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エンタープライズ エピソードガイド
第85話「バルカンの夜明け」
Kir'Shara

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・イントロダクション
星図を見るヴラス長官。「アンドリアは、艦隊のほとんどをパーン・モカー周辺に配備している。」
クヴァック:「あの星は彼らのものと決まったはず。なぜ今さら守る必要が?」
「奪い返されると思っているのだ。…無人探査機を送り、偽装ワープサインを星系内に発信したからな。」
「なぜ我々に黙っていたのです!」
「アンドリアが、最高司令部にスパイを送り込んでいないとは限らん。これは極秘に行われる必要があった。…我が軍は実際にはここで待機しており、アンドリアへの侵攻に備えている。」 星図の位置が変わる。
「評議員の中には、この時期アンドリアへ侵攻する必要性に疑問をもつ者もいます。」
「奴らがズィンディ・テクノロジーを手に入れたことは、明らかだ。」
「確たる証拠はありません。」
モニターにズィンディ兵器の映像が映った。
ヴラス:「2日前にこのデータを傍受した。ズィンディ※1のプロトタイプを盗んだ、アンドリア船のデータだ。」
兵器からビームが発射され、衛星に注がれる※2
ヴラス:「アンドリアはそのプロトタイプを母星へ持ち帰り、分解したと聞いている。帝国軍がそのテクノロジーを使い、同様の兵器を製造することは想像に難くない。」
クヴァック:「それを証明できますか。」
「単なる好奇心でプロトタイプを盗むとでも? これだけは言える。遅かれ早かれ、アンドリアはこのテクノロジーを使うだろう。その時をじっと待つことは、論理的か?」


※1: 「ズィンディ」と訳されていますが、兵器のプロトタイプです

※2: ENT第65話 "Proving Ground" 「アンドリア人の協力」より

・本編
フォージ。
洞窟を歩くトゥパウ。「シラナイトと連絡がついたわ。怪我人を世話してる。」
アーチャー:「首都までは。」
「2日よ。」
トゥポル:「エンタープライズに戻り、艦隊に爆破事件の真相を伝えないと。」
アーチャー:「首都へ行くのが先だ。早くこれを、届けないと。」
「理解できません。」
トゥパウ:「キルシャラにはスラクの教えが刻まれてるの。真の教えが記された、唯一の物よ。最高司令部は大きな衝撃を受ける。全ヴァルカン人も。」
ため息をつくトゥポル。

エンタープライズ。
リード:「どちらの発射管も、数時間後には使えます。」
見ていたパッドを返すタッカー。「ほかには。」
リード:「…率直に言っても?」
タッカーはうなずく。
リード:「ガードナー提督は地球への帰還を命じてる。だが我々が向かっているのは、アンドリア領だ。」
タッカー:「帰還はするさ。…ちょっと遠回りしてるだけだ。」
「アンドリアへ立ち寄ることを、艦隊には?」
「…いや。」
「提督に知られたらどうなるか、わかってます?」
「俺の裁判に招待しよう。…ほかに話は。」
「ヴァルカン人による今回の攻撃には理由があります。…アンドリアに警告することは、同盟者への裏切りでは。」
「俺は戦争を避けたいだけだ。地球を守りたいだけだよ。」
「お言葉ですが、少佐。関わるべきではありません!」
「すでに関わってしまってるんだ。」 ドアチャイムに応えるタッカー。「どうぞ。」
ソヴァルが作戦室に入る。
タッカー:「以上だ、大尉。」
リード:「少佐。」
「行ってよし。」
ソヴァルとタッカーを見た後、出ていくリード。
ソヴァル:「何か、ご用ですか。」
タッカー:「考えたが、帝国軍が我々を信じる保証はない。ヴァルカンが攻撃するという証拠もないしね。…だが、一人だけ信用しそうな男がいる。以前も、信用してくれた。」
「シュランですか。」
「ただどこにいるかわからない。」
「…力になれると思います。」
「…よろしく。」
外へ向かうソヴァル。「どうやら、リード大尉は不満のようだ。」
タッカー:「一部のクルーは私に疑問をもってます。無理もない。私も迷ってる。」
「アーチャー船長も、あなたと同じ決断を下したはずです。」
「…私もそう願っています。」

洞窟を進むトゥポル。「エンタープライズは、転送ポイントを探すはずです。誰か行かないと。」
アーチャー:「独りで離れるのは危険だ。」
「キルシャラを最高司令部に持っていって何になるんです。」
「戦争を止められるかもしれん。」
「戦争とは?」
「アンドリアとのだ。」
「彼らとは、2年近く前に和解しています。」
「ただの時間稼ぎだ。ヴラスは過去最大の攻撃を仕掛ける。」
「どこからそんな情報を。」
「…さあ、どこかな。」
「…スラクのカトラをあなたが受け継いだとしても、彼は大昔に死んでいます。なぜその戦争を予知できると。」
「シランの記憶が、融合されたからだろ。」
「…船長。」
「私は正気だ。」
「あなたがこの決定を下しているとは思えません。…船に戻るべきです。キルシャラはトゥパウが持っていけばいい。」
「私が選ばれた!」
「『選ばれた』? 興味深い表現ですね。」
「君が懐疑的になるのはわかるが、私は正気だ! 妄想に酔っているわけではない。いま君の世界を牛耳っている力は、スラクの教えを台無しにしようとしている。このままでは、ヴァルカンは滅びるぞ。だからこれを首都へ運び、我々 3人で力を合わせ…」
トゥパウ:「アーチャー! 止まって。」
前に岩場が広がっている。
トゥパウ:「ギャリサイト※3だわ。…何か金属製の物持ってる?」
アーチャー:「…これだけだ。」 ナイフを渡す。
トゥパウが岩に向かって投げると、ナイフに放電が起こった。落下するナイフ。
アーチャー:「…助かったよ。」

ヴァルカン最高司令部。
クヴァック:「パトロール隊が戻りました。シラナイト 8人を捕まえたようです。」
ヴラス:「中にシランは。」
「奴は、死にました。ほかに 3人の生存者がおり、一人は地球人だそうです。」
「アーチャーか。」
「奴がキルシャラを持っているらしい。」
「そんな物ありはしない。」
「存在を認めている学者もいます。フォージに隠されていると聞きました。シラナイトは、スラクの真の教えに従っていると主張しています。キルシャラが実在すれば、彼らが正しいことが証明される※4。」
「実在などしない。シラナイトのプロパガンダを知っているだろ。以上だ、大臣。」
離れるクヴァック。
ヴラスは座っているヴァルカン人に近づいた。「中尉※5、タロック少佐※6にシラナイトの残党を捜させろ。過激な反乱分子を、一掃する。全員殺すのだ。わかったかね、中尉。」
うなずき、歩いていくヴァルカン人中尉。

エンタープライズは星雲に近づく。
ソヴァル:「呼びかけます。」
タッカー:「…誰に?」
「星雲にです。」
サトウに合図するタッカー。
ソヴァル:「こちらはソヴァル大使。急務を負って来た。シュラン司令官と話したい。」
応答はない。
ソヴァル:「最高司令部は、保安プロトコルを解読した。あなたの部隊が潜伏していることは、わかっている。」
タッカー:「もういないんじゃないですか。」
「いえ、います。」
「…エンタープライズのタッカー少佐だ。耳寄りの情報をもってきてやったぞ。」
コンピューターに反応がある。
メイウェザー:「少佐。」
星雲の中から、アンドリア船が出てきた。複数いる。
サトウ:「呼びかけてます。」
うなずくタッカー。
シュラン※7司令官がスクリーンに映った。『なあ、タッカー少佐。友達は選んだ方がいいぞ。』
タッカーはため息をつく。

星図を見るシュラン。「侵略だと?」
ソヴァル:「その通り。」
「我々はヴァルカン軍を監視してる。事実ならとっくに気づいてるはずだ。」
「ヴラスは、レギュラス※8付近に部隊を配備している。」 星図を指差すソヴァル。「君らの盗聴が、及ばない位置だ。」
「あんたの上官がいくらバカでも、我々が報復することぐらい予測がつくだろ!」
「君らがズィンディのテクノロジーを使い、攻撃してくると思い込んでいる。」
「バカなことを。あのプロトタイプは早々にアーチャー船長に破壊されたよ!」
「その事実は、都合よく省かれている。」
「貴様らヴァルカン人は味方同士でも嘘をつきだまし合うのか! これが陽動作戦でないという証拠は!」
「何もない。」
「我らが帝国軍が、本気で報復行動に出れば一体どういうことになるかわかってるのか! …双方に甚大な被害が及ぶのだぞ!」
「だからこそ、ヴァルカン軍の侵略を止めて欲しいのだ。」
「そんなこと俺に言えば、味方を裏切ることになるんだぞ。」
「承知している。」
「どうしてこんな真似をする。」
「最高司令部は、奇襲部隊に頼っている。彼らが抵抗にあえば、ヴラスは侵略自体を中止するだろう。」
「…いつ起こるんだ? その『侵略』とやらは。」
「すぐにも。」
「そんな曖昧なことしか言えないのか!」
「そうだ。」
シュランはタッカーに近づいた。「信じるか、ピンクスキン。」
タッカー:「信じたからここにいる。」
「……上官に相談する時間をくれ。」
「できるだけ、急いで欲しい。」
会議室を出て行くシュラン。保安部員が続く。

明るくなってきたフォージの上空に、パトロール機の航跡が見える。
トゥポル:「これで 4機目の偵察機です。…首都周辺の保安網を強めている。突破するのは無理では?」
トゥパウ:「大丈夫。スラクがついています。…カトラを信じられない?」
「その質問は無意味です。一刻も早く、船長をドクターに診せなければ手遅れになる。」
「彼が必要なのは司祭よ。カトラを体験したことのある。」
アーチャーは日陰で眠っている。
トゥポル:「…頭の中にいる人物に従うなどバカげています。船長が死んだらどうするんです! …謝ります。母の死が、想像以上に堪えているようです。」
トゥパウ:「私もそうよ。意見の相違はあっても、彼女は信頼していたわ。私と分け合った経験を、あなたも経験する?」
「精神融合を? …私はできません。」
「手ほどきしてあげる。」
「…そうじゃありません。何年か前に精神融合を強要され、パナー症候群※9にかかったのです。」
「パナー症候群? 今も冒されているの。」
「不治の病です。」
「それも最高司令部がでっち上げた嘘よ。…その病気はスラクの時代からあるわ? 未熟な精神融合者によって感染するの。訓練を積んだ者に、精神融合を受ければ治ります。」
「あなたにも治せるの。」
トゥパウはひざまづき、トゥポルの顔に手を置いた。目を閉じるトゥポル。
トゥパウ:「我の精神は、汝の精神へ。…互いの精神は…解け合い一つになる。」

アンドリア船クマリ。
アンドリア人※10:『ブリッジからシュラン司令官。』
シュラン:「シュランだ。」
『ヴァルカン人の生体反応を捕捉。独りです。』
「本当にエンタープライズは、転送※11に気づかないか。」
『エネルギーサージを感知するだけです、星雲のせいだと思うでしょう。司令官?』
「…ただちに転送せよ。」
『了解。』
シュランの目の前の椅子に、ソヴァルが転送されてきた。驚くソヴァル。
武器を向けるアンドリア人。
シュラン:「我が船へようこそ、大使。」


※3: gallicite
VOY第58話 "Blood Fever" 「消えた村の謎」より

※4: 吹き替えでは断言していますが、原語では「証明されるかもしれない

※5: 宇宙艦隊の Lieutenant (Junior Grade) とは異なり、Sub-Lieutenant

※6: Major Talok

※7: Shran
(ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs) ENT第76話 "Zero Hour" 「最終決戦」以来の登場。声:中村秀利 (継続)

※8: Regulus
しし座アルファ星。レギュラス (レグラス) のアカムシ (Regulan blood worms) が TOS第42話 "The Trouble with Tribbles" 「新種クアドトリティケール」などで言及

※9: Pa'nar Syndrome
ENT第40話 "Stigma" 「消せない汚名」より。その原因となった精神融合は、ENT第17話 "Fusion" 「果てなき心の旅」より

※10: アンドリア人の通信音声 Andorian Com Voice
(Melodee M. Spevack ゲーム "25th Anniversary Enhanced"、"Judgment Rites" でも声の出演など) あとで中尉 (Lieutenant) と階級を呼ばれています。声:森夏姫

※11: ENT第7話 "The Andorian Incident" 「汚された聖地」の時点では、アンドリア人に転送技術はありませんでした。その後 3年の間に、実用化されたということでしょうか

固定されるソヴァル。「私に慈悲を請わせたいのなら、時間の無駄だぞ。」
シュラン:「ヴァルカン軍が実際はどこにいるのか知りたいだけだ。」
「すでに言ったはずだ。」
「では、これが我々の確認方法だと思ってもらう。帝国軍を甘く見るな。たった一人の忠義なヴァルカン大使の言葉だけを鵜呑みにして、全軍を出動させると思うか。」
「我々は条約を締結する際、何週間もかけて話し合った。私は君を欺いたか。」
「いや。」
「…拷問など、ヴァルカン人には効果がないことは承知のはずだ。痛みは制御できるよう訓練されている。」
「我らが保安部は、あらゆる手を尽くしてヴァルカンの諜報部から情報を引き出しているのだ。このマシンは肉体的苦痛は一切与えない。神経シナプシスを刺激し、感情的忍耐の限度を下げるだけだ。」
アンドリア人が操作すると、機械が起動した。声を上げるソヴァル。
シュラン:「気分はどうだ。」
ソヴァルはうろたえる。
シュラン:「何人ものヴァルカン人が、このマシンによって破壊された。二度と元に戻れん。俺はあんたがそうなるところを、見たいわけじゃないんだ。部隊の居場所を吐け!」
ソヴァル:「もう言ったろ、レギュラスの近くにいると!」
部下に向かってうなずくシュラン。音が高くなる。
ソヴァル:「やめてくれー!」
シュラン:「断る! あんたが我々に真実を言うまではな。」
「では提案する。限界まで上げて、終わらせてくれ!」
さらにレベルが上げられた。ソヴァルは絶叫する。

ブリッジに戻るタッカー。「どうした。」
リード:「大使の姿が見当たりません。」
サトウ:「自室をはじめ、Dデッキのどこにも。」
通信機に触れるタッカー。「ソヴァル大使。大使、応答して下さい。…内部センサーで、生体反応を見つけろ。」
リード:「…船内にはいません。」
「……アンドリア船をスキャン。」
「…先頭の船に、ヴァルカン人一名。」
「戦術警報。回線をつなげ。…タッカー少佐だ。ソヴァル大使がいることはわかっている。すぐに話をさせろ。」
メイウェザー:「…少佐、船団が星雲に向かいます。」
「攻撃開始、エンジンを狙え。」
逃げるアンドリア船に向けて、光子性魚雷が発射される。アンドリア船は星雲へ消えた。
エンタープライズも続く。
揺れるブリッジ。
メイウェザー:「航行システムオフライン。」
サトウ:「素粒子フラックスのせいです。センサーがオーバーロードを。」
「追跡不能。」
リード:「船を調整するしかない。」
タッカー:「…2、3時間くれ。ブリッジを頼む。」

洞窟を進みながら、汗をぬぐうアーチャー。
トゥポル:「船長、休んで下さい。」
アーチャー:「大丈夫だ。」
「ここの大気は船長には薄すぎます。止まらなければ倒れますよ。」
「君が休みたいんだったら、そう言えよ。」
トゥパウ:「偵察に行ってくるわ?」
たいまつを置くアーチャー。
トゥポル:「今もスラクとは交信しているんですか。」
アーチャー:「ここ数時間ない…。」 笑う。
「何がおかしいんです。」
「カトラを運ぶのは、大仕事だ…。」
「船長には荷が重いのでは。」
「精神融合してから心が静かで、上手く言えん。…今まではヴァルカン人が、到底理解できなかった。なぜそんなに感情を抑えるのか。…だが今はよーくわかる。今度は瞑想をしてみるよ。」
「きっと気に入るでしょう。」
「…きっと君は…シラナイトの哲学を知りたくなるだろうな?」
「…なぜ?」
「…お母さんが、傾倒してたんだから。」
「…スラクの正当な継承を主張する派閥は、多くいます。シラナイトもその一つに過ぎません。」
「彼らに賛同してると思ったがな? …君はこの現状に、満足してないだろ?」
「最高司令部に疑問はあっても、過激派に入るつもりはありません。」
「…君は艦隊に入った。ヴァルカン人は我々を過激だと思っている。…科学者として、何に対しても偏見をもつべきでは…」
「これは科学とは関係ありません!」
トゥパウ:「お邪魔かしら?」 戻ってきた。
「……いいえ。」 トゥポルは荷物を背負った。
アーチャーも続く。

叫ぶソヴァル。「ここから出せー!」
シュラン:「すまんが、それはできん。まだな。」
「そのアンテナを引き抜いてやる!」
「これ以上この尋問を続ければ、あんたの感情抑制システムは完全に破壊される。早く質問に答えろ!」
「さぞ楽しかろう、司令官。…私をこの椅子に座らせるのを、何度想像したんだ?」
「想像しなかったとは言わん。…だがあの長ったらしい平和交渉の後、信じ始めていた。」
「では今度も信じろ!」
「あんたは決して、同胞を裏切ったりはしない。」
「彼らを救おうとしているのだ!」 手を動かすソヴァル。
「早く部隊の居場所を吐け!」
「……ニラク※12の話を知っているか。」
「…何?!」
「大昔いた兵士の話だよ。…彼は、ゴル※13の城門を守っていた。ある日土煙がこちらに向かってきたが、砂嵐だと思い誰にも言わなかった。…敵軍だったのに。彼らは街を破壊したが…ニラクの命は救った。彼の名は、今では『愚か者』を指す言葉になっている、お前の名前もいずれそうなるだろう!」
シュランは部下に向かって手を伸ばした。一層レベルが上げられる。
ソヴァルは叫んだ。視線を落とすシュラン。

アーチャーの前に、複数のヴァルカン人が突然現れた。
タロック※14:「キルシャラをこっちによこせば、乱暴はしない。」
囲まれる。
タロック:「地球人が首を突っ込むな。」
たいまつが振り落とされる。キックするアーチャー。
トゥポルもヴァルカン人に対応する。アーチャーはヴァルカン人の後ろに回り込み、首をつかんだ。
相手が落とした棒状の武器、リルパ※15で対応するトゥポルたち。だがトゥポルは倒された。
たいまつで威嚇するトゥパウ。アーチャーに渡す。
上へ逃げるトゥパウ。アーチャーもたいまつで応戦しながら登っていく。
登りきったが、リルパで殴られるアーチャー。相手は最後に振り下ろそうとするが、トゥパウが蹴った。
下へ落ちていくヴァルカン人。
トゥパウ:「アーチャー!」
タロック:「キルシャラを置いて去れ。」
トゥポルは下で倒れたままだ。
アーチャー:「トゥポルはどうなる!」
タロックを倒すアーチャー。だが別のヴァルカン人にやられる。
立ち上がるタロック。トゥパウはアーチャーを、脇の穴に入れた。
タロックはリルパを手にする。トゥパウも穴に入った。
覗き込むタロック。

アーチャーとトゥパウは、狭い通路を滑り落ちていく。

タロックはあきらめた。

地面に放り出されるアーチャー。トゥパウも出てきた。
トゥパウの肩をつかむアーチャー。「どういうつもりだ!」
トゥパウ:「キルシャラを守るためよ。」
アーチャーは立ち上がった。トゥパウに何か言おうとしたが振り払い、歩いていく。

トゥポルは目を覚ました。すぐに起き上がる。
部下と共にいるタロック。「奴らはキルシャラをどこへ運ぶ気だ。」
トゥポル:「……セレヤ山に。」
「なぜ。」
「スラクが自ら記した教えが納められているからよ。…セレヤの司祭にしか訳せないらしい。」
タロックはトゥポルの身体をつかんだ。「でまかせじゃないだろうな。」
トゥポル:「シラナイトは嘘はつかない。」


※12: Nirak

※13: Gol
TNG第157話 "Gambit, Part II" 「謎のエイリアン部隊(後編)」で、ゴルの石 (Stone of Gol) が登場

※14: Talok
(Todd Stashwick)

※15: lirpa
TOS第34話 "Amok Time" 「バルカン星人の秘密」より

拘束されたまま、歩かされるトゥポル。座り込んだ。「少し休ませて。」
タロック:「足止めをしようとしても無駄だ。我々は奴らを追う。」
部下にリルパを渡し、水筒を取り出すタロック。だがトゥポルは拒否する。
タロック:「変わったな。トメド※16・ミッションで一緒だった。…あんたの部下だ。」
トゥポル:「そんな大昔のこと。」
「有能な士官だったのに。なぜ裏切った。…何かに釣られたか。それともただの憂さ晴らしで大使館を?」
「私達はやっていない。」
「あの爆発で部下が 2人死んだ。」
「あなたはだまされてる。…シラナイトは穏健よ。」
「一度は上官だったあんたを殺すつもりはない。…だがお友達はそうはいかん。」 トゥポルを立たせるタロック。

まだ座らされたままのソヴァル。
アンドリア人:『ブリッジからシュラン司令官。』
シュラン:「どうした。」
『将軍が尋問状況を聞いておられます。』
「準備でき次第報告すると言え!」
『了解。』
ソヴァルは笑い出した。
シュラン:「何がおかしいんだ。」
ソヴァル:「…普段なら笑わないが、この機械のせいだろう…。」
「このパワーは、あと 3段階強めることができる。…だがそれを使えば。」
「私を心配しているのか。それについては将軍へは報告しない方がいいぞ。」
シュランはソヴァルの首元をつかんだ。「ヴァルカン軍はどこで待機している。」
ソヴァル:「お前を信じた私がバカだった。最高司令部の言うとおり、アンドリアなど叩き潰すべきかもしれん!」
突然船が揺れ、火花が散った。
シュラン:「報告!」
アンドリア人:『宇宙艦隊の船です。』

リード:「シールドジェネレーターに命中。」
タッカー:「ソヴァルをロックできるか。」

エンタープライズからの攻撃は続く。
アンドリア人:『報復しますか?』
ソヴァル:「我々同様地球人も敵に回す気か。」
シュラン:「……中尉! 全隊、星雲から脱出だ。」
アンドリア人:『司令官。』
「エンタープライズに、すぐに大使を帰すと伝えろ。」
『了解。』
「早くマシンを外せ。」
解放されるソヴァル。

砂に刻まれた足跡。
トゥパウ:「東へ向かってる。首都と反対方向よ。…トゥポルも一緒だわ。」
歩き出すアーチャー。
トゥパウ:「どこへ行く気?」
アーチャー:「部下を捜しにだ。『多数の利益』が大事なのはわかっている。散々聞いたよ。トゥポルから。」
「あなたの行為は論理的じゃない。無防備で行って、キルシャラを奪われでもしたら? 必ず破壊される。」
「トゥポルを捜す。」
追うトゥパウ。

モニターに表示された脳の状態。
医療室に入るシュラン。「具合は。」
タッカー:「よくノコノコ顔を出せたもんだ。」
「俺はすべきことをしたまでだ。ソヴァルもわかってくれる。」
ソヴァルはベッドで寝ている。
フロックス:「一日二日で、回復するでしょう。」
タッカー:「命懸けでここへ来て、感謝の言葉一つなかったわけだ。」
シュラン:「危険を冒しているのは大使だけじゃない。帝国軍と話してきた。現在、軍隊を移動させている。」
「信じたのか。なぜ気を変えた。」
「…逃げようと思えば、でたらめな待機場所を言って逃げられたはずだろ? …我々は互いに疑い合い、嘘をつきすぎた。もうたくさんだ。」 パッドを渡すシュラン。「我が軍はこの座標ポイントで、ヴァルカン軍を阻止する。…上層部は任務を完遂させるため、エンタープライズの力添えを望んでいる。」
シュランを見るタッカー。

フォージを進むタロックは、獣の声を聞いた。「セーラットか。」 部下に指示する。
だがその声は、トゥパウが出しているものだった。
岩場を進むヴァルカン人たち。するとリルパが震え始めた。
辺りのギャリサイトから電流が注がれる。その様子に気づくタロック。
ヴァルカン人は倒れた。リルパを捨てるタロック。
そこへ、アーチャーが上から飛び蹴りを食らわせた。タロックを殴り、岩にぶつけて倒す。
リルパを拾うトゥパウ。
アーチャーはタロックをつかんだ。「副長は。トゥポルは!」 リルパを喉に突きつける。「何をした。」
タロック:「最高司令部に、連れて行ったよ。」
アーチャーはタロックの肩をつかんだ。ヴァルカン首つかみ※17により、意識を失うタロック。
トゥパウ:「ずいぶん上達したようね。」

連行されるトゥポル。
ヴラス:「よく戻った、副司令官殿。」
手を振り払うトゥポル。「その職は退きました。」
ヴラス:「艦隊に入ろうが、ヴァルカン人には変わらんだろ。法律にも従ってもらう。よほどの罪でない限り死刑になることはないが、反逆罪ではわからんな。」 コンピューターに反応がある。「何だ。」
クヴァック:「アンドリア星系の外に、異星人船 7隻が出現。我が軍の針路を妨害しています。」 星図に位置が表示される。

エンタープライズと共に進むアンドリア軍※18
リード:「本当にいいんでしょうか。アンドリア側に寝返ったと思われかねませんよ? 我々に向かって撃ってきたら。」
メイウェザー:「少佐、大規模な亜空間のゆがみを感知。」
タッカー:「ホシ。」
サトウ:「ヴァルカン船です。2時間で到着。…シュラン船です。」
「スクリーン。」
映るシュラン。『ヴァルカン巡洋艦、12隻が接近中だ。』
タッカー:「そっちの援軍はいつ着く。」
『とても間に合わん。俺たちでやる。』


※16: Tomed
TNG第26話 "The Neutral Zone" 「突然の訪問者」でトメド事件 (Tomed Incident) が言及

※17: 映画 ST3 "The Search for Spock" 「ミスター・スポックを探せ!」でも、スポックのカトラをもったマッコイが試みていましたが、失敗しました

※18: アンドリア船の左右の端には、クマリとは異なったタイプの船がいます。ENT第13話 "Dear Doctor" 「遥かなる友へ」に登場した、ヴァラキア亜光速船の使い回し

歩くアーチャー。「本当にキルシャラは、戦争を止められるのか。」
トゥパウ:「ヴラスの権力は評議会の支持次第よ。キルシャラが実在するということを証明できれば、彼の支持はなくなるわ。」
高台から首都を見下ろすアーチャー。「…簡単には我々を、通してはくれんだろ。」
トゥパウ:「コードさえわかれば、転送で入り込めるけど。」
「…心当たりがある。」

ヴァルカン船が次々とワープを抜け、通常空間に出てくる。その先に見えるアンドリア船団。
リード:「ヴァルカン船、武器装填。アンドリア船もです。」
タッカー:「トラヴィス、両軍の間に入れ。…ヴァルカンが戦争を始めるなら、我々を撃ってからだ。」
サトウ:「…シュランです。」
シュラン:『…少佐、何を考えてる!』
タッカー:「ヴァルカン軍は我々の 2倍の規模だ。」
『隊列に戻れ!』
「少しでも時間を稼ぐ。」

ヴァルカン最高司令部。
クヴァック:「アンドリア軍の援軍も向かっています。」
ヴラス:「まだ、3、4時間はある。」
「奇襲を仕掛けるだけだと言っていたはずです。…両軍とも最小の被害で済ませるはずでは? アンドリア軍は通常の素粒子砲しか装備していません。ズィンディのテクノロジーなど使用していない。行政官長官、攻撃は中止すべきです。」
「一度命じたことを、ひるがえすわけにはいかん。」
ヴァルカン人:『艦隊の船が呼びかけています。』
タッカー:『タッカー少佐です。奇襲を邪魔して悪いが、アンドリア軍は全て知ってます。すぐに、全軍撤退させて下さい。』

ヴラス:『宇宙艦隊には関係ない。ただちにそこを去れ。』
タッカー:「それはできません。かつてアンドリアは地球を救った。その時の恩を返さねば。」

ヴラス:「アンドリア側につくのなら、攻撃は免れん。」
タッカー:『ガードナー提督に報告した。エンタープライズが破壊されれば、ヴァルカンの仕業だとね。』
通信を切るよう合図するヴラス。「我が軍に命じろ、敵艦隊に攻撃せよと。」
クヴァック:「長官、それには従えません。」
「中尉、頼む。」
クヴァックに向けて武器を向けるヴァルカン人中尉。
ヴラス:「もしまた私に逆らうことがあれば、貴様を逮捕する。」

モニターを見るリード。「ヴァルカンです。武器をロック。」
タッカー:「こっちに?」
「いいえ、アンドリアに。」
「フェイズ砲装填、命令するまで待機。」
にじみ寄る両軍の中央にいるエンタープライズ。ついにヴァルカン船が攻撃を始めた。
アンドリア船と撃ち合いになる。その中を進むエンタープライズは、流れ弾のようにアンドリアの攻撃が当たってしまった。
リード:「ここじゃあ避けられない。」
タッカー:「反転、射程範囲外へ!」
サトウ:「アンドリア船の一隻が、リアクターに被弾。」
リード:「ヴァルカン船、接近中。」
タッカー:「こっちに注意を引け。」

ヴァルカン人の通信。『地球船が味方の船を攻撃。』
ヴラス:「破壊せよ。」

サトウ:「アンドリアへの砲撃を停止。」
メイウェザー:「こっちを狙ってます。」
ブリッジに火花が起こる。
タッカー:「全速で右舷へ回避。…マルコム!」
リード:「シールドを打ち破れません!」
エンタープライズを攻撃するヴァルカン船。アンドリア船が援護する。
サトウ:「シュランです。」
クマリでも火花が散っている、シュランの映像。『…これで貸しは 2つだと、アーチャーに伝えろ!』 すぐに終わる。

戦況を確認するヴラス。
ドアが開き、2人のフードを被った人物が入ってきた。
アーチャーとトゥパウだ。
クヴァックは自分に武器を向けていたヴァルカン人中尉の隙を突き、ヴァルカン首つかみで倒した。銃を奪う。
気づくヴラス。「保安部員を呼べ!」
操作しようとしたヴァルカン人に武器を突きつけるクヴァック。「止まれ! 動くんじゃない!」
アーチャー:「話があって来た。」
トゥパウ:「長官? またお会いできて光栄です。」
ヴラス:「そこに立っている女は、反乱分子だぞ船長。…何を聞いたか知らんが、全て嘘っぱちだ。」
アーチャー:「大使館を爆破したのはトゥパウじゃない。あなただ。」
「証拠は間違いないぞ。」
「あなたの部下が偽装したんだ。爆破は、シラナイトを一掃する口実だった。彼らが、これを見つけないようにね。」
テーブルにキルシャラを置くアーチャー。
クヴァック:「…これが?」
うなずくトゥパウ。
ヴラス:「キルシャラはただの神話だ!」
アーチャーはキルシャラに触れた。自ら回転する。
順番に押していくアーチャー。
するとキルシャラの表面に刻まれた模様が光り出した。空中にホログラム映像で、ヴァルカン文字が投影される。
その無数の文章を見つめる、ヴラスをはじめとするヴァルカン人たち。

爆発が起こるエンタープライズのブリッジ。
リード:「プレートが!」
タッカー:「魚雷は!」
「発射管が動きません!」
「シュランはどうした!」
「やはり攻撃を受けています。…我々でかわすしかない!」

ヴラス:「ホログラムの小細工だ。何の、証にもならん。」
クヴァック:「隅々まで、綿密に調べるべきです。」
「必要ない。」
トゥパウ:「量子は明らかにスラク時代の物です。」
「信じてはいかん! 邪道の教えを広げたいだけだ。…いつまで私に刃向かえば気が済む。」
「キルシャラが真の道を示すわ。」
「我々は全員殺されるぞ! …こんな物、壊してしまえ!」 キルシャラに近づくヴラス。
だが撃たれた。クヴァックだ。
通信機に触れるクヴァック。「クヴァックだ。すぐに部隊の司令官を呼べ。」

エンタープライズのブリッジでは、気体が噴き出している。
メイウェザー:「舵が利きません。」
サトウ:「…Gデッキで亀裂発生、大気が漏れています。」
突然、静かになった。
リード:「…ヴァルカン船が、撤退します。」
サトウ:「…呼びかけています。最高司令部。」
アーチャーの通信。『トリップ、そっちは無事か。』
タッカー:「ええ、何とか。一体どうなってるんです?」
『いくつか変更があってな? すぐにヴァルカンに戻ってくれ。』

ヴァルカン軌道上のエンタープライズ。
『航星日誌、補足。ヴラス長官は職を解かれ、大使館爆破事件への関与は目下調査中だ。さしあたり、ヴァルカンとアンドリアの争いは回避されたと言えよう。』
ドアチャイムを押す者がいる。
トゥポル:『どうぞ。』
自室のトゥポルは立ち上がった。「アーチャー船長が、深く感謝されていたわ。あなたがコードを教えてくれたおかげよ。」
それは、コスだった。「君が危険だと聞いてね。妻を助けぬ夫は、いないだろ?」
トゥポル:「いつ戻れるかわからない。…あなたの家族と一緒に住むと、約束したことは覚えています。」
「連れ戻しに来たんじゃない。…君を解放しに来たんだ。…君はお母さんのために結婚をした。彼女が亡くなった今、君は自由の身だ。」
「そうまでしなくても。」
「わかってる。」 出ていくコス。
「…コス。」
「…さよなら。」 コスは部屋を後にした。
目に涙を浮かべるトゥポル。

精神融合されるアーチャー。
ヴァルカン人司祭※19は手を離した。「カトラは私の中にある。」
ソヴァル:「ご気分は、船長。」
アーチャー:「…重荷が下りたようです。」
トゥパウ:「キルシャラは神話ではなくなった。何年か後には、翻訳も完了するはずです。」
クヴァック:「ヴァルカンはあなたに、借りができた。」 ヴァルカン・サインをする。「平和と、長寿を。」
アーチャーも同じ仕草を返す。うなずくクヴァック。
トゥパウ:「新しい時代の証人になったわね。ヴァルカンだけじゃなく、地球にとっても。」 最高司令部の部屋を出る。
ソヴァル:「大臣は今後、地球に対し口出しをしない方針だ。最高司令部は解散する。」
「もう、我々は必要ないわ。独自の道を進む時よ。」
アーチャー:「やっとね?」

洞窟にいるヴラス。「よくもしくじりおって。長年の苦労が台無しだ!」
相手の男。「己の無能力を私のせいに。」
ヴラス:「アーチャーを殺すべきだった。」
「地球人を巻き込んだのはお前だ。ヴァルカンを去る、ここにいては危険だ。」
「私はどうなるんだ。」
「今は待て、お前が消えれば疑いを招く。これは単なる遅れに過ぎん。我々の再統一は単に時間の問題だ。」
相手はタロックだった。
しかし額には隆起がある。ロミュラン※20だ。※21


※19: Vulcan Priest
(ジャック・ドナー Jack Donner) ENT第79話 "Home" 「ヒーローたちの帰還」以来の登場

※20: 船は ENT第29話 "Minefield" 「許されざる越境」で登場しましたが、実際に種族が姿を見せるのは ENT 初

※21: その他の声優は白熊寛嗣、武虎、高階俊嗣、大久保利洋、近藤広務

・感想など
ヴァルカン三部作が完結しました。このエピソードだけ見ると、今回いまいち影が薄いアーチャーを無理に活躍させたいような格闘シーンも見られます (カトラは心身共に影響するんですかね…)。ですが全体で考えた場合、これまでの ENT では考えられないほどの高水準にあることは間違いないでしょう。要は ENT が始まった当初から誰しもが感じていた、「これがヴァルカン人…?」という率直な疑問についての回答というか、23世紀以降へ向けての軌道修正というわけなんですね。以前あった精神融合に関する設定も、無理なく曲げて後世へとつなげています。
同じ俳優が演じた DS9 のレイトン提督同様、あまりにも強硬なヴラス長官。その原因は実はロミュラン (アーチャーたちを追った保安部員の正体という点にも注目) だったわけですが、これもファンにはたまらないところでしょうね。一方で不評だったズィンディのネタも絡めてくるところは、上手いと思うのと同時に苦笑したくなる感じでもあり…。


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