【復刻】スター・トレック BEYOND 超トリビア

スター・トレック BEYOND 劇場公開中 (2016年11月) に公開したサイトの、復刻記事です。
内容も当時のままですが、非公開となった動画などは修正しています。


――50周年にちなんで50個にまとめようと思ったのに、オーバーしたどころかいろいろ言いたすぎて超長文になってしまったトリビアやら感想やら何やら

ネタバレ注意!

◆今回のオープニングは、カークの外交任務から。フィボナン共和国 (Fibonan Republic) からの贈り物として、古代の武器をティーナックス星 (Teenax) に贈ろうとします。ティーナックスの国家名は Teenaxi Delegation (字幕ではティーナックス星の代表団)。2国の名前は武器を収納する保管庫のシーンで画面にも登場しますが、そちらでは形容詞形ではなく Teenax Delegation と書かれています。その際に映像が乱れるのが伏線かつ発端になっていますね。カークが「信頼 (trust) と平和 (peace) の象徴」と言ってるのに、「切り刻んで (piece) 焼く (roast)」という噛み合わない言葉遊び。大きいと思っていたのが実は小さい、というのは前々作 “Star Trek” 「スター・トレック」(2009、以下ST11) のデルタ・ヴェガにおけるキーンザー初登場のシーンでもありましたね。フィボナンの方は登場しませんが、スタートレック50周年にちなんで50種 (デザイナーによると56種作ったと言っています) 登場しているという異星人のどっかにはいたりして。

◆「また制服が破れた」カーク。宇宙大作戦 (以下TOS) ではなぜだか未来のすごい繊維であるはずの制服が破れるシーンが多く、一種のネタ扱いされることも多々あります。並んだ制服で最初に思い浮かんだので世代がわかるんですかねぇ、私はオバQでしたけど。今回の制服は、ややカッチリしたものにリニューアルされています。

◆宇宙暦は2263.2。ケルヴィン・タイムライン (最近命名された、ST11以降の U.S.S.ケルヴィンとナラーダの事件に端を発する「もう一つの宇宙」、以下KT) では整数部4桁がそのまま西暦なため、カークの生まれ年2233年から換算すると30歳。なるほど、年齢を気にするわけです。ST11の大部分は2258年、前作 “Star Trek Into Darkness” 「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(以下STID) はラストを除いて2259年でした。966日という任務日数は、英語では900と66という言い方から、1966年9月のTOSの放送開始を意識しています。字幕の「じき3年目」はおかしいですね、「目」は不要。航海日誌 (字幕より) のシーンでチェコフを部屋から追い出すオリオン人の女性は、セリフは一言もないと思われますが Fiona Vroom が演じています。ファンムービー Star Trek Continues でも、やはりオリオン人の役でした。カークが「落ち着かなくなってきた」と言ってるのは原語では「物事が少し episodic (=散発的) に思えるようになってきた」となっており、まさに毎週がエピソードであるTVシリーズをメタ視点的に表現しています。

◆予告編でも見られたワープシーンが登場。でも今作はきちんと描いてるのがここしかないのが、少し残念でした。やっぱり映画といえばどんなワープを映像美で見せてくれるかも楽しみですからね。ST11のジャンプ型、STIDの水引き型、今作の波紋型、いずれも素晴らしい。

◆思いっきり映画ST2 “The Wrath of Khan” 「カーンの逆襲」の冒頭を意識した、カークとマッコイの乾杯。「飲むと目が見えなくなる」「視力」の下りも関連しています。「ふさふさの髪」は、STIDでもあったウィリアム・シャトナー……の髪いじり。ドクターと飲みながら会話・相談するというのは更にさかのぼり、TOSパイロット版 “The Cage” 「歪んだ楽園」でパイクとボイスのシーンに見て取れます。後に伏線となるキーンザーの風邪について、ワープコアが傷つくとマッコイが話していますね。キーンザーは確か名前が言及されるのは初めてだったような。ソリアン・ブランデー (Saurian brandy) もシリーズでおなじみの、人気のあるアルコールです。テーサス星 (Thasus) で手に入れたと言っており、TOS第8話 “Charlie X” 「セイサス星から来た少年」のセイサスのこと。母親に連絡したかと聞くマッコイ、call を電話と訳しがちなのは相変わらずですね。そして……チェコフのロッカーから失敬した酒 (スコッチ・ウィスキーのグレンフィディック) で3つ目のグラスに乾杯するというのは、アントン・イェルチンの急逝に伴って撮影終了2週間前に急遽取り入れられました。

◆観る前から楽しみにしていた宇宙基地、ヨークタウンが登場。この名前はシリーズではよく宇宙艦名として言及されますが、中でも映画ST4 “The Voyage Home” 「故郷への長い道」の最後で「そんなに早く新型のAを用意できないだろ」という突っ込みに対するジーン・ロッデンベリーの回答、「ヨークタウンの船名を変えた」という裏設定で知られています。そもそも、TOSのメインの船は当初の企画段階では「S.S.ヨークタウン」とされていました。SFとロッデンベリーの理想を融合させた基地の描写、台湾から3ヶ月ぶりに日本で観たこのシーン、少し涙ぐんでしまいました…。ヨークタウンを「透明なボール (雪玉) が破裂しそうだ」と表現したマッコイに対し、カーク “Huh, that’s the spirit, Bones.” 「相変わらずだな (字幕では「ケチつけるな」)」。さらっと描かれる公衆転送機もいい感じです。すごいGがかかってそうな乗り物を見つめる異星人の子供が一瞬ながら、しかし大写しになりますが、ジャスティン・リン監督の息子さんです。親バカ! なお耳が違うので、肌は緑色ですがオリオン人ではありません。デザインした Sean Hargreaves によると、ヨークタウンのそれぞれの「腕」は17.5マイルと意図しているそうで、中心部からの長さだとするとそれが大体半径になるので直径約56km以上ということになりますね。冒頭で宇宙基地に寄港するのは映画 ST3 “The Search for Spock” 「ミスター・スポックを探せ!」と同じで、エアロック接続時には左奥に別の宇宙艦も見えています。基地の撮影はアラブ首長国連邦のドバイで行われました。なお、地球やその近辺が全く出てこない映画というのは映画第9作 “Star Trek: Insurrection” 「スター・トレック 叛乱」以来2作目です。

◆ST11、STIDと続いていたスポックとウフーラの関係が終わったことが示唆されるシーン、訳出されていませんが基地内で「U.S.S.スターゲイザー NCC-2893」についての放送が流れています。新スタートレック (以下TNG) 第9話 “The Battle” 「復讐のフェレンギ星人」に登場した、ピカードが以前乗っていた宇宙艦 (のKT版) です。

◆冒頭の航星日誌のシーンでも写真が出ていたスールーの娘が登場。映画第7作 “Star Trek: Generations” 「ジェネレーションズ」で登場した、デモーラ・スールーのKT版でしょうか。言われないと兄弟かと思ってしまうかもしれないですが、一緒にいる男性はスールーの「パートナー」であり、プライムのスールーを演じたジョージ・タケイが同性愛者 (近年カミングアウト) であることにちなんだ設定が初導入されました。明確に (ではないという意見もあるかもしれませんが) LGBTのキャラクターが描かれたのは史上初ではありますが、これまでのシリーズでも直接的ではないながらもテーマとして扱っており、TNG第117話 “The Outcast” 「両性具有ジェナイ星人」とDS9第78話 “Rejoined” 「禁じられた愛の絆」は双璧です。そして、2017年5月から始まる新シリーズ Star Trek: Discovery では同性愛者のメインキャラクターがいることが明らかになっています。スールーのパートナーの名前は言及されていませんがクレジットにもあるようにベン (Ben) で、セリフなしながらも演じているのはサイモン・ペグと共に脚本を務めたダグ・ユングです。このシーンではエンタープライズと思われる宇宙艦のぬいぐるみを手にしています。ほかにクラールがヨークタウンを襲うシーン、ラストのパーティにも登場しています。

◆ヨークタウン到着時に入るはずだったと思われる削除シーンがあり、キーンザーの風邪の下りのほか、スコットがロメイン大尉と食事すると話しています。TOS第73話 “The Lights of Zetar” 「消滅惑星ゼータの攻撃」で登場した女性クルーで、やはりスコットと仲良くなっていました。

◆2015年2月に死去したスポック・プライム役のレナード・ニモイについて、劇中でもスポック大使の死として描かれました。必ず触れられるだろうとは思っていましたが、作品世界でもきちんと訣別させましたね。生没宇宙暦は 2230.06~2263.02。単純に引き算すると33歳ですが、実際にはST11で2387年から2258年にタイムスリップしているため、肉体年齢は162歳となります。スポックが見る資料では経歴として連邦大使、エンタープライズの第2副長 (Second Officer)、エンタープライズ-A の副長 (Executive Officer) と書かれています。エンタープライズでは最初から副長 (First Officer) だったはずなのでミス……かとも一瞬思いましたが、時系列的には最も古いスポックの初登場エピソード、パイロット版「歪んだ楽園」がありましたね。このパイク船長時代にはナンバー・ワンという副長がいたので、明確に言及されていないもののスポックは第2副長と考えても全然おかしくないわけで。そこまで考えて第2副長としたなら、すごい。また、この開いて使う装置はパラマウントとヒューレット・パッカード・エンタープライズ (HPE) のコラボレーションで考案されました。「ザ・ブック」と名づけられており、左下にHPEのロゴである緑色の長方形があります。ヴァルカン人との会話では「長寿と繁栄を」もありましたね。

◆未知の船に対処する、ヨークタウンの保安部長? らしき中佐が登場。J・J・エイブラムス作品ではおなじみのグレッグ・グランバーグが演じています。ST11でも少年カークの義父 (ビンテージカーの持ち主) 役で声だけ出演していましたが、晴れて顔出し。でも宇宙艦隊士官にしてはちょっと太りすぎでは……。名前は言及されていませんが、クレジットではフィネガン (Finnegan) となっています。TOS第17話 “Shore Leave” 「おかしなおかしな遊園惑星」に登場した、カークのおかしな先輩のKT版ですね。

◆船に乗っていた女性の名前はカラーラ (Kalara、演:リディア・ウィルソン) 、名前は後に言及されていますが訳出されていません。汎用翻訳機 (Universal Translator) の描写が痺れますね。取り囲む装置全体はこれもHPEによるコンセプトで「検疫所 (隔離所、The Quarantine)」という名前がついており、画面のあちこちに緑色の長方形が見て取れます。ここで「あわてず話せ」と妙に偉そうな訳になっている異星人の宇宙艦隊関係者 (Starfleet Official) 役でカメオ出演しているのは、Amazon.com のCEOであるジェフ・ベゾスです。スタートレックのファンであり、Amazon の名称案としてTNGのピカード艦長の言い回しにちなんで MakeItSo.com も考えていたとか。

◆後から追加撮影されたという、ショーレ・アグダシュルー演じるヨークタウンの女性司令官が登場。少なくとも最後のパーティシーンではパリス准将という名前が呼ばれており、スタートレック:ヴォイジャー (以下VOY) のレギュラーキャラクターであるトム・パリス、そして父親のオーエン・パリス提督の先祖だろうということをサイモン・ペグも示唆しています。訳出されてないのが残念ですね。准将 (Commodore) はTOSではよく出てきた将官の階級で、中佐 (Commander) と取り違えて訳されてしまったために全編おかしなことになったエピソードもありました (TOS第40話 “The Deadly Years” 「死の宇宙病」)。また、カークが基地の vice admiral になりたがっていることが明かされます。そのまま訳すと「中将」になり、准将より2つも上の階級になってしまいよく意味がわかりません。字幕では苦肉の策なのか、そのまま「副提督」と階級なのか役職なのかボカした形で訳しています。また、「エンタープライズの性能を上回る船を建造中」というラストにつながるセリフをパリスが言っていますが、字幕では「今ここにはない」と縮小された意味に留まっています。このシーンではカークもヨークタウンの制服を着ており、階級章は左右の襟元にあります。「細・太・細」の組み合わせで大佐ということで、普段の制服の袖にある階級章に似通っていますね。パリスの准将は、内側から「細・細・太・細」、フィネガンは中佐で「太・太」です。パリスの制服の色は青色ですね。

◆ヨークタウンを発つエンタープライズ、ドーサルネックの部分をアップで固定したままという異例の出港シーン。どっから撮ってんの?!

◆星雲に入った時にカークが行う船内放送、「未知というものは存在せず、一時的に隠れているだけだ」はTOS第3話 “The Corbomite Maneuver” 「謎の球体」で同じく船内放送でクルーに伝えた一節です。アルタミッド星 (Altamid) の名前は、サイモン・ペグの娘マチルダ (Matilda) のアナグラム。到着時に流れるチャイムのような音楽は、映画第1作 “Star Trek: The Motion Picture” 「スター・トレック」(以下TMP) の一節 (スポックがヴィジャーに向かうためスーツの部屋に入るシーン、サントラでは “Games”) とそっくりです。

◆今回の主要な敵船となる小さな船は、原語では「群れ」という意味で “swarm ship” と呼ばれています (字幕では単に「敵船」など)。予告編第1弾では赤茶色でした。シリーズではあまり見られないタイプですが、初めてというわけでもありません。VOY第46話「ドクターのオーバーロード」の原題は “The Swarm” であり、やはり大挙してヴォイジャーを襲う小型船が描かれました。それにしてもシールドを発生させるディフレクターをすぐ狙い (スールーの「シールドが機能しない」のところで、原語では「dish (=ディフレクター盤) をやられた」と理由も言っています) 、次はパイロン、最後に「喉元を切れ」でドーサルネックと、まあ的確な作戦なこと……。ほんとにファンも思う「弱そうなとこ」を突いてますよね。そしてナセルを失ったスコットの悲しそうなことと言ったら。重力グチャグチャは前作に引き続いてます。映画3作目でエンタープライズを失うのはST3と同じですが、まさかこんな早くとは思いませんでした。一連の群れのシーン、DVDや (仮にあったとして) 地上波放映レベルだとビットレート的に画質が厳しそうと思ってしまいます。

◆クラールより先にエンタープライズに乗り込む、副官のマナスを演じるのはインドネシア人俳優のジョー・タスリム。彼らの言語は英語字幕が表示されますが、出方がいいですよね。パッと出るんじゃなくてアニメーション的というか。

◆今作の悪役=ヴィランであるクラール (Krall) を演じるのは、「パシフィック・リム」(2013)「マイティ・ソー」シリーズ (2011~) などで知られる英国人俳優のイドリス・エルバ。生体エネルギーを吸う度に姿が変わっています。ただマナスの方は変わってないような気もします (映画.comによる本編クリップ)。

◆船内に発令されるプロトコル28、コード1アルファ0。前者は「宇宙艦隊保安規約第28節D項」としてVOY第82話 “Message in a Bottle” 「プロメテウスの灯を求めて」で「敵対エイリアンの支配下に入った場合、EMH は機能を停止し救助を待つ」が言及。よって28節としては敵対異星人による宇宙艦占拠について書かれているのではと推察されます。後者は遭難状態を示すコードとして、TNG第130話 “Relics” 「エンタープライズの面影」で言及されています。なお、完成版では予告編第2弾にあるウフーラの「侵入されました」のシーンが存在しません。

◆マッコイが廊下で倒れていたクルーの診察に使う装置は、これもHPEとのコラボによるもの。「診断ラップ (Diagnostic Wrap)」と呼ばれており、先ほどのザ・ブック同様に開いて使います。透けて見える身体に重なって状態が表示されてるんですね。ここでも緑色の長方形が中央に大きく、ほか数ヶ所に小さく見えています。

◆異星人のシル (Syl) 少尉を演じるのはメリッサ・ロクスバーグ。素顔はなかなか可愛い方です。名前はダグ・ユングの娘にちなんでおり、後にキーとなる頭の構造は「エイリアン」シリーズ (1979~) のフェイスハガー (H・R・ギーガーによるデザイン) のオマージュとなっています。ウフーラは脚を出していますがシルをはじめズボンを履いている女性クルーもおり、自由に選べるようです。

◆マナスに追われたスコットがやむをえず使った脱出方法は、前作の魚雷に入ること。おかげで敵船に捕まらなかったんでしょう。これでさえ直接的とは言いがたいものの、びっくりするぐらい極めて少ないSTIDとのつながりです。ST11とは当然のことながらいろいろありますけど、前作の最後で家族になると言ってたキャロル・マーカスも登場しませんしねぇ……。ここまで不思議なほど徹底的に切り離してるのは、ある種意図的とさえ感じます。もちろん単純に見れば初見でも楽しめることでしょうけど、一つの「エピソード」とすることで逆にTVシリーズのようにずっと続いていくという作りにも見えます。そのおかげで、初心者には「とりあえずST11だけ見て!」と安心して言えるわけですけども。

◆円盤部分離がギミックとして登場。設定上は初代エンタープライズなど他の宇宙艦でもありましたが、これまで描かれたのは「ジェネレーションズ」を最後とするエンタープライズ-D のものだけでした。分離が必要となった理由は、分離前だと円盤部のインパルスエンジンが (すでに失われた) ワープエンジンのパワーを使おうとするためです。分離させることで完全に円盤部のインパルスだけが独立し、スピードを上げて敵船を引きつける……という狙いですね。無事、分離後に補助ジェネレータからパワーを得られています。もっとも時すでに遅く、アルタミッドの重力に囚われてしまいましたが (映画.com による本編クリップ)。

◆字幕では他のと同様に単に「脱出ポッド」となっていますが、ブリッジについているものはケルヴィン・ポッドと呼ばれており形状も異なります。名称からすると、ST11の U.S.S.ケルヴィンでジョージ・カークが残らざるをえなかったことを教訓として導入されたんでしょうかね。

脱出するのが早かったスールーは敵に捕まってしまいましたが、大気圏に入って敵船が追いつけなくなってから出たカークやチェコフは捕捉されずに済みました。着陸後にはポッドに内蔵されていたと思われるサバイバルスーツ (このデザインいいですよねぇ) に着替えて、その他の装備も取り出しています。

◆ウフーラは円盤部分離の際にクラールと共にドーサルネック部分にいたので、その後クラールの船で直接アルタミッドの洞窟に入っています。クラールの船は円盤部に突入していたので、どこかのタイミング (分離の際に円盤部から敵船が離れる描写もあります) でクラール以外 (マナス?) の手によって離れて、再度落下するドーサルネックに入ったんでしょうね。クルーが地表で列をなして連行されるシーンでは、上空では一回り大きなクラールの船が洞窟に入っていってます。ただその直後、クルーが右側にある建物に入るシーンで、その奥に小さくスールーとウフーラと思われる人物が見えています (ホらデッキ)。次のシーンでウフーラがクラール船から出てくるので、洞窟から船が戻ってウフーラだけ収容しないと辻褄が合わないですね。もっとも、列のシーンではかなり小さくしか見えてませんけど。ウフーラが船から出てきた際、後ろには誰もいませんが後からクラールが出ています。後で描写される乗船シーンからすると、「上」にいたみたいです。なぜ自分が犠牲になったのかクラールに聞かれたウフーラ、字幕の「仲間だから」は原語では「船長も同じことをした」。

◆敵船で不時着したマッコイとスポックの絡み。マッコイ「リラックスすれば大丈夫だ」 スポック「その過度な楽天主義は落ち着かせようとして…」「ふざけるな」「このような場合にふざけようとは思いません」。マッコイの「ふざけるな」は原語では “I’ll cut the horseshit (=馬糞).” 「くだらないことを言うな」と汚い言葉を使っており、それに対してスポックは「ドクター、現在の状況にはどんな種類の排泄物も適切とは思えません」。そして破片を乱暴に取られた後、お返しに同じ言葉を使っています。ヴァルカン人の心臓は地球人で言う肝臓の場所にある、というのはTOSでも言及されています (第4話 “Mudd’s Women” 「恐怖のビーナス」など)。

◆アルタミッドでスコットを襲う異星人たち、その内2人はジャスティン・リン監督によって「誰が演じているでしょうか」クイズが行われていました。背の低いセリフのある方はダニー・プディで、出演作のシットコム「コミ・カレ!!」ではジャスティン・リンが監督したことも。英語ではないので字幕はありませんが、途中 “Captain Krall” と言ってるような気も…? もう一人はキム・コールド、同じくリン監督の「ワイルド・スピード EURO MISSION」(2013) に出演しています。キャラクターの名前はクレジットにあるのみで、それぞれ Fi’Ja と Zavanko です。

◆今作のヒロインであるジェイラ (Jaylah) を演じるのは、「キングスマン」(2015) にも出演したダンサーのソフィア・ブテラ。ジェイラのキャラクターは映画「ウィンターズ・ボーン」(2010) のリー・ドリーに影響を受けており、名前の由来もドリーを演じたジェニファー・ローレンス (Jennifer Lawrence)→J-Law→ジェイラという流れです。スコットは当初から親しみを込めて “lassie”、スコットランド方言に由来する「お嬢ちゃん」と呼んでいます。あの「名犬ラッシー」と同じ言葉です。さすがに字幕での表現は無理にしても、吹き替え版に期待です。逆にジェイラは愛称スコッティを聞いた後に「モンゴメリー・スコッティ」と呼んでいます。ブテラは今回の撮影にあたり、棒術やパルクールの訓練も受けたそうです。

◆胸の宇宙艦隊記章 (徽章) について聞かれたスコット、字幕では「階級章」となっていました。階級を表しているのは制服袖の線です。記章の中のマーク=機関部まで説明してるのが微笑ましいですね。字幕ではスコット「船を壊した奴知ってる?」 ジェイラ (唾を吐き捨てる) スコット「知らないか」の後、ジェイラがすぐクラールの名前を言ってます。実際は「君は俺の船を壊した馬鹿野郎どもとは関係ないよな?」「答えはノーか」。

◆洞窟から出てくる空飛ぶ生き物を見て、おなじみのスポックのセリフ “Fascinating.” 「面白い (興味深い)」。それに対するマッコイ、「不吉で、暗く、危険だ」。

◆ジェイラの家は宇宙船、U.S.S.フランクリン (U.S.S. Franklin)。船体番号は NX-326 で、これもレナード・ニモイの誕生日3月26日に由来します。船名はジャスティン・リンの祖父フランク・リンにちなんでいますが、劇中世界では政治家・物理学者のベンジャミン・フランクリン由来と考えるのが自然でしょうか。初めてワープ4を実現した船ということで、デザインも第5シリーズ・エンタープライズ (以下ENT) の主役艦エンタープライズ NX-01 のNX級に似通っています。NX-01が初のワープ5船であることに対して船体番号が大きすぎることや (もちろん326隻という意味ではありません。1701なら1,701隻目ということではない)、連邦艦を示す「U.S.S.」がついていることについては、デザイナーなどから連邦設立にあたって連邦宇宙艦隊に再編成されたことが示唆されています。ただ、それならNXではなくNCCにしてもよかったような気もしますが、あえて初期船というのを残したんですかね。最初に船名が映るパネルの左側にあるフランクリンのマークは、おなじみのデルタ型の中に星が一つ入ったものになっています (模型の台座にも)。また、アルタミッドからの脱出時に一瞬映るブリッジの記念銘版では、初代エンタープライズと同じく “Starship Class”、建造地がサンフランシスコ艦隊造船所と書かれているほか、前述の由来から FRANK と LIN の間がわずかに広がっています。

◆キーンザーの鼻水のおかげで外に出られたスールーたちは、探検者の名前がつけられたマゼラン探査機を逆に使って、クラールが監視していたことを知ります。脱出シーンで開けるのを手伝う大柄な異星人クルーはクレジットでは Wadjet で、Dan Payne が演じています。本人のインタビューによると保安部員であり、当初はもうちょっと役目があったようです。マゼランという名は24世紀ではエンタープライズ-Dのシャトルや、ギャラクシー級の宇宙艦にも使われています。ウフーラが送った救難信号の座標を変えたため、救助船は星雲をさまようと話すクラール。だから最初にカラーラの船が近づいてきた時はヨークタウンから迎え出た連邦小型船がいたのに、最後の襲撃では基地本体の防衛設備しか見当たらなかったんでしょうか。また、サイモン・ペグによるとクラールによって殺される2人のクルーはTOS第9話 “Balance of Terror” 「宇宙基地SOS」の登場人物にちなんでトムリンソンとマーティーニという名前だそうです。男女ということで、逆さづりにされてエネルギーを吸われる2人のことでしょうか。

◆墜落した円盤部を見つけて、カーク “She still has a few tricks up her sleeve.” 「彼女 (=エンタープライズ) には、まだ何か切り札があるはずだ」。さらにひっくり返すという「おかわり」があるのは意外でした。

◆スポックとマッコイのシーンで、改めてレナード・ニモイ=スポック大使の追悼シーン。字幕では「長く生きれば死を怖がることはない」となっていましたが、原語ではより特徴的に「非論理的だ」と言っています。スポックが語る大使への思いは、もはや演じているザッカリー・クイントがレナード・ニモイに語っているのと完全にダブっていました。

◆ジェイラが聴いていた「うるさい」曲は、パブリック・エナミー (Public Enemy) の “Fight the Power” です。

◆ジェイラの罠に引っかかってしまったカーク、「手厚い歓迎だな」に対してジェイラが「私の手が厚いって?」。原語では “throw out the welcome mat” で「歓迎する」という成句を使っており、「歓迎 (ドアマットを出す) の仕方をよく知ってるな」「ドアマットが何か知らない」。ここで流れる愉快な音楽は、TOS第17話 “Shore Leave” 「おかしなおかしな遊園惑星」の一節を思い起こさせます (冒頭の惑星シーン)。訳出されていませんが、以降ジェイラはカークのことを「ジェイムズ・T」と呼んでいます。スコッティと同じ感じだと思ったんでしょうかね。

◆フランクリンが行方不明になった理由としてスコットが挙げたのが3つ、ロミュラン (字幕では「敵」)、大きな緑色の手、ワームホール。実際にTOS第33話 “Who Mourns for Adonais?” 「神との対決」では、巨大なアポロの手にエンタープライズが捕らえられました。また、星々を旅するエンディングでは、この「手」を意識したようなシーンが見て取れます (パラマウントとスカイダンスの辺り)。訳出されていないのが残念です。また、少し前の原語では「2160年代初頭にガガーリン放射帯 (Gagarin Radiation Belt) で行方不明」と言っています。もちろん初の有人宇宙飛行を行ったユーリ・ガガーリンにちなんだ名前ですが、さらにこの現象自体もENT第4話 “Strange New Worlds” 「風が呼んだエイリアン」で触れられています。とは言っても冒頭でカトラー乗組員が読んでいた本の本文に書いてあるだけで、映像での視認はほぼ無理ですが。マニアックすぎるでしょ!

◆フランクリンの食堂 (原語では直前のブリッジのシーンで「食堂へ」と言及) で流されるクルーの映像。この録画はどういう場面なんでしょうね、雰囲気からするとアルタミッドに墜落した後というのはちょっと考えにくいですね。それより前の (初の?) 探査任務で、惑星から戻ってきた先遣隊のシャトルポッド (ENTと同一の形状に見えます) を出迎えたといったところでしょうか。後に重要な役割を果たす映像ですが、エディソン船長の姿が映る寸前にバイクのPX70に気づいたカークが前に来て見えなくなります。ほんとに寸前、グッドタイミング。なお、本編では暗くて非常にわかりづらいですがこのバイクのボディ部にはMACOのマーク (逆三角形+サメ) が描かれています (Memory Alpha、脚注の外部リンク [1] 参照)。サイモン・ペグによると「大脱走」(1963) のスティーブ・マックイーンのキャラクターにちなんで「ヒルツ PX70」だそうですが、型番しか言及されていません。

◆フランクリンの転送室が貨物専用というのは、これもENTのNX-01でようやく人間に対して使い始めたという設定と符合します。転送されたマッコイ、原語では「内臓がバーンダンスしてるみたいだ」。同時に転送すると合体、「ザ・フライ」(1986)……ということでなくてもちろんスタートレックでも例があります (VOY第40話 “Tuvix” 「トゥーヴィックス」)。大丈夫だと強がるスポックに対してマッコイが「バカ言うな」、原語では “In a pig’s eye, you are!”。

◆スポックを治療するために集められたフランクリンの医療器具、なぜか箱の中から虫まで飛び出しています (下の方)。もしかすると、NX-01でドクター・フロックスが治療のためにいろんな虫や動物を飼っていたこと由来でしょうか。マッコイの左後ろでスコットがジャケットを羽織っていますが、直後にスコットがフランクリンの制服をカークに渡すシーンではジャケットを手に持っており、その後また羽織っています。Blu-ray版などの映像特典では、スコットが制服を手にする短いカットシーンが入っています。古い治療器具を「暗黒時代 (字幕では原始時代) だ」と表現するマッコイ、ST4でも同じ言葉で嘆いてました。

◆スポックが引用した「不幸の薬は希望のみ」、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲「尺には尺を」から。マッコイの原語、”Death’s door and he’s quoting Shakespeare.” 「死に瀕してシェイクスピアの引用か」。

◆最初の方の伏線が生きてくる、ウフーラのネックレスこと「ヴォカヤ (vokaya)」。ENT第83話 “The Forge” 「狙われた地球大使館」のヴォカウ (“Remember.” 「忘れるな」) と、小説「スポックの世界」の heya (「山」) の2つのヴァルカン語をくっつけた新語として、Memory Alpha の運営者たちによって考案されました。記憶の石、とかそんな感じですね。このシーンは台湾でも最も受けているシーンでしたが (恐らく欧米人なら大爆笑でしょう)、ちょっと日本ではイマイチな気もします。「放射性の宝石を?」「つまり追跡装置か」だけでも意味は通じますが、そういうのを自分の彼女に渡しちゃってる危ないストーカー野郎という要素がやや抜けているせいだと思うんですよね。次のシラーッとしたクルーとスポックの返答で「あ、確かに」って感じでようやく笑いが起きるというか。2つ目に「つまり」と入れてしまうことで、マッコイが全く同じ言い回しで強調しているおかしみも抜けています (「お前はガールフレンドに放射性の宝石をあげたのか」→「お前はガールフレンドに追跡装置をあげたのか」)。「恋人に放射性の宝石か」「恋人に追跡装置か」ぐらいでだいぶ違うような気がしますが、いかがでしょう。笑いを解説するほど無粋なことはない……。その後の「奴の彼女は大変だ」は、原語では「奴に尊敬されてなくてよかった」。

◆ヴォカヤのシーン以降、スポックの本来の制服は穴が開いて怪我で汚れてしまったため、先ほどのフランクリンの制服に着替えています。NX-01のものに似たジャケット風で、ポケットもありますね。所属部門を示す色は本来の青ではなく赤になっています。フランクリンの記録映像やラストのクルーの映像も同じ制服です。

◆クルーの救出作戦、パルスビーコンは転送のパターン強化装置として使うことをスコットが話しています。カークはST11でもバイクに乗ってましたね。ジェイラVSマナスの見せ場、ブテラはもちろんですがプロ柔道選手でもあったタスリムの動きも素晴らしい。ヒロインと一緒に急に転送されるのはST4でも、落ちながらの転送はST11でも (だからカークは「二度とやらない」)。ジェイラは青い血を流しています。

◆フランクリンを再び宇宙へ、スコットは「万一落ちたら…」。原語では「ジャンプスタート (=再始動、復活) は無理です」と言っており、カークの「それだよ」という表情につながっています。シートベルトが普通に用いられていますが、シリーズではほとんど登場せずファンのネタにされることもありました。STIDでも落下シーンで使われてましたね。また、カークに船を飛ばせるか尋ねられたスールーが「もちろんです」。原語では「からかってるんですか」、映画ST6 “The Undiscovered Country” 「未知の世界」でも状況は異なりますが、似たようなセリフをスールー艦長が使っています (冒頭の最後、プラクシスのことを報告するかランドに訪ねられた際)。

画面下に消えてから上がってくるのは、STIDの地球軌道上でのエンタープライズ落下シーンにも似ていますね。

◆マッコイがあくまで自分は医者だと主張するおなじみのセリフ、今回は途中で転送されちゃうことで “I’m a doctor, not a f….” …と禁止用語を言っているような感じになっています。サイモン・ペグいわく、「戦闘機のパイロット (fighter pilot) じゃない」らしいです。この一連の下りもかなり観客に受けてましたねぇ。マッコイのスポックに対する侮辱、今回は「緑色の血の冷血漢」が飛び出しました。

◆フランクリンが搭載している武器はパルスフェイズ砲と空間魚雷 (字幕ではフェイズ砲、宇宙魚雷)。フェイズ砲 (phase cannon) と空間魚雷 (spatial torpedo、この用語はENT劇中では使われず) は、それぞれフェイザーや光子魚雷が導入される前の22世紀の装備で、NX-01にも導入されていました。パルスフェイズ砲 (pulsed phase cannon) は少し性能の上がったバージョンとして、ENT第79話 “Home” 「ヒーローたちの帰還」でコロンビア NX-02 に導入されたことが触れられています。時系列的にフランクリンがもっているのは変ですが、普通に後からアップグレードしたんでしょう。また、少し後のヨークタウン突入後には、当時のシールド技術に相当する船体装甲 (hull plating) についても触れています (字幕では船体の保護機能)。スールーの飛ぶのが精一杯という「旧式」は “horse and buggy” と表現。

◆フェイズ砲で攻撃してきたフランクリンを見て、「懐かしき友よ」とつぶやくクラール。もちろんカークのことではなく、フランクリンのことを指しています。少し後のシーンの伏線であり、この期に及んでもやはりかつての船長としての意識は残っていることをうかがわせます。

◆長々と話すスポックの説明を「結論は?」ですっ飛ばす、シリーズでもよく見られるシーン。今回の “Skip to the end.” という言い回しは、サイモン・ペグが脚本・出演の英国シットコム「SPACED ~俺たちルームシェアリング~」に由来しています。全員が意見を言って作戦が決まるところ、らしくて大好物です。

◆決まった作戦はラジオを流す、「デカく鳴らせ」の原語 “Let’s make some noise.”。ビースティ・ボーイズの “Make Some Noise” という曲があり、実際に流れてきたのも同ヒップホップ・グループの “Sabotage” でした。ST11の冒頭で車を盗んだ少年カークが聴いた曲で、まさに「いい選曲だ」。今作の予告編第1弾でも全編に渡って使われており、アクション多用な内容だったこともあって YouTube の評価も新作予告編にしては異例の3割近くが低評価ですが、いま考えるとうならされますねぇ。日本のCMでも使われているバージョンがあり、Twitter でも歌に反応している方が結構見受けられました。グループのファンにも本当に観に行って欲しいですが、理由を伝えるとネタバレになってしまうという……。何かいい方法ないですかね、何か。23世紀には既にクラシック曲扱いされているのも、ありがちな笑いどころ。ビースティ・ボーイズの曲には、スタートレックに関する歌詞が入った作品がたくさんあります (“Intergalactic”, “Ch-Check It Out”, “Brouhaha”, “So Whatcha Want”)。スピードを上げるように指示するスポックに対し、マッコイの「うるさいな」は “Damn backseat driver.”。

◆聴覚に優れるウフーラがフランクリンのクルーの映像を見ることで、クラールの正体が明かされます。狂った船長というのも、これまたTOSでおなじみですね。バルタザール・エディソンは、元MACO (軍事攻撃指令作戦部隊 Military Assault Command Operations の略、メイコーと発音) の少佐 (字幕では少将と誤訳) でした。MACOはENT第3シーズンで、デルフィック領域のズィンディとの戦いの際に初登場した地球宇宙艦隊とは別組織の軍隊。ENTでは主に「軍事部隊」と訳され、今作の字幕では「連合部隊」となっています。軍人ということは他でもわかるので、そのままMACOでもよかったかも。23~24世紀にはそのような組織はないこと、もちろん宇宙艦隊は軍隊ではないことは明言されていることから、吸収されたんだろうなぁというのは何となくわかっていましたが、それをきちんと連邦設立時に解体されて組み込まれたとするミッシング・リンク埋めはまさにお見事。さらに少し後のカークとエディソンの対峙シーンでも、きちんとズィンディとロミュランとの戦いに参加したことを話しています。結局ENTでは描かれることはなかった伝説のロミュラン戦争はまだしも、このズィンディという単語を聞いた時、とっても嬉しかったですね。それはなぜか。ズィンディ編とも言えるENTの第3シーズンは、9・11を完全に意識した唐突な方針転換を経た連続ストーリーが描かれ、ファンの間でも正直かなり不評と言わざるをえません (私自身は第3シーズン初期は置いといても、盛り上がってくる最後の方は結構好きです)。そんな下手すりゃ黒歴史、「なかったこと」にされかねないズィンディの名前を出してきた。つまり最低の部分を認めたということは、ほかの全部も認められたということですよね。苦渋に耐えながら観てきたファン、特に何やかんや言われがちなENTが好きな方には、今作にとても多いそれ以外のENT由来の部分も含めて本当に涙ものだと思います。このたった5文字がどんな意味をもつか、ある意味字幕で最も気にしていたところですが、カタカナ表記もブレることなくきちんと訳出されていてよかったです。もしかするとエディソンも若い頃、NX-01に乗ってたのかもしれませんね。すみません、思い入れが強すぎて長くなりましたが、おまけにもう一つ。エディソンの経歴が映るモニターの画面、右下の方でフランクリンの船体図の左に船体番号が書かれています。さて、何と書かれているでしょうか。(1) もちろん NX-326。(2) なぜか NCC-7317。正解は……両方。なぜか(1)と(2)の2つのバージョンがあることを確認しました。どうやら2Dだと(1)、3Dだと(2)になっているようです (少なくとも日本では)。どこかのタイミングで修正したものの、3D版は間に合わなかったのでしょうか。謎です。当然リリース版では修正されているでしょうから、幻のNCC-7317表記を観るのは今だけのチャンス?! もしかしたら他にも修正個所があるんですかね。

◆エディソンの最後の日誌で、字幕では「(すでにアルタミッドを離れた原住民は) 高度な無人作業機に資源掘削を任せている」というセリフがあります。原語では「高度な掘削装置とドローン部隊を残した」と言っており、drone workforce を無人作業機と訳したようですがクラールの部隊を意味しています。彼らは生物なのか機械なのか明確な描写はありませんでしたが、一糸乱れぬ船の動きやあまりにも膨大な数 (ジャスティン・リンによると、ヨークタウン襲撃時の数は25万隻!) からするとロボットなのかもしれませんねぇ。生命体なら、クラールたちが生体エネルギーの基を外部から調達する必要性もないですし。ただそうすると、”Sabotage” のシーンで耳を押さえるような描写はちょっとらしくないですね。なお、予告編第1弾の段階のデザインではよりシンプルで、あまり機械っぽくありません。ドローンと聞いて皆さん思い浮かべるのはボーグでしょうけど。「掘削装置」の方は船を指しているのかもしれません、だからドリル機構があるのかも。そもそも最初からそうですが、体当たりするだけで武器らしきものの描写が全くないですよね。少し前のスポック&マッコイが乗って追跡する時も、兵器があるなら使っているはずですし。なお字幕では「最後の日誌です」としてスコットのセリフとして訳されていますが、カークが指示しているような気もします。

◆ヨークタウンの司令室で、コンピューターを使う前に指をポキポキ鳴らすスコット。ST4の伝説的な「ハロー、コンピューター?」シーンで、キーボードを前にしてやはりスコットが指を鳴らしていました。なおこの近辺の流れですが、(1) フランクリンでクラールの正体をつかむ (2) カークがスコットたちに整備塔へ行くよう指示 (3) スコット到着 (4) カークがフランクリンから出てくる、となっています。(3) と (4) が逆な気がしますが、先にスコットたちを転送させてカークは歩いて出てきたんでしょうか。

◆事件解決後、パリス准将の部屋で次々に表示されるフランクリンのクルー。最後のエディソンは明らかですが、その前の左右の2人はエディソンの航星日誌にあった生き残った3人のうち残り、すなわち男性はマナス、女性はカラーラの地球人時代の姿です。名前はそれぞれリー・アンダーソン (Lee Anderson)、ジェシカ・ウォルフ (Jessica Wolff) と書かれており、言うまでもなく俳優の素顔でもあります。提督を断るカーク、やっぱり船長じゃないと! ここでも冒頭に続いてヨークタウンの制服を着ていますが、一瞬で終わることになりました。

◆3つ目のレナード・ニモイ追悼は、スポック大使の私有物を開くシーンで描かれました。そこにあったのは、スポックと共に写るかつての仲間の写真! 何というファン泣かせなんでしょうか。映画ST5 “The Final Frontier” 「新たなる未知へ」の宣材写真が使われています。スポック大使が仲間を大切にしていたことを知ることで、若いスポックも (先ほどのカークからの「お前がいないとダメだ」もあるとは言え) 改めて船に残る決意を強くしたんでしょうか。私はST11で案として考えられていた、ホログラム映像によるウィリアム・シャトナー出演かとも一瞬思いました。

◆サプライズパーティのシーンにもいろいろ詰まってます。マッコイの開いた胸元とそこに輝くメダルは、TMPのマッコイ初登場シーンのオマージュ。「亡き友へ」はST3のクルーの乾杯、映画第10作 “Star Trek Nemesis” 「ネメシス/S.T.X」のラスト、「亡き戦友へ」ならDS9第158話 “Once More unto the Breach” 「今一度あの雄姿を」でも。その直後に中央にチェコフが映るのが何とも……。画面の外でスコットがロミュラン・エールを頼んでおり、これもST2を始め人気のあるアルコールです。青色の飲み物ですが、その後もスコットが自分で飲んでいるのは色が違います。ただジェイラの飲み残しは青いですね (テーブル上にもいくつか)。またヴォカヤの下りで一笑い。TOSでも見られた何でもロシア出身だと話すチェコフ、スコットが怪訝な顔をするスコッチの下りはTOS第42話 “The Trouble with Tribbles” 「新種クアドトリティケール」でもあり、スコットと張り合ってました。今作3度目の女性絡みのチェコフですが、ここの御相手の異星人はクレジットではナターリア (Natalia、演:Ashley Edner) となっています。ジェイラに渡される入隊許可、字幕では「宇宙艦隊」となってましたが実際はその前のアカデミーです。オープニングからの引き継ぎで、ティーナックス人ケヴィンが登場。撮影に使われたモックアップでは宇宙艦隊の制服でしたが、CGで明らかに模様が違う私服に差し替えられています。

そしてクルーが見上げるのは……(私はこの辺からドキドキしていました)。

◆U.S.S.エンタープライズ NCC-1701-A! ST4の最後でも同じ番号で登場した初代の後継艦であり、後のTNGに登場するD型に続くアルファベット方式が初めて描かれました。ST4ではいきなりできあがった形でしたが、今作は建造されてますね。デザインした Sean Hargreaves の Facebook で、イラストが公開されています。気づくのが今回やられたドーサルネックやパイロンが太くなってますね! また、円盤部の縁に角度がついているのは初代エンタープライズのオマージュになっています。

このタイムラプス映像では奥に別の宇宙艦の姿も見えており、最初で右に進んでいく船や、このシーンを手がけた CGIアーティスト、Rhys Salcombe の名前がついた U.S.S. Salcombe NCC-2107 もあるそうです (最後の方で左上に一瞬見える)。

◆おなじみのナレーションは、ST11のスポック・プライム、STIDのカークに続いて、クルー7人が順番に読み上げるという初の試み。そしてこの俳優7人という意味では、最後になってしまうんですね……。締めくくるのが女性のウフーラというのが印象的です。字幕では次のようになっていたかと思われます。「宇宙とは最後のフロンティア エンタープライズは旅立つ その任務は新しい宇宙を探り 新しい生命や文明を見つけること 未踏の地に向けて勇敢な旅に出るのだ」

◆ST11以降これもおなじみとなった、エンディングでの星巡り。今作は星雲を探索できるというエンタープライズ-Aの設定に沿ったせいか、星というよりは星雲のような星間現象が多いですね。クレジットで意外だったのは、ジェイラ役ソフィア・ブテラとカラーラ役リディア・ウィルソンが同格扱いになっていること。

◆今回は日本語版での一枚絵のタイトルを除けば、タイトルが描写されるのは最後だけです。その後に「レナード・ニモイの思い出に捧げる」「そしてアントンへ」という二つの追悼メッセージ。きちんと名前が書かれたニモイと、逆にファーストネームだけのイェルチンに対する思いがそれぞれ込められており、またもや涙を誘うところです。

◆エンドロールでのあれこれ。スタートレックのファンでもあるというリアーナが歌う “Sledgehammer” はどこで使われているのか未発表でしたが、結局順当に最後でしたね。

メイン7人では、スールーとチェコフのみ姓だけになっています (他は階級、ファーストネーム、ミドルネームのイニシャル、役職、愛称など何かしらついている)。先ほどの順番に反して、カラーラよりマナス役ジョー・タスリムが上に来ています。Sledgehammer が終わった後、FX Lead (視覚効果リーダー) として James Kirk というスタッフがいます。視覚効果はいくつかのグループに分かれていますが Atomic Fiction のところで、Compositors としてたくさん並んでいる個所の3つ上です。

◆本編とは関係ないですが、今作は小説が発売されていない初めての映画版となります。邦訳が出てないという意味ではなく、本国でも未出版です。「原作」ではなく「ノヴェライズ」ということもあり、映画本編で書かれていないことはあくまで非正史ではあるんですが、今や数少ない日本語小説を読める機会がなかったのは残念ですね。サイモン・ペグのインタビューなどからうかがえるように、よっぽどスケジュールが厳しかったんですかねぇ。