フロックスは、立ちつくしているトゥポルを見つけた。「副司令官。トゥポル。」 スキャナーで調べる。「大丈夫か?」 
 フロックスは連絡した。「フロックスよりアーチャー船長。」
  
 キャットウォークのアーチャー。「トゥポルは。」 
 フロックス:『ここにいます。ほかのクルーのようにはなっていませんが、いつもの彼女じゃない。』 
 「上手くいかなかったようだな。」 
 『神経経路が、強く刺激されています。』 
 「…クソー! …部屋に運んでくれ。」 
 『了解。』
  
 トゥポルに近づくフロックス。「行きましょう。もう大丈夫です。」 
 動こうとしないトゥポル。 
 フロックス:「…嘘じゃ、ありませんよ? 約束します。」 ハイポスプレーを取り出す。 
 トゥポルが声を出した。光の生命体は、青色のまま出ていった。 
 身体を支えるフロックス。「トゥポル! 誰だかわかるか。副司令官?」 
 トゥポル:「彼ら嘘をついてる。」 フロックスにしがみつく。 
 「トゥポル。」 
 「時間がないんです、ドクター・フロックス。…船長のところに行かなければ。」 走っていくトゥポル。
  
 キャットウォークの司令区に入るトゥポル。「彼らの船は崩壊して、修理するすべがないので…生き残ることができないのです。」 もう落ち着いている。 
 アーチャー:「そのために肉体を奪おうとしてると?」 
 「82人分。一人残らず、クルーと入れ替わるつもりです。」 
 メイウェザー:「敵の数は。」 
 「数百。残りは肉体を奪えるほかの船を探そうとしています。…タッカー少佐はどこです。」 
 「わかりません。」 
 「探し出して。」 
 向かうメイウェザー。 
 トゥポル:「船をシールドする方法が見つかれば、キャットウォークを出て、ワープで脱出できます。」 
 アーチャー:「クルーを見捨ててか。」 
 「3分の2 は生き残れます。」 
 「駄目だ。全員取り戻す方法を探す。」 
 「…それは無理です。」 
 「……例の光は、死体の中で生きられるか。」 
 「…宇宙空間に放り出されるようなものですから、無理でしょう。」 
 「アーチャーよりフロックス。」 
 フロックス:『何でしょう。』
  
 キャットウォークを歩き、タッカーを探すメイウェザー。クルーに声をかける。「大丈夫か。」 
 クルー※14:「何とか。」 
 カニンガム※15:「いつになったら出られるんです?」 
 メイウェザー:「早く出られるよう、船長ががんばってる。タッカー少佐を見なかったか?」 
 クルー:「いいえ。」 
 カニンガム:「見てません。きっと下でしょう。」 
 メイウェザー:「ありがとう。」
  
 環境服を装着しているフロックス。「呼吸が止まっている 20秒以内に二酸化炭素を取り除けば大丈夫。」 
 アーチャー:『蘇生させるためには十分なのか?』
  
 キャットウォーク司令区に、フロックスの声が流れる。『ええ、大丈夫です。右舷ナセルへの換気装置を忘れずに閉じること。キャットウォークにガスが漏れたら大変です。』 
 アーチャー:「わかった。」 
 メイウェザー:「失礼します、タッカー少佐が見つかりません。」 
 「…腹部ハッチを開けた形跡はあるか。」 
 調べるトゥポル:「誰も開けていません。」 
 アーチャー:「…ではいるはずだ。」 
 メイウェザー:「…探してきます。」 また出ていく。
  
 パネルのラベルを順番にチェックしているフロックス。「4、5、6、7。」 
 アーチャー:『よし。識別タグは。』 
 「『ジャンクション 4-1 アルファ』。大気再生マニフォルド。」
  
 司令区から指示するアーチャー。「よし。両側に、ボタンがあるだろ。」 
 フロックス:『ええ、4つあります。ブルーが 2つ、シルバーが 2つ。』 
 その会話を、いつの間にか来たタッカーが聞いていた。入れ替わっている。 
 アーチャー:「押せ、シルバーからだ。」
  
 指示された通りにするフロックス。「押しました。」 
 アーチャー:『パネルを外せ。』 
 「…外したパネルは?」
  
 答えるアーチャー。「好きにしろ。床に置け。」
  
 フロックスは言った。「わかりました。」 パネルを外す。「ああ、やはりここにありました。ええ。」
  
 コンピューターを見るアーチャー。「コントロールパネルは。」
  
 状態を伝えるフロックス。「あります。緑のライトが、6個ついてる。」
  
 アーチャーは画面を見ながら話す。「それぞれの横に、スイッチがついてるはずだ。」 モニターに構造図が表示されている。 
 フロックス:『左 5センチのところですね?』 
 「よーし。中央換気装置にガスを送る前に、供給ラインを二酸化炭素タンクにつないでくれ。」 
 タッカーは立ち去った。
  
 聞くフロックス。「どうやってやるんです?」
  
 トゥポルが答えた。「6個のスイッチは、量をコントロールしているので、二酸化炭素を出すには順番に再調整します。私が指示します。」
  
 取りかかるフロックス。
  
 またキャットウォークに来たメイウェザー。「少佐! やっと見つけました。…大丈夫ですか。」 
 コンソールを操作していたタッカーは、歩き出した。「大丈夫だ。」 
 メイウェザー:「船長が探しています。司令区に、来て欲しいと。…少佐?」 
 タッカーは走り出した。ぶつかったクルーが脇に落ちる。追いかけるメイウェザー。 
 ハッチを開けようとするタッカー。 
 止めるメイウェザー。「危険ですから外には出られません!」 タッカーに倒される。「何をするんです。」 
 メイウェザーを殴るタッカー。はしごを降りていく。ハッチは閉まった。
  
 狭い通路を歩くフロックス。「アクセスチューブに着きました。」 
 アーチャー:『よし、パネルを外せ。』 
 力を込めるフロックス。「…外れません。」
  
 トゥポルを見るアーチャー。「外れるさ。もう少し、力を入れろ。」
  
 フロックスはもう一度外そうとする「…めいっぱい『力』を入れてもビクともしない。」
  
 指示するアーチャー。「足を、テコにするんだ。」
  
 言われた通りにすると、パネルが勢いよく外れた。 
 床に倒れたフロックス。「やりました。」 
 アーチャー:『よし。次の作業は簡単だ。』
  
 メイウェザーが戻ってきた。「大変です、船長。」 
 アーチャー:「待機だ、ドクター。」 通信を切る。「どうした。」 
 「タッカー少佐が、前方ハッチから外に出ました。」 
 「何?」 
 「止めようとしましたが…少佐は、別人のようでした。入れ替わっているようです。」 
 トゥポル:「…作業を知られたかも。」 
 アーチャーは再びフロックスとつなぐ。「作業を急いでくれ、ドクター。トリップが入れ替わった。数分前にキャットウォークから逃げた。監視がいないから仲間を勝手に部屋から出されたら、大変なことになる。」
  
 尋ねるフロックス。「ご指示を。」
  
 アーチャーは言う。「浸透性フィルターを、取り払ってくれ。バルブは、コントロール回路のすぐ右にある。支持プレートの上部にある穴から、指を 2本入れるんだ。本来は簡単な作業だが、手袋をはめながらでは難しいかも。」
  
 フロックスには問題ないらしい。「家じゃあ車の修理が得意でねえ。※16手袋をはめたって、手先は鈍りませんよ?」
  
 今度はトゥポル。「開口部の奥にある、2つの筒型コイルを同時に叩くと、プレートが引っ込むはずです。」
  
 確認するフロックス。「…コイルは 2つ?」
  
 モニターを見るアーチャー。「約3センチ離れてる。」
  
 フロックスは操作した。「…やった!」 
 アーチャー:『回転バルブとレバーが見えるはずだ。』 
 「あります。」 
 『両方のバルブをめいっぱい開けて、それからレバーを 3時の位置まで回せ。それでいい。』 
 環境服のヘルメットを密閉するフロックス。 
 トゥポル:『作業が終わったら、9時の位置でガスが排出されます。』 
 バルブを回すフロックス。レバーに触れた時、いきなり手を取られた。 
 タッカーだ。 
 床に倒されるフロックス。タッカーはバルブを閉め始める。 
 起きあがったフロックスは、さっき外したパネルをタッカーにぶつけようとする。だが避けられてしまった。 
 作業を続けるタッカー。フロックスはヘルメットで頭突きをし、タッカーを倒した。 
 また両方のバルブを回す。 
 レバーを止めようとするタッカー。だが二酸化炭素ガスが出てきた。 
 必死にタッカーの手を押さえるフロックス。咳き込むタッカー。 
 ついにタッカーは、意識を失った。 
 スキャナーで調べるフロックス。「フロックスよりアーチャー船長。」 
 アーチャー:『どうぞ。』 
 「任務完了。タッカー少佐を診ています。」
  
 誉めるアーチャー。「よくやった。」
  
 自室で苦しむリード。気を失う。
  
 他の部屋も同じだ。
  
 黄色の光が、サトウに入る。 
 青色の光が出ていく。
  
 タッカーからも同様に、光が去った。 
 フロックス:「少佐から光が出てきました。」 
 アーチャー:『換気しろ。』 
 「了解、その前に船内の二酸化炭素レベルが十分か確かめます。光が全て出ていったか。」
  
 尋ねるアーチャー。「いいか、トラヴィス。」 
 メイウェザー:「はい。」
  
 レバーを 9時の位置に回すフロックス。「終了。」 
 ガスが排出されていく。
  
 アーチャーは命じた。「フルインパルス!」 
 移動し始めるエンタープライズ。すぐに「光」の船が追ってくる。 
 トゥポル:「追いかけてきます。」 
 再び口を開き、迫る船。 
 トゥポル:「スタンバイ。」 
 もうすぐで追いつかれる。 
 トゥポルは振り向いた。「攻撃!」 
 エンタープライズは 2発の魚雷を発射した。 
 口を通して、敵の内部に命中する。「光」の船は大きく爆発していく。
  
 タッカーは目を覚ました。「何があったんです。」 
 フロックス:「深呼吸して? もう大丈夫。」 
 「…バーベキューの最中だった。」 
 「鼻から吸って、口から吐いて?」 
 「…山盛りの肉が消えちまった…。」 
 「さあ、行きましょう。仕事が溜まってますよ?」 
 タッカーは、ため息をついた。
 
 
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※14: クルーその1 Crewman #1 (Alexander Chance) 声はクック役の土田さんが兼任
  
※15: カニンガム Cunningham (Matthew Kaminsky) ENT第35話 "Singularity" 「三重星系の誘惑」以来の登場。クレジットではクルーその2 (Crewman #2) ですが、俳優が同じなことからカニンガムと見なしてよいと思われます。声:羽田智彦。前回は福田信昭さんでした
  
※16: "Back home, I'm known for my fine motor skills." がこう訳されていますが、motor skill は「運動技能」という単語なので、全くの見当違いなような…。「故郷じゃあ器用で通ってましてねえ」ぐらいの意味でしょう
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