スター・トレック:ローワー・デッキ シーズン3 #5「2人の自分」視聴ログ

※ストーリーのネタバレに触れています。

データ

シーズン3 第5話 (通算25話)
“Reflections” 「2人の自分」
配信日: 2022年9月22日 (米国) 9月23日 (日本)
配信:Amazon Prime Video (吹き替え版) (字幕版)
監督:Michael Mullen
脚本:Mike McMahan

声優クレジット

原語キャラクター吹き替え
Starring
タウニー・ニューサムベケット・マリナー小島 幸子
ジャック・クエイドブラッド・ボイムラー平野 潤也
ノエル・ウェルズドゥヴァナ・テンディ種市 桃子
ユージン・コルデロサム・ラザフォード最上 嗣生
ドーン・ルイスキャロル・フリーマン磯辺 万沙子
ジェリー・オコンネルジャック・ランサム志村 和幸
フレッド・タタショアシャックス後藤 光祐
ジリアン・ヴィグマンタアナ橘 U子
Guest Cast
カルロス・アラズラキ
ジョージア・キングペトラ・アバディーン
フィル・ラマール
ジェシカ・マッケンナセリトスのコンピューター/バーンズ
カール・タートケイション
カリ・ワールグレン
その他の吹き替え声優:後藤 ヒロキ、多田野 曜平、斉藤 次郎、佐古 真弓、櫻庭 有紗、渡辺 ゆかり

レビュー

 ショーランナーのマイク・マクマハン自身が脚本を務める、王道にして大事なエピソードでした。
 何かの装置が爆発する悪夢を見るラザフォード。テンディにパソコンばりに「キャッシュ」をクリアしてもらったところ、荒々しい別の人格に乗っ取られてしまいます。過去の例を挙げれば枚挙に暇がない、別人格もの。インプラントの赤&青色でわかりやすくなってるのがいいですね。
 セリトスから逃げ出そうとする別のラザフォードですが、本来のラザフォードが自らインプラントを攻撃するという荒技を使って取り押さえられました。インプラントの不調で昏睡状態に陥ったラザフォードは、これもおなじみの潜在意識の描写へ。
 もう一人のラザフォードが、インプラントを付ける前である10年前の存在ということがわかります。なるほど、確かになぜラザフォードがああなったのかは謎でしたね。
 二人はどちらかしか残れないため、宇宙船レースで闘うことに。アニメであることを十分に生かしてました。ロミュランの攻撃も、ローワー・デッキの友達を再現して乗り切ったラザフォード (現在)。あわれ消えてしまうことになった過去の自分との対話は、さほど描く時間がなかったにも関わらず、見入ってしまいました。
 ラザフォードが思いだした過去の記憶は、冒頭でも描かれた装置の爆発から始まります。直後に上官の指示で、「何年も戻る」ことになる処置を受けることに。上官は「私やプログラムの記憶を消す」隠蔽を指示し、「なぜ彼が持っていると聞かれたら、プログラムを自分の意思だと思うだろう」。珍しくシリアスに、次回以降へつなげる大きな要素がもたされました。
 一方のマリナーとボイムラーは、宇宙艦隊のリクルート任務へ。考古学者ペトラ・アバディーンの妨害を受けつつ、階級章を壊されたボイムラーがブチ切れ状態になってしまいます。結果スカウトは成功、ボイムラーも怒られはしましたがランサムには認められたようで、丸く収まりました。
 マリナーはアバディーンからの勧誘は断りましたが連絡先は消さず、未練があるようです。この辺も今後描かれそうですね。
 両ストーリーともに尻上がりに盛り上がっていくのが上手く、下記トリビアに挙げたように大量の小ネタもありました。キャラクターの掘り下げと面白さが両立されていたように思います。

トリビア

◆タオル男のフェドロフが連続で登場。

◆宇宙暦は 58354.2。

◆タルガナ4号星はシーズン1「外交特使」で訪れた惑星。

◆ラザフォードの夢について、「カークとスポックと、新しい時間軸で映画的に盛り上がるような?」と話すテンディ。映画「スター・トレック」 (2009) 以降のケルヴィン・タイムラインを意図した内輪ネタです。何で悪夢のたとえで出した?

◆宇宙艦隊へのリクルート・ブースの準備をするボイムラーたち。テンディはそれがきっかけで入隊したことがわかります。準備する物の中に、カークとスポックの顔はめパネルがあり後でブースにも置かれています。今まで同様、二人はまんが宇宙大作戦のスタイルです。後ろにはホルタの姿も (宇宙大作戦シーズン1「地底怪獣ホルタ」)。

◆マリナーが異星歴史学の学位を取っていると話します。日本語版では「立派な学位」。

◆マリナーを第80宇宙基地へ転属させると脅すランサム。シーズン1「気のいいフレッチャー」でも言及されていました。原語ではランサムが略称の「SB80」とも呼んでいます。

◆ラザフォードはダグラス基地からセリトスへ転属、宇宙暦は 56329.4 でした。ダグラス基地は、シーズン1「第二次接近遭遇」の冒頭で訪れていた宇宙基地。

◆ありがちな「反射」の姿で映る現在のラザフォードの意識。原題であり、「回想」「考え」といった意味もあります。

◆ラザフォード (現在) は、核分裂性エイリアンに乗っ取られたと助けを求めます。新スタートレック シーズン7「愛の亡霊」で、ロニンとして現れた生命体のこと。いろいろ候補がいる中で、何で寄りによってあの駄……迷作のを出した? ここで言う核分裂性 (anaphasic) は原子核の話ではなく、細胞分裂に関する用語です。吹き替えでは「姿をコピーするエイリアン」(字幕では「異星人」のみ) となっており、本来の性質とは異なっています。あとでタアナがラザフォードをスキャンする際も、「核分裂性の存在はない」と言ってます (吹き替えでは「乗っ取られてない」)。

◆タルガナ4号星には前回同様、フェレンギ、ヴァルカン人、アンドリア人、クリンゴンのほか様々なモブ異星人がいます。
・アペルゴス人 (シーズン2「奇妙なエネルギー」)
・アルゴリア人 (新スタートレックS3「愛なき関係」)
・アンティード人 (新スタートレックS2「魅せられて」)
・エヴォラ人 (映画「スター・トレック 叛乱」)
・ギャラドニア人 (S1「第二次接近遭遇」)
・クワパ人 (S2「ボイムラーのから騒ぎ」)
・ゲルラキアン (S1「時間厳守命令」)
・ベンザイト (新スタートレックS1「宇宙戦士への道」)
・ヴォルゴン (新スタートレックS3「大いなるホリディ」)
・ミクスタス人 (S1「キューピッドの外れ矢」)
・ライサ人 (新スタートレックS3「大いなるホリディ」)
・ルリアン (DS9 S6「モーンの遺産」)
・Ariolo (映画ST4「故郷への長い道」で連邦評議会に参加、4本脚)

◆「真実はここに」と掲げられた陰謀論者のブースには、あとで言及される寄生生物の模型? のほか、パオラナ女王 (S2「愛欲の泉」)、シャックス、S2「愛欲の泉」でアギマスがいた種族、ムガートの写真があります。

◆隣の辺境科学者のブースには、「辺境科学こそ本当の科学!」と書かれています。「妄想と悪夢」に続いてネタにされてますね。科学者の女性はベイジョー人です。

◆コレクターズ・ギルドは、シーズン2「ケイション 彼の目は開かれた」より。新スタートレック シーズン3「究極のコレクション」より、同エピソードのペイラー・トフそっくりな異星人と、キヴァス・ファージョと同じザバリア人がブースに来ています。展示しているコレクションには、以下のようなものがあります。
・宇宙艦隊記章
・スペースファン・ヘルメット (シーズン1「セリトス絶体絶命!」)
・カディス・コット (ヴォイジャーS5「遥かなるボーグの記憶」)
・ゴーン (宇宙大作戦S1「怪獣ゴーンとの対決」) のフィギュア
・ゴルの石 (新スタートレックS7「謎のエイリアン部隊(後編)」)
・ダクタフ・ナイフ
・データが描いたスポットの絵 (新スタートレックS7「アンドロイドの母親」)
・データのバブルバス (S2「ドゥープラーの困惑」)
・ヴァイザー
・フェレンギの人形
・ベイジョーの石板 (DS9 S6「善と悪の叫び」)
・ベイロックの装置 (宇宙大作戦S1「謎の球体」)

◆マリナーの誘い文句は宇宙大作戦などのナレーションにちなんで、「ストレンジなニューワールドを探検しに行けるよ!」

◆ボイムラーは、ブースに置いたU.S.S.スターゲイザー (新スタートレック シーズン1「復讐のフェレンギ星人」) の模型を大事にしています。怒ったマリナーが手にした時、略して「やめて、ゲイザーは!」(日本語版ではスターゲイザーのまま)。

◆宇宙艦隊アカデミーに入らなくても、火星の技術アカデミーに行けば転送室で働けるとテラライトを誘うマリナー。宇宙艦隊技術サービスアカデミー (Starfleet Tech(nical) Services Academy) は、新スタートレック シーズン7「謎の幻覚テレパシー」のオクダグラムにのみ出たマイナーな設定です。

◆独立した宇宙考古学者のペトラ・アバディーンは、どことなくヴァッシュ (新スタートレックS3「大いなるホリディ」など) に似ています。彼女いわく、「下士官は7年間窓のない部屋だよ」。新スタートレックなどのシリーズが7年続いたこと、転送室には窓がないことを揶揄した内輪ネタ。ブースには、保存者の記念碑 (宇宙大作戦シーズン3「小惑星衝突コース接近中」) やダーセイの工芸品 (新スタートレックS7「多重人格アンドロイド」) のレプリカなどがあります。

◆マリナーの誘い文句、”Prepare yourself for Warp 10 excitement.” 「ワープ10で宇宙をかっ飛んでみませんか」は、映画ST2「カーンの逆襲」米国版ノヴェライズに書かれていたキャッチコピー。”Discover the undiscovered country.” 「未知の世界を発見できますよ」は、映画ST6 “The Undiscovered Country” 「未知の世界」にちなんで。

◆トリル人のバーンズ少尉は、セリフありではシーズン2「wej Duj」以来の登場。模様がどこまで続いているか、ダックスが同じような質問をされていました (DS9シーズン3「次元移動惑星M」)。

◆オミクロン・セティ3号星の花が登場。宇宙大作戦シーズン1「死の楽園」より。

◆アバディーンが以前乗っていたU.S.S.ヴィクトリーは、コンステレーション級の宇宙艦 (新スタートレック シーズン2「ホログラムデッキの反逆者」)。

◆ラザフォード (過去) が盗もうとする艦長のヨット。シーズン2「初めてのファースト・コンタクト」以来の登場です。

◆ラザフォード (現在) が潜在意識で実体化させた装置は、シーズン1「キューピッドの外れ矢」のT88。

◆ラザフォード (過去) 自作のレース船は、サンパギータ。マツリカ (茉莉花、アラビアジャスミン) のフィリピン名で、フィリピンの国花です。ラザフォードを演じるユージン・コルデロは、フィリピン系アメリカ人です。

◆ラザフォードは過去の人格の影響で、一時期だけナシが好きだったそうです。

◆デヴロン・レースはポスターではデヴロン500と書かれており、中立地帯を飛ぶという設定からしても新スタートレック シーズン7「永遠への旅」のデヴロン星系と関係していると思われます。

◆宇宙艦隊をバカにするアバディーンの「地球を救いに過去へ行く必要もないしねえ」に対し、マリナーは「そんなの4回くらいしかないでしょ、多くて5回」。宇宙大作戦シーズン1「危険な過去への旅」、新スタートレックS7「永遠への旅」、ヴォイジャーS3「29世紀からの警告」、エンタープライズS3「デトロイト2004」、映画ST4「故郷への長い道」、「ファースト・コンタクト」、さらにピカードS2…。任務か事故かなど、微妙なのも混ざってますけど。

◆陰謀論者の女性 (モブとして歩いている異星人の一人も) は、映画スター・トレック (1979) でモブとして登場したアークトゥルス人です。陰謀論者はマリナーたちと「シスコは聖なる神殿で働いてる」(DS9シーズン7「終わりなきはじまり」)、「寄生虫が提督のケツから入り込んで、脳味噌を乗っ取った」(新スタートレックS1「恐るべき陰謀」) という会話。後者についてボイムラーは「ただの陰謀 (同エピソードの原題も “Conspiracy”) 論だ、実際はなかった」と請け合いませんが、マリナーは「いや、多分あった」。あの出来事は公にはなっていないようです。

◆ラザフォード (現在) がレース船として造ったのは、デルタ・フライヤー。ヴォイジャー シーズン4「心は闘いに傷ついて」より。

◆サンパギータを見たラザフォード (現在)、”Whoa-key do key!” 「おーどろき桃の木ー!」 (字幕では「こりゃたまげた」)。

◆辺境科学者が、宇宙艦隊の制服がコロコロ替わることをネタにしています。科学者「まずなぜ制服が必要なの? 軍隊じゃないんでしょ」 アバディーン「いや軍隊だよー」 マリナー「あんたうるさい!」

◆キレたボイムラーが「お前らいつも人をゲームに閉じ込めて! 人をゲームに閉じ込めるのよせ!」。ビビっている異星人は、DS9シーズン1「死のゲーム」よりワディ人。見た目も同エピソードのファローや女性にそっくりです。ブースにはそのチュラの駒、ゲームつながりで3Dチェス、「史上最小の殺戮ゲーム」のバトラフ&ベイナッフのボード、新スタートレックS5「エイリアン・ゲーム」のゲームが置いてあります。

◆ボイムラーを見て入隊を希望した異星人は、前回に続いてシーズン2「永遠のトム・パリス」でエアハート宇宙基地にいた人物と同じ種族。

◆ボイムラーは続いて「ドクターはデルタ宇宙域で7年、お前らXXXXために過ごしたんじゃない! 彼にも権利はある!」と暴れ回っています。原語では「エージェンシーを疑われるために」と言っており、ヴォイジャーS7「夢みるホログラム」でのEMHの出来事でしょうか。

◆ラザフォード (現在) がレースで着たユニフォームは、同じくデルタ・フライヤーでパリスとトレスがアンタリア星間横断ラリーに参加した際と同じデザイン (ヴォイジャー シーズン7「愛の危機」)。

◆レース中、ラザフォード (過去) が警告してた通りロミュラン・ウォーバードが登場。中立地帯なだけはあります。

◆ボイムラーは更に、コバヤシマル・シナリオ (映画ST2「カーンの逆襲」) を17回も失敗したことをなぜか叫んでいます。

◆”Remember.” 「思い出した」と、ラザフォード (現在) の顔に手を置く過去のラザフォード (過去)。映画ST2「カーンの逆襲」で、スポックのマッコイに対する「お別れです」のオマージュ。

◆連続で登場したタマリアンのケイション、「コルター、沼で溺れる時」というタマリアン語を披露。

◆ボイムラーが営倉 (拘束室) に入れられるのは初めて。中に落書きがあり、「マリナーの本部」は4回、「ボイムラーのゲストハウス」は1回目のチェックがついています。

◆ラザフォードが見ていた、艦隊1年目の頃の高官のリストにはパーカー提督、Silberger 大佐、Saticoy 中佐がいました。パーカーはシーズン2「ドゥープラーの誘惑」で、パーティに参加していたようです。

◆アバディーンはドサクサに紛れて、タルガナ4号星の骨董品博物館からフェレンギのグランド・ネーガスの杖 (笏) を盗んでいました。DS9シーズン1「宇宙商人フェレンギ星人」など。

出典

公式サイト
TrekMovie.com (レビュートリビア)
TrekCore.com
Memory Alpha