安定」というトゥヴォック。パリスも報告する。「セブンのシャトルを確認。ここから 250万キロメートル先だ。」 「針路を妨害しよう。」
セブンのシャトルに近づく、トゥヴォックたちのシャトル。※16パリスは転送を試みる。「セブンのインプラントが転送シグナルを妨害してるんだ。ロックできない。」 「シールドを抜けられるよう、転送装置を調整してくれ。」 「シャトルへ行く気か?」 「そうだ。」 「やめた方がいいんじゃないか、トゥヴォック。ボーグ対ヴァルカンの決闘なんてさ。お前にその気がなくても、彼女が飛びかかってきたらどうする。」 「驚きという感情を制御できるよう祈ろう。ほかに考えが?」 「残念ながらノーだ。」 警告音が鳴る。確認するパリス。「武器を準備してる。」 「座標をシャトル後部に設定しろ。」 「いいぞ。」 「転送。」
セブンのシャトル内に転送されるトゥヴォック。だがその途端、後ろで待っていたセブンにハイポスプレーを払い落とされる。組み合う 2人。セブンはトゥヴォックの片手を払い、肩をつかんだ。トゥヴォックは意識を失った。※17
じれったがるパリス。「何やってるんだよトゥヴォック。応答しろよ。」 シャトルが揺れた。セブンが攻撃しているのだ。大きく揺らぐパリスの乗ったシャトル。コンピューターの警告。『警告。推進システム、停止。』 「ちくしょう」と悪態をつくパリス。セブンのシャトルは進み続ける。
ハイポスプレーがセブンの前に置いてある。トゥヴォックは目を覚ました。ゆっくりと操縦席のセブンに近づく。しかしフォースフィールドが行く手を阻んだ。「レベル5 のフォースフィールドだ。気を付けた方がいいぞ」というセブン。「なぜヴォイジャーを去った?」 「私はボーグだ。」 「かつてはな。だが今は人間だ。クルーの一員でもある。」 「確かに一時は人間だったが、やはり私はボーグだと再認識した。私は常にボーグだ。」 「再認識するに至った根拠は?」 「全てのボーグ艦が、明確な共鳴波を送ってきている。集合体から離れた兵士を導こうとな。」 「誘導ビーコンか。」 「そうだ。私は信号を追っていく。ボーグ艦が待っているのだ。」 「さっきボーグ艦をスキャンしてみたが、いなかった。」 「嘘だ。彼らは来ている。」 席を立ち、トゥヴォックを見つめるセブン。「ヴァルカン。生命体3259※18。肥大した新皮質は高度な分析能力をもたらす。お前らの特殊性を同化すれば……。」 「セブン?」 「いや。お前は同化しない。集合体へ戻ったら、ヴォイジャーへ帰してやる。艦長に事情を伝えておいてくれ。忍耐と親切に、感謝すると。」 「面白い。君の行動は愛情と感傷を表している。人間の特性だ。ボーグとは思えん。幻覚が見えるんじゃないのか? フラッシュバックだ。」 「そうだ。」 「それが見えるのは、共鳴波を感じる時か。」 「いや。」 幻覚。
鳥の目。『セブン・オブ・ナイン、第12サブセクション 3-9-2。』
「また声が聞こえる。私を呼んでる。なぜだ。」 「説明はつく。フィールドを弱めろ。ヴォイジャーに戻って原因を解明するのだ。私は君の仲間だ。私と一緒にヴォイジャーに戻ろう。」 「戻るのは集合体だ。」 セブンは再び操縦席に座った。
「艦長日誌、補足。ここ数日間のセブン・オブ・ナインの足跡・行動を追い続けているのだが、未だに彼女の行動の謎はつかめない。」
第2貨物室。ジェインウェイはアルコーヴの中で立っている。キムがやって来た。「艦長、お邪魔でしょうか。」 「いいえ、ハリー。」 「セブンの日誌を翻訳しました。」 「それで?」 「船を出るようなことは書いてありません。これといって特別なことは何も。日常業務のことや、機能回復の過程の記録、後はクルーの行動についての個人的な感想が述べてあるだけです。私のことも書いてありましたよ。私の行動は、非常に予知しやすいそうです。いろんな意味で。」 パッドを受け取るジェインウェイ。「悪気はないはずよ。セブン流の誉め言葉かも知れないわ。」 笑う 2人。キムはつけ加える。「最後だけがちょっと変わってるんです。奇妙なイメージの記述で、夢の記録か何かだと。」 「幻覚かしら。」 「かもしれません。ボーグ艦の中で必死に逃げていたり、隔壁の後ろに隠れていたり、シャフトが落ちたり。常にボーグに追われてる、悪夢のようです。」 「この鳥は?」 「何度も見ているようです。いつも襲いかかってくる。何なんでしょう。」 「『羽根は黒く、翼はおよそ 1.5メートル。目は黄色。鋭く尖ったくちばしをもっている。見つめられると、体が麻痺し、動けなくなる。私を知っているようだ。だがそれがなぜなのかわからない。あれはただの鳥だ。下等な生命体に過ぎない。だが姿を見ると恐ろしくなる。』 何の鳥のことをいってるのかしら。カラス科には違いないと思うんだけど……。ワタリガラス※19。レイヴンのことを言ってるんだわ!」 「心当たりでも?」 「セブンの行き先がわかったわ。」 貨物室を出る 2人。
ブリッジに戻り、ジェインウェイは命じる。「チャコティ、長距離センサーでセブンとトゥヴォックたちのシャトルを除いた、連邦の全艦船をスキャンしてちょうだい。」 「艦長?」 「急いで。発進準備をお願い。コースをボーマー・スペースへ設定して。」 了解する操舵士官。

※16: セブンのは 6型で、トゥヴォックたちのは 9型シャトルです

※17: これが本当にヴァルカン首つかみなのかは不明

※18: Species 3259

※19: raven
原題

シャトルは衛星へ近づく。確認するセブン。「共鳴信号は衛星から発信されている。ボーグはそこにいるのだ。なのに、なぜ私は恐れている。」 トゥヴォックは「恐ろしいなら、ここを離れればいい」という。「一度集合体に戻れば、もう恐れなどなくなる。」 「フォースフィールドを消すんだ。私も君と一緒に行こう。独りでは危険だ。」 「同化されるぞ。」 「それはないだろう。本当にボーグが待ち受けてるとは思えん。」 「では何があるというのだ。」 「よくわからない。だからそれを探しに行くのだ。君と一緒に。」 セブンはコンピューターを操作し、フォースフィールドを消した。
パリスのシャトル。通信が入る。『ヴォイジャーからパリス。』 「はい、パリスです艦長。待ちに待った声だ。トゥヴォックはセブンと一緒です。しかし彼女のシャトルに転送して以降、連絡が取れていません。黄色矮星※20の第5惑星の衛星軌道上にある、Mクラスの月へ向かった模様です。地表から未確認の共鳴信号を探知しました。不安定で正体を確認できません。」 ヴォイジャーのジェインウェイ。「了解。あなたのシャトルに向かって、ボーマー機が数機向かってるわ。コンディションは?」 「ワープエンジン停止。シールドは 50%です。」 「敵機を捕捉して。そっちへ向かうわ。」
岩だらけの荒れた衛星。セブンと共に、トリコーダーで調べながら進むトゥヴォック。「発信地が近い。」 「ここだ。間違いない。」 「行こう。」 セブンはためらう。「嫌なら、シャトルへ戻ろう」というトゥヴォック。「いや、探さなくては。」 歩き始めるセブン。
崖の上に、半壊状態の船がある。「あれは」というセブン。「連邦の船だ。ボーグに同化されかかってる。生命反応はない。トリタニアム※21の具合から、20年近くは放置されているようだ。」
船の中に入る 2人。「覚えがある」というセブン。台の上でライトが明滅し、音を発している。「私を呼んでいた信号だ。」 操作し、それを止めるセブン。幻覚。
叫びながら、男性※22がボーグに連れて行かれている。「アニカー!」 女性の声。「逃げて、アニカー!」 怯える少女※23。女性※24もボーグに捕まっている。「逃げてー! 早くー!」
意識の戻ったセブン。「パパ。助けて!」 テーブルの下に入り、怯える。再び幻覚。
「いやー! いやー!」と叫ぶアニカ。ボーグの手が迫る。
セブンも「いや…」とつぶやいていた。「セブン! 私だ! わかるか」と声をかけるトゥヴォック。「おいで。」 テーブルの下から起き上がるセブン。「ここだ。私は、ここでボーグに同化されたのだ。」 セブンは何かに気づいた。壁のすすを払うと、船の記念銘版が現れた。「THE RAVEN※25」と書かれ、ワタリガラスが描かれている。「私たちの船だ。ここで…、ここで暮らしていたのだ。父は研究者だった。大切な実験をするために、ここまで来たのだ。ここで誕生日を祝った。ケーキには 6本のろうそくが立っていて、もう 1本立てようという時、彼らがやって来た。パパは戦おうとしたが、かなわなかった。私は隠れた。小さいから見つからないと思って。だが見つかった。それからパパが墜落すると言った。男は私を抱え、次の瞬間には、もう私はこの船にはいなかった。そしてボーグになった。」 「不思議だ。20年来発信され続けた共鳴信号を、やっと探知したのが君だとは。」 船が揺れた。 「攻撃を受けている。」 「ボーマーだ。崩壊する。早くここを出よう。」
衛星の軌道上から、地表へ向けて武器が発射されている。ヴォイジャーも到着した。
「依然としてボーマーからは応答ありません」と報告するキム。「攻撃に備えろ」というチャコティ。「武器システムを狙って。トム、そっちはどう?」 『トゥヴォックとセブンを発見。しかし妨害がひどく、現在ロックを試みているところです。』
セブンが道を指示し、出口へ向かう 2人。攻撃でシャフトが崩れる。「大丈夫か」と聞くトゥヴォックに、「損傷はない」というセブン。
道がふさがれている。「出口はここだけだ」というセブン。「いや、ほかにもあるはずだ」といいトリコーダーを使うトゥヴォック。「前方に外殻の裂け目がある。そこから脱出しよう。」 2人はすぐに向かう。
裂け目をふさいでいるガラクタを取り除く。「どけて。急いで!」というトゥヴォック。
チャコティは「2機を沈黙させました。3機目が未だ攻撃中」という。「応答がありました。音声のみです」というキム。ゴーメンの声が流れる。『我々に戦争をしかけているのか。』 「選択の余地がなかったもので。」 「間もなく援軍が到着するぞ。お前らは壊滅する…』 ジェインウェイは通信を切る合図を送る。「どうぞご勝手に。砲塔を狙って。」
「セブン、手を貸してくれ!」 道をふさいでいたものを取り除いた。そこを抜け、船外へ出る。2人の見ている前で、レイヴンは崩れていく。そして転送された。
パリスの通信。『2人をロックしました。ヴォイジャーへ帰艦します。』 「了解トム。ご苦労さま。」 「現在、ボーマー艦隊が接近中。68機です」と伝えるキム。ジェインウェイは操舵士官に命じた。「少尉、ミスター・パリスのシャトルが帰艦次第、ボーマー・スペースを脱出して。ワープ8よ。」 「了解。」 「今回は近道できそうもないわ」とジェインウェイはチャコティに言った。
ホロデッキのダ・ヴィンチの工房。ジェインウェイは、セブンがあの飛行機を見ているところへ来た。「そこにいたの? ドクターがインプラントの調整をしたいって言ってるの。そうすればもう、誘導シグナルを受信しなくて済むらしいわ。」 「ありがとう。無断で、プログラムを使わせてもらった。」 「いいのよ。」 「あなたはこの前言っていた。ここがイマジネーションを刺激する場所だと。」 「効果はあった?」 「わからない。ただ、さっきからシナリオを作っている。もう一つの可能性のだ。もしボーグと遭遇していなかったとしたら、どうなっていたのだろう。両親に育てられ、教えられ、彼らにたくさんの影響を受けていただろう。」 「あなたもよ。彼らに影響を与えてた。もしご両親のことを知りたければ、連邦のデータベースに情報があるわ。」 「情報が?」 「有名な方達だったようよ。型破りの発想で、ユニークな理論を打ちたてていたらしいわ。ぜひ読んでみるといいわ。きっと…イマジネーションを刺激される。」 「そうかもしれない。いつかな。おやすみ艦長。」 セブンはホロデッキを出て行った。

※20: 「イエロードワーフ」とそのまま訳されています。恒星の種別で、他に赤色巨星 (red giant) などがあります

※21: トリタニウム tritanium
宇宙船の船体に使われる合金。TOS第47話 "Obsession" 「復讐! ガス怪獣」など

※22: (David Anthony Marshall) クレジットなし。声:長克己

※23: アニカ・ハンセン Annika Hansen
(Erica Lynne) クレジットなし。声:出口佳代

※34: (Nikki Tyler) クレジットなし。声:野沢由香里。以上 3人は "Scorpion, Part II" 「生命体8472(後)」の記憶のシーンに登場した俳優と同じです

※25: U.S.S.レイヴン U.S.S. Raven
NAR-32450。クラス名不明

・感想
セブンの詳しい過去が明らかになります。とはいっても、まだ謎はたくさんあるわけですが。研究者だというハンセンがやっていた「大切な実験」や、そもそもなぜレイヴンはデルタ宇宙域に来ることができたのか。これから先に解き明かされていくんでしょうね。
それにしてもセブンの強いこと…。まさに無敵ですね。シャトルの強行突破シーンやレイヴンの映像など、ストーリーとビジュアルのバランスのとれた話だと思います。


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