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エンタープライズ エピソードガイド
第53話「トレリウムD」
The Xindi

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・イントロダクション
※1※2窓が赤く光る、薄暗い大部屋。
話す男※3。「単なる偶然という可能性もある。」
いかめしい服を着た人物※4。「いいやお前は甘すぎる。連中の惑星はここから 50光年先だ。偶然では決してありえない。」
男:「連絡員の情報が正確だという保証がどこにある。」
大きな複眼をもった、虫のような種族※5がいる。「(地球からの侵略が始まった。次は大艦隊が来るぞ)」 独特な金切り声だが、周りの者は理解している。
男:「偵察機で攻撃したのが我々とわかるはずがない。」 額にうねりは見えるが、人間型だ。
もう一人の昆虫型種族。「(あの船を撃墜すべきだ)」
いかめしい服の者は、顔が鱗に覆われている。「地球船の乗員は何人だ。」
その隣の昆虫型異星人は、鱗の男を叩いた。「(関係ない。新兵器を守るため…皆殺しだ)」
うなずく鱗の男。
毛に覆われた種族※6もいる。「兵器の完成はいつだ。」
初めて口を開く人間型種族の男※7。「次のテストの準備をしているところだ。」
鱗の異星人※8はもう一人いる。「テストを繰り返しているばかりでは、いつまで経っても攻撃に出られないぞ。」
毛長型:「ここで焦りは禁物だ。全会一致で決まった計画に従うべきだ。」
巨大な水槽に入っているイルカのような生命体も、一員らしい。「(我々の未来が、かかっている。評議会を分断してはならん)」 高い声が響く。
人間型1:「この地球船について徹底的に調べ上げてくれ。」
声を上げる、2人目の鱗種族。


※1: このエピソードは、第3シーズン・プレミアです。前話 "The Expanse" 「帰還なき旅」がクリフハンガーだったため、あらすじが挿入されます

※2: 前話の内容を含めた小説が、本国では出版されています (Amazon.com / スカイソフト / Amazon.co.jp)

※3: 人間ズィンディ Xindi-Humanoid
(タッカー・スモールウッド Tucker Smallwood VOY第98話 "In the Flesh" 「偽造された地球」のブロック提督 (Admiral Bullock) 役) 後にも登場。本文中では「人間ズィンディ1」としています。声:竹田雅則

※4: 爬虫ズィンディ Xindi-Reptilian
(スコット・マクドナルド Scott MacDonald TNG第140話 "Face of the Enemy" 「ロミュラン帝国亡命作戦」のネヴェック副司令官 (Sub-Commander N'vek)、DS9第6話 "Captive Pursuit" 「ワーム・ホールから来たエイリアン」のトスク (Tosk)、第76話 "Hippocratic Oath" 「苦悩するジェム・ハダー」のゴランアガール (Goran'Agar)、VOY パイロット版 "Caretaker, Part I and II" 「遥かなる地球へ」のロリンズ少尉 (Ensign Rollins) 役) 声:白熊寛嗣

※5: CGI。セットでは黒いスーツを着た代役が演じ、そこに後からデジタル処理されています

※6: 毛長ズィンディ Xindi-Arboreal
(リック・ワーシー Rick Worthy DS9第119話 "Soldiers of the Empire" 「我らクリンゴン」のコーナン (Kornan)、VOY第29話 "Prototype" 「ユニット3947」の自動パーソナルユニット3947/クラヴィック司令官122 (Automated Personnel Unit 3947/Cravic Commander 122)、第120・121話 "Equinox, Part I and II" 「異空生命体を呼ぶ者達(前後編)」のノア・レッシング乗組員 (Crewman Noah Lessing)、映画第9作 "Star Trek: Insurrection" 「スター・トレック 叛乱」のエローラ人士官その1 (Elloran officer #1) 役。ゲーム "Klingon" でも声の出演) 後にも登場。初期のクレジットでは「ナマケモノ・ズィンディ (Xindi-Sloth)」で、Arboreal には「樹木の、樹上性の」という意味があります。「毛長」という表現は、スーパーチャンネルで放送された「Index Premium」から。声:田中英樹

※7: 名前は Degra (ランディ・オグルスビー Randy Oglesby TNG第31話 "Loud as a Whisper" 「無言の調停者」の学者 (Scholar)、DS9第12話 "Vortex" 「エイリアン殺人事件」のアー・ケル/ロー・ケル (Ah-Kel/Ro-Kel)、第109話 "The Darkness and the Light" 「一人、また一人、そして…」のシララン・プリン (Silaran Prin)、VOY第104話 "Counterpoint" 「偽りの亡命者」のキア (Kir)、ENT第5話 "Unexpected" 「予期せぬ亡命者」のトレナル (Trena'L) 役) ですが、言及されていません。後にも登場。本文中では「人間ズィンディ2」としています。声:木村雅史

※8: こちらはエキストラのようです。声は Kessick 役の青山さんが兼任?

・本編
※9ワープ航行中のエンタープライズ。
部屋に入るアーチャー。「到着時間は。」
トゥポル:「3時間後です。」 赤い服※10を着ている。
リード:「その貨物船長は、誰に会うよう言ったんです?」
アーチャー:「北の鉱山の鉱山長だ。行くのを待ってる。」
トゥポル:「作業員にズィンディ人がいると、なぜわかったんです。」
「確かじゃない。貨物船長が以前運んだ作業員が、ズィンディらしいというだけだ。」
リード:「軌道に入って安全なんですか? 保安面での保障はあるんですか?」
「それは聞いていない。」 大きな壁面モニターを見るアーチャー。
「差し出がましいようですが、慎重を期すべきです。胡散臭い奴だ、その貨物船長は。」
「ここはどこだ?」
「…は?」
「この部屋は前何だった。」
「ああ、倉庫室です。コンジットを収容してた。」
「だが今は違う。艦隊が苦労して新しく司令センター※11に改造したんだ。なぜだマルコム。」
「任務を果たすためです。」
「ズィンディを探すためだ。」
「はい。」
「パズルのあらゆるピースを集めるため、ここには最新鋭の機器が装備されている。地球を襲った者の、正体を知るためだ。」 司令センターには、たくさんのモニターが並んでいる。
「はい。」
「6週間だ。デルフィック領域に来て 6週間になる。情報が得られたか? パズルのピースを見つけはめることができたか。何の情報もなしだ! 安全を考えて行動している余裕は、我々にはもうないんだ。」
うなずくリード。
アーチャー:「胡散臭い貨物船長の話でも、これが今あるたった一つの手がかりだ! 真偽を確かめに行く。わかったか?」 出ていった。
トゥポルを見たリード。「わかりました。」

皿を持ってきたサトウ※12。「ここ、いいですか?」
テーブルにいた男性は、みな立ち上がった。「どうぞ。」
サトウ:「ホシ・サトウです。」
「少尉、ブリッジ士官の名前はもうみんな知ってます。私はヘイズ少佐※13。ケンパー軍曹※14に、ロメロ伍長※15に、チャン伍長※16です。」
「軍事攻撃隊ね?」
ヘイズ:「最強の部隊ですよ。」 軍事攻撃指令作戦部隊 (MACO) ※17の面々は、宇宙艦隊とは違う制服だ。
「もう宇宙酔いもないようですね。」 笑う一同。
ケンパー:「まだ毎朝医療室に通ってるのもいますよ。」
ロメロ:「薬のおかげで助かってます。」
サトウ:「軍曹、ドクターには慣れました? ミネソタのデルース※18じゃあまりデノビュラ人は見ないでしょ。」
ケンパー:「勤務地はアトランタでした。デノビュラ人じゃありませんが異星人はいましたよ。…記録を随分調べられたんですね、ミネソタにいたのは中学までなのに。」
「引っ越したのは随分前でも、しゃべり方にはミネソタが残ってるわ?」
ヘイズ:「おお。」
笑うロメロ。
ケンパー:「しゃべり方?」
ヘイズ:「サトウ少尉は言語学者なんだ。もうちょっとしゃべれば何番地に住んでたかまで当てられるぞ?」
チャン:「いま船はどこへ向かってるんです。」
サトウ:「いずれ船長が知らせてくださると思うわ。」
ヘイズ:「…早いといいですがね。ズィンディって奴らが見つかれば、我々の出番がくる。…もうすぐブリーフィングなんで、失礼します。」
4人は立ち上がった。浮かない顔をするサトウ。

廊下を歩くアーチャー。「第2 だけか。」
タッカー:「そうです。第1・第3貨物室は正常です。」
「いつからなんだ。」
「10分ほど前ですね。マクファーレン少尉※19はかなりの打撲傷ですが、無事です。」
「重力プレートの故障じゃないんだな?」
「とにかく見て下さい、重力プレートじゃない。」 ドアを開けるタッカー。
第2貨物室の壁の一面だけに、全ての貨物が引っ付いていた。
タッカー:「…気をつけて。近づかない方がいい。……すぐ始まりますから。」
異音が響いてきた。床が揺れる。
すると、貨物が壁から離れだした。今度は逆側の壁に全てが移動する。
アーチャー:「ほんとだな。重力プレートじゃなさそうだ。あの中に、揮発性物質が入ったコンテナは。」
タッカー:「…あったらもう爆発してますよ。」
「ここを封鎖しろ。前におきた異常現象ほど、長続きしないといいがな?」
また音がした。元の場所に戻る貨物。
ため息をつくタッカー。

顕微鏡を使うフロックス。医療室に来たトゥポルに言う。「ああ。これを見て下さい。皮膚の色は思ったより、ずっとカラフルなようですよ?」
トゥポル:「何なんです?」
「ああ、ズィンディです。壊れた偵察機で見つかった死体の上皮組織の細胞ですよ。」
「鱗のように見えますね。」
「その通り。生理機能の検査を終えればはっきりしますが、恐らく爬虫類の…特徴が見られるでしょう。」
「…私に用というのは。」
「ああ、ご兄弟はいますか。」
「いえ。」
「タッカー少佐は妹がいて、あの攻撃で亡くなった。」
「それは聞いています。」
「妹の死を乗り越えられないでいます。」
「無理もないですね。」
「具体的に言うと、不眠症になっています。睡眠薬を処方していますが続けるのは良くない。」
「…なぜ私に話すんです?」
「少佐に、ヴァルカンの神経マッサージ※20をしていただけないかと思いましてね?」
「…少佐は落ち着きがありません。第一段階の間じっと座っているのも無理でしょうね。」
「きめ細かく指導していただければ…」
「『きめ細かさ』が通用する相手だと思いますか? …それに神経マッサージの指導は、通常…親しい相手に限られます。」
「少佐は家族を亡くしたんです。力を貸して?」
「……部屋へ来させて下さい。」
「一つその…」 笑うフロックス。「問題がありまして。あなたはきっと承諾して下さると思い、少佐には既に話はしたんですが…あまり、効果を信じていないようでして。」
「じゃあどうしろと。」
「部屋へは行かせますので神経マッサージの素晴らしい効き目を、ぜひ少佐に説明してやって下さい。」
ため息をつくトゥポル。

エンタープライズは、惑星に到着した。

降下するシャトルポッド。施設を含め、一面が青色だ。
巨大な風車のそばを通る。

シャトルを出たリードは、寒冷地用の制服を着ている。「宇宙服を着るべきでしたね。」
アーチャー:「短時間の滞在なら、安全なはずだ。」
笑うリード。「安全? これで安全ですか? 息もで…」 咳き込む。
肩を叩くアーチャー。「息を止めてろ。」
リード:「…そうですね。」
アーチャーはドアを開ける。

機械が稼働し、蒸気が上がっている。階段を下りてくるアーチャーとリード。
マスクをつけた異星人たちが、ライトを向けた。
アーチャー:「エンタープライズ※21船長、アーチャーだ。鉱山長に…」
護衛長※22:「ついてこい。」

違う種族の異星人が、怯えながら通り過ぎる。洞窟を進む一行。

廊下に来た。護衛がいる部屋の中に入るアーチャーたち。
鍵がかけられた。
機械の前にいる男。「アーチャーか…。」
アーチャー:「ジョナサン・アーチャーと、リード大尉だ。」
鉱山長※23:「貨物船長の話じゃ、俺の手間に見合うだけの礼を…してくれるそうだが…どうなんだ。」 皮膚は湿っている。
「…『見合う』礼が何なのかによるな。」
「ああ、俺はプラチナが好きでな。昔から。中でも液体プラチナが一番いい。」
「…残念ながら船に貴金属は積んでいない。」
「うーん。くそう。」
「…何かほかの物を考えよう。」
マスクから空気を吸った鉱山長。「ズィンディだろうが何だろうが関係ない、うちの作業員だ! 仕事の邪魔は許さん。」 またマスクをつける。
小声で話すアーチャー。「反物質リレーは確か…」
リード:「ええ、内張がプラチナとコバルトの合金です。トリップにプラチナを分離してもらうことは可能です。」
アーチャーは進み出た。「どれぐらいの量を欲しいんだ。」
鉱山長:「俺も、そう無茶は言わん。…まあそうだな、じゃあ半リッターだ。」
リードを見たアーチャー。「その作業員に会わせろ。スキャンして、ズィンディか確かめたい。」
咳き込み、戸棚を開ける鉱山長。「それならこれで済む。」
小さな布きれを投げた。開くアーチャー。
一本の指が入っていた。血も付いている。
2人の反応を見て笑う鉱山長。
アーチャー:「なぜこんなことを。」
鉱山長:「ちょっと事故があってな。…また明日来てもらおうか。」 管を叩く。「じゃあな…。」
ドアが開いた。出ていくアーチャーたち。

木が立ち並ぶ。椅子とテーブル。
幼い男の子がいる。目線の先には、テーブルにいる少女。
少年:「エリザベス!」
エリザベスは気づいていない。
タッカー※24:「早くそこから逃げるんだ!」
振り向くエリザベスは、成長している。
大人のタッカーの声になった。「エリザベス! 頼む、逃げてくれ!」 服装は同じだ。
タッカーに笑いかけるエリザベス。
必死に叫ぶタッカーだが、声が出ていない。
聞こえないという素振りをするエリザベス。その奥に、空から巨大な光線が迫っているのが見える。
あらゆる物を焼き尽くし、炎が広がる。呆然とするタッカー。
ついに炎が間近に来た。髪が乱れ、やっとで気づくエリザベス。

タッカーは飛び起きた。汗をかいている。


※9: 第3シーズンから、オープニングの歌が軽快な編曲版に変更されています。また、今まで単に "ENTERPRISE" だったタイトルにも "STAR TREK" が追加されました (邦題は元から「スタートレック」つきでしたが)。本国の初放送時では実際にタイトルが変更されたのは数話後でしたが、再放送や海外配給では初めから変わっているものと思われます

※10: 設定的には前話 "The Expanse" でヴァルカン最高司令部を辞職したので、今までの制服を着る必要がなくなったものと考えられます。青い服も後で登場

※11: Command Center
初登場

※12: 第3シーズンより、サトウの声優が以前の岡寛恵さんから弓場沙織さんに変更されました。レギュラーが変更されるのは、製作に間の開いた DS9 第6シーズン時のベシアとジェイク以来

※13: Major Hayes
(スティーヴン・カルプ Steven Culp 映画第10作 "Star Trek Nemesis" 「ネメシス/S.T.X」のマーティン・マッデン (Martin Madden) 役 (ただし出演シーンはカットされ、DVD に特典として収録)。このシーズンに、「犯罪捜査官ネイビーファイル」、「ザ・ホワイトハウス」、「ER 緊急救命室」でもサブレギュラーを演じました) 後にも登場。声:斉藤次郎

※14: Sergeant Kemper
(ネイサン・アンダーソン Nathan Anderson VOY第72話 "Nemesis" 「ヴォリ防衛隊第4分隊」のネイモン (Namon) 役) 後にも登場

※15: Corporal Romero
(マルコ・サンチェス Marco Sanchez)

※16: Corporal Chang
(ダニエル・デイ・キム Daniel Dae Kim VOY第132話 "Blink of an Eye" 「超進化惑星の煌き」のゴタナ・レッズ (Gotana-Retz) 役) 後にも登場。声:森田順平?、VOY ヴォーラック、ENT 未来の人物。なお森田さんが起用されているのは、あらすじ部分で未来の人物が登場しているため、その兼任かもしれません。第3シーズンから製作会社が変わったせいもあって、あらすじ部分の音声も再度取り直している可能性があります (ちなみにあらすじ部分のフォレスト提督に関しては、金尾哲夫さんではなくて鉱山長役の廣田さんが兼任しているようですが…?)

※17: Military Assault Command Operation
略して MACO、メイコーと発音。直前のサトウのセリフでは、"Military Assault Command" のみ。略称も言及されていませんが、左肩に MACO の文字が入ったエンブレムがついています。ほかに呼称らしい呼称もないため、本文中では MACO で統一しています。なお彼らの階級についてですが、ヘイズは日本語では少佐とはいえ Major であり、その他の部下も現代のアメリカ陸軍・海兵隊式になっています (宇宙艦隊は海軍式)

※18: ダルース Duluth

※19: Ensign McFarlane
原語では「彼」と言っているので男

※20: Vulcan neuro-pressure

※21: 吹き替えでは「エンタープライズ

※22: 異星人護衛長 Alien Head Guard
(Chris Freeman) 声:山路和弘?、DS9 キーヴァン、VOY スーダー、ENT ソヴァルなど。ここのセリフのみ、山路さんではないようにも聞こえますが…。なお山路さんもあらすじ部分でソヴァル大使が登場しているため、その兼任かもしれません (脚注※16 のチャン参照)

※22: 異星人鉱山長 Alien Foreman
(スティーヴン・マクハティ Stephen McHattie DS9第143話 "In the Pale Moonlight" 「消された偽造作戦」のヴリーナック (Vreenak) 役) 声:廣田行生?、ENT デュラス、STN 副長官など

※23: 幼いトリップ Young Trip
(Adam Taylor Gordon ENT第62話 "Similitude" 「ライサリア砂漠幼虫」の 8歳のシム・トリップ (Sim-Trip at 8) 役) この個所はパラマウント劇場でのロケ撮影

医療室に置かれている指。
フロックス:「血液サンプルで十分でした。唾液でも。」
アーチャー:「ズィンディか。」
「…イエスで、ノーです。」
「もっとわかりやすく言ってもらいたいね、ドクター?」
「遺伝的特徴は地球で見つかった死体の組織サンプルとほぼ一致します。塩基配列の違いで言えば? 人間と…チンパンジーより近いのです。ほぼ一致してはいますが? 同じではない。」
「ヒトとネアンデルタール人のように?」
「うーん、その例えが近い。フーン。死体の方の組織分析は全て終了しました。そのデータから、全身像を再構成したのがこれになります。」 鱗をもち、額がうねった異星人の図が映し出される。「ヒューマノイドですが? 爬虫類型です。しかしあの指は、違います。我々の指と同じに皮膚で覆われています。それでもズィンディなのです。あまりお役に立てずにすみません。」
ため息をつくアーチャー。
タッカーが来た。「船長。」
アーチャー:「順調か。」
「液体プラチナ半リッターだと、200近くのリレーを引っぱがすことになりそうですが…午後には、用意できます。」
「できたら、知らせてくれ。」 出ていく前に尋ねるアーチャー。「大丈夫か?」
「…平気です。」 ため息をつくタッカー。「薬が効かない。もっと強いのくれないか。」
フロックス:「それでは、22時頃にまた来て下さい。用意しておきます。」
「悪いな。」

明るくなった鉱山。
鉱山長のオフィスで、ケースを開けるタッカー。「揮発性だ。30度以下に保ってくれ。」
鉱山長:「液体プラチナの性質ならよーく知ってるとも。」
「容器は断熱材入りだ。ここに入れとけば、問題はない。」
容器を取り上げるアーチャー。「…希望の量より多くしておいた。」
鉱山長:「ああ、それでズィンディに一体…どんな用事があるんだ。事故の後手術して、あまり見栄えがよろしくないんだがな。」
「その男に聞きたいことがある。」
「聞きたいことってのは?」
「望みの物は用意しただろう! ズィンディに会わせてもらおうか。」
鉱山長はコンピューターを操作した。「奴の作業班は起床時間が一時間後なんだ。」
アーチャー:「…部下が 6人何時間もかけてこのプラチナを抽出したんだ。一時間早くても起こしてもらおうか。」
容器に手を伸ばす鉱山長。「あ…ああ…。」

咳をしながら、アーチャーたちを案内する鉱山長。洞窟には様々な種の異星人がいる。

洞窟を掘って作られた部屋に入る鉱山長。
タッカー:「採掘はトレリウムD※24 だけなのか?」
鉱山長:「ああそうだな。トレリウムD だけだ。」
「聞いたことがないが、何に使うんだ。」
「断熱材だよ。大抵は恒星間宇宙船に使う。…あんたの船は断熱材に何を使ってるんだ?」
アーチャー:「船は、デュラニウムで覆われている。」
「船にはクルーがさぞかし大勢いるんだろうなあ。」
「何でそんなこと聞くんだ。」
男が無理矢理連れてこられる。倒された。
怯える男は、顔に布を巻いている。
手を出す鉱山長。うなずくアーチャー。
鉱山長はタッカーから受け取ったケースを抱きしめた。「ゆっくりやってくれ。」 部下と共に出ていく。
※25:「…あんたらのおかげで、このザマだ。」 なくなった指を見せる。
アーチャー:「それは事故と聞いてる。」
「フン、だろうな。何の用だ。」
「ズィンディか。」
「指は一本減ったがな。だったら何の用だ!」
「母星はどこにある。」
ズィンディ:「こんなひどい星にわざわざやってきて、鉱山長に賄賂まで渡して、俺の星がどこか? とてもじゃないが、信用できないな。」
「君の種族に重大な用がある。」
「…場所も知らないのにか。」 ズィンディは布を取る。わずかに額にうねりはあるが、人間タイプだ。「情報が欲しいなら、あんたらにはここから逃げるのを手伝ってもらわないとな。」
「逃げるってどういうことだ。」
「ヘ、ここへ就職しに来たと思うのか。みんな拉致された、奴隷だよ!」
「…我々は君の星の座標が知りたい! ただそれだけだ。謝礼の用意はある。」
「いま俺が欲しいのは自由だけなんだよ。嫌なら時間の無駄だね、さっさと消え失せろ!」
タッカーはズィンディにつかみかかった。「ここでどんな目に遭ってようが、知らないし知りたくもない! 脱走の御膳立てなんぞする気はない。座標を教えろ、そうすりゃお互い時間を無駄にせずに済む…」
ズィンディ:「この星を出るまでしゃべらない!」
「そうか! 何ならここで、しゃべるまで蹴り倒してやるか!」
アーチャー:「トリップ…落ち着け。」 呼び出しに隅で応える。「アーチャーだ。」
トゥポル:『船長。戦艦が 3隻、こちらへ接近中です。船体の素材は、鉱山のタワーのものと一致します。』 青い服だ。
「到着まで時間は。」

メイウェザー:「2時間ですね。」
アーチャー:『戦術警報だ。我々はシャトルへ戻る。』
トゥポル:「…了解。」

ズィンディ:「シャトル? 軌道に母船がいるのか! 奴らの思う壺じゃないか! 普通は遠出して船を襲い、作業員を補充するんだ!」
開かないドアを叩くアーチャー。
ズィンディ:「連中の罠にはまったらしいな!」 笑う。
アーチャー:「アーチャーよりエンタープライズ。」 応答はなく、ノイズだけだ。「…エンタープライズ、応答を。」
「仲間が助けに来ると思ってるかもしれないが、その御仲間もすぐ身を守るので手一杯になる! シャトルのある地表まで案内してもいい、だが俺も一緒に連れてってくれ!」

報告するサトウ。「音声メッセージ着信。鉱山長です。」
トゥポル:「こちらエンタープライズです。」
鉱山長:『おたくの船長と御仲間のお帰りは…悪いが少々遅くなるな。貨物船が 3隻入港する予定で…これから着陸デッキのイオン除去を始めなきゃならないんでね。』 通信機に話している。
「いつまでかかります?」

鉱山長:「一時間で終わる。」

トゥポル:「貨物船は感知しています。重装備のようですね。」

鉱山長:「トレリウムD は、かなり貴重な物質なんでね。…それに気づいただろうが、この辺りの連中はあまり友好的じゃないからな。」

トゥポル:「船長と、話せますか。」

鉱山長:「まあ、今は無理だな。地下 22階にいる、うちの作業員と話をしてるとこだよ。」

トゥポル:「ついさっき話したところですが。」
鉱山長:『イオン除去をしている間は、地下の下層階と通信不能になるんでね。…船長が戻ってき次第、連絡するように伝えよう。』 通信機を離した。
「…船長を呼び続けて。」
リード:「どうも怪しいですねえ。」
「船長とタッカー少佐の、救出計画を立ててちょうだい。一時間以内に用意を。…ヘイズ少佐も手伝わせて。」
一瞬立ち止まるリード。

汚れた液体の中を、腰まで浸かりながら歩くアーチャー。「10種類以上の種族が集まってる場所じゃ、下水もかなり強烈だなあ。」
ズィンディ:「正確には 31 だ。」
「ああ。」
「ああ、手を貸してくれ。」 円形のハッチがある。「…膝の下辺りに、レバーがあるはずだ。引き上げろ。」
液体が口に入りそうになりながらも、しゃがむタッカー。
ハッチが開いた。
ズィンディ:「プラズマダクト13 だ、もうずっと使われてない。」 備えつけられている棒を使う。
タッカー:「何でハッチがあるんだ。」
「8階ごとに、ハッチがあるんだよ!」
アーチャー:「何をしてる。」
「非常用バッフルを、開けてるのさ。その上だ。使わないときには、この鋼鉄の板を閉めることになってるんだ。」 棒を戻し、はしごへ向かうズィンディ。「ついてこい。」
続くアーチャーとタッカー。

兵器室に入るトゥポル。
ヘイズが話していた。「鉱山に近すぎるんじゃないかなあ。」
リード:「脱出の時、シャトルが近い方がいい。大丈夫だ。…船長と連絡は。」
トゥポル:「まだです。鉱山長も呼びかけに応えないわ。」
「…戦艦は。」
「一時間以内の距離よ。準備はいい?」
「地下の警備は厳重ですが、救助できます。ただ一つ意見の相違があり、ヘイズ少佐は船の保安チームに何かあっては大変だから、救助には彼の部下と行きたいと言い張る。」
ヘイズ:「単に優先順位の問題だ。救助班が戻る前に戦艦が来た場合、連中が船に乗り込んでくる可能性がある。船内を知り尽くしている保安チームが船に残る方が合理的だ!」
「戦艦が到着するずっと前に、船長とトリップを救って船に戻る計画だ。」
「こう言ってはなんだが※26、そうできるという保証はない。」
トゥポル:「…決断は大尉に任せますが、少佐に賛成ですね。遅れる可能性もあります。」
リード:「…少佐の部下 6名を連れ、第1出発ベイへ。作戦の指揮は私が執る。」
ヘイズ:「了解した。」 出ていく。
「私のうちは軍人一家だ。ヘイズのような男を散々見てきた。」
トゥポル:「大尉?」
「あれはどっちのメンバーが船内の状況に詳しいかなんて問題じゃない。少佐はうちの保安チームでは、船長の救出は無理だと思ってるんですよ。」 リードはフェイズ銃を持っていった。


※24: trellium D

※25: 名前は Kessick (リチャード・ラインバック Richard Lineback TNG第22話 "Symbiosis" 「禁断の秘薬」のロマス (Romas)、DS9第8話 "Dax" 「共生結合体生物“ダックス”」のセリン・ピアーズ (Selin Peers) 役) ですが、言及されていません。声:青山穣?、VOY トゥヴォックなど

※26: MACO の序列に関しては少尉のサトウですら "Ma'am." と呼んで席を立つ行動を取り、このシーンでヘイズは大尉のリードを複数回 "sir" と呼び、さらに決定権はリードにあることが明示されています。このエピソードから推察する限り (少なくともエンタープライズの中では) MACO は宇宙艦隊クルーの下という扱いだと思われます。また、そもそも所属するのはどういう組織なのかは不明です。23世紀には宇宙艦隊の制服でありながら Colonel と呼ばれる人物も登場し (映画 ST6 "The Undiscovered Country" 「未知の世界」のウェスト大佐)、24世紀には特殊な黒い制服を着た人員もいました (DS9第102話 "Nor the Battle to the Strong" 「戦う勇気」など)。海軍に対する海兵隊のような組織かもしれませんが、一般には「宇宙艦隊海兵隊 (Starfleet Marines Corps)」といった設定は受け入れられていないようです

鉱山長のオフィスに入る、護衛長。「逃げました、3人ともです。」
鉱山長:「逃げられっこない。」
「周辺は調べましたがどこにもいません。」
「…奴らのシャトルに見張りをつけろ。母船に戻られでもしたら、作業員 100人近くを損するぞ。」

遥か縦に続く通路。はしごは既にない。
隙間に手を伸ばし登っていく、ズィンディ。
後ろに続くアーチャー。「ここから出られるなら…なぜ前に逃げなかった。」
ズィンディ:「地表の空気は、地下の少なくとも 30倍は有害だ。…うろついてたら死んじまう。上で船が待っててくれるなんてありがたいことは、初めてなんでね…。」 足を振る。
落ちてきた青い物質が、一番後ろのタッカーの顔にかかった。「何だ…」 振り払う。既に髪も汚れきっている。

出発するシャトルポッド。
銃を用意する MACO。女性もいる。
リード:「地下下層部はイオン粒子で飽和状態になってる。生体反応は 100メートル以内でしかキャッチできない。」
操縦するメイウェザー。「それに、時間は 30分もありません。」

図面を指さす鉱山長。「ダクト13 だ。非常用バッフルを 2つも開けたらしいな。」 3つの生体反応が見える。
護衛長:「もうすぐ地上に出てしまう。あのシャトルを破壊しましょう。」
「いいや、あれは貴重だ。…あの使ってないダクトにプラズマを流すのに…どのぐらい時間がかかる。」
「すぐに手配します。」

必死に登り続けるズィンディ。「星の場所を聞くために、命懸けで来たのは…大事な用があるからだとかって言ってたが、どの種族にだ。…俺以外のズィンディに会ったことがあるのか?」
アーチャー:「一人な。…君とはあまり似てなかった。」
「ああ、そうだろうな。ズィンディには、全く違う 5つの種族※27がある。みんな、自分の種族が星を支配してると思ってる!」
下の方で音が聞こえた。
タッカー:「今の音は。」
また繰り返される。
アーチャー:「奴ら非常用バッフルを開けてるんじゃないか?」
タッカー:「でも何で開けるんです、逃げやすいけど…」
さらに大きな音が響いた。地鳴りのように聞こえる。
アーチャー:「…ダクトは使われてないんじゃないのか?」
ズィンディ:「そうだった、プラズマを流して俺たちを殺す気だ!」
「…次のメンテハッチは何階上だ! …何階だ!」
「知らないよ!」
タッカー:「前のハッチへ戻る方が、安全だと思います。」
アーチャー:「…賛成だ。」
ズィンディ:「プラズマは下から迫ってきてる! 上しかない!」
「好きにしろ!」 降りていくアーチャー。
「もう手遅れだ、みんな死ぬ!」
タッカー:「黙れ、いいから黙ってろ!」
下へ向かうズィンディ。
明るくなってきた。遥か下に、赤い光が見える。
アーチャー:「急いだ方がよさそうだぞ?」
滑り落ちるようにしながら、急ぐ 3人。
横側に開いているメンテナンスハッチに入るアーチャー。
スピードがついてしまったズィンディは、タッカーにぶつかるようにして止まる。
2人が組み合ったため、なかなか中に入れない。
タッカー:「…ちょっと待て!」
ズィンディ:「邪魔だ、どけー!」
「やめろー!」
プラズマの炎が迫ってくる。
何とか中に入ったタッカー。ハッチを閉めるアーチャー。
その直後、プラズマが通り過ぎていった。
噴き出していく。
倒れていたタッカー。「いい加減にしろ、このバカ野郎! もう一度そのハッチを開けてダクトに突き落としてやろうか!」
驚くズィンディの顔が、ライトで照らされている。
振り向くタッカー。護衛たちが先回りしていた。
ズィンディ:「無理矢理連れ出されたんだ。…一緒に逃げなきゃ、殺すって言われて。今だってこいつ、プラズマに突き落とすって脅してたろ? 道を教えたから用なしだ、助かったよ! ありがとう。あんたらが来てくれなかったら今頃俺…」 銃で殴られ、意識を失った。
護衛長:「担げ。」

ズィンディを運ばされるアーチャーたち。
洞窟の広間で鉱山長が待っていた。「船長のお前も乗組員とまとめて一緒に、新しい作業員に加えたかった。だが、役に立つよりも…トラブルの方が多そうだ。…こいつら地表へ…」 手を臭う。「連れて行くんだ。3人とも銃殺だ。」
その時、背後から何者かがロープを使って降りてきた。護衛たちに銃を浴びせる。
隠れる鉱山長。MACO は次々と続く。
反撃する護衛長に、タッカーは飛びかかった。銃で殴り、気を失わせる。
鉱山長は逃げる。アーチャーも銃を奪い、倒れた護衛の頭を蹴った。
他の護衛を撃つ。護衛は次々出てくるが、的確に撃っていく MACO。
隠れるズィンディ。ケンパーが撃たれたが、アーチャーが相手を倒した。「無事か。」
ケンパー:「はい。」
ヘイズは護衛を殴り倒し、隣の MACO も首をへし折った。
後ろから殴られる女性の MACO。だがトンファのような棒で足を狙う。
投げ飛ばし、護衛長の身体に棒を突き立てた。電流が流れる。
タッカーを狙っている者がいる。だが先に撃たれ、倒れた。
驚くタッカーの前に、MACO が出てくる。
タッカー:「ナイスショット。」
洞窟が揺れた。
降りてくるリード。「船長。手間取りましたが、外のハッチを破りました。」
何気なく向かおうとするズィンディを止めるアーチャー。「おい、どこへ行く気だ!」
ズィンディ:「連れて行くと約束したろう!」
銃を向けるタッカー。「俺たちを売り渡す前のことだ。」
ズィンディ:「待て、頼む! 連れてってくれえ!」
アーチャー:「チャンスはやった!」
「俺の星の座標はいいのか! 一緒に連れてってくれれば、教えるよ。」
武器を突きつけるアーチャー。「嘘だ。」
ズィンディ:「違う。約束するよ。」
上り出すアーチャー。ズィンディもついていく。
MACO やリードが続く。

シャトルポッドがある地表へ出てきた。
リード:「トラヴィス。」
メイウェザー:『どうぞ。』
「救出した。私の位置を目指し、迎えに来い。」
『了解。』
背後から銃撃。構える MACO。
相手の姿は見えない。ズィンディが撃たれてしまった。
ヘイズ:「援護を!」
MACO のライアン※28。「よし!」 シャトルポッドを抜け、奥へ向かう。
銃を構えるライアン。スコープが出てくる。
倍率が次々に上がる。撃っているのは鉱山長だ。
ライアンは発射した。一発で頭に当たり、鉱山長は倒れた。
収められるスコープ。
もう一隻のシャトルがやってきた。
タッカー:「船長。」 ズィンディを見る。
アーチャーと共に運んだ。

報告するサトウ。「シャトル 2機、離陸しました。」
トゥポル:「全員乗っているの。」
「一名多いようです。」
「…戦艦は。」
「ワープ4 で接近中。7分後に到着予定です。」
「シャトルは、2機同時に収容して。最大ワープの準備を。」

鉱山惑星を離れるエンタープライズ。 すぐにワープに入った。


※27: つまりアーチャーたちが把握している爬虫類族、人間族のほか、評議会のシーンで登場した毛長族、昆虫族、水棲族のこと。以後、爬虫ズィンディ (Xindi-Reptilians)、人間ズィンディ (Xindi-Humanoids)、毛長ズィンディ (Xindi-Arboreals または Xindi-Sloths)、昆虫ズィンディ (Xindi-Insectoids)、水棲ズィンディ (Xindi-Aquatics) と表記します (収まりがいいので)

※28: Ryan
エキストラ。名前は訳出されていません

『航星日誌、補足。3隻の戦艦が一時間近く追ってきたが、我々は振り切った。鉱山の新しい「作業員」は、よそで探すしかないだろう。』
作戦室。
ドアチャイムに応えるアーチャー。「入れ。」
パッドを持ってきたフロックス。「…手の施しようがありませんでした。ズィンディの協力が欠かせない状況ですのに。」
アーチャー:「あの男はどのみち、協力的じゃなかった。」
「それなんですが。痛みで口を聞くのも困難な状況でしたが、息を引き取る前にこれだけしゃべってくれました。見せればわかると言っていましたが。」
「驚いたな。…母星の座標だ。」

廊下。
シャツ姿のタッカー。「2時間もシャワーを浴びたのに、髪の毛や爪の間にまだ残ってる。」
リード:「バイオスキャンは問題なし。それで十分です。」
「ああ。怪我した新入り 2人、大丈夫か?」
「ドクターがもう自室に戻したようです。」
「軍人チームがよくやったのは、認めざるを得ない。…ま、保安チームでも同じだったろうがな。」
「ああ、それはどうでしょうかね。それじゃ明日。」
「ああ。」

医療室に入るタッカー。
フロックス:「ああ、気分はどうです少佐。」
タッカー:「疲れた。睡眠薬くれるって言ったよな。」
「あ、そうでしたね。」 咳払いし、ハイポスプレーを打つフロックス。「一つ、頼まれてはくれませんかトゥポルに…バイオスキャンの結果を届けると約束したんですが、まだまだほかの仕事がありましてねえ。」
「ああ、いいよ。…ありがとう。」 出ていくタッカー。
フロックスは通信機に触れた。「医療室よりトゥポルへ。」
トゥポル:『何です。』
「タッカー少佐が今向かっています。睡眠薬を打ったことになっていますが、ただの栄養剤※29です。…今日は何かと、大変な日だった。あなたのテクニックが、役立つでしょう。フン。」

ドアチャイムが鳴る。寝間着を羽織り、ドアを開けるトゥポル。
タッカー:「こんな遅い時間に悪いんだが、フロックスにこれ頼まれたんだ。」
トゥポル:「ありがとう、どうぞ座って?」
「あいやあクタクタで話し相手にもなれないし、それにトレリウムD 落とすのに後 2、3回…シャワーを浴びないとね。」
「お茶でも飲まない?」
「嬉しいけど、眠れないと困る。睡眠薬を打ってもらったところだ。」
「あなたも眠れないんですか。」 座るトゥポル。
「副司令官が不眠症とは思わなかった。」
「…この領域に来てから、私のレムパターンが乱れたようです。」
「…ハイポスプレー一本打ってもらったら?」
「…ヴァルカンでは、身体刺激で自然治癒力を高めるんです。」
「じゃあ、それやれば眠れるんじゃないのか?」
「不眠に効く神経節に、自分では手が届かないんです。」
「ふーん…。」
「手伝ってもらえませんか。」 トゥポルは上着を脱いだ。
「いやあ、俺よくわからないし。」
「第5頸椎の、両側 3センチの辺りです。」
「…じゃあ…。」 タッカーは後ろに座り、トゥポルの背中に手を入れる。
「もっと強く押して構いません。」 下着も脱いでいくトゥポル。
「え。…どこなのか、よく…」
「そこです。」
「…ここ?」
「もう少し内側。…もっと強く。」 トゥポルは胸を隠している。「もっと。」
冗談を言うタッカー。「そしたら押し倒しちまうよ。」
トゥポル:「ええそうよ。続けて。」 目をつぶり、息をついた。「…今のが、ハイポスプレーよりよほど効きます。」 服を戻す。
「はあ。」 太ももを叩いたタッカー。「だったら、よかったけどね。」
「お礼に私もマッサージしましょうか。…服を脱いで下さい。」
「ああいや…」 笑うタッカー。「副司令官、気持ちは嬉しいしこんなときでなきゃ俺も男としてチャンスに飛びつくんだと思うけどやっぱり…」
「私が誘惑しているとでも思っているんですか?」
「…いや? …いや。まさかそんな全然思ってない、ただその…いや…ドクターが薬打ってくれたんだ。だから……そろそろ効いてくるから。」
「ドクターが打ったのは栄養剤です。少佐に、ヴァルカンの神経マッサージを試させようと、ここへ来させたんです。思った通り無駄に終わりましたけど。」
「ドクターも最初からそう言やいい。」
「勧められても断ったでしょ?」
「それじゃ…最初から全部仕組まれてたのか?」
「ドクターはあなたが頑固だと知っていますから。」
「頑固だって?!」
「人の意見を聞かない。」
「意味はよくわかってるさ。だが全くもって間違ってるね。俺は人の意見をちゃんと聞く男だよ。」
「それではシャツを脱いで。」
「あ…」 従うタッカー。トゥポルの前に座った。
一度振り向く。マッサージが始まり、タッカーは声を上げた。

ワープを止めるエンタープライズ。
スクリーンには遠くの恒星しか映っていない。
メイウェザー:「船長、座標に近づいています。」
アーチャー:「…戦術警報だ。兵器スタンバイ。」
操作するリード。スコープを覗くトゥポル。
アーチャー:「スキャンされている形跡はあるか。」
リード:「いえ。船も科学技術の形跡も皆無です。」
「住民のいる惑星はいくつだ。」
トゥポル:「周囲には、惑星そのものが存在しません。」
「あいつやはり嘘だったか!」
タッカー:「あのズィンディは最期の息を振り絞って座標を教えた。嘘なんて言いますか?」
メイウェザー:「瓦礫のフィールドを感知しました。」
アーチャー:「船か。」
「船にしては量が多すぎます。」
「スクリーン。」
操作するサトウ。
恒星の周囲に、小さな破片の地域が見える。
トゥポル:「8,000万キロ近くまで及んでいますね。…惑星の残骸です。」
アーチャー:「…接近しろ。」

辺りは小惑星帯のようになっている。
アーチャー:「爆発したのはいつなんだ。」
トゥポル:「分散状態から見て、およそ 120年前と思われます。」
タッカー:「誰か住んでたに違いありません。精製金属や合金を感知しています。ズィンディ偵察機の外壁と、一致するのもある。」
アーチャー:「彼らは新兵器で、人類を抹殺しようとしているんだ。400年後母星を破壊されないためにな。なのにその星が既に瓦礫とはどういうことだ! …しかも、100年以上も前にだ!」
トゥポル:「…地球を襲った偵察機は確かにこの領域内で造られたもので、しかもそれは最近です。新兵器も、同じ場所で造られていると見るのが論理的でしょう。」
タッカー:「でも、それがここじゃないなら。」
アーチャー:「…ワープ4 の準備だ。」
メイウェザー:「船長、コースは。」
「…領域の更に奥だ。」
リード:「長距離センサーに、空間のひずみがいくつも見られますが。」
「行くんだトラヴィス。」
惑星の残骸を離れ、ワープに入るエンタープライズ。

ズィンディ評議会の爬虫ズィンディ。「瓦礫のフィールドを 3時間前に発ったそうだ。」
人間ズィンディ1:「行き先は。」
「オラシンひずみフィールド※30の方向だ。」
毛長ズィンディ:「それなら、到底生き延びることはできまい。」
昆虫ズィンディ2:「(推測に過ぎん。俺が船を送り撃墜する)」
人間ズィンディ2:「もしあの船が侵略の第一波だとしたら、我々は身を潜めていた方がいいだろう。放っておけばいいのだ。」
水棲ズィンディ:「(そうだ。彼らには見つけられない)」
昆虫ズィンディ2:「(兵器を完成させねば…俺が地球船を撃墜に行く。評議会の承認などなくて構わん)」


※29: 原語では「偽薬 (プラシーボ)」

※30: Orassin distortion fields

・感想
第3シーズン・プレミアは、日本の新作公開としては一年ぶりとなりました。その間に本国では ENT の打ち切りが決まり、こちらでレギュラー放送が始まる前に第4シーズンで終わってしまうことになります。つまりこの時点で半分を過ぎたことになるんですね (第3・4シーズンは話数が少ないため、厳密には半分以上が放送済み)。
そういう状況での新シーズンは、これまた映像自体も含めて暗い内容でした。これまでしつこく言ってきたテンポが、前話同様に改善されているのはいいんですけどね (お決まりの「サービスシーン」辺りは除く)。のんびりした雰囲気から突然変わったので、今までの流れが好きな人ほど受け入れにくいかもしれません。ある意味では DS9 のドミニオン戦争、VOY の孤独感の再現ともいえますが、こうも唐突では…。原語では、ST ではあまりなかった粗っぽい俗語も飛び交っているようです。
とはいえ数々の新設定など楽しみな要素はありますので、とりあえずは見守っていきたいと思います。デルフィック領域はもっと混沌としているかと思ったら意外に普通で、早速出会ったズィンディも情けない男でしたね。メーキャップ大活躍のズィンディ評議会の面々を演じる俳優は、いずれも過去に出演歴のある人たちばかり (特にその中の 3人は、過去に 4種族以上を演じた異星人ベテランです)。MACO のメンバーもいるため、ENT では珍しい大ゲスト陣でした。製作会社が変わって声優リストが含まれなくなったのは残念ですが、後々わかり次第修正したいと思います。

声優データ協力:牧さん


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