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エンタープライズ エピソードガイド
第92話「優生クリンゴン」
Divergence

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・イントロダクション
MACO と共に廊下を歩くアーチャー。船が揺れる。
拘束室に入り、会話ボタンを押した。「あと 47分でリアクターが爆発する。」
隣の優生クリンゴンを見るリード。「クリンゴンは何をしたんです。」
アーチャー:「エンジンのサブルーチンを書き換えられた。…ワープ5 以下になると、リアクターが爆発する。」
「できることは。」
「いまトリップと話した。コロンビアが 30分で来てくれるそうだ。トリップなら修復できると言ってる。」
「コロンビアからじゃ無理です。」
「こちらへ連れてくる!」
「ワープ中に転送はできませんよ。ドッキングなんて論外だし。」
「君はワープ中に船外への人員移動をした経験があるらしいな?」
「…経験と言ってもトレーニングですよ? 速度もワープ1 でした。…何週間もシミュレーションを積んだんです。」
「…今は時間がない。」
「ですがコロンビアと、ワープフィールドを融合させないと。」
「トゥポルが計算しているところだ。…ワープ5 で、船の距離を 50メートルに保つ。」
「そんなこと可能なんですか。」
「……トラヴィスの腕は確かだ。連れてきてくれるか。」
「…まずここから出してください。」



・本編
ワープ中のエンタープライズ。真後ろに、コロンビアがいる。
そのブリッジのヘルナンデス船長。「タッカー少佐? 覚悟はできてる?」

環境服※1を着たタッカー。「いつでも OK ですよ。」

ヘルナンデス:「チャンネルを開いて。…コロンビアよりエンタープライズ。」

司令室のアーチャー。「アーチャーだ。」
ヘルナンデス:『速度と方位はそちらの指示通りに合わせたわ。』
「待機してくれ。アーチャーよりリード。」

同じく環境服を着て、発着ベイに入るリード。「どうぞ。」
アーチャー:『準備はできた。』
下を見るリード。ハッチが開けられ、外の宇宙空間が見えている。
リード:「では、反転を始めて下さい。」 操作する。

すぐ後ろに来ているコロンビアが、上下逆さまに回転した。
モニターで確認するアーチャー。コロンビアがエンタープライズの下部に近づいてくる図※2だ。
メイウェザー:「距離 100メートルに接近。…90。80メートル。」
アーチャー:「こちらブリッジ。」 船長席に座る。「総員、ワープフィールドの接触に備えろ。」

リードは近づいてくるコロンビアを直接見ている。
エンタープライズの真下に入るコロンビア。双方を包む楕円形のフィールドが接触した。

揺れるブリッジ。

リード:「…揺らすなよ、トラヴィス。皿が割れたらシェフに怒られるぞ?」

メイウェザー:「距離 50メートルを維持。」
アーチャー:「機関室の準備を整えておけ。」
ターボリフトに入るトゥポル。
アーチャー:「アーチャーよりリード。位置についた。」
リード:『了解。コロンビア、ロープを発射します。』

装置に触れるリード。
エンタープライズから打ち出されたロープが、下のコロンビアの発着ベイへ向かう。固定された。

エンタープライズから見ると逆さまの状態で待機しているタッカー。「ナイスシュー、マルコム!」

うなずくリード。

タッカーは環境服とロープを固定させた。「タッカーよりヘルナンデス船長。」
ヘルナンデス:『どうぞ。』
「船外へ出ます。」
『できるだけ急いで。』
揺れるコロンビア。
タッカーはロープにつかまり、身体を移動させていく。

立ち上がるヘルナンデス。

2隻の間の空間を移動するタッカー。ヘルメットに星の流れが映り込む。
「こんな景色初めてだよ。」

ヘルナンデス:「よそ見してる場合じゃないわよ? ちゃんと着いてくれなきゃ困るでしょ。」
ワープを続けるエンタープライズとコロンビア。タッカーは中間地点で、身体の上下を入れ替えた。

揺れるロープを見るリード。「いいぞう、その調子だ。」
揺れが大きくなった。

アーチャー:「…トゥポル、どうなってる。」

機関室で図を見るトゥポル。「ワープフィールドに、揺らぎが出始めました。」
アーチャー:『生命維持のパワーを回して、何とか安定させろ。』

メイウェザー:「船長、これでは距離を保てません。…52メートル。55メートル。」

ロープを登るタッカー。『おいおい、勘弁しろよ。何がどうなってんだ?』
リード:『がんばれ、あと少しだ。そのまま?』

アーチャー:「機関室、状況は?」

トゥポル:「パワーをバイパスしています。お待ち下さい。」

メイウェザー:「59メートル。」

タッカーはエンタープライズ側に入った。
リード:「ロープがちぎれる! 急げ!」

トゥポル:「トゥポルよりブリッジ。パワーを回しても、フィールドは安定しません。」

無言のアーチャー。

リード:「もうちょっとだ!」
タッカーはリードの足下まで上がってきた。
天井を見るリード。ロープを取り付けている装置が外れそうだ。
リードはタッカーを助け、環境服とロープを離した。
装置が歪む。
リード:「危ない!」
避ける 2人。ロープごと、装置が落ちていく。
船外に出た機材は、後方に流れ去った。
タッカー:「乗船許可願います。」
リード:「…ブリッジ。成功です。」 ハッチが閉められる。

アーチャー:「…大丈夫か?」

タッカー:「大変なのはこれからですよ。対処法は一つしかありません。エンジンの再起動だ。リアクターを切って、アルゴリズムをリセットするんです。そしてエンジンをオンラインにすれば、サブルーチンは元に戻ります。」

アーチャー:「だがエンジンを止めたら…」
タッカー:『だからコロンビアのワープフィールド内に留まって、復旧するまでワープスピードを保ってもらうんです。』
「できても 1、2分だぞ、コロンビアのパワーがもたない。」

タッカー:「早く済む裏技があります。」

アーチャー:「裏技?」
タッカー:『いろんな復号化に時間がかかる。だから省いて、シンプルにすればいい。』
「…コロンビアに伝える。」

廊下。
環境服を脱いで出てきたタッカーは、MACO が待っていることに気づいた。「何で兵士なんか。」
リード:「船長が、私をちょっと誤解して。」
「誤解?」
「私はこのまま、拘束室に戻ります。…少佐の手が空いたら、説明しますから。」 歩いていくリード。
振り返るタッカー。

ワープコアのケースが外される。
トゥポル:「もっとこっちへ。そうです。」
タッカーがやってきた。「おう、珍しいな。インターミックス圧は。」
トゥポル:「…1,527 です。」
「フィールド誤差は?」
「87ミリコクレイン※3。」
「ちゃんと世話してくれなかったのか?」
「クリンゴンに言って下さい。…どうするんです。」
「いいからメモ取っとけ。…手動停止から再起動まで、2分でやってみせる。」 コアの上に登るタッカー※4
「とても不可能です。」
「まあ見てろ。」

ヘルナンデス:「コロンビアよりエンタープライズ。」

アーチャー:「どうぞ。」
ヘルナンデス:『パワーは全部ワープフィールドに回したわ。ジョナサンお願いだから、早く済ませてよね。』
コロンビアのワープフィールドが拡大し、エンタープライズも包んだ。
アーチャー:「アーチャーよりトリップ。いつでもいけるぞ。」

タッカー:「待機してて下さい。全員隔壁から離れろ! ちょっと熱くなるぞ!」
逃げる機関部員。
回路に触れるタッカー。音が低くなってきた。
コアから飛び降りる。「リアクター停止まで 5秒! 4、3、2、1!」
逃げるタッカーの後ろで火花が散る。
エンタープライズのワープナセルから、明かりが消えた。
タッカー:「インジェクターの準備を頼む。ジェンキンズ※5はリレーを。」
機関部員:「了解!」
ワープコアのパネルを開け、部品を取り出すタッカー。

揺れるコロンビアのブリッジ。
ヘルナンデス:「コロンビアよりエンタープライズ、あと 40秒よ。」

アーチャー:「了解した。」

インジェクターがせり上がってくる。
アーチャー:『トリップ、状況は?』
タッカー:「あと一分で済みます。」
『一分もないぞ。』
「マトリックスの、初期化準備だ。」
コンピューターを操作するトゥポル。

コロンビア。
ヘルナンデス:「エンタープライズ、フィールドが崩れてきた。」

アーチャー:「あと 15秒だぞ。」

タッカー:「あとちょっと。…抑制に全パワー! いいぞ、反物質を流せ!」
アーチャー:『あと 10秒。9、8、7…』
トゥポル:「少佐!」
『6…』
タッカー:「いけるぞ!」
『5、4、3…』
操作するタッカー。
アーチャー:『2…』
音が大きくなる。
ワープナセルが再び灯った。
ワープフィールドは各々のものに戻り、2隻は離れる。

メイウェザー:「パワーが戻りました。」

トゥポル:「機関室よりブリッジ。…サブルーチンは、無事復旧しました。」
アーチャー:『ミスター・タッカー、出張修理ご苦労!』
タッカー:「またいつでも。一旦、インパルスに戻せますか。いくつかチェックしたいんで。」

アーチャー:「待機しろ。…こちらエンタープライズ。助かったよ。」

ヘルナンデス:「いいけど、うちの機関主任はちゃんと返してちょうだい?」

微笑むアーチャー。「…何日か、付き合ってもらえるか。」

ヘルナンデス:「何か考えでも?」

クヴァット・コロニー。
暗い廊下を歩くドクター・アンターク。ドアを開け、後ろを振り返る。
「フロックス。フロックス!」
横になり、うめいていたフロックス。
アンタークは容器を取り出した。「ほら、飲め。…将軍のしたことは申し訳なかった。信じられんよ、大事なドクターをこんなひどい目に。」
フロックス:「……じゃあやめさせろ、艦隊に連絡を。」
「あんたの力は必要なんだ。ほかの医者では治療法を見つけ出せん。」
「…優生クリンゴンなど、生きた兵器も同然だ。…絶対に協力はできない。」
「そうじゃない。あんたの功績を調べたが、実に素晴らしい。…伝説病の…弱点を発見しているではないか。」 パッドを操作するアンターク。「ウイルスのこの部分を、断ち切ってやれば。」
「……ああ…ああ。確かに…この方法なら、第1段階で進行を止められる。…外見は変化するしわずかに神経レベルの配列も変わるが、第2段階には進まない。筋力も持久力も変わらないだろう。」 フロックスは笑う。「…だがそれでは優生クリンゴンは、創れなくなる。…将軍が許さない。」
拘束室の外を見るアンターク。「将軍には黙っておく。」
フロックス:「…そんなことをして、もしバレたらどうなるかわかってるのか。」
「だがそれで何百万の命を救えるのだ。たとえ死んでも医者として最高の名誉だ。…クリンゴンにとっても、デノビュラにとっても。」


※1: 記章はエンタープライズのもの

※2: 図上ではエンタープライズ、コロンビアともに船名に "USS" がついており、明らかにミスです

※3: コクレインは亜空間のゆがみを表す単位。TNG第79話 "Remember Me" 「恐怖のワープ・バブル」など

※4: 環境服同様、エンタープライズの記章です

※5: Jenkins
エキストラ

コロンビアと並行して飛んでいるエンタープライズ。
『航星日誌、補足。コロンビアの協力を得て、フロックスの捜索に出る。クリンゴン領へ入り込んで無事に戻るためには、2倍の武力が欲しい。』
拘束室を出されるリードは、制服を整える。「今度はどこへ連れて行かれるのかな?」
無言で連行する MACO たち。
リード:「おお。秘密みたいだな。」

コンソールを見ているアーチャー。リードが自室に入れられる。
リード:「そりゃプライベートのファイルですよ…」
アーチャー:「船の安全に関わる情報だ。…消したデータはトゥポルが復元したよ。…データベースで通信相手を確認した。名前はハリス。宇宙艦隊保安部所属。だが 5年前までで、以降は不明だ。」
「船長。私もそれ以上のことは…」
「そんな答えじゃ納得できん! 全クルーを危険にさらしてるんだぞ。全部話してもらう。…まさか君がな。そのハリスに、何を言われたか知らんが…相談して欲しかったよ。」
「命令なんです。」
「君の指揮官は私だ! 白状しないと言うなら、艦隊に連絡を取る。…調べれば秘密は全て明るみに出るんだぞ、それでもいいのか! ほんとにそれでいいんだな!」
「いいも何も知らないものは言えません!」
「…それなら知っている人物と話す! 直接な! ハリスにメッセージを送れ。」
画面に映っている、黒い制服の男。

研究室に戻ったアンターク。「フロックス家の者は代々医者なのか。」
フロックス:「…フロックス家なんて、ハ。そんなものはない。クリンゴンとは家族体系が、違うんだ。」
「そういえば、聞いたことがある。一人の夫に妻が 3人。一人の妻に夫が 3人。夫婦関係は、相当複雑だろうなあ。」
「まあ、確かにね。ヘ。アンターク家はどうなんだ?」
「代々、戦士の家系だった。私は医者になったとき父に、絶縁された。」
「だが、ドクターとして軍に貢献してるだろ。」
「これでは貢献とは言えん。…危険な優生ゲノムを振り分けきれなかった。この病気を発生させたのは、この私なのだ。あんたを巻き込んだのも私だよ。」

ワープをやめ通常空間に出てくる、優生クリンゴンの船。惑星に近づく。

廊下を歩いてくる一行。
ドアを開けた、女性の優生クリンゴン人大尉※6。「地球人の船は仕留めました。」
中にいたクヴァグ将軍。「私はお前の上官だ、話す前に敬礼しろ。」
腕を胸に当てるクリンゴン人。
クヴァグ:「よろしい。では報告しろ。」
クリンゴン人大尉:「エンタープライズを爆破しました。…エンジントラブルに、見せかけてあります。」
「一人足りんぞ。」
「息子さんは逃げ遅れ、殺されました。」
「マラブ※7は名誉の死を遂げたか。」
「地球人に撃たれて、死んだんです。」
うなるクヴァグ。優生クリンゴンたちは出ていった。

装置から液体が出てくる。
クヴァグが研究室に入った。「状況は。」
アンターク:「研究は、かなりのペースで進んでいます。」
「具体的に。」
フロックス:「ウイルスの、RNA 配列は特定…」
「わかるように説明しろ! 上に何と報告すればいい!」
「…ウイルスの効力を無効にできる、スイッチが見つかりそうだ。」
「それには後どのくらいかかる。」
「一時間ほど。」
「一時間だ!」 出ていくクヴァグ。

オフィスでコンピューターのスイッチを押すクヴァグ。

クリンゴン人のクレル※8が応えた。「何か用か。」

クヴァグ:「最高評議会に、いいお知らせが。」

クレル:「話してみろ。」
クヴァグ:『デノビュラ人の研究で、優生ゲノムが完成間近です。』
「研究は打ち切りと決まったはずだ。」
スクリーンに映るクヴァグ。『この星のコロニーを駆除すれば、これまでの研究が無になってしまいます。』

指差すクレル。『…3日後には我々がそちらへ到着する。クヴァット・コロニーの駆除を阻止したければ、それまでに成果を上げることだ。』 通信を切った。
立ち上がるクヴァグ。

エンタープライズ。
司令室に入るタッカー。「船長、あと少しで機関系統は正常に戻ります。」
アーチャー:「ケルビーでいけるか。」
「…私が掛け持ちで少し、手伝います。…ヘルナンデス船長に、相談して。」
うなずくアーチャー。「…まだあるのか?」
タッカー:「あ…マルコム、どうしたんですか。」
「…私にもまだよくわからん。」
「なるほど。じゃあ、コロンビアへ戻ります。」
トゥポル:「送りましょう。」
出ていく 2人を見たアーチャー。

廊下を歩くトゥポル。「コロンビアでの勤務は楽しいですか。」
タッカー:「まあな、何で。」
「向こうへ移ってから、何か困ったことは?」
「例えば?」
「食べ物が口に合わないとか、規則も違うし。不眠になったり。」
「グッスリ寝てるよ。そっちは。」
「私も。」
「無理してないか?」
「ええ。」
「…ああ。」

クヴァグが戻ってきた。「一時間経ったぞ。」
フロックス:「もうすぐテスト結果が出る。」
「一時間だけやると言ったはずだ!」 テーブルを叩くクヴァグ。
「将軍。駆除船が向かってるのはわかってるし、あんたが計画に入れ込んでいることも知ってる。…個人的にね。息子のことは聞いた。」
「息子は戦いの中で死んだ。」
「最終段階の苦しみは、味わわずに済んだか。…にしても、なぜウイルスに感染した。」
「囚人が底をつき、息子の部隊が優生ゲノムの実験台に選ばれたのだ。…息子は戦士として、特別扱いを求めず私も意思を尊重した。」

拘束室の中で、食事を取っているリード。
隣のマラブは、皿を投げつけた。吐き捨てる。
リード:「…気に入らないか?」
マラブ:「死んだ獣など食えるか! 地球人がひ弱なわけだな。」
「腕力が全てじゃない。」
「力がなければ戦えん。」
「いや、大事なのは頭だよ。戦わずして勝つのが最善の勝利、孫子※9兵法 (ひょうほう) の言葉だ。」
「戦なくして勝利なしと、カーレス※10は言ってるがな。」
「…戦うことに、疑問をもったことないのか。」
「戦士は疑問などもたん。従うのみだ。」
「上官が間違ったことを言ったら?」
「牢へぶち込むか、殺せばいい。」
「艦隊じゃそういうやり方はしない。」
「だから地球人は我々に敵わんのだ。」
「…じゃどうして、あんたは今ここにいるんだ?」

尋ねるクリンゴン人大尉。「あの薬を打ったら…身体が進化するはずでは?」 部屋には寝ている優生クリンゴンもいる。
クヴァグ:「ほかに感染させる前にお前を隔離する。」
「ここを離れません。…たとえ死んでも、最期まで共に。」 汗に気づく大尉。「同志として。」
「少しの辛抱だ。デノビュラ人が DNA を安定させる方法を見つければ、すぐに復帰できる。…最強のクリンゴンとしてな。」
「この額は元に戻るんですか。」
「わからん。」
「こんな姿では母星には帰れません。…おちこぼれた戦士に、戻れる場所などあるはずがない。」
「心はれっきとしたクリンゴン戦士だ!」
「ほんとにそうなんですか。…地球人と戦ったとき私は、恐怖を感じたんです。そんなことは生まれて初めてでした。…私だけはない、仲間も怯えた目をしていた。これではまるで地球人です、弱くて臆病な。このままでいるくらいなら死を選びます。」
「私が将軍としている限り、帝国はお前たちを見捨てたりはしない。」

エンタープライズ。
自室でポートスに話しかけるアーチャー。「お前もフロックスに会いたいか? もしかして、チーズが欲しいだけじゃないだろうな?」
呼び出し音が鳴った。
アーチャー:「そんなことはないか。」 応える。
ハリス:『アーチャー船長。』 コンソールに映っている。『私に聞きたいことがあるとか。』
「フロックスはどこだ。」
『無事でいます。艦隊の重要な任務を負っているんです。』
「いきなり連れ去られたんだぞ。艦隊が誘拐なんてするか。」
『…憲章の第14条セクション31※11 を見ると、非常事態発生時に限りルールを曲げることを認めるという内容の記述がある。』
「非常事態?」
『そうです。…敵は多いですから。』
「船がクリンゴンに襲われた。それも関係あるのか。」
『それより、リード大尉のことですが。長年よくやってくれています。悪く思わずに。命令しているのは私だ。』
「彼をこんな立場においたのは、あんたか。」
『お気持ちはわかるが、この問題はあなた個人より重要なんです。』
「そんな説明じゃ納得いかん!」
『…とにかく、フロックスの任務は決して邪魔しないでください。宇宙全体に大変な影響を及ぼす。』

ケースを持っているフロックス。「この 4つのウイルスの内一つだけが、症状を初期段階でストップさせる因子をもっている。」
クヴァグ:「どれだ。」
「まだわからない。…一つ一つテストして調べるんだ。」
「どのくらいかかる!」
「一週間。…星を隔離状態にすればいいだろ、うん? 治療はできるんだ、感染者の駆除など必要ない。」
「クレル提督※12が猶予期限を延ばすとは思えん!」
「健康なクリンゴン人 4人を実験台にでもしない限り、期限には間に合わないんだぞ!」
「ここに丁度 4人おるだろ!」
「安全なウイルスはたった一つだけだ、残る 3人は死んでしまう! …倫理に反することだ!」
「倫理を考えれば答えは、簡単だろ。3人の死が、数百万を救う。」
アンタークとクヴァグを見るフロックス。

作戦室のリード。「最初は、裏切ってる意識はなかった。」
アーチャー:「裏切りじゃなきゃ何だ。」
「純粋な極秘任務です、まだ若かった私には…刺激的でした。」
「今もそうなのか。」
「任務は終わったと。…エンタープライズに来てハリスから連絡があったのは初めてなんです。伝染病の治療には、フロックスの力が必要だと言われてただ…船の到着を遅らせろと。」
「じゃこれも聞いたか。拘束室にいるクリンゴン人の医療スキャンだ。」
パッドを見るリード。「地球人の DNA。」
アーチャー:「伝染病は恐らく、遺伝子強化実験の副作用から生み出されたものだろう。」
「そんなこと、何も。」
「ハリスの話では宇宙艦隊のためにも、クリンゴンの安定が不可欠だと。」
「…信じるんですか。」
「信用はできん。地球の協力が必要なら方法はあったはずだ。」
「ほんとは早く打ち明けたかったんです。」
「…挽回はできる。だが、誰に忠誠を誓うのかはっきりさせてもらわんとな。」
「…フロックスの居場所は聞いていません、ですが艦隊諜報部の話ではクリンゴンの遺伝子研究所が…クヴァット・コロニーに。」
パッドを受け取るアーチャー。


※6: 名前は Laneth (クリスティン・バウアー Kristin Bauer ドラマ「ダーク・エンジェル」(2000) に出演) ですが、言及されていません。「レイネス」としている日本語資料もあります。階級は訳出されていません。声:森夏姫、前編ではコリンズを担当

※7: 前編を含めて、原語では名前は言及されていません。日本語版だけというケースは珍しいですね

※8: Krell
(ウェイン・グレース Wayne Grace TNG第139話 "Aquiel" 「謎の蒸発事件」のクリンゴン人トラク地方官 (Governor Torak)、DS9第141話 "Wrongs Darker than Death or Night" 「憎悪を超えて」のカーデシア人レガート (Cardassian Legate) 役。ゲーム "Starfleet Command"、"Klingon Academy" でも声の出演) TOS第45話 "A Private Little War" 「カヌーソ・ノナの魔力」で同名のクリンゴン人が登場しており、その先祖という設定かもしれません。グレースが TNG で演じたトラクは、I.K.S.クヴァット (当時の吹き替えではクヴァ) に乗っていました。声:高階俊嗣、前編でケルビー&異星人その1 を担当

※9: General Sun Tzu
TNG第5話 "The Last Outpost" 「謎の宇宙生命体」でも言及

※10: Kahless
TOS第77話 "The Savage Curtain" 「未確認惑星の岩石人間」など

※11: セクション・サーティワンと吹き替え。セクションは法律における「項」の意味で、日本語版では DS9第142話 "Inquisition" 「記憶なきスパイ」などのセクション31 (Section 31) を明確に意識させるため、このような訳にしたものと思われます。つまり、組織名は法律の「第31項」そのものが由来だというわけですね。そのエピソードでは、ルーサー・スローンが「セクション31 は、最初の宇宙艦隊憲章に規定されてる」(吹き替えでは「最初の」は含まれず) と言っており、合致させた設定です

※12: クリンゴン軍では通常クヴァグのように将軍位が将官の階級として使われますが、提督位が使われるのは史上初のようです。原語ではこの個所を含め、細かく「元帥 (Fleet Admiral)」と言っているところがあります。また、吹き替えではこの個所のみ「帝国」と言っているような…?

ブリッジ。
船長席のトゥポルは立ち上がった。メイウェザーも振り返る。
リードがアーチャーと共に来た。
アーチャー:「任務に戻れ。」
戦術コンソールにつくリード。
アーチャー:「クヴァット・コロニーまでは?」
メイウェザー:「6時間です。」
リード:「船長。クリンゴン領には警備船がいます。コロンビアとある程度距離をおいて、敵にターゲットを絞らせないようにした方が。」
アーチャー:「ヘルナンデス船長につなげ。」

研究室のフロックス。「スン博士は失敗してるんだぞ。どうして、ゲノムを完成させられると?」
クヴァグ:「優生人類は数が足りなかったのだ。」
「何千といたさ。…だが戦争を引き起こしたんだ。」
「クリンゴンには規律がある。」
「そんなもの無意味だ。攻撃性は増すが抑制力がなくなる。…君たちにコントロールはできない。地球人と同じだよ。」 ハイポスプレーを見せるフロックス。
顔を上げるクヴァグ。注射された。
アンタークを見るクリンゴン人。
クヴァグ:「結果が出るまでには、どのくらいかかる。」
フロックス:「長くて一時間。」
「ブラッドワイン※13を飲んでも影響はないか。」
「…ないだろうな。」
「それでは乾杯といこう。」 笑うクヴァグ。「4人の勇敢な戦士たちに。」
声を上げ、腕を組む部下。
クヴァグ:「さあ飲め!」
フロックス:「研究の最中だ。」
また笑い、ボトルを口にするクヴァグ。

医療室に来ているアーチャー。「フロックスはクヴァット・コロニーで研究をさせられている。到着まで一時間ない。」
ベッドに拘束されているマラブは咳をした。「クレルの警備船に、やられるさ。」
リード:「隔離区域を固めるので手一杯でしょう。」
アーチャー:「フロックスは研究所にいるはずだ。座標を教えてくれ。」
答えないマラブ。咳は止まらない。
アーチャー:「我々のためじゃない。同胞のためだ。」
マラブは息をついた。

クヴァット・コロニー。
ベッドには何人もの優生クリンゴンが横になり、声を上げている。
起き上がろうとするクリンゴン人大尉。「…みんなは。」
押さえるフロックス。「病気なんだ。仲間もね。休んで。」
アンタークが入った。「ドクター。衛兵 2人に初期症状が出始めた。」
フロックス:「これで、外れが 2つわかったわけだ。」
「つまり生き残るのは将軍か、私だな。」
フロックスはスキャナーを使う。反応が出た。
うなずくアンターク。「助かるのは将軍か。だがこれで薬が作れる。」
フロックス:「研究を急げば君たちも助けられる。」

ワープ中のクリンゴン艦。艦隊を組んでいる。
ガーフ※14を食べているクレル。「何の用だ。」
ハリス:『ちょっと問題が起きた。』
「またか。」
コンソールに映っているハリス。『エンタープライズを止め損ねたのはそっちだろ。コロンビアとクヴァットへ向かってる。』
クレル:「帰還命令を出せ!」
『私に権限はない。』
「では破壊するまでだ。」
『話が違うぞ。』
「よくやってくれた。だがお前はもう、用済みだ。」
『地球とクリンゴン双方の利益になると承知したはずだろ!』
「まさか私を、信じたとはな。」 クレルは通信を切った。

容器をアンタークに渡すフロックス。「アミノ酸を注射しろ。ウイルスを血液から分離できる。」
研究室のドアが開いた。銃を構えるクヴァグ。
やってきたのは、フェイズ銃を持ったアーチャーだった。
フロックス:「船長。」
アーチャー:「無事か。」
「安心しました。」
マラブも入った。「父さん。」
クヴァグ:「…お前は殺されたと聞いたぞ。」
「地球人に生かされた。」
アーチャー:「ドクターを返してもらおうか。」
クヴァグ:「今はまだ必要だ!」
「重武装した船が 2隻控えてるぞ。」
フロックス:「待って、ちょっと私の話も聞いてください船長。あと一歩で治療薬ができるんです。」
クヴァグ:「治療だと! 優生ゲノムを完成させるのではなかったのか!」
「あれは嘘だ。…あんたの息子も今は生きているが、治療薬がなければやがて死んでしまう。…2、3時間でいいんです。それで、数百万の患者の命を助けられる。」

報告するリード。「副長、クリンゴンの戦艦 3隻がワープを解除。」
トゥポル:「コロンビアに通信を。」
ノイズが聞こえる。
サトウ:「クリンゴンに妨害されてます。」

研究所に警報が鳴り響いた。
マラブ:「何だ?」
クヴァグ:「クレルの船が来た!」
アーチャー:「続けろ。」
作業を行うフロックス。
コミュニケーターを使うアーチャー。「エンタープライズ、クリンゴンに治療薬ができたと言え。…エンタープライズ、応答しろ。」
クレル:『こちら帝国艦隊クレル提督。この星のコロニーを駆除するよう命を受けた。』 クリンゴン艦のブリッジにいる。
「その必要はない、ドクターが治療法を見つけた!」

クレル:「駆除してしまった方が手っ取り早いわ。」

フロックス:「どうも、クレル提督。ドクター・フロックスです。抗ウイルス剤のデータを、今そちらへ送っています。科学者に分析させて確かめてください。疑問があれば何でも、お応えします。」
クレル:『命令は絶対だ。アーチャー船長。お前の船はクリンゴン帝国の所有物となった。武装を解除しろ、さもなくば破壊する!』


※13: bloodwine
クリンゴン・ブラッドワイン。TNG第157話 "Gambit, Part II" 「謎のエイリアン部隊(後編)」など

※14: gagh
TNG第34話 "A Matter of Honor" 「錯綜した美学」など。この訳は後に言及

部下に命じるクレル。「全て計画通り進めろ。生物は全滅させるのだ。」

メイウェザー:「先頭の船が星に接近しました。」
リード:「武器をチャージ。」
トゥポル:「インターセプトコースに。コロンビアには。」
サトウ:「…通信不能です。」
リード:「星を攻撃してます。」
トゥポル:「ディスラプターを狙って。」
攻撃を続けるクリンゴン巡洋戦艦。クヴァット・コロニー※15に向けて発射している。
近づくエンタープライズは、フェイズ砲で狙う。

揺れる研究所。
アーチャー:「ここのシールドはもちこたえられるか。」
クヴァグ:「とても無理だ! …武装した船が、2隻いると言ったな。」
「何としても駆除は阻止させる。…エンタープライズ。」 ノイズしか聞こえない。

エンタープライズを、残り 2隻のバード・オブ・プレイが追い始めた。
火花が散るブリッジ。
リード:「後方から接近中。…船尾砲ダウン。」

さらにその後ろから、コロンビアがクリンゴン艦への攻撃を始めた。
ヘルナンデス:「コロンビアよりエンタープライズ。助けがいるみたいね。」 通信が届かないことを知る。「敵の注意をこっちに引きつけて。」

研究所で物が転がる。
クヴァグ:「船が攻撃されてるぞ。」
アーチャー:「まだかかるのか?」
フロックス:「ですから、2時間はかかります。」
「もう少し急げないか。…フロックス、考えがある。だがそれには一秒でも早く治療薬を作らなきゃならん。」
「…地球人にウイルスを打って抗体を作れれば、治療薬を早く完成させられます。」
「…地球人は私しかいないな。」
「ウイルスが地球人にどんな影響を及ぼすかわからないんですよ?」
「だが薬はできる。」
「そうですが。」
「すぐ始めよう。」
クヴァグ:「何をする気だ。」
「このウイルスがクレルへの最大の武器になる。」 席につくアーチャー。「いつでもいいぞ。」
フロックスはため息をつき、アーチャーをベルトで固定する。

コロンビアの戦術士官※16。「敵一隻のパワーがダウンしてます。左舷ナセルは無防備です。」
ヘルナンデス:「じゃ攻撃してちょうだい。」
エンタープライズに向けて撃つバード・オブ・プレイ。その船をコロンビアが狙い、一隻はワープナセルが爆発した。

アーチャーに近づくフロックス。「このウイルスには代謝促進剤を一緒に入れてあります。免疫反応を高めるためです。きついですよ。」 ハイポスプレーを打った。

エンタープライズと撃ち合うクレルの船。
リード:「効果なし、敵のシールドを破れません!」
サトウ:「副長、何とか通信信号を通せました。」
トゥポル:「トゥポルより船長。」

トゥポルの声が聞こえる。『応答してください。』
声を上げるアーチャー。
フロックス:「こちらフロックス、船長は応えられない状態です。応戦で手一杯ですか?」

トゥポル:「ええ、かなり。」

フロックス:「打開策は練ってあるんですが、後もう少し時間がいる。…それまで、何とかここが崩れないようにしていただけますか。」
トゥポル:『了解。』
耐えるアーチャー。

トゥポル:「こちらの防御プレートはどのくらい?」
リード:「62%。」
「メイウェザー少尉、戦艦と星の間に移動してください。使用可能なパワーは全て背面プレートに回して。」
「…了解。」

身体を震わせるアーチャー。
フロックス:「いけそうだ!」
見つめるクヴァグ。
すると、アーチャーの額にうねりができはじめた。

クリンゴン艦の下側に入るエンタープライズ。
メイウェザー:「針路を変えました。」
トゥポル:「ついていって。」
リード:「防御プレート、40%。」
「撃ち続けて! …ヘルナンデス船長、クリンゴン船に攻撃を続けてください。」

ヘルナンデス:「そうしたいけどあいにく武器がダウンしたの。」

アーチャーは力任せに、右腕の固定を外してしまった。押さえるクヴァグ。
フロックス:「できたぞ! 押さえて。」 ハイポスプレーを使い、アーチャーから血液を採取する。「完成だ。…容器の準備は。」
アンターク:「転送から 5秒経ったら分散するようにしてある。」
「送れ。…クレルに通信を。」
容器を台の上に置くアンターク。スイッチを押した。
転送される。

リード:「プレートはダウン寸前です。これ以上受けたらやられます!」

フロックス:「クレル提督。ドクター・フロックスです。たった今そちらのブリッジにちょっとした贈り物が届いたと思います。その容器の中身は強力な遺伝子変異ウイルスです。こうしている間にもウイルスは広まって、そこにいる全員に感染している。」

容器を放り捨てるクレル。「だまされるかあ!」
フロックス:『内部センサーをチェックしてみるといい。空気中の、粒子濃度 100万ごとに 20 のウイルスが浮遊しているはずだ。…センサーが信じられなくても? じきに実感できる。…初期症状が出るまでの時間は、30分程度だ。胸が苦しくなり心拍が乱れて額にうずくような痛みが走る。』
「許せん、卑怯な手を使いおってー!」

フロックス:「かもしれない。だが治療法はあります、アーチャー船長のおかげで抗ウイルス剤を完成させられた。もちろん、このコロニーを破壊されたら…あなた方の治療はできませんがね。早く武器を停止してはどうですか、それで苦しんでいる仲間たちを救えるんだ。」

クレルはうなった。

クヴァット軌道上のクリンゴン艦隊。
『航星日誌、補足。クレル提督が最高評議会を説得し、感染者の駆除計画は中止された。フロックスの作った抗ウイルス剤は、帝国全体に渡る。』
エンタープライズとコロンビアもいる。
フロックス:「もう血液中にウイルスの痕跡はない。」
ベッドから起き上がるアンターク。額の隆起が消えている。「ペットのターグも、私とはわからん。」 額に触れた。
フロックス:「研究を進めればいつかは、突起も戻る。」
「このくらい当然の仕打ちだな。…何百万という同胞が惨めな姿で、生きていかねばならん。子供たちにも遺伝するだろう。…大変な屈辱だ。」
「失敗を償おうと尽くしたんだ、それで十分でしょ。」
「私はきっと帝国艦隊を追放されるだろう。新しい職を見つけねばな。…そうだ、額の整形医になろう。」
「そりゃあいい考えだ、きっと大繁盛する。」
医療室にトゥポルとヘルナンデスが入った。
アンタークはフロックスの腕をつかんだ。「ありがとう。あんたには本当に感謝してる。」
うなずくフロックス。
アーチャーはため息をついた。
トゥポル:「ご気分は?」
アーチャー:「ああ、どうも妙な気持ちが収まらなくてな。山盛りのガーフに強烈な魅力を感じる。」 まだ額には名残が見える。
フロックスは笑った。「そういった変化は、一日二日で収まります。その…額も。」
タッカー:「私ならそのままにしますけど。…いかつい感じで、かっこいい。」
首を振るアーチャー。
ヘルナンデス:「じゃあ私は船に戻るわ。」
アーチャー:「本来の目的は探査だしな。」
ヘルナンデスはうなずく。
アーチャー:「ありがとう。」
ヘルナンデス:「私がいなくてよく今までやってこられたわね?」 微笑み、出ていく。
タッカーに尋ねるトゥポル。「一緒に行かないんですか?」
アーチャー:「修理が多いから、少し残っててくれるように頼んだんだ。」
トゥポル:「確かに。新任の機関主任も、助けがあった方が喜ぶでしょう。」
タッカー:「いや、ケルビーなら心配ないさ? 俺は臨時の手伝いだよ。」
トゥポルはタッカーから目を逸らした。

私服でベッドにいるリード。呼び出し音が鳴った。
操作すると、コンソールにハリスが映った。
リード:「何の用です。」
ハリス:『礼を言いたくてねえ。全て狙い通りことは運んだよ。帝国は安定を取り戻した。当分優生ゲノムの研究には手を出さんだろう。』
「やはり船長には相談すべきでした。」
『それにはクレルが反対だった。』
「なぜそんなにクリンゴンの御機嫌をうかがうんです。」
『彼らには興味がある。…今後も君の協力は必要だ。まあ気持ちはわかる。』
笑うリード。
ハリス:『だが君なしに今回の成功はなかった。』
リード:「もう連絡してこないでください。今後一切。」
『我々の起用方針をわかっていないな。簡単に脱退はできん。』
「私が従うべき指揮官はただ一人。ジョナサン・アーチャーです。」
『大尉、ところで…』
リードは通信を切った。ベッドに戻る。


※15: この辺りの地形は、地球のエーゲ海トルコ沿岸 (レスボス島、キオス島付近) に酷似しています

※16: Tactical Officer
(Matt Jenkins) 声はマラブ役の近藤さんが兼任

・感想など
クリンゴン人の額に関する連続ストーリーは、三部作ではなく "Storm Front" 「時間冷戦」以来の前後編で終わりました。ワープ中の 2隻間でクルーを移動させるという突拍子もない (しかしスタートレック科学的には十分可能な) 作戦から始まる後編を見る限り、スピード感を損なわずに 2話でまとめたことは正解だったと思います。
前編で額の謎の原因はあらかた出ていたので、今回は後世へとつなげる試みが見られました。ウィルスはフロックスの努力により収まったものの、消えた隆起は「すぐには」戻らないこと。さらに優生クリンゴンの行動や弱気な発言、フロックスの「神経レベルの配列も変わる」というセリフは、TOS と TNG 以降のクリンゴン人にあった性格の差を意味しています (TOS では名誉を重んじるというより単なる悪人で、時には軟弱な面もあったことから)。DS9 でおなじみのセクション31 を含めて、まさにファンサービスなストーリーでしたね。
監督は、ここにきて初担当の Dave Barrett。最初で最後だったわけですが、ズームを多用する映像は非常に特徴的でした。脚本はリーヴス・スティーヴンス夫妻です。


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