USS Kyushuトップ | hoshi.sa.to

エンタープライズ エピソードガイド
第22話「漂流生命体の叫び」
Vox Sola

dot

・イントロダクション
※1エンタープライズは、小型船とドッキングしたまま飛行している。
『航星日誌、補足。クリタサン人※2を招待したのは、正解ではなかったかもしれない。午前中だけで疲れ果てた。』
廊下で先頭を歩く異星人の船長※3。「トスカ! ジェストラッタ・イラクーワ!」
追いかけるアーチャー。「何て言ったんだ。」
翻訳機を使うサトウ。「トスカは『侮辱』です。侮辱がどうとか。」
トゥポル:「我々をですか? 我々が?」
「わかりません。」
クリタサン船長:「トスカ!」
アーチャー:「原因を聞いてくれ。」
サトウ:「キジャース…ツキジャスク・ラス。」
クリタサン船長:「フアジャット・アジャクジャス!」
アーチャー:「何て。」
サトウ:「『交尾するように食べる』?」
タッカー:「故障してんじゃないのか?」
クリタサン船長:「シャスッラット!」 ドアの前に来た。
サトウ:「帰ると言ってるようです。」
トゥポル:「それはわかりますね。」
アーチャー:「…我々の何かが、気に障ったなら…謝罪します。」
サトウ:「ジャハラトゥン・イートゥラット…ルリー。」
クリタサン船長:「シャスッラット!」
指示するアーチャー。
タッカーはコンソールに触れ、エアロックが開けられた。
出ていくクリタサンたち。
ドアを閉めたタッカー。「こりゃ歴史に残るな。最短のファースト・コンタクトだ。」
ドッキングが解除されていく。
するとクリタサン船にはりついていたアメーバ状の生命体が、エンタープライズへと移った。その半透明の生物は、ハッチが閉まる直前に船内へ入る。


※1: このエピソードは、VOY トレス役ロクサン・ドースンの監督です。ENT では第7話 "The Andorian Incident" 「汚された聖地」に続いて 2話目、VOY も含めると 4話目になります

※2: Kreetassans

※3: クリタサン船長 Kreetassan Captain
(ヴォーン・アームストロング Vaughn Armstrong TNG第20話 "Heart of Glory" 「さまよえるクリンゴン戦士」のコリス司令官 (Commander Korris)、DS9第3話 "Past Prologue" 「スペース・テロリスト ターナ・ロス」のガル・ダナー (Gul Danar)、第171話 "When It Rains..." 「嵐の予兆」などのカーデシア人セスカル (Seskal)、VOY第7話 "Eye of the Needle" 「ワームホールの崩壊」のテレク・ルモール (Telek R'Mor)、第122話 "Survival Instinct" 「ボーグの絆を求めて」のトゥー・オブ・ナイン (Two of Nine)=ランサー (Lansor)、第143話 "Fury" 「帰ってきたケス」のヴィディア人船長 (Vidiian Captain)、第155話 "Flesh and Blood, Part I" 「裏切られたホログラム革命(前編)」のアルファ・ヒロージェン (Alpha Hirogen)、第171話 "Endgame, Part I" 「道は星雲の彼方へ(前編)」のコラス (Korath)、ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」などのアーチャーの上司フォレスト提督 (Admiral Forrest)、第14話 "Sleeping Dogs" 「名誉に生きる者」のクリンゴン船長 (Klingon Captain) 役。ゲーム "Armada II"、"Bridge Commander"、"Starfleet Command III"、"Elite Force II" でも声の出演) 声:宝亀克寿

・本編
ブリッジ。
ほおづえをついているサトウ。「今の聞こえた?」
メイウェザー:「ノイズか何か?」
「周波数の歪みも混ざってるわ?」
「ホシは耳がいいからな?」
「通信システムからなの。」
トゥポル:「チェックはしたんですか?」
「2度も。…今日はとにかくツイてないわ?」
メイウェザー:「翻訳の進み具合は?」
「全然。『フアジャット』が食べるなの?!」
「それが?」
「頭にアクセントがくるフアジャットは、『交尾する』なのよ。」
「それじゃ、食事中混乱するだろうな?」
「どの言語でも文脈は重要だけど、クリタサン語では微妙なバリエーションがものすごく多いのよ。一つの言葉に 10以上の意味があるわ?」
トゥポル:「言語では少尉に頼るしかありませんから。」
「…私のせいってことですか?」
「そうは言ってません。」
「でも思ってる。」
「原因の解明は今回、あなたの役目だと言っただけです。原因がタッカー少佐のマナー以外にあればですが。」
「私がもっと早く、彼らの言語を分析できていればって思ってるんでしょ?」
「感情的になることはありません。…失敗から学べばいい。次回のファースト・コンタクトで役に立つでしょう。」
「どうも?」 やってきたタッカーに話すサトウ。「少佐、通信システムに、さっきからずっとノイズがあって。高周波の歪みです。」
タッカー:「業務に支障は。」
「イラつくだけですけど。」
「明日の朝一番で調べよう。」
「すいません。」
「船長は中?」
トゥポル:「ええ。」
「機嫌はどう。」
「用は後の方がいいでしょう。」
「…まあ、ものは試しだ。」 向かうタッカー。

ドアチャイムに応えるアーチャー。「大事な話だろうな?」
タッカーが作戦室に入った。「夕食、リブです。本物のホースラディッシュつき。」
アーチャー:「食事係に持ってこさせよう。この褐色矮星に向かおうかと思ってる。面白そうだ。」
「いいですねえ! …ビリヤードでナインボールでもしませんか? ブレイクしていい。」
「今度な。」
「…これは、隠し球に取っとくつもりでしたが…」 タッカーはポケットからチップを取り出した。「スタンフォード大対テキサス大。」
見入るアーチャー。「決勝か?」
タッカー:「亜空間メールで届いたとこです。ゲームのポイントを解説してやるって言いましたよね。」 アーチャーに投げ渡す。「矮星で忙しいならいいですけど。」
笑うアーチャー。

寝ていたポートスは、何かの気配に気づいた。天井に向かって吠え出す。
その奥では、侵入した生命体がうごめいていた。

食事中のメイウェザー。「身体的な、接触がダメなのかなあ。船長が握手しようとしたとき、嫌そうな顔してたでしょう。」
リード:「あの顔は最初からだ。でも不機嫌になり始めたのは、食堂に来てからだろ?」
サトウは浮かない顔をしている。
メイウェザー:「…映画会観ていきます?」
リード:「作品は?」
「えー、『恐怖の報酬』※4。フランスのクラシックです。」
「ふーん。」
「面白いですよ? 爆発シーンがある。」
「うーん! いいねえ。」
笑うメイウェザー。
リード:「ホシは?」
サトウ:「今日は早く寝ます。」
「…翻訳者がいてくれなきゃ。字幕が読み切れないとき困る。」
「今日はもう、翻訳終了です。」 食堂を出て行くサトウ。

廊下を歩いていたサトウは、何かの音に気づいた。
壁に耳を近づける。
その奥で移動し続ける生命体。
サトウは歩いていく。

機関部員のロストフ※5。「前の席が取れなくなるだろ。」
同僚のケリー※6。「後ちょっと。」
ロストフ:「頭見逃すよ!」
「コンピューターに入ってるんだから、そこだけ後から観れば?」
「ダメダメ。結末観てから頭観るなんて、邪道だよ。」
笑うケリー。「…『D』デッキでパワーダウンだわ? 第2貨物室よ? 照明が落ちてる。」
ロストフ:「パワーリレーが飛んだだけだろ? 夜勤の連中に任せろ。」
「本当にパワーリレーだけなら 10分で直せるでしょ? はい。通信もダウンしてる。」 ライトとコミュニケーターを投げ渡すケリー。
「へ!」 機関室を出て行くロストフ。

映画を観るために集まったクルー。
リード:「2時間半もあるのか?」
メイウェザー:「2時間と 24分です。」 ポップコーンを食べている。
「トラックに乗った 4人の男の話にしちゃ、長いな?」
「ついのめり込みますよ?」
「爆発シーンあるんだろうな。」
「ありますって。」
部屋が暗くなった。
だが前方のスクリーンの映像は、乱れたままだ。
医療室が映った。フロックスが見える。
次に何かの構造図。そしてブリッジの司令室が映った。
リード:「何やってんだ。」 前を通る。「失礼、失礼?」
通信機に触れた。「リードよりブリッジ。」
クルー:『はい、大尉。』
「映画会が始まったとこだが、映画じゃなくそこの映像が映ってる。君らが歌ったり踊ったりするんじゃなきゃ、システムをチェックしてくれ。」

モニターに水球の映像が映っている。
アーチャー:「よし、行けー。行けー! よーし。」
私服のタッカー。「プールの深さは。」
アーチャー:「ま、誰も足はつかないな?」
「こんな激しいとはねえ。」
笑うアーチャー。「言ってみれば、バスケでもあり、水泳でもあり。格闘技でもある。」
タッカー:「プールでバシャバシャやってるだけかと思ってましたよ。」 酒を飲みながらつまみを口にする。
見入るアーチャー。「うーん、うん。」

ロストフはロックを開けてライトを手にし、貨物室へ入った。
中は真っ暗だ。
ふと、天井に穴が空いていることに気づいた。
そこから液体がしたたり落ちている。
音が聞こえた。白い生き物が視界から消えた。
そして貨物室の一角に、クモの巣のような構造が広がっていることに気づいた。
コミュニケーターを使うロストフ。
その瞬間、足元を見た。

ケリーは呼び出しに応えた。「機関室。…マイケルでしょう。…もしもし?」

水球の映像は続く。
タッカー:「ナイス! ゴール!」
笑うアーチャー。
タッカー:「12番のフェイントを見ました? 何ってったけ、『ポイントマン』?」
「…覚えたなあ、言ったろ? 世界一のスポーツだ。」
「俺はまだパワフルなアメフトも捨て切れませんけど? ハマるわけがわかりましたよ。」
「ありがとな。」 乾杯するアーチャー。
「どういたしまして。じゃあ船長の大学がコテンパンにやられるのを見届けますかあ。」
「…まさか結果先に観てないよな?」
「まさか!」

ケリーも貨物室にやってきた。「誰かいる?」

興奮するタッカー。「おい、何やってんだ!」
アーチャー:「あー、残念だったな、テキサスの 8番はファールだ。あいつは 20秒間退場だ。」
「それじゃ、そっちが断然有利じゃないですか!」
「…そのためだよ。」
「ああ!」
「ハハ…。」
水球の映像を観ながら、アーチャーは言う。「船にプールを造るのは、現実的じゃないだろうなあ。」
笑うタッカー。「…重力プレートがオフの時はプールにいたくないな?」
アーチャー:「あ? だな!」
呼び出しが鳴った。『ケリーより船長。』
アーチャー:「何だ。」
『船長、今第2貨物室ですが…ここに何か生命体がいます。』
「生命体?」
『ロストフが捕まっています。まだ意識はありますが、身動きが…』 音声は途切れた。
「どうした!」
船長用食堂を出る 2人。


※4: "Wages of Fear"
"The Wages of Fear"、原題 "Le Salaire de la peur"。1953年、アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督。1977年にアメリカ (ロイ・シャイダー主演) でリメイク

※5: マイケル・ロストフ Michael Rostov
(Joseph Will VOY第142話 "Muse" 「ヴォイジャーの神々」のケリス (Kelis)、第163話 "Workforce, Part II" 「人間改造惑星クアラ(後編)」の警備員その3 (Security Officer #3) 役) ファーストネームは後に言及。声:平田広明

※6: Kelly
(Renee Goldsberry) 階級は乗組員で後に言及されますが、訳出されていません。声:大坂史子

アーチャーとタッカーはフェイズ銃を持ち、廊下を歩いてきた。
リードと保安部員のゼイベル※7が合流する。
アーチャー:「麻痺にセットしろ。」
リード:「私が。」 先に貨物室へ入る。
ゆっくりと進む 4人。
タッカーは気づいた。「船長。」
近づくアーチャー。
ケリーがクモの巣状組織に取り込まれ、意識を失っていた。
リード:「気をつけて。」
生命体が動き、ケリーも反応する。
アーチャー:「ライトを。」
消すタッカー。
スキャナーで調べるリード。「生きてます。」
ロストフの声が聞こえた。「船長…。」 上の方で捕まっている。「あ…ああ! 外へ…」
アーチャー:「ロストフ!」
「出て…。」
下がるアーチャーたち。
だがアーチャーは、背後に生命体の触手が近づいていることに気づかなかった。
リード:「船長!」
アーチャーの足を捕まれた。倒される。
手を伸ばしたタッカーも一緒に、ものすごい力で引っ張られる。
リードたちは武器で触手を撃つ。声を上げる生命体。
だが全ての触手を外すことはできず、アーチャーは持ち上げられていった。
そしてタッカーにも襲いかかる。フェイズ銃の狙いを定めることができないリード。
命じるタッカー。「ここから出ろ! 行け!」
階段を上って逃げるゼイベルも捕まってしまった。
引きずられるタッカー。
さらにリードへ向かってくる触手。逃げるリード。
ドアを閉めようとするが、生命体が出てこようとする。
何とか閉めるリード。触手は引きちぎられた。
床に落ちても、まだ動いている。

モニターに貨物室の状態が表示されている。
リード:「大きくなり続けています。いつ貨物室から出てくるかわからない。Dデッキは全員待避させるべきです。」
サトウ:「いつ侵入したんでしょう。」
メイウェザー:「最後にエアロックを開けたのは、クリタサンとドッキングした時です。」
リード:「彼らの手みやげってことか?」
トゥポル:「機嫌は損ねましたが、それだけで攻撃してくるとは思えません。…あの生物に敵意があるかどうかもわからない。」
「あいつが船長に襲いかかったのを見れば、敵意があるとしか思えません!」
メイウェザー:「クリタサンが何かを知ってるかもしれませんよ。彼らの船のワープ痕跡を追って、居場所を探してみます。」
トゥポル:「この次は正確に意思を伝えないと。」
サトウ:「何とかやってみます。」
「トゥポルよりドクター、報告を。」
フロックス:『検査を始めるところです、見学なさいますか?』
「ええ、始めて下さい。」
汚染除去室の様子がモニターに映される。
環境服を着たフロックスの前に、切り離された生命体が置かれている。映像がズームアップされた。
フロックス:『本体から切り離されていますが今も単体として生きています。ミミズやニーシアン・クレードルフィッシュ※8とは違います。フフ…』
リード:「危険なんじゃないか?」

作業するフロックス。「かもしれません。でも生理機能を知るためには、組織サンプルが必要なんです。」 腕に張り付く生命体を払う。「これで、十分でしょう。」

司令室の映像の横に、組織サンプルが表示された。

フロックスは言った。「ミミズどころじゃない。」

尋ねるトゥポル。「というと?」
フロックス:『シナプスの活動を見ると、非常に高度な神経システムをもっています。高度な知性があるかもしれません。』
サトウ:「知性があるなら意思疎通できるかもしれません。あの生物が出してるノイズは、アンドリアの方言の音声パターンに近いものがありますし。」
リード:「能力を疑うわけじゃないが、どれが名詞でどれが動詞かもわかってないんだろ? そんな言語を分析するには何日もかかる。言語だとしてね。」
「ほかに方法あります? …チャンスを下さい。」
トゥポル:「残念ながら時間がありません。」
「副司令官…」
「排除するべきでしょう。」
リード:「ああ…」
「すぐに。フェイズ銃は効かないんですね?」
「私が見た限り。」
「では別の方法を探って下さい。」
フロックス:『よろしいですか? この生物は感光性が高い。電磁放射の継続照射で、麻痺させられると思いますが?』
「電磁放射装置を作れますか?」
リード:「あっという間ですよ?」

第2貨物室。
うめくタッカーたち。
誰も全く身動きがとれない。
ロストフ:「いっそ殺せばいいのに!」
タッカー:「…ヤケになるな。」
アーチャー:「今頃トゥポルとマルコムが対策を講じているはずだ。必ず助かる…。どっちか、ケリーが見えるか…?」
ロストフ:「…見えます。」
「どんな様子だ。」
「…息はしてます。」
タッカー:「…ゼイベルは気を失ってます。」
ロストフ:「…船長?」
アーチャー:「ああ?」
「この状況じゃ映画会は中止になったんでしょうねえ?」
何とか笑うタッカー。
アーチャー:「…そうだろうな。」
ロストフ:「…観たかったのにな。…イヴ・モンタン※9が、トラックでニトロを運ぶんですよ…。」
「来週またスケジュールを入れさせよう…。」
「…すいません。」
リードたちがやってきた。
電磁放射装置を手にしている。
保安部員たちと共に、作動させた。
電磁波が当てられ、声を上げる生命体。

状況を見るフロックス。「効いてますねえ。」
だが警告音が鳴った。5人の状態に変化がある。

苦しむアーチャー。
みな苦痛の声を上げる。
リード:「ブリッジへ。様子が変です。」

クルーの声は司令室にも聞こえている。
フロックス:「放射を止めて。」
リード:『ドクター!』
「止めるんです!」

部下に命じるリード。「中止だ。」
装置を止めると、クルーたちも収まった。
ロストフ:「ああ…。」

尋ねるトゥポル。「どういうことです。」
フロックス:「船長たちの神経とつながってるようです。自律神経や神経信号を共有してる。これでは船長たちも死んでしまいます。」
「リード大尉。…一旦撤退です。」

応じるリード。「了解。」 部屋を出ていく。

話すフロックス。「共生関係は増大しています。早く引き離さないと、彼らの体はエイリアンと統合されてしまい分離できなくなってしまいます。」
トゥポルはサトウに言った。「…チャンスが欲しいと言ってましたね。チャンスがきたようです。」


※7: Zabel
エキストラ

※8: Neethian cradlefish

※9: Yves Montand
1921〜1991年、イタリア生まれ

アーチャーたちの状態を見るトゥポル。「時間はどのくらいあるんです。」
フロックス:「2、3時間でしょうね。代謝率が落ちてきてる。体温も呼吸数も。」
リード:「何とかして引き離す方法があるはずだ。」
「我々の常識とはかけ離れた生物です。クルーを攻撃しているんではなく、同化しようとしているんです。」
「結果は同じことだろ。」
「あと数時間で、第2貨物室にいる生命体は 6体ではなくなります。一つに、なるでしょう。」

医療室を出たリード。「何とか貨物室の外へ出さないようにしないと。」
トゥポル:「対策はありますか?」
「艦隊は過去 5年、電磁バリアを作る方法を研究してます。」
「フォースフィールド?」
「ええ。後は素粒子密度をコントロールするだけです。スペックはデータベースにある。私も実験に、取り組んでます。」
「それで?」
「フェイズ銃のビームなら吸収できるんです。6割程度ですが。改良できると思います。」
「…作業を急いで下さい。」

戻ったトゥポルに報告するメイウェザー。「船を見つけました。」
トゥポル:「どこです。」
「0.52光年先です。」
「コースをセット。」
「もうしました。呼びかけてますが、まだ通信圏外なので。」
「応答があり次第連絡を。」 サトウに近づくトゥポル。「何か進展は?」
サトウ:「あったら一番に知らせてます。…すいません、ただ…ここまでほとんど運がなくて。」
「必要なのは運ではなく専門知識です。」
「私には足りないのかも。」
「あなたが投げ出しては、変われる者がいません。」
「精一杯やってます!」
「意思疎通を図れるというのは元々少尉の案でしょう。不可能なら別の方法を、考えなければならないんです。」
「多少の成果はありました。でも翻訳マトリックスが、この言語には適さないんです。言語というより、ほとんど計算式に近いわ?」
「数学は一種の言語と見なされることもあります。」
「…それは私も、知ってますけど…。ですから、高等数学に強い人の助けがあれば、あるいは…。」
「…私が手伝いましょう。」

目をつぶったままのアーチャー。
息を荒げるタッカー。「……テキサス大のキーパーは右が弱い。…手を水に入れてるからだ…。」
アーチャー:「どうして知ってる。」
ロストフ:「…私も…知ってます。水球なんて一度も見たことないのに…。」
「…この生命体が、俺たちの思考を…つなげてるんだ。」
タッカー:「…早く逃げなきゃ。」
「落ち着け。」
「…俺たちの頭に入り込んでる…!」
「トリップ…おい! …私は今何考えてる。」
「……地区大会なんか今どうでもいいでしょう。」
「トリップ!」 首を振るアーチャー。
「…4年生で、プリンストン大相手の北米予選。船長は…残り 1分、2ゴール差で負けてた…。」
「で、どう思ってた。…私はどう思ってた。」
「……絶対…勝てると…。いつでも…そう思ってた…。どんなに点差があっても…。」
「そして勝った。その年に決勝まで行ったんだ…。…あきらめた瞬間に…試合は負けだ。」
うなずくタッカー。ロストフも見ている。
アーチャー:「ああ…。」

医療室に入るリード。
ケースの中に生命体の触手が入れられている。
リード:「こいつの状態は。」
フロックス:「眠ってます。休眠状態に入ったようで。本体から切り離されたショックに対する反応でしょうねえ。」
「生きてるのか。」
「ええ、生きてます。」
「よし。これから、いくつかテストをしたいんだ。」
「どんなテストです?」
「こいつがどの程度の生体電気に耐えられるか見たい。」
「理由をうかがっても?」
「貨物室を封鎖するフォースフィールドを作ってる。上手くいったとして、こいつを殺さずショックを与えずどれくらいパワーを与えられるのか知りたい。クルーへの影響もねえ。」 ケースに装置を取り付けるリード。
「この生物が悲鳴を上げるまで EM放射で痛めつけるつもりならとても許可できませんねえ。」
「何でだ。」
「ただの切断組織じゃありません。知的生命体としての証拠があるんです。」
「知性があろうとなかろうと、こいつの親玉が貨物室で船長と 4人のクルーを絞め殺そうとしてる。貨物室に閉じこめる策を講じないと、クルー全員の命が危ないんだ!」
「数値を得るならもっと穏やかな方法があります。」
「…例えば。」
「マイクロ細胞分析です。」
「どのくらいかかる。」
「1時間後には。」
「1時間後にはこいつがデッキ中に広がってる。」
「協力はしますがこの生命体に拷問はさせませんよ? 我々の任務は異なる生命体への理解を深めることじゃなかったんですか。」
「船長を殺そうとしてるんだぞ!」
「この生命体の意図はまだわかっていません。」
「立派な倫理観で敬服するねえ。ホシが意思疎通の方法を見つけるまで、敵性エイリアンと見なすしかない。わかったら、どいててくれ。」
フロックスは装置を押さえた。「どうしても必要だというなら、私の監督の下で行ってもらいます。」
リード:「言う必要もないと思うが、私は上官だぞ。」
「医療室では別です。船長が指示なさらない限り。」
「その船長が意見を言える状況にないんだ!」
「だからです。」
「…わかった。従おう。…すぐ始めるぞ?」

食堂にいるトゥポル。「バイラテラルアルゴリズムを使っては?」
サトウ:「もう、やりました。」
「…周波数変動は補正しました?」
「しなきゃ通信士官とはいえませんよ。」
「…感情に支配されていては、解決が遅れるだけですよ、少尉?」
「チェックばかり入れられてちゃあ。」
「手助けしてるんです。」
「ミスの数をいちいち数え上げたり、私が決めること全部に疑問を挟むのが手助けですか?」
「上官として監督するのが私の任務です。」
「任務の範囲を超えてませんか? 副司令官は私のやることなすこといつも見張ってる。記録や翻訳も全部チェックしなきゃ気が済まないし。」
「それが仕事です。」
「ほんとにそれだけですか? 私には務まらないと思ってるんでしょ。」
「その反対です。…もしも少尉がいなければ、艦隊には大きな損失でしょう。これまで誤解を与えていたとしたら謝りますが、あなたなら必ずできると思うからこそ高い水準を求めているんです。…続けましょうか?」
「…はい。…あの…低調波をもう一度チェックしてみませんか? …暗号解読マトリックスで、パターンが見つかるかもしれません。…数字か、暗号にしか見えないし。」
「暗号を破りましょう。」

ブリッジで呼び出し音が鳴っている。操舵席のメイウェザーは周りを見渡すが、上級士官は誰もいない。
操作するメイウェザー。
スクリーンにクリタサン船長が映し出された。『何か用か。』
メイウェザー:「言葉が通じる!」
『そちらのデータベースを研究したからだ。』
「…よかった。トラブルが起きてます。」
『どんな。』
「未知の生命体が、船に侵入したんです。」
『それで?』
「あなた方にお会いした前後に侵入しているので、そのエイリアンを御存知ないかと思いまして。」
『どのような、生物なのだ。』
「それが…大きくて、最初はそうでもなかったんですが…何というか巨大な、ツルみたいなんです。」
『ツル?』
「もしくは、クモの巣ですね。でも成長して、動くんですよ。」
『見たことがある。』
「どこで?」
『その生物の星でだ。船に付着していたんだろう。我々のせいではない。』
「その星の場所、教えてもらえます?」
『…謝罪しろ。』
「…何ですか?」
『座標は送ってやる。だがその前に、まず…無礼な振る舞いを謝罪しろ。』
「…それですけど、何が気に障ったかわからないんですが。」
『…お前たちは、何と…食い物を口に入れ始めた。』
「食べたってこと?」
『そうだ、食べた!』
「…それがいけなかったですか?」
『食べるのは交尾も同じだ、無礼にもほどがあるだろ。』
「でもじゃあそちらは、どう食べるんです?」
『…食べ方は同じだが人前では決して食事しない。』
「なるほど、それでか…。誓って…言いますが、食べることが失礼に当たるとは知らなかったんです。習慣の違いからくる誤解です。エンタープライズ全クルーを代表し、心から深く、謝罪します。」
『…よろしい、許そう。』
ため息をつくメイウェザー。「どうも。……座標を教えてもらえますか。」

意識を失ったままのケリー。
ロストフも眠っている。
目をつぶったアーチャー。
タッカー:「船長…。」
アーチャー:「…ああ。」
「気を失いそうだったでしょ。」
「そっちも朦朧としてるだろ…。あ、ああ…ロストフ!」
返事はない。
タッカー:「…気絶してる。」
アーチャー:「ああ…ああ…。」
「ゼフレム・コクレインは、未知の生命に会えるって…興奮してたけど、こんなの予想してたかな。」
笑うアーチャー。

作業するサトウ。「あった、ここです。3度目の繰り返しだわ。見て下さい。」 コンピューターを見る。「後もう少しで文章の構造がつかめるわ?」
通信が入った。『フロックスよりトゥポル。』
トゥポル:「何です?」
『そちらも大変でしょうが、ケリーの代謝率が危険なレベルに落ちています。計画の実行を急いで下さい。』
「わかりました。」

兵器室に用意される装置。リードに報告する保安部員。「OK です。」
装置の間に、エネルギーフィールドが広がる。保安部員が撃ったが、そのフォースフィールドを突き抜けてしまった。
リード:「素粒子密度がまだ不安定だな。左下のを調整してくれるか。」
保安部員:「はい。」
「もう一度。」 今度は突き抜けない。「よし。」
通信が届く。『トゥポルよりリード大尉。』
リード:「何です。」
トゥポル:『翻訳で進展があったんですが、試すには貨物室へ入らなければなりません。フォースフィールドはどうです?』
「今、最終調整に入ってます。」
『できる限り急いで下さい。ドクターは時間がないと言っています。』
「わかりました。」



生命体はタッカーの顔を覆っている。「船長…。」
アーチャーの返事はない。
みな動かない。
貨物室にリードたちが入り、フォースフィールド発生装置を壁に取り付けていく。
生命体の触手が近づいてきた。
起動させるリード。
触手はフォースフィールドにぶつかり、通過できない。
リード:「Bエミッターが 3.2ミクロン※10ずれてる。」
調整する保安部員。
フォースフィールドは張り直され、強固なものとなった。

機械を設定するサトウたち。
司令室に入るリード。「フィールドは機能してますが、いつまでもつかわかりません。できたんですか。」
トゥポル:「それを確かめます。」

トゥポルたちも貨物室へ入る。
全く動かない、捕らわれたクルー。
持ってきた装置を起動させるサトウ。高い音が響く。
リード:「ただのトーン信号じゃないのか?」
トゥポル:「ここにノイズを挟んでいくんです。こっちの意図が何とか伝わるといいけど。」
近づいてきた触手は、フォースフィールドに阻まれる。
驚くサトウ。作業を始める。
一定のパターンのノイズを出す。反応はなく、同じことを繰り返す。
クルーの状態をチェックするフロックス。
サトウはため息をつき、もう一度同じ音を出した。
すると生命体から、似たような反応が返ってきた。その「声」が続く。
サトウ:「もうちょっとよ、急いで…。」 機械に反応があった。「簡単な会話ならできます。」
トゥポル:「目的を聞いて。」
生命体は動きながら、ますます大きな声を響かせていく。
サトウ:「返事してるわ!」
トゥポル:「何ですって? …少尉!」
「待って! 座標を伝えようとしてます。」
リード:「彼らの星か。」
トゥポル:「それならクリタサンから聞いています。」
サトウ:「いえ、緯度と経度みたいです。地上の正確な位置を教えようとしてるんです。」
「連れて行くと伝えて。」
フロックスのスキャナーで、数値が上がっていく。「タッカー少佐の心拍数が上がってます。」
リード:「いいことなのか?」
「ええ。ケリーの生体反応も安定しました。」
会話を続けるサトウ。急に静かになった。
そして、生命体はクルーを降ろしていく。
トゥポル:「フォースフィールド停止。…大尉、早く。」
解除された。中に入るクルー。
フロックスは通信機に触れた。「医療班、至急第2貨物室へ。」
医療部員:『了解。』
捕らえていたクルーを床に降ろし、生命体は離れていく。
意識を取り戻すアーチャーたち。

ワープを抜けたエンタープライズは、惑星へ近づく。

発進するシャトルポッド。

辺り一面が、共有生命体で覆われている。
環境服を着たクルーがやってきた。
スキャナーを使うトゥポル。「ここです。」
サトウ:「こんなにたくさん。」
「これで、単体です。…一つの生命体です。」
ケースを開ける。中に入っていた生命体は離れ、周りと一体化した。
リード:「でもあいつはなぜ、クルーを同化しようとしたんだ。」
フロックス:「わかりません。本体から切り離されたとき、何であれほかの生命体とつながりたかったのかもしれませんね。」 フロックスは、もう一つの小さなケースを開けた。
切断された生命体だ。移動していき、迎え入れられた。
トゥポルはサトウを見た。

帰還するシャトル。


※10: 吹き替えでは「2、3ミクロン」

・感想
ドースンの ENT では 2話目の監督で、原題はラテン語で「たった一つの (孤独な) 声」という意。残念ながら俳優の演出作品とはいえ、さほど高いレベルにあるエピソードではありませんが、クルー 7人にそれぞれ見所と個性が描かれていたのはとてもよかったです。やはりスタートレックはこうでないと。その中でもメインといえるのはホシ・サトウでしょうが、ほんと久々にスポットが当たりましたね。


dot

previous第21話 "Detained" 「テンダーの虜囚」 第23話 "Fallen Hero" 「追放された者への祈り」previous
USS Kyushuトップ | hoshi.sa.to | ENT エピソードガイド