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エンタープライズ エピソードガイド
第39話「熱き夜明け」
Dawn

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・イントロダクション
※1衛星のそばを飛行するシャトルポッド。
タッカー:『機関主任日誌、補足。ここは自動操縦装置を試すには、絶好の場所のようだ。』
周りには、たくさんの衛星がある。
独りでいるタッカー。「…数十の月をもつ、ガス状巨星。まるで…重力のジグソーパズルだ。試運転は上々。この分だとじきに、人間のパイロットは必要なくなるぞ、トラヴィス?」
通信が入る。『アーチャーから、シャトルポッド1。』
タッカー:「船長。」
『どうやらお友達が来たようだぞ。たった今センサーが…小型船を感知し…』
「何ですって? ノイズで聞こえませんでした。」
『小型船が君のシャトルポッドに接近中だ…』 通信は途絶え、警告音が鳴る。
前から、異星人船が近づいてきた。
タッカー:「こちらはタッカー少佐。」
だが突然攻撃された。
回り込み、さらに攻撃を続ける異星人船。
タッカー:「タッカーからエンタープライズ、メイデー! パワーが減少中、メイデー! 聞こえますか、今からスラスターのみで緊急着陸します。前言撤回だ、やっぱり頼りは、生身のパイロットだよ。」
衛星へ向かうシャトルポッド。エンジンは不調だ。


※1: このエピソードは、VOY トレス役のロクサン・ドースン監督です。ENT では第30話 "Dead Stop" 「謎の自律浮遊基地」に続き、4話目となります。参考

・本編
ガス巨星へ近づくエンタープライズ。
サトウ:「こちらはエンタープライズ。…タッカー少佐、聞こえますか?」 応答はない。
アーチャー:「マルコム。」
リード:「兵器の使用を感知。2隻とも、姿を消しました。」
「最後にいた場所は?」
「ここからおよそ 5万キロメートル。方位 003、マーク 27 だと思われます。…干渉がひどく、特定はできません。」
トゥポル:「ほとんどの月は、大気中にセレン※2アイソトープを含んでいます。それがセンサーに干渉しているのでしょう。」
アーチャー:「あのトリップのことだ。飛行位置に一番近い月に無事着陸しているだろう。…月はいくつだ。」
「62個です。」
「…すぐに探すぞ。…トラヴィス。」
メイウェザー:「はい、船長。」
「捜索開始。双眼鏡を使ってでも探す。呼び続けろ。」

シャトルポッドのハッチを開けるタッカー。外は暗く、岩だらけだ。
ため息をつく。

ライトをセットするタッカー。「機関主任日誌、補足。記録用。小型船の攻撃を受けた。」 鏡を見ながら、綿棒で怪我の治療をする。「…何が気に障ったのか。大気中の何かが影響し、エンジンが停止。やむなく緊急着陸をした。…シャトルはダメージを受けている。メインパワーは依然停止。…いつここを脱出できるやら。…とにかく…まずは通信装置を直し…」
シャトルポッドの天井から部品を外した。「助けを呼ばなければ。」

焚き火の前で、通信機を修理しているタッカー。「クソッ!」 手がかじかむらしく、息で温める。
物音が聞こえた。作業に戻るが、また聞こえる。
棒を手にし、シャトルポッドの裏を確認する。
振り返った時、突然背後から発砲する者がいた。
ライトを向けると、異星人が立っていた。「(貴様は誰だ!)」 言葉はわからない。
シャトル内に逃げ込むタッカー。ハッチを閉める。
タッカーは窓から外を確認した。「あいつ通信装置を盗みやがった。」

異星人船がエンタープライズに近づく。
アーチャー:「船籍は?」
トゥポル:「アーコニアン※3軍の軍用船です。」
「面識は?」
「いえ。ですが評判は聞いています。彼らの領域にいるとしたら、最大の警戒を払うべきです。」
サトウ:「呼びかけてます。」
うなずくアーチャー。
スクリーンにアーコニアンが映し出された。『お前たちは侵入禁止区域にいる。立ち去れ、今すぐに。』
アーチャー:「君は?」
『カターン・シャー※4船長だ。この領域を侵すいかなる船も、破壊せよと命じられている。』
「宇宙船エンタープライズ※5船長のアーチャーだ。…ここが君らの領域だとは知らなかった。」
シャー:『なぜお前らのブリッジにヴァルカン人がいる。』
「…トゥポル副司令官はここの科学士官だ。」
『…船を引き返させろ、今すぐにだ。』
「うちのクルーが一人行方不明でな。こちらで、ある小型船が発砲したのを確認している。…そちらの船じゃないのか?」
『…そっちのシャトルを阻止するために、パトロール船を派遣した。こちらも、連絡が途絶えている。』
「だったら互いに、協力して探そう。クルーを回収したら、喜んで退散する。」
『お前たちのシャトルがパトロール船と遭遇していたとしたら、そのクルーはもうとっくに死んでいる。』
「……どちらにせよ、状況がわかるまで立ち去る気はない。どうやら我々は、同じ問題を抱えているようだ。部下が 62個の月のどこかに迷い込んだ。協力して探せば、より早く二人の部下を見つけられるだろう。…捜索を始めるのが早いほど、我々がここを立ち去るのも早くなる。」

様子をうかがうタッカー。
アーコニアン・パトロール船のそばで、やはり焚き火がたかれている。
降りていくが、足を滑らせてしまった。砂煙が舞う。
すると、空中に赤い線が見えた。
その付近に砂をかけてみると、落としたところだけ赤い軌跡が残る。接近センサーだ。
アーコニアンがシャトルポッドの通信機を持って船から出てきた。
タッカーは去る。

作業を行うタッカー。「奴だ。船に見覚えがある。同じく損傷しているらしい。やはり月の大気が影響してるんだろう。…ユニバーサル翻訳機があれば、私もここから脱出したいんだと説明することができるのに。…少しずつ…暖かくなってきた。夜明けは近い。」

通信機を修理しようとしているアーコニアン。「ヴァラー。」 道具を投げた。「…アザー・クントカク・トネカー。」
タッカーの声が聞こえてきた。「そっちへ行くぞ。言葉が通じないのはわかってる。」
銃を取り出すアーコニアン。
タッカー:「発砲しないでくれ。話したいだけだ。武器は持ってない。」
船のそばを離れるアーコニアン。だが後ろからタッカーがやってきた。通信機を見る。
タッカーの声は別の方から聞こえている。『信じてくれ。俺はただ君がさっき持っていった物を、返して欲しいだけだ。』

声の発生源に近づくアーコニアン。
タッカー:『頼む。少しでも俺の言うことがわかれば、よく聞いてくれ。わかったな? メリーさんのヒツジ。雪のように真っ白。メリーさんの行く所、どこでもついていく。※6
アーコニアンは、それが機械から出ているものということに気づいた。うなり、引き返す。

アーコニアンが帰ってきた。まだタッカーの歌詞は続いている。
自分で接近センサーにかかってしまった。
その音に気づいたタッカーは、通信機をあきらめて離れる。
まだ通信機があることを確認し、自分の船へ戻るアーコニアン。
すると中からタッカーが出てきて、銃を振り落とされた。
取っ組み合いになる。
武器を拾い、アーコニアンに向けるタッカー。「これで、自己紹介ができるな。」
アーコニアン:「(…ただで済むとは思うなよ)」
「…こっちこそよろしく! …敵意はない。通信装置を返して欲しいだけだ。」
だがアーコニアンは素早くタッカーを足払いし、落ちた銃を拾った。
撃たれたタッカーは倒れた。


※2: selenium
元素記号 Se、原子番号 34

※3: Arkonian

※4: Khata'n Zshaar
(ブラッド・グリーンクイスト Brad Greenquist DS9第136話 "Who Mourns for Morn?" 「モーンの遺産」のクリット (Krit)、VOY第52話 "Warlord" 「暴君の星」のデマス (Demmas)、ENT第91話 "Affliction" 「クリンゴンの苦境」の異星人その1 (Alien #1) 役) 声:池田勝、VOY ハーキンズなど

※5: 吹き替えでは「エンタープライズ

※6: 「メリーさんの羊」 "Mary Had a Little Lamb"
マザーグース。参考

まだ通信装置を直そうとしているアーコニアン。「(…ダメだ)」 タッカーを蹴る。「(起きろ!) ガン・ターク!」
タッカーは目を覚ました。「…コーヒー飲まないと、目が覚めないんだよ!」 手を結ばれている。
タッカーを岩に押しつけるアーコニアン。「タニーカ! (通信装置はどうすれば動く?)」
タッカー:「翻訳機もってたりしないの。」
「(答えろ!)」
「何言ってるかわかんないんだよ!」
「(…直し方を教えてくれ)」
「これは動かないんだよ。壊れてるんだ。わかる? 『壊れてる』! あんたに盗まれた時修理してたんだ。」
「(船の通信装置を直せ)」
「…何?」
「(船の通信装置だ)」 通信機と、自分の船を順に示すアーコニアン。
「…あんたの通信装置を直せってのか?」
首を斜めに振るアーコニアン。
タッカー:「どっちなんだよ!」
アーコニアン:「(俺の船だ)」
「クスカがどうした!」
銃を突きつけるアーコニアン。「(早くしろ)」
タッカー:「…殺す気か、殺せば何も直せない。…とにかくロープをほどいてくれ。手が使えないだろ。」
「(なめたマネはするなよ。分かったな?)」
「…下手なマネすりゃ殺すってんだな。わかったよ。」
アーコニアンは手を離すと、ロープをほどき始めた。

作戦室に入るトゥポル。
アーチャー:「進展は?」
トゥポル:「5個の捜索を終了。…タッカー少佐もアーコニアン船も、依然不明です。」
「アーコニアン側は?」
「同じく何の進展もありません。担当の月を捜索中です。」
「ここは彼らの領域だ。なぜもっと応援の船を呼ばない。」
「我々に手の内を見せないのです。私はヴァルカン人ですし。」
「過去に何があった。」
「…ファースト・コンタクトは 100年近く前です。彼らがワープ航法を発明してすぐでした。我々は当初から上手くいかなかった。あなた方はヴァルカン人に従い、外交関係を築き文化交流を始めた。しかし彼らは疑い深く狡猾で、結局こちらから手を切ったのです。」
「では? 我々は上手くいくことを祈ろう。」
「あまり期待はできません…」
「我々に協力してる。」
「今は。しかし警戒はすべきです。彼らの行動は予測不能。すぐに敵意をむき出します。」
「…覚えとこう。次の月に着いたら知らせろ。」

空が少し明るくなってきた。
汗をかいているタッカー。アーコニアンの装置を外に並べている。
つなげると火花が走った。「クソ…。」
近くに座っているアーコニアンは、その言葉を真似した。「クソー。」
タッカー:「……へえ、ファースト・コンタクトは順調に進んでるようだな。俺たち人間と……あんた何人だよ。だがさっきの第一声は、正式な場所では使わない方がいい。」
「(お前の名前は『クソ』っていうのか)」 指さすアーコニアン。
「…いや、俺はトリップ。トリップ。」
「トリップ。」 自分を示すアーコニアン。「ゾカーン※7。」
「ゾカーン。」
首を振るゾカーン。
タッカー:「わかった。これで、自己紹介は済んだな。水はないか、ゾカーン? ずいぶん、暑くなった。…喉が渇かない? …水、飲みたい。」 飲んでいる振りをする。
ゾカーンは近くにあった容器を投げ渡した。「トリップ。」
タッカー:「…どうも。」 口にする。だがすぐに吐き出した。「何だいこれ!」
投げられた容器のもとへ走るゾカーン。「(もったいない!)」 少しこぼれてしまった。
タッカーは落ち着いた。「んー…。…悪い。」 容器のフタを返す。「シャトルの中に、水がある。…水だ。俺が飲める飲み物。」
ゾカーン:「(修理に戻れ) …トリップ。」

上着を脱いだタッカーは、かなり暑さに参ってきている。
見張るゾカーン。「ザート。(働け)」
作業を力任せに行うタッカー。だが勢いあまって倒れ、腕を怪我してしまった。近づき、手を取るゾカーン。
タッカー:「シャトルに医療具がある。」
ゾカーンは突然、口から液体を出した。タッカーの傷に命中する。
タッカーは逃げる。「おい、お前何をする! 正気か!」 すると、見る間に傷がふさがっていった。「…すげー技だな。」
ゾカーン:「(……働け。…修理に戻れ)」
「わかったよ。…だが直すのは無理だ、お手上げだよ。あんたが、さっきみたいに何か吐いたらどうだ。…こっち来いよ。これを見てくれ。…来いよ! …来いっての。……ポートスに言ってる気分だ。」
やっとで近づくゾカーン。
タッカー:「これ見えるか。誘導コイルをバイパスさせようとしたんだが、上手くいかなかった。見えるか? この中だ。」
その瞬間、タッカーはチューブを引き抜いた。液体がゾカーンの目に降りかかる。
目を押さえるゾカーン。
銃を拾うタッカー。「この船は直せない! 俺の船に戻らせてくれ。…俺の船にだ。それを持て。…早くそれを持つんだ!」
通信機を抱えるゾカーン。「(今に見てろ)」
タッカー:「ああ、同感だよ。…ほら行くぞ。」


※7: Zho'Kaan
(グレッグ・ヘンリー Gregg Henry 映画第9作 "Star Trek: Insurrection" 「スター・トレック 叛乱」のガラティン (Gallatin) 役) 声:楠見尚己、DS9 アレキサンダー、ENT シリックなど

トゥポルはスコープを覗いている。
ブリッジに戻るアーチャー。「どうした。」
トゥポル:「見て下さい。」
スコープの中には、惑星と衛星の軌道が表示されていた。
アーチャー:「これは何なんだ。」
トゥポル:「月の熱運動を分析したものです。いずれも、時間により異常な温度差を記録しています。」
「それで?」
「…夜間は、零下 5度から 10度にまで下がります。」
「驚くほどじゃない。」
「しかし昼間は尋常ではありません。最高で 170度に達します。」
「……トリップが夜側にいることを祈ろう。」
「日の出前に探し出さねばなりません。」

ゾカーンの足も縛り終えたタッカー。「そんな目で見るなよ。あんたのアイデアだ。」 水を飲み、板状の食べ物を手にする。「あんたも食う?」
タッカーは一切れ渡した。「食べ物。」
食べるゾカーンだが、吐きだした。「(…よくない)」
タッカー:「…ノクトー。…確かにな。」
「(俺の船に食料がある) …ヴァドーザ!」
「…食べ物が、あんたの船に? …ヴァドーザは、食べ物だろ。」
「ヴァドーザ。」 シャトルポッドを示すゾカーン。
「…ヴァドーザは…船か?」
「ふ…ね。」
「ああ…だが、朝食にはまだ早い。…脱出する方法を、考えた。…さっき見たんだが、あんたの船の通信装置は使える。あんたの、通信装置から、パワー供給部を、流用するんだ。※8俺の通信装置につなぐ。メッセージを送れるかも。」

さらに夜が明けてきた。
タッカー:「よしと。もうすぐだ。…これで動くだろう。」
ゾカーン:「(よくない)」
「いや、ノクトーじゃない。大丈夫だ。」
「だいじょうぶ。」
「そう、きっと脱出できる。エンタープライズに戻れば、互いの言葉もわかるぞ? あんたの口から、『ありがとう』が聞きたいよ。」 起動するが、火花が散った。
大きく笑うゾカーン。
タッカー:「そんなにおかしいか?」
パッドを操作すると、通信機が反応した。「おい。これでも笑うか? タッカーからエンタープライズ。」 ノイズしか聞こえない。「エンタープライズ、聞こえますか? 頼むぜ、ホシ。…エンタープライズ。…場所のせいだ。そこら中、火山だから。火成岩は反磁性鉱石の中でも、厄介でな。通信に相当干渉する。……取るべき方法は一つだ。通信装置を…ああ…ああ、ツンサナ……この下はよくない。ノクトー。でも高い所へ持っていけば、干渉を避けられるかもしれない。」
首を振るゾカーン。
タッカー:「力を合わせよう。…あんたと、俺。一緒に運ぶ。……いいか。」 もっていたゾカーンの銃を放り捨てた。「俺は攻撃しない。あんたも。攻撃するな。…協力し合おう。」
ゾカーン:「(…ほどけ)」
足からほどくタッカー。「…始める前に、船から食料を持ってこよう。ヴァドーザから。」
次に手をほどいた瞬間、ゾカーンは飛びかかってきた。首を絞める。
タッカーが捨てた銃を手にしようとするゾカーン。
組み合い、タッカーが武器を向けた。「動くな!」
ゾカーンは口から液を出した。目をやられるタッカー。
殴り合う 2人。どちらも攻撃をやめない。
後ろから首を絞められるタッカー。そばの石でゾカーンを殴る。
だが、2人とも動きが遅くなってきた。ついに倒れるザカーン。
よろよろと離れるタッカー。「それで全力かよ。」
ゾカーン:「(俺たちの領域だ)」
タッカーは武器を拾い、ゾカーンに近づく。だが、またもそれを遠くに投げた。「まだケンカを続けるか。…それとも一緒にここを脱出するか。……どっちにする。」

分担して装置を運び、山を登る 2人。
タッカー:「早く来い。」
山頂付近で、腰を下ろした。

報告するサトウ。「船長、通信を感知。」
アーチャー:「トリップか。」
「わかりません、捕捉します。」

タッカーは記録している。「機関主任日誌、補足。エンタープライズに呼びかけてから 2時間が経つが、未だ応答なし。夜明けはまだだが、既に灼熱地獄だ。」 上半身は裸だ。「…スパーリングパートナーは疲弊してる。…彼らの人種は、汗をかけないのではないだろうか。…記録用。彼について学んだ。彼の名はゾカーン。…仲間に言いたいことはあるか?」
パッドを向けられたゾカーン。「ノクトー。」
タッカー:「ああ。『良くない』って意味だ。…誉めてくれ、ホシ。彼の言語は、かなり習得した。時々、舌がもつれるがな。」
ゾカーンの飲料を飲ませるタッカー。
ゾカーン:「(ありがとう)」
ついに太陽が昇ってきた。
草の陰に顔を隠すゾカーン。


※8: 「パワー供給部を、取り外すんだ。そして俺の通信装置につなぐ」と訳されています。パワー供給部は既に持ってきています (タッカーの目の前にある物)

タッカーは声をかけた。「おい。…ゾカーン。」
頭を起こすゾカーン。
タッカー:「死んだかと思った。」
ゾカーン:「(どうした? エンタープライズから応答が?)」
「…違う。エンタープライズじゃない。」
「…クソー。」
飲料を飲ませるタッカー。なくなってしまった。「心配ない。エンタープライズに戻ったらフロックスにこれを作ってもらうから。そういうの得意なんだ。」
うめくゾカーン。
タッカー:「しっかりしろ、ゾカーン! (起きろ) 俺の前で死ぬな、いいな。」
アーコニアン式に首を振るタッカー。
同じ仕草を返すゾカーン。「あ、あ…。」
タッカー:「よーし。」
通信機に反応がある。
サトウ:『…エンタープライズ。』
タッカー:「な、だから言ったろ? ホシ! 君か、聞こえるか。」

サトウのそばにいるアーチャー。「ああ、聞こえるぞ?」
タッカー:『ギリギリセーフですよ。かなり、暑くなり始めてる。』
「現在位置は、補足した。」
『シャトルは送らないで下さい。ここの大気の影響でエンジンが止まってしまいます。』

アーチャーの声が聞こえる。『セレンアイソトープだ。だが、転送装置には影響ない。』
タッカー:「独りじゃないんです。」
『わかってる。君を見つけたのはアーコニアンだ。パイロットとは上手くやってるのか?』
「…古い友人のようにね。その友人ですが…脱水症状を起こしてます。」

リードに命じるアーチャー。「待ってろ、トリップ。転送装置用意。」
フロックス:「それはお勧めできません。」
「…問題でも?」
「アーコニアンの生理機能を分析しました。彼らの、内分泌機能は温度の変化に非常に敏感です。パイロットが脱水症状であるなら、急性の細胞崩壊が起こっているはずです。」
「つまり?」
「転送すれば、彼の命はありません。」

再び通信が入る。『アーチャーからタッカー少佐。』
タッカー:「聞こえてます、船長。」
『トリップ、君を船に戻すことはできるが、アーコニアンの転送は無理だ。命に危険が及ぶそうだ。すぐに救出する方法を探すが、その前に…君を転送する。』

タッカーは拒否した。『嫌です。彼を残してはいけない。』
トゥポル:「月面の温度は急速に上昇しています。恐らく、一時間後には 130度に達するはずです。」
アーチャー:「戻ってこい、トリップ。そのあと君の友人も連れ戻す。」

受け入れないタッカー。「すみませんがそれはできません。ほかにも手はあるはずだ。…我々のシャトルは無理ですが、アーコニアンのシャトルの回路構成は我々とは違いました。改造の余地があります。」

アーチャーは尋ねた。「というと?」
『吸気マニフォルドを見てもらって下さい。そこを手直しできれば、アイソトープを排除できます。』
「話してみよう。だがそう長くは待たせないぞ?」

応えるタッカー。「…了解。」
アーチャー:『以上だ。』 通信は終わった。
気を失ったままのゾカーン。

完全に姿を見せた太陽。
タッカー:「タッカーからエンタープライズ。…エンタープライズ、応答せよ。…リレーのヒューズが飛んだのか。…暑さのせいだ。…おい…ガン・タック!」 水をゾカーンの顔にかける。
目を覚ますゾカーン。
飲み干すタッカー。容器を捨てた。「今後は独りでの、船外任務は禁止だろうな。食事係に任務変更だな。…『オレンジジュースでございます。ジャムとマーマレードはどちらにします。』 だが言っとく、俺は必ずエンタープライズに戻るぞ。…どんなことをしても。」
目の前には壮大な景色が広がっている。
タッカー:「今まで地球じゃ味わえない経験を何度もしてきた。アゴソリアの、大フレア※9も見たし…それから、マータラス※10の 3つの月も見た。」 身体を横にする。「エヴェレストの、2倍の高さの…クレーターに立ったこともある。エシニア※11の氷窟でダイビングもしたし、スリバンの…細胞船※12にも乗った。お姫様と、一晩過ごしたこともある。※13フフ…そういや、妊娠したこともあった。※14
笑うタッカー。「いろいろあったよ。…あんたもいろいろあったろ、そのためにこの人生を選んだんだ。見たこともないものを見るために。楽しかったよな。…楽しかった。」
ふと目を向けると、空に輝く複数の恒星の方に、船の影が見えた。音が近づく。
タッカー:「ゾカーン。…ヴァドーザ。」
言われた方を見るゾカーン。
アーコニアン船が近づいてくる。

衛星軌道上のアーカニアン軍用船と、エンタープライズ。
作戦室でドアチャイムに応えるアーチャー。「入れ。」
シャーとトゥポルがやってきた。
アーチャー:「ドクターから報告があった。パイロットの経過は順調だ。数時間後には母星に帰れる。」
シャー:「…お前の部下は。」
「うん、疲労と多少の火傷だけで、大したことはない。」
「うちのパイロットがお前の部下に、警告なしに攻撃を仕掛けていたとしたら…厳重に罰する。」
「…誤解が原因だ。今後は避けられることを、祈ってる。」
「すぐに我々の星系から立ち去って欲しい、約束通り。」
うなずくアーチャー。
シャーはトゥポルを見た。ドアを開けるトゥポル。
外では保安部員が待っている。出ていくシャー。
アーチャー:「アーコニアンは友人のリストには加えられそうにないな。」
トゥポル:「この遭遇は予想外の成功と言えます。」
笑うアーチャー。
しかしトゥポルは続けた。「ヴァルカン人が一世紀かけて築いた関係より、中身の濃い関係を築けました。」
アーチャー:「…続くことを祈ろう。」

医療室に入るタッカー。「彼の具合は。」
フロックス:「…ご自分で聞いては? 翻訳機は機能しています。」
タッカーには、まだ火傷の跡が残っている。「俺たち、あと 10分日光に晒されてたら、丸焦げだった。」
ゾカーン:「タラット・アーシュ※15。」
フロックスに言うタッカー。「…翻訳機ダメだぞ?」
ゾカーン:「ここに来たらくれるって言ったろう、タラット・アーシュを。」
「ああ、あれか。茶色い飲み物。」
首を振るゾカーン。
タッカー:「すぐ用意する。…ほかにいる物はあるか。今シェフが作ってる。チキンマサラは絶品だ。」
ゾカーン:「タラット・アーシュ。」
言葉を合わせるタッカー。「タラット・アーシュ。…わかった。」
ゾカーンはタッカーを呼び止めた。「トリップ。…お前の船に発砲した時……破壊しなくてよかった。」
タッカー:「…俺も同感だよ。」 うなずき、出ていく。

エンタープライズとアーコニアン船は衛星を去り、それぞれ別の方へ向かった。


※9: Great Plume of Agosoria
ENT第11話 "Cold Front" 「時を見つめる男」より

※10: マーテラス Matalas
ENT第13話 "Dear Doctor" 「遥かなる友へ」で言及。原語では「マータラス・プライムの連なる衛星」

※11: Etheenia

※12: ENT第2話 "Broken Bow, Part II" 「夢への旅立ち(後編)」など

※13: ENT第37話 "Precious Cargo" 「眠る女の謎」より

※14: ENT第5話 "Unexpected" 「予期せぬ侵入者」より

※15: taratt-aash

・感想
今シーズン新たに脚本家として加わった、ジョン・シャイバンによる 2話目のエピソード (前回は第29話 "Minefield" 「許されざる越境」)。またまたタッカーが災難に遭います。2話前にもあったばかりなのに、ここまで連続させる意味があるのでしょうか。メイウェザーなんて「はい、船長」しかセリフがなかったというのに…。
ストーリー自体は、過去の ST でも見られた要素を集めたような感じです。あんまり言うと可哀想なのでいちいちどのエピソードかは列挙しませんが、ある意味「王道」ですね。当初はトゥポルがアーコニアンと協力する要素もあったようですが、結局含まれていません。長々と殴り合いのシーンを描くなら、そっちを入れて欲しかった気もしますね…。


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