スター・トレック:ローワー・デッキ シーズン3 #6「すべてを聞き何も信じるな」視聴ログ

※ストーリーのネタバレに触れています。

データ

シーズン3 第6話 (通算26話)
“Hear All, Trust Nothing” 「すべてを聞き何も信じるな」
配信日: 2022年9月29日 (米国) 9月30日 (日本)
配信:Amazon Prime Video (吹き替え版) (字幕版)
監督:Fill Marc Sagadraca
脚本:Grace Parra Janney

声優クレジット

原語キャラクター吹き替え
Starring
タウニー・ニューサムベケット・マリナー小島 幸子
ジャック・クエイドブラッド・ボイムラー平野 潤也
ノエル・ウェルズドゥヴァナ・テンディ種市 桃子
ユージン・コルデロサム・ラザフォード最上 嗣生
ドーン・ルイスキャロル・フリーマン磯辺 万沙子
ジェリー・オコンネルジャック・ランサム志村 和幸
フレッド・タタショアシャックス/コルザック後藤 光祐 (シャックス)
ジリアン・ヴィグマンタアナ(セリフなし)
Special Guest Star
アーミン・シマーマンクワーク稲葉 実
ナナ・ヴィジターキラ・ネリス中佐小宮 和枝
Guest Cast
カルロス・アラズラキレス・ブエナミーゴ
メリン・ダンジーウェンディ
ローレン・ラプカスジェニファー Sh'reyan
ジェシカ・マッケンナバーンズ/ダボ・ガールその1
ギル・オゼリフェレンギのピットボス
アダム・パリーメスク
ガブリエル・ルイスカストロ
ティエン・トランアーニャ
その他の吹き替え声優:上田 燿司、西村 太佑、後藤 ヒロキ、渡辺 ゆかり、櫻庭 有紗、ニケライ ファラナーゼ、れいみ

レビュー

 予告編のトリとして使われてる時から待ち望んでた、DS9訪問回。期待に違わぬ出来でした。
 当初の予定とは異なり、カレマとの交渉を任されたフリーマン。司令官となったキラや、相変わらずのクワークと出会います。吹き替えでも当時と変わらぬ配役、アフレコの収録も約20年ぶりぐらいだと思われますがブランクを全く感じさせないのはさすがです。
 マリナー以外の3人は大興奮で、プロムナードに向かいます。視聴者の気持ちを代弁してますね。特徴的な司令室&司令官室、クワークスを含むプロムナードはもちろん、エアロック (と回転ドア)、会議室、営倉 (拘束室) といった懐かしの場所が続々と再現されていることに嬉しさと懐かしさを覚えました。
 カレマ人とクワークを会わせたことが原因で、ステーションとセリトスがパワーを失う羽目に。結局悪いのはクワークというのも、「これこれ!」という伝統芸を見たような感覚です。
 DS9のオリオン人士官と出会いますが、関わりたくないテンディ。任務中に一緒にカレマ船に閉じ込められてしまいますが、オリオン人らしいことばかり言っていたのは口だけだとわかります。逆にテンディは本領発揮、見事にカレマ人に対処しました。きちんとキャラクターの掘り下げをしつつ、メインストーリーに絡ませるのが上手いです。
 そのほかにもシャックスがベイジョー人であることを最大限生かして、キラとレジスタンス仲間だったことが判明。貸し借り論争を続けながらも、カレマ人が暴走した時にはシャックスがキラを助ける見せ場も。
 一方セリトスに残ったマリナーは、「殻を破ってもらいたかった」というジェニファーとの意識高い系サロンでのドタバタ。もはやあえて書くことではないほどの、キスシーンの「さらり感」もさすがです。ダボ・キングと化したボイムラーも笑いどころでした。
 来年で30周年を迎えるディープ・スペース・ナインとのクロスオーバーとも言える、オマージュ満載のお祭りエピソードでした (ヴィジターやシマーマンほか、キャストのインタビュー)。劇中ではDS9の最後から6年しか経っていない描き方も、アニメならではという見方もできます。シーズン3も後半戦、今後も期待です。

トリビア

◆宇宙暦は 58456.2。

◆パーラメント級U.S.S.ヴァンクーヴァーはシーズン1「キューピッドの外れ矢」に登場、女性艦長の名前がグエンと判明しました。急遽 (ブラックではなく) ブラウンホールに呑み込まれそうなコロニーがある、アスパルガ星系に派遣。

◆カレマ人はDS9シーズン2「フェレンギ星人の掟」、S3「ドミニオンの野望(前編)」、S4「ディファイアントの危機」などで言及・登場した種族です。

◆艦長日誌の「戦後の通商交渉」など、DS9で描かれたドミニオン戦争の後であることを意識したセリフがたくさんあります。戦争は2375年に終わっており、現在は2381年です (宇宙暦やマイク・マクマハンのツイートより。現状の Memory Alpha では新シーズンになったことで1年経ったとして、2382年にしています)。

◆お土産のコンテナには、次の飲み物の名前が書かれています。
・アルデバラン・ウイスキー (新スタートレック シーズン5「エンタープライズの面影」)
・ライサ・カベルネ (ライサは新スタートレックS3「大いなるホリディ」)
・ロミュラン・エール (映画ST2「カーンの逆襲」)
・ギャラドニアン・ミルク (S1「第二次接近遭遇」)
・ヴァルカン・ポルト (DS9 S2「戦争回避(前編)」)
また、フリーマンはアンドリアン・ビールに言及しています。

◆トリル人のバーンズが連続で登場。操舵士のウェンディ少尉は、シーズン2「初めてのファースト・コンタクト」以来です。

◆「自宅待機」以来の登場となるブエナミーゴ提督は、「ドミニオン戦争の傷を癒すチャンス」と任務の意義を話しています。前回もそうでしたが、後ろの棚にアラモ砦の模型が置いてあります (DS9シーズン7「変節の時」)。

◆テーマ曲と共に、ディープ・スペース9が登場! ベイジョー人であるシャックスは、「忌々しいカーデシアの置き土産が」と吐き捨てます。ランサムはウェンディに「あの支柱 (パイロン) カッケーって感じで、グルグル回っとけ」。当時のオープニングが再現され、曲が終わっても「いいからそのままグルグルだ」でまた音楽。退屈? いやそれでよかったんですよ、当時は。このシーンはナナ・ヴィジターもお気に入りだそうです (公式サイトのインタビュー記事)。

◆原題の “Hear all, trust nothing.” はフェレンギの金儲けの秘訣第190条、「耳は立てても信じるな」(DS9シーズン5「DS9撤退の日」)。邦題は直訳しています。

◆ジェニファーは前回は幻影でしたが、「妄想と悪夢」以来の登場。

◆マリナーはシーズン2「永遠のトム・パリス」で言及されたようにDS9で勤務していたことがあるため、ボイムラーたちとは違って興奮していません。

◆マリナーの「平行宇宙にスマイリーと閉じ込められちゃう」。スマイリーは鏡像オブライエンのニックネームで、DS9シーズン3「鏡の裏のシスコ」など。

◆マリナー「ってか溜まり場を『サロン』って、ヘミングウェイかよ」 (パリ観光サイト「パリラマ Paris-rama」)。

◆プロムナードにはクリンゴンがバトラフばかり売っている、”Bat’leths ‘R’ Us” というお店があります。トイザらスのパロディ。バトラフサらス?

◆ボイムラーのセリフ “Ooh, it’s even more Cardassian than I imagined.” が「へえ、思ったよりカーデシア人が多いね」と訳されていますが、ここでは人物ではなく作りや雰囲気が「カーデシア風だね」の意味だと思われます。実際、モブにはカーデシア人はいないようです。

◆司令室にはベイジョーの士官しかいません。司令室内にあるのが特徴的な、転送パッドに転送されてくる士官もいます。

◆キラ・ネリス中佐が登場! DS9最終話「終わりなきはじまり」以来、23年ぶりとなります。階級は当時と同じ Colonel で、中佐という訳も当時から引き継ぎ (DS9シーズン7「砂漠からの呼び声」)。髪型は末期のタイプとは異なり、どちらかと言えばそれ以前のものに似ています (まあ6年も経ってれば)。吹き替え声優ももちろん、当時と同じ小宮和枝さんです。

◆ワームホールを見つめるキラ。カレマ船が出てくるのを確認しただけとも取れますが、あえてこのシーンを入れたことに感じ入るファンもいるようです。かつての仲間であり神殿にいる預言者シスコのことを考えている、あるいは待っているとするのは考えすぎでしょうか。

◆司令官室には、スプリングボールのヘルメット (DS9シーズン4「裏切り者は誰だ」) が飾ってあります。キラはシスコが残していった野球ボールを投げながら、「艦隊が変化球でくることは、想定の範囲内ですよ」。

◆キラはシャックスを「このバローバグ (barrowbug)!」と呼びます。ベイジョーの虫で、DS9シーズン5「父死す」で言及。2人が戦ったカーデシアのハル前線基地は、DS9 S1「スペース・テロリスト ターナ・ロス」より。バッドランドはDS9 S2「戦争回避(前編)」など。ほかにヴァナカー、あとでダカーロ・プライムという地名にも触れています。

◆カレマ船は、DS9シーズン4「ディファイアントの危機」に登場した際のデザインをベースにしています (Twitter: Jorg Hillebrand)。

◆カレマ人「なぜアルファ宇宙域の野蛮人どもが、戦争に勝てたのか」

◆さらにクワークも登場! キラと同じく23年ぶり。最初にファンにサインしているシーンを見て、アーミン・シマーマンは自分がコンベンションでやっていることと同じだと面白がっています (シロック・ロフトンのポッドキャスト The 7th Rule より。TrekMovie.com の抜粋部分だけでも興味深いです)。フリーマンの手にキスしようとして、払いのけられてます。シマーマンは当時と同じ声を再現するため、撮影で使った物ではありませんがフェレンギの歯を入れて収録に臨んでいます (Twitter)。当然、吹き替え声優も稲葉実さんです。


◆クワークス (当時の吹き替えではクワークの店)、正式名称「クワークのバー、グリル、カジノ&ホロスイート・アーケード (DS9シーズン6「グランド・ネーガスは永遠に」)」。これまでクアラ2号星 (S2「永遠のトム・パリス」)、第25宇宙基地 (S2「ドゥープラーの困惑」)、時代的には未来ですがスターダスト・シティ (ピカードS1「スターダスト・シティ・ラグ」) にクワークスがあることが描かれていました。フランチャイズ展開していることが正式に設定され、この時点でアルファ宇宙域に21店もあるそうです。六角形を使用したロゴは、ピカードで描かれたものからの「逆輸入」。ボイムラーたちはDS9の店舗を一号店として喜んでおり、ギフトショップもできています。クワークは宇宙艦隊アカデミーへの出店をフリーマンに持ちかけ、断られるとクワークス・エクスプレスを勧めています。小規模店と思われ、ボリアンに好評だそうです。

◆特別なレプリケーターのクワーク2000で作った飲み物は、食前酒のモデーラ (DS9シーズン1「反逆のテレパス・エネルギー」)。その後ラザフォード、フリーマン、シャックス、キラ、メスクなども飲んでいます。

◆ボイムラーたちがクワークスに入るシーンで、ルリアンのモーンが大きく描かれます。いつもいるクワークスの常連で、(エキストラなので) しゃべったシーンはないですがおしゃべりという設定。

◆ルーレットに似たゲームのダボが登場、ダボ・ガールもいます。ボイムラー「違法だと思ってた」 テンディ「あれイカサマじゃないの?」 「イカサマ? クワークスで? ここで細工はできないよ」と謎の確信。後ろにはトンゴのテーブルもあります。大胆不敵なボイムラーは今回、「幸運は勇者を好む」にちなんで勇者ボイムラーという訳。

◆オリオン人のメスク少尉が登場。テンディも両方、これまでオリオンの宇宙艦隊士官を見たことはなかったそうです。メスクはテンディの名前を聞いて、オリオンの北半球にあるエヴタン・リム出身か尋ねます。メスクはオリオンの七つ道具 (multi-key) を持っており、用途は「人を刺したり、鍵をこじ開けたり、船を盗んだり」。それに対してラザフォード「わー、すごい! ポジティブなことばっかり」。

◆音楽が流されているカストロの「サロン」は、ベタゾイド風のカジュアルな服装で行われています。アカデミーの頃のように、ジェニーと呼ばれるジェニファー。本気か冗談か、ボイムラーが人気です。マリナーが飲んだ飲み物のボトルはソーリアン・ブランデー (宇宙大作戦シーズン1「二人のカーク」) に似た形で、公式サイトでは緑色であることからか前述のアルデバラン・ウイスキーとしています。

◆ラザフォードは「チーフ・オブライエンのダーツ」に気づいて喜んでいます。先にクワークスで描かれていました (DS9シーズン3「新・金儲けの秘訣」)。ベイジョーのフードコートにも言及。「上に座って脚ブラブラするやつやってくるー!」というのは、ジェイクとノーグが暇つぶしでよくしていた行動のことです。原語では「ホロビデオみたいに」とも言っています。その後の「レポーターごっこ (原語では子供のレポーターと本音の話) もやってみたい」というのも、二人のことですね。

◆怒るテンディに対し、攻撃的な女性フェロモン (日本語版ではホルモン) が出てるとからかうメスク。エンタープライズ シーズン4「誘惑の甘い罠」より。

◆「あれは暗い嵐の57162.3」と話を始めるカストロ。「それは暗い嵐の夜だった」は史上最悪の導入とされており、新スタートレック シーズン2「ホテル・ロイヤルの謎」でも出てきます。その後「エンタープライズに乗ってたんじゃない、エンタープライズが私の中にあったってわけ」。何言ってるんだか? 聴衆は拍手の代わりに指スナップ。サロン仲間のアーニャは、コバヤシマルにちなんでコバヤシ・マルーンという踊りを披露しました。

◆プロムナードにある仕立屋について話すコルザック通商大臣。DS9でガラックが営んでいた店のこと (シーズン1「スペース・テロリスト ターナ・ロス」)。

◆コルザックたちがクワークスに入る際、ギフトショップにDS9のモデルキットらしき箱が並んでいるのがわかります。シーズン2「ドゥープラーの困惑」で、テンディがラザフォードにあげたのと同じもの。それにもクワークの名前がありました。

◆コルザックと言い争うクワーク。「ドミニオン戦争ってもんがあってね。うちのお客も随分死んだが、カレマが助けたとは聞いてないねえ!」 「ハ、我々には関係ない。創設者とヴォルタ人が…」

◆カレマの転送効果は、DS9当時のドミニオン型を再現しています。フリーマン「あー、どうして通商交渉失敗すると誘拐になるわけ?」

◆サロンで酸素を消費するロウソク (当たり前)、原語ではインピューリアン・ロウソクと言っています。

◆カレマ船で伝言を残すメスク。オリオン文字はエンタープライズ シーズン4「ボーダーランド」で初登場しました。

◆オリオンに行ったことがないことを明かすメスクは、オハイオ州シンシナティ育ち。ウォーフのように養子だそうです。オリオンについてはホロノヴェル (裏もの含む) で知ったとのこと。

◆テンディは父親から「船には必ず誤作動を停めるシステムがある」と教わったそうです。家族が海賊か聞かれ、シンジケートと肯定しています。オリオン・シンジケートはDS9シーズン5「あの頂を目指せ」など。

◆金歯をもつカレマ人、見た目からしても映画「007/私を愛したスパイ」「007/ムーンレイカー」のジョーズのパロディ? 金歯にはラチナムが含まれています。

◆クワークスに来たコルザックたちは、タマリアン・ミードを要求します。タマリアンは新スタートレック シーズン5「謎のタマリアン星人」など。

◆クワークはマリナーとテンディに、ライサ・コラーダとマインド・メルド (=精神融合) を持ってきます。この2つの飲み物は、かつてラスヴェガスにあったアトラクション、Star Trek: The Experience のクワークスで提供されていたそうです。キラの身体にクワークの頭のホロプログラムというのは、DS9シーズン3「次元移動惑星M」より。やってきたキラは「戦争の思い出話?」と聞いています。マリナーがDS9を訪れるシーンは当初なかったそうですが、シリーズのファンであるタウニー・ニューサムがマイク・マクマハンに直談判したそうです (TrekMovie.com)。

◆ダボ・キングを自称するボイムラーは大勝ちし、どうせ艦隊ではお金を使わないということでクワークスのギフト券をゲット。グローブ、ぬいぐるみ、ラクタジーノのカップ、DS9が入った球、ブレスレット、旗、フェレンギの耳など持ち帰りました。一部は前回、「2人の自分」のコレクターズ・ギルドのブースにあったものと共通。

◆フェレンギの金儲けの秘訣が最後に披露、第9条「チャンスと直感を合わせれば、儲けになる」。DS9シーズン2「混迷の惑星“ベイジョー”」では、「チャンスと直感が合わさったら、必ず儲かる」という訳でした。

◆クレジットではクワークもキラも“”つきで表記されており、前のスペシャルゲストの際に触れたように本人でないのでカッコつきという意図ではなかったようです (修正済み)。考えてみれば、以前のシーズンからそうでしたね。

出典

公式サイト
TrekMovie.com (レビュートリビア)
TrekCore.com
Memory Alpha