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ディープスペースナイン エピソードガイド
第174話「自由への叫び」
The Dogs of War

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・イントロダクション
※1※2司令室。
シスコがターボリフトでやって来た。「まだか。」
オブライエン:「もう来る頃です。遅いですねえ。」
「どうも上手くいかないようだな。」
ベシアも司令室にいる。「やあ、エズリ。」
エズリ:「…あの…オドーはどう?」
「もう病気の症状は全く見られなくなったよ。すっかり治ったようだ…。」 転送してくる士官がいる。
「そう、よかったわ。」
「うん……ああ…今日の午後にも、退院させようと思ってる。」
「…そう。きっと喜ぶわ。」
「ああ…。」
2人の様子を見ていたオブライエン。「わからんよ。お互いに好きだっていうのに。何やってんだ。」
ウォーフ:「ベシアは子供すぎるし、エズリはあまりに…混乱しすぎてる。」
「どうなるか。…着きました!」
司令官室から出てくるシスコ。「スクリーンに。」
映し出されたのは、ディファイアントと同じ形状の船だった。
エズリ:「別のディファイアント級があるなんて知らなかった。※3
シスコ:「それは君がミーティングに出なかったからだ。」
オブライエン:「どこも、そっくりだ。」
「能力もそうだといいが。」
DS9 にドッキングする船。

"U.S.S. SAO PAULO" と書かれた、ブリッジの記念銘版。
ロス※4:「諸君に、命令を通達する。宇宙艦隊司令部、艦隊本部より、ベンジャミン・シスコ大佐に対し、本日をもって貴殿の要請に応じ、U.S.S.サンパウロ※5の指揮官を命じる。署名、ウィリアム・ロス提督※6。宇宙暦、52861.3。コンピューター、全指令コードをシスコ大佐に。」 パッドをシスコに渡す。
『指令コード、転送完了。』
握手するシスコ。「感謝します。」
ロス:「活躍を期待する。君の船だ。申し分ないだろ?」
「私には…もったいないくらいです。」
ロスは出ていく。
ベシア:「床がちょっとな。参った。」
ロス:「そうそう、忘れてた。もう一つ。パッドに君を驚かせる通達が入ってる。」 ブリッジを去った。
読み上げるシスコ。「特別適用処置。宇宙艦隊作戦部長より、サンパウロ※7の名前を、ディファイアントと…変更する。」
クルーは顔を見合わせて笑った。喜ぶシスコ。
コンソールを確認するオブライエン。「ああ…この船に攻撃を仕掛けてきた途端、ブリーン軍の奴ら腰抜かすだろうな。」
ウォーフ:「シールドジェネレーターは完全に改造されている。」
「見てこよう。」
ベシア:「じゃあ僕は、医療室をチェックしてくるか。」
エズリ:「…私も、お邪魔のようね。」
独り残されたシスコは、艦長席に座った。「よろしくな。」

航行するジェムハダー船。
惑星の映像が見えている。
ガラック※8:「カーデシア。今も変わらず美しいままだ。」 バーチャルディスプレイを装着している。
ダマール※9:「ドミニオンが居座ってる限り美しいとは言えん。」
ディスプレイをつけたカーデシア人、セスカル※10。「軌道コントロールが保安コードを求めています。」
ガラック:「私にお任せを。」
キラ:「危険を冒すだけの価値があることを祈ってるわ。」
ダマール:「ガル・リヴォック※11とレガート・ゴリス※12が援軍をよこしてくれることになった。50万人は下らん。ガル・セルタン※13を説得できれば更に 10万は増える。価値は十分だ。」
「本当に私も必要なの?」
「連邦の支援があることを示さねばならん。」
ガラック:「軌道の通行許可を得ました。」
「転送準備をしろ。」
セスカル:「はい、既にスタンバイ済みです。」
「ブリッジを頼む、セスカル。」
「幸運を。」
出ていくキラたち。

洞窟内に転送される。
叫び声が聞こえてくる。武器に手をかける 3人。
下には火が炊かれているが、カーデシア人の死体が何体も転がっている。
更にカーデシア人が撃たれた。
身を隠すキラたち。
撃ったジェムハダーたちの声が飛ぶ。「それで最後か!」「はい、そうです!」「エリアを封鎖しろ!」「了解です!」「裏切り者は殺したと報告してくれ!」
ガラック:「なぜバレたんでしょ。」
カーデシア人がやってきた。「これはこれは。見事なもんだ。私の言った通りでしょう?」 ヴォルタ人に話している。
ダマール:「ガル・リヴォック。裏切ったのか。」
通信するキラ。「キラよりセスカル。早く転送して。」

爆発する船内。
セスカル:「攻撃を受けました! シールドを下ろせません! ディスラプターを狙って撃ち返せ! 補助パワーを全て武器システムに!」 他のカーデシア人と同じく、床に倒れる。
最後にブリーン船の攻撃を受けたジェムハダー船は、爆発した。

呼び続けるキラ。「セスカル? セスカル!」


※1: このエピソードは、シスコ役エイヴリー・ブルックス監督作品です。担当した 9話のうち、第137話 "Far Beyond the Stars" 「夢、遥かなる地にて」以来で最後となります

※2: また、このエピソードは 1999年度エミー賞のメーキャップ賞にノミネートされました

※3: この段階より前に登場したものとしては、U.S.S.ヴァリアントが DS9第146話 "Valiant" 「過信」に、名称不明の複数のディファイアント級が VOY第82話 "Message in a Bottle" 「プロメテウスの灯を求めて」に登場しています

※4: ロス提督 Admiral Ross
(Barry Jenner) DS9第171話 "When It Rains..." 「嵐の予兆」以来の登場。声:石波義人

※5: U.S.S. Sao Pauro
NCC-75633、ディファイアント級。内装は一部ディファイアントと変えられています。記念銘版の言葉は "Give me liberty or give me death..." 「我に自由を与えよ、しからずんば死を」。パトリック・ヘンリーの言葉

※6: 原語では "Vice Admiral"=「中将」と言っています。階級章と一致

※7: 「サンパウロ」と吹き替え

※8: Garak
(アンドリュー・J・ロビンソン Andrew J. Robinson) 前話 "Extreme Measures" 「心の決死圏」に引き続き登場。声:大川透

※9: Damar
(ケイシー・ビッグス Casey Biggs) DS9第172話 "Tacking into the Wind" 「嵐に立つ者たち」以来の登場。声:古田信幸

※10: Seskal
(ヴォーン・アームストロング Vaughn Armstrong) DS9 "When It Rains..." 以来の登場。名前は初言及。声優は変更されています

※11: Gul Revok

※12: Legate Goris

※13: Gul Seltan

・本編
返答を求めるキラ。「セスカル…セスカル、応答して!」
ガラック:「もう生存者はいないと思います。」
「…早くここを出なきゃ…」
「危険です。」
「ダマール、逃げ場所はないの?」
ダマール:「知り合いは皆捕まるか殺された。」
ガラック:「街の中心にさえ出られれば、私に心当たりが一人います。」
キラ:「ここにはいられないわ。」
キラを先頭に、洞窟を去る。

ドアが開けられた。
女性の声が響く。「地下室でも構わないっていうんなら、いくらでもここにいてくれて構わないよ。」 ライトをつけ、階段を降りていく。「何年も音沙汰がないと思ったら、いきなり玄関口にお客さん連れで現れて…かくまってくれとはね。」
後をついていくガラック。「突然押しかけて申し訳ない。でも、信じられるカーデシア人はあなただけなんだ。」
その年老いたカーデシア人は言う。「お前さんに友達がいないのは私のせいじゃないけどね? …どれどれ、電気のスイッチはどこだったかねえ。」
ガラック:「もっと、広かったと思ったけどな。私はこの家で育ったんです。」
ダマール:「ここはテイン※14の家だったはずだ。」
女性:「テインはガラックの父親よ?」
ガラック:「世間には隠してたんです。オブシディアン・オーダーの指導者でしたから。ミラ※15はうちの家政婦であり、最も信頼できる友でした。」
ミラ:「料理は下手くそだけど、秘密はちゃんと守るよ。」
キラ:「早くほかの隊にもリヴォックが裏切り者だって伝えなきゃ。通信装置を手に入れられない?」
ガラック:「あまり、無理をしないやり方で。」
ミラ:「厄介なことをやってるんだね。」
ダマール:「我々は同胞を解放したいのだ。一生ドミニオンの下で暮らしたいか?」
笑うミラ。「…私はこの年だ。今更先の心配したって無駄なことさ。通信装置は用意しましょう?」
ガラック:「ミラ。ありがとう。長居はしないと約束するよ。」
「…どうせなら働いてってもらおうか。ここはもう何年も掃除してないからね。」 歩いていくミラ。
キラは近くにあった布を、ガラックに投げ渡した。「聞こえたでしょ!」
ガラック:「フン、革命家には申し分のない隠れ家だ。うん。」

DS9。
ベシアは言った。「もうどこにも異常はない。いつからでも仕事に復帰できるよ。」
オドー:「よかった。いつから任務に復帰できるのか、キラが気にしていたもんで。」
「…オドー、ああ…言っておきたいことがある。初めて君の病気を見つけた時、僕は間違いなく、創設者たちの一人に移されたものと思っていた。」
「…違うんですか?」
「違う。君の方が彼らに…病気を、移していたんだ。」
「……しかし…私はどこから。」
「故意に感染させられた。」
「誰からですか。」
「セクション31 だ。君を保菌者にし、創設者たちに移して回ることを目論んでたんだ。君を発病させるためではなく…」
「私が発病しなければいいという問題じゃない。ここで問題なのは、連邦が我が種族の全滅を計ったという事実です!」
「セクション31 は連邦の組織じゃない。勝手に設立された…」
「そんなことは言い訳にしか聞こえない! 彼らはこの私を道具として利用し、大虐殺を行おうとしたんです。たとえ創設者が敵だとしても、言い訳にはなりません。」
「君の言う通りだ。」
うなずくオドー。「この件について艦隊はどうするつもりなんです?」

上着を脱いでいるシスコ。「創設者に治療法を渡すことも検討したが…結局やめたらしい。」
オドー:「それでは虐殺幇助です!」
「セクション31 のしたことは許せん! だが戦争を始めたのは創設者だ。治療法を渡せば、彼らは力を増す。そんなことはさせられん。毎日前線で、何百万もの男や女が命を落としている、この状況下ではな。」
「抗議の余地がないことはよくわかりました。」 出ていこうとするオドー。
シスコは呼び止めた。「オドー。こんなことは言いたくはないが、独断で勝手なことをしようとは、思わないように。」
オドー:「…はい、大佐。お約束します。」
「それを聞いて安心した。」
「しかし面白いですなあ。連邦はセクション31 のやり方を散々非難しておきながら、彼らの汚い仕事からは目を背ける。それは綺麗事です。ねえ、大佐。」
何も言わないシスコ。オドーはシスコの部屋を出て行った。

2人の女性の間にいるロム※16。「さあ行けって。失うもんはない。」
リータ※17:「仕事を失ったら?」
もう一人のダボガール、エンペラ※18。「構わないわ。この交渉は、首をかける価値がある。」
ロム:「そうこなくちゃ。いいか、最初は 10パーで頼んで、15 で落ち着け。な?」
リータ:「わかった。」
2人のダボガールは向かった。
エンペラ:「クワーク? 話があるんだけど。」
パッドを見ていたクワーク。「言ってみな。」
リータ:「チップの 20%を渡すって高すぎると思うの。」
「うん。」
「…せいぜい 10%とこがフェアだわ? 聞き入れてくれるまで仕事しないから!」
「10パーだと?」
フェレンギ人のブロイク※19が、リータたちの間に割り込んだ。「クワーク、あんた宛てに通信が入ってる。フェレンギ星のグランド・ネーガスからだ。」 押しのけられる。
顔を上げるクワーク。「…わかった! すぐ出る。」
リータ:「クワーク?」
「考えとくよ!」 カウンターから去るクワーク。
ロムが近づく。「何だって?」
リータ:「考えとくって言ってた。」 エンペラと一緒になって喜ぶ。

クワークは荷物だらけの控え室に入った。通信コンソールに触れる。
椅子に座ったゼク※20が映し出された。『お前か。』 映像がかなり乱れている。
クワーク:「ええ、そうです。」
『ほとんど顔が見えんぞ。』
「ノイズのせいです。」
『そうか、そりゃすまんな。雨が降ってるからじゃ。』
笑うクワーク。「そっちはいつだって雨じゃないですかあ!」
ゼクの声は聞き取りにくい。『いいや、普通の雨じゃない。発電所で事故が遭ってな? 請負業者が材料費を安くあげて、残りをピンハネしたせいじゃ。あの強欲共が…。おかげで街中有毒ガス…電気…雲に、ドンヨリと覆われとる。全く何という有様だ。』
クワーク:「それで、どんなお言葉を頂けるのでしょう?」
『小言だと? 何を言っとるんじゃ、わしは怒る気などないぞ。』
「違います、『お言葉』って言ったんです。」
『怒る気はないと言っとるんじゃ。いいから黙って聞いとけ。わしは引退することにした。お前の母親とライサへ移住して、老後をゆっくりと楽しむつもりだ。若い頃のようにな。この意味がわかるか?』
「そりゃあいいや! …多分。」
『そこで後継者を任命するために、ディープ・スペース・ナインへ行く。』
「なぜです?」
『なぜだと思う。』
「雨をしのぎに?」
『いや、そうじゃない。後継者にはお前をすえることにしたんだ。これからはお前が新しいグランド・ネーガスだ。おめでとう、期待してるぞ。』 ゼクの通信は切れた。
座ったクワークは、喜びの声をあげた。「アーー!」


※14: エナブラン・テイン Enabran Tain
カーデシアのオブシディアン・オーダー元リーダー。DS9第42話 "The Wire" 「義務と友情」などに登場。故人

※15: Mila
(ジュリアナ・マッカーシー Julianna McCarthy) 30年以上に渡ってエナブラン・テインに仕えた家政婦であり、親友。DS9第66話 "Improbable Cause" 「姿なき連合艦隊(前編)」以来の登場。声優は変更されています

※16: Rom
(マックス・グローデンチック Max Grodenchik) DS9第162話 "The Emperor's New Cloak" 「平行世界に消えたゼク」以来の登場。声:田原アルノ

※17: Leeta
(チェイス・マスタースン Chase Masterson) DS9 "The Emperor's New Cloak" 以来の登場。声:榎本智恵子

※18: M'Pella
(Cathy DeBuono 元々はジャッジア (テリー・ファレル) の撮影用代役として雇われたそうです。エンペラ以外でもエキストラ出演あり) DS9第143話 "In the Pale Moonlight" 「消された偽造作戦」にも登場。その際はエキストラ (吹き替えでは「ムペラ」。他のエピソードにも出ている可能性あり)

※19: Broik
(David B. Levinson) 初期から登場・言及されていたウェイター。通常はエキストラでしたが、その全てが Levinson によって演じられていたかは知る術もありません。今回に限ってセリフやクレジットがあるのはエンペラと同様、最終話直前ということでの特例かも?

※20: Zek
(ウォーレス・ショウン Wallace Shawn) DS9 "The Emperor's New Cloak" 以来の登場。声:田の中勇

ベシアはレプリマットにやってきた。
先に来ていたエズリと、ぶつかりそうになる。
エズリ:「おっと!」
ベシア:「あっ! ああ、ごめん…。」 笑う 2人。
「こっちこそ。」
「…ったく、驚いたな。やあ。」
「ハーイ…。」
「ランチかい?」
「ええ、いい時間だから…。」
「そう。…白々しすぎる。」 ベシアはエズリの食事を脇へ置いた。
「そうね。」
「ずっと言おうと思っ…」
同時に話すエズリ。「話があるの…先言って。」
ベシア:「いや、君から。」
「ほんとに、ジュリアン。先言って。」
「…わかった。僕らはいい友達だが、最近…こう思い始めたんだ。僕らは、もっとこう…何て言うか……」 レプリマットを出て、別の店に入る 2人。
「親しくなれないか?」
「そう! その通りだ。」
「私もそう思ってたわ?」
「僕だけだと思った。」
「私も!」
「だから何か妙に緊張して。」
「ずっと言おうと思ってたんだけど、言葉が…出てこなかったの。」
「わかるよ、どうしてだろ。」
「わからない。」
「あ…いつもはこんなんじゃないんだ。誰かを好きになったらすぐに、すぐにそう伝えてる。こんな、気持ちの探り合いはしたりしない。」
「私だって。……思うんだけど、このままでいない? …友達で。」
「…そうだな…せっかくの友情を…わざわざ壊すことはない。」
「前に同じ過ちをしたわ。」
「ああ、一度一線を越えると…」
「もう戻れない。」
「…つき合いが終われば、友達ですらいられなくなる。」
「…あなたを失うなんて耐えられない。」
「僕もだ。……じゃあ、いいね。」
「…一件落着。……すごく大人の判断だと思う。一時の…感情に流されないで友情を選ぶのって。」
「ああ、その通りだ。…欲望には、理性で対抗しなくちゃ。」
「恋愛が全てじゃない。」
「そうとも、僕らは…大人だ。」
「私たち、誇りをもつべきよ?」
「全くだ、気分も良くなった。友達だ。」握手するベシア。
「友達よ。」

仰向けになっているクワーク。「信じられねえ! 来週の今頃は、ネーガスの豪邸に住んでるなんて!」 店のカウンターの上だ。
クワークを取り囲む一人、ノーグ※21。「噂によると、ゴミの再利用機までラチナムでメッキしてあるらしいよ。」 笑う。
クワーク:「そうとも……そうだ!」 体を起こす。「そうそう、まずそいつを処分して、純ラチナム製の再利用機と交換するとしよう。」
リータ:「それっていくらなんでも贅沢しすぎじゃない?」
「贅沢して何が悪い。ネーガスは、みんなの手本とならねばならない。俺が国中の連中を啓蒙してやるんだ。欲が深いと、得することを証明してやる。」
クワークの顔に触れるエンペラ。「私もネーガスの豪邸に連れてって? 独りじゃ寂しすぎるでしょ?」
顔を見合わせるロムとリータ。
クワーク:「言われなくてもお前の部屋は用意してあるさ。商いの塔※22が見える部屋をな? もちろん? お前たちの部屋もある。弟、勇敢なる甥っ子、可愛い義理の妹。」
ロム:「清算人ブラント。」
「それはない。」
首を振るノーグたち。「まさか。」
ロム:「違う、来たんだ。」
店にブラント※23が入る。モーンも振り返る。
クワークはカウンターを降りた。「今度は何の用だ、ブラント?」
笑うブラント。「今フェレンギ星はある噂でもちきりでなあ。それによれば、グランド・ネーガスがディープ・スペース・ナインに後継者を任命しに来るという。」
クワーク:「噂話も今度だけは、本当だ。」
「そうか…!」 ブラントはいきなりひざまづき、クワークの手に何回もキスをし始めた。「何万回でも、祝福を申し上げます! 我が、ネーガスよ!」 その様子を見ているリータたち。
うなずくクワーク。
隣に立つノーグ。「まだネーガスじゃないぞ。」
ブラント:「へつらうのに早すぎることはない!」
クワーク:「ネーガスってのは実に気分がいい。続けろ。」

カーデシアの街頭に、ウェイユン※24の映像が表示されている。『勇敢なるガル・リヴォックの尽力のおかげで、ダマールとその一味を、カーデシアにおびき出すことに成功した。』
街のいたるところでカーデシア人が見ている。
ウェイユン:『…奴の共謀者たちはカーデシア市民を扇動するという目的を達する前に殺される。そしてダマール自身もまた、盗み出したドミニオン船の中で…』

小さな通信機で映像を見ているキラたち。
ウェイユン:『我々の防御線を突破しようと企てて戦死した。更に…』 キラたちが乗ってきた、ジェムハダー船が爆発する映像だ。
キラ:「これなら追って来ないわね。」
ウェイユン:『…今から数時間前、我が軍の情報部から入った報告によると、我らが勇敢なる軍隊はダマール率いるテロリストのアジトに一斉に奇襲をかけ、アトバー・プライム※25からレグラク4号星※26、更にはシンペルア※27からクイノー7号星※28に至るまで、合計 18個所の基地を壊滅させたとのことだ。反乱軍がいくら抵抗しても…』 ドミニオン戦艦などの攻撃により、様々な地上基地が失われていく。※29
ダマール:「全滅だ。」
『…我々の勝利が揺らぐことはない。我々は必ず勝つ。今日は、ドミニオンにとって記念すべき日となった。』 ドミニオンの映像は終わった。
「なぜあれだけ用心していたのに、基地を知ることができたんだ! 通信内容は全て暗号化させていたし…」
キラ:「そんなことはどうでもいいわ! …もう遅いのよ。…とにかく、早くカーデシアから出なくちゃ。ガラック、それを使って連邦と連絡を取れる?」
ガラック:「信号波が強いので、発信した途端ドミニオンに見つかってしまいます。」
「だったらほかの方法を探さなくちゃ。私は嫌よ!」 コミュニケーターをつける。「この戦争が終わるまで、ここにいるのは。あなたたちは?」
無言のダマールとガラック。
キラ:「どうなの!」


※21: Nog
(エイロン・アイゼンバーグ Aron Eisenberg) DS9第170話 "The Changing Face of Evil" 「変節の時」以来の登場。声:落合弘治

※22: Tower of Commerce
フェレンギ母星の行政拠点。DS9第69話 "Family Business" 「クワークの母」など

※23: Brunt
(ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs) DS9 "The Emperor's New Cloak" 以来の登場。声:小島敏彦

※24: Weyoun
(ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs) DS9 "Tacking into the Wind" 以来の登場。ブラント役と同じ俳優であり、同一エピソードに登場するのは初めて。続けて登場させるあたりが面白いですね。声:内田直哉

※25: Atbar Prime

※26: Regulak IV

※27: Simperia

※28: Quinor VII

※29: 全て過去の映像の使い回しです。DS9 "Valiant" 「過信」のドミニオン戦艦による攻撃、第150話 "Tears of the Prophets" 「決意の代償」の衛星上エネルギー発生機の爆発、第125話 "A Time to Stand" 「明日なき撤退」のケトラセル・ホワイト貯蔵施設の爆発、第157話 "Once More unto the Breach" 「今一度あの雄姿を」のトレルカ5号星宇宙基地の爆発など

足の爪にペディキュアを塗られているクワーク。「ああ…ああ。金融アドバイザー? あんたが?」
やっているのはブラントだ。「フェレンギ星にはコネが山ほどあります。」
クワーク:「コネなんていらねえよ。ネーガスと商売をしたいって奴は山ほどいるはずだ。手を止めんな。」
「おお…でもきっとあなたの気持ちを変えられる方法があるはずだ。そう思いません?」
「まあな。じゃあ、これでは…ラチナムの大きな塊を 40ブロック。」
「ダメだ。70 ならいい。」
「50。」
「60。」
「のった。」
笑う 2人。
ブラント:「あ、それじゃあ、サインを下さい。」 パッドを渡す。
クワーク:「これは?」
「レシートです。」
「賄賂に?」
「ええ、もちろん。賄賂だって税金の控除の対象になりますからねえ。」
「おい、待てよ。今『ぜ』のつく言葉使ったか?」
「『税金』ですか?」
「フェレンギ星に、『ぜ』が…できたのか?」
「あんたもしかして最近法律が改正されたの知らないのかよう? ゼクは、3ヶ月前思い切って進歩的な所得税法を導入した。」 パッドを操作するブラント。
「法改正だと? 税金は商売の自由の精神に反するじゃねえか。ああ…『ほんと』の商売ができなくなる。」
「政府は、新しい社会制度の導入に金が必要なんだ。」 またパッドに触れるブラント。「低所得者への保護や、退職した老人の年金や、病人の保険、山ほど…」
「待てまてまて。まさかこんな事態になってるとはな。これは全部マミーのせいだ。あの女がゼクの頭に平等やら同情やらを植え込んじまっただよう。適者生存の精神はどうした。」
「ああ…」
「金持ちはより金持ちにの精神はどうしたんだ? 俺たちに大切なのは…純粋で、嘘偽りのない欲望だ…」
「欲望か? 時代は、変わったんだよ。」
「だったら俺が変え直してやる。……まず手始めに、法律改正とやらの撤回だ。このままじゃ、フェレンギ星は…連邦みたいになっちまう。」
「ほう…そんな勝手なことを、経済顧問議会※30の連中が認めるかねえ…」
「そんなわけのわからねえ連中、知ったこっちゃねえ。ネーガスなら何でもできるはずだ。」
「そりゃ違う。…ネーガスによって提示された全ての規則は、法律に制定する前に、顧問議会に通さなければならない。」 またパッドを見せるブラント。「だがネーガスはネーガスだ。じゃなきゃ私はここへは来ませんよ?」
クワークは両手首を合わせた。「聖なる金庫様。」
ブラントも金色のフェレンギ人の像に祈りを捧げる。
クワーク:「お許し下さい。地獄に堕ちてしまったあなたの子供たちを。」

カーデシア・プライム。
キラやダマールはベッドに横になり、ガラックも時間をもてあましている。
ドアが開いた。
ミラ:「全くこのザマを見せてやりたいね。」 降りてくる。
ダマール:「誰に。」
「外の連中にさ! みんなしきりに噂してるよ。ダマールとその同志のことを。」
キラ:「何て言ってるの? まんまとドミニオンの罠にはまった馬鹿な連中だって?」
ダマール:「思い上がりもいいとこだな。ドミニオンを倒せると思うなんて。」
ガラック:「死んで当然だと思われてるんでしょうね?」
ミラ:「誰もダマールが死んだなんて思っちゃいない。あんたらに聞かせたかったよ。『ダマールはまだ生きてる! 従兄弟はケルヴァス・プライム※31で見たって言ってた!』 『死んだってのは見せかけだ! 今もきっと、山奥の隠れ家で、攻撃の機会を狙ってるに違いない。』」
キラは体を起こした。
ガラック:「山奥に隠れ家があったとは知りませんでした。」
ダマール:「後で言おうと思ってたんだ。」
キラ:「どうしてあなたの死を認めないのかしら。」
「ドミニオンにはだまされ続けてきたんだ。今更奴らの言うことは信じんさ。」
「…それだけじゃなかったら? 私たちの反乱を聞いて、あなたを…伝説の英雄にしてるのかも。」
「ヘ、馬鹿馬鹿しい。」
「ねえ、わからない? 彼らはあなたを信じたがってるの、これは利用できるわ。確かに私たちの反乱軍は全滅した。でも軍に所属していないカーデシアの一般の人々だって、ドミニオンの圧政にはもう飽き飽きしてるのよ。もしダマールが、ドミニオンでも殺すことのできなかった英雄が、彼らに立ち上がれと呼びかけたら。」
ガラック:「私たちの手で革命を起こすことができます。」
ミラ:「じゃなきゃ、このままいずれ死ぬかだね。」
ダマール:「どっちにしろ、ここでくすぶってるよりはましだ。…いつ始める。」 体を起こす。
キラ:「…ジェムハダーの兵舎は?」

女性可変種※32の病状は、相変わらずのようだ。ドアチャイムが鳴る。「入りなさい。」
ブリーン人たちが入る。「――。」
続けてウェイユン。「ご紹介いたします。ガル…いや失礼、レガート・ブロカ※33。カーデシア連合※34の新たな指導者です。」
カーデシア人は礼をした。「全力で創設者に、お仕えすることを誓います。」
女性可変種:「あなたの誓いは了承しました。」
ブロカ:「ソット・プラン。ブリーン軍と戦えることを、心より光栄に思います。」
ソット・プラン:「――。」
ウェイユン:「早速ですが、カーデシア市民に向け正式な文書を発表して頂きたい。ドミニオンは決して彼らに…」
女性可変種:「それは、後でよろしい。」
「後でよろしい。」
「もはや反乱軍は壊滅しました。腰を据えて、本来の敵に向けた戦略を練る時です。エネルギー抑制兵器は既に対抗策を発見され効果はありません。従って戦術を変更する必要がある。我が軍は撤退します。」
ソット・プラン:「――。」
「いいえ? 降伏するという意味ではありません。」
ウェイユンはソット・プランに言う。「全く何てことを! ドミニオン誕生以来 1万年間、降伏などとは一切無縁です。」
女性可変種:「我が軍を、カーデシアの領域へ撤退させることを命じます。…我々は新たに防御線を築くのです。この境界線に沿って。」 宙図を示す女性可変種。「守るべき領域が少ないだけ軍隊に余裕ができ、敵が攻撃を仕掛けてきた場合、いかなる攻撃も防ぐことができます。」
「惑星連邦の本質は、臆病者の集団に過ぎません。我が軍の撤退を知っても、十中八九生還することを選ぶでしょう。」
ブロカ:「だがクリンゴンやロミュランはどうなる。奴らは……これは決して異論ではありません。単に疑問に、思っただけです。」
「連邦がいなければ恐るるに足りません。」
女性可変種:「一旦この防御線の設定が完了したら、造船作業に今の 2倍の力を注ぎ、ジェムハダー軍の強化を図るのです。退却は戦争を長引かせるでしょう。しかし最後には、我が軍の強さが証明され、アルファ宇宙域に現在より遥かに強化された、確固たる地位を築けるのです。」


※30: Congress of Economic Advisors

※31: Kelvas Prime
DS9 "Tacking into the Wind" でケルヴァス5号星 (Kelvas V) が言及

※32: 女性流動体生物 Female Shapeshifter
(サロメ・ジェンス Salome Jens) DS9 "Tacking into the Wind" 以来の登場。声:宮寺智子

※33: Broca
(メル・ジョンソン・Jr Mel Johnson, Jr.)

※34: 吹き替えでは「カーデシア連

クワークは店の中に、様々な物を投げ入れた。2階に上がる。「お前知ってたか? 経済顧問議会とやらのお節介な連中がだ、市場の独占を禁止したとよう。株を買い占められねえで、商売の醍醐味が味わえるか。客だってだませねえ。」
後につくロム。「健全な競争を保証すれば、物価の上昇が防げる。ところで、このバーどうするの…」
クワーク:「もう産業廃棄物も捨てられねえ。『環境』を破壊するからだってよ。動物の心配までしなくちゃならねえ。泥を好むもの、木で眠るもの。いつまでもそれが自然とは言えんさ。」
「多様な生態系を保っていくことは、フェレンギ星にとって大切な資源になる。それで…このバーはどうする気なの?」
ロムのパッドを読むクワーク。「ヘ! こんなものまで保証してる。『労働者の権利』だってよ。」
ロム:「ああ…」
「信じられねえ! 自分とこの従業員を口説くこともできねえなんて。」
「その方が生産性が上がるでしょ? このバーはどうするつもりなのさ、兄貴!」
「売るよ! もってたってしょうがねえだろ。」
「…5,000ラチナム・バーで売って! それ以上は払えない。」
「妥当な線だ。」
「ほんと?」
「な、ロム。フェレンギ人はどうかしちまったんだよ。」
「契約書も持ってるんだ…」
「聞くところによると、もう 40%以上のフェレンギ人が、天国に聖なる金庫があることを信じてないそうだぜ。」
「ねえ、ここに拇印押してくれない?」
「それどころか子供たちに金儲けの秘訣さえ教えてない!」 拇印を押すクワーク。
「ああ、もう一個所。ここにも。」
「フェレンギ人は、みんな伝染病に冒されちまったんだ。それでヤワになった。」 また拇印。
「あっ。5,000ラチナム振り込んだから。兄貴と取り引きできて嬉しい!」
「5,000?」
「…8,000ぐらいいくと思ったんだけど。」 笑うロム。
「言い値で受けちまった。」
「そうだね、ほんとビックリした!」
「どうしちまったんだ?」
「心配ないよ、すごい金持ちになるんだ。ラチナム・バーの 2、3千本。」
「俺にも移ったのか。もう何ヶ月も代金を上げてねえ。その上ダボガールのチップの取り分を、増やすことも考えてた。完全にヤワになってる。」
「そっちの兄貴の方が好きだなあ…」
「ふざけるな。俺はこのまま黙っちゃいねえぞ。」 パッドを投げ置くクワーク。「一刻も早くこの病気を止めてやる。フェレンギ星全体がヤワになっちまう前にな。俺をネーガスに選んだ以上、ゼクも俺の好きなようにやらせてくれるはずだ。じゃなかったら、俺はネーガスになることを断る。」 1階に戻った。
「兄貴、それ本気かい!?」
「ああ、本気だ。」
「でも、ネーガスになれば金持ちになれるんだよ!」
「構うもんか! 俺は黙ってフェレンギ文明の終焉を見取る気はねえ。絶対御免だ! ここでキッパリと線を引くべきなんだよ! これ以上、ヤワにはさせないぜ!※35

カーデシア人が歩く街頭。ジェムハダーたちを引き連れるヴォルタ人。「あっちだ。」
キラはフードを被っている。「まだ出てこないわ。何かあったのよ。」 後ろにはダマールがいる。
ジェムハダー※36の声が聞こえる。「おい、そこのお前! 労働許可証を見せろ。」
呼び止められたのはガラックだった。「ああ…入り口で見せたばかりです。」 別のジェムハダーも近づく。
ガラックのパッドを確認するジェムハダー。「ファーストの労働許可が下りていない。」
ガラック:「ああ、そうなんです。事情がありましてね。」 ジェムハダーとの話を続ける。
ダマール:「時間は。」
キラ:「セットしてから 3分後に起爆するはずよ。もういつ爆発してもおかしくない。」


※35: この部分の原語 "The line has to be drawn here! This far and no further!" は、映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」でピカード艦長がリリー・スローンに対して言った言葉と同じ。観察ラウンジでボーグに対する決意を述べるシーンで、吹き替えでは「もうこれ以上は後には引かん! これより先にはいかせない!」となっていました。パロディ的な引用ですね

※36: Jem'Hadar
(Paul S. Eckstein DS9第126話 "Rocks and Shoals" 「洞窟の密約」の Limara'Son、VOY第86・87話 "The Killing Game, Part I and II" 「史上最大の殺戮ゲーム(前)(後)」の若いヒロージェン、第107話 "Gravity" 「ブラックホールと共に消えた恋」のヨスト (Yost)、第156話 "Flesh and Blood, Part II" 「裏切られたホログラム革命(後編)」の新しいアルファ・ヒロージェン、第160話 "Prophecy" 「預言の子」のモラック (Morak) 役)

話し続けるガラック。「ですから、さっき申し上げた通り…」
ダマール:「早く戻れ、ガラック。」
キラ:「何とかしなくちゃ。」 その場を離れる。
必死に弁明するガラック。「なぜそんなに騒ぎ立てることがあるんです。修理の予定が詰まってるんですよ。一晩中ここであなた方と…」
ジェムハダー:「ここで待っていろ。ファーストを、お呼びする。」
「どのくらい待てばいいんでしょう。」
「いいから待て!」
ダマールの声が響いた。「おい! ジェムハダーめ。カーデシア市民に対して何という口の利き方だ!」 姿を見せる。
ジェムハダー:「貴様は、ダマール!」 もう一人のジェムハダーにガラックのことを指示する。「そいつを逃がすな!」 ダマールに銃を向けた。「降伏しろ。さもなければ殺す。」
「どちらも、断る。」
その瞬間、ジェムハダーはフェイザーで撃たれた。隠れたキラが撃ったものだ。
ガラックはナイフを奪い取り、もう一人のジェムハダーの首元に突き刺した。
ダマール:「みんな伏せろ!」 近くにいたカーデシア人たちに飛びかかる。
爆発が起こる。爆風で吹き飛ばされる人々。
ジェムハダー兵舎の連続した爆発は収まった。騒ぎを聞きつけた人々が集まってくる。
倒れた人も起きあがった。
一人の若者※37が言った。「ダマールだ。ダマールだ! やっぱり生きてた!」
ダマール:「カーデシアの市民諸君!」 歓声が上がる。「聞いてくれ。ドミニオンは君らに、反乱軍が全滅したと言った。しかし今ここで、また一つ奴らの嘘が証明されたのだ!」 人々に紛れているガラック。キラも見守る。「我らの自由への戦いは続いている! そして今、君たちの力を必要としているのだ。私は全てのカーデシア市民に告ぐ。立ち上がれと。立ち上がって共に戦えと。」 倒れていた人を起こすダマール。「我が軍は君たちが必要なのだ! 我らが結束すれば何も、恐れるものはない! 自由を、この手に取り戻すのだ!」 喜ぶ人々。
ガラックは叫んだ。「自由をー!」
若者:「自由を!」
カーデシア人たちから声が上がる。「自由を! 自由を! …」 ダマールも唱え続ける。見つめるキラ。
そしてダマールとガラックは、その場を離れた。
キラも去る。

DS9。
廊下を歩いてきたエズリは、ターボリフトの前に来た。「おはよう。」
ベシア:「おはよう…。」
笑うエズリ。「何よ、何笑ってるわけ?」
ベシア:「良かったと思ってさ。この前、ああして話してなかったら、お互い靴を見つめて…立ってるだけだった。」
「…それどころか引き返してたわ、あなたの姿を見た途端。」 笑う 2人。
「友達に戻れてよかったよ。」
「私も。」
到着したターボリフトから、女性が降りてきた。「失礼?」
2人は中に入った。見つめ合う。

司令室に到着したターボリフト。
そこへ士官たちが注目する。
通りかかったオブライエンも、気配に気づいた。
ターボリフトの中で、ベシアとエズリが抱き合って口づけを交わしていた。着いたことも知らないようだ。
オブライエンはウォーフに言った。「解決したようだ。」
ウォーフは、コンピューターのボタンを押した。
二人を乗せたターボリフトは、そのまま引き返していった。

クワークの店で話すブラント。「ネーガスが後継者に引き継がれる瞬間を、この目で見られると思うと胸が熱くなる。…いやあ私は実に幸せ者です、このような歴史的瞬間に立ち会えるとは。」 ロムたちもいる。
クワーク:「想像以上に歴史的なことが起こる。」
リータが駆け込む。「いらしたわよ!」
ゼク:「いたいた、会いたかったぞ。」 イシュカ※38やメイハードゥー※39もいる。「じゃあ早速用事を済ませてしまおうかのう?」
クワークは近づいた。「いえ、待って下さい。話がある。」
イシュカ:「やっぱり、きっとゴネると思ってたわ?」
ゼク:「わしはもう決めたんじゃ、クワーク。いくら文句を言おうが、この決定は変えられんぞ?」
クワーク:「私はフェレンギの誇りを奪うような政策を引き継ぐつもりはない。いくら頼まれてもごめんです。どうしても私にネーガスをやらせたければわかって下さい。」
「あ?」 イシュカと顔を見合わせるゼク。
イシュカ:「誰があなたと言いました?」
「どけ邪魔じゃ、クワーク。」 ゼクは別の人物の前に来た。「やあおめでとう、ロム。お前なら素晴らしいネーガスになれる。」
ロム:「…僕が?」
「どうした。この前は喜んでたじゃないか。」
「僕が?」
クワーク:「ありゃ俺だ。」
ゼク:「お前だ? わしゃてっきりロムじゃと思っていた。きっと…ノイズのせいじゃ。誤解が解けてよかった。」
「そんなバカな。本気でこのロムを、ネーガスに…されんですか?」
イシュカ:「私のアイディアなの。」
「そんな。こいつは間抜けだ。」
「あなたは弟を過小評価しすぎなのよ。」
「シーッ!」
ゼク:「新しいフェレンギ星には新しいネーガスが必要なんじゃ。優しくて、穏やかなネーガスがな?」
「ええい…」 クワークは離れた。
「それがお前なんじゃ、ロム。新生フェレンギ号の舵を取るにはそれは大きな責任が伴う。ネーガスは常に留まることなく、物質連続体の海を公開しなければなrなん。破産という名の座礁を避け、繁栄という名の強い追い風を味方にしてなあ。」
ゼクは自分の杓を差し出した。
ロム:「ああ…。」 受け取る。「最善を尽くします。」
喜ぶリータ。笑うノーグ。
ブラントは慌てて歩み出た。「私に一番最初に、祝福をさせて下さい。」
ブラントの肩をつかみ、座らせるメイハードゥー。
ブラント:「何だよう!」
リータ:「ああ、ロム!」 抱きつく。
ノーグ:「やったね、父さん!」
クワーク:「上等だ、ロムがいいなら、連れてきゃいい。奴なら適任ですよ。あなたの新しい労働者天国にはピッタリだ。自然だって救うでしょうし、税金だって好きなだけ集めるでしょう。」
ゼク:「あいつには何を言っても無駄じゃ。」
「俺は、もう何の未練もない。俺の知ってたフェレンギ星はもうどこにも存在しないからです。だけど、俺は必ずこの手でそれを取り戻して見せますよ? このステーションの、このバーでね。」 カウンターに入るクワーク。「そうなればきっとここが最後の砦となるでしょう。フェレンギ星を偉大たらしめた、飽くなき富への欲望を、備えたね。ブロイク! 飲み物を薄めろ。エンペラ! ダボ・テーブルの仕度をしろ。ロム! …バーを買い戻す。」
ロム:「そんなのいいって、兄貴にやるよ。」
「ラチナム・バー 5,000本も返さなくていいんだよなあ?」
「兄貴だもん。」
「そしてお前は間抜けだ。…でも愛してる。…おめでとうよ、ロム。お前なら新生フェレンギの立派なネーガスになれる。」
ゼク:「ほんとにロムでよかったんじゃろうな?」
イシュカ:「さあ、行きましょう? ライサが待ってるわあ?」 笑う二人。
ゼクはロムに言った。「幸運を祈る。それが必要じゃろう。」
イシュカ:「誇りに思うわ?」 ロムと額を合わせた。「行きましょう、ゼッキー?」 メイハードゥーも出ていった。
ロム:「僕、金融アドバイザーが必要なんだけどなあ。」
クワーク:「言っとくが俺は御免だぜ。」
ブラントは立ち上がった。「私なら喜んでお受けします!」
ロム:「それはやだ。」
クワーク:「まあまあ、ペディキュアぐらい塗らせてやれよ。」 笑うエンペラ。 「じゃあ、俺はもう行くぜ。仕事があるんでね。」 エンペラとキスをした。「せっせと稼がにゃ。」
ブラント:「…あの、よければお足を。」
ノーグがブラントを連れていく。
仕事につくリータ。
ロム:「ああ…。」 杓を見つめる。「ワーオ!」

上級士官室。
「ドミニオン撤退」と表示された宙図。
ロス:「情報部からの報告によると、ドミニオンはクリンゴン、ロミュラン、連邦の領域から完全に撤退したそうだ。どうやらカーデシアの領域に、新しい防御線を張っているらしい。」
ヴェラル※40:「ブリーン兵器に対する対抗措置に気づいたんだろう。」
シスコ:「私もそう思います。」
総裁姿のマートク※41。「だが退却には利点もある。必要な兵士も物資も、大幅に減るからなあ。」
ロス:「陣地を狭めれば、それだけ攻撃にも強くなる。倒すには大規模な攻撃が必要だ。」
ヴェラル:「船も大量に必要だ。攻撃よりも、陣地に留めておく方が得策だろう。」
シスコ:「それこそ奴らの思う壺だ。軍を立て直す時間が欲しいんです。」
マートク:「その通りだ。猶予を与えてはならん。全力で叩き潰すべきだ。」
ロス:「防御線を破るには、かなりの血を流さねばならんだろう。」
シスコ:「何もしなければ、ドミニオンは今後 5年は防御線の中に居座り続け、軍備を整えるでしょう。再び出てきた時が、我々の最期です。」
マートク:「我がクリンゴン帝国は、攻撃に一票を投じる。回復させてはなりません。」
ロス:「…どう考えてみても…それしかなさそうだな。」
ヴェラル:「……いいだろう。」
シスコ:「では決まった。攻撃だ!」

シスコの部屋。
寝間着姿のキャシディ※42が座っている。
パッドを読みながら戻ってきたシスコ。「…遅いのに。待っててくれたのか?」 キスする。
何も言わないキャシディ。
シスコ:「どうした。」 またパッドを読む。
キャシディ:「…妊娠したの。」
「…ほんとに?」
「もちろんほんとよ。」 キャシディは浮かない顔をしている。
「ああ…キャシディ。ほんとに、あ…赤ん坊が。君と私の。そんな…あ…」 微笑むシスコ。
「驚いたわ。」
「ああ、『全く』だよ! だけど、どうして。どっちかが先月、注射を忘れて…」
同時に話すキャシディ。「どっちかが先月、注射を忘れたからよ?」
シスコ:「ああ…ああ、ああ。そういえば…ジュリアンに言われてたんだ。いろいろ忙しかったから、ついうっかり…」
「別に謝ることはないのよ。」
「謝る? どうして。こんな…素晴らしいことはない。」
「喜んでくれて嬉しいわ。」
「君は?」
「…預言者たちのことが頭を離れないの。あなたは私と結婚したら不幸になるって言ってたわ。」
「キャシディ、それは乗り越えたはずだ。」
「それはわかってる。確かに、誓ったわ、預言者に私たちの人生の邪魔はさせないって。でもあれは…ああ…妊娠する前だったからよ。もしも…もしも、また預言者に何か言われたら? 赤ちゃんに何か起こるって言われたら?」
「シーッ。」 キャシディを座らせるシスコ。「大丈夫。子供には何も起こりやしない。」
「ほんとに?」
「私は、選ばれし者だ。その私が言う。何もかもきっと、上手くいく。何も心配することはない。」
「信じていいのね?」
シスコはキャシディを抱き寄せる。「…産まれるんだな。」
キャシディは微笑んだ。「私たちの赤ちゃん。」


※37: 名前は Lonar (Leroy D. Brazile VOY第107話 "Gravity" 「ブラックホールと共に消えた恋」の若いトゥヴォック役) ですが、言及されていません

※38: Ishka
(Cecily Adams) DS9第147話 "Profit and Lace" 「グランド・ネーガスは永遠に」以来の登場。声:京田尚子

※39: Maihar'du
(タイニー・ロン Tiny Ron) DS9 "The Emperor's New Cloak" 以来の登場

※40: Velal
(Stephen Yoakam) DS9 "When It Rains..." 以来の登場

※41: Martok
(J・G・ハーツラー J.G. Hertzler) DS9 "Tacking into the Wind" 以来の登場。声:大山高男

※42: Kasidy
(ペニー・ジョンソン Penny Johnson) DS9 "The Changing Face of Evil" 以来の登場。声:弘中くみ子

・感想
シェイクスピア由来の原題をもつ最終話直前のエピソードは、先週の内容に対抗するかのように濃いストーリーとなりました。登場人数は再登場キャラで 17人、レギュラーと合わせて 25人、その他も含めると実に 30人に及びます。中でも第3シーズン以来で俳優も同じ方で再登場した、テインとガラックの家政婦「ミラ」はファン泣かせの設定ですね。
最終話に引き継がれるかは微妙なところですが、おなじみのフェレンギ関連メンバーも勢揃いしました。単なるうだつの上がらないウェイターだったロムが、ベイジョーのエンジニアとなり、DS9 撤退時には連邦側で活躍し、そしてグランド・ネーガス・ロムという結末を迎えました。キャラクターの成長を見るのは、こういう長いドラマならではの楽しみです。
成長という意味では、ストーリー上一見邪魔にも思えるベシアとエズリも一つの結果を得ることに。ただ、初期にはジャッジアから全く相手にされていなかったベシアが、ついに長い年月を経て同じダックス=エズリを恋人にできたわけですよね。そういう意味ではとても上手い人選のカップルだと思います。


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