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エンタープライズ エピソードガイド
第6話「植民星テラ・ノヴァの謎」
Terra Nova

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・イントロダクション
※1コンピューターに映し出された惑星。
メイウェザー:「これが一番最初の映像。」
サトウ:「ちょっと見ただけなら、まるで地球ね。」
人々の写真に切り替わる。
メイウェザー:「初めてできたタウンホールだ。」
サトウ:「これが、ミッチェル大佐※2?」
「いや。こっちだと思うな。」
ブリッジに入るアーチャー。「もうすぐかな?」
メイウェザー:「3時間と 17分です、船長。」
サトウ:「トラヴィスがデータベースを見てるんです。」
「膨大なデータがありますよ? クルー名簿に、測量写真に…週間状況報告。あそこで何が起こったのか、手がかりがないかと思って。」
アーチャー:「謎だからな?」
「子供の頃から、テラ・ノヴァ※3に興味があったんです。失われた植民星ってだけでブーム世代はそそられる。開拓精神に通じるものがありますから。」
サトウ:「船長。まだ人がいると思いますか?」
アーチャー:「すぐわかるさ。3時間17分経ったらな?」


※1: このエピソードは、TNG ラフォージ役レヴァー・バートンの監督作品です。ENT 初の俳優演出となり、バートンとしては VOY第169話 "Homestead" 「帰り行く処」以来となります

※2: Captain Mitchell
船長だったと思われます

※3: Terra Nova
原題

・本編
食事中のトゥポル。「『テラ・ノヴァ』?」
アーチャー:「君が知らないとはなあ。」
「人類の宇宙探査史の初期には、あまり詳しくありません。」
タッカー:「そうか? 地球じゃヴァルカンの探検記を、学校で教わるのになあ。」
「例えば?」
アーチャーを見るタッカー。「……歴史は得意じゃなかったんだ。」
アーチャー:「『偉大なる実験』と呼ばれてた。ディープスペースへ入植できるか。月にはニューベルリン※4があったし、火星にはユートピア・プラニシア※5、小惑星にも入植していた。でも全部太陽系内だ。20光年以内に地球に似た星を見つけたが、あれは辛かった。」
「行くのに 9年でしたっけ?」
「行きに 9年、戻りに 9年。遠かった。」
「俺の爺さん、テラ・ノヴァからの初映像を覚えてましたよ?」
笑うアーチャー。
トゥポル:「その後植民星は?」
アーチャー:「…誰もが、その答えを知りたがってる。ずーっとね。テラ・ノヴァとは、70年以上も音信不通だ。入植地の建設後、地球との関係が悪化してねえ。」
タッカー:「宇宙局※6が成功に気をよくして、もう一隻船を送ることにしたのが原因だ。」
「入植者は反対した。自分たちの家に、200人の他人を受け入れるのは御免だってね。論争は続いたよ。ほかに居住可能な星はなかったからな? だが彼らは譲らなかった。何度か、感情的なメッセージがやりとりされた後、ぱったりと…音信が途絶えた。」
トゥポル:「船を送り、原因を突き止めなかったんですか?」
アーチャー:「行って帰って 18年だ、あまりに…遠すぎた。」
「ヴァルカン船なら遥かに速く行けたはずです。依頼すればよかった。」
タッカー:「ヴァルカンに何か頼むと、後で大抵高いものにつくんだよ。」
「…人間のことはよくわかりませんが、順応力が高いことは確かです。まだ生存者がいるかもしれません。」

エンタープライズはワープを終えた。
メイウェザー:「距離、20万キロです。」
アーチャー:「見てみよう。」
スクリーンに映し出された惑星。
メイウェザー:「これで父との約束が果たせた。」
アーチャー:「入植地上空の軌道へ。」
準備するサトウ。
アーチャー:「テラ・ノヴァ・コロニー。宇宙船エンタープライズ※7船長、ジョナサン・アーチャーだ。地球から来た。応答してくれ。」
サトウ:「…応答ありません。」
「生体反応は。」
トゥポル:「…なし。ただコロニーは無傷のようです。…地表に低レベルの放射能を感知しています。」
「原因は?」
「わかりません。」
「確認しよう。」
地表が映る。
アーチャー:「拡大。」 人の影は全くない。
タッカー:「ゴーストタウンだな。」
「幽霊がヒントをくれるといいがな? 放射能は、どの程度だ。」
トゥポル:「800ミリラド以下です。数時間なら被爆しても問題ないでしょう。」
「うん…トリップ、後を頼む。トラヴィス。」

着陸するシャトル。空には複数の衛星が見える。
コロニーをスキャンしながら歩く一行。草が舞う。

車輪のついた道具や、「WELCOME」と書かれたマットが転がっている。
メイウェザー:「居住ユニットだ。」
トゥポル:「攻撃された様子なし。錆ですね。」
アーチャー:「何があったにしろ、地球に知らせようとしたはずだ。」
メイウェザー:「通信タワーの見取り図を持ってきましたけど。」
「よし。データバッファを見てきてくれ。最後の交信記録にアクセスできるかもしれない。」
「了解。」
「手がかりがないか、探してくれ。」 向かうリード。
トゥポル:「アイソトープの減衰率から、70年前の放射能は致死レベルだったようです。」
「だが遺体が見あたらない。」
「この星を脱出したのかもしれません。」
「それは…無理だろうな。」 近くの建物を指すアーチャー。「船の隔壁だ。解体して使えるよう設計されてて、それでコロニーを築いた。片道切符だ。」 船の一部だったことを示す文字が刻まれている。

独りで歩くリード。スキャナーに反応がある。「誰だ。」
人影が見えた。
コミュニケーターを使うリード。「ヒューマノイドがいます。森へ逃げました。」

応答するアーチャー。「すぐ行く。」

人物の後を追うリード。
男は軽やかに森を駆け抜けていく。

見失ってしまうリード。近くにある、洞窟の入り口を調べる。
物音がした。
リード:「ん?」
アーチャーたちだ。
リード:「この中です。」
アーチャー:「外見は?」
「身長は 2メートルほどで、二足歩行。鱗みたいなものが。」
調査するトゥポル。「網の目のように洞窟があり、数百メートルに及んでいます。」
アーチャー:「アーチャーよりメイウェザー。」
メイウェザー:『はい、船長。』
「シャトルへ戻って、フラッシュライトを取ってきてくれ。急いでな。」
『了解。』

洞窟へ入り、ライトを使うアーチャーたち。フェイズ銃を手にしている。
リード:「私が先に行きます。」
這いつくばり、穴を抜けていく。
何かが動く音がした。
ライトを向けると、甲羅をもった動物が穴の中へ消えていった。
アーチャー:「…先頼む。」

外で見張るメイウェザーとトゥポル。

中では人が生活している場所を見つけた。料理らしきものや、ナイフもある。
リードがライトを向けると、洞窟の壁に潜んだ者がいた。「船長。」 何人もいる。
アーチャー:「私はアーチャーだ。人を捜しに来た。力になってくれると助かる。傷つけるつもりはない。」 ナイフを置く。「彼らに何があったか知りたいだけなんだ。」
突然現れた銃を持った男を、フェイズ銃で撃つリード。
上から見ていた人々は消えていた。
別の者が現れ、その旧式の銃で撃ってきた。
逃げるアーチャー。「どっちだ!」 反撃する。

呼びかけるトゥポル。「トゥポルよりアーチャー船長。」

逃げ続けるアーチャーたち。
トゥポル:『船長。』
アーチャー:「攻撃されてる。…逃げる道を間違えた。…そっちから誘導してくれると助かる。」

スキャナーを使うトゥポル。「お待ちを。3メートルほど進むと、トンネルが二手に分かれているはずです。左へ。」

応答するアーチャー。「分かれてないぞ。」

トゥポルは言う。「訂正、10メートルです。」

中では銃の音が響く。
アーチャーが先に出て行く。
リードは足を撃たれてしまった。「大丈夫です。」
先に出るアーチャー。
だがリードは銃を蹴り飛ばされた。
リードの声が響く。
戻るアーチャー。ライトだけが転がっている。
アーチャー:「マルコム!」 更に戻ろうとするが、また銃で撃たれる。

洞窟の入り口から、男が出てきた。メイウェザーにつかみかかる。
男を麻痺させたトゥポルは、スキャナーで身体を調べる。
銃声が聞こえてきた。アーチャーが出てくる。
メイウェザー:「マルコムは!」
アーチャー:「走れ!」

シャトルポッドに駆け込む。
アーチャー:「離陸だ!」
メイウェザー:「あの異星人が、入植者を殺したんでしょうか。」
トゥポル:「異星人ではない。人間です。」


※4: New Berlin
映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」でも言及

※5: ユートピア平原 Utopia Planitia
ユートピア・プラニシア艦隊造船所 (Utopia Planitia Fleet Yards) は恐らくまだできていないでしょうね

※6: Space Agency

※7: 吹き替えでは「エンタープライズ

廊下を歩くメイウェザー。「変ですよ、人間なら何で撃ってくるんです。」
アーチャーはターボリフトに入る。「アーチャーよりブリッジ。何かわかったか。」
タッカー:『洞窟の様子はかなりわかりました。これまで 52名の生体反応を確認。人間です。』 ブリッジにいる。
「今はそれよりリード大尉のことだ。すぐ救出しなきゃならない。居場所は。」

報告するタッカー。「はい、地表から…90メートルほど、潜った場所です。」
サトウ:「呼びかけに応答ありませんが、生きています。」

命じるアーチャー。「うん…司令室※8にドクター・フロックスをよこしてくれ。」
タッカー:『了解。』
「彼らが入植者の子孫だとすると…ほかの人間を見たことはない。きっと、我々が異様に見えたんだろう。」

洞窟の構造図が表示されている。
タッカー:「トンネルの全長は 12.6キロ。井戸も、いくつか掘ってあるみたいです。地盤はあまり、堅固じゃない。崩れた通路もいくつか見られます。」
トゥポル:「放射能で、地下へ追いやられたんでしょう。」
アーチャー:「放射能の原因はわかったか。」
タッカー:「まだです。」
サトウ:「何を食べてるんでしょう。」
フロックス:「地下の動植物で十分ですよ。根菜、カビ類、昆虫。」
アーチャー:「ああ、何か動物を…食用にしているようだ。マルコムは?」
タッカー:「ここです、見張りが 2人。」 図を示す。
メイウェザー:「転送で連れ出せば。」
「深すぎる。」
トゥポル:「このトンネルは、一部崩れていて使われてません。…ここまで行ってフェイズ銃で瓦礫を排除すれば、リード大尉※9の位置まで 20メートル以下です。」
サトウ:「見張りはどうします? 恐らく武器を持ってるわ?」
タッカー:「こっちにはスタン爆弾※10がある。」
アーチャー:「これ以上怪我人を出したくない! 人間だとわかった以上…何とか、コミュニケーションを取るんだ。」
メイウェザー:「でも話に応じるとは…」
「人間とファースト・コンタクトできないなら! …私は船長失格だ。…マルコムは撃たれた。ドクター、一緒に出発ベイへ来てくれ。」
フロックス:「すぐに。」
トゥポル:「船長。」
アーチャー:「君は放射能汚染の原因を突き止めろ。少尉とホシは、彼らのデータバッファを調べろ。地球に連絡しようとしたのかどうか知りたい。」

地表を歩くフロックス。「我々に気づいていますかねえ。」
アーチャー:「屋根にシャトルポッドが着陸すれば、気づくだろう。」 止まるように指示する。「武器は持ってない!」 両手を挙げるアーチャー。「話をしたいんだ。」
フロックスも真似する。
アーチャー:「怪我した部下が心配だ。彼に会いたい!」
銃を持った住人が現れた。フロックスがもっていたケースを取り上げる。

洞窟を進む。
リードが横たわっている。「…ほっとしました。」
アーチャー:「足はどうだ。」
「…多少出血しましたが、大したことはありません。」
フロックス:「医療ケースを返して下さい。」
住人のジェイミン※11がやってきた。「人間か。」 近くに女性のナデット※12がいる。
アーチャー:「そうだ。」
「それは。」
フロックス:「…わたくしはフロックス。デノビラ人※13で、船のドクターです。」
「地球から進んだ。空の船で。」
アーチャー:「エンタープライズだ。」
「なぜだ。俺たちをさばきに?」
「いいや? コロニーに何があったか調べに来た。助けに来たんだ。」
住人※14:「ノヴァ人※15は人間の『助け』はいらない!」
ジェイミン:「俺たちをディガー※16みたいに狩るか。上側へ戻れ、でないとお前の道をふさぐ!」
アーチャー:「君たちを傷つけるつもりはない。」
「それを連れて出て行け!」
「わかった。だが彼は怪我をしていて、このままでは歩けない。ドクターの治療に、それがいる。」
指示するジェイミン。医療ケースが返される。
治療を始めるフロックス。
アーチャー:「なぜ我々が敵だと思うんだ?」
ジェイミン:「ノヴァ人を痛めた。」
「なぜそう思う。」
「俺たちをさばいた。家族たちを。昔の家族だ。」
「どういうことだ。」
ナデットが口を開いた。「毒の雨だよ。私がディガーほどの背の時、今でも覚えてる。みんなが上側に住んでいた時人間が毒を落とした。川が焼けて、大人はさばかれ、ここしか来る所が…」 咳き込む。
アーチャー:「それで…『下側』へ。……そうか、少しわかってきたぞ。毒の雨だが、あなたが言っているのは、放射能だ。原因はわからないが人間が降らせたんじゃない。」
フロックス:「歩けます。何とかね。ですが、医療室で弾を摘出しないと。」
「とても受け入れがたいことなんだとは思う。だが、君たちは人間の子孫なんだ。先祖が 70年以上前に、この星へ入植した。私と同じ地球から来たんだ。何があったかわからない。だが、多分…協力すれば突き止められる。」
ノヴァ人:「ただの泥話だ。」
「それがもし嘘って意味なら、本当だと証明するチャンスをくれ。私の…『空の船』に、ここで何があったか突き止める道具がある。」
ジェイミン:「だめだ。」
スキャンするフロックス。「失礼、あなたの…お母さん。病気です。これも船長の言った道具の一つで、体の中のことが何でもわかるんです。お母さんは病気です。『肺ガン』と言います。でも、簡単に治ります。」
トゥポル:「ドクターなら治せる。だが、船に来てもらわなきゃならない。」
ノヴァ人:「泥話だ。上側に連れて行って俺たちをさばく気だ!」
ジェイミン:「それはいつまでかかる?」
フロックス:「まあ、2、3時間で済みます。」
「時間?」
アーチャー:「上側に太陽が昇る前に、戻ってこられる。」
ナデットを見るジェイミン。
アーチャー:「助けたいんだ。」
ジェイミン:「一緒に進む。それは残る。」 リードを示す。
「彼も治療が必要だ。」
フロックス:「大丈夫です、2、3時間なら。」
リード:「私なら平気です。ここにも慣れてきましたから。」
アーチャー:「うん…それなら、君が…先頭を頼む。」
出て行くジェイミン。
リードはアーチャーに向かってうなずいた。


※8: Situation Room
ブリッジ後部の、中央にコンピューターがある部分。「室」と言っても壁で仕切られているわけではありません。初言及

※9: なぜか「大」と誤訳

※10: stun grenade

※11: Jamin
(エリック・アヴァリ Erick Avari TNG第107話 "Unification, Part I" 「潜入! ロミュラン帝国(前編)」のバイジック (B'Ijik)、DS9第61話 "Destiny" 「三匹の毒蛇」のヴェデク・ヤルカ (Vedek Yarka) 役) 一部クレジットでは Jaymin との表記も。名前は一度だけ後に言及されますが、訳出されていないようです。声:福田信昭

※12: Nadet
(メアリー・カーヴァー Mary Carver) 声:磯辺万沙子、TNG ルーサ、コンピューターなど

※13: Denobulan
初言及

※14: 名前は Athan (Brian Jacobs) ですが、言及されていません。声:中村俊洋

※15: Novans

※16: Digger

シャトルポッドに乗ったアーチャーたち。
前方に船が見える。
ナデットに話すアーチャー。「エンタープライズ※7だ。入植者たちが乗ってきた船と似ている。コネストーガ※17って船だ。…あなたは船で生まれたのかな? それとも御両親が入植した直後かな?」
ナデット:「私の親はノヴァ人、上側から来たんだ。」

医療室にナデットの声が響く。「やめろー! 出してー!」
ジェイミン:「それを開けろ!」
フロックス:「あと数秒です。」
「開けろー!」
アーチャー:「大丈夫だ。」
カプセルから出てくるナデット。うろたえる。
フロックス:「怖がらせたならすみませんねえ。」
ジェイミン:「治ったのか。」
「まだです。病気がどの程度広がっているのか調べました。」 状態を表示させるフロックス。「これが、あなた。体の中です。とにかく、これでどんな治療が必要かがわかります。ああ…細胞間腫瘍だ。腫瘍がリンパ組織に広がっている。細胞分解薬の注射が必要ですねえ。」
「注射?」
アーチャー:「薬だ。ドクターがお母さんに薬を打つだけだ。」
フロックス:「調合に 2、3分かかります。」
「写真が何枚かあるんだが、見ませんか。私の部下がデータベースから見つけたんです。」 コンピューターに表示させる。「これを見れば、毒の雨が降る前の上側での暮らしを、思い出せるかもしれない。」
ジェイミン:「泥話だ、道に迷わせようとしてる。元に戻れなくなる。」
「ここへ来た時の様子を見せたいだけだ。」
「こんなものはディガーの糞だ!」
「よーく見てくれ。信じたくないだろうが、君たちも人間なんだよ。」
「…絵を…全部、埋めるんだ。」
表示を消すアーチャー。「ドクター。後で報告を。」 出て行く。

『航星日誌、補足。トゥポルが放射能と関係がありそうな、クレーターの跡を発見した。』
司令室。
アーチャー:「場所はどこだ。」
トゥポル:「コロニーから 500キロ北です。」
タッカー:「深さは。」
「年を経て、部分的に土が堆積していますが、衝突当時は 2千メートルはあったでしょう。」
アーチャー:「彗星なのか?」
「小惑星で、大型です。…地質分析の結果、衝突はおよそ 70年前と思われます。」 クレーターの構造が表示される。
「毒の雨は…?」
「この辺りの地殻は、主にベリジウム※18鉱石です。衝突熱で放射性の雲が発生し、北半球は 1年以上、その雲に覆われたはずです。」
タッカー:「何年もかけて入植して…これが結果か。」

洞窟の中に火が灯されている。
リードはノヴァ人に話しかけた。「旧式の MK-33※19 だろ? 34 かな? ……かっこいい鎧だねえ、自分で作ったのか?」 返事はない。「ダメか…。ここには洗面所なんてあるわけないよな? 顔を洗いたいんだけど。ないか。そうだよな? ああ…。」 痛みに声をあげる。
男は袋を取り出し、中の物を口にし出した。
リードが見る。
ノヴァ人:「腹へこんでるか。」
リード:「さあ、どうかな。何を食べてる。」
もう一つの袋をリードに渡すノヴァ人。「ディガーの肉。」
リード:「ああ、あんまり火が…通ってないな。」
「人間は苔みたいだ。下側では腐ってく。」
口にするリード。「…悪くない。」
ふと、音楽が鳴りだした。
ノヴァ人が骨で作った笛を吹いている。何人もハーモニーを奏でる。
さっきリードに食料を渡した男も、演奏に加わった。

ドアチャイムに応えるアーチャー。「入れ!」
サトウ:「通信記録です。最後に送ろうとした、メッセージのようです。バッファにありました。」 チップをセットする。
共に作戦室に入ったメイウェザー。「ミッチェル大佐です。」
音声※20が再生される。『ローガンのメッセージは脅迫じみていたが、だからといって我々を攻撃する必要はなかったはずだ。大人の半数は死んだ。ドクター・トレイシー※21もだ。残った者も苦しんでいる。幼児だけが無事だ。もし子供達が生き延びたら、ヴァルカンに依頼し、すぐに救助船を送ってくれ。ヴァルカンを丸め込み、攻撃させたことはわかっている。そうまでしてテラ・ノヴァが欲しいのか。手に入れたな。だが今のこの星が魅力的とは思えんがな。』
メイウェザー:「マーク・ローガン※22は、反対派リーダーでした。第2陣の入植に強硬に反対してた。軌道に入る船は全て撃沈するとでも言ったんじゃないでしょうか。」
サトウ:「そしてミッチェル大佐のメッセージは地球へは届かなかった。大気中の破片が多すぎたんです。」
アーチャー:「そしてどういうわけか、幼児だけが生き残り、地下で暮らし始めたのか。」 チップを取る。「最後の記憶は、人間がコロニーを攻撃したと親が非難していたことだ。…人間は敵だという意識が、刻み込まれた。2世代以上に渡ってな。うーん、簡単にはいかないぞ。」
フロックス:『医療室より船長。』
応答するアーチャー。「何だ。」
フロックス:『来ていただけますか?』

廊下を歩き、医療室に来たアーチャー。フロックスが出てくる。
アーチャー:「どうかしたのか。」
フロックス:「ナデットのガンは完治しました。」
「よくやった。」
「ですが、問題が見つかりました。母親も息子も、内分泌系でマイクロ細胞崩壊の兆候を見せています。恐らく地下の水源が汚染され始めたんでしょう。…治療する方法はありません。悪化するばかりです。」
「…地表に連れ出してもだめか?」
「土壌と植物の放射能汚染は後 10年は続きます。」
「…様子は。」
「治療してやっても、相変わらず無愛想です。」
「司令室へ、連れてきてくれ。」

反論するジェイミン。「俺たちはあそこに住む!」
アーチャー:「あの場所は危険なんだ。…昔小惑星が落ちて、毒のある放射性物質が降ったんだ。だが、4、5歳までの子供は、その放射能に新たな免疫ができたようだ。だから生き残ったんだ。」
フロックス:「その免疫のおかげで、3世代に渡って生きてこられたんです。でも今度はその毒が水まで汚し始めた。船長が言ったようにあそこは危険です。」
ナデット:「人間は上側に住んでいた昔の人たちをさばこうとした。今度は私たちか。」
トゥポル:「ドクターはあなたの命を救った。今の発言も善意と取っていいはずですし、ドクターは、人間ではない。私も違います。」
ジェイミン:「大きな岩が空から降った? 泥だ、泥話だ! 下へ戻せ!」
「…写真を調べて、2、300枚の中から、これを見つけました。」 入植者たちの写真。「見覚えはないですか?」
ナデット:「上側だ。毒の雨の前だ。」
「その人たちは?」
「…人間だ。」
「人間たちは、コロニーで…何をしていたんです、ナデット? …じゃあ、ヒントを出しましょうか。」 写真の一部を拡大するアーチャー。「本当にこの中の誰も覚えていないんですか? この写真、一緒にデータがついていたんで、この女性の名前がわかっています。ヴェラ・フラー※23。聞き覚えは?」
ジェイミン:「薬で変になってる。道に迷わせようとしてる。戻ろう。」
「よーく見て。」 アーチャーは更に女性をアップにした。「ヴェラ・フラー。覚えてませんか?」
「泥だ! これは罠だ。」
「ヴェラに娘がいた。バーナデット※24です。地球の年で言えば、今 75歳ぐらいになってる。」
ナデット:「ナデット。バーナデット。…これは私?」 指さす。
ジェイミン:「俺たちを下側から追い出す気だ。日が沈むまでに戻せ。仲間がさばかれるぞ。戻せ!」
アーチャー:「……治療は終わったのか?」
フロックス:「胸部をスキャンして終了です。」
「よーし、済み次第 2人を出発ベイへ。トゥポル、来い。」 2人は作戦室へ向かった。
ナデットの肩に触れるジェイミン。

憤慨するアーチャー。「あの地下に、58人も人間がいて、我々が連れ出さない限り死ぬ! なのに彼らにとっては、俺たちはコロニーを乗っ取ろうとする、悪玉異星人か何かだ!」
トゥポル:「スタン爆弾です。」
「何?」
「タッカー少佐がセンサーの解像度を強化し、トンネルを調査しています。効果的な場所にスタン爆弾を転送し、爆発させ、シャトルポッドで※25彼らを船に収容しましょう。」
「その後は? 鎖につなぐのか?」
「大尉が適当な拘束具を開発するでしょう。」
「この船は奴隷船じゃないんだ。武力で強制移動はさせられない。」
「それ以外に彼らが助かる方法はありません。」
「説得するんだよ、地球に戻るのが最善策だとな? 力で強制すべきじゃない。」
「地球へ戻るのが最善でしょうか。」
「決まってるじゃないか。」
「連れ帰った後はどうするんです? 学校へやり、読み書きを教えるんですか? 人間の服を着せ、食事をさせ、地上の日の光の中で、生活させるんですか?」
「ああ、その通りだ。彼らは人間なんだ。彼らの権利だ。時間はかかっても適応するさ。あのトンネルで死んでいくよりずっとましだろ?」
「3世代に渡ってあのトンネルで暮らしてきたんです。突然慣れない世界に放り込み順応するだろうと期待するのは間違いです。彼らのアイデンティティを破壊し、ノヴァ文化を破壊します。」
通信機に触れるアーチャー。「アーチャーよりタッカー。」
タッカー:『はい。』
「今すぐここへ来い、地図を持ってくるんだ。」

画面で説明するタッカー。「破片の雲はここまで達してます。赤道の北、10度辺りですね。」
アーチャー:「南半球は?」
トゥポル:「小惑星の影響はありません。」
フロックス:『アーチャー船長?』
アーチャー:「何だ、ドクター。」
『2人はポッド1 で待機しています。地表まで同行されますか?』
「すぐそっちへ行く。南半球の大陸にも、あの地下トンネルと似たような地形があるはずだ。洞窟でも、ほら穴でも、探せ。私のパッド※26に記録しろ。あの動物がいればもっといい。何だっけ? ディガーだ!」

発進するシャトルポッド。
アーチャー:「君たちの星には、南に 3つの大きな島がある。大陸と言うんだがね? 君たちがいる辺りの上側と、気候がほとんど同じだ。下側も、似てるかどうかはわからないが、今、私の部下が調べてる。大切なのはだ。そこでは、毒の雨が降らない。安全なんです。子供も元気になる。それに、上側に住むこともできますよ? もし、気が向けばね。」
ジェイミン:「トンネルが汚れているなら…なぜそんなに欲しがるんだ。」
メイウェザー:「欲しくないよ! あんたたちが心配で助けたいんだ。ああ…。」
アーチャー:「うーん、ヴェラ・フラーと娘さんの写真は、本当に泥でしたか? …だますためにわざわざ作ったと思うんですか? …あなたは人間だ。私もです。人間は助け合う。」
ジェイミン:「下側に戻ったらすぐに…お前の人間を帰してやる。もし、黙って帰るならな。」
メイウェザー:「着陸地点、ロックしました。」
アーチャー:「だがせめて、この話を仲間に伝えてくれませんか?」
何も言わないジェイミン。

ポッドは地表に着陸した。
出ようとするアーチャー。だが、すぐに揺れ出す。
メイウェザー:「スラスター、ダウンしました。」
アーチャー:「もう一度起動しろ!」
シャトルの周りの地面が崩れていく。穴に飲み込まれた。
メイウェザー:「ポッド1 よりエンタープライズ! 緊急事態だ!」
大きく揺れる。


※17: Conestoga
前に映った隔壁には、"S.S. CONESTOGA" と書かれています

※18: beresium

※19: MK-33, MK-34

※20: 声:仲野裕

※21: Dr. Tracey

※22: Mark Logan
ファーストネームは訳出されていません

※23: Vera Fuller

※24: Bernadette

※25: 原語では「両方のシャトルポッドで」と言っています。このことからエンタープライズには 2隻のポッドしかないことがわかります

※26: PADD
セリフでもはっきりとパッドだということが初めて判明

尋ねるトゥポル。「負傷者は。」

揺れは止まった。
アーチャー:「ああ…みんな無事だ。だが出られるかなあ。こっちの位置がわかれば…」
また起こった揺れ。
トゥポル:『船長?』
アーチャー:「…一応止まったようだ。…どのくらい落ちた。」

報告するタッカー。「8メートルほどです。使ってないトンネルが崩れたようです。」

落ち着かないジェイミン。「…開けろ! …開けろ。」
アーチャー:「待て。トリップ、左舷のハッチを開けると外はどうなってる。」
「開けろー!」
タッカー:『そこの地盤は安定してます。大丈夫でしょう。』
アーチャー:「…ポッドを地上に引き上げる方法を考えといてくれ。」
『了解。』
ハッチを力ずくで開けるアーチャー。
辺りは洞窟だ。咳き込む。
ジェイミン:「ここは下り通路だ。人間に会うには崩れたとこを通る。銃を貸せ。」
アーチャー:「これは渡せない。」
「生きた人間に会いたきゃ銃を渡せ。」
フェイズ銃を受け取り、進むジェイミン。ナデットも続く。
アーチャーはメイウェザーに命じた。「ここに残ってろ。通信はつないどけ。」
ライトを投げ渡し、フェイズ銃を構えるメイウェザー。

暗闇を進む。
誰かの叫び声が聞こえる。
アーチャー:「ちょっと待て。…聞こえたか?」
男の声がかすかに聞こえる。「誰か、助けてくれー! 助けてくれー!」
ナデット:「…アッカリーだ!」
向かう 3人。

崖の下に、ノヴァ人※27がいた。「助けてー! 誰かー! 誰かー! 助けて…。」 身体の上に大木がのり、水浸しになっている。
見下ろすジェイミン。「空の船がトンネルを揺らして落ちたんだ。怪我したか!」
アッカリー:「足が折れた…根っこのせいで動けない!」
「…骨を懸けてノヴァ人を助けるか。」
アーチャー:「やってみよう。だが下まで降りられるかなあ。」
「一緒に進む。俺を信じればいい。」
うなずくアーチャー。
2人は狭い足場を歩き始めた。
アーチャーは足を滑らせ、片手でぶら下がってしまう。
手を伸ばすジェイミン。アーチャーを引き上げる。足場に戻ることができた。
アッカリーに近づいていく。
下まで降りることができた。
ジェイミン:「水が上がってる、急げ!」
2人で大木を持ち上げようとするが、全く動かない。
水位が上がってくる。
アーチャー:「フェイズ銃を返してくれ。銃だ!」
ジェイミン:「なぜ? 人間を逃がすためか?」
「彼のためだ!」 アッカリーに水が迫る。「君が信じる番だ!」
ジェイミンはフェイズ銃を返した。
設定を調整し、木に向けて発射するアーチャー。分断されていく。
水はアッカリーの口まで迫っている。
木は二つに分かれた。
アーチャー:「手を貸せ! いくぞ!」
持ち上げる 2人。
アッカリーは抜け出ることができた。木は落とされる。

アッカリーをジェイミンと共に運んできたアーチャー。リードに近づく。
リード:「ああ…船長。」
アーチャー:「大丈夫か。」
「何とかもってますが、そろそろ弾を取りだしてもらえると。」
ナデット:「伝えろ。…みんなにアーチャーが言った南の場所の話をしろ。」
ジェイミン:「…こいつらは帰るんだ。ここは大丈夫だ。」
「大丈夫じゃない! みんな大丈夫じゃない。私たちは腐っていく。」
「こいつらは帰る。」
「…思い出した。ヴェラ・フラーは私の母だ。写真の中の娘は私。人間だった。アーチャーと同じ道を来たんだ。言うことを聞け!」

ワープ航行に戻ったエンタープライズ。
食事中のメイウェザー。「クレイター判事※28は?」
トゥポル:「知らない。」
「20世紀に行方不明になった。アメリア・エアハート※29は。」
「いや。」
「1937年、その後消息不明です。大勢が、何十年と費やして行方を捜しても無駄だった。テラ・ノヴァも、その 2件と同じで謎のままだったのに…解決したんですよ!」
タッカー:「それどころか、1、2年で絶滅するところを、俺たちが…救ったんだ。」
「ずっと何年も、謎を追っかけてたんです。その歴史に関われるとは思わなかったな。」
アーチャー:「うん。なあ、トラヴィス。艦隊への報告書を書いてみないか? 地球じゃ新聞の一面を飾るニュース※30になるぞ。」
タッカー:「『テラ・ノヴァの謎、ついに解ける! トラヴィス・メイウェザー少尉の報告』。」
メイウェザー:「ありがとうございます!」


※27: Akary
(Greville Henwood)

※28: Judge Crater
ジョセフ・フォース・クレイター (Joseph Force Crater)。1930年に行方不明に (参考)

※29: Amelia Earhart
1898年生まれのパイロット。VOY第17話 "The 37's" 「ミッシング1937」に登場

※30: 原語では特に新聞とは言っておらず、"headline news" のみです

・感想
人間…というより地球人が、異星環境で別の進化を遂げていたという TOS に多かったタイプのエピソード。わずか 70年程度で、あそこまで容姿が変質するのかという疑問はさておき、ST らしいストーリー運びですね。あまりにもストレート過ぎて、かなり退屈に感じてしまうのも事実ですが…。


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