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エンタープライズ エピソードガイド
第81話「コールド・ステーション」
Cold Station 12

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・イントロダクション
11年前。
若いエリック・スン。「人間が優生人類に立ち向かったとも、優生人類同士が戦ったとも言われている。優生戦争は、地球を壊滅状態にした。数百万人が死んだ。そして戦後は、優生人類が恐れられた。」
機械が並んだ部屋には、子供がたくさんいた。みな手にパッドを持っている。
スン:「人間はお前たちを恐れるんだ。その優れた知性と、力をな。お前たちに憧れながらも決して同じには、なれないからだ。だから、この安全な星へ連れてきた。父さんと呼んでくれ。とは言っても……私は見守っているだけだ。…お前たちは未来の子供だ。そしていつか、人類の輝かしい未来を実現するんだ。」
子供の一人が手を挙げた。
スン:「マリック※1。」
幼いマリック:「ほかにも仲間はいる?」
「大勢いる。眠って、待っている。いつか目覚めさせ自由にしてやるのが、お前たちの仕事だ。」

モニターに建物の構造図が表示された。
現在のスン。「この中間レベルまで行く。警備員が配置されているのはここと、ここだ。」
マリック:「それよりもここのは。パワーコンジットを攻撃すれば生命維持が止まる。2、3時間待って乗り込めば…」
「駄目だ。」
「でもそれなら面倒がない。」
「人を殺しに行くんじゃない。」
「でもやむをえないときは。」
「人殺しはしないんだ。わかっただろうな。」
うなずくパーシスたち。
スン:「マリック。」
マリック:「はい、わかりました。」
「うん、よし。」 バード・オブ・プレイのブリッジを出ていくスン。
マリックは不満そうだ。


※1: 幼いマリック Young Malik
(Jordan Orr)

・本編
惑星軌道上のエンタープライズ。
『航星日誌、補足。スン博士と優生人類は、クリンゴンのバード・オブ・プレイで逃亡。手がかりはなく、任務開始当初スンが口にしていた場所へ行ってみるしかない。』
山際に立てられた建物へ向かって、降下するシャトルポッド。

ライトを使って中を進む一行。
タッカー:「プロテイン再配列装置※2だ。それに浄水器。」
アーチャー:「小さなコロニーなら、それだけあれば十分だ。」 カードのような物がテーブルに置いてある。「ここは教室も兼ねていたようだ。」
リード:「ハ、スンが教師だなんてねえ。」
ライトが復旧した。
タッカー:「遺伝子をいじくり回された上に、それじゃあなあ。」
リードについていく MACO。
アーチャーはたくさん並んだ容器を見つけた※3。「トリップ。」
ケーブルを見るタッカー。「インターフェイスだ。医療室で使うのと、似てますね。医療機器をもってたのかなあ。」
アーチャー:「どんな医療機器か知りたい。手がかりになる。」
「何とか、調べます。」
空になったベッドを見るリード。その時、洞窟の奥で隠れている人物がいた。
腰からナイフを取り出す。
リード:「ほかの場所を見てきます。」
うなずくアーチャー。
コンピューターに触れるアーチャー。スンが幼い優生人類といる映像が映った。
誕生日パーティらしく、ケーキのロウソクを吹き消す子供。
アーチャー:「驚いたなあ。」

奥へ進むリードたち。隠れていた男がいる。
逃げようとするが、リードの声が響いた。「止まれ!」
明かりのついた場所に走ってくる男。
リード:「船長!」
フェイズ銃を向けるタッカー。
男:「近づくな!」
アーチャー:「撃ちはしない。」 立ちふさがった。
「どいてくれ。」
「話したいだけだ。…マルコム。」
銃を下げるリードや MACO。
アーチャー:「ほらな? 味方だ。」
男:「あんた誰。」
「ジョナサン・アーチャーだ。地球から来た。」
男はナイフで襲いかかってきた。近づくタッカーたち。
アーチャーは男の手を取り、ナイフを落とさせた。顔を殴ると、意識を失った。

バード・オブ・プレイ。
スンの部屋に入るマリック。
パッドを見ているスンは、振り返らずに話す。「…ラーキンのだ。…5歳の時私がやった。いい生徒だった。天文学が好きでね。夜並んで座り星を指してやると…」 笑う。「全部名前を言えた。…お前の兄さんはどこだ。」
マリック:「…何て聞いたのか知らないけど…」
「誰も何も言わない。ラーキンはどうしたんだ。」
「…死んだ。」
首を振るスン。「何があったんだ。」
マリック:「父さんの教えに逆らい、仲間の解放に行かないと言った。」
「ラーキンに何があった。」
「……殺した。…口論に、なって。兄貴が、ナイフを抜いた。俺も抜いて、兄貴が飛びかかり…気がついたらもう兄貴は、血まみれだったんだ! …事故だったんだよ。助けようとしたけど、だけどもう…」
スンはマリックを壁に押しつけた。「お前の兄だったんだ!」
マリック:「…ああ…ごめんよ。…父さん。」 抱きつく。「殺すつもりはなかったんだ、ごめん。」
スンも手を回した。「マリック。…私のせいだ。…ついててやれずに。」
マリック:「違う。」
「一緒にいられなかった。子供のお前たちと。」
「違うんだよ、父さん。」
「シー、シー。すまない。…私が悪かった。…すまない。」
スンには見えないところで、マリックの表情は冷たいものになった。

医療室のフロックス。「脱水症状と軽い栄養失調以外、問題はありませんね。」
アーチャー:「優生人類にしては弱かった。」
「彼は違います。彼は、変異でしょう。優生人類と近い DNA ですが、人間以上の能力はもっていません。」
カーテンを開けるアーチャー。男は目を逸らす。
アーチャー:「あごはどうだ?」
男:「痛いよ。」
「悪かったな? だがあの時は仕方なかった。…私は名乗ったぞ?」
「……名前はウダー※4。でも兄弟は『スマイク※5』って呼ぶ。」
「変わったニックネームだ。」
スマイク:「ディケンズのニコラス・ニクルビー※6からさ。」
「ひ弱な※7彼の友達か。…彼らと違うから、置き去りなのか?」
「足手まといになる。」
「ウダー。」
「スマイクだ。」
「彼らがどこへ行ったのかを、知りたい。」
横を向くスマイク。「僕はしゃべらないよ。」
アーチャー:「彼らを助けたい。」
「人間なんだろ。みんなを殺しに来たくせに。」
「そうじゃない。」
「兄弟を裏切ったりはしない。」
「その兄弟が危険なんだ。クリンゴン船を奪ってる。もしクリンゴンが先に見つけたら…」
「クリンゴンが死ぬだけだ。…みんなを止められはしない。誰にもね。」
通信が入る。『タッカーよりアーチャー船長。』
アーチャー:「何だ、トリップ。」

トライアラス4号星※8にいるタッカー。「なくなってた装置は、保育器のようです。人工子宮ですよ。」

バード・オブ・プレイ。
パーシスとベッドで寝ているマリック。「あんな人じゃないはずだ。」
パーシス:「…父さん?」
「俺たちの安全より人間の命を優先するなんて。」
「あのステーションで昔、父さんは働いてたの。任せなさいよ。」
「当面はな。」
「信用してないの。」
「悪いか。」
「父さんよ?」
「人間だ。」
「ほかの人間とは違うわ?」
「そう信じてたけどな。」
「…父さんにリーダーの座を、奪われたからね?」 マリックの身体の上に座るパーシス。「気に食わない…」
「優生人類は、優生人類のリーダーをもつべきだ。」
「聞いてられない…」
マリックはパーシスの身体を押さえた。
パーシス:「離してよ!」
マリック:「そんなに怒るなよ。…言ってみただけだろ。」
「それが気に入らない。」
「もう言わない。」 ため息をつくパーシスの腕に、手を這わせるマリック。「ここにいてくれ。」
パーシスはマリックとキスを始めた。

司令室で星図を見るアーチャー。「コールド・ステーション12 へ、向かってるんだろ。」
タッカー:「スンが働いてた?」
トゥポル:「艦隊とデノビュラが運営する、医療機関です。危険な病原菌が多数、研究目的で保存されています。」
アーチャー:「狙いは優生戦争の落とし子の受精卵だろう。」
タッカー:「でも、それは以前に盗んだんじゃ。」
「19個な。…まだ 1,800 以上保管されてる。」
「…だから人工子宮を。」
トゥポル:「…戦後なぜ受精卵を廃棄しなかったのです。」
アーチャー:「当時、議論が紛糾した。…地球政府は処置を決められず、とりあえず低温保存にしたんだ。フォレスト提督から指示が出た。スンを阻止するためなら、手段は問わないそうだ。…全速で向かうぞ。」
タッカー:「お任せを。」

ワープ航行中の異星人船。
操縦しているデノビュラ人の女性※9のもとに、乱れたスンの通信が届く。『貨物船、コルセア※10だ。急患が出ている。危険な状況だ。』
デノビュラ人:「こちらデノビュラ医療シャトル、バーザイ※11です。状況を教えてください。」
スン:『リアクター漏れだ、クルーが 10人デルタ放射※12にさらされた。』
「座標を確認、6分で向かいます。」

ワープを止めるバーザイ。その背後にバード・オブ・プレイが現れた。
トラクタービームでバーザイを捕捉する。
驚くデノビュラ人。

スン:「バーザイ号、降伏し乗船に備えるんだ。」


※2: 前話 "Borderland" 「ボーダーランド」では「タンパク質再配列機」と訳していました

※3: 部屋の奥に、赤く光る 2本の管を備えた装置が置いてあります。よく使い回されるプロップで、映画 ST2 "The Wrath of Khan" 「カーンの逆襲」(レギュラ1 研究所)、TNG第13話 "Datalore" 「アンドロイドの裏切り」(ヌニアン・スンの研究所) などで登場。脚注※21 も参照

※4: Udar

※5: Smike
(カジ・エリック・エリクセン Kaj-Erik Eriksen)

※6: ニコラス・ニックルビー Nicholas Nickleby
1838〜39年、チャールズ・ディケンズ作。原語では「ディケンズの」の部分はありません

※7: 原語では handicapped

※8: Trialas IV
星系名は前話 "Borderland" で言及されていましたが、何号星かは公式サイトより

※9: 女性パイロット Female Pilot
(Amy Wieczorek) 声:森夏姫

※10: Corsair

※11: Barzai

※12: delta radiation
TOS第16話 "The Menagerie" 「タロス星の幻怪人」など

エンタープライズ。
医療室に入るアーチャー。「様子は?」
フロックス:「ええもう、退院できますよ?」
「そうか。…C-12 の職員リストを、確認した。ドクター・ジェレミー・ルーカス※13がいる。…首席医療部長だ。」
「…勤務地が変わると聞いていましたが、どこかは言ってなかった。」
「知らせておくよ。」
「感謝します。…船長! 私も、C-12 にいたことがある。…警備の状況や、テクノロジーにも通じています。上陸班に加えてください。」
「承認しよう。」
「どうも。」
スマイクに話すアーチャー。「もうバイオ・ベッドから解放されるらしいぞ?」
スマイク:「そう聞いてる。」
「病人食も飽きただろう、私の食事室へ来ないか?」
「断ってもいいの。」
「いいや。…一時間後に。」

小惑星帯にある、一つの大きな小惑星へ向かうバーザイ。
倒れているデノビュラ人。
パーシス:「コールド・ステーション12、医療シャトル・バーザイ。機密コードを送ります。」
スンのほか、優生人類が乗り込んでいる。
管制官:『現在、警戒レベルを上げている。インパルス 4分の1 に減速し、コードを送れ。』
「送信中。」
『…コード承認、そのまま接近せよ。』

小惑星のハッチが開き、収容されるバーザイ。

宇宙艦隊士官※14が、歩いてきたパーシスを止めた。「なぜデノビュラのシャトルに乗ってる。」
パーシス:「いいでしょ。」
「デノビュラ人じゃない。」
士官のあごを殴り上げるパーシス。身体を一回転させて倒れた。
パーシスは別の保安部員を蹴り、起き上がってきた艦隊士官のフェイズ銃を落とさせた。
腕を折る。もう一人の首を素早く絞めながら、壁に叩きつけた。
士官を地面に押さえつけるパーシス。「その通りよ。」 殴った。
マリックたちと共にやってきたスンはドアを開けた。コンピューターを操作すると、「プロトコル 047 始動」と表示される。
パーシス:「マスクが足りないわ。」
笑い、取り上げるスン。「マスクはいらない。」 ボタンを押し、表示は「始動中」に変わった。

白衣を着た副部長※15が、部屋に入った。「ドクター・ルーカス※16。」
顕微鏡を覗き込んでいるドクター。「ああ。ウイルス細胞崩壊の観察中は声を掛けるなと言ったろう。」 微笑むルーカス。
副部長:「警備プロトコルが、作動しました。」
「保安部に知らせたか。」
「それが、通信不能なんです。」
通信機に触れるルーカス。「通信システムがオフラインだ。」
副部長:「ドクター。」 音が聞こえてきた。
ルーカス:「ん?」
天井の通風口から、白い気体が出ている。
ルーカス:「何なんだ?」 布を口に当てる。
咳き込む部屋の医者たち。ルーカスは座り込みながらも、テーブルのボタンに触れた。
コンピューターに「コード・ブラック/保安警報」と表示される。
全員意識を失った。

船長用食堂のアーチャー。
スマイクはナイフとフォークを手に取る。
アーチャー:「ずっと独りで暮らしていたらしいな?」
口に食べ物を入れたまま話すスマイク。「一年前キャンプを出た。」
アーチャー:「たくましいなあ、独りで生き延びたとは。」
「大したことじゃ。」
「住みやすい星じゃなかった。…地球に戻ったら、学校に行ってみちゃどうだ?」
「学校?」
「勉強が遅れてる。」
「どうせ刑務所に行くんだろ。」
「…なぜそう思うんだ。」
「…優生人類だ。」
「どう聞いてるのか知らないが、罰されはしない。」
「父さんはそう言ってた。」
「スンは親じゃない。」
「…どういうこと。」
パッドを持ってくるアーチャー。「君の本当の父親は、ミクロス・カーロヴァッシ※17。彼は、地球物理学者だ。」 黒板の前に立っている男性の写真を見せる。
スマイク:「…どうして知ってるの。」
「スンのコンピューターからの情報だ。」 パッドを操作するアーチャー。「母親の名はイリーナ※18。…十種競技の選手で、オリンピックの銀メダリストだ。」 女性の写真。「両親の経歴データがたくさんある。…見ていいぞ?」
スマイクはパッドを手にした。

食堂。
アーチャーが入ると、フロックスがたくさんの料理を前にして座っていた。
注文するアーチャー。「コーヒー。」
フロックス:「睡眠サイクルが変わるので。」
「いつ冬眠に入る。」
「…まだ、2、3週間は。それまでに体重を 10%は増やさないと。ただ、食欲が湧かない。」
「ドクター・ルーカスか。」
「ええ、旧友ですから。」
「最高速度で向かってる。」
「スマイクは、地球の歴史を貪欲に学んでますよ? 優生戦争の本を読んでる。」
「スンは教えてないだろうな?」
笑うフロックス。「私もあの戦争は学びました。人間の本能が知性に、追いつかなかった。その悲劇だ。」
アーチャー:「死者は 3,000万とも、3,500万とも言われている。」
「遺伝子工学が、禁じられたのもうなずけます。」
「…クラーク病※19を知ってるか。」
「人間の、退行性の脳疾患ですよねえ。」
「父は、それで死んだんだ。」
「お気の毒に。」
「私が 12歳の時痛みや幻覚に苦しみ、最期の 2年は私や母の顔もわからないほどだった※20。」
「ああ、遺伝子工学があれば違ってた。」
「…スンにも一理ある。」
「以前彼の研究を検証しましたが、極めて独創的でした。天才的ですよ。…社会的抹殺は、残念です。」
「…法を犯した。だから投獄された。だが、必ず彼を連れ戻す。…デノビュラは随分前に遺伝子工学を完成させてるが、存亡の危機になるようなことはなかった。」
「運が良かったんでしょうね。」
「本能が知性に、追いついていたんだろうな?」
微笑むフロックス。
アーチャー:「料理が冷めるぞ。」 出ていった。

話すルーカス。「コードは知らない。」
そばの部屋にまとめて入れられる、ルーカス以外のドクターや艦隊士官。
スン:「私が医療部長だったときは、保管室に入れた。」
ルーカス:「君の事件の後方針が変わったんだ。受精卵保管室のコードは、艦隊しか知らない。」
マリック:「嘘だ。」
「本当のことだ。」
スン:「君のオフィスのライトは、時々ちらつくか?」
「…2時間おきだ。イライラする。」
「パワーリレーの欠陥だ。何度修理を頼んだことか。10年経っても、まだ直ってないとは。一緒に入れておけ。」
マリック:「父さん。」
「信用する※21。…どうだ。」
優生人類のロケシュ※22。「パスワードのコンビネーションは 2、30万通りにもなるけど、それを今弾き出してるとこ。終わるまで、数分かな。」
スン:「数学は苦手だったのにな。」
「…船が接近してくる。」

報告するメイウェザー。「距離は、2,000万キロです。」
アーチャー:「バード・オブ・プレイは。」
トゥポル:「船影なし。小惑星の陰に、潜んでいるのかもしれませんが。」
サトウ:「通信です。」
アーチャー:「…つなげ。」
スクリーンにスンが映った。『船長。久しぶりと言いたいところだがね。』
アーチャー:『結末は一つしかないぞ。』
『君は変数を軽く見過ぎているな。11 ほどある。』 人質にされたルーカスたちが映る。『危害は加えない、すぐこの星系を出ていけばな。』
「君は人殺しではないはずだ。」

スン:「船を反転させるんだ、今すぐ。」

アーチャー:「人質が無事だという証拠が欲しいな。ルーカスと話をさせろ。」

うなずくスン。マリックによって、ルーカスが出される。

スン:『いいぞ。』
ルーカス:『…みんな無事だ、怪我はしてない。』
『今のところはそうだがな。』 銃を持っているスン。『…まだこっちに接近してるぞ。…この距離で人間の頭にクリンゴンの、ディスラプターを使うと一体どうなるかな? やらせるなよ、掃除が大変だ。』
アーチャー:「待て!」

スン:「仕方ないな、死んでもらおう。」

アーチャー:「エンジン停止。」
操作するメイウェザー。

スン:「…さあ引き返せ。」

アーチャー:「反転しろ。」
スン:『…それでいいんだ。』 通信を切った。
船長席に座るアーチャー。


※13: Dr. Jeremy Lucas
ENT第13話 "Dear Doctor" 「遥かなる友へ」など

※14: 保安部員その1 Security Guard #1
(Kevin Foster)

※15: Deputy Director
(Kris Iyer)

※16: ジェレミー・ルーカス Jeremy Lucas
(リチャード・リール Richard Riehle TNG第125話 "The Inner Light" 「超時空惑星カターン」のバターイ (Batai)、VOY第131話 "Fair Haven" 「愛しのフェア・ヘブン」などのホロキャラクター、シーマス (Seamus) 役) ENT "Dear Doctor" ではノンクレジットの方が声だけでルーカスを演じており、吹き替えでは仲野裕さんが担当

※17: Miklos Karlovassi

※18: Irina

※19: Clarke's syndrome ですが、前話 "Borderland" では Clarke's Disease と言っていました

※20: これだとアーチャーが 12歳の時に発症したように取れますが、原語では前のセリフで「12歳の時死んだんだ」と言っています

※21: 脚注※3 の 2本管のプロップが、ここでは青色の光を発する装置として奥に置かれています

※22: Lokesh
(Adam Grimes) 名前は、このエピソードでは言及されていません

コンピューターを操作し続けるロケシュ。「また別の暗号だ、量子レベルみたいだなあ。」
スン:「まだか。」
「思ったより、かなりかかる。」
「…続けろ。」
マリック:「嘘だった。ドクター・ルーカスは嘘をついた。」 パッドを渡す。「アクセス記録がある。」
「…そこから出せ。」

集まる MACO とリード。
アーチャーに話すタッカー。「周波数を、ステーションの密閉フィールドと合わせました。向こうのセンサーには、フィールドエコーにしか見えません。」
フロックスと共に、スマイクも来た。「僕が役に立つかな。」
アーチャー:「だから同行を頼んでる。」
リード:「急がないと、転送可能域を出ます。」 転送台に立っている。
アーチャーも並んだ。「転送だ。」

ルーカスを殴るマリック。優生人類のソールたちに固定させるルーカスの顔は、血まみれだ。
手を振り上げるマリックを止めるスン。「マリック!」
その様子を見ているデノビュラ人ドクターたち。
スン:「こんなことは早く終わらせたいんだ。」
ルーカス:「私もだ。」
「君は先週受精卵保管室に入ったのはわかってるんだよ、ここに記録がある。」
「記録の間違いだ。」
「…頼むから言え。我々が目的を遂げれば、すぐに出てゆく。」
うなるルーカス。
スン:「何?」 耳を近づける。
ルーカス:「クソ食らえだ※23。」
「…科学者に似つかわしくない言葉だな。」
マリック:「父さん。…自分の痛みより他人の痛みが、応える奴もいるよ。」
「…同僚を一人出せ。」
「ここにじゃない。…あそこだ。」 カプセルを指差すマリック。「ここには数千の病原菌がある、これを使おう。」
「駄目だ。」
「長引けば長引くほど、追っ手が来る可能性も高まる! …エンタープライズのように引かなかったら。」
「そんな必要ない。」
「そうでもしなきゃしゃべらない。…一人の人間の命が俺たちより大事か? …父さんの研究より!」
パーシスを見るスン。ルーカスは意識朦朧としている。

隠れていたアーチャーは合図した。フェイズ銃で見張りの優生人類を撃つ。
3発浴びせたところで、やっとで倒れた。
リード:「麻痺にこれだけかかるなら、どうすれば死ぬんだ。」
進む一行。

副部長がカプセルに入れられた。操作するマリック。
閉まっていく入口に手をかける副部長。「よせ、よせ!」 密閉された。
スン:「シンバリン血液熱傷※24を知っているか。血管の内側が、文字通り沸騰するんだ。」
ルーカス:「お前は悪魔の子か※25!」
「母は化学者だった。」
「やめてくれ!」
「私もこんなことはしたくないが、仕方がないんだよドクター。コードは。」
答える気のないルーカス。怯える副部長。
スン:「お前のせいだ、私じゃないぞ。」
マリックはコンピューターに触れる。カプセル内に音が響いてきた。
パーシスは乗り気ではないようだ。
咳き込み始める副部長。手を見つめる。「血…血が!」
目を逸らす医者たち。

フェイズ銃を使うフロックス。コンピューターパネルを焼き切った。
中のボタンに触れると、機械類が現れた。「生命維持は、このリレーを通ってる。」 操作を始めるフロックス。
アーチャー:「コントロールセンターの空気が切れるまでは。」
「30分。影響が出始めるのが、15分ですね。」
アーチャーに言うリード。「ですが相手は、優生人類なんですよ?」
フロックス:「彼らも、酸素は必要です。」

副部長の咳き込む声が続く。スンを見るルーカス。
スン:「体温が急速に上がってる。血圧は危険な状態だ。」
何かに気づいたロケシュは、マリックを呼び寄せた。
スン:「だが、まだ間に合うぞ。コードを言えばすぐに、抗体を注入する。」
首を振るルーカス。
ロケシュ:「レベル4 で、生命維持リレーに変動が出てる。」
マリック:「行け。」
向かうパーシス。
副部長の顔に血管が浮き出始めた。
スン:「…そろそろ、手足が燃えるように熱くなっているはずだ。毛細血管の破裂でな。」
ルーカスの顔を上げるマリック。「見てろ!」
カプセルを叩く副部長。「…お願いだ、助けてくれー!」
見ていられなくなるスン。「ドクター、頼む。同じ科学者として、止めてくれ!」
ルーカス:「できない!」
「彼の命に代えてもか!」
「…命令を受けてる!」
「…今なら救えるんだ!」
副部長は次第に崩れ落ちていく。
スン:「よく放っておけるな!」
ルーカス:「お前こそ!」
ルーカスの首元をつかむスン。「コードを教えるんだ! …コードを!」
ルーカス:「クソ食らえ!」
スンはルーカスを離した。「…抗体を注入するんだ。」
マリック:「父さん。」
「早くしろ!」
「嫌だ。」
マリックを見るロケシュやスン。
スンはマリックをどかせ、自分で操作する。音が響いた。
声も上げなくなり、カプセルの中に倒れ込む副部長。耳や目からも血を流している。
無言の優生人類たち。スンは目を閉じた。
カプセルには血の跡が残っている。

操作を続けるフロックス。「…これでいい。」
スマイクが歩き出した。
アーチャー:「…スマイク?」
スマイク:「フロックスは僕のテストで一つ見逃した。一つ能力があるんだ。聴力が鋭い。…誰か来る。」
MACO が撃たれた。
パーシス:「おあいにく様。」 別の通路におり、MACO に銃を向けている。「もう来てるわ。」
MACO が撃たれた通路にも優生人類が現れた。

通常航行中のエンタープライズ。
サトウ:「信号が上昇し、途絶えました。」
タッカー:「通信が切れるときの症状だ。」
トゥポル:「すると、転送ロックができなくなりますね。」
「捕まったんだな。」
「…それが論理的です。」
「確認しないと。」
「賛成です。」

コントロールセンターのドアが開き、MACO たちが連れてこられる。近づくフロックスをソールが押さえた。
うなずくスン。
フロックスはルーカスに近づく。「ジェレミー。」
ルーカス:「フロックス! …何しに来た。」
「ジッとして。」
フロックスの腕に触れるルーカス。「また会えてよかった。」
スン:「…君を追い払うのに、一生費やすことになるのか。」
アーチャー:「一生刑務所に入っていてもらう。」
最後に連行されるスマイク。
スン:「…ウダー。」
スマイク:「父さん。」
笑い、抱き合うスン。「生きて、生きてた!」
マリックは目を閉じた。
スン:「死んだと聞いてたんだ。病気だったと。」
アーチャー:「それは嘘だ。」
うなずくスマイク。
マリック:「…ラーキンの命令だった。」
スン:「何がだ。」
「追放だよ。」
「なぜ!」
「そいつは弱い!」
スンは優生人類を見る。「みんな賛成したのか。」
視線を合わせない優生人類たち。
アーチャー:「驚くことじゃないだろう。ある集団が他者より優れていると思い始めたら、結果はいつも同じだ。」
スン:「歴史の講義は必要ない。」
「誰か言わないとな。」 警報が鳴る。
ロケシュ:「エンタープライズだ。」
コンピューターに触れ、通信をつなぐスン。「仲間は預かってる。邪魔するなと言ったはずだな。すぐに…」

船長席のトゥポル。

アーチャー:「トゥポル、命令実行だ!」 マリックとソールに倒される。

トゥポル:「交信終了。」 サトウに近づく。「データファイルを。」

スン:「…エンタープライズ。エンタープライズ、応答を。」
ロケシュ:「通信を切った。」
「命令とは。」
アーチャー:「ここの自爆シークエンスを起動させる。」
確認するマリック。
アーチャー:「数秒で木っ端微塵になるぞ。」
スン:「皆殺しにするのか。受精卵を外に出さないために。」
「艦隊の命令だ。私にも迷いはあったが、これを見た後では…」 副部長の遺体を見るアーチャー。「迷いは吹っ切れたよ。」
マリック:「…生きる権利を守ってるだけだ。」
「25名以上殺してか? 君らの権利は、高くつくな。」
「ああもっとな。」

サトウ:「準備 OK。」
タッカー:「トゥポル。」
トゥポル:「…始めて。」
サトウは操作を行う。「…送信中。…自爆まで後 10秒です。」
トゥポルは腕を組んだ。


※23: 原語では何と言っているかほとんど聞き取れず、CC でも表示されません

※24: Symbalene blood burn
TOS第37話 "The Changeling" 「超小型宇宙船ノーマッドの謎」より

※25: 原語では "You son-of-a-bitch."

ノイズが聞こえてきた。
サトウ:「ある種のフィードバックパルスです。」 乱れるモニター画面。「送った信号だわ? 1,000%増幅されています。通信ダウン。」
タッカー:「自爆は失敗だ。別の計画が必要だな。」
トゥポル:「攻撃しましょう。」
「小惑星内部にあるんだぞ。」
「我々で破壊するしか、方法がありません。…光子魚雷装填。…メイウェザー少尉。」
メイウェザー:「コースセット。」
「接近して。」

スンは言った。「どうやら木っ端微塵にはなりそうにない。ガッカリさせたな。」
マリック:「こいつらは、友達らしい。…そうだろ、ドクター。」
ハイポスプレーを持っているフロックス。
マリック:「確かめよう。」 フロックスの身体をつかむ。
ルーカス:「よせ!」
アーチャー:「彼を離せ!」 ソールに遮られ、パーシスに腕を固定された。
スン:「マリック。」
マリックはフロックスを別のカプセルに入れた。「早くコードを言わないと、この男も死ぬんだぞ!」
閉まっていくカプセル。

メイウェザー:「距離 5,000キロです。」
トゥポル:「照準ロック。」
その時、エンタープライズの背後の小惑星に隠れていたバード・オブ・プレイが現れた。攻撃する。
タッカー:「右舷ナセルだ。」
トゥポル:「反撃して!」

バード・オブ・プレイの艦長席に座っている、優生人類のジャイヤ。揺れる。

スンはマリックに近づく。「よせ、よせ!」
マリックはスンを押しのける。倒れるスン。
アーチャーから離れるパーシス。
立ち上がるスン。
操作を続けるマリックに、ルーカスは言った。「待て、待て! 教えるよ、彼を出せ。コードを教える!」
ソールはルーカスを立たせた。スンを見るルーカス。
スン:「コードを入力しろ。」
入力するルーカス。承認コードが表示された。
ロケシュ:「保管室が開いた。やったぞ。」
スン:「…彼を出せ。」
カプセルを開けるマリック。
スンはロケシュを呼ぶ。フロックスとルーカスは見つめ合った。
スン:「一緒に行こう。」
スマイクはアーチャーを見てから言った。「僕は残る。」
スン:「…わかった。」 抱き合う二人。「必ず幸せになれ。」
「父さんも。」
無言のパーシス。

バード・オブ・プレイの攻撃を受けるエンタープライズ。
タッカー:「撃っては離れていってる。」
トゥポル:「ステーションから引き離す気です。」
「あと 2、3発で星屑になるぞ。」
「コースを維持。…研究所にロック。」

保管室内にいるロケシュ。「綺麗だなあ。」
スン:「この部屋へ何度も来た。ただ、眺めるためにな。…お前たちの、カプセルを覚えている。お前はそこ。ソール※26の隣だ。パーシスに、ヤヴァー※27。19個選ぶのが、どんなに大変だったか。」
部屋には無数の球体が、整然と並べられている。
ロケシュ:「…父さん?」
スン:「…二度と来られないと思った。」

バード・オブ・プレイをフェイズ銃で攻撃しながら、さらに光子性魚雷をコールド・ステーション12 に向けて発射するエンタープライズ。
モニターに病原体の図が表示されている。揺れるコントロールセンター。
パーシス:「急がないと。」
マリック:「『テルリアン病※28』か。響きが気に入ったぞ。」 画面が切り替わり、別の病原体になる。
「何してるの?」
「強力な病原菌を探してるんだよ。」
「持っていくつもり?」
「うん、保険があった方がいいだろ? 保存モジュールにいくつか移した、2人連れてってシャトルに積め。」
アーチャーを押すパーシス。「密閉室に入れといて。」
ルーカスやスマイクも入れられる。
だが最後になったアーチャーは、ドアを利用してソールを倒した。近づくマリックに、後ろから飛びかかるスマイク。
アーチャーはソールの銃を奪い、蹴り上げた。マリックに投げられるスマイク。
マリックは密閉室をロックし、アーチャーの銃を落とす。腕をひねられ、苦しむアーチャー。
マリック:「お前を殺す機会を探してたが…」 アーチャーの身体を投げた。「これで完璧な口実ができた。」
揺れは続く。
立ち上がるアーチャー。「協力できて、よかった。」
微笑むマリック。銃を手にしたが、ソールに返した。「持ってろ。」
近づいてくるマリックを蹴り、殴るアーチャー。
マリック:「人間にしちゃやるな。」 アーチャーの腕を取る。「だが勝ち目はないね。」
また殴られるアーチャー。
マリックはアーチャーの身体を簡単に投げ飛ばし、そばの機械にぶつけた。火花が飛ぶ。「できればお前と力比べを続けたいな。…なかなか楽しい。」 コンピューターに触れるマリック。「だがこっちで蹴りをつけよう。俺たちが出てった後 5分で全ての保存フィールドが停止し、全病原体が放出される。…どれで死ぬのか楽しみだよな。」
アーチャー:「なら見物していけよ。」
「…殺すのが惜しいね。…弟には、そんなむごいことはできない。」 マリックは銃を取り出した。「楽に死なせてやるよ。」
スマイクは撃たれた。
出ていくマリックとソール。
アーチャーはスマイクに近づく。「…スマイク。」
すでに意識はなかった。

タッカー:「シャトルが出てくる。」
メイウェザー:「…バード・オブ・プレイが向かってます。」
トゥポル:「シャトルに何名?」
タッカー:「人間は一人だけ。」
「…スンね。…魚雷を発射して。」

バーザイ内のマリック。「魚雷が向かってくる。」
スン:「スラスター最大。」
エンタープライズの光子性魚雷をすんでのところで避けるバーザイ。バード・オブ・プレイのシャトル格納庫に入った。
すぐにワープで去るバード・オブ・プレイ。

密閉室を出たフロックスたち。警報が鳴る。
ルーカス:「フィールド停止まで 4分だ。ここからは止めようがない。」
リード:「どこからなら。」
「メインジャンクションだ。」
アーチャー:「どこにある。」 パッドを受け取り、出ていく。

ドアを開けるアーチャー。通路を見上げた。
遥か上まで、はしごが続いている。下も同じだ。
アーチャーは登り始める。※29


※26: 吹き替えでは前話 "Borderland" で「ソール」と訳していたにも関わらず、「サウル」になっています

※27: Yavar

※28: Telurian plague
TNG第109話 "A Matter of Time" 「26世紀のタイム・トラベラー」で言及。そのほか画面に名前が表示される病原体は、異種多血球血症 (xenopolycythemia、TOS第65話 "For the World Is Hollow and I Have Touched the Sky" 「宇宙に漂う惑星型宇宙船」、当時の吹き替えでは多血球血症)、A型シンソコーカス・ノヴァエ (Synthococcus novae、TOS第75話 "The Way to Eden" 「自由の惑星エデンを求めて」より、当時の吹き替えではシントロコーカス・ノヴァエ)、リゲル星熱病 (Rigelian fever、TOS第76話 "Requiem for Methuselah" 「6200歳の恋」など。ENT第30話 "Dead Stop" 「謎の自律浮遊基地」ではライジェル熱と吹き替え)、アンヒレス熱 (Anchilles fever、TNG第4話 "Code of Honor" 「愛なき惑星」)、アンドロネシア嗜眠性脳炎 (Andronesian encephalitis、TNG第36話 "The Dauphin" 「運命の少女サリア」)

※29: その他の声優は駒谷昌男、大久保利洋、栗山浩一、飯島肇

・To Be Continued...
・感想など
スン&優生人類編の続編。前話でセリフだけで触れられた、タイトルにもなっている施設での話が中心になります。「12」となっていますが、当時の宇宙艦隊にそんな数の基地が必要とは思えないので、一種のコードネームかもしれません。旧題は略称の "CS-12"、"C-12" でした。また続き物であるため、無理矢理中途な部分で終わらせたような印象も受けますが、全体としてはそこそこのレベルを見せてくれたと思います。あまり絡みはありませんでしたが、フロックスの文通相手であるドクター・ルーカスが初登場したのは面白いところです。
今回も脚本は新スタッフの顧問製作者、Alan Brennert です。「ワンダーウーマン」「新トワイライト・ゾーン」「チャイナ・ビーチ」「LA・ロー」「新アウター・リミッツ」「オデッセイ5」「スターゲイト:アトランティス」に関わりました。拷問・感染死のシーンは、英国での放送時には一部カットされたそうです。


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