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TNG エピソードガイド
第74話「浮遊機械都市ボーグ」(前)
The Best of Both Worlds, Part I

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・イントロダクション
※1※2『航星日誌、宇宙暦 43989.1。我々は緊急信号を受け、連邦の一番端に位置する植民星、ジュレ4号星※3に到着した。』
エンタープライズは、惑星に近づく。
データたちと共に、転送室に入るライカー。「メッセージは入ったか。」
ウォーフ:「いえ、入植地からはもう 12時間以上何の応答もありません。」
「センサーに生命反応はないのか?」
「ありません。」
オブライエン※4:「地上環境問題なし。転送可能です。」
操作するオブライエン。ラフォージたちは転送される。

地上に実体化する 4人。
ライカー:「オブライエン。ニュープロヴィデンス※5・コロニーはこの座標で間違いないのか。」

オブライエン:「座標は間違いありません。そこが街の中心地です。」

辺りには茶色の土しか見えない。
すぐそばに、巨大なクレーターが広がっていた。
フェイザーを納めるライカー。


※1: このエピソードは、第3シーズン・フィナーレ (最終話) です

※2: 1991年度エミー賞で、特殊映像効果賞にノミネートされました

※3: Jouret IV
原語では「一番端に位置する植民星の一つ

※4: マイルズ・オブライエン Miles O'Brien
(コルム・ミーニー Colm Meaney) 前話 "Transfigurations" 「輝きの中へ…」に引き続き登場。声:辻親八

※5: New Providence
プロヴィデンスはロードアイランド州都

・本編
※6ジュレ4号星軌道上には、エクセルシオ級の船も到着している。
『航星日誌、宇宙暦 43992.6。宇宙艦隊戦術部のハンソン提督※7とシェルビー少佐※8が、ニュープロヴィデンス・コロニーの調査のため到着した。900名の入植者が街ごと消えてしまったのだ。』
作戦室にハンソン提督がいる。「実にまずいな。…まだ何の準備もできていない。…奴らが来るのはわかっていた。一年以上総動員で対策を練ってきたんだが…」
ライカー:「ではボーグ※9だとおっしゃるんですね。」
女性士官が応えた。「それを確かめるために来たんです。今回の状況は、以前 J-25星系※10のエンタープライズから送られてきた報告の記述と、同じなんです。」
ピカード:「ライカーが報告書を書いたんだ。彼も気づいていた。」
ハンソン:「シェルビー少佐は半年前から、対ボーグ戦術分析を担当している。…この件に関しては彼女にかなりの権限を与えてある。…それで一緒に連れてきたんだ。」 うなずく。
シェルビー:「まずボーグの攻撃から身を守ることです。防衛戦略が最優先です。」
ライカー:「今ある防衛システムでは止められないぞ?」
「新兵器の開発も進めています。ですが、どれも設計段階で。」
ハンソン:「まだ時間があると思っていた。…君らがボーグと遭遇した地点を考えれば、数年あるとな。」
ピカード:「科学技術においては、ボーグは我々より遥かに進んでいるようですからね。」
シェルビー:「できるだけ早く、コロニー跡を調べさせて下さい。」
ライカー:「30分で日没だ。上陸班は夜が明けてから送る。」
ピカード:「ライカー、少佐を部屋へ案内してくれ。」
ドアの前で立ち止まるライカー。「…今夜ポーカーをやります。気が向いたらいつでもどうぞ。」
ハンソン:「今日はやめておこう。…艦長といろいろ詰めねばならん。だが聞くところによると、シェルビーは結構心得があるらしいぞ?」
シェルビーを見て、共に出ていくライカー。
笑うハンソン。「ジャン・リュック、彼女をどう思う。シェルビー少佐はかなりの逸材だ。」
ピカード:「高く買ってるんですね、提督。」
「見る目はあるつもりだ。」
ピカードは席を立ち、制服の裾を伸ばす。
ハンソン:「彼女が戦術部に来た時、我々年寄りはボーグのことで頭を抱えていた。…彼女が突破口を、開いてくれたんだ。」
トレイを持ってくるピカード。「お茶※11をどうです。」
ハンソン:「頼む。…シェルビー少佐を副長にしてみないか。」
「既に、優秀な副長がいます。」
「彼はまた昇格の話を蹴るつもりか?」
「…昇格の話。」
「メルボルン※12さ。奴の返事待ちだ、聞いてないのか。」
「…ライカーなら立派な艦長になります。」
「…君からも言ってやってくれ。早く決心を固めろとな。…ライカーに艦長の椅子を用意してやったのはこれでもう 3度目だ※13。…だが座ろうとしない。…わしにはどうもわからないんだ。シェルビーのように若い精鋭が続々現れてくる。なのにライカーは突然立ち止まってしまった。…これでは、経歴に傷もつきかねん。わしなら奴のためにも、早く放り出してやるがなあ。」
ため息をつくピカード。

ライカーに案内され、部屋に入るシェルビー。「何を調べるべきかもわかりません。でも前回のボーグの攻撃の後、エンタープライズの船体から珍しい素粒子が検出されているんです。」
ライカー:「ボーグの足跡だな。」
「手がかりにはなります。とにかく明日ですね。クルーの記録を見たんですが、ラフォージ少佐とデータ少佐を上陸班に入れて下さい。」
「2人はもう上陸班に組み入れてある。それからもちろん、私も一緒に行く。」
「ええどうぞ。中佐に手伝っていただければ助かります。…話は変わりますが、エンタープライズでの任務は噂で聞くとおり素晴らしいものなのですか。」
「その通りだ。」
「よかった。ピカード艦長には、必ず私が適任だと認めさせてみせます。」
「適任? 何のことだ。」
「あなたの後任にです。…あ、すみません。もう転属なさるとばかり。」
「…その時は真っ先に君に知らせよう。」 出ていくライカー。「ポーカーは 17時から私の部屋で。第8デッキだ。」

ポーカー台※14のウェスリー。「伏せカードはキングなんじゃない?」
帽子を被っているデータ。「悪いがその質問には答えられない。しかも君はこの場においてはニューフェイスだ。不適当な質問は控えるべきだな?」
笑うラフォージたち。ウェスリーはばつが悪そうだ。
データ:「カウンセラー、もう一枚下さい。」
トロイ:「これじゃダメね。」
ラフォージ:「ああ、降りた。今回もね。」
「少尉になりたてのハンサムさんにはジャックが 3枚。…2つのペアができたわね。こちらはストレートフラッシュかもしれないわよう? うーん。ウェスリー? ベットはどうする?」
ウェスリー:「…10 でいこうかな。」
シェルビー:「コール。」
ライカー:「そろそろ大人のゲームにしよう。まず 10、更に 100。」
驚くトロイ。
ラフォージ:「ありゃきっとストレートフラッシュだぞ?」
データ:「そうとは限らない。ハッタリをカマしてらっしゃるかもしれない。」
ウェスリー:「……やっぱりやめとく、降りた。」
ラフォージ:「おい、ジャックのスリーカードだろ? 成績はオールA かもしれないが、世の中のことをもっと勉強しろ。」
シェルビー:「…ツーペアしかないけど、副長の手を是非見てみたいんです。コールします。」
カードを開くライカー。
揃っておらず、ラフォージは笑う。「やられましたね。」
ため息をつくウェスリー。

転送室。
パネルを見ていたオブライエン。
ラフォージと共に来るライカー。「データと御客様は遅刻らしいな。」
オブライエン:「その 2人でしたら、もう一時間も前にジュレ星に降りてます。」
「…誰の命令だ。」
「シェルビー少佐のです。」
転送台に乗り、ため息をつくライカー。オブライエンが操作し、2人は転送された。

ジュレ4号星に実体化するライカーとラフォージ。
地面を調べていたシェルビー。「…おはようございます、下調べしようと思いまして。面白い結果が出ていますよ。」
ライカー:「…シェルビー少佐。…ちょっと一緒に来てくれ。」 2人は離れる。
シェルビーを見るデータ。「下調べしようと? シェルビー少佐は勘違いしている。我々 2人がこの一時間で行った調査は、とても本格的なものだ。」
ラフォージ:「要するに、言い訳を言っただけのことさ。※15だが確かに、勘違いしてるな?」

説明するシェルビー。「すみません、天候が悪くなりそうだったので先に来ました。検査結果に影響が出るんです。」
ライカー:「だからといって勝手な行動を取るのは危険すぎるな。」
「いいですか、これからボーグに出会うと考えて下さい。2人ぐらい余分に死んでも同じことですわ? あと 3時間で台風が来るんです。いえ、もう 2時間ありません。データの手が空いていたから彼を連れてきた。何が問題なんですか?」
「問題は上官である私の命令を何の連絡もせずに変更したことだ。」
「わかりました、以後気をつけます。検査結果をお聞きになりますか。」
「…もちろんだ。」
「地表から同じ、磁気素粒子※16が発見されました。例の足跡です。疑いの余地はありません。ボーグが来たんです。」


※6: タイトル表示は "The Best of Both Worlds" のみですが、このサイトでは便宜上わかりやすくするため "The Best of Both Worlds, Part I" で全て統一しています。特にこのエピソードは初のクリフハンガーだったため、前編であることを隠す意図もあったと思われます

※7: J・P・ハンソン提督 Admiral J.P. Hanson
(ジョージ・マードック George Murdock 映画 ST5 "The Final Frontier" 「新たなる未知へ」の神の顔役) 階級章は三つ星。ピカードがイニシャルで「J・P」と呼ぶ個所がありますが、訳出されていません。声:藤本譲、VOY ダ・ヴィンチ、旧ST6/STG スコット

※8: Lieutenant Commander Shelby
(エリザベス・デネヒー Elizabeth Dennehy ブライアン・デネヒーの娘) 一部資料ではフルネームがエリザベス・ポーラ・シェルビー (Elizabeth Paula Shelby) となっています。声:平野文

※9: Borg
TNG第42話 "Q Who" 「無限の大宇宙」より

※10: System J-25
同じく TNG "Q Who" より。2個所とも、この部分は訳出されていません

※11: 原語では「アール・グレイ」

※12: U.S.S.メルボルン U.S.S. Melbourne
エクセルシオ級、NCC-62043。TNG第15話 "11001001" 「盗まれたエンタープライズ」より。吹き替えでは全て「メルボルン

※13: 以前の 2回は U.S.S.ドレイク (TNG第21話 "The Arsenal of Freedom" 「生き返った死の宇宙商人」) と、U.S.S.アレーズ (TNG第40話 "The Icarus Factor" 「イカルス伝説」) のこと

※14: ライカーの後ろにトロンボーンが見えます。置かれるのは初

※15: ここは原語では、前のシェルビーのセリフから次のように言っています。「おはようございます。早起きの鳥は虫を食べられる (「早起きは三文の得」という意味のことわざ) でしょ?」 (中略) データ「早起きの鳥? シェルビー少佐は勘違いしている。ジュレ4号星に鳥類や、這う虫といった生命体がいる証拠はない」 ラフォージ「そういう意味じゃないさ、データ」

※16: 磁気共鳴痕 magnetic resonance traces
最初は「(珍しい) 素粒子」としか吹き替えされていません

『航星日誌、宇宙暦 43993.5。連邦の領域にボーグが侵攻していることが確実となり、ハンソン提督は司令部との会議のため第324宇宙基地※17へ戻られた。シェルビー少佐は当面の防衛対策を練るため、エンタープライズに留まっている。』
軌道上の船は、エンタープライズだけになっている。
作戦室で報告するライカー。「艦内には警戒警報を出しました。連邦と、全ての同盟国に連絡済みです。長距離センサーは現在も引き続きモニター中。データ、ラフォージ、クラッシャーの 3名を、シェルビー少佐につけました。」
ピカード:「よし、相変わらず手際がいい。…シェルビー少佐をどう思う。」
「…仕事はできます。」
「任せられるか。」
「いえ、まだ多少…指導が必要です。危険を顧みず、独断で行動するきらいがあります。」
舌を鳴らすピカード。「何年か前、副長として赴任してきた誰かとそっくりだ。」
ライカー:「かもしれません。」
座り、制服の裾を伸ばすピカード。「…ウィル。…いつまでこの船にいるつもりだ?」
「は?」
ライカー:「昇格の話があるんだろ。」
「…そのお話は辞退することにしました。」
「メルボルンはいい船だぞ?」
「エンタープライズには及びません。…それに今の状況は、大変な危機です。動くわけには。」
「わかるが、宇宙艦隊は新たに優秀な艦長を必要としてる。もう一度考え直せ。」
「…出て行けとおっしゃるんですか。」
「いやそういうことじゃない。自分の将来のことをよく考えてみろ。ウィル。」 立ち上がり、裾を伸ばすピカード。「もう自分の船をもっていい時期だ。立派な指揮官になれる。…それに、エンタープライズは私が必ず守ってみせるさ。」

テン・フォワードのライカー。「俺は一体何をしてる。いつだって上を目指して必死にやってきた。そのために…いろんな犠牲も払った。艦長になることが目標だったのに、何かが俺を引き留める。ここに残るのは間違いなのか。」
トロイ:「あなたはどう思うの?」
「……大きな椅子が恐いだけかもしれない。」
「そうは思わないわ?」
「…シェルビーは昔の俺にそっくりだと艦長が言ってたが、その通りだよ。やる気に燃えそして野心にあふれてる。リスクを恐れず突き進む。俺も昔はシェルビーと同じだった、それにそういう自分が好きだったんだ。…だが何かをなくした。」
「年齢を重ねて、経験を積んだんだもの。…だから少し、丸くなったのよ。」
「『丸くなった』。男にとっちゃ最悪の言葉だな。」
「あなたは何もなくしてなんかいない。むしろ多くのものを得てるのはわかってるでしょ? ただ若いだけの頃より居心地がいいはずよ?」
「それが問題なんだ。ここは居心地が良すぎる。」
「…居心地が良くて何がいけないの? 充実してるんでしょ? 今までで一番充実した顔してる。そこで、一番基本的なことに戻るの。あなたの望みは何なの?」

コンピューターにボーグ艦の図が映っている。「ボーグ船のせいで通信システムにノイズが出るの。パターンがあるわ。あなたたちが遭遇した時は、4.8分に一度だった。」
ラフォージ:「高出力の補助動力を積んでるってことかな?」
「複数の強力な動力源を、船全体に分散させて配置しているのかも。」
データ:「それは十分考えられます。…ボーグのクルーは独立した存在でありながら、インターフェイスでつながり集合体として機能しています。船も同じ原理で設計されている可能性は大いにあります。」
ウェスリー:「じゃ動力源を一つ壊してもすぐ別のが取って代わるわけか。」
ライカー:「完全に機能を停止させるにはどうすればいい。」
シェルビー:「こういう船の場合船体の 78%に損傷を受けても、正常に機能し続けると予測されています。」
ウェスリー:「フェイザーじゃ引っかき傷しかつけられない。」
ラフォージ:「俺の見たところでは、この新しい攻撃システムが実用化されるのは早くて 1年半後じゃないかな。」
シェルビー:「2年後をメドに開発してた。」
ライカー:「今ある防御システムを少しでも改良はできないのか。」
ラフォージ:「…設計書を再検討しますけど…わかりません。頭が回らなくなってきた。」
ウェスリー:「…僕もです。」
シェルビー:「まずプラズマフェイザーに手を加えてみたらどうで…」
ライカー:「少佐、今夜はここで切り上げよう。命令だ。明日朝 5時に集まる。」
「データと作業を続けて構いませんか? 彼なら、休む必要はありません。」
「君が休まなきゃいけないんだ。」
「いつボーグが襲ってくるかわかりません。防御システムだけでも…」
「ああいつ襲ってくるかわからない。その時クルーが疲れ切っているという状況は絶対避けなきゃならん。解散だ。」
シェルビーは機関室を出て行った。

観察ラウンジ。
モニターに映ったハンソン。『昨日 19時に宇宙艦隊の U.S.S.ラロ※18が、ゼータ・アルファ2号星※19からセンティネル・マイナー4号星※20へ向かった。そして 22時12分に、第157宇宙基地※21が遭難信号を受信した。ラロはエイリアンの船と接触したと報告してきたが、その船の形は…立方体だったそうだ。そこで突然信号は途切れ、以来連絡が途絶えている。』
ピカード:「データ、ワープ9 でそこまで何時間だ。」
データ:「1時間と 17分です。」
「すぐ発進だ。※22
ハンソン:『我々も可能な限り応援の船を集め向かっている。しかし、最も近い船で 6日はかかる。』
ピカード:「提督の到着までボーグを引き留めておきます。」
『頼んだぞ? …以上だ。』 通信は終わった。
ライカー:「ウォーフ、全員戦闘配置につかせろ。」
ピカード:「シェルビー少佐、防御システムの改良はどうなってる。」
シェルビー:「ラフォージ少佐と検討した結果、まず防御スクリーンの波動※23を変更します。」
ラフォージ:「それと同時にフェイザー砲を電磁波ベースの周波数※24にセットして、空間フィールドを混乱させます。」
ピカード:「予想ではどの程度の効果が見込める。」
「…実は全くわかりません。でもほかに手はないんです。」
「…解散。」

ワープ航行中のエンタープライズ。
ブリッジを歩いているピカード。
ウォーフ:「…艦長、未確認の船舶がたった今センサー領域に入ってきました。方位 210、マーク 151。」
ピカード:「呼びかけてくれ。」
「…応答ありません。」
「インターセプトコース。」
ウェスリー:「了解。」
ウォーフ:「艦長、向こうがコースを変えインターセプトコースをとっています。…速度は…ワープ9.3! スクリーンで捉えられます。」
ピカード:「スクリーンオン。」
立方体の船が映っている。
ピカード:「拡大。」
やはりボーグ艦だ。
ピカード:「ミスター・ウォーフ※25、ハンソン提督に至急メッセージを送れ。…臨戦態勢に入る。ボーグだ。」
スクリーンからはみ出すほど広がるボーグ艦。


※17: Starbase 324
吹き替えでは「宇宙基地」のみ

※18: U.S.S. Lalo
メディタレイニアン級、NCC-43837。TNG第24話 "We'll Always Have Paris" 「時のはざまに」より。吹き替えでは「(宇宙艦隊の) ラロ

※19: Zeta Alpha II
吹き替えでは「ゼータ・アルファ

※20: Sentinel Minor IV

※21: Starbase 157

※22: "Make it so."

※23: shield nutation

※24: EM base frequencies

※25: 吹き替えでは「ウォーフ尉」。第3シーズン以降、ウォーフの階級は大尉です

双方の船は停止している。
ウォーフ:「艦長、パーソナルメッセージです。」
ピカード:「…私に?」
「ええそうです、艦長に。」
ライカー:「データ。前に J-25星系で会ったのと同じ船なのか?」
データ:「確認はできません。しかし規模は全く同一のものです。」
ピカード:「…スクリーンに。…エンタープライズ※26艦長ジャン・リュック…」
ボーグ艦内の映像に切り替わった。『宇宙艦隊登録ナンバー、NCC-1701-D エンタープライズ艦長、ジャン・リュック・ピカード。防御スクリーンを下ろし、ただちに我々の船に乗船する準備をせよ。協力しない場合、お前の船を破壊する。』※27
ピカード:「君たちの行動は、惑星連邦に対する侵略行為だ。今すぐ撤退しなければこちら…」
『指示通りにしない場合船を破壊する。お前たちの防衛能力では我々の攻撃に…』
通信を切るよう合図するピカード。
ライカー:「艦長をどうしようというんでしょう。」
シェルビー:「ボーグの興味は科学技術だけで、人間に関心はないはずです。」
ピカードに近づき、制服の裾を伸ばすライカー。
ピカード:「興味の対象が変わったらしい。チャンネルオン。」
ウォーフ:「了解、チャンネルオン。」
「君たちに会ってから新しい防御システムを開発した。連邦の領域から撤退しないなら我々はその新システムを今すぐ使う準備がある。」
ラフォージ:『艦長! スキャンされています。波動の変更にかかります。』

ボーグ艦はトラクタービームを発射してきた。シールドが反応する。

ウォーフ:「艦長、我々をトラクタービームで捕獲しようとしています。」
ピカード:「光子魚雷装填、フェイザー砲準備。トラクタービームの発射口に照準を合わせろ。」
ライカー:「スクリーンは無事か。」
データ:「異常ありません。」
シェルビー:「波動の変更が功を奏しましたね。」
ライカー:「向こうもすぐもっと強力なビームに変更してくる。」
船が揺れた。

ラフォージ:「波動変更作戦失敗。ビームに捕まりました。」

エンタープライズはトラクタービームに捕捉されている。
ウォーフ:「防御スクリーン出力ダウン。90%。80!」

ラフォージ:「波動の設定をもう一度変えてみます。クソー!」

ウォーフ:「防御スクリーン喪失。」
ピカード:「攻撃開始。」
フェイザーと光子魚雷で、一斉に攻撃するエンタープライズ。
トラクタービームは消えない。

ラフォージ:「ボーグの船体に全く損傷なし。新設定のフェイザー砲も、効果ありません!」

ライカー:「エンジン反転。」
ラフォージ:『エンジン反転します! …振り切れません。』
ピカード:「攻撃続行。」
ウォーフ:「光子魚雷発射! フェイザー砲連射します。」
データ:「依然ボーグの船体に損傷なし。」
ボーグ艦は別のビームを発射した。エンタープライズの第二船体に命中する。
コンピューター※28:『警告、船体外壁破損。』
ウォーフ:「船を切り刻む気です、機関部がやられます。」
ライカー:「ジョーディ、機関部から退避だ。」

ラフォージ:「コンピューター、機関部全員待避する。」 警報が鳴る。
コンピューター:『動力部、防火壁作動。』
機関部員を避難させるラフォージ。「全員待避。急げ、早くこっから出るんだ!」 最後にシャッターをすり抜ける。
コンピューター:『乗員は直ちに退避して下さい。減圧警報、第36デッキ第4セクション。メイン動力部封鎖。』

シェルビーは席を立った。「データ、フェイザーの粒子周波数を変動させて。ランダムセットで変え続けて、調整する暇を与えないで。」
フェイザーを連射し、トラクタービーム発射口を狙う。効果があり、ビームは消えた。
ウォーフ:「トラクタービーム解除されました。」
ピカード:「ワープ9。コース 151、マーク 330。…発進!」
逃げるエンタープライズ。すぐに動き出すボーグ艦。
ラフォージがブリッジに入った。
ウォーフ:「艦長、ボーグが追ってきます。」
ピカード:「コースを維持しろ。」
ライカー:「…被害状況は。」
ラフォージ:「機関部の外壁に亀裂、被害甚大です。乗員を大勢失いました。」
データ:「死亡 11名、8名が行方不明です。」
ライカー:「修理班、機関部の外壁修復に向かえ。」
ラフォージ:「エンジンは無事です、ここから制御します。」
ウェスリー:「艦長、間もなくポールソン星雲※29です。」
ピカード:「通常スピードに。」 シェルビーを下がらせる。「そのまま突入だ。」

星雲に入ったエンタープライズ。
ウェスリー:「ガス密度が濃くなってきました。」
ピカード:「このままだ。」 スクリーンに広がるポールソン星雲の内部。「データ、成分を分析してくれ。」
データ:「82%がダイリチウム水酸基。マグネシウム、クロム。ガス自体がセンサーに対する効果的な幕※30の役目を果たします。」
「ラフォージ少佐、反転の準備をしろ。エンジン停止。」
続いて星雲に入ったボーグ艦は、動きを止める。
ウォーフ:「ボーグ船は我々の位置を確認しようと、スキャン継続中です。」
ピカード:「よし。我々に引きつけておけば、よそに被害は出ない。」

観察ラウンジ。
モニターに先ほどの様子が映し出されている。「時間、514※31。データが、フェイザー砲の粒子周波数の変動を開始。ビームの発射口を破壊します。スロー再生して? よく見て下さい、副長。ラフォージ少佐?」
ラフォージ:「ボーグ船の全システムに、わずかながらパワーダウンが見られました。この時の周波数は、高域電磁帯だったんです。」
データ:「つまりボーグの、動力供給システムはこの周波数に弱いのです。」
「同じ周波数で莫大なパワーを発生させ攻撃すれば、効果ありと見ています。フェイザーや、光子魚雷よりもっと強力なエネルギーがいりますが。」
ライカー:「できるのか。」
ウェスリー:「ディフレクター盤を使うんです。」
ラフォージ:「一定の周波数で強大なパワーを放出するにはそれしかありません。」
シェルビー:「プログラム終了。でも、この方法には一点だけ問題があります。発射の衝撃で、エンタープライズにもかなりの被害が出ます。」
ライカー:「…ある程度の犠牲は仕方ない。ディフレクターの改良を始めろ。」
「…効果はあります。ハンドガンも含め、フェイザーの周波数を全てこの周波数に合わせましょう。」
「わかった…艦長に報告しよう。」
「副長、もう一つ提案したいことがあります。円盤部を分離するんです。推進部に引きつけて、時間を稼ぎましょう。」
「円盤部の通常エンジンのパワーも必要だ。」
「ターゲットが増えれば、向こうも戸惑うはずです。」
「リスクが大きすぎる。」
「艦長が判断なさることじゃありませんか?」
「…少佐。提案は全て私から艦長に伝える。以上だ。」
残るラフォージ。「ディフレクターに、許容量の大きいパワー変換機を取り付けないと。」
ライカー:「いつできる。」
「一日はかかります。」
「フン。彼女に急かされそうだな。」
「フン、黙ってられないようですからね。でも、彼女のおかげでかなり助かります。」
「そうだな。シェルビーの操縦は俺に任せろ。」

ドアチャイムに応えるピカード。「入れ。」
作戦室に入るライカー。既にシェルビーが座っていた。
ピカード:「ライカー、丁度いい。シェルビー少佐に話を聞いていたところだ。彼女の計画に反対だそうだな。」
ライカー:「お時間を取らせてすみません。少佐には私から…」
「ライカー、君の言うとおりだ。まだ時期ではない。…しかしいざとなれば、大きなリスクを負うことも必要になる。少佐の計画を検討してくれ。万一の場合に備えてだ、必要な準備を進めてくれ。」
「はい、わかりました。」
共に出ていく 2人。

そのまま隣のターボリフトに入る。
シェルビー:「第8デッキ、戦闘ブリッジ※32。」
ライカー:「待機。君と話をしておく必要があるな。」
「直接艦長に話すなという命令は受けていません。」
「意見が違うのは構わん。それに艦長に知らせたいのもわかるが私を通してくれ。…またバカげたスタンドプレーをやるなら、今度はあまり優しい顔はしないからな。覚悟しておけ。」
「本音を言ってもよろしいですか。」
「ああ、言ってみろ。」
「あなたは邪魔なんです。」
「…なるほどね。悪い相手に当たったな?」
「あなたは無難にやることしか考えてない。上から下へとただ命令を伝えているだけで、だからいつまで経っても偉大な艦長の影から出ることができないんだわ! 第8デッキへ。」
「…船と乗員のことを考えれば、そう簡単に危険は冒せんはずだ。」
「重大な決断を下すことができないんなら、ほかの者に席を譲り渡すべきだわ。」 ターボリフトを降りるシェルビー。


※26: 吹き替えでは「エンタープライズ

※27: オブライエン役の辻さんが兼任 (前回と同じ)

※28: 声はクラッシャー役の一城さんが兼任

※29: Paulson Nebula

※30: 吹き替えでは「ガス自体が防御スクリーン」。確かに原語ではスクリーンと言っていますが、当時シールドの意味で使われている「防御スクリーン」とするのは言い過ぎです

※31: 吹き替えでは「5時14分」

※32: 戦闘ブリッジへ行くのに右舷側 (操舵席の近く) のターボリフトを使っていないので、変だという指摘があります。もっとも、そこは直通というだけで、どのターボリフトを使用しても行けるとは思いますが…

『航星日誌、宇宙暦 43996.2。我々は星雲内に留まっている。意外なことにボーグは追ってこず、我々が出ていくのを待っているらしい。』
ボーグ艦も停止している。
ピカード:『…彼らがなぜ私やこの船に興味をもつのかはわからない。戦闘は避けがたく、防衛システムの改良を続けてはいるが…ボーグに対しては、どんな防御も用をなさないのではないのかという思いが、私の胸をよぎり始めた。』
機関室に入るピカード。
機関部員※33がパッドを渡す。「艦長。」

暗いテン・フォワードに入るピカード。
ガイナン※34が隅にいた。「眠れないんですか。」
気づくピカード。「ガイナン。我々の伝統なんだよ。…艦長は戦いの前に船を見回る。」
ガイナン:「でも、それは確か望みのない戦いの前にすることじゃありません?」
「そうとは限らんさ。ネルソン※35も、トラファルガーの海戦を前に H.M.S.ヴィクトリー※36を見回った。」
「だけど、ネルソン提督は二度と帰らぬ人となったわ。」
「ああ、だが戦いには勝った。」
「…この戦いに勝算はありますか。」
「…何とか乗り切れる。…あ、まあ単なる…思い込みだ。」 カウンター席に座り、裾を伸ばすピカード。「だが、可能性はある。ローマ帝国のホノリウス※37皇帝は西ゴート族が押し寄せてくるのを見た時、帝国の崩壊を本当に実感することができたんだろうか。……これも、歴史の一ページに過ぎないんだろうな。…我々の文明は終わるんだろうか。別の時代が来て。」
「……終わることはありません。」
「ずいぶん、きっぱり断言するんだな。」
「経験がありますから。ボーグが私の星を襲った時、人々は宇宙に散り散りになり…生き残りました。あなたたち人類も必ず生き残る。たとえ数はほんのわずかになっても精神さえ伝えていけば、いつか復活できます。たとえ千年かかろうとも。」
突然大きな音が聞こえ、船が揺れた。窓の外が光っている。
ウォーフの通信が入る。『ピカード艦長、ブリッジへ御願いします。』
ピカード:「了解、すぐ向かう。」 ガイナンを見て、出ていく。

ブリッジに戻るピカード。音は続いている。
ライカー:「多分磁力で我々の位置を確認したんでしょう。」
揺れるブリッジ。
ピカード:「防御スクリーンはもつか。」
ウォーフ:「出力 48%にダウン。」
ピカード:「ラフォージ、すぐに星雲から脱出したい。エンジンの状況はどうなってる。」 2人は座り、制服の裾を伸ばした。
ラフォージ:『いつでも準備 OK です。発進と同時に防御スクリーンの周波数を高域電磁帯に合わせて下さい。』

データ、シェルビーやウェスリーもいる機関室。
ピカード:『わかった。』 大きな揺れが伝わる。

ウォーフ:「命中、第9デッキです。」
ライカー:「被害状況は。」
「船体凍結システムに異常、危険です。」
ピカード:「ライカー、すぐここから脱出するぞ。」
ライカー:「エンジン点火、星雲を出るまで通常スピード。脱出後はワープ9 だ。」
「フェイザー砲準備、光子魚雷装填。発進。」
ボーグ艦の脇を通り、脱出するエンタープライズ。すぐに追ってくる。
ウォーフ:「トラクタービームの発射準備をしてるようです。」
ピカード:「攻撃しろ。スクリーンの周波数を変え続けろ。」
「スクリーン消失。…トラクタービームに捕獲されました。」
ブリッジにボーグの一人が転送されてきた。
腕を上げるボーグ。ウォーフはフェイザーで攻撃した。
倒れるボーグ。だが、次の個体が姿を現す。
今度はフェイザーが効かない。何度撃っても同じだ。
ライカー:「無駄だ、もう新しい周波数に合わせてる。」 近づくが、跳ね飛ばされた。
ウォーフも歯が立たない。
さらに新たなボーグが、ピカードの隣に転送してきた。腕をピカードの後頭部に当てる。
意識を失うピカードは、ボーグと共に非実体化する。他のボーグも全て消えた。
起き上がるライカーは、医療部員に話す。「ああ、大丈夫。」
すぐにコンソールにつくウォーフ。「ボーグ船、撤退していきます。ワープスピードです。」
ライカー:「追跡するんだ。」
「…ボーグ船の速度、現在ワープ9! 9.4。9.6 です。」
「絶対に逃がすな。ライカーよりオブライエン、艦長の位置はわかるか。」
オブライエン:『いいえ、駄目です。妨害電波を出している模様。位置の確認は不可能です。』
「上級士官、全員ブリッジに集合しろ。」
ウォーフ:「ボーグ船のコース判明しました。真っ直ぐ突き進んでいます。目的地、セクター001※38。…テラ星系です!」
「…地球か。」
ボーグ艦を追うエンタープライズ。

ボーグに挟まれ、艦内を歩くピカード。壁面にも多数のボーグがいる。
ボーグは立ち止まった。広大な船内が見える場所だ。
集合体の声が響く。『ジャン・リュック・ピカード艦長。お前は艦隊最強の船を指揮している。情報を提供しろ。』
ピカード:「君たちに協力する気はない。私は力尽きるまで戦い最期まで抵抗するぞ。」
『やめておけ。抵抗は無益だ※39。我々は進歩を目指している。人類の特殊性と科学技術を我々のものとする。…人類は我々の文化に従属させる。』
「できるものか。人類の文化は自由と自立精神で成り立っているんだ。」
『自由など無意味だ。囚われの身であることを忘れるな? 我々に従え。』
「それよりは死を選ぶ。」
『死ぬことは許さない。原始的な文化は権威を重んずる。人間社会への侵入を容易にするために。交渉において地位ある人間を、我々の代弁者とすることにした。お前は我々の声となるのだ。』

エンタープライズ。
ウォーフ:「厳重警備区域のテラ星系に一直線に進んでいきます!」
ラフォージ:「人間の作った警備網なんて、何とも思っちゃいないだろうからな。」
ウェスリー:「副長。ワープ9.6 で飛び続ければ、エンジンパワーは消耗し 3時間以内にゼロになります。」
データ:「2時間 40分と 3秒です。」
ライカー:「ディフレクター盤はいつ完成する。」
ラフォージ:「もうちょっとです、2、3時間で何とか。わかってます、2時間で完成させます。でもこの武器を使うには、エンジンから相当パワーを引っ張ってこなければ。ワープ9.6 で飛びながらじゃ無理です。」
シェルビーは立ち上がった。「副長。ボーグ船を減速させるしかありません。」
ライカー:「救出班を編成して艦長を連れ戻してくる。減速の方法も探る。クラッシャー、引き続きラフォージ少佐を手伝え。シェルビー、ブリッジを任せる。本部と連絡を取れ。データ、ウォーフ、ドクター、一緒に来てくれ。」
「詳しい知識なら私が行った方が。」
「シェルビー、今のは命令だ!」
トロイ:「…ライカー副長。…あなたが行くのは賢明ではないと思います。ピカード艦長が無事戻るまで、この船の指揮官はあなたです。…戦闘態勢の今、指揮官はブリッジに留まるべきです。」
ライカーはシェルビーに近づいた。「シェルビー少佐、救出班を指揮しろ。…何をしてる。※40
ブリッジを出ていくシェルビーたち。ライカーは艦長席に座る。


※33: エキストラ。声はオブライエン役の辻さんが兼任

※34: Guinan
(ウーピー・ゴールドバーグ Whoopi Goldberg) TNG第69話 "Hollow Pursuits" 「倒錯のホログラム・デッキ」以来の登場。声:東美江

※35: Nelson
ホレイショ・ネルソン卿 (Lord Horatio Nelson、1758〜1805年)。英国海軍の提督

※36: H.M.S. Victory
英国海軍船。ピカードの先祖もトラファルガーの戦いに参加していたことが、映画第7作 "Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」で触れられます。吹き替えでは「船」

※37: Honorius
フラウィウス・ホノリウス (Flavius Honorius、384〜423年)。西ローマ帝国最後の皇帝

※38: Sector 001
この名称が使われたのは初めて

※39: "Resistance is futile."
初言及。最後にもう一度使われます

※40: ライカーですが "Make it so."

ライカー:『副長日誌※41、宇宙暦 43998.5。ボーグを追跡しながら、我々も惑星連邦の本拠地へと向かっている。彼らが地球にもたらす被害は、計り知れない。』
転送室。
ウォーフ:「これが調整済みのフェイザーです。それぞれ微妙に違う周波数にセットしてあります。」
シェルビー:「わかってると思うけど、使えるのは 1度か 2度。ボーグはすぐ周波数を合わせてバリアを作るわ。ギリギリまで、ガンは使わないこと。」
クラッシャー:「…向こうはどの程度の反撃に出るかしら。」
データ:「前回船に侵入した際、彼らは我々を全く無視していました。警戒するに足りない存在だと思っているようです。」
シェルビー:「今回私達が行けば、彼らも考え直すんじゃないかしら。」 転送台に立つ。「シェルビーよりブリッジ、転送準備 OK。」

ライカー:「エンジンは後、58分しかもたないぞ。それまでに何とかしろ。」
シェルビー:『了解。』
「よし、だがいいか。不必要なリスクは冒すな。わかったな。」

シェルビー:「よくわかってます。任せて下さい。」
オブライエン:「ボーグとワープ速度一致。転送可能です。」
「転送。」
転送される 4人。

ボーグ艦内に実体化する。
ウォーフ:「トリコーダー機能は最小限です。※42
シェルビー:「人間の生命反応は。」
「今のところ不明です。」
歩き出す。
ボーグが歩いていたが、クルーを無視している。
見上げるクラッシャー。「ねえ見て、これ一体何なのかしら。」
データ:「…パワー電送ステーションです、同じ物が船内に無数にある。」 通路の天井に、機械がついている。「個々のボーグの働きがこれを通じて集合的に機能するのです。」
シェルビー:「これを壊しても全体にはほとんど影響しないわ。」
クラッシャー:「でも私達が蚊になったつもりで考えてみたら?」
データ:「面白い比喩ですが、どういう意味ですか?」
「柔らかい部分を狙って刺せば、巨人も立ち止まって掻き始めるんじゃない?」

ボーグが歩いていく。
データ:「また電送ステーションだ。」
シェルビー:「確かにいくつか刺せば、かゆがり始めるかもね。」
ウォーフ:「艦長のコミュニケーターです。この近くにいるようです。」
クラッシャー:「クラッシャーよりピカード。聞こえますか。」
シェルビー:「ウォーフ、場所はわかるの?」
ウォーフ:「…こっちです。」

作戦室のコンソールを使うライカー。「提督、可能な限りの勢力を集結させて、セクター001 の防衛に当たって下さい。」
ハンソン:『我々はウルフ359※43 空域に向かっている。そこで迎え撃つ。どれくらい追跡を続けられる。』
「現在の速度では、22分が限度です。減速させられなければ。パワーを失う前に可能な限り攻撃を加えます。」
『…ピカードは。』
「安否は不明です。」

ウォーフのトリコーダーの反応が強くなってきた。「この中です。」
壁面に近づく。データが引っ張り出すと、コムバッジをつけたままの制服が入っているだけだった。
シェルビー:「シェルビーよりエンタープライズ。」

ライカー:「どうした。」
シェルビー:『艦長の制服とコミュニケーターを発見しました。更に捜索を続けます。』
「少佐、待機しろ。」
ブリッジに戻るウェスリー。「完成しました。」
ラフォージ:「ディフレクターは燃え尽きますが、相手のダメージも相当ですよ。」
ライカー:「放射能の危険は。」
ウェスリー:「推進部の前方半分と、円盤部の下部 3デッキからは全員退避させて下さい。」
トロイ:「私に任せて。」
ライカー:「シェルビー少佐、ワープパワーは後 17分しかもたない。何とかして通常スピードに減速させろ。」

シェルビー:「わかりました、やってみます。」 天井を見上げる。「どうなるかわからないけど、とにかくあれを壊していきましょう。」
フェイザーで電送ステーションを撃つデータ。効果がない。
ウォーフと共に発射すると、破壊できた。辺りが一瞬が暗くなる。

壁面のボーグが、次々と動き始めた。

別の電送ステーションも壊される。

さらに活動を始めるボーグ。

また爆発する電送ステーション。

操舵席のウェスリー。「副長、成功です。ボーグ、通常スピードに減速。」
ライカー:「こちらも減速だ。」
「了解。」
ラフォージ:「ディフレクターに、エネルギー集結中。」
ライカー:「4万キロまで接近してボーグ船とスピードを合わせるんだ。武装シークエンス開始。※44ディフレクターの周波数を高域電磁帯にセット。」

ボーグが次々に歩いてきた。四方に身構えるウォーフたち。
フェイザーを発射する。倒れていくボーグ。
シェルビー:「シェルビーよりエンタープライズ、攻撃を受けています。合図したら収容して下さい。」
クラッシャーもボーグを撃つ。ボーグは何体も近づいてくる。
ついにバリアが発生し、フェイザーが効かなくなった。
シェルビー:「フェイザーはもう効かないわ。」
大勢のボーグの奥に、ピカードが横を向いて立っていた。
息を呑むクラッシャー。「ジャン・リュック。」
黒い服装のピカードが振り向く。その顔の右側には、ボーグと同じ機械が取り付けられていた。
目のそばから赤い光を発している。
ウォーフ:「艦長!」
驚くシェルビー。ボーグと同じく青白い肌をしたピカードは、無表情で立っている。
向かうウォーフ。データは一緒に行こうとしたクラッシャーを止め、念のためフェイザーを構える。
ボーグの間をすり抜け近づくウォーフ。だがピカードの前に来たところで、フォースフィールドに阻まれた。
シェルビー:「エンタープライズ、今すぐ収容して!」
立ち上がるウォーフ。ピカードを残し、全員転送された。

停止しているボーグ艦。
ブリッジに戻る救出班。
ライカー:「艦長は。」
データ:「救出はできませんでした。艦長は既に改造されています。」
「改造だと?!」
ウォーフ:「…ボーグと同じ姿に。」
シェルビー:「…もう一度行きます。増員して下さい。フェイザーも調整し直して、艦長を連れ戻します。」
うなだれるウェスリー。
ラフォージ:「副長、ボーグ船から発している亜空間フィールドの揺らぎを感知しました。損傷個所を、再生し始めているようです。すぐワープパワーを回復するでしょう。」
ライカー:「ディフレクターの準備は。」
「…できています。」
クラッシャー:「艦長は、生きているのよ。連れ戻すことさえできれば何とか元に戻せるかも…」
ライカー:「攻撃のチャンスは今しかない。ワープスピードでは、武器が使えないんだ。」
シェルビー:「もう一度行って破壊工作をしてきます!」
「これ以上エンジンパワーを維持できない、時間がないんだ。発射準備。」
「本部の意向を確認すべきだわ、ハンソン提督を呼び出して!」
「大尉※25、その命令は取り消す。準備をしてくれ。」
ウォーフ:「…副長、ボーグからメッセージが入っています。」
ライカー:「スクリーンへ。」 前に立つライカーとシェルビー。
映像では通路の奥から、ピカードが歩いてきた。辺りにはボーグが並んでいる。
ピカードが口を開いた。『私の名はロキュータス※45。ボーグの一員だ。我々に抵抗しても、無意味だ。これまでのお前たちの文明は、ここで終わる。今後お前たち人類は、我々に従属しろ。以上だ。』 赤いライトが画面に注がれる。
無言のクルー。シェルビーはライカーを見た。
ライカー:「ミスター・ウォーフ※25、撃て。」


※41: 吹き替えでは「航星日誌」のまま

※42: 吹き替えでは「センサー反応はありません」

※43: ウォルフ359 Wolf 359
太陽から 7.8光年の位置にある、しし座の恒星。初言及

※44: 吹き替えでは「衝撃対応態勢を取れ」

※45: Locutus
エンサイクロペディアなどでは、吹き替えの「ボーグの一員」までに相当する Locutus of Borg として掲載されています。locution で「発語、言い回し」という意味があります

・To Be Continued...
・感想など
TNG に留まらず、ST全体から見ても極めて重要な話。それはボーグとロキュータスというストーリー上の点だけでなく、初めてクリフハンガー方式を導入した意味もあります。かつて TOS が同じ 3シーズンで打ち切られてしまったのとは対照的に、この前編で 3ヶ月待たせるパターンは王道と化し、ごく一部を除いて 以後の TNG、DS9、VOY、ENT 全てのシーズン間で受け継がれています。
主人公たるピカードが敵になってしまう。この展開がどれだけ当時の視聴者を驚かせたんでしょう (当初はデータも同化される案もありました)。ですが私は深夜録画を家族任せにしていた初見時、こともあろうに前編を見逃すという考えられない事態に陥りました。次のエピソードがそれまでになかった「後編」だと知った時の、あの無力感…。もはや二度と味わえない体験を逃しました。
個人的な話はおいといて、この話ではライカーに重点が置かれているのもポイントです。声優も印象的なシェルビーはいい意味で憎まれ役としてきちんと描かれ、小説 New Frontier シリーズではエクスカリバー副長として登場します。なお原題には「一挙両得、一石二鳥」という意味もあります。有名な "Resistance is futile." の吹き替えは、最初「抵抗は無意味だ」でも「無駄だ」でもなかったんですね。


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