スター・トレック:ピカード シーズン2#2「処罰」視聴ログ

※ストーリーのネタバレに触れています。

データ

シーズン2 第2話 (通算12話)
“Penance” 「処罰」
配信日: 2022年3月10日 (米国) 3月11日 (日本)
配信:Amazon Prime Video (吹き替え版) (字幕版)
監督: Doug Aarniokoski
原案: Michael Chabon and Akiva Goldsman & Terry Matalas and Christopher Monfette
脚色: Akiva Goldsman & Terry Matalas and Christopher Monfette

俳優クレジット

俳優役名声優
Starring
パトリック・スチュワートジャン・リュック・ピカード麦人
アリソン・ピルアグネス・ジュラティ堀井 千砂
ジェリ・ライアンセブン・オブ・ナイン (アニカ・ハンセン)沢海 陽子
ミシェル・ハードラファエラ・「ラフィ」・ムジカー高乃 麗
エヴァン・エヴァゴラエルノア染谷 俊之
and サンティアゴ・カブレラクリストバル・リオス花輪 英司
Special Guest Star
ジョン・デ・ランシーQ羽佐間 道夫
Guest Starring
アニー・ワーシングボーグ・クイーン佐古 真弓
ジョン・ジョン・ブリオネス連合執政官最上 嗣生
パットン・オズワルトスポット73
Co-Starring
Toni BelafonteZilah
Alex Diehlハーヴィー
Paula Andrea Placido官邸の兵士
Hanna-Lee Sakakibaraロミュランの反乱者
その他の声優:越後屋 コースケ、渡辺 ゆかり、佐伯 美由紀、中尾 智、竜門 睦月、れいみ

レビュー

 完全に変わった世界が描かれる中、スピーディかつサプライズもあってあっという間の展開でした。せっかく前回スターゲイザーほか新たな経歴を描いてたのにあっさり放棄して別の画にするなんて、お金もかかってますねぇ。
 視聴者同様世界がどうなったか探るピカードに、Qは謎めいた問答のようなセリフを続けます。「君たちが創った世界を見せている」「ピカードが全てを握るゲーム盤」「私は傷の単なる縫い目でしかない」「収穫が違う」「ピカードに会わなければと思ったので、近くの爆発を探して割り込んだ」「ピカードは自分にとって意味のないものは、すべて変えろと主張する」「かつて人類は自分たちが滅ぼしかけた星を救う方法を見つけたが、ここでは生命維持装置で死体を保っている」「君が理解できる唯一の世界」。
 そしてピカードへの処罰とは。原題の “Penance” であり、ピカードは何の罪を犯したのでしょう。ピカードがお得意のはずの「マクベス」まで持ち出し、「償えば許される、わかるはずだ」と伝えるQ。何より、あのQの状態がおかしいという点は非常に興味をそそられます。今まで連続体によってパワーを奪われた (新スタートレック シーズン3「DEJA Q」) ことはあったものの、常に神にも似た超越した振る舞いを見せてきたQ。ピカードを殴るのもQらしくないですが、一体彼 (ら?) に何があったんでしょうか。
 惑星連邦ではなく、地球連合 (Confederation of Earth)。24世紀には没落した鏡像世界のテラン帝国とは異なり、より進化、より悪化した世界が描かれます。幸いというか当然ストーリーの都合というか、歴史の変化に気づいたのはピカード同様に別の人生を歩んでいるレギュラーキャラの面々。Qの「君独りではさせやしない」というのは、このことなんでしょうかね。
 もはや同化された過去すらないセブンことアニカ・ハンセンは、驚きの連合大統領。ラフィはセキュリティのチーフ。エルノアは反乱者。リオスはやっぱりラ・シレーナの艦長。ジュラティは囚人を管理する博士。管理されているのは……まさかのここでボーグ・クイーン! 予告編などで明らかにはなってましたけど、すっかり弱々しくなってしまって…。昔の敵との共同作戦というのはスタートレックでもそれ以外でも燃えるものですが、いきなりラ・シレーナに同行させるなんて予想外でした。ジュラティに「居場所がない」などと話すのも気になりますし、船につないじゃって大丈夫でしょうか。そうそう、ジュラティの煙巻きしゃべりは名シーンでした。リオスとは夫婦 (ではないですが) 喧嘩を見せる一方、もう一組のラフィはセブンを気にしています。あまりセブンの方は反応していないようですが。「前回のあらすじ」も、関係性が描かれたものでしたね。
 ボーグ・クイーンの情報により、時間分岐の起点として「一時的取り消し。変えた一つ」なのは2024年のロサンゼルスと判明。ほぼ現代の2024年、今回やたらと多いDS9への言及も頭をよぎるところですが、ウォッチャーとは一体誰か。ここですぐにピカードが提案するのが「原始的な」スリングショットの原理、ファン泣かせですね。映画ST4「故郷への長い道」をはじめ、23世紀には比較的簡単にタイムトラベルをしていました。それだとある種ストーリー破壊になってしまうところ、「あのスポックがいたからこそ」というちょっとしたエッセンスを付けてくれました。オマージュと整合性を上手いこと両立させてます。
 相変わらず愚直にして最強なエルノアは最後撃たれてしまいましたが、このまま21世紀へ向かうんでしょうか。

トリビア

◆Qの「時代錯誤も甚だしい」、原語では “How yesterday’s Enterprise of you.”。新スタートレック シーズン3「亡霊戦艦エンタープライズ’C’」の原題をメタ的に含めています。

◆前回同様、レコードで “Non, Je Ne Regrette Rien” 「水に流して」が流されます。

◆戦利品の部屋に入る際にQが言った “Through a mirror darkly.” 「鏡で見るごとくおぼろげなり」。新約聖書「コリント人への第一の手紙」13章12節より。映画ネメシス/S.T.X でも似たような引用があり、鏡像世界を扱ったエンタープライズ シーズン4「暗黒の地球帝国(前後編)」の原題も “In a Mirror, Darkly” でした。少し前の「リンゴの木」も聖書からですね。

◆趣味の悪い頭蓋骨コレクションは、セリフで含まれていないものを入れて以下の7人。
・カーデシア:ガル・デュカット (言わずと知れたDS9の悪役)
・クリンゴン:マートク将軍 (DS9シーズン4「クリンゴンの暴挙」ほか、ドミニオン戦争で活躍)
・ヴァルカン:サレク長官 (スポックの父。ヴァルカン科学アカデミー長官で、連邦ではないため大使にはなっていないようです。「妻子」の言及もありました)
・フェレンギ:グランドネーガス・ゼク (DS9シーズン1「宇宙商人フェレンギ星人」ほか、フェレンギ同盟の指導者)
・Lihn Zhee:M’Talas 首長 (種族・名前とも初。Terry Matalas にちなんで?)
・ソーリアン:Y’Shi 准将 (名前は初。トカゲ型種族であることから、マリオシリーズのヨッシーにちなんで?(Twitter: Terry Matalas))
・ボーグ・センチネル:ワン・オブ・ツー (集合体ではなくセンチネルになっています。名前は初)
台には名前などのほか、武器などの戦利品も飾られています。ゼクはいつもの笏ですね。

◆同じ部屋にはクリンゴンの光の衛兵 (ディスカバリー シーズン1「バルカンの挨拶」) のスーツのほか、飾られている武器は以下のようなものがあります。便宜上、宇宙艦隊と書きますが「こちら」では異なると思われます (Twitter: TrekCore.com)。映画「ウォール街」(1987) で、ゴードン・ゲッコーが銃をコレクションしているシーンにインスパイアされたそうです。
・ジェムハダーのカーターキン
・カーデシアの銃
・ベイジョーの銃
・宇宙艦隊 (23世紀) フェイザー
・レムスの銃
・ジェムハダーの銃
・宇宙艦隊 (2280年代) フェイザー
・地球連合フェイザーライフル
・宇宙艦隊 (2370年代、映画ファースト・コンタクト) 船外用フェイザーライフル
・宇宙艦隊 (2370年代) フェイザーライフル
・レムスのライフル
・ベイジョーのライフル
・ジャット・ヴァッシュのライフル
・ロミュランのライフル (映画スター・トレック (2009))
・レムスのライフル
・ジャット・ヴァッシュのナイフ
・ロミュランのナイフ
・レムスのナイフ (シンゾンが使用)
・タル・シアーの銃
・クリンゴンの銃
・カーデシアの銃
・ジャット・ヴァッシュの銃
・ロミュランの銃 (映画スター・トレック (2009))
・レムスの銃

◆ピカードは地球連合の将軍。今回まで含めると前回吹き替えの Sir=将軍は訳としては何ら間違いではないですが、ある意味ネタバレでありやっぱりちょっと…。

◆エンタープライズ-Dっぽい連合艦は、C.S.S.ワールド・レイザー (World Razer)。世界の破壊者…絶妙にダサい。Cは Confederation のCでしょうね。ピカード将軍のスピーチには、原語では “boldly” という言葉が入っています。部屋のこちら側にはクリンゴンの帯らしきものや、画面には映っていない可能性がありますがカーレスの剣、バトラフなども飾られています (Instagram: Dave Blass)。

◆ピカードはイタリアの詩人ダンテの「神曲」になぞらえ、「ダンテもこの地獄は見落としたらしい」。

◆この世界のラリスとジャバンはロミュラン解放運動 (Free Romulan movement) を指揮、死体の写真は征服博物館に飾られています。

◆セブン (ハンセン) が心理査定のため書いた数式「 \(e^{i\pi}+1=0\) 」は、最も優れた公式とも呼ばれるオイラーの等式 (ワイズ)。

◆大統領の夫である執政官を演じるのは、ジョン・ジョン・ブリオネス。今回は出演していないソージ役イサ・ブリオネスの父親です。こちらのソージ&ダージはどうなってるんでしょうね。大統領官邸のシーンは、ウォルト・ディズニー・コンサートホールで撮影。

◆セブンが見るリオスの情報、”Confederation Corps Order 5627.4″ とあり、宇宙艦隊に対して (Confederation) Corps が相当すると思われます。また、ヴァルカン戦争の前線として「ヴァルカン (ニヴァー)」と書かれており、こちらでは既にヴァルカンとロミュランが統一しているのかもしれません。ほかに下の方の作戦内容では、連合がメトリオン・カスケード (ヴォイジャー シーズン1「殺人兵器メトリオン」) を使ったことにも触れています。ほかにも極めて一瞬ですが相手のヴァルカン現地司令官としてトゥヴォック、その他の戦役のアンドリア反乱に従事する士官としてターシャ・ヤー中佐、ドミニオン同盟戦争に対してはマイルズ・オブライエン将軍といった名前もあるそうです (Twitter: TrekCore.com)。

◆ヴァルカン戦争の件で執政官が呼び出そうとした人物として、シスコ将軍が言及! DS9の主人公、ベンジャミン・L・シスコの「連合版」だと思われます。本編以外で言及されるのは史上初。

◆リオス大佐は Captain ではなく Colonel。「将軍」同様、宇宙艦隊の米海軍式に対して米陸軍式になっています。

◆C.S.S.ラ・シレーナは本来のカプランF17高速輸送船に対して、カプランF17パトロールフリゲート船で NCC-93131。同じ型で艦隊を組んでおり、エンジン出力も黄 (金) 色になっています。その他5隻の船は次の通り、シレーナ=セイレーンと同様、すべて想像上の怪物の名前ですね。
・C.S.S.シータス NCC-93130 (くじら座)
・C.S.S.ハイドラ NCC-93135 (ギリシア神話の怪物ヒドラ、うみへび座)
・C.S.S.カリュブディス NCC-93137 (ギリシア神話の怪物)
・C.S.S.マカラ NCC-93142 (想像上の海獣)
・C.S.S.セルキー NCC-93147 (スコットランドの想像上の生物)

相手のヴァルカン船は、ディスカバリー シーズン1「忘却の川」などのヴァルカン巡洋船と同じタイプです。

◆シーズン1ではデイストローム研究所の場所として登場した沖縄では、エルノアたちが反乱を起こしています。なお、すぐ撃たれたロミュランの反乱者を演じているのは Hanna-Lee Sakakibara という方です。ラフィたち連合のメンバーが使う銃は、映画ST5「新たなる未知へ」時代のフェイザー銃に似ています。

◆CGというか、なぜかモロにアニメ調なAIネコはスポット73。データが飼っていたスポットへのオマージュ。声を演じるコメディアンのパットン・オズワルトは、「レミーのおいしいレストラン」のレミー役などで知られています。そっちはネズミ。

◆ボーグ・クイーンを演じるのは「3代目」となるアニー・ワーシング。エンタープライズ シーズン1「閉ざされたオアシス」では、ヒロインのリアナを演じました。声優は佐古真弓さんと思われます。セブンは前回の「クイーン」とは違って「よく見る姿」と言っており、ヴォイジャーでもよくわからなかった一人なのか複数なのかは後者の可能性があります。

◆ボーグ・クイーンは時間の分岐を認識しており、セブンを元の所属であるユニマトリックス01第三付属物と呼びます。また、2350年に同化したと言っています。

◆「ボーグスレイヤー」ピカードが推測する「これはパラレルワールドじゃない。私達の世界だ」。原語では「別の現実じゃない。私達の現実だ」と言っており、以前にもあったように単に別の宇宙に飛ばされたのではなく、過去を変えた結果だと言っています。

◆「根絶デー」で、サンフランシスコ湾上にスローガンを唱えるホログラム像が投影されています。名前は初登場のアダム・スンと書かれており、原語ではブレント・スパイナーがノークレジットで出演。吹き替えでは大塚芳忠さんではなく、違う方です。

◆リオスの “Energizing.” 「転送」が、吹き替えでは「エネルギー充填」と訳されています。

◆ピカードが気づかれないように速やかに最低限の指示をするセリフ、日本語版の「通信で穴を開けろ。転送では穴は大きくなる」の原語は「通信、穴を開けろ。転送、大きな穴を開けろ」。通信と転送を行うためにそれぞれ穴を開けろと命じており、その後のジュラティとラフィの行動のことを指しています。

出典

TrekMovie.com
TrekCore.com
Memory Alpha
Macbeth and the witches” by Folger Shakespeare Library is marked with CC BY-SA 2.0.