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ディープスペースナイン エピソードガイド
第127話「過去を越えた絆」
Sons and Daughters

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・イントロダクション
壁にもたれかかり、ウォーフとダックスがキスを交わしている。
通信が入った。『シスコよりダックス。』
口を離すダックス。コミュニケーターを叩く。「…はい、大佐。」
『あと 5分で、第375宇宙基地※1に到着するぞ。』
「じゃ転送室で合流します。ダックス、以上。……もう、タイミングが悪いってこういうことよね。行かなくちゃ。」
また二人は口付けをする。離れ、ため息をついた。
ウォーフ:「ジャッジア。あと一つだけ話がある。」
ダックス:「結婚式のことじゃないでしょうねえ。」
「誓いの言葉の後で、マートク将軍にダクタフの短剣を渡すのを絶対に忘れるな。それが一族に加えてくれっていう正式な要請になるんだ。」
あきれるダックス。「彼の一族には入りたくない。」
「何だって?」
「種族同士の争いには関わりたくない。マートクの一族の者が、名誉を汚されたり殺されたりする度に、自分のことは全部後回しにしてすぐにでも復讐に向かわなきゃならないでしょ? そんなのは御免だわ。」
「拒絶するなら、一族への大変な侮辱になる。マートク将軍が理解して下さるとは到底思えない…」
「ウォーフ! 冗談よ。」 抱き合い、笑うダックス。
「なら一族に加わるんだな。」
「当然じゃない。」
「お前とやっていくのは楽じゃなさそうだな。」
「うーん、そうね。だけど飽きないわよ。」
二人は、またキスを始めた。

第375宇宙基地に近づくバード・オブ・プレイ。連邦艦の姿も見える。
クリンゴン人の部下。「基地につなげ。」
マートク※2:「こちらは、I.K.S.ロタラン※3の将軍マートクだ。ドック入りの許可を頼む。」
管制官が応える。『第11ドックへお向かいください…』
大きくため息をつくオブライエンとベシア。
ベシア:「やった。」
オブライエン:「携帯食料が恋しくなるとはな。フリーズドライのモモ※4でも、粉末ニンジン※5でも、動かない食い物なら何でもいいよ。」
「食事なんかより、あの歌だよ。」
「夜中までずっとだ。」
「これ以上名誉の死のバラット聞かされたら、絶対正気じゃいられないね。」 ブリッジを出て行く 2人。
管制官:『…シスコ大佐、任務遂行されたことを、ロス提督がお喜びです。会議室へ転送降下して下さい。すぐ皆さんからの報告を聞きたいと仰っています。』
シスコ:「今向かうと伝えてくれ。」
『了解しました。』 通信を終えた。
「礼を言う。救助に来てくれて助かったよ。」
マートク:「ああ、基地任務に回されて体をなまらせたりするんじゃないぞ。すぐ前線に戻ってこい。」
「将軍、賭けにのるか?」
「面白い、どんな賭けだ。」
「私が将軍より先にディープ・スペース・ナインに戻る方にブラッドワイン 1樽だ。」
笑う 2人。腕を組む。
マートク:「のった。」

クリンゴン・ヴォルチャ級攻撃巡洋艦と並行してワープ航行を行うロタラン。
ウォーフは報告する。「将軍、ヴォーナク号※6から補充兵が到着したとの連絡が入りました。」
マートクは料理を手にした。「ああ…これを見ろ、ウォーフ。ほとんど動きゃしない。新鮮なガフが食えるなら、見える方の目と代えてもいい。補充兵は何名だ。」
「5名です。」
「5名だと? ヘ! 15 要請したのに。」
「タナス将軍※7は 5名しか回せないと。」
ため息をつくマートク。「退却に継ぐ退却。ドミニオンはますます侵攻してくる。なあウォーフ、戦争ってのは勝っていなきゃ面白くもなんともない! 負けるたびに古傷が痛むんだ。」
クリンゴン人が指示する。「パトレ プン ティル・タ!」 部屋に戦士たちが入ってきた。
マートク:「ああ、補充兵か。」
5人のクリンゴンが並んだ。
マートク:「うむ、俺が将軍のマートクだ。ロタランへよく来た。立派な戦士となり、この船の名を高めてくれ。帝国の歴史において、この戦いは栄光となる。歴史がお前たちの血で記されるのだ。立派に戦えば、お前たちを褒め称える歌が、千年受け継がれる。負ければ、歌を唄う者もなく、名誉もなく、帝国も失われる。お前たちを栄光へ導く戦士の雄たけびが聞こえるか!」 一番右にいる若いクリンゴン人は、ウォーフを見ている。
手を挙げるクリンゴンたち。「カプラ!」 「カプラ!」
ウォーフ:「帝国に命を捧げる者。名を名乗れ。」
順番に名乗っていく。「ンギャレン※8! チュデック※9の娘。」
「カトフ※10、チュポック※11の息子。」
「コス※12! ラーナ※13の息子!」
「ドゥラン※14! ウマーの娘。」
「…アレキサンダー・ロジェンコ※15。」
ウォーフ:「アレキサンダー?」
マートク:「ロジェンコ? ロジェンコとはどの一族だ。」
アレキサンダー:「家族はありません。…我が名誉は我がものです。」
「うーん。今後名誉を得る機会は数多くあるだろう。全員にチャンスはある。お前たちの命は俺が預かる。帝国と諸君に栄光を。」
ウォーフ:「イー・ゴム・ハー※16!」
5人のクリンゴン人は出て行く。
マートク:「アレキサンダー・ロジェンコだが、知ってるのか?」
ウォーフ:「……私の息子です。」


※1: Starbase 375
カーデシア領近くに位置する基地。DS9第125話 "A Time to Stand" 「明日なき撤退」より。今回は「第」がついています

※2: マートク将軍 General Martok
(J・G・ハーツラー J.G. Hertzler) DS9 "A Time to Stand" 以来の登場。声:大山高男

※3: I.K.S. Rotarran
クリンゴン・バードオブプレイ。DS9第119話 "Soldiers of the Empire" 「我らクリンゴン」より。I.K.S.は帝国クリンゴン艦 (Imperial Klingon Ship) の略

※4: peach

※5: carrot

※6: Vor'nak

※7: General Tanas

※8: N'Garen
(Gabrielle Union) 声:亀井芳子

※9: Tse'Dek

※10: Katogh
エキストラ

※11: Ch'Pok
クリンゴン帝国の戦士。DS9第90話 "Rules of Engagement" 「裁かれるウォーフ」に登場

※12: Koth
エキストラ

※13: Larna

※14: Doran
W'mar の娘。エキストラ

※15: Alexander Rozhenko
(マーク・ウォーデン Marc Worden) ウォーフとケーラーの息子。TNG第173話 "Firstborn" 「クリンゴン戦士への道」以来の登場。俳優は初登場の TNG第81話 "Reunion" 「勇者の名の下に」のジョン・スチューヤ (Jon Steuer、声:亀井芳子)、TNG第110話 "New Ground" 「新ワープ航法ソリトン・ウェーブ」以降 TNG 全てのブライアン・ボンソール (Brian Bonsall、声:高山みなみ)、TNG "Firstborn" のケムター=未来のアレキサンダー役のジェイムズ・スロヤン (James Sloyan、声:郷里大輔) に続き、4人目。声:楠見尚己

※16: yih-Ghom-HAH
「解散 (dismissed)」

・本編
テロック・ノール。
クワークの店の 2階で話すキラ。「次に必要なのは、ベイジョーにいる連絡員との安全な通信方法ね。」
オドー:「うーん、どうかな、カーデシアの連中は違法亜空間通信の出所を突き止めることにかけては一流ですから。」
「なら、奴らの上をいけばいいだけのことよ。」
「ふーん。」
ジェイクが椅子を置く。「やあ。座っていいですか?」
「ハ、もう座ってるだろ?」
「入りたいんです。」
「一体何にだ。」
周りを見るジェイク。「レジスタンス組織です。」
キラ:「何のこと?」
「やめて下さい。情報はつかんでます。」
オドー:「それは頼もしいな。」
「手伝います。」
「どうやって。」
「ここのいろんな話が耳に入ってくる。記者ですから。」
キラ:「ゴシップとか?」
「あー…あーキラ少佐、チャンスぐらいくれたっていいでしょ。」
クワークがやって来た。「時間っすよ、少佐。」
キラ:「あー…もうなの。」
「14時57分だ。あと 3分でシャトルが到着する。」
「もう行かないと。待たせると面倒だから。」
ジェイク:「へー。デュカットは今も戻る度に少佐に出迎えされるんですか。」 キラはジェイクを見る。「……いろいろ耳に入るって言ったでしょ。」
クワーク:「なあ、正装の軍服に着替えなくていいのか? …いや、そのままでいい女だけどな。」
そのままで歩いていくキラ。
ジェイク:「ねえ、入れてくれるんですか?」
オドーも去っていく。
クワーク:「お前は関わり合いにならない方がいいな。だが、もしも暇でしょうがないってんなら、ウェイターとして雇ってやる。」
ジェイクはため息をついた。

ジェムハダーが通るエアロック前で、キラは待たされている。ドアが開き、デュカット※17たちが降りてきた。
デュカット:「やあ、キラ少佐。今日も出迎えありがとう。」
ダマール※18:「お前、略装で来たのか。ベイジョー人は礼儀ってものがなってないなあ。」
「ダマール、よさないか。戻ってホッとするこの時を台無しにするな。少佐にプレゼントがあるんだよ。」
ダマールの後ろに、女性がいた。「ネリス!」 笑うトーラ・ジヤル※19
キラ:「ジヤル!」 抱き合う 2人。
「久しぶりね、元気にしてた?」
「ここで何してるの? ベイジョーにいるはずでしょ?」
デュカット:「しばらく大学を休むように説得して連れてきたんだ。」
「無理やり連れてきたの?」
ジヤル:「いいえ。私も来たかったから。今夜食事しない? 話したいことがいっぱいあるの。」
「いいわ。」
デュカット:「よし、決まりだ。22時に私の部屋で和やかに食事しよう。」
「ちょっと待って、あなたと一緒…」
ジヤル:「あなたに会えなくてほんとに寂しかったわ。」
デュカット:「行くよ、ジヤル!」
「それじゃ、今夜。」
「わかった。」 キラは浮かない顔をする。

ロタラン。
ウォーフ:「お呼びですか、将軍。」
マートク:「ああ、ついに命令が下った。ドナトゥ5号星※20へ向かう船団の護衛につくぞ。」
「これまで 3度ジェムハダーに全滅させられていますよ。」
「だから俺たちが成功させるんだ。」
「護衛艦は何隻つくんですか。」
「最高評議会はロタランしか出せないと言っている。重要な任務だ。成功の確率は低く、敵は冷酷無比。これ以上の好条件があるか? ハ、そうだろウォーフ。力がみなぎってきたよ。任務の概要だ。すぐに戦闘訓練を始めろ。連中をしごいてやれ。」
「船団と合流するまでには、全員ノーピン・ファルコン※21並みに敏捷にしてみせます。」
「お前に任せた。…ウォーフ、ちょっと待て。俺たちは共に血を流し、ジェムハダーのもとから共に逃げもした。※22お前は俺の一族に命を捧げると誓った。※23なのに一度も息子がいるなどと聞いたことがなかった。」
「その件は…大変話しにくい…ことですので。」
「それだけは俺にもわかったよ。」
「……息子とはずっと会っていませんでした。母親※24は半分クリンゴンで、クリンゴンの伝統を嫌っていたんです。」
「なるほど。その女に息子を育てさせたのか。」
「母親は息子が幼い頃に亡くなりました。その後息子はエンタープライズで暮らしましたが、結局地球の私の養父母※25のもとに送ったのです。」
「なぜだ。」
「アレキサンダーは、クリンゴンの戦士には、なりたくないといいました。悩みましたが、受け入れました。そしてほかの道を探させようとしたんです。」
「ではなぜクリンゴン防衛軍へ入隊した。」
「わかりません。まだ話していませんので。」
「……それはよくないな。父親と息子が話さないのは、問題があるということだ。」
「将軍、この問題は必ず解決してみせます。」
「ああ、そうしろ。」
出ていくウォーフ。

アレキサンダーが幼い頃の、自分と一緒に映った写真を見るウォーフ。チャイムが鳴る。「入れ。」
アレキサンダーだ。「ベク※26・アレキサンダー・ロジェンコです。お呼びでしょうか。」
「大きくなったな。」
「そう言われます。」
「祖父母はどうしてる。」
「最後に会った時には、元気にしていました。」
「入隊のことを知っているのか。」
「喜んではいませんでしたが、決意は固いと知ってあきらめたようです。いつものように、応援してくれました。」
「長いこと会ってないのはわかってるが、父と息子として話をしよう。」
「俺は父親に会うために来たんじゃない。帝国に尽くすために来たんです。」
「最後に話した時、お前の選択肢にそんなことはなかったはずだ。」
「それはご存知のように、大昔のことです。」
「……私を喜ばせようとしてか。」
「そんな考えはよぎりもしませんでしたよ。……少佐、それよりこの会話は…私の船での任務と関係があるのでありますか。」
「戦士の振りをするのはやめろ! 本気じゃないことはわかってるんだ。どんな覚悟がいるかは聞いたな。お前にはその倍努力してもらうぞ。そのつもりでいろ。」
「…もちろんです。」
「下がっていい。」
部屋を後にするアレキサンダー。


※17: ガル・デュカット Gul Dukat
(マーク・アレイモ Marc Alaimo) DS9 "A Time to Stand" 以来の登場。声:幹本雄之

※18: Damar
(ケイシー・ビッグス Casey Biggs) 同じく DS9 "A Time to Stand" 以来の登場。声:古田信幸

※19: Tora Ziyal
(メラニー・スミス Melanie Smith) ガル・デュカットとトーラ・ナプレムの娘。DS9第124話 "Call to Arms" 「DS9撤退の日」以来の登場。声:高田由美 (継続)

※20: Donatu V
惑星。クリンゴンと連邦が戦った「ドナトゥ5号星 (ドナテュー5号) の戦争 (Battle of Donatu V)」が TOS第42話 "The Trouble with Tribbles" 「新種クアドトリティケール」で言及

※21: Norpin falcon
ノーピン (ノルピン、Norpin) は TNG第130話 "Relics" 「エンタープライズの面影」で言及された星系

※22: DS9第113話 "By Inferno's Light" 「敗れざる者(後編)」より

※23: DS9 "Soldiers of the Empire" より

※24: ケーラー (K'Ehleyr) のこと。TNG第46話 "The Emissary" 「愛の使者」などに登場

※25: セルゲイ&ヘレナ・ロジェンコ (Sergey & Helena Rozhenko) 夫妻のこと。TNG第76話 "Family" 「戦士の休息」など

※26: bekk
クリンゴン防衛軍の下士官階級

テロック・ノール。
チャイムが鳴る。
「どうぞ。ネリス、早いわ。ラムフタ※27を作ってるところよ。」 テーブルを準備しているジヤル。
キラ:「ジヤル…悪いけど一緒に食事はできないの。」
「そんな…。父が一緒だからね。」
「ええ、そう。」
「……思い直してくれたのなら、いいのにって思ってた。」
「ジヤル、あなたどうして基地へ戻ってきたの。」
「ごめんなさい、怒らないで。ベイジョーで暮らせるようネリスが手を尽くしてくれたのはわかってる。がんばったのよ、精一杯努力したわ。」
「別に怒ってなんかいない。ただ…わからないだけよ。何があったの。」
「……理由はいろいろよ。大学の学生たちは、直接は…親切だった。でも廊下では遠くから私を見て、ヒソヒソ言ってた。ガル・デュカットの娘ですもの。私の父が選ばれし者たちに戦争を仕掛けてるのよ。やっていけると思ったのが間違いだったの。私にとって故郷と呼べるものはこのステーションしかないの。あなたがいるし、父もいるから。」
「前は彼に反抗してたじゃない。あなたを見殺しにしようとしたのよ。」
「そのことは話し合ったわ。父も悪かったって謝ってた。父には家族の忠誠が大切で、私が裏切ったと思ったのよ。」
「あなたが裏切ったですって? それは完全に逆なんじゃないの?」
「私も父も、前のように戻りたいの。許してあげるべきだと思うわ。あなたのほか、父しかいないもの。だから今夜は私たち 3人で食事がしたかった。大切な 2人に早く話したいことがあったから。…でもやっぱり無理なのね。」
キラは立ちあがった。「ああ…。食事ね、いいわ。でも楽しくなるとは保証できないわよ。」
「あ…父には行儀よくさせるから。」
手で合図し、出て行くキラ。ジヤルは喜ぶ。

ロタランは貨物船の船団に合流した。
クリンゴン人たちがたくさんいる食堂で、アレキサンダーはレプリケーターから取り出した料理を持つ。樽からブラッドワインを汲んだ。
クリンゴンのチュターク※28が笑っている。テーブルに近づくアレキサンダーに気づいた。
咳をするアレキサンダー。「ここは空いてますか?」
チュターク:「アレキサンダー・ロジェンコか。お前のために空けといたんだ。」
「光栄です。」
「それは、こっちだ。」 椅子を用意するチュターク。他のクリンゴンも 2人の様子に注目する。「座れよ。ブレギットの臓物※29か? うまい物を知ってるな。グラポクソース※30も試してみるか。」
席についたアレキサンダー。「いいえ、結構です。」
「そう言わずに試してみろよ。もっと、うまくなるぞ。」 笑うンギャレン。無作法にソースを注ぐチュターク。
「もういいです。すみません。」
「ブラッドワインで流し込むか。」 食堂のクリンゴン人も笑う。
「何がおかしいんです。」
「何がだって? 誉れ高き我らが副長の息子は、地球の飲み物がお好みらしい。ルートビアの方がな。しかもアイスクリーム※31入り。ふーむ。」
「馬鹿にする気か。」
「馬鹿にするわけがないだろう。ウォーフの息子。」
「俺の家の名はロジェンコだ。」
「誰だろうと俺は俺の好きなように呼ぶんだ。ここへ来た以上慣れるしかないだろうな。」 大きく笑い出す。
料理を持って立ちあがるアレキサンダー。
「宇宙艦隊精鋭士官殿の息子は、俺たち下々とは飯も食えないか。」
「食うさ…分けてやるよ!」 アレキサンダーは皿の料理をチュタークの顔にぶちまけた。勢いで椅子から床に倒れるチュターク。
笑うアレキサンダー。
「そのニヤケた顔が気に入らん。俺が削ぎ落としてやる。綺麗にな。」 ナイフを取り出す。
アレキサンダーもダクタフを向ける。
笑うンギャレン。「まずいんじゃないの?」
戦いが始まった。殴られるアレキサンダーだが、すぐに立ちあがってナイフを振り回す。だがまた殴られ、飛ばされる。
チュターク:「ハ、フェレンギ並みのヘナチョコだなあ。」
他のクリンゴン人が、アレキサンダーを無理やり戦いに戻す。
ウォーフがやって来た。
アレキサンダーのナイフが、チュタークをかすめた。
チュターク:「シャク・ター!」
アレキサンダーはナイフを無闇に振りまわすが、チュタークに殴られて倒れる。
チュターク:「どうやら戦闘訓練はずっとサボっていたようだな、坊や。」
慌てて落としたナイフを手にするアレキサンダー。
「どうだ、俺が鍛えてやろうか。二度と忘れられないようにな。」
ウォーフは、チュタークの振り上げた腕をつかんだ。「もういい。」
まだナイフを下ろそうとするチュタークを、殴り倒すウォーフ。
立ちあがるアレキサンダー。「あんたに邪魔する権利はないだろ!」
ウォーフ:「2人とも医療室へ行ってくるんだ。今すぐな! そこで治療が済んだら、次の勤務時間まで自室で謹慎していろ。残りの者は自分の部署に戻れ! 行け!」
食堂を出ていくクリンゴン。アレキサンダーもウォーフを見た後、去った。
去る前にチュタークは言った。「ジェムハダーが襲ってきた時も、代わりに戦ってやるんですか。」


※27: ramufta

※28: Ch'Targh
(Sam Zeller) 声:廣田行生

※29: ブレギットの肺 bregit lung
伝統的なクリンゴン料理。TNG第34話 "A Matter of Honor" 「錯綜した美学」より

※30: grapok sauce

※31: ice cream

テロック・ノール。
紙に描かれた花の絵を見ている。
ジヤル:「ヴェデク・ネーン※32からよく言われたわ。表したいもののイメージに集中しろって。絵筆をとる前に、頭の中で熟成させるんだって。……ねえ、どう思う?」
キラ:「もう…すごく綺麗。」
「気に入った?」
「ええ、ヴェデク・トペック※33の初期の作品に近いわ。」
ジヤルを挟んで反対側に座っているデュカット。「面白いものだね。私はナパート・マルア※34のスタイルに通じるものがあると思ってたんだよ。カーデシアでヴァラナン派※35の始まりと言われている、あの画家だ。」
ジヤル:「カーデシア美術学院※36の学長も、そうおっしゃってたわ。」
「お前、学長と話したのか?」
「絵を何枚か送ってみたの。」
「どうして言わなかったんだ。それなら直接会う機会を作ってやったのに。」
「わかってる。自分の力でやりたかったの。才能があるって言われたわ。」 笑う 3人。「学院で来月若手アーティストの展覧会があるの。出品できるかもしれない。」
キラとデュカットは喜ぶ。「おお!」
デュカット:「素晴らしい。」
ジヤル:「ベイジョー人もカーデシア人も、根本は同じだってこと見せるチャンスだと思って。私の絵を通してみんなに…わかってもらいたいの。」 キラとデュカットの笑みが消えた。「子供じみたこといっちゃった。」
デュカット:「とんでもない、ジヤル。」 娘の手にキスをする。「私は感動したよ。」
「…デザート入りそう?」
「ああ。」
キラ:「逃げたりしないわ。」
「そう。」 準備にしにいくジヤル。
デュカットはキラの隣に座った。
キラ:「あんな彼女、初めて。何だかこう…ものすごく…」
デュカット:「幸せそう?」
「ええ。」
「私も初めてだよ。」
「ついに見つけたみたいね。才能と、自分の道。」
「認めたくはないんだが、あの子…ベイジョーへやってくれて良かったよ。」
「私も嬉しい。」
「私とは、ほとんど目も合わせてはくれないが、娘にはとても大切な親友だ。本当に、感謝している。」
絵を見るキラ。

護衛中のロタランは、遮蔽状態に入った。
マートク:「護衛任務で一つだけ、どうにも我慢できんことがある。待つことだ。いつ来るかわからん敵を、待ち続けなきゃあならんからな。ハ、飲め。この緊張を解くには、ウォーノグ※37をジョッキであおるのが一番だ。」 ウォーフと乾杯する。「殴り合いでもいいが。」
ウォーフ:「食堂の件、聞かれましたか。」
「ああ。だが副長の報告はない。息子が来てから、奴は様子がおかしくってな。」
「止めたのは間違いだとおっしゃるんですか。」
「うーん。息子が叩きのめされるのを、ただ黙って見ているのは、ま難しいだろうがな。」
「アレキサンダーが敵う相手ではありません。殺されていたかもしれない。」
「ああ、チュタークも大人だ。骨の 2、3本も折ったかもしれんが、それ以上はせんだろう。アレキサンダーは戦士になることを嫌がっていたらしいが、どうやら気が変わったようだな。ウォーフ、お前は奴の上官だ。生きる術を仕込んでやれ。ジェムハダーは決してチュタークほど情け深くはないぞ。」
通信が入った。『戦闘配置、第1警戒体制。艦長、ブリッジへ。』

ブリッジに入るマートク。「報告しろ。」
アレキサンダー:「ジェムハダーの攻撃機、方位 1-7-0、マーク 0-4-5 です。敵の射程距離内に入るまで…22秒です。」
「スクリーンへ。」 だが、何も映らない。「どこだ。」
ンギャレン:「センサーに機影はありません。マニュアルにスイッチ。」
ウォーフ:「メインセンサーを武器制御に迂回させろ。」
アレキサンダー:「了解。ジェムハダー、魚雷 2発発射しました。」
「どこを狙ってる。」
「ロタランです。被弾まで、あと 10秒です。」
マートク:「遮蔽解除。シールドアップ、回避行動だ。」 ブリッジが少し明るくなる。
「魚雷はまだ本艦をロックしています。被弾まで、あと 4秒です。3…」
「衝撃に備えろ!」
「2、1!」
構えるブリッジのクルー。だが全く衝撃は伝わってこない。
ウォーフはおもむろにコンピューターを操作した。「メインセンサーを再起動させろ。」
アレキサンダー:「センサー、再起動しました。……ジェムハダーの船が消えました。」
「消えて当然だ。センサーの戦闘シミュレーションの削除を忘れていただろう。」
笑みを浮かべるチュターク。
マートクはため息をついた。「警戒体制解除。コースを元に戻せ。遮蔽装置再起動。」
チュタークはアレキサンダーに近づいた。「おい、油断するなよ。ほかにもまだ危機一髪のシミュレーションが残ってるかもしれないからなあ。」 笑うンギャレン。
ウォーフを制するマートク。「まあいい。二度と同じ間違いは犯すまい。このぐらいあった方が、気が引き締まってかえっていいだろう。」
チュターク:「お前がいる限り、気が抜けないな。」 まだ笑っている。
それにつられ、アレキサンダーも笑い出す。
マートク:「見てみろ。奴らも受け入れている。」
ウォーフ:「それはこの船の道化としてですよ。」


※32: Nane

※33: Topek

※34: Napart Malor

※35: Valonnan school

※36: Cardassian Institute of Art

※37: warnog
クリンゴン・エール。TNG第149話 "Rightful Heir" 「クリンゴン神カーレスの復活」より

テロック・ノール。
「最後に、もう一度だけ言わせて頂きたい。」 デュカットがカーデシア人やベイジョー人の前で、演説している。「カーデシアから今回は、ベイジョー星に 15 の工業用レプリケーターを贈るわけだが、これは二つの種族が今後迎える、強調と思いやりの時代の先駆けとなることだろう。」 キラも列席しているが、他の者のようには興味はないらしい。「平和と繁栄の新たなる時代へと、手を取り合い、向かっていこう。ドミニオンの同盟国として。」 キラ以外の列席者から、拍手が起こる。「どうも、ありがとう。以上だ。」
呼びとめるデュカット。「ああ、キラ少佐。話があるんだが、いいかな? 聞いたか? カーデシア美術学院が、展覧会でジヤルの絵を 3点も出品させてくれるらしい。」
キラ:「ほんとに? すごいわ、彼女喜んでるでしょう。」
「あの子のお祝いをしたいんだが、今夜私の部屋に来てくれるかな?」
「何時に?」
「ああ…21時30分だ。特に何も入らなければね。」
キラは冷たい顔で言った。「占領時の独裁でお忙しくてらっしゃるから。」
笑うデュカット。

ウォーフは斧状の武器を持っている。「これはカーターキン※38だ。ジェムハダーが好んで使う。バトラフを構えろ。」 言われた通りにするアレキサンダー。「違う。そんな握り方じゃない。両手を逆に向ければ、ひねりのある動きの時に…」
アレキサンダー:「わかってる。」
「ではやってみろ。」
組み合う 2人。
ウォーフ:「違う! 無理やり押し返そうとするんじゃない。脇にそらし、勢いを使って反撃するんだ。」
アレキサンダー:「知ってる!」
「ならそうしろ。」
また組み合うが、ウォーフが注意する。「違う。力に力で戦おうとするな。それでは必ず負けるぞ。」
結局、バトラフが宙を舞った。
ウォーフ:「…聞いていなかったのか。…早く拾え! 子供の頃教えたことを練習し続けていれば、今ごろ体に染み付いていたはずだ。」
無闇に切りかかるアレキサンダー。またもバトラフが飛ばされた。
ウォーフ:「お前は一体何がしたいんだ!」
アレキサンダー:「きっとこうなると思ってた。」
「何がだ。」
「面白いんだろ。クリンゴンの戦士にはなれないってののしれて。」
「アレキサンダー。」
「それともまた俺をどっかへやる気なのか。」
「ホロスイートのシミュレーションじゃない、これは戦争だ。ジェムハダーに八つ裂きにされるぞ。」
「なら死ぬだけのことだよ。そうなれば嬉しいんだろ? もうほっといてくれよ!」
ウォーフは出ていった。アレキサンダーはバトラフを取る。

テロック・ノール。
チャイムが鳴る。
キラ:「どうぞ。」
ダマールが入った。
「何の用よ。」
ダマール:「ガル・デュカットからだ。俺が届けたら、お前が面白がると思われたらしい。」
「何なの?」
「プレゼントだ。パーティのためのな。」 憎々しい顔をして、出ていくダマール。
中を開けると、ドレスが入っていた。キラは喜び、鏡の前へ行って体に合わせてみる。
だがふと我に返り、ドレスを投げ捨てるキラ。「何してるんだろう。」

キラはプレゼントの箱を持ち、廊下を歩いている。部屋のドアチャイムを押した。
「入れ!」 デュカットはジヤルの絵を見ていた。「ああ、キラ少佐! 訪ねてくれるとは珍しい。さあ、入って。」
箱を無造作に置くキラ。
デュカット:「気に入らなかったかな?」
キラ:「ドレスはいいけど、あなたがね。」
ため息をつくデュカット。「少佐、そんなことはないはずだよ? 私たちは引かれあってる。」
「まさか。夢でも見てるのね。あなたみたいに日和見で、権力欲の強い独裁者と、これ以上関わりたくないの。」
「そんな風に言うのを聞いたら、きっとジヤルが悲しむだろうな。」
「彼女はもう大人よ。」
「ネリス、頼む座ってくれ。話し合おうじゃないか。」
「いいえ、御免だわ。」
「ネリス。ネリス!」
振り向こうともせず部屋を後にするキラ。デュカットはあきらめた。プレゼントを手に取る。
隣の部屋から、ジヤルが出てきた。「誰だったの?」
デュカット:「配達だよ。…お前にプレゼントがあるんだ。今夜のパーティで着たらどうかと思ってね。気に入ったか?」
ドレスを見て笑うジヤル。「すごく素敵…ああ…優しいところもあるのね。」
「まあね。」

アレキサンダーは独りで訓練している。
だがバトラフを取り落としてしまった。
部屋に入る者がいる。マートクだ。「続けろ。」
またバトラフを落とすアレキサンダー。マートクが拾った。「フン、歯は鋭くバランスもいい。だが結局は、扱うものの腕が、肝心だからな。」
アレキサンダー:「練習すれば大丈夫です。」
「なあ、アレキサンダー・ロジェンコ。なぜ俺の船に来た。」
「帝国に尽くすためであります。」
「それは建前で本心じゃあない。何を考えているのか言ってみろ。」 胸を指すマートク。
「全員にその質問をなさるんですか。」
「そんな必要はないさ。顔さえ見れば志願した理由がわかるからな。クリンゴンの戦士だからだ。カーレスの神命に応じた。」
「私もです。」
「フーン、自分に嘘をつくのは構わんが俺にはよせ。お前に戦士の呼び声は聞こえない。もう一度聞く。なぜここにいる。」
「言いたくありません。」
「何だと?」
「個人的な理由ですから。」
「うーむ…。父親に似て、口の固い奴だ。」
「私はあんな男に似ていません!」
「ああ…いつまでも下らんカヴァトゥーラ※39はよさんか。父親はこの船に必要だが、お前はここに必要ない。」
「お願いです、チャンスを与えて頂きたいだけなんです。」
「今与えたチャンスを、お前はふいにした! 父親からお前を配置換えするよう要請があった。」
「何の権利があってそんなことを!」
「権利は十分過ぎるほどあるだろう! お前の上官として、そして父親としてな。23時17分、お前を貨物船パートク※40に配属する。荷物をまとめろ。」
応えないアレキサンダー。
「行くんだ。」
アレキサンダーは出ていった。

テーブルにナイフを突き刺すアレキサンダー。ウォーフが座っている。
立ちあがるウォーフ。「私が父親で運が良かったな。もしほかの者にこんな真似をしたら、お前は今ごろ死んでいるぞ。」
アレキサンダー:「俺を船から追い出したいなら、殺してからにしろ。」
「アレキサンダー、お前を傷つけたいんじゃない。守りたいからだ。」
「だから追い出すのか。あんたはこれまで俺を遠ざけることしかしてない!」
「私はクリンゴンの戦士なんだ! 戦士として生きてきた。お前には別の生き方がある。そう言ったのはお前自身だ。だからそれを受け入れようとした。」
「父親だといいながら、5年もの間、会おうとも連絡しようともしなかった。期待に添わない息子だから、息子なんかいないと思おうとしたんだ。息子だなんて認めてない。…だから捨てたんだ。」
マートクの通信が入った。『戦闘配置につけ! 第1警戒体制!』※41 警報が響く。
ウォーフはアレキサンダーにナイフを返した。すぐに向かう。


※38: kar'takin

※39: qu'vatlh
クリンゴンの動物なので、この訳はちょっと変かも。「2人とも頑固だ、退屈なカヴァトゥーラめ」あたりが適当でしょうか

※40: Par'tok

※41: マートクの声のはずですが、吹き替えではクリンゴン人士官になっています

ジェムハダーの船が貨物船を攻撃している。ロタランが撃破したが、ロタラン自身も後ろの船に攻撃されている。
アレキサンダー:「船尾スラスター部分の火災は収まっています。シールドは 60%。」
ンギャレン:「ELN と TRC、ダウンです!」
マートク:「敵機の被害は。」
アレキサンダー:「どの敵機ですか。」
ウォーフ:「撃ってきてる奴だ!」
「船尾シールド、25%にダウン。いえ、20%。そ、それと右舷エンジンにダメージあり、反陽子を…失いつつあります。」
マートク:「砲撃手、そのエンジンにロックオンしろ。一斉放射だ!」
コンソールの爆発がアレキサンダーを吹き飛ばす。
ンギャレン:「ターゲット、ロック不能。マニュアルにスイッチ。」
マートク:「操舵手、座標 3-1-7、マーク 0-4-5 に前進。砲撃、まだ撃てないのか!」
「攻撃不能、射程外です。」
立ちあがったアレキサンダー。「艦内通信システム、ダウンしました。」
マートク:「コース変更、0-2-0、マーク 7。」
「第5デッキの燃料噴射装置から、プラズマが漏れています。亜空間トランシーバーアレイ、ダウンしました!」
「ウォーフ! プラズマ漏れを何とかするんだ。第5デッキが使えなくなる。」
爆発で倒れるクリンゴン人たち。
マートク:「状況は。」
ンギャレン:「噴射装置の温度、危険レベルです。間もなく爆発します。」
アレキサンダー:「漏れを止めてきます。」 ウォーフが見る。「ここにいても、役に立たないし。」
チュターク:「俺が一緒に行ってきます。噴射装置の爆発を食い止めるには、少なくとも 2人は必要だ。」
アレキサンダーに命じるウォーフ。「行け。」
うなずくアレキサンダー。チュタークも向かう。
マートク:「機関室。非常用パワーを全部ディスラプターに回せ。オーバーロードのシステムを切り離せ。」 ウォーフはアレキサンダーを見送った。「ウォーフ、船をジェムハダーの右舷方向に回せ。砲撃手、ダメージのあるエンジンを狙い続けろ!」
ジェムハダー船を追いながら、別の船に攻撃されるロタラン。前の敵船を攻撃し、右舷ナセルを吹き飛ばした。爆発する。
マートク:「操舵手、合図したら減速だ。通常エンジンを 3分の 1 にパワーダウンしろ。船をコース 3-5-5、マーク 0-9-0 へ回すんだ。砲撃手、ジェムハダーが前へ出てきたら撃て。」
ウォーフ:「コース、セットしました。」
ンギャレン:「砲撃、スタンバイ。」
マートク:「今だ。」
急速に減速するロタラン。通過したジェムハダー船を攻撃し、撃破した。
マートク:「よくやった。」
ウォーフ:「艦長、ブリッジを離れる許可を下さい。」
「よし。」
すぐに向かうウォーフ。
マートク:「警戒体制を解くんだ。ンギャレン、操舵を代われ。」

第5デッキに入るウォーフ。「報告しろ。」
チュターク:「燃料噴射装置の漏れは、食い止めました。」
「息子はどこだ。」
「通路に閉じ込められています、少佐。噴射装置を修理し終わった後、道具を片付けに行かせたんですが、どういうわけか、奴が非常遮断装置を作動させたんです。今開けようとしているところです。」 チュタークが道具を使い、ドアが開いた。
咳をしながら出てくるアレキサンダー。
ウォーフ:「間違えて閉めたのか?」 チュタークたちが見る。
アレキサンダー:「ええ、そうです。」 笑い出す部下たちを、ウォーフは睨んだ。
息子の肩に手を置くウォーフ。「来い。」
アレキサンダーは微笑んだ。2人は出ていく。

テロック・ノール。
廊下を歩いていたキラを呼びとめるジヤル。「ネリス。…夕べパーティに来てくれなかったのね。」
「ごめんなさい。行けなかったの。なぜかはわかるわね。」
「2人のどちらかを選べなんて言わないで。」
「そんなこと言わない。彼はあなたの父親なんだから。」
無言のジヤル。キラは歩いていった。

ロタラン。
ウォーフ:「過去の過ちを取り消すことはできない。だが、今日これからは約束する。いつもお前を見守る。」
アレキサンダー:「それは様子を見ないと。
「ああ、そうだな。今からお前がやることには、大変な義務が伴う。軽く考えるなよ。」
「よくわかってる。それでもやるよ。」
「よし。戦士に必要なことは全て私が教えてやる。父親に必要なことはお前が教えてくれ。」
微笑むアレキサンダー。
「来い。」 2人は歩いていく。

クリンゴンの紋章がついた、小さな箱。ろうそくが炊かれた部屋で、箱が開けられる。中には記章が入っており、それを容器の中央に置いた。クリンゴン語で唱えるマートク。「マートク デク、トゥ・ジューク デク、バト・レフ デク、マト・レ デク※42。」
ウォーフと共に言う。「マートク デク。」
ウォーフ:「アレキサンダー。ヴィノブ ダク・タフ。」
自分のナイフをマートクに渡すアレキサンダー。
マートク:「ワチカ イーワ、ワチカ ココー・ダ※43。」 ナイフで手を傷つけ、その血を容器に入れる。
次にナイフをウォーフに渡すアレキサンダー。
ウォーフ:「ワチカ イーワ、ワチカ ココー・ダ。」 同じように手を切る。
最後にアレキサンダー。「ワチカ イーワ、ワチカ ココー・ダ。」 血をたらした。
マートクは液体を容器に注ぎ、ろうそくの火をつけた。炎で焼かれる。
アレキサンダー:「マト・レ ギー・ヘフ。」
マートク:「ダー!」
アレキサンダーは容器から記章を手に取った。それを左腕につける。
マートク:「お前を、マートク家へ迎える。アレキサンダー、ウォーフの息子。」
ウォーフはアレキサンダーを見る。息子も父親を見ていた。


※42: Martok degh, tu-Duq degh, bat-LEH degh, mat-LEH degh
「マートクの記章、勇気の記章、名誉の記章、忠誠の記章 (Badge of Martok, badge of courage, badge of honor, badge of loyalty)」という意味。トゥ・ジューク=勇気、バト・レフ=名誉、マト・レ=忠誠

※43: wachk ihw, wachk kkor-duh
「一つの血、一つの家 (one blood, one house)」

・感想
TNG 以来になるアレキサンダーの登場です。俳優は変わっていますが、それでも昔の 2人の関係が思い起こされて、長いシリーズならではの魅力ですね。これまで DS9 ではアレキサンダーがセリフに出てきたことはありますが、実際の登場をドミニオンとの戦争中という緊迫した状況の中でもってくるのが太っ腹というか…。
ストーリーの流れ的には脇という感じですが、すぐに戦争を解決させる必要は全くないわけで。単なる連続話ではなく、各話の趣が違っているのが良いです。クリンゴン主体の話は好き嫌いは分かれるでしょうが、もはや ST には欠かせないものですねえ。
もう一つの原題の要素「娘」=ジヤルは、ジヤル自身よりもデュカットとの板挟みになるキラがいい味を出しています。


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