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TNG エピソードガイド
第42話「無限の大宇宙」
Q Who

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・イントロダクション
※1機関室。
機関部員のソーニャ・ゴメス少尉※2が、レプリケーターに注文した。「ホットチョコレート※3を御願い。」
笑うラフォージ。「やあ何。フードディスペンサーに『御願い』って言った人は初めてかな?」
ゴメス:「このコンピューターには、知性があるんですもの。いいじゃないですか。…機械相手の仕事ばかりだと人間性が阻害されると言いますから、その予防としてコンピューターにも少し…礼儀正しくするんです。」 出てきたカップを取り出す。「ああ、ありがとう。」
「着任したばかりだが、もう確固たる方針を立てたようだな?」
「私、しゃべりすぎですか?」
「いや。」
「もう、時々機関銃みたいにしゃべっちゃうんです。興奮してる時は特に…私エンタープライズに配属されてどんなに嬉しいか…」
機関部員がラフォージにパッドを渡す。「すいません、大尉※4。」
ゴメス:「文字通り、クラスの人たち全員が希望したんです。実は、レイナス6号星※5でもうちょっと反物質の研究を続けたいとも思ったんですが、それが専門なんです。」
受け取る機関部員。「どうも。」
ラフォージ:「知ってるよ。だから君に来てもらったんだ。」
ゴメス:「…またやっちゃった。あの、私ただ…」
「興奮してるんだろ? わかってる。ソーニャ、それより…」
「はい。」
「コントロールステーションの周りでホットチョコレートを飲むのは、いただけないな?」
「…ああ、すみません。持ってくるのも、いけないんですよね。話に夢中になって、持ってることも忘れてしまって。あの、あっちで飲んできちゃいます。…ラフォージ大尉、今度から気をつけます。」
ゴメスが振り向いた瞬間、ピカードがいた。ホットチョコレートを制服にぶちまけてしまう。
ピカード:「ああ…。」
ゴメス:「ああ! どうしよう…すみません、艦長!」
ラフォージ:「ああ、あのすみません。私の責任です。」
ピカード:「参ったな。」
ゴメス:「あ、いえ私が悪いんです。不注意なばっかりに。」
「思い切ってやってくれたな?」
手で触るゴメス。「…拭かせて下さい。」
ピカード:「ああいや。君の、名前は?」
「ああ、少尉のソーニャ・ゴメスです。」
ラフォージ:「ゴメス少尉は、アカデミーを卒業したての新人なんです。つい先日、第173宇宙基地※6で着任したばかりでして。」
ピカード:「なるほどな。…ではソーニャ…ゴメス少尉。これは着替えた方が早そうなので、そうさせてもらいたいんだがね。」
「艦長、私の監督不行き届きです。本当に申し訳ありません。」
「ああ。チーフ、彼女も徐々に慣れるだろう。」
ゴメス:「あのう、私心から…今回の配属を光栄に思っています。…この私の、あいえ艦長の船に、全力で…尽くしたいと思っています。」
「ああ少尉、がんばってくれ。頼んだぞ。」 カップをゴメスに返し、歩いていくピカード。
「何て、ドジなのかしら。第一印象が一番大事だっていうのに。」
ラフォージ:「一つ言うなら、これでもう完全に覚えてもらえたよ。」
ため息をつくゴメス。

ピカードはターボリフトに入った。「第9デッキ、士官居住区。」

制服を見るピカード。到着し、外に出る。
そこはシャトルの中に直接つながっていた。
振り返るピカード。ドアが閉まる。
消えたドア。
ピカードは乗っていたクルーに話しかける。「おい君、どうなってるんだ…」
男:「第6シャトルへようこそ、ピカード。」 振り返る。
「Q※7!」
近づく Q。「おうおう、案外君もそそっかしいな。クリーニングなら任してくれ、艦長殿のためだからな。」 制服に手を近づけると、綺麗になった。
ピカード:「私の船で面倒は起こさんと誓ったろ!」
「約束はちゃんと守ってるとも。どうだ、君の船には近づいてもいない。」 外に星が見える。
席に座り、確認するピカード。
シャトルは宇宙空間にいた。


※1: このエピソードは、1989年度エミー賞で音響編集賞と音響ミキシング賞をダブル受賞、さらに特殊映像効果賞にノミネートされました

※2: Ensign Sonya Gomez
(リシア・ナフ Lycia Naff 映画「トータル・リコール」(1990) に出演) 後にも登場。声:麻生侑里

※3: hot chocolate
一般的にはココアのこと

※4: 吹き替えでは全て「尉」。第2シーズンではラフォージは大尉に昇進しています

※5: Ranous VI

※6: Starbase 173
TNG第35話 "The Measure of a Man" 「人間の条件」より。その立ち寄った際に着任した設定と思われます。この部分は訳出されていません

※7: Q
(ジョン・デ・ランシー John de Lancie) TNG第10話 "Hide and Q" 「死のゲーム」以来の登場。声:羽佐間道夫

・本編
廊下を歩くゴメス。「どこへ行くんです?」
ラフォージ:「バーラウンジだ。仕事を忘れてゆったり座り、話でもしてそれから…しばらく星でも眺めているといい。君はまず、落ち着くことだよ。」
「そんなノンビリとはしてられません。」
「ソーニャ、君は肩に力が入りすぎてるぞ?」
「わかってます。でも仕方ありません。優秀な者でなきゃエンタープライズには乗れませんから。…ジョーディ。…いえ大尉。」
「いいんだよ。何だ?」
「…人類にとっては、エンタープライズで起こる全てが…初めての出来事でしょ? …それを体験したかったんです。」
「ソーニャ、君はもうここにいるんだ。努力の結果さ。だがそういつも張りつめてちゃ、長続きしないぞ? これから嫌でもいろいろ起きるんだ。」
「そうですね?」
「いいか? 何か起こったら必ず君に知らせる。だからそれまで落ち着いてろ。」
微笑むゴメス。「わかりました。」
ラフォージ:「よし。」

テン・フォワード。
話しているクルー。「それでそいつが急に怒り出しちゃってね…」「ありがとう…」
カウンターでクルーと話していたガイナン※8は、ふと外を見た。ゆっくりと窓に近づいていく。
ゴメスと話しているラフォージ。「まあ、初めは俺だってそうだった。エンタープライズに乗ってるってだけで、舞い上がっちゃってね。」
ゴメス:「ええ、私もそういう感じなんです。」
「ああわかるけど、早く慣れなきゃ仕事にも影響が出てくる。」
「それはわかってますけど、周りが全部最新鋭の設備でクルーも優秀な人たちばかり…」
ガイナンは無言のまま、窓から離れた。
カウンターのボタンに触れる。「ブリッジ、こちらバーラウンジ。」

ライカー:「ガイナン? 君がブリッジを呼び出すのは初めてだな。」
ガイナン:『何か異常はありません?』
「どういうことだ。」
『変わったことは起きてませんか。』
首を振るウォーフ。
「いや、全て通常通りだ。どうしたんだ。」

ガイナン:「…いえ別に。ただちょっと…前にも何度か感じたことのある妙な胸騒ぎがして。何もなければいいんです。急にごめんなさい。」

第6シャトル。
Q:「発信機を使っても無駄だ。奴らもここまでは探せないからな。」 スイッチを切る。
連絡するピカード。「エンタープライズ、こちらピカードだ。…バカな真似はやめろ、私をエンタープライズへ戻せ!」
Q:「短気を起こすのはよくないなあ、君に癇癪は似合わない。実は取引をしたいんだ。」
「こんなところに閉じ込めても私は君の話など聞く耳はもたんぞ。」
ピカードの耳に口を近づける Q。「その気になるさ。」

話すゴメス。「どうもありがとうございました。よく、覚えておきます。」
ラフォージは、また外を見ているガイナンに気づいた。「ガイナン?」
ガイナン:「…ご注文が?」
「そうじゃないが、どうかしたのか。」
「…わからないの。」
「…ちょっと、機関室をチェックしてくる。」
ゴメス:「ご一緒します。」
※9外を見るガイナン。

ブリッジに入るトロイ。「艦長はどちらに?」
ライカー:「部屋じゃないのか?」
コンソールに触れるトロイ。「艦長、こちらトロイです。」
応答はない。
艦長席のボタンに触るライカー。「コンピューター、艦長はどこにいる。」
コンピューター※10:『船にはいらっしゃいません。』
ウォーフ:「…副長、シャトルが一機紛失しています。」
ライカー:「エンジン停止。」
ウェスリー:「了解、エンジン停止。」
止まるエンタープライズ。
ウォーフ:「シャトルに全周波数で信号送信。応答ありません。」
データ:「センサーによれば、この星域に船は一隻も見当たりません。」
ライカー:「艦長はそのシャトルに乗っているかもしれんな。」
ウェスリー:「でも、誰にも知られずに格納庫へ行ってシャトルに乗るなんて不可能ですよ…」
「落ち着け、艦長は見つかる。今すぐ捜索開始だ。ウォーフ、センサーを最大領域にセット。データ、船の現在位置を中心点として…可能性のある区域を最短時間でチェックする捜索パターンを組んでくれ。」
ウェスリーと合図するデータ。「捜索パターン、入力しました。」
ライカー:「作動させろ、クラッシャー。」

ライカー:『副長日誌、宇宙暦 42761.3。理由も手段も不明だが、艦長がエンタープライズ※11からいなくなった。消えたシャトルに乗っているのだろうか。現在、その仮定の下に捜索を行っている。既に 6時間経過したが、手がかりはない。』
ブリッジ。
データ:「ワープエンジンを搭載していない船舶が、この時間で到達しうる全ての区域を捜索しました。」
ライカー:「さらに広げろ。」

ボールを投げて遊んでいる Q。「何年でもこうしている気か? 何十年かな? 私は年を取らないが、君は違うぞ?」
ピカード:「…私がいなくとも、彼らはライカーを艦長としてやっていく。」
「全く信じがたい頑固者だなあ。」
「私を船に戻せ!」
「では船に戻したら、私の要求に耳を貸すのかな?」
ピカードはうなずいた。

突然場所が変わっていた。
ボールを受ける Q。「どうだ、ピカード? ここほど話し合いに適切な場所はあるまい。」
そこはテン・フォワードだった。
笑う Q。カウンターからガイナンが姿を見せた。

報告するウォーフ。「副長、行方不明のシャトルが第2格納庫に戻っています。」
ライカー:「コンピューター、ピカード艦長はどこだ。」
コンピューター:『ピカード艦長は現在バーラウンジです。』
微笑むライカー。向かう。


※8: Guinan
(ウーピー・ゴールドバーグ Whoopi Goldberg) TNG第36話 "The Dauphin" 「運命の少女サリア」以来の登場。声:東美江

※9: TNG の国内地上波・初期CS放送分では、ごく一部にカット部分が存在しています (2時間エピソードを前後編に分けた際の、本国でのカットとは別)。DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります。もっとも今回はカットは一個所のみで、ほんのわずかガイナンのシーンが短くなっているだけのようですが…

※10: 声はガイナン役の東さんが兼任

※11: 吹き替えでは「エンタープライズ

テン・フォワード。
ガイナン:「やっぱりあんたね!」
Q:「貴様! ピカード、艦長としての自覚があるなら今すぐこの女を追い出すんだな! 何なら私が君に代わって追い出してやっても、一向に構わんのだぞ。」 手を挙げる。
ガイナンはそれに応じるように、手を挙げ指を曲げた。
ピカード:「彼を知ってるのか。」
ガイナン:「ちょっとした因縁です!」
Q:「200年も前のことをいつまで根にもっている。…いいか、見かけにだまされるな! そいつは悪魔だ、行く先々で必ずトラブルが起きる。」
ピカード:「それはお前だ、ガイナンのことではない。」
「ガイナン。今の名前か。」
「問題は彼女のことじゃなくお前だ。我々にちょっかいを出すのはやめると約束しただろ…」
「ああしたとも。」
「何が望みだ、Q。要求があるんだろ、早く言え。」
「それもそうだなあ。こんな女はどうでもいい。私がここに来た目的はもっとほかにあるんだ。」 手を下ろす Q。
ガイナンも構えをやめた。
ウォーフと共に来たライカー。「目的とは?」
Q:「おお、敬愛すべきライカー副長。それにクリンゴン君※12もか。愛の雄叫びでも上げてくれるのか。」 胸に両手を当てる。
近づくウォーフ。
ピカードは制する。「ウォーフ。」
Q:「この船に乗せてもらいたい。」
ライカー:「それでどうする気なんだ。」
「乗組員として雇ってくれ※13、役に立つぞ? この船には既に無能な役立たずや、招かれざる不吉な者もいる。家のない私をおいてくれてもいいだろう。」
「家のない?」
「ああ。」
「Q連続体のほかのメンバーに追い出されたのか。」
ガイナン:「Q にもいろいろいるんです。尊敬すべき立派な Q もね。」
ピカード:「役に立つ、さっきそう言ったな。…何ができる。…一乗務員から始められるか、うん? きっと、君のような…偉大な男には、退屈だと思うがね。」 制服の裾を伸ばし、カウンター席に座る。
Q:「バカにしているのか?」
「いいや、そんなつもりは毛頭ない。君は尊重すべき存在だ。我々の任務は新たな生命体を探すことで、君は紛れもなく特別ユニークな生命体だ。正直言って興味をそそられるのは確かだが…君の存在は混乱そのものだ。」
「艦長、せめて話ぐらい聞いてくれ。」
また近づくウォーフに合図するピカード。「ウォーフ。」
ウォーフは出ていき、ドアの前に立つ。
Q:「最後に君らと会った後連続体を出て行けと言われた。以来ボンヤリ宇宙を漂い、すっかり退屈した。目的を失ったんだ。そこで君らとの楽しい時を思い出した。」
ライカー:「楽しいだと? 初めて会った時は我々を人類の罪で裁判にかけたな…※14
「無罪放免になったろ。」
「それから 2度目は Q連続体に入れと私を誘ったな。※15
「あの申し出を蹴るとは実に愚かだよ。考えれば考えるほどこの船こそが私の居場所だ。君たちの得にもなるんだ。特別待遇は一切なしの普通の乗組員としてで構わんぞ? どうにも不可解だが君らには気にいらんようだから…私のパワーは捨てることにしてもいい。君らと同じく、弱く無能な存在になろう。」
うなるガイナンは、カウンターに戻る。
ピカード:「ダメだ。」
Q:「ダメ? 私にも公平にチャンスを与えてくれ。それぐらいしてくれてもいいだろう。」
ライカー:「公平に? 一方的に艦長を誘拐した君にか?」
「退屈な日常に刺激を与えてやってるのに、君らは不平ばかりだ。冒険心や遊び心はどこへやった。よく考えてみろ、ピカード。私は役に立つんだ。」
ピカード:「一言で言って、君は信用できん。」
「…あ、あ。だが、信用はしなくとも必要になる。この先に何があるか知っているか?」
「まだ見たこともないものを知っているわけはないだろう。だが未知のものと、向き合う準備はできている。」
「そうか。」
「ああ、もちろんだ。そのためにここにいる。」
笑う Q。「何と思い上がった男だ。何が起こるか知りもせずに。」
ガイナン:「学んでいくのよ、徐々にね。それがこの人たちの強さなの。」
「だが人間は能力以上に進出しすぎている。」
ピカード:「それは誰の判断だ。」
「自分でわからんか、あんなつまらん奴らにあれほど手こずっておいて。ロミュラン人やクリンゴン人だ。これから出会う敵に比べれば何でもない。ピカード。君たちがこれから踏み込んでいこうとしている深宇宙には、君らの想像力を遥かに超えるものが待ち受けているんだぞ? 魂も凍りつくような恐怖だ。案内役を買って出たんだぞ、それを断るとは信じられん。」
ライカー:「君がいなくても何とかやっていけるよ?」
「独り善がりもいいところだ。」
ピカード:「独り善がりでも思い上がりでもない。揺るぎない決意があるだけだ。…我々は君の助けはいらない。」
「では本当にそうかどうか見てみるとしよう!」
止めようとするガイナン。「Q!」
Q は指を鳴らした。
光は宇宙空間にも見え、その瞬間エンタープライズは回転しながら移動を始めた。

艦長席に座っているデータ。
エンタープライズは光速を越え、飛ばされ続ける。

テン・フォワードの窓から、横に流れる星の軌跡が見える。
やっとで停止した。
ピカード:「ブリッジ、こちら艦長だ。エンジン停止。」
ウェスリー:『了解、エンジン停止。』
「現在位置は。」

データ:「この座標によれば、我々は 7,000光年※16進んだことになります。現在 J-25星系※17の付近です。」

ライカー:「一番近い宇宙基地までの距離は。」
データ:『最も近いのは、第185宇宙基地※18。最大ワープ速度で、2年7ヶ月3日と 18時間※19です。』
「なぜだ!」
Q:「なぜ? 君らに未来を見せてやるのさ。来たるべき恐怖の予行演習だ。一休みだ、艦長。ホールは借りた。オーケストラも雇った。君たちのダンスのお手並みを拝見しよう。」
消える Q。
ピカード:「ガイナン、君の種族はこの領域にいたんだな※20。」
ガイナン:「ええ。」
ライカー:「何があるんだ。」
「……私なら今すぐ、ここから引き返します。」

『航星日誌、宇宙暦 42761.9。ガイナンの警告を受けた上で、私はこの銀河の未知の星域にしばらくの間留まり、調査をしてみることにした。』
ブリッジ。
ウォーフ:「艦長、この恒星系の第6惑星は M級です。」
データ:「地表には高度に工業化された文明の存在を示す道路が見られますが、都市のあるべき場所には、地表をえぐったような跡しか見当たりません。」
「まるで、何か大きな力が地表にあるものを全てすくい取ってしまったようです。」
「中立地帯※21の前哨基地で、全く同じ現象を見たことがあります。」
「艦長、艦が探査されています。」
ライカー:「探査源は何だ。」
「船です。…インターセプトコースを取っています。」
ピカード:「メインビューワへ。」
船が映った。
ピカード:「拡大しろ。」
それは、無機質な立方体※22だ。
ライカー:「フルスキャン。」
ピカード:「警戒警報だ。」
ウォーフ:「了解、警戒警報。」
ライカー:「防御スクリーンは解除。余計な刺激を与えるな。」
「了解。」
ピカード:「データ少佐、分析してくれ。」
データ:「この船は、ほとんどの部分が均一化されています。特定のブリッジもなければ、司令センターもありません。機関部すら見られませんね。…乗組員居住区も存在しません。」
「生命反応は。」
「全く反応なしです。」
ライカー:「ウォーフ中尉、あの船の武装状況は?」
ウォーフ:「既存の武器は、全く装備されていません。」
ピカード:「宇宙チャンネルオン。」
「了解。」
「U.S.S.エンタープライズ※11艦長ピカードだ。」
「…応答ありません。」
「惑星連邦宇宙艦隊エンタープライズ※11艦長ピカードだ。…ガイナン。そちらのビューワをつけて今ここで起こっていることをよく見てくれ。意見を聞きたい。」

窓から相手の船を見ていたガイナン。テン・フォワードを出て、部屋※23に入る。「今つけます。不気味な船の姿がよく見えています。」

ピカード:「この船について何か知っているか。」
ウォーフ:『ええ、100年前に私達の星に来ました。』

大きなスクリーンを見つめるガイナン。「全てが破壊されて、我が民族は銀河中に散らばりました。ボーグ※24というものです。守りを固めて下さい。でないと全滅です。」

ライカー:「防御スクリーン。」
ウォーフ:「了解。」

ライカーの通信が機関室にも流れる。『全デッキ、待機せよ※25。』
ラフォージは音がした方を振り向いた。何者かがワープコアのそばに転送されてきたようだ。
その生命体は、機械的な腕を作動させている。
ラフォージ:「保安部、至急機関室へ来てくれ! 侵入者がいる。」


※12: 原語では「微少脳 (micro-brain)」

※13: 原語では「クルーの一員としてだ」

※14: TNG パイロット版 "Encounter at Farpoint" 「未知への飛翔」より

※15: TNG "Hide and Q" より

※16: 吹き替えでは「7光年」と誤訳

※17: System J-25

※18: Starbase 185

※19: 吹き替えでは「8時間」

※20: 吹き替えでは「この星域へ来たことがあるな」。ガイナンの種族がエル・オーリアン (El-Aurians) ということは映画第7作 "Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」で触れられ、難民という設定も引き継がれます

※21: ロミュラン中立地帯 (Romulan Neutral Zone) のこと。TNG第26話 "The Neutral Zone" 「突然の訪問者」での出来事を意味しています。当初はその内容が連続エピソードにふくらまされ、ボーグも登場する予定でした

※22: ボーグ船、ボーグ艦 Borg ship
模型は Rick Sternbach と Richard James によるデザイン。3フィート (約90cm)。まだ「ボーグ・キューブ」とは呼ばれていません

※23: このオフィスは最初で最後の登場

※24: Borg
初登場。この話の脚本 (共同製作総指揮)、Maurice Hurley によるアイデア。当初はデザインも昆虫型になる予定でしたが、予算の都合で変わりました

※25: 吹き替えでは「戦闘態勢」

ボーグ船はエンタープライズの前で停止している。
機関室のボーグは、身体のほとんどが機械に覆われている。コンソールを見ていた。
ウォーフたち保安部員と来たピカード。「ラフォージ。」 機関部員は遠くから見守っている。
指さすラフォージ。ボーグは順番に画面を見ている。
ピカード:「何をしてる。」
ラフォージ:「エンジンシステムの流れを調べているんだと思われます。それでパネルを。」
Q が現れた。「面白いだろう。男でも女でもない。これまでのどの生物とも違う、進化した人類なんだ。」
ピカード:「何が望みだ。」
反応しないボーグ。
ピカードは両手を挙げ、近づいていく。「危害を加える気はない。言葉がわかるか?」
またピカードのすぐ後ろに現れる Q。「わかるかだと? 気にも留めていないさ。人間などに興味はないんだ。あれはただの斥候に過ぎない、技術力の分析に来たんだ。船のコントロールを奪おうとした時は、私が止めてやろう。」
ボーグは機械の腕をコンソールに近づけた。電流が発生する。
ピカード:「やめろ。…この船の運航を妨げるような真似は許さん。」 Q は消えている。
エンタープライズの図が乱れる。
ピカード:「ウォーフ中尉。」
ウォーフ:「行け。」
近づく保安部員。ボーグは振り向き、片手で押した。
飛ばされ、床に倒れる保安部員。
ウォーフはフェイザーを発射した。全く効かない。
こちらを見るボーグ。コンソール全体に影響が出始めた。
ライトが明滅する。
ピカード:「ウォーフ中尉。…何としても侵入者の行動を阻止しろ。」
フェイザーの強さを上げるウォーフ。今度はボーグを倒すことができた。
腕の機械も動きを止める。
その直後、もう一人のボーグが転送してきた。同じ作業を続けようとする。
またフェイザーを撃つウォーフだが、ボーグの前にバリアのようなものが現れて効果がない。
撃つ場所を変えても同様だ。
一度ピカードたちを見た後、作業を続けるボーグ。
コンソールから離れ、倒れたボーグからいくつかの部品を取り外す。
そして転送されていった。ボーグの遺体も消え、黒い跡だけが残る。

観察ラウンジ。
座るピカード。「ガイナンの星の人々はボーグと以前に遭遇しているので、彼女にも会議に参加してもらうことにした。機関室で起こったことは知っているな?」
ガイナン:「はい。」
「…何があったんだ、君たちとボーグの間に。」
「直接は見ていません。…でも伝え聞くところでは…突然押し寄せてきて、去っていった時には…私達の星にはまるで何も、残らなかったそうです。」
ライカー:「それほど攻撃的なら、なぜ我々を襲わない。すぐにも襲えたはずだ。」
「彼らは、単体では攻撃してきません。襲うと決めた時は大挙してやってきて、一度に全てを終わらせるんです。」
データ:「ではあの侵入者の目的は単なる情報収集だったのか?」
「そうよ。」
ピカード:「我々が敵ではないとわからせる方法はないのか。」
「無理です。…誰一人そんなことはできません。絶対に。」
ウォーフの通信。『艦長、通信が入りました。』
ピカード:「スクリーンへ。」
ボーグ船の映像が切り替わり、内部構造になった。何層も同じような、金属的な部分が連なっている。
ピカード:「宇宙艦隊エンタープライズ※11艦長…」
低い、機械的な声※26が響いた。『お前たちの防衛及び攻撃能力では我々に抵抗することは不可能だ。抵抗すればお前たちには死んでもらう。』
映像は終わった。
ピカード:「うーん。カウンセラー。」
トロイ:「あれは、一つの意識ではありません。単独の指導者がいるのではなく、意識の集合体が支配者です。」
「集団を率いる場合、かなり有利なことだな。」
「ええ、指導者が一人の時より判断ミスの割合が格段に低くなります。」
Q:『ピカード?』 ボーグ船の映像に、重なって映っている。『おお、まだ私を乗組員にしないと強情を張る気か?』 消えた。
またウォーフだ。『艦長、ボーグの船が引力ビームらしきものを発射しました。』
ピカード:「すぐ戻る。」

エンタープライズはビームに捕捉されている。
警報が鳴るブリッジ。
ピカード:「中尉、報告を。」
ウォーフ:「防御スクリーン、出力ダウンです。」
ライカー:「スクリーンを破られたらおしまいです!」
ピカード:「ワープ8、どこでもいい。発進しろ。」
ウェスリー:「…あのビームにロックされて動けません!」
「出力アップ。」
ウォーフ:「スクリーン低下。」
データ:「スクリーン、18秒で消失します。」
ピカード:「あの引力ビームの発射口を突き止めろ。フェイザーで狙え。」
ウォーフ:「フェイザー目標にロック。」
「発射!」
フェイザーを撃つエンタープライズ。トラクタービームは消えない。
ウォーフ:「まだ逃げられません。」
データ:「防御スクリーン消失。」
別の場所から、細いビームが伸びてきた。
それはエンタープライズの円盤部に小さな円を描き、内部がくり貫かれるように上昇していく。
斜めになった円筒状の中に、デッキの階層構造が見える。
ウォーフ:「今度はレーザーに似たビームが円盤部をくり貫いています。」
ライカー:「バラバラに切り刻むつもりか。」
円盤部の一部がボーグ船に吸い込まれていく。
ピカード:「総力を挙げろ※27。引力ビームを止めるんだ、発射しろ。」
フェイザーを発射し、ボーグ船の一部を吹き飛ばした。
ピカード:「もう一度だ、ウォーフ。」
何発も発射するエンタープライズ。大きな穴が開き、トラクタービームも消えた。
データ:「…引力ビームが解除されました。円盤部の穴は、フォースフィールドで維持。」
ライカー:「被害報告を。」
ウォーフ:「はい、ただいま。…第4、第5、第6デッキの 27、28、29セクション、全滅です。」
ピカード:「死傷者は。」
「…当該部署の 18人が行方不明です。」
スクリーンのボーグ船を見るピカード。「ボーグの側の被害状況は。」
ウォーフ:「全船体の 20%に損傷を受けていると思われます。生命維持装置は機能。」
「……会議だ※28。」

機関室。
ゴメス:「スクリーンの復旧は無理です。」
ラフォージ:「どこからでもいい、ありったけのエネルギーをそっちに回せ!」
「そんなことをしても無駄です、スクリーンをコントロールする回路自体がやられてるんです。」
「直せないなら新しいルートを作るんだ。」
「……18人ですよ。あんな死に方をするなんて。」
「わかってる。今はそのことは忘れろ。」
「できません、頭から離れなくて…」
「ソーニャ、いい加減にしろ! 悲しむ時間は後でいくらでもある、今は防御スクリーンを直すことだ。うん?」
「そうですね、すみません。」

観察ラウンジのピカード。「ガイナン、あの船に乗っている生命体のことは知っているか。」
ガイナン:「よくはわかりません。」
「何でもいい、教えてくれ。」
「…身体は、半分機械でできているということです。何十万年もかかって、進化してきた結果です。」
Q が椅子に現れた。「ボーグは全てを奪い尽くすんだ。だがこれまで君らが出会ったどの敵とも違う。彼らは政治的によそ者を制圧することや、富や権力には全く興味がない。彼らが欲しいのはこの船だ、技術力だよ。彼らの船の部品にうってつけだからねえ。」
ライカー:「君が我々をここに連れてきたせいで大勢の乗組員の命が失われたんだぞ!」
「私のせいか?」
ライカーを止めるピカード。「よすんだ。……18人が死んだ。これは、君お得意の幻なんだろ。」
Q:「いいや? まさしく生死の懸かった現実というやつだ。」 消え、椅子が回転する。
通信が入る。『艦長、こちらラフォージです。防御スクリーンのパワーを、何とか回復しました。』
ピカード:「よくやった。」
続いてウォーフ。『艦長、死亡者リストをスクリーンで御覧になれますが。』
ピカード:「今はいい、確認は後でする。」
ライカー:「今後のことも考えると、向こうがおとなしくしている間に…できるだけ情報収集すべきかと。」
「あの船に乗り込むか。」
「そうするしか手はないでしょうね。」
「…では、最少人数で行け。」
ガイナン:「何ですって!」
ライカー:「…ウォーフ中尉、第3転送室へ向かえ。データ。」
「そんなバカな真似はやめて下さい!」
「どうかな、わからんぞ。向こうは挨拶に来た、こっちも行くのが礼儀だ。」 データと共に出ていくライカー。
無言のピカードたち。


※26: 声はオブライエン役の辻さんが兼任

※27: 吹き替えでは「ある武器は全て使え」

※28: 吹き替えでは「わからん」

『航星日誌、補足。我々はガイナンがボーグと呼ぶ異種族の船から警告もなしに攻撃を受けたが、何とか彼らの戦闘能力を封じたようだ。ライカーらが情報収集のため、彼らの船に乗り込むことになった。』
転送室。
ウォーフ:「生命反応はないんですよ。」
オブライエン※29:「ボーグの船の中で、最も損傷の少ない部位に転送しますので。」
ライカー:「フェイザーは麻痺にしとけ、必要に応じてパワーを上げろ。…転送しろ。」
転送される 3人。

ボーグ船内に実体化する。壁際に並んだボーグ。
すぐにフェイザーを構えるが、襲ってくる様子はない。
ライカー:「…なぜ我々に反応しない。それより、これほど大勢いるのにどうして生命反応が出なかったんだ。」
データ:「多分スキャナーでは個々の生命反応しか感知できないからでしょう。このブースに入っている時彼らは全体の一部となり、個々の生命体ではなくなるようです。」
後ろを向いて静止しているボーグもいる。
ライカー:「艦長。」

ピカード:「何だライカー。」
ライカー:『スキャナーは間違っていました。乗組員が大勢います。全員、ある種の安定状態にあります。』

ピカード:『どういうことだ。』
ライカー:「壁に沿って小さなブースが並んでおり、それぞれに 2人のボーグが入っています。」
データ:「艦長! ボーグたちはこのブースを通して連絡され、集合体として機能していると思われますね。」
「メインコンピューターにアクセスします。」
中に立ってみるデータ。「副長、このブースは個々のボーグに合わせて造られているようです。これがコネクターでしょう。」 押す。
ライカー:「巨大な怪物が、いつ動き出すかわからんぞ。」
「この見事な人体と機械のインターフェイスは、我々の技術力を遥かにしのぐ高度なものです。数段進歩していますね。」
「スピードだけ見ても明らかだ。あのスピードで押し寄せ、欲しいものは必ず手に入れるんだ。」
音が聞こえた。ボーグが歩いてきて、そのまま去っていく。
ウォーフはフェイザーを向けたが、止めるライカー。
データ:「驚きです。※30
他のボーグに近づいている。
ライカー:「我々の存在を気にも掛けないぞ。」
また近づいてきた。同じ道を引き返していく。
船内は、同じような構造が無限に広がっていた。

連絡するピカード。「転送部長。」

オブライエン:「はい、オブライエンです。」
ピカード:『ライカーらの位置表示に少しでも揺らぎが見えたら、直ちに収容しろ。』
「わかりました。」

気体が噴き出すそばを歩く 3人。赤ん坊の鳴き声が聞こえてきた。
壁の中に入っているようだ。
ライカー:「艦長。信じられません。ボーグの、育児室に迷い込んだようです。」
ピカード:『中の様子は。』
ライカーはボタンに触れてみた。容器が開く。
覗き込むと、機械をつけられた子供※31が入っている。
ライカー:「見たところ、ボーグも最初は人間として生まれるようです。そして、生まれた直後からもう…機械の移植が始められています。…全く驚くべき技術力です。人工知能を直接人間の脳につなげてしまったんですよ。…見事だ。」
トリコーダーで壁を調べたデータ。「副長!」
ライカー:「…どうした。」
「船は今、自己再生しているようです。それで、我々の存在に注意を払わないのでしょう。彼らの集合意識は全て船の修理に向いています。」
「艦長、ボーグは今総力を挙げて破損個所の修理に当たっているようです。」

ピカード:「転送部長、すぐにライカーらをブリッジへ収容しろ。」

操作するオブライエン。

3人がブリッジに直接転送された。
ピカード:「今すぐここを離れる。ワープ8。いくぞクラッシャー少尉、発進しろ。」
席につくデータ。
エンタープライズはボーグ船から離れる。
データ:「艦長。ボーグが追ってきます。」
ピカード:「…メインビューワ。…拡大しろ。」
ライカー:「倍率を更に 1,000倍※32に。」
機械の外壁が、みるみるうちに元に戻っていく。
ライカー:「どんどん自己再生を続けています。」
ピカード:「何としても逃げ切るんだ。ラフォージ大尉、可能な限り最大のワープパワーを出せ。」

機関室のラフォージ。「了解。現在、ワープ8.5。更に加速。ワープ8.8。ワープ9.0。」 ゴメスも見守る。

ライカー:「光子魚雷装填しろ。ボーグの速度を落とすんだ。」
ウォーフ:「光子魚雷装填。」
ピカード:「発射。」
後方から光子魚雷を発射するエンタープライズ。
命中する様子がスクリーンに映るが、ボーグ船に影響はないようだ。
ウォーフ:「敵艦被害なし。」
ラフォージ:『ブリッジ、こちら機関部。現在の速度、ワープ9.65 です。』
「ボーグ更に接近してきています。」
後ろのコンソールに座っていた Q が振り向いた。「彼らは君たちの燃料が尽きるまで、どこまでも追い続けてくるぞ。その時が最期だ。認めろ、君は彼らの相手じゃない。やはり私が必要なようだな?」


※29: マイルズ・オブライエン Miles O'Brien
(コルム・ミーニー Colm Meaney) 前話 "Pen Pals" 「未知なるメッセージ」に引き続き登場。声:辻親八

※30: "Fascinating."

※31: このエキストラはサム・クラットマン (Sam Klatman)。ライン・プロデューサー David Livingston の秘書、Carol Eisner の息子

※32: 吹き替えでは「10倍」。「10 の 3乗倍」と言っています

『航星日誌、補足。エンタープライズとボーグの距離は、徐々に狭まっていくばかりだ。』
高速で逃げるエンタープライズ。すぐ後を追うボーグ艦は、完全に修理が終わっている。
Q はブリッジの手すりにもたれかかっている。
ラフォージ:『機関部よりブリッジへ。』
ピカード:「どうした。」
『これが最大速度です。』
「ご苦労、ラフォージ大尉。」
ウォーフ:「艦長、敵はミサイル※33の照準を合わせています。」
武器を発射するボーグ船。エンタープライズのシールド全体に影響が及ぶ。
ウォーフ:「今の被弾では、本艦に被害は出ていません。」
データ:「艦長、標的は船ではありません。スクリーンの、出力ダウンが目的です。」
「そのようです。防御スクリーンの出力 12%減少。」
スクリーン一杯に映るボーグ艦。
ウェスリー:「艦長、ボーグの船が迫っています。」
ウォーフ:「またミサイルです。」
攻撃を受けるエンタープライズ。
ウォーフ:「スクリーン出力 41%減少。もう一度攻撃されればゼロになります。」
ライカー:「光子魚雷を装填しろ。」
「光子魚雷装填。」
ピカード:「魚雷発射。」
やはり命中しても効かない。
ウォーフ:「ボーグの船に損害は出ていません。」
Q:「逃げることも撃墜することもできない。たとえダメージを与えても中心※34は残る。また、自己再生して追いかけてくるぞ? こっちは次第に弱ってきて、蓄えも尽きてしまう。奴らは決してあきらめない。」
「ボーグがミサイルを発射します。」
攻撃するボーグ艦。
揺れるエンタープライズ。
ウォーフ:「防御スクリーン消失しました。」

相手は攻撃をやめない。※35
ワープコアを見るラフォージ。「艦長、ワープエンジンがやられました。」

Q:「最初のあの威勢のよさはどうした、ピカード。未知の宇宙への心構えはあるとまだ言えるか?」
ウォーフ:「ボーグ船、引力ビームの発射準備中です。」
ライカー:「光子魚雷の照準を合わせろ。」
「はい了解。」
データ:「副長、この距離では防御スクリーンがないことを考えると、魚雷を使用した場合こちらにも危険が及びます。」
ピカードはライカーにうなずいた。
ライカー:「発射準備だ。」
Q はデータと場所を入れ替わった。「では失礼するか。何とかできるんだろ。がんばってくれたまえ。」
ピカード:「Q…終わりにしろ。」
「私が? 一体どんな理由があって私が君たちを助けなきゃあならないんだ。」
「今ここで我々が死んだら、もう…もてあそぶ相手もいなくなる。怯えさせたかった。そうなんだろ。我々は無力だと証明したかったんだろ。ああ無力だ。」 笑うピカード。「そう認めよう。そんなに私に助けてくれと言わせたいか。…助けてくれ! これでいいのか!」
Q は指を鳴らした。
するとエンタープライズはボーグのトラクタービームから離れ、再び回転移動を始めた。
横に流れる星がスクリーンに見える。
高速度で飛ばされる船。
動きが止まった。
ライカー:「現在位置。」
ウェスリー:「070、マーク 63 です。…元に戻ってます。」
Q は今度はライカーと入れ替わった。「…よく認めたな。自分の無力を認めるのは屈辱的だ。死んでもそんなことはできん男かと思っていた。」
ピカード:「君の言わんとすることはわかった。だがそのために、私の船の乗組員 18名の命が奪われたんだぞ。」
「犠牲者を出すのが恐いなら家に戻って毛布の中にくるまっているんだな。宇宙は危険な場所だ。しかしだからこそ、心が震えるようなミステリーと感動に出会えるのさ。臆病者に用はない!」
Q は消え、ライカーが戻った。
データも席についている。
ピカード:「クラッシャー少尉。最短距離の宇宙基地へ向かえ。」
ウェスリー:「コースセット、第83宇宙基地※36。」
「発進。」

テン・フォワード。
立体チェスをしているガイナン。「いつかはボーグと出会うことになったでしょうが、Q の仕業でそれが随分…早まってしまったわけです。今度、ボーグと出会う時は人間ももっと進化しているかもしれません。でも、今は彼らにとって…この船はただの金属です。あなた方の存在に気づいたからには……。」
ピカード:「追ってくるな。」
「…ええ、必ず。」
ピカードは立ち上がり、外を見た。「ある意味で、Q には礼を言うべきなのかもしれん。」
ガイナン:「なぜです。」
「いつしか、宇宙に恐れるものはないという慢心をもっていた。それを図らずも奴から、教わった。」 コマを動かすピカード。
ガイナンは、微笑んだ。


※33: 原語ではミサイルではなく、全て「(武器を) 発射、攻撃」としか言っていません

※34: 吹き替えでは「機関部」

※35: 直前にシールドは消えたはずなのに、また攻撃を受けてシールドが見えています。映像の順番を間違えたのかもしれません

※36: Starbase 83

・感想など
Q の 3度目の登場もありますが、何よりボーグが導入されたという記念碑的なエピソードです。まだボーグの (後にドローンと呼ばれる) 個体としての強さは薄く、「同化」という概念もはっきりと描かれてはいません。そのほかにも初期ならではの雑な出来も見受けられますが、インパクト十分の立方体船と、それに追いかけられる恐怖感は何とも言えませんね。以前の中立地帯での騒ぎを、さらっと説明しているのも上手いです。Q とガイナンの因縁は、結局謎のままでしたね。
後のシリーズではボーグの登場乱発による弱体化が見られ、そもそも最初に遭遇したのがこのエピソードではないことになったりしています (もっとも、それは映画 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」のタイムトラベルに関連している点もありますが)。それをおいといてもこの当時ボーグが魅力的なものであることは揺るぎないものであり、後に ST初のクリフハンガーにつながることになります。


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