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エンタープライズ エピソードガイド
第25話「楽園での出来事」
Two Days and Two Nights

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・イントロダクション
※1※2エンタープライズは惑星に到着した。
『船長私的記録、2152年2月18日。ついに念願のライサにたどり着いた。この記録を再開するのは、2日後になるだろう。』
私服で廊下を歩くアーチャー。ポートスの吠え声が聞こえた。「何かあったときの連絡先はわかってるな?」
トゥポル:「何かあることなどないと思います。」
「君にも、予期できないことが起きるかもしれん。」
「みな緊急時の対処法は心得てます。もちろん何かあった場合はすぐに御報告いたしますが。」 ターボリフトのスイッチを押すトゥポル。
「やっぱりやめよう。クルーの半数を残して、船長である私が休暇を取るわけにはいかんよ。」
「くじ引きの結果です。チャンスは全員平等にありました。」
「たとえそうでも、部下を優先すべきだ。」
「船長。あなたには休養が必要です。」
ターボリフトが到着した。ため息をつくアーチャー。
先に乗るポートス。アーチャーも入った。

シャトルベイは私服姿のクルーであふれている。
サトウ:「休む気になって下さったんですね?」
アーチャー:「まあな?」
ロストフ※3:「操縦、されますか?」
「いや、休暇中だ。ありがとう。」 荷物を渡すアーチャー。
トゥポル:「楽しんできて下さい?」
派手なシャツを着たタッカーは言った。「土産を楽しみに。」

2機のシャトルポッドが発進した。


※1: このエピソードは、TNG/DS9 ウォーフ役マイケル・ドーンの監督作品です。DS9第171話 "When It Rains..." 「嵐の予兆」以来、4話目となります (参考)

※2: また、このエピソードは 2002年度エミー賞、ヘアスタイリング賞を受賞しました

※3: Rostov
(Joseph Will) ENT第22話 "Vox Sola" 「漂流生命体の叫び」以来の登場。声:平田広明

・本編
ライサへ向かうシャトル。
アーチャー:「みんな予定は決めたのか? トラヴィスは?」
メイウェザー:「ロッククライミングです。ガラーサ※4って山があって、登ってる途中で岩肌が傾斜を変えるんですって。」
サトウ:「何だか危なそうじゃない?」
「だから面白いんじゃないか。」
アーチャー:「ま、気をつけろ? マルコムは。」
リード:「…ああ…ライサはちょっとした宇宙都市ですからね。様々な人種と友好を深めていきます。」
タッカー:「マルコムと私は一緒に、新たな文化を味わってこようかと。」
笑うリード。
サトウ:「結局それしか頭にないのね?」
タッカー:「どうやって楽しもうが、俺たちの勝手だろ?」
アーチャー:「一応気をつけてくれ?」
うなずくタッカー。
サトウ:「私はもう少し有意義に過ごしたいと考えてます。…今まで少し、ユニバーサル翻訳機に頼りすぎてました。地球では 38言語も学んだっていうのに、今じゃコンピューターに任せっきりですもん。」
ロストフ:「そのための機械だよ。」
「今回は別よ? 翻訳機はエンタープライズに置いてきたの。」
タッカー:「休暇は 2日しかないんだぞ、ホシ? 話すよりほかに、やることがあるだろ。」
また笑うリード。
メイウェザー:「船長は、どうされるんです?」
アーチャー:「私は、これといって予定は立ててない。海を見渡せる別荘を借りてあるから、ポートスと一緒にのんびりするよ。」

ハイポスプレーを用意するカトラー※5
トゥポル:「どのくらい続くんです?」
フロックス:「通常は 1年に 6日間必要なんですが、2日でも十分にリフレッシュできるでしょう。」
カトラー:「ピッタリ 48時間後に目覚めるように調整しておきました。」
トゥポル:「冬眠※6中に、急患が発生した場合はどうしたらいいでしょう。」
フロックス:「このカトラーに任せればいい。」
カトラー:「包帯くらいは巻けます。」
笑うフロックス。「起こしてくれても構いません。でも、くれぐれも…緊急時だけにして下さい?」 ハイポスプレーを打たれた。「では、おやすみ。」 医療室を出ていく。
トゥポル:「いい夢を、ドクター。」

ライサの別荘地、スラヤ湾※7
部屋に入るアーチャー。
中を見渡す。「どう思う、ポートス? なかなかだ。」 荷物を降ろした。
テーブルの上にあった物に気づく。紙を開いた。「ゆっくりおくつろぎ下さい。トゥポル。」
箱に入っていた本。「『スラクの教え※8』か…。」
バルコニーに出るアーチャー。望遠鏡が備え付けられている。
綺麗な海が見える。
動物の鳴き声が聞こえてきた。下に見える別の部屋で、イヌが吠えていた。
飼い主の女性がやってきた。「ほーら、いらっしゃい。何吠えてるの。」 アーチャーに気づいたが、中に戻った。

音楽が鳴り、人々であふれたクラブ。
ウェイトレスが客に話す。「今参ります。」「頼むよ?」 「さっきのオーダー、まだかしら? 急いでるの。」
スーツを羽織っているタッカー。「あれなんかどうだ?」
リード:「フッ! 宇宙船にいすぎて、美的センスが鈍ったらしい。」
「いい女じゃないかあ。」
「そりゃ、悪くはないけど…どの目を見つめて口説いたらいいんです?」
笑う 2人。
リード:「ねえねえ…ほら。彼女なんかどうです?」
タッカー:「おい、あれは『彼女』じゃないだろ。…ん? ま、冒険したいんならいいんじゃない?」
「…一応スキャナー持って行った方がいいでしょうねえ。」 飲み物を受け取るリード。「おっと、どうもありがとう。」 歩いていくウェイトレスを見つめる。「ああ…。」
「あれが女だ。」
「ああ。何に乾杯します?」
「俺たちに! そして、俺たちを待つ、輝ける 2日間に。」

2つの月が見える夜に、アーチャーは本を読んでいた。
飲み物を取りに部屋に戻る。ポートスは鳴き声に気づいた。
アーチャーが注いでいると、2匹の声が聞こえてきた。「どうやって来たんだ。」 あのイヌとポートスが、向かい合って吠えている。「やめないか! おい、ポートス。」
ドアチャイムが鳴った。「どうぞ!」
仕方なくポートスを持ち上げ、出るアーチャー。
女性が立っていた。「ごめんなさい? うちのイヌがあなたの部屋のバルコニーに。」
アーチャー:「どうぞ。」
部屋に入る女性。「ダメじゃないの。」 抱きかかえる。「怪我はない? えーっと…」
アーチャー:「ポートスだ。」
「こんにちは、ポートス。…もっと気をつけるべきだったわ? ずっと船にいて運動不足だったの。」
「怪我はないようだ。」
「そう。」
「きっと友達を作りに来たんだろう。…ジョナサンだ。」
「キーラ※9よ?」 握手するキーラ。
「ライサへ来たのは、初めてかい?」
「ええ、そう。あなたも?」
「初めてだ。うちの科学士官に休めといわれて、思い切って決めたよ。ゆっくり読書をしたり、ポートスと遊んだりしようとね?」
「…科学士官は間違ったことは言わない。」
「彼女もそう言うだろう。…夕食に行きたいんだが、いい店はないかな。」
「毎晩湾に入ってくるボートがあるの。決まって日が沈むとすぐに。そこへ行けば美味しいシーフードをデッキで食べられるわ?」
「うん、そりゃ良さそうだ。」
「…じゃあ、お邪魔してごめんなさい。ありがとう。」 出ていくキーラ。
「…もし、今夜予定がないなら、そのボートで一緒に夕食をどうですか。」
「科学士官は一緒じゃないの?」
「いや?」
「それだったら…ああ、いえ。ごめんなさい。今夜は行けないわ?」
「…残念だ。」
「明日は?」
「楽しみにしてる。」
「私も。さよなら、ポートス。」 去るキーラ。
微笑み、ドアを閉めるアーチャー。


※4: Galartha

※5: エリザベス・カトラー Elizabeth Cutler
(Kellie Waymire) ENT第13話 "Dear Doctor" 「遥かなる友へ」以来の登場。声:落合るみ

※6: ENT "Dear Doctor" で言及

※7: Suraya Bay
前話 "Desert Crossing" 「幻影の戦士」より

※8: The Teachings of Surak
この部分は原語では何も言っていません

※9: Keyla
(デイ・ヤング Dey Young TNG第113話 "The Masterpiece Society" 「遺伝子操作惑星」のハンナ・ベイツ (Hannah Bates)、DS9第115話 "A Simple Investigation" 「オドーの恋」のアリッサ (Arissa) 役)

独りでテーブルに座っていたサトウは、近くにいた夫婦に異星人語で話しかけた。「(どうも)」
ライサ人女性※10:「(どうも)」
「(いい夜ですね)」
ライサ人男性※11:「(…ここは初めて?)」
「(…なぜです?)」
女性:「(いつもいい夜よ)」
「ゆっくりお願いします。(勉強中なので)」
「(休暇中に言葉の勉強をしてるの?)」
「…(それが私の趣味なんです)」
「(何日滞在する予定なの?)」
「(今日と明日だけなんです)」
男性:「(今までにライサ語を話した事は?)」
「(いいえ)」 笑うサトウ。「(前途多難だわ)」 遠くから見ている異星人がいる。
女性:「(上手よ、発音もきれい)」
「(ありがとう)」
「(会えてよかった)」
男性:「(月祭りに行くんだ。君も行くといい)」
サトウ:「(そうします)」
女性:「(おやすみ)」
男性:「(おやすみ)」 二人は歩いていった。
「(どうも)」 さっきの異星人が話しかけた。
サトウ:「(どうも)」
「(今の会話を聞いてしまった)」
「ああ。」
「(言葉に強いの?)」
「(仕事だから。)」
「ああ。」
「(宇宙船の通信士なの。ホシよ)」
「(ラヴィス※12だ。座っても?)」
うなずくサトウ。
ラヴィス:「(何言語くらい話せるの?)」
サトウ:「(約40言語)」
「(挫折した言語は?)」
「(ないわ。…クリンゴン語は難しかった。1ヶ月以上勉強を)」
「(僕の星の言葉は?)」
「(どこの星?)」
ラヴィスは長い言葉を一気に話した。※13
サトウ:「(それが名前? ゆっくり)」
ラヴィス:「(ゆっくりだと意味が変わってしまう)」
「…(もう一度)」
「(僕らも20歳で、やっと学ぶんだ)」
「(お願い。私に教えてくれない?)」
「(時間がかかる。先に食事を済ませないか?)」
サトウはうなずいた。

まだクラブにいるリード。「ずいぶんとエネルギッシュなところですねえ。」
タッカー:「ヴァルカンのデータベースにも、ここは評判がいいって載ってたよ。」
「ヴァルカンにわかるんですかねえ。7年に一度しかしないのに。」
「…言ってるだけだろ?」
「…違うって言うんですか?」
「お前な、7年だぞ? あのトゥポルだって、そんなに我慢はできんだろ。」
「うーん、いやいや。彼女は我慢強い。」
「マルコム。方位 180。」
「はい?」
「後ろだよ!」 2人の女性が立っている。
「ほう…データベースに女性との会話の仕方は載ってました?」
「会話で異文化交流したいんならホシのところへ行ってくりゃいい。」
ライサ人の方から話しかけてきた。「どうも。」
タッカー:「…どうも。」
「私はディーアーン※14。こっちはラティア※15よ?」
「俺はトリップ。」
リード:「マルコムだ。よければ、一緒に飲まない?」
ディーアーン:「そう言ってくれるのを待ってたの。」 同席する 2人。
タッカー:「君たちは何を飲む?」
ラティア:「ああ、これ美味しそう。」
「ああ、ここお代わりくれ。」
ウェイトレス:「はい。」
ディーアーン:「どこから来たの?」
リード:「ああ、地球っていう星からだ。」
ラティア:「地球? 聞いたことない。」
タッカー:「宇宙へ、出てきたのが最近だから。」
ディーアーン:「だったらライサでの初めての夜を思い出深いものにしなくっちゃ?」
笑うタッカー。

スラヤ湾。
望遠鏡を使っているアーチャー。
キーラの声が聞こえる。「ジョナサン?」 自分の部屋から見上げていた。「まだ起きてるの?」
アーチャー:「ちょっと星を見ていたんだ。」
「船から毎日見てて飽きない?」
笑うアーチャー。「全く?」
キーラ:「私も見せてもらっていい?」
「来るといい。」

望遠鏡を覗くアーチャー。「お礼を言うよ。ボートのシーフード、最高だった。」
キーラ:「付き合えなくてごめんなさい。」
「構わんさ。近くの席に、ヴェガ・レティクリ※16から来たカップルがいてね? …一緒に話してたんだが、彼らは結婚 300周年だそうだ。」
「いろんな物語がありそうね?」
「想像もつかんよ。…来てごらん。」
「何が見えるの?」
「一番上に、青い星が見えるかい?」
「あれが太陽?」
「いや、その下だ。黄色い星、見えた?」
「ボンヤリとだけど。」
「90光年は離れてるからなあ。」
「…そんなに遠くから?」
「地球からここまで来たのは、私たちが初めてだ。」
「探査任務で? 帰還したらきっとあなたの名前をつけた学校が建てられるわ?」
笑うアーチャー。「アーチャー小学校か? なかなかいい響きだ。…君の星はどこだい?」
キーラ:「悪いけど、私ものすごい方向音痴なの。」
「そんなことはないだろう。」
「ロビーから部屋に戻るのにも迷うくらい。」
「なるほど? まあ、それはうなずけないこともない。…ロビーから部屋まで、100メートルはあるからな?」
「それに、どの部屋も同じようでしょ?」
「だから、微妙な違いに気をつけなきゃね?」
「…ドアに書いてある部屋番号とか。」
「気づいたねえ。」
笑うキーラ。
アーチャー:「時間空けてくれないか、宇宙船を案内するよ。」
キーラ:「…まずは今までどんなところに行ってきたか話してくれない? その後でゆっくりと船を案内してもらうわ?」

タッカーはディーアーンと、リードはラティアと話している。
タッカー:「で、もう空気がなくなるっていうところで、エンジンを捨てて爆発させた。それを…救難信号にしたんだ。」
リード:「僕が考えた。」
「誰の考えだっていいだろ。大成功だった。※17
「エンタープライズを救った話をしたらどうです? パンツ一丁で。」
「船長の命を救ったんだ。※18
ディーアーン:「ああ!」
ラティア:「あなた船長じゃないの?」
タッカー:「…交代制でね。来週は彼が船長だ。」
うなずくリード。
ディーアーン:「ねえ、船長さんたち? もう地下庭園は見に行った?」
リード:「地下庭園?」
ラティア:「…植えてある植物が全部発光性なの。すごく綺麗よ?」
「ほう?」
タッカー:「じゃあ早速、案内して。」
向かう 4人。

暗い部屋にライトが灯され、中に入った。
ラティア:「この先よ?」
リード:「ずいぶん変なところを通るんだなあ。」
ディーアーン:「とっておきの場所だから。それで? 地球では宇宙船の船長ってどのくらい儲かるのかしら。」
「何だって?」
ラティア:「金目の物を出してくれない?」
タッカー:「…俺たち何か、勘違いをしてたようだな。」
ライサ人たちは目を合わせると、一瞬で姿を別の異星人に変えた。服まで変化している。
驚くタッカー。「おっと!」
リード:「完璧に勘違いしてた!」
逃げようとする 2人。だがうなる異星人に捕まり、投げ倒された。
銃を取り出す元ディーアーンの男※19。「服を探ってみろ。」
探られるタッカー。「また妊娠じゃないだろうな!※20
元ラティアの男※21。「うるせえ!」 リードも調べる。「何もねえ。」
元ディーアーン:「じゃあこいつらの部屋へ行って探してみるか。」
「いや、危険すぎる。服引っぺがして売ろう。」
タッカー:「待ってくれ! そう早まるなって。取引をしよう。」
異星人は 2人を撃った。
気を失う。


※10: Risan Woman
(Jennifer Williams)

※11: Risan Man
(James Ingersoll)

※12: Ravis
(ルドルフ・マーティン Rudolf Martin)

※13: クローズドキャプションでは "Ti'tu ah sanoo portan ee'purana sooo ta-so yo' aramat prefan rickarta ach'som" となっていますが、そうは聞こえません

※14: Dee'Ahn Female
(DonnaMarie Recco)

※15: Latia
俳優名がクレジットに掲載されておらず、公式サイトにもありません。その代わり Freebus (デニス・コックラム Dennis Cockrum TNG第140話 "Face of the Enemy" 「ロミュラン帝国亡命作戦」のコーヴァレン輸送船船長 (Corvallen Freighter Captain)、VOY第141話 "Live Fast and Prosper" 「宇宙詐欺師ダーラ」のオレク (Orek) 役) というキャラクターが掲載されていますが、実際には登場しませんし、コックラムのクレジットもありません

※16: Vega Reticuli

※17: ENT第16話 "Shuttlepod One" 「引き裂かれたクルー」より

※18: ENT第19話 "Acquisition" 「獲物たちの罠」より

※19: Dee'Ahn Male
(ジェフ・ミード Geoff Meed ゲーム "Voyager: Elite Force" のオデル役で声の出演)

※20: ENT第5話 "Unexpected" 「予期せぬ侵入者」より

※21: Latia Male
(Stephen Wozniak)

船長席でパッドを読んでいたトゥポル。呼び出しに応える。「エンタープライズ。」
メイウェザー:『トラヴィスです、副司令官。シャトルを送ってもらえませんか。』
「何かあったんですか?」
『ロッククライミング中にヘマやっちゃって。』
「…今、どこに?」
『セントラル病院です。でも、エンタープライズで治療を受けたい。』

シャトルベイに入るトゥポル。
ロストフとカトラーに抱えられたメイウェザー。「岩肌が変わるところが楽しいんだけど、手をかけるところまで変わっちゃうんだよ。」
笑い、調べるカトラー。
トゥポル:「なぜライサの病院で治療を続けたくないの?」
メイウェザー:「異星人に治療を受けたことあります?」
「あるわ? サンフランシスコで。」
「…ライサの病院は人間を診た経験がない。ドクターはどこです? フロックスは?」
カトラー:「来られません。」
「『来られない』ってどういうことだよ!」
「今…眠ってます。」
「起こせばいいだろう?! 急患だって言って。」
トゥポル:「…ドクターは冬眠中なの。」
「冬眠中…終わるのは?」
「まる 2日後です。」
「ああ…」
カトラー:「…骨折くらい私が診ますわ?」
ロストフ:「シャトルに乗船中、呼吸がしづらいと言っていました。」
「ライサでの処置は?」
メイウェザー:「鎮痛用のハイポスプレーを。」
「ふーん…?」
「それが何か。」
「何でもないわ? 医療室へ。」 メイウェザーを運んでいくカトラー。

地下の倉庫で、タッカーは目を覚ました。
声を上げる。下着姿だ。
先に起きていたリード。「お目覚めで?」 後ろ手に縛られている。
タッカー:「…飲み過ぎたせいか殴られたせいか、頭が割れるように痛い。ズキズキする。」
「きっと両方だ。…もう朝です。一晩いたんですねえ。」
「…最悪。…休暇の半分が終わったな? …おーい! 誰か助けてくれよ! ……もしもーし!」
「誰もいないらしい。…店は閉まってます。」
「…こんな…地下に閉じこめられたまま、休暇を終わらせてたまるか!」 ロープを取ろうとするタッカー。
「データベースに犯罪の危険性も載せておくべきだ!」
「…滅多に起きないって書いてあったから。」
「…はい?」
「一応注意は載ってたんだ。でも起きるとは思わなかった。」
「最高だ。」
「…俺のせいだって言うのかよ!」
「見ず知らずの異星人にホイホイついていったじゃないですか!」
「ゴージャスな異星人だ! ゴージャスじゃなきゃ誰がついていくか!」
「奴ら男だ!」
「最初は違ったろ! …お前だって尻尾振ってたくせに。」
「…時間通り集合場所に行かなきゃ、船長は私たちの生体反応をスキャンします。…船長にこんな姿見せられませんよ!」
何とか取ろうとする 2人。

調べられるメイウェザー。「すごく気分が悪い。」
トゥポルが医療室に入る。
カトラー:「ライサの鎮痛剤に過剰反応を起こしてます。」
トゥポル:「容態はどう?」
「これ以上腫れれば、気道がふさがれます。」
「ライサの病院に聞いたけど、こういう症状は初めてだそうよ? 人間の生理機能については、無知だったの。」
汗だくのメイウェザー。「やっぱり、ドクター・フロックスを起こしてくれ。」

店でサトウはラヴィスと話している。
異星人語を話すラヴィス。
笑うサトウ。「ダメ、降参だわ? マスターできない言語があるなんてショック。」
ラヴィス:「気にするなよ。初めて 1日しか経ってないんだ。」
「あなたは 1日で地球の言葉を覚えたわ?」
「簡単だし、君はとてもいい…その…プリーマリ※22は?」
「先生。」
食べ物を示すラヴィス。「これは何て。」
サトウ:「ああ…地球には同じ物はないけど、強いて言うとすれば…ストロベリーかしら。」
「ストロベリー。」
「ええ、そう。」
「これは。」
口にするサトウ。「うーん…味は、キウイみたい。…何?」
ラヴィス:「僕らの言葉で、『キウイ※23』っていうのは…」
「なーに?」
「まだ覚えてない。やってみせていい?」
「ええ、どうぞ?」
ラヴィスはサトウと口づけした。
ラヴィス:「キウイ。」
サトウ:「…キス。地球の言葉では、キスよ?」
「キスか。…実は今日、行こうと思ってたところがあるんだ。…スチームプール。そこへ行くとすごく…リラックスできる。一緒に行かない?」
「アヴェックプレジア。フランス語よ?」
「どういう意味?」
立ち上がり、手を差し出すサトウ。
二人は店を出て行く。

昼のスラヤ湾。
料理の臭いをかぐアーチャー。チャイムが鳴った。
ドアを開けると、キーラが立っていた。「おはよう。」
アーチャー:「おはよう。どうぞ?」
「よかったらイヌを連れて、一緒にビーチを散歩しに行かない?」
「いいねえ。朝食を頼んだんだ。一緒にどうだい?」
「いただくわ?」
「ジュースは?」
「おねがい。…何を読んでるの?」
「科学士官からのプレゼントだ。彼女の人種は、人間が…感情的すぎると考えている。」
「そこがいいとこだと思うけど。」
笑うアーチャー。「君は私をよーく知っている。私の母星、読んでいる本。君はイヌの名前さえ言わん。」
キーラ:「ライロ※24よ。子犬の頃から育ててるわ? ほかに質問は?」
「山ほどある。君の母星の名前は? 仕事は? 家族はいるのかい?」
「…せっかく楽しい時間を過ごしてるのに、台無しにしたくないわ?」
「台無しになるのか。」
「…家族はいたんだけど、全員殺された。…両親も、兄弟も、夫も。」
「…すまない。」
「私たちが悪いの。スリバンのことは聞いていたのに、逃げられるうちに逃げてればよかった。」
「スリバン?」
「奴らを知ってるの?」
「知ってる。」

眠っているフロックス。
小声で話すカトラー。「ほんとに起こしてしまっていいのかしら。」
トゥポル:「普通に話して平気よ? 深い冬眠状態に入っているから。」
「だから心配なんです。」 ハイポスプレーを打つカトラー。
フロックスには反応がない。
トゥポル:「薬の量に間違いはないの?」
突然起きあがった。「ドサニ!」
驚くカトラー。
フロックス:「ドサニ! ヨッ・ト アールダー!」 目をむいたまま横になる。
カトラー:「フロックス?」
「味なんか別にどうだっていいけどさあ…」 いびきのような声を出すフロックス。
トゥポル:「起きて下さい、ドクター。」
「あ……副司令官? もう 48時間経ったんですか?」
「いいえ。」
「じゃ何で起こすんですか!」
「急患が発生したからです。」
「急患なら、ドクターを呼べばいい。」
「ドクターはあなたです。」
「…そうだった…。患者は?」
「メイウェザー少尉です。」
「メイ…?」
「メイウェザー少尉、操舵手です。」
「そんなことはわかってるさあ! …どこ行った?」
カトラー:「医療室にいます。」
「ここは違うのか?」
トゥポル:「ここはあなたの部屋です。」
「うーん、だったら!」 立ち上がるフロックス。「ほら、急げ!」
だが、けつまずいて倒れた。「すいませんけど誰か手貸してくれません?」


※22: preemari

※23: kee'hwi

※24: Rhylo
「彼女」と呼んでいる箇所があるので、メスです

医療室のモニターを見るフロックス。「どこが悪いんですか、船長?」
メイウェザー:「…トラヴィスだよ、ドクター。」
カトラー:「鎮痛剤に対する、過敏症です。」
フロックス:「…信じられん。」 モニターを見ている。
トゥポル:「何です?」
「もう 5分も独りで立ってる。ああ…」
「ドクター?」
「ん、あ、そこのスキャナーを、船長。ンー!」
トゥポルから受け取るフロックスだが、使い方がわからないようだ。「ふん。」
トゥポルがスイッチを入れた。
フロックス:「ああ…そっか。どうも。うん…うーん、なるほど? やっぱり組織の中に、抗原性の化合物ができてる。レグラスのアカムシ※25を使うことにしよう。」
メイウェザー:「アカムシ?!」
「毒素を取り除いてくれるんだ。」
「ああ…」
ケースを手にするカトラー。「ああ…どれに入ってるんです?」
フロックス:「新鮮なのを取ってくるんだよ!」 通信機に触れる。「レグラスへ向かってくれ、ワープ最大で頼む!」
近づくトゥポル。「ドクター、起こしたのが間違いでした。どうぞ部屋へ戻って下さい。」
フロックス:「気持ちはありがたいですが、ここはお互いプロに徹しましょう。」
カトラー:「いいから戻りましょう?」
2人の手を払いのけるフロックス。「私はこの船の医療主任だ…私が治す! …メイウェザー少尉を。寝るのは後だ。うん。」
ため息をつくメイウェザー。

ボトルを持っているアーチャー。「チェックインしたときに用意されていたんだ。オーナーからの挨拶だろう。ライサのワインがどんな味かは知らないが、ここは一つ勇気を出して、2人で毒味をしてみないか。」
キーラ:「あなたがするなら付き合うわ?」
笑うアーチャー。「足首は?」
キーラ:「うーん、良くなったみたい。」
「ガイドが、前もって言うべきだよ。」
「すごく浅かったもの、気づかない私がいけないんだわ。」
「仕方ないさ。あれじゃあ、誰だって石と間違える。」 グラスを渡すアーチャー。「にっくき、ライサのウミガメ※26に。」
乾杯し、グラスを置くキーラ。「私にはちょっと甘過ぎるみたい。」 ため息をつく。
アーチャー:「どうしたいんだい?」
「上手くだまされた。…奴らが動いて初めて気づいたの。」
「もっといたのか。」
「ウミガメのこと言ってるんじゃないわ? …スリバンを知ってるのよね。会ったことあるの? 大切な人を傷つけられたことは?」
「何回か出くわしたことはあるが、運が良かった。大した被害は被っていない。」
「見えない敵とどうやって戦えっていうの? …奴らは未来から命令を受けてるって聞いたわ。」
「…本当に?」
「遺伝子強化をされてるでしょ? その方法は未来から来た者に、教わったって聞いたの。」
「誰からだ。」
「…みんなそう思ってる。奴らはいくつもの船や居住区を襲い続けてる。一体どこからやってくるの? どこに住んでるの。」
「…答えたいのは山々だが、私も知らない。」
「次は何をやろうとしてるのかしら。」
「お互い、奴らと会わないことを祈るしかない。」
「そんなことありえないわ? 奴らは戦闘要員を増やし続けてる。何て言った? そうカバルよ。あなたカバルのことを知ってるんでしょ、ジョナサン?」
「君の家族が殺されたことは、気の毒だと思う。だが君は、私に何を望んでるんだ。」
「私が奴らについて知っていることは、全部噂か、又聞きだけ。でもあなたは直接会ったことがある。あなたの知っていることを教えて欲しいの。螺旋艦はどこにあるの? 奴らはどこに住んでるの?」
「……このワインが甘すぎるなら、別のボトルを…開けるとしよう。口に合うかも。」
ワインを取りに行ったアーチャーは、わざと落とした物を拾うついでに、密かにスキャナーを手にした。
キーラ:「スリバンと直接接触した人と出会ったのはあなたが初めてだわ。」
アーチャー:「…わかった。ほんの少しだが、知っていることは全部話そう。…外の空気が吸いたい。ビーチを散歩しないか?」
「ありがとう。」
「少し冷えるから、何か羽織っていった方がいい。」
「取ってくるわ。」 部屋を出るキーラ。
アーチャーはコミュニケーターを取り出した。「アーチャーからエンタープライズ。」
トゥポル:『トゥポルです。』
「バイオ・スキャンのデータを送る。すぐに分析してくれ。同じデータがあるはずだ。」
『休暇を楽しんでる声じゃないですね。』

医療室に流れるアーチャーの声。『急いでくれ。』
トゥポル:「わかりました。」

スラヤ湾。
ドアチャイムが鳴り、出るアーチャー。
布を羽織ったキーラだ。「出られる?」
アーチャー:「まだだ。」 ドアを閉める。「上手く顔を変えたもんだ。…私が会ったテンダー人には大きな特徴があった。ここにな。」 額を指さす。
「テンダー人? 何のことかしら。」
スキャナーを見せるアーチャー。「スキャンをした。顔は変えられても DNA は変えられない。グラット大佐の、命令か?」
キーラ:「誰?」
「知らないことも、ありうるなあ。無実のスリバン人を拘留する、ある施設の責任者だ。グラットも、同じようなことを聞いた。もっと攻撃的ではあったが、作り話をして私の同情を引くようなことはしなかった。※27
「…あなたは知らないのよ? 何にもわかってない。これで失礼するわ。」
キーラの腕をつかむアーチャー。「グラットじゃないなら誰だ。誰の命令だ。答えろ!」
キーラはアーチャーの手に触れ、そっと中指を突き立てた。
アーチャー:「ん…。」
血が出ている。
キーラ:「ごめんなさい?」
よろめくアーチャー。目の前がぼやける。
キーラ:「親切は忘れないわ?」
アーチャーはそのまま倒れてしまった。
キーラ:「もうここを発たなきゃ。これ以上知られたくない。」 出ていった。
うめくアーチャー。

下着姿のまま、クラブに戻ってきたリード。「ったく何のボトルを割ったのか知りませんが、臭くてたまりませんよ!」
タッカー:「しょうがないだろ。ロープを切らなきゃならなかったんだから。」
2人をジロジロ見る客。笑う者もいる。
出ていく 2人。

朝を迎えた部屋。
ベッドで寝ていたサトウが目を覚ました。
その隣にいるラヴィスにキスをする。
ラヴィス:「…おはよう。」
サトウ:「おはよう?」
「眠れた?」
「ぐっすり。」
「…今日は、何かしてみたいことはあるかい? ライサでなら何だってできる。」
「できることなら、ここでずっとこうしていたい。でも後 2、3時間後には、シャトルが迎えに来るの。」
「ずいぶん短い休暇なんだな。」
「たった 2日間の休暇。それで終わり。」
「誤解されてたらやだなあ、僕が君を…」
「もてあそんだって? 思ってないわ?」 抱き合うサトウ。

ハイポスプレーを用意するフロックス。「よーし、これでいい。」
トゥポル:「本当に?」
「…自分で確かめてみるといい、ドクター。彼は体内に注入された塩化ベンゼトニウム※28に、アレルギーがあった。それを取り除く。」 注射するフロックス。
モニターに反応がある。
トゥポル:「生体反応が安定してきた。効果があったようね。」
カトラー:「気分は?」
メイウェザー:「…良くなったよ。ありがとう、ドクター。」
いびきが聞こえてきた。フロックスはベッドに突っ伏し、既に眠っていた。よだれを垂らしている。

眠ったままのアーチャーを舐めるポートス。
目を覚ました。まだふらついている。
キーラの部屋を見る。気配はない。
上昇するシャトルポッド。
ポートスがリードに近寄っている。
サトウは気づいた。「何の臭い?」
リード:「…何も、臭わんが。」
アーチャー:「2人とも、充実した 2日間を過ごしたんだろうな?」
タッカー:「素晴らしい文化に触れました。…君は、ホシ? 有意義な休暇だったかい?」
サトウ:「新しい言語を学んだわ? 特殊なコミュニケーション法も。」
「フーン。」
リード:「船長は? ぐっすり眠れました?」
アーチャー:「うん、それ以上だ。」
タッカー:「次の休暇では、本にばっかりかじりついてないで、外に出た方がいい。楽しいですよ? いろんな人がいて。」
うなずくアーチャー。
エンタープライズに向かうシャトル。


※25: Regulan blood worms
TOS第42話 "The Trouble with Tribbles" 「新種クアドトリティケール」で言及。レグラス (Regulus、レグルス) は、しし座アルファ星

※26: Risan sea turtle

※27: ENT第21話 "Detained" 「テンダーの虜囚」より

※28: benzethonium chloride

・感想
前々回から触れられていたライサに、やっとで到着します。エンタープライズの速度が遅いことも考慮されているのでしょうか? 各クルーの様子が淡々と描かれ、ちょっとした事件は起こりますが、そのまま終わります。あまりにも典型的でしたが、タッカー&リードのコンビが笑えたことが良かったぐらいでしょうか。


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