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エンタープライズ エピソードガイド
第91話「クリンゴンの苦境」
Affliction

dot

・イントロダクション
暗い部屋。動物がうろついている。
ドアが開き、クリンゴン人※1が連れてこられた。「(何をする気だ)※2
命じるクリンゴン、クヴァグ※3。「(縛れ)※4
椅子に固定されるクリンゴン人。「(判事に会わせろ)」
うなるクヴァグ。緑色の液体が入った容器がぶら下げられる。
クリンゴン人:「(死刑は免れたはずだ)」
点滴の要領で、腕に注射された。液体を見つめる囚人。
コンソールを操作する、部屋にもう一人いるクリンゴン人のアンターク※5
囚人はうなり始めた。声を上げる。
見つめるクヴァグ。
クリンゴン人の額に、変化が現れ始めた。


※1: クリンゴン人囚人 Klingon Prisoner
(マーク・ウォーデン Marc Worden DS9第127話 "Sons of Daughters" 「過去を越えた絆」などのクリンゴン人アレキサンダー・ロジェンコ (Alexander Rozhenko) 役) アレキサンダーの先祖、すなわちウォーフの先祖という設定…ではないでしょうね、明らかに。声優なし

※2: 今回使われるクリンゴン語は、TOS 映画のためにこの言語を生み出したマーク・オクランドが翻訳したそうです。「正しい」クリンゴン語を使いたいという、脚本家 Mike Sussman の意向によるもの

※3: クヴァグ将軍 General K'Vagh
(ジェイムズ・エイヴリー James Avery) 名前はこのエピソードでは言及されておらず、訳出もされていません。声:飯島肇

※4: 本文に書いているのは DVD の吹き替え用字幕のもので、オンエア (Super! drama TV) 版ではそれぞれ「何する気だ?」「拘束しろ」

※5: Antaak
(ジョン・シャック John Schuck 映画 ST4 "The Voyage Home" 「故郷への長い道」・ST6 "The Undiscovered Country" 「未知の世界」のクリンゴン人大使 (Klingon ambassador)、DS9第41話 "The Maquis, Part II" 「戦争回避(後編)」のパーン総督 (Legate Parn)、VOY第142話 "Muse" 「ヴォイジャーの神々」のコーラスその2 (Chorus #2) 役) クリンゴン大使の先祖という設定かどうかは不明。声:白熊寛嗣、ENT ドラム、2代目フォレストなど

・本編
『航星日誌、2154年11月27日。姉妹船コロンビア※6発進に合わせ、地球へ帰還した。個人的には、有能な機関主任との別れが気になる。』
エンタープライズは地球に近づく。ドックの中にいるコロンビア※7
荷物をまとめているタッカーは、窓を見た。整備中のコロンビアが見えている。
ドアチャイムに応えた。「ああ。」
タッカーの部屋に入るトゥポル。
タッカー:「美しい船だ。」
トゥポル:「外見はエンタープライズと変わりません。」
「優秀な機関士には、違いがわかる。…出てくれるのか? 俺の、お別れパーティ。」
「…今回の異動は、論理的とは思えません。…昇進なしなんて。」
「昇進目的で異動すると?」
「理由もなくアーチャー船長と離れないはずです。」
「新しい挑戦がしたくなったんだ。エンタープライズを調整するのに一年かかった。コロンビアでは、半年で済ませる。ヘルナンデス船長には、俺が必要だ。」
「…私のせいですか。」
「この異動は艦隊も認めてる。」
「答えになっていません。」
「…俺の人生は、君を中心に回ってるわけじゃないぞ。」
無言で出ていくトゥポル。

夜のサンフランシスコ。
※8に出るサトウ。「早めに来てよかったわ?」 私服姿だ。
フロックス:「うーん、ずいぶん人気店になった。」
「チャンのお店※9をあなただけの隠れ家にしておけると思った?」
「ヘ、艦隊の人間が多いな?」
「多分私のせいだわ。何人かに宣伝したから。」
「何人か。」
「効率よく情報を広げるのは得意なの。…これでも通信士だもの。」
笑うフロックス。
サトウ:「IME※10 の会合で何を言われたの?」
フロックス:「宇宙生物学の指導者にならないかと。」
「すごいわ、受けるの?」
裏通りに来た 2人の様子を、物陰から見ている者がいる。
フロックス:「まだ考え中だ。クルーたちへの情が断ちがたくてね。離れるのが辛い。君は、どう思う。」
サトウ:「聞く人を間違ってる。別れたくないって言うに決まってるじゃない。」
隠れていた 2人が現れた。「デノビュラ人、一緒に来い。」 フードを被っている※11
フロックス:「なぜかね。」
「聞こえないらしいな。」
もう一人が銃を向けた。サトウは蹴りで払い落とす。
殴られるサトウ。フロックスも抵抗する。
サトウは相手を投げ飛ばしたが、3人目の者に殴り倒される。撃たれるフロックス。
意識を失う。サトウは起き上がれず、連れて行かれるフロックスを見る。
異星人の言葉が聞こえる。目をつぶるサトウ。

裏通りで、スキャナーによる捜査が行われている。
ジャケットを着たアーチャーが来た。「ホシ。」
サトウ:「大丈夫です。」
リード:「犯人は?」
女性の士官。「いま、捜査中よ。艦隊保安部のコリンズ※12です。」
アーチャー:「アーチャーに、リード大尉です。」
サトウ:「犯人は 3人。暗かったもので顔は見えませんでした。」
コリンズ:「一人が仲間に何か言っていたとか。」
「私が気を失う前に。地球の言葉ではありません。」
アーチャー:「内容は?」
「…すみません。」
コリンズ:「採取できた DNA はサトウ少尉とドクターのものだけでした。それと、イオン化残留物がこちらで発見されています。」
リード:「転送サインでしょうか。」
「転送を使える者はそうはいません。」
「しかし、可能性がないことはない。」
「ドクター・フロックスは以前も口論に巻き込まれたそうですねえ※13。」
アーチャー:「それと、関係が?」
「ドクターにケンカを売ってきた男が、未だに恨みを抱いていたとしたら…」
リード:「あれはただの酔っぱらいだ。…とてもじゃないが、誘拐をしでかすような男には思えません。」
「とにかく周辺を捜査中です。失礼船長、リード大尉。」
アーチャーはリードに命じた。「管制室に、連絡を。衛星が転送波を、感知していないか聞いてみてくれ。」

コロンビア。
パッドを持つタッカー。「ダイリチウム・マトリックスの誤差は、0.3ミクロンに抑えろ。」
機関部員のリヴァーズ少尉※14。「仕様書には 0.5 と。」
タッカー:「それを書いたのは誰だと思う?」
「ワープの専門家です。」
「その通り。太陽系の外に出たことのない連中だ。私は 3年半、このエンジンの中を這い回ってきた。間違ったことは言わん。」
「わかりました。」
「ビッグス※15、ピアース※16、フィールドスタビライザーを再調整しろ。リヴァーズ、ストロング※17、インジェクターアッセンブリへ。この船は、半年前に発進するはずだったろ。私が保証しよう。コロンビア※6は週末には宇宙へ向けて発進させる。…仕事にかかれ。」
向かう機関部員。
通りかかったエリカ・ヘルナンデス船長※18が機関室に入った。「まず船長に異動の挨拶をするものよ?」
タッカー:「すみません。…先に、船の状況を把握しておきたかったもので。チャールズ・タッカー少佐、着任しました。」
「ようこそ。」 握手するヘルナンデス。「トリップね?」
「そうです。」
「ご感想は? …無事に発進できそう?」
「…はい、いい旅ができると思います。…ドクターの、行方は。」
「新しい情報が入ったらすぐに知らせるわ。…クルーの士気が上がったようね。」
「予定通り発進するには、寝る間もありません。」
「食事はいいでしょう? 明日食堂の船長室へ、18時でどう? 一緒に、アーチャー船長の話でも。」
「喜んで。」
外へ向かうヘルナンデスは、立ち止まった。「少佐。…シフトが終わったら補給部へ立ち寄ってください。」
タッカー:「なぜです。」
「制服を。」 ヘルナンデスは左肩の記章に触れる。「替えてもらわないと。」
タッカーはエンタープライズの記章を見た。「了解。」

エンタープライズ。
作戦室を歩いているアーチャーは、ドアチャイムに応える。「入れ。誘拐犯は何も言ってこない。金の要求もない。」
トゥポル:「デノビュラの大使と、話をしました。ご家族には伝えたそうです。」
「ホシは、犯人の一人が何か話していたのを聞いている。だが意識が混濁してたそうだ。…思い出させてやってくれ。」
「…精神融合で? 人にやった経験などありません。訓練すらしてないんですよ。」
「危険は承知だ。私がつきそう。」
「船長が?」
「4日間も、スラクのカトラを背負ってたんだ※19。少しは役に立つ。」

コンピューターを扱うリード。「コンピューター、衛星ログにアクセス。137 だ。時間は本日 19時から、19時45分まで。」
兵器室のモニターに、地球軌道の図が表示されている。ブザーが鳴った。
リード:「何? …利用不可?※20」 「データ表示不可」と出ている。「艦隊管制室、こちらエンタープライズ※21リード大尉。…応答してください。」
すると、映像が切り替わって黒い制服の男※22が現れた。『遅くまで熱心だな。』
リード:「…どうして。管制室に呼びかけたはずですが。」
『わかっている。今夜のサンフランシスコのデータが、見られなかったからだろ。』
「まあ、そんなとこです。」
『この住所※23に、一時間後。』
住所が表示され、通信は終わった。後ろを向くリード。

サトウの顔に手を触れるトゥポル。「我の精神を汝へ。互いの精神は、解け合い一つとなる。」
サトウ:「何も起こりません。」
部屋にいるアーチャー。「トゥポル、感情の抑制を少しだけ弱めてみろ。」
トゥポルは目をつぶった。「あなたの感じることは、私にも感じられる。」
息を吸うサトウ。トゥポルも続く。
トゥポルの心の声。『聞こえる?』
サトウ:『ええ、はっきりと。』
「あなたたちは、ちょうどレストランを出たところ。」

記憶が再現される。
※24に出るサトウ。「早めに来てよかったわ?」
フロックス:「うーん、ずいぶん人気店になった。」

同じ記憶を共有するトゥポル。「その調子よ。」

フロックス:「宇宙生物学の指導者にならないかと。」
トゥポルも一緒に裏通りを歩いている。『襲われた場所は?』
指差すサトウ。『あそこです。』
フロックス:「クルーたちへの情が断ちがたくてね…」
サトウ:『見えますか?』
「…辛い。君は、どう思う。」
隠れていた 2人が現れた。
トゥポル:『ええ。』
異星人:「デノビュラ人、一緒に来い。」
フロックス:「なぜかね。」
「聞こえないらしいな。」
もう一人が銃を向けた。サトウは蹴りで払い落とす。
殴られるサトウ。フロックスも抵抗する。
様子を見ているトゥポル。
サトウは相手を投げ飛ばしたが、3人目の者に殴り倒される。

顔を歪めるサトウ。トゥポルも反応する。

倒れたサトウに近づくトゥポル。「痛みは忘れて。状況に集中して。」

撃たれるフロックス。異星人の言葉が聞こえる。
その言葉を繰り返すトゥポル。

サトウも一緒に唱える。
目を開けた。「『男を連れてこい。』 ライジェル語※25です。」

司令室。
トゥポル:「事件の 2時間後、ライジェルの貨物船が軌道を離れています。…行き先は、プロキシマ・コロニー※26と飛行計画書に。」
アーチャー:「このコースじゃ間違ってもプロキシマには着けんな。…少尉。」
通信士:「はい。」
「ガードナー提督につないでくれ。休暇は中止だ、クルーを呼び戻せ。」 作戦室へ向かうアーチャー。
航路が表示されている。

暗い中を歩いてきたリードは、待っている男に近づく。「衛星情報を引き出せないようにしたのはあなたなんですか。」
男:「個人的にではない。」
「だが関係はある。…フロックスは友人です。彼の居場所を?」
「君に任務を与える。」
「私はもうあなたの部下ではないはずです。」
「どうしても必要な任務なのだ。君の友人の命が懸かっている。」 男は歩いていった。


※6: 吹き替えでは「コロンビア

※7: これまでも建造中の姿が登場していましたが、その際は船体色がエンタープライズと同じでした。今回、青白い印象に一新されています (ディフレクターが四角形に近くなっているのは、以前から)

※8: パラマウントで撮影、事務所のそば

※9: Madame Chang's
ENT第79話 "Home" 「ヒーローたちの帰還」より。その際の吹き替えは「マダム・チャンの店」

※10: 種族間医療交換計画 (Interspecies Medical Exchange) の略、ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」など。ENT第40話 "Stigma" 「消せない汚名」でも略称が使われましたが、その際の吹き替えは「交換計画」

※11: 異星人その1 Alien #1
(ブラッド・グリーンクイスト Brad Greenquist DS9第136話 "Who Mourns for Morn?" 「モーンの遺産」のクリット (Krit)、VOY第52話 "Warlord" 「暴君の星」のデマス (Demmas)、ENT第39話 "Dawn" 「熱き夜明け」のカターン・シャー (Khata'n Zshaar) 役) 声はケルビー役の高階さんが兼任

※12: コリンズ少佐 Commander Collins
(ケイト・マクニール Kate McNeil) 階級は訳出されていません。一部資料では誤って大尉になっています。22世紀地球の組織として宇宙艦隊保安部が言及されるのは初めて。声:森夏姫

※13: ENT "Home" より

※14: Ensign Rivers
(セス・マクファーレン Seth MacFarlane ENT第72話 "The Forgotten" 「デグラの決断」の機関部員 (Engineer) 役。米国のアニメ「ファミリー・ガイ」 の創作者 (クリエイター) 兼声優によるカメオ出演で、スタートレックのファン) 前回はエンタープライズの機関部員役で出演しており、コロンビアに異動した同一人物という設定かもしれません (前回の声優は遠藤純一)

※15: Biggs

※16: Pierce

※17: Strong
3人ともエキストラ

※18: Captain Erika Hernandez
(エイダ・マリス Ada Maris) ENT "Home" 以来の登場。名前 (姓のみ) が言及されるのは初めて。声:泉裕子

※19: ENT第83話 "The Forge" 「狙われた地球大使館」など

※20: 原語には、表示を読み上げる「利用不可?」というセリフはありません。オンエア版字幕では無表示

※21: 吹き替えでは「エンタープライズ

※22: ハリス Harris
(エリック・ピアーポイント Eric Pierpoint TNG第154話 "Liaisons" 「イヤール星の死者」のヴォヴァル大使 (Ambassador Voval)、DS9第111話 "For the Uniform" 「エディングトンの逆襲」のサンダース艦長 (Captain Sanders)、VOY第123話 "Barge of the Dead" 「さまよえるクリンゴンの魂」のコーター (Kotar)、ENT第18話 "Rogue Planet" 「幻を狩る惑星」の Shiraht 役) 名前は、このエピソードでは言及されていません。初登場。声:武虎

※23: 表示されるサンフランシスコの住所に "1044 North Maple" とあります。実際の Maple Street には 1044 という大きな数の番地はないそうですが、宇宙艦隊本部があるとされるプレシディオと接しています。最後に "94-1104-314159" と表示され、最初の 5桁の 94110 は実際にサンフランシスコの郵便番号です。最後の 6桁は円周率

※24: 「マダム・チャンのマンダリン・カフェ (Madame Chang's Mandarin Cafe)」という正式名が見えます

※25: Rigelian
ライジェル人が登場したのは史上初。もっとも、本当に暗くてほとんど顔の様子などは確認できませんが…

※26: Proxima colony
ENT第80話 "Borderland" 「ボーダーランド」より

建物が点在する惑星。
緑色の液体を取り出すアンターク。クヴァグが見ている。
フロックスが連行されてきた。手を振り払う。
クヴァグ:「ドクター、ようこそクヴァット・コロニー※27へ。ドクター・アンタークに手を貸してもらう。」
礼をするアンターク。
フロックス:「そんなことをするつもりはない!」
クヴァグ:「死んでもいいのか。」
「…研究の助手が必要ならほかにもたくさんいるだろう…」
「どうやら勘違いをしてるようだ。助手はアンタークの方だよ、ドクター?」
アンターク:「…またあんたに会えて光栄だ。」
フロックス:「会ったことが?」
「覚えてないのも無理はない。5年前、ティビロン※28で開かれた IME 会議で見かけただけだからな。」
「クリンゴンは、あの会議にはいなかった。」
「マザール※29の代表に変装していたのだよ。招待されなかったからな。」
クヴァグ:「積もる話はまたにしてもらう。急いで研究にかかりたまえ、ドクター。明朝までに成果を出してもらう。期待しているぞ。」 部下と共に出ていく。
「将軍の振る舞いを許して欲しい。戦士というものは、とかく礼儀には無頓着なものでな。」
フロックス:「何が望みだ。」
「帝国は、ハーク※30の侵略以来の未曾有の脅威にさらされている。病原体が瞬く間に広がり、すでに感染者は数百万。この状況が続けば、クリンゴンは間違いなく滅びるだろう。」
「なぜ救いを求めなかった! 艦隊もデノビュラも、必要な専門家を派遣したはずだ!」
「あんたはクリンゴンの流儀を知らんのだ。助けを請うなど、敵の目の前で弱味をさらすも同然。すぐにでも暴動が起こりかねん。」
「なぜ私を。」
「会議での、あんたの講義に感銘を受けたのだ。ウイルスの増殖というリポートは、深い洞察に満ちていた。」
「…あんたの専門分野は何だ。」
「遺伝子変異の研究。ウイルスはもう取り出してある。」 皿を手にするアンターク。「ヌクレオチドのマップ化から始めるだろ? …あんたを拉致させたのは私ではない。だがあんたが必要なのは確かだ。何百万という命を救って欲しい。」
フロックスは皿を受け取った。

ワープ中のエンタープライズ。
トゥポル:「貨物船のワープ痕跡、消失。」
リード:「インパルスにしたのでは。」
アーチャー:「…追いつくのは?」
メイウェザー:「現行速度だと、8時間12分後。」
「…アーチャーから機関室。」 応答がない。「…ケルビー※31少佐、応えろ!」

機関室のクルー。「ケルビーです。」
アーチャー:『速度を上げろ!』
「もうインジェクター 105%です。」

アーチャー:「タッカー少佐はそれ以上叩き出したぞ。」
ケルビー:『努力してみます。』
船長席に座り、ため息をつくアーチャー。

コロンビア。
船長用食堂に料理が運ばれる。壁には宇宙艦隊とコロンビアの記章。
窓の外にはドックの様子が見えている。
タッカー:「誰がシェフか知りませんが、エンタープライズのシェフといい勝負だ。」
ヘルナンデス:「リパブリック※32からさらってきたの。…ジェニングズ船長※33が餞別をくれるって言うから、シェフを頂いたわ…」
笑うタッカー。
ヘルナンデス:「機関部のクルー 2名が転属願いを出してきたわよ?」
タッカー:「誰です。」
「名前は伏せておいた方がいいと思う。…人手が足りないと断っておいたわ。あなたには随分驚かされる。乗船して 2日も経ってないのに部下が逃げ出したがるなんて。」
「尻は叩いてます。時間が、ないですから。ワープのテストは、木曜日だ。」
「まさかうちへ来てくれるとは思わなかったわ? ズィンディ・ミッション後の報告会の時は、ほかの船に乗船する気はないと言っていたのに。」
「記憶力がいいんですね。」
「ええ、おかげさまで。」
「エンタープライズは、快適すぎたんです。友達が多いのはいいが…同僚と親しくなりすぎるのは危険です。」

自室で瞑想しているトゥポル。

意識が飛んだ。
白い空間の中を、タッカーが歩いている。
瞑想の格好のまま座っていたトゥポル。立ち上がる。「なぜここに。」
タッカー:「俺も同じことを聞こうとした。これは白昼夢か?」
「瞑想中なの。いつもここで瞑想しているわ。」
「へえ。もっと面白いとこ選べばいいのに。…ビーチとか、あの炎の平原※34とか。」
「…出ていってください。」
「どこへ出ていきゃいいんでしょうか?」
「消えて。」
「俺の白昼夢だ、そっちが消えろよ。」
リヴァーズの声。「あのう少佐、大丈夫ですか?」

コロンビアの機関室に立っているタッカー。「ああ、大丈夫だ。」
リヴァーズ:「頼まれていた資料です。」
「ご苦労。」
眉をしかめるタッカー。

トゥポルは瞑想をやめていた。
アーチャーの通信。『ブリッジからトゥポル。もうすぐ、座標点に着く。』
トゥポル:「すぐ行きます。」

残骸※35が漂っている。
スクリーンで見るアーチャー。
トゥポル:「生体反応なし。…複数の遺体を感知しました。」
アーチャー:「……デノビュラ人は?」
「全員ライジェル人です。」
「……誰が攻撃を。」
リードのコンソールには、「武器サイン特定完了」※36と出ている。だがボタンを押して表示※37を消した。「わかりません。残骸を、船内に持ち込んで分析しないと。」
アーチャー:「レコーダーをスキャンしろ。…何かわかるかもしれん。」
一瞬アーチャーの方を見るリード。

クヴァット・コロニー。
フロックス:「これはレヴォディア風邪※38のウイルスが突然変異したものじゃないのか。」 拡大図が出ている。
アンターク:「我々が試したどんな抗ウイルスも効かなかった。」
「IME に連絡すべきだ。同様の変異データがあるかもしれん、喜んで貸してくれるだろう。…足がつかないよう、連絡するよ。誰にも、知られやしない。」
「連絡する必要はない。」 チップを持ってくるアンターク。「すでに、データベースは手に入れている。」
フロックスは受け取った。「盗んだのか!」
アンターク:「最高評議会は、医療研究を奨励していない。データを得るのに手段を選んではいられんのだ。」
「名誉ある行為とは言えんな。」
「名誉と医療を秤に掛けるなら、私は後者を選ぶ。」
「だったらゲノムシーケンサーも盗んだ方がいい、うん? 相応の道具がなければウイルスをマップ化できん。」
クヴァグがクリンゴン人を連れて戻ってきた。
フロックス:「この男は感染してる。」
クヴァグ:「診断が早い。」
「我々にも移るぞ。」
アンターク:「まだ第1段階だ、ウイルスは第3段階にならないと感染しない。」
「…私は解剖用の遺体を頼んだんだ、生きてる患者じゃない。」
クヴァグ:「この男も直に死ぬ。」
器具を持ったアンタークを止めるフロックス。「…何をする気だ!」
アンターク:「安楽死だ。」
「話にならんな。命を救うのが医者じゃないのか!」
「研究に命を捧げれば名誉を得られる。無駄死にするよりよっぽどいい。」
「それは医者として言ってはいけない言葉だ。」
だがクヴァグがディスラプターを取り出し、患者を殺した。「解剖しろ。」

エンタープライズ。
リード:「コンピューター、暗号回線確立。艦隊周波数、79ベイカー。」
黒い制服の男がコンソールに映った。『大尉。』
リード:「クリンゴンはあの船と合流するだけだったはずです。なぜ破壊を!」
『実に残念だが、接触を隠すためだろう。』
「クルーは何人いたんです。」
『君には関係ない。…武器サインは、分析したのか?』
「はい。」
『アーチャーには言ったか。』
首を振るリード。「でもいつまで黙っていられるかわかりません。」
男:『この辺りは、オリオン※39の武装船が出没する。』
「また船長に嘘をつけと? …それより事情を全て説明しては。」
笑う男。『面白い冗談を言うじゃないか。』
リード:「船長は信用できる方です、私が保証する。」
『アーチャーは艦隊の船長だ、聞いたことは全て提督に報告する義務がある。調査を開始されるぞ※40。』
「自分が恥ずかしくてなりません! 非常に不本意だ。」
『何とか気持ちに折り合いをつけたまえ。今の仕事に着任する前の誓いを、忘れるな。』
船が揺れた。
リードの部屋にサトウの通信が流れた。『戦術警報、全員配置について下さい。』
男:『どうした。』
リード:「攻撃を受けたようです。」 通信を終え、立ち上がる。


※27: Qu'vat colony
ENT第82話 "The Augments" 「野望の果て」より。その際の吹き替えは「ヴァット・コロニー」

※28: Tiburon
TOS第75話 "The Way to Eden" 「自由の惑星エデンを求めて」など。当時の吹き替えでは「ティロン」

※29: Mazarite
ENT第23話 "Fallen Hero" 「追放された者への祈り」より

※30: Hur'q
DS9第81話 "The Sword of Kahless" 「カーレスの剣」で言及された種族

※31: Kelby
(デレク・マジャル Derek Magyar) 初登場。声:高階俊嗣

※32: Republic
23世紀にも U.S.S.リパブリックが就航しています (コンスティテューション級、NCC-1371。TOS第15話 "Court Martial" 「宇宙軍法会議」など)。吹き替えでは「リパブリック

※33: Captain Jennings

※34: Fire Plains
ENT "Home" など

※35: このライジェル貨物船は、ENT第3話 "Fight or Flight" 「死のファースト・コンタクト」に登場したアクサナール貨物船の使い回し

※36: オンエア版字幕では無表示

※37: 「ハドロン量:147ppm」と表示されています

※38: Levodian flu
VOY第25話 "Tattoo" 「天の精霊」より。当時の吹き替えでは「レヴォディア風邪」

※39: Orion
ENT "Borderland" など

※40: 吹き替えでは「調査派遣されるぞ」

異星人船が攻撃している。
ブリッジに戻ったリード。揺れに耐える。
トゥポル:「防御プレート維持。」
サトウ:「依然応答ありません。」
アーチャー:「武器を狙え。」

廊下に転送してくる者たちがいる。近くにいたクルーが通信機に触れようとしたが、その前に撃たれた。
歩き出す一同。ドアのロックを解除する。
はしごを登っていく。

サトウ:「侵入者です。Dデッキ右舷方面。アクセスチューブ7。」
アーチャー:「封鎖しろ、すぐに兵士を送れ!」

コンピューターに近づく男たち。異星人語を使う。
周りを見張る。MACO が撃ってきた。
反撃する異星人※41は、コミュニケーターを使う。「(ここを狙い砲撃しろ)」
フェイズ砲を使うエンタープライズ。相手が攻撃する。
MACO のいた場所が爆発した。

アーチャー:「船を無力化しろ、絶対に逃がすな!」

別の図形になっていたコンピューター画面が、元に戻っていく。
異星人:「(転送地点へ戻れ)※42
引き返す一同。

待っていた MACO が先頭の異星人を撃ったが、反撃されて倒れた。クルーが向かってくる。
異星人は仲間に話し、倒れた者を見捨てて逃げていく。フェイズ銃を向ける保安部員。

トゥポル:「侵入者、転送準備。」
メイウェザー:「ワープします。」
アーチャー:「追跡しろ。」
「…舵が利きません。」
アーチャーを見るリード。

医療室。
異星人がベッドに拘束されている。
アーチャー:「起こせ。」
ハイポスプレーを打つ医療部員。
目を覚ました異星人は逃がれようとする。
アーチャー:「なぜ攻撃した。」
異星人語を使う男。
サトウ:「『地球人に話すことなどない。』」
アーチャー:「この言葉は…」
「クリンゴンです。」
トゥポル:「これは、何かの間違いでは?」
アーチャー:「どうした。」
モニターを見るトゥポル。「生体サイン上、彼はクリンゴン人です。」
額のうねりがなくなった顔を見つめるアーチャー。

司令室のリード。「外科的な手術を施したんでしょう。」 クリンゴン人の顔が映っている。
アーチャー:「仮説は?」
トゥポル:「もっと、分析が必要です。彼らは反物質フローレギュレーターを不能にしました。」 位置が拡大される。「ワープドライブの修理に、6時間はかかります。」
「…機関主任を手伝ってやれ。ほかのシステムも、この『クリンゴン』にいじられていないかよく点検させるんだ。」 向かうメイウェザー。「ライジェルの貨物船だが、ブラックボックスにデータは。」
トゥポル:「消されていました。」
リード:「セーフガードでしょう、悪用を避けるためでは。」
アーチャー:「ホシと一緒に、データを復元してくれ。」
出ていくトゥポルを見たリード。独り司令室に残る。

顕微鏡を覗くフロックス。「待てよ? この塩基対の配列はどこかで見たことがある。」
アンターク:「確かか。」
動物の鳴き声が聞こえた。フロックスの足下に、ターグ※43がすがりついている。
アンターク:「ボクシャー※44!」 出ていくターグ。「餌ならもうやったろ! 向こうへ行ってろ。」
フロックス:「…研究室で野生動物を飼うのはどうかね。」
「あんたも医療室で、いろいろ飼ってるだろ。」
「野放しにはしていない。」
「ボクシャーを閉じ込めるなんてできん。最初の患者だ。…こいつは昔、脇腹を割いてな。子供ながら、私が縫ってやった。」
「…どこで見たか思いだした。半年前だ、忘れもしない! 優生人類※45の DNA だ。」
視線を下げたクヴァグを見るアンターク。
フロックス:「なぜ地球人の遺伝子がウイルスに組み込まれている。」
クヴァグ:「そう驚くことではないだろ。…優生人類はたった 2人でバード・オブ・プレイを奪い、クルーを皆殺しにした。…我らより劣った種族が優位に立つことなど帝国は許さん。考えてみろ、宇宙艦隊のクルーが全て遺伝子操作を受けた地球人になったらどうなる!」
「遺伝子操作は何十年も前に禁止されている! 君らを襲ったのは、前世紀の遺物たちだ!」
「ヴァルカンも評議会にそう報告を、だが我々は納得できん! だから対策を講じただけだ。」
「優生クリンゴンを創り上げる気か! …優生人類は全滅した。どこで遺伝子を。」
アンターク:「バード・オブ・プレイの残骸の中から、受精卵を見つけた。それを使い、多くの被験者の遺伝子操作を試みたのだ。ところが、予想外の副作用が出始めて。」
「額の隆起が、溶け出したんだな? …DNA は予想以上に強かったわけだ、うん?」
「当初は成功したように見えたのだ。地球人のような顔にはなったが、中身はクリンゴンだ。より強く、賢くなった。…だが次第に神経経路が劣化し、次々と死んでいった。途中ある被験者がレヴォディア風邪にかかり、優性遺伝子がウイルスに変異したのだ。」
「空気感染する。…なぜそれを早く言わなかった!」
クヴァグ:「生きてここを出たいなら、下らん質問はその辺にしといた方がいい。仕事に戻れ!」

エンタープライズ。
機関室に残骸が置いてある。
サトウ:「どう思います?」
トゥポル:「再帰アルゴリズムで、ディレクトリを復元できるかもしれないわ。」
「精神融合の後に、変な夢見ることあります?」
「お互いの潜在意識が交換されて、それが夢に出ることはあるわ。」
「夕べ変な夢を見たんです。タッカー少佐の夢。2人ですごく不思議な場所にいるの。…真っ白で…その場の空気感がロマンチックって言うか、今まで少佐の夢なんか一度も見たことないのに。」
サトウを見たトゥポル。「…なぜかしらね。」

作戦室で装置を持っているアーチャー。
トゥポル:「データは消されていました。故意にです。」
アーチャー:「マルコムはセーフガードだと。」
サトウ:「そのマイクロダイン結合器※46で消されていたんです。」
「…確かか。」
トゥポル:「ある磁気サインが検知されています。」
サトウ:「C-14 のロッカーから同じサインが。最後にそのロッカーに近づいたのは、リード大尉です。」

テーブルの上で、マイクロダイン結合器を滑らせるアーチャー。
手にするリード。「何をおっしゃってるのか、さっぱりわかりませんが。」
アーチャー:「ブラックボックスにアクセスできるアルファ4 以上の保安特権をもつのは、トゥポルと我々だけだ。」
「おっしゃるとおりです。謎ですね。」
「本当に、貨物船を破壊したのはオリオンか。」
「本当です。」
「…トゥポルに言ってもう一度、チェックさせた。…船を撃ったのはクリンゴンのディスラプターだ。」
「…お言葉ですが、それは間違いです…」
「私もセンサーログを見た。」
「誰かが細工したのかも。」
「…一体何が起きているんだ。…答えてくれ、大尉。」
「…お許しを。これ以上何も答えられません。」 結合器を返すリード。
アーチャーはため息をつき、装置を受け取る代わりにリードの身体をつかんだ。「マルコム! …まさかこんな命令を下すとは、思わなかったぞ。」 作戦室のドアを開けると、MACO が待っていた。「伍長。リード大尉を解任した、すぐに拘束室へ連行しろ。」
目をつぶり、一旦アーチャーを見て出ていくリード。


※41: 名前は Marab (テレル・ティルフォード Terrell Tilford) ですが、言及されていません。「マラブ」としている日本語資料もあります。声:近藤広務

※42: オンエア版字幕では「転送点に戻れ」

※43: targ
TNG第6話 "Where No One Has Gone Before" 「宇宙の果てから来た男」など

※44: Boshar

※45: Augment
ENT "Borderland" など

※46: microdyne coupler
DS9第158話 "The Siege of AR-558" 「戦争の影−AR558攻防戦−」でも言及。当時の吹き替えでは「マイクロダイン連結器」

ワープに戻ったエンタープライズ。
拘束室にいるリード。
やってきたアーチャーは会話ボタンを押した。「クリンゴン領へ針路を定めた。…まだ連中に気づかれてはいない。クリンゴン領へ行くのがどんなに危険か説明する必要はないな。フロックスの居場所は知っているのか?」
リード:「私はドクターの居場所など知りません! これだけは信じてください。」
「今さら何を言っても信じられんよ。」 ドアを開けるアーチャー。「私の知っているマルコム・リードは、反逆罪など犯さん。」
「クリンゴンについたわけじゃありません!」
「では誰に。……お前はこの制服を裏切った。」
「船長! …私は、義務を負ってるんです。あなたやクルーへの忠誠心より、優先すべき。」
アーチャーは MACO に合図した。外に出る MACO。
アーチャー:「どういうことだ。」
リード:「…これ以上は言えません。」
「まだ何も言ってないだろ。…お前の親父さんは、英国海軍だったな。…名誉ある伝統と奉仕を誇る。…お前が裁判にかけられたら、その親父さんどう思うかな?」
「わかりません。」
うなずくアーチャー。独房のドアを閉めた。
目をつぶるリード。

怒鳴るクヴァグ。「もう時間がない!」
フロックス:「ヌクレオチドの配列はそう簡単にはできんよ。スン博士を拉致すべきだった、私よりずっと効率が上がったはずだ。」
アンターク:「試みたが警備が厳重すぎた。」
クヴァグ:「急いで治療法を見つけないと、患者が一人もいなくなる! …最高評議会は既に部隊を派遣し、ヌヴァック・コロニー※47を全滅させた!」
「ヌヴァックは最初に感染した惑星の一つだ。」
フロックス:「感染者は皆殺しに?」
クヴァグ:「最高評議会は感染を抑えるためなら一切手段を選ばん!」
「…将軍、抗ウイルス剤の完成には早くても 2、3週間はかかる。テストが、必要だ。」
「その頃には数百万が感染してる。最高評議会は待ってはくれん!」
アンターク:「部隊がこのコロニーに着くのは。」
「5日後だ。」
フロックス:「5日で完成させることはできん!」
アンターク:「優生クリンゴンができたと言えば、助かるかもしれん。」
クヴァグ:「実験は失敗しただろ!」
「いや、一時的には成功している。もし第3段階に進む前の優生人類の DNA を安定させることができれば、優生クリンゴンは生き残れる。安定化に成功したらそれを切り札にし、治療薬を作る時間をくれるよう評議会に言うのだ。」
フロックス:「この私に優生クリンゴンを創る、手助けをしろと。」
クヴァグ:「この惑星の命が懸かってる。」
「…協力はできん。」
銃を取り出すクヴァグ。
フロックス:「殺されても、構わん。手は貸さん。」
クヴァグ:「連れて行け。」
連行されるフロックス。

コロンビアの整備作業は終わっている。
ヘルナンデス:「ドック主任を。…こちらヘルナンデス船長。発進許可を御願いします。」
ドック主任:『発進を許可します。快適な航海を。』
「ありがとう。…ブリッジから機関室、準備はいい? ミスター・タッカー。」

機関室のタッカー。「あと数秒で。…多分ね。少尉。」
リヴァーズ:「ダイリチウム・マトリックス安定。ドライバーコイルは、ワープ速度に合わせました。」
「よくやった。機関室からブリッジ。いつでも発進できます。」

ヘルナンデス:「いよいよ発進よ。大尉※48、ドックを出るまで船尾スラスター 1 ポイント 5。その後は、ワープ航行に。」
ブリッジ後方の装置に明かりが灯る※49
ドックを出るコロンビア。ワープに入った。

MACO に連れられ、拘束室に入れられる優生クリンゴン人。隣の独房で、ベッドに横になっていたリードは起き上がった。
咳をするクリンゴン。
リード:「なぜここへ?」
クリンゴン人:「船長命令でスパイにでも来たか。」
「いや、そうじゃない。」
「ではなぜだ。」
「ま、いろいろあってな。」
「話してみろ。」
「…船長に嘘を。」
「お前は運がいい。クリンゴンが上官に背けば、すぐに処刑される!」 クリンゴン人は咳を続ける。
「…なぜお前たちはエンタープライズに来たんだ? …こんなこと言っても信じられんだろうが、俺たちの目的は同じだ。」
「何か言ってみろ。」
「治療法。」
リードを見る優生クリンゴン。
リード:「お前も仲間も、無駄死にする理由はない。」
船が揺れた。

ブリッジに戻るアーチャーに、メイウェザーが報告する。「混合チャンバーで機能不全です。…プラズマ圧上昇。」
トゥポル:「反物質レギュレーターが閉まりません。」
アーチャー:「クリンゴンの仕業か?」
「不明です。」
メイウェザー:「これ以上上がると危険です。」
アーチャー:「インパルスへ落とせば。」
トゥポル:「リアクターに亀裂が。…速度を増せば、プラズマ圧は減少します。」
「ワープ最大。…機関室へ。手を尽くせ。」 アーチャーはトゥポルと共にターボリフトに入った。

拘束室。
アーチャーは優生クリンゴンに話しかける。「この船に何をした。どうすれば直せる! …リアクターに亀裂が入れば我々は全滅だ!」
クリンゴン人:「俺は帝国の兵士だ。死ぬことなど怖くない。」
リード:「船長! 私に手伝わせてください! …お願いです!」
出ていくアーチャー。
リード:「私なら直せる!」※50 ベッドに座った。

機関室に来ているトゥポル。
ケルビーはコンソール画面の乱れに気づいた。「副長、見ました?」
トゥポル:「わかるように言って下さい。」
「モニターが。」
時々画面が切り替わる。クリンゴンのものだ。
トゥポル:「トゥポルから船長。」
アーチャー:『どうした。』
「ワープマトリックスが、損傷しています。クリンゴンの仕業です。」

廊下でコミュニケーターを使っているアーチャー。「直せるか。」
トゥポル:『わかりません。司令プロトコルが、汚染されています。』
アーチャーはターボリフトに入る。「何とかしろ。」

乱れ続けるモニター。

メイウェザーの通信。『ブリッジから船長、プラズマ圧上昇。』
アーチャー:「ワープ、5 ポイント 2。」

メイウェザー:「その速度では維持できません。」
アーチャー:『選択の余地はない。命令に従え。』
サトウを見たメイウェザー。「わかりました。」 操作し、レバーを上げた。
揺れ出す船体。
速度を上げるエンタープライズ。ワープナセルが強く光る。

アーチャーは、揺れるターボリフトの中にいる。※51


※47: N'Vak Colony

※48: コロンビアのパイロットは、実際には少尉の階級章をつけています

※49: この装置や操舵席隣のコンソールは、ENT第73話 "E2" 「エンタープライズ2」の未来のエンタープライズと同じものです。また船長席もエンタープライズ (ENT "Borderland") と同様のものになり、前回 (ENT "Home") とは変わっています

※50: ここは会話スイッチを切られているため原語では聞こえにくい声になっていますが、吹き替えではスイッチを切る前と変わらないかも?

※51: その他の声優は大久保利洋

・To Be Continued...
・感想など
スタートレック最大の謎とも呼べる、TOS→TMP 間のクリンゴンの額問題。製作的な理由は当然 TOS の段階では予算がなかったからですが、ファンの間では昔から議論が続いていました。そこにあえて公式な立場から描こうとしたのが本作から続くストーリーです。以前の優生人類三部作とつなげるとは、なかなかどうして上手いアイデアだと思います。つまりコールやコロスには、カーンと同じ遺伝子が入っていた…ってことになりますね。この問題をネタ的に扱ったのが DS9 "Trials and Tribble-ations" 「伝説の時空へ」ですが、奇しくもその際のオブライエンとベシアの推測は二人とも正しかったわけですね (それぞれ「遺伝子工学」「ウイルスの突然変異」)。
とはいえ内容はそれだけに留まらず、タッカーが乗ったコロンビアの発進やリードが関わる謎の人物と、クリンゴン関連を含めて至ってシリアスで几帳面な造りになっています。アーチャーにとっては元々の部下の 6人中、半分が実質的にいないことになりますねえ。たまにある詰め込みで乗り切ったというタイプのエピソードではありますが、まずは合格点でしょうか。


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