スター・トレック:ローワー・デッキ シーズン3 #1「自宅待機」視聴ログ

※ストーリーのネタバレに触れています。

データ

シーズン3 第1話 (通算21話)
“Grounded” 「自宅待機」
配信日: 2022年8月25日 (米国) 8月26日 (日本)
配信:Amazon Prime Video (吹き替え版) (字幕版)
監督:Jason Zurek
脚本:Chris Kula

声優クレジット

原語キャラクター吹き替え
Starring
タウニー・ニューサムベケット・マリナー小島 幸子
ジャック・クエイドブラッド・ボイムラー平野 潤也
ノエル・ウェルズドゥヴァナ・テンディ種市 桃子
ユージン・コルデロサム・ラザフォード最上 嗣生
ドーン・ルイスキャロル・フリーマン磯辺 万沙子
ジェリー・オコンネルジャック・ランサム志村 和幸
フレッド・タタショアシャックス後藤 光祐
ジリアン・ヴィグマンタアナ橘 U子
Special Guest Star
ジェイムズ・クロムウェルゼフラム・コクレイン博士
Guest Cast
カルロス・アラズラキレス・ブエナミーゴ
フィル・ラマールアロンゾ・フリーマン
ボビー・モイニハンカールトン・「デニー」・デニス/ギャヴィン
カリ・ワールグレンシルヴィア・ロント
その他の吹き替え声優:斉藤 次郎、魚 建、後藤 ヒロキ、渡辺 ゆかり、櫻庭 有紗

レビュー

 意外なクリフハンガーで終わったシーズン2を引き継ぎ、フリーマン艦長のために奮闘するローワー・デッキのみんなが描かれます。
 セリトスを降ろされ、実家に帰ったり地球を楽しんだりしている4人。フリーマンを救うには日誌が必要ですが、前回のシーズン2最終話で失われていました。そこでボイムラーが船に残している記録を取りに行くため、セリトスに向かうことに。私服で集結するのは、映画ST3「ミスター・スポックを探せ!」の流れに通じるものがあります。
 そのまんまな「転送施設」にいたのはおじいちゃん転送主任。ちょっとオブライエンを期待しちゃいましたが、役職が違いますかね。脅されて泣いちゃうのが少尉らしい。
 結局転送できないので使うことになったのが、ボーズマンのフェニックス! 今回の目玉とも言っていい、映画「ファースト・コンタクト」のオマージュの数々が描かれます。やっぱりあの映画はあらゆる点で金字塔でしたね。
 ボイムラーの記録はポンコツ、マリナーの単独行動は仲間たちが防ぎ、ここでキーポイントとなるのが極限環境生物ヴェルーガメント。船体で乱……する新しい生命体との遭遇を盛り込んでおり、冒頭のニュースから触れられてたのもうまいですね。結局艦隊の追求から逃れられない…と思ったら、まさかのフリーマンたちが登場。
 フリーマンの口から何があったか、一分も使わずにいわゆるナレーションベースであっという間に説明。ストーリーの都合上、何かと問題が発生しがちな宇宙艦隊を「本来」の素晴らしい形で描きました。フリーマン側を描くのが王道なところ、あっさり終わらせちゃうのもまたこのシリーズらしいところです。
 罰としてランサム副長の監視下になったマリナー、当然今後の展開に関わるんでしょうね。珍しくサブストーリーがない、シンプルな流れでよかったです。なんだかんだ言って、最初から最後まで母親を救おうとしたマリナーでした。
 新作なのにスタートレック公式サイトや Twitter ではシーズン3が各国の Amazon Prime Video ではどうなるのか明確な記載がなく、Amazon は Amazon で当日実際に配信されるまで (配信されても) 一切告知も宣伝もなく心配でしたが、無事公開されて本当によかったです。残り9話、毎週楽しみがあるのはほんとに嬉しいことですねぇ。

トリビア

◆冒頭で「STAR TREK」と表示される、スタートレック・フランチャイズの共通ロゴ映像が入りました。本国では同様の映像がありましたが、日本の配信で含まれるのは初めて。シンボルを描く船は、きちんとセリトスになっています。さらに途中の星雲にぼんやり浮かび上がるのは、あの宇宙コアラ! (11秒ごろ。シーズン1「湿った船」など

◆最初に流されるFNN銀河ニュースの映像。FNNは連邦ニュースネットワークの略です (スター・トレック:ピカード シーズン1「記憶」など)。キャスターはシルヴィア・ロント。

◆銀河ニュースのテロップで流れているニュースは4本。
・「ジェリコ提督、ゼブロン姉妹を現役の宇宙艦で禁止」
 エドワード・ジェリコは新スタートレック シーズン6「戦闘種族カーデシア星人(前)(後)」より、艦長から昇進したようです。ゼブロン姉妹はS1「気のいいフレッチャー」より、チュー・チュー・ダンスで有名。
・「バッファロー・ソーラー・ナイツ、ELDS第1戦でロンドン・キングスを『食す』」
 ELDS は地球リーグ・ディヴィジョンシリーズの略と思われ、メジャーリーグ・プレーオフのNLDSやALDSの未来版でしょうか。ロンドン・キングスは新スタートレック シーズン1「宇宙空間の名探偵」、ディープ・スペース・ナインS1「夢幻の刻」など、後にもラザフォードのセリフに出てきます。廃れていたはずの野球が復活してる?
・「6歳のザクドーン人が最年少で戦略ゲーム・グランドマスターに輝く」
 新スタートレック シーズン2「限りなき戦い」より
・「カントリー・スタンピード (殺到):サニー・クレモンズのコンサートで、ステージに殺到した10代の若者12人が負傷」
 新スタートレック シーズン1「突然の訪問者」より

◆パクレド星 (ぼし) の首都名は、でっかい強い街 (Big Strong City)。

◆マリナーの父、フリーマン提督のファーストネームがアロンゾと判明。後にキャロルが原語では「ゾー (‘Zo)」という愛称で呼んでいます。

◆車もないのにゴールデンゲート・ブリッジなんか意味ないと吐き捨てるマリナー。…まあ確かに。サンフランシスコの宇宙艦隊司令部が描かれる際は、必ずと言っていいほど映り込んでます。

◆連絡してきたブエナミーゴ提督は、名前は訳出されていませんがマリナーが「レスおじさん」と呼んでいます。血縁関係は意図されていませんが、レス・ブエナミーゴはスペイン語で「親友」。階級章は三つ星です。原語声優はカルロス・アラズラキで、Star Trek: Prodigy でレギュラーキャストを務める Rylee Alazraqui の父。

◆オープニングの戦闘シーンでは、シーズン1の「ボーグVSロミュラン」→S2「ボーグVSロミュランVSクリンゴンVSパクレド」から、さらに水晶体 (結晶生命体、新スタートレックS1「アンドロイドの裏切り」など) まで加わっています。

◆ボイムラーはピカードと同じく実家がブドウを栽培しており (シーズン2「wej Duj」)、舞台はそっくりですがワインではなく干しブドウ (レーズン) 用という違いが。ボイムラーの服は、新スタートレック最終話「永遠への道」で未来のピカードがブドウ畑で着ていたものと瓜二つです。なぜかボイムラーはブドウ畑で働く女性たち (ジヌヴィエーヴ、マンドリーナ、リアンなど) にモテモテですが、まったく誘惑に屈せず…というか誘惑とすら思ってない感じ。干しブドウには詳しいようです。

◆ボイムラーは「艦長は別の船を救ってたんだ」のセリフで、”for Kirk’s sake” とも言っています。驚き、強調やいら立ちを示す “for God’s / Christ’s / Heaven’s / Pete’s / Goodness sake” のボイムラー流だと思われます。

◆テンディとラザフォードが食事を楽しんでいた「シスコのクレオール料理」略してシスコの店は、DS9の主人公ベンジャミン・シスコの父ジョセフがニューオーリンズで営むレストラン (DS9シーズン4「地球戒厳令」、S7「砂漠からの呼び声」)。店構えもDS9の頃のまんまで、店内の天井にあるワニの剥製やメニューの黒板も同じです。ラザフォードの服は、ジェイク・シスコのものにそっくり。

◆2人のセリフに出てくる、ゼフラム・コクレイン (コクレーン) がワープ航行に成功した場所、ボーズマン。後に4人で向かう地名で、映画「ファースト・コンタクト」ではモンタナ州としか言及されていませんでした。その後スタートレック:エンタープライズ シーズン1「幻影の戦士」でボーズマンと設定されています。もともとファースト・コンタクトの脚本担当でありエンタープライズの製作総指揮でもあった、ブラノン・ブラガの故郷です。ブラガは先に脚本を担当した新スタートレックS5「恐怖の宇宙時間連続体」に登場したソユーズ級の船名として使っており、結果的にファースト・コンタクトの地名にちなんだ名前と考えることができます。

◆会話に自分の名前が出るまで、タイミングを待っていたマリナー。確かにありがち。ボイムラーの服は、新スタートレック シーズン7「新たなる旅路」のウェスリーのものに似ています。

◆シスコの店にはケトラセル・ホワイト・ホット (日本語版の字幕ではケトラセル・ホワイトのみ) というホットソースが置いてあります。ケトラセル・ホワイト (略してホワイト。テトラセル・ホワイトという訳が使われたことも) は、DS9でジェムハダーに必要な麻薬物質として描かれました。よく見ると1700万SHU (スコヴィル値) とラベルに書かれており、純カプサイシン結晶の1600万を上回るとんでもない辛さです。普通のタバスコソースのスコヴィル値が2,500~5,000だそうなので、その3,400~6,800倍の辛さということに…。ボイムラーは気絶していましたが、大量にかけたマリナーは全然大丈夫なようで。

◆ドックの座標19桁を記憶していたラザフォードを褒めて、マリナーは「さすが!」 “Yes, Ruthy Ruth!”

◆「転送施設」にはピナクルズという6A型シャトルクラフトがあります。セリトス搭載ではありませんが、同様にカリフォルニア州の国立公園に由来。

◆カールトン・「デニー」・デニス転送主任はDS9前半・ヴォイジャー時代の古い制服を着ており、階級章はDS9のオブライエンと同じ下士官のもの。「ドアに挟まれたら真っ二つじゃぞ」、原語では「ドアに挟まれたらビッグ・バンで真っ二つじゃぞ」。過去の作品に登場した歴代の転送機、というか転送パッドを保管しています。妻ジェーンの名前は訳出されていません。デニスの原語声優は「サタデー・ナイト・ライブ」で有名なボビー・モイニハン、クリス・パインと共演したスタートレックのネタではスポコを演じました。

◆ライドのフェニックスを使うため、4人はボーズマンへ。この頃にはテーマパーク化していることがわかります。映画「ファースト・コンタクト」のテーマ曲、コクレインの像、ヴァルカン船トゥプラナ・ハスのすべり台、ロイ・オービソンの「ウービィ・ドゥービィ」しか流れないクラッシュ&バーン・バー、CDみたいな装置を使うステッペンウルフの「マジック・カーペット・ライド」(1968) などオマージュ満載です。全景の右の方には “Thirst (渇き) Contact” という飲み物コーナーも。フェニックスの飛び方も映画そっくり。

◆ボーズマンやライドでのナレーション、そしてファースト・コンタクト当時と同じ姿でコクレイン本人のホログラムとして原語声優を担当しているのは、映像作品でも演じたのと同じジェイムズ・クロムウェル (出演について本人やキャストが語る動画) ! スタートレック:エンタープライズのパイロット版「夢への旅立ち」で短時間出演して以来、21年ぶり。吹き替え声優は、キャラクター名入りではクレジットされていません。(ほぼ?) セリフのなかった、シャックス役の後藤光祐さんでしょうか。以前の声優は映画では坂口芳貞さん (2020年2月死去)、エンタープライズでは小林清志さん (2022年7月死去) でした。小林さんは、次元大介役の引退を2021年9月に発表されていました。

◆ボーズマンに来たテンディとラザフォードは、コクレインのに似た帽子を被っています。グッズ?

◆フェニックスには植物学者ギャヴィンが同乗。確かにライドに「お一人様用入口」がありましたけど。

◆コクレイン「さあみんな、星の間を飛んで旅する準備はいいか」。旅する=trek。最後の方でギャヴィンも言ってます。

◆セリトスは前回に続き、まだ船体外殻が外れたままです。

◆ボイムラーの艦長日誌の記録は、宇宙暦 58018.7 以降。シーズン2第2話「ケイション 彼の目は開かれた」から、第4話「ムガートはグマート」の間になります。

◆ボイムラーの紫色の髪は、染めていることが判明。

◆ボイムラーたちが乗ったシャトル名は、以前も出てきたジョシュア・ツリー。シャトルベイに突っ込む際、左側にヨセミテIIがあります。シーズン2「愛欲の泉」でヨセミテが破壊されたため。

◆映画ST2「カーンの逆襲」のレギュラIタイプの宇宙基地では、保安部員ゲリーがパネルで3D (立体) チェスを遊んでいます。そこからセリトスに近づいてきたのは、連邦攻撃艇 (新スタートレック シーズン7「惑星連邦“ゲリラ部隊”」など)。

◆ヴェルーガメントに関するテンディのセリフ、「いまオーガズムを体験中のオーガニズムを調査しているところですが」。原語では字幕のように「繁殖中の生物」としか言っていないところ、うまいなぁ。

◆対パクレド作戦を行ったモーガン・ベイトソン艦長は、前述の新スタートレック シーズン5「恐怖の宇宙時間連続体」でボーズマンの指揮官でした。23世紀からやってきてしまった士官ですが、活躍しているようでよかったよかった。フリーマンの回想だったこともあって、声優はなし。当時演じたのはケルシー・グラマー、吹き替えは筈見純です。ベイトソンはアキラ級の艦長に代わっています。

◆もう一人作戦で活躍したのが、スタートレック:ヴォイジャーよりトゥヴォック! ザクドーン人にヴァルカン精神融合をしてました。ヴォイジャー最終話「道は星雲の彼方に」以来、21年ぶりの登場です。同エピソードの別の未来では地球帰還が遅れたことで変性神経障害を発症しており、ジェインウェイ提督が歴史を変えるきっかけの一つでした。早く帰ったことで士官として活躍しているようで、よかったよかった。こちらも残念ながら声優はなし。当時演じたのはティム・ラス、吹き替えは青山穣です。

◆パクレド人の中に野球帽とセリトスのシャツを着た人物がいますが、シーズン2「あからさまなスパイ」のラムダーです。

◆フリーマンのセリフ、「純朴そうな顔をしたパクレド人が打った大芝居」は原語では “a classic Pakled Samaritan Snare writ large”。「サマリア人の罠」は、パクレド人が初登場した新スタートレック シーズン2「愚かなる欲望」の原題です。

◆フェルマーの最終定理を解いた子供がニュースに。1989年に放送された新スタートレック シーズン2「ホテル・ロイヤルの謎」では、24世紀においても解かれていないという設定でした。その後93~94年にかけてアンドリュー・ワイルズが証明を発表、95年のDS9 S3「クルゾンの秘密」ではそれを踏まえた設定になっています。

◆フェニックス・ライドの救出に向かったのは、ダニューブ級ランナバウトです。

出典

公式サイト
TrekMovie.com (レビューイースターエッグ)
TrekCore.com
Memory Alpha
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