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ヴォイジャー 特別エピソードガイド
第109話「ボーグ暗黒フロンティア計画」(前)
Dark Frontier, Part I

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・イントロダクション
※1『船影を探知。ユニマトリックス 4-2-4、グリッド 1-1-6。起動せよ。』
ボーグがアルコーヴで目を開いた。集合体の声が聞こえる。『インターセプトコースを取れ。』
多数のボーグが行き交う船内。一人のボーグがコンピューターを操作する。ディスプレイにヴォイジャーが映し出された。『船籍確認。宇宙艦隊。イントレピッド級。生命体、143名※2。同化の準備に入れ。』

箱型をしたボーグ艦が、ヴォイジャーの後方から近づく。ディスプレイにヴォイジャーのブリッジが表示された。『我々はボーグだ。お前たちを同化する。抵抗は無意味だ。』
応えるジェインウェイ。『追跡を中止しないと攻撃します。』
『無意味だ。』
『そう? スキャンしたんでしょ? 兵力はほとんど互角。』
『お前たちを同化する。』
ヴォイジャーにボーグのエネルギー兵器が続けざまに浴びせられる。フェイザーで反撃するヴォイジャー。
爆発が起こるボーグ艦内。『全員シールドマトリックスを修復。武器を再設定。』 作業にかかるボーグたち。
突然、ボーグ艦内に何かが転送されてきた。警報が鳴る。『非常事態。艦隊の光子魚雷。作動停止せよ。』
ボーグが魚雷の容器に近づき、ふたを開ける。内部の赤いエネルギーランプが全て点灯した。それと同時に爆発を起こす。吹き飛ばされるボーグ。そしてボーグ艦は木っ端微塵になった。
ヴォイジャーにも衝撃が伝わる。チャコティがセブンにいう。「兵力を奪うだけだったろ。」
「爆発がパワーマトリックス付近だった。連鎖反応が起きたらしい。」
ジェインウェイ:「生存者は?」
トゥヴォック:「ゼロです。」
「残骸の状況は?」
キム:「無傷のコンポーネントは、ごくわずかですね。」
「回収作業を始めて。」
チャコティ:「艦長。」
「使える物があるかもしれない。武器や、トランスワープコイル※3。私に言わせればこんなに…ラッキーな日はないわね。」
ブリッジを出ていくジェインウェイ。

※1: このエピソードは 1999年度エミー賞において、特殊映像効果賞を受賞しました。もとは 2時間エピソードなので、後編もまとめてです

※2: 「生命体143 (いちよんさん)」と、ボーグの種族の呼び方のように訳されています。ですが "Species 143" ではなく「143名の乗員がいる」という意味です。後に同じような言及がありますが、その時はきちんと「名」と吹き替えされています

※3: transwarp coil

・本編
※4貨物室。ボーグ艦の残骸が多数置いてあり、クルーが調査している。
ジェインウェイがやってきた。「これならボーグも悪くないわね。木っ端微塵。」
説明するチャコティ。「残骸が 8キロトン。ほとんどは船体です。パワーノード 2基とプラズマコンジットを 12本回収しました。全部無傷です。」
「推進システムは残ってる?」
「トランスワープコイルがありました。」
ジェインウェイは置いてあった丸い機械を手に取った。「見た目より軽いわ。ある種のポリトリニック合金※5ね。この件が報告されてることを望むわ。そしたら次は攻撃してこないでしょうから。」
「あれは探査機でした。次はそううまくはいかないでしょう。」
調査を行っていたキムはジェインウェイにいう。「艦長! 下ろしてください。」
「何なの?」
「わかりません。でも、ちょっと前まで床を這いまわってましたよ。自動再生ユニットなんじゃないかな。」
「どうもありがとう。」
作業に戻るキム。
ジェインウェイはチャコティにいう。「ボーグを避けて通ったら、2年は余分にかかるのよ。キューブを探知するたびに尻尾を巻いて逃げ出すのはもう御免。」
「同化されるよりいいでしょう。」
「うーん…。」
「非常警報を出しに行った方がいいですか?」
「何のこと?」
「また突拍子もないことをお考えで。」
「どうしてそう思うの?」
「通信機の触り方で。」
ジェインウェイはコミュニケーターをカチカチ触っていた。
チャコティ:「いつもそうです。」
「これからは覚えておくわ。」
ドクターの声。「ユーリカ※6! これがないか、探してたんです! 医療修復ドローンの、サーボ器官なんですよ。レーザーメスに、生体分子スキャナー、マイクロ縫合機、全てが一つになってるんです。」 大きなボーグの装置をジェインウェイたちに見せる。装置の先の機具がまだ作動している。
その話を聞いていたパリスは「全艦隊の医療室に揃えるか?」といい、歩いていった。
ドクター:「手術の手法が革命的に進歩します。」
ジェインウェイ:「何よりね。とりあえずスイッチを切らない? ん?」
去るドクター。
トレスの声。「コイル周波数を変更して。」
ジェインウェイたちはセブンとトレスの近くに行く。
セブン:「変化はない。」
トレス:「もう一度。」
「フィールド調整機が焼き切れている。」
チャコティ:「どうかしたのか?」
トレス:「トランスワープコイルを起動できないのよ。」
セブン:「船が壊滅的打撃を受けた場合、主要システムは全て自爆する。コイルは修復不可能だ。」
チャコティ:「収穫はドクターだけか。」
セブン:「艦長。」
近くにおいてあった部品をジェインウェイに見せる。「データノードだ。一つはドローンのリスト、もう一つには戦略的な情報がある。」
チャコティ:「たとえば、どんな?」
「センターテレメーター、同化実施の詳細、半径 30光年以内のボーグ船の動きなどだ。」
ジェインウェイ:「じゃあ見てみましょう。」
「まず艦隊のパラメーターに変更する。」
「いつできる?」
「2時間後だ。」
「かかって。」
ジェインウェイはまたコムバッジを触った。笑うチャコティ。

食堂。キムと一緒に入るパリス。「ボーグ艦の残骸と 9時間もにらめっこしたら、まるでドローンの気分になってきたよ。」
キムの制服も汚れている。「シャワー浴びたいな。」
「ボーグも浴びるかな。ニーリックス、ビールを 2杯頼む。」
厨房のニーリックス。「銘柄は?」
「タタリアン※7。自分の分も忘れずに注げよ。ここにいる時の人に乾杯しないとな。」
「ホー。」
「シールド調整の隙に魚雷を転送してやるのは、ハリーのアイディアなんだよ。」
キム:「まさか引っかかるとはね。」
「ほんと見事に引っかかってくれたよな。ハハ! その時の奴らの顔を見たかったよ。ドカーン!」
「後味悪いよ。システムを壊すだけの爆発なら良かったんだけど。」
「奴らドローンだぜ、ハリー。心のない機械同然だ。解放してやったのさ。」
いつのまにかセブンが食堂に来ていた。キムが気づく。パリスもキムの視線に気づき、セブンを見る。
キム:「セブン。」
何も言わないセブン。
パリス:「あ、気に障ったらごめん。悪気はなかったんだ。」
セブンは「謝罪するなど無意味だ。心のないドローンは気にしない」といい、歩いていった。
無言でビールを口にするキム。
パリス:「乾杯。」

天体測定ラボ。作業を行うセブン。「データの 62%を回復できた。25星域に渡る、ボーグの戦術行動のアイソグリッドだ。」 ジェインウェイとトゥヴォックも見ているスクリーン上に、立体的に地図が表示される。
ジェインウェイ:「今のコース上に何か危険はある?」
セブン:「キューブが 3つある。9光年離れた場所だ。我々の飛行経路と平行だ。危険はないだろう。」 各ボーグ艦のコースが現れる。
ジェインウェイ:「あのスフィアはどう?」
ボーグ・スフィアが拡大される。セブン:「これは偵察機だ。8光年先をワープ2 で飛行中。かなりの損傷を受けている。」
トゥヴォック:「攻撃されたのか?」
球体のかなりの部分が欠けた状態になっている。セブン:「いや、イオンストームだ。現在、低速ワープで飛行しながら修復中だ。」
ジェインウェイ:「瀕死の帰還ね。」
「そういったところだな。」
「この船の詳細な図解を作って。パワー配線ノードに至るまで完璧に。金鉱を掘り当てたわよ。」

画面に表示されルボーグ・スフィアの図。「今の状況を一言でいうなら、フォート・ノックス※8。」
ジェインウェイの言葉を理解できないトゥヴォック。「何です?」
「トム、説明して。」
パリス:「フォート・ノックスは…地球にあった歴史上最大の金塊貯蔵所なんだ。50トン、9兆アメリカドル以上の金塊が保存されてた。」
「続けて。」
「22世紀末、新世界経済が生まれ、貨幣は恐竜同様絶滅。そして、フォート・ノックスはただの博物館になったわけだ。」
「そこに忍び込めた者は誰一人いない、でしょ?」
「ま、10年ほど前にフェレンギ人が挑戦したけど、失敗。難攻不落といわれたな。」
チャコティ:「盗むんですか?」
ジェインウェイ:「ええ、その通り。でも狙うのは金じゃないの。トランスワープコイルよ。あれがあったら、便利だと思わない?」
トレス:「たとえコイル一本でもエンジンにつなげば、地球へ変えるのが 20年早くなる。
トゥヴォック:「あのダメージを受けたスフィアなら、防衛網を破れるとお考えですか。」
ジェインウェイ:「破って逃げ出せる程度ならね。でもミリセカンド単位で計画を立てないとね。失敗は許されないでしょ。概要はこうよ。極力注意を引かないように接近して、おとりを作って彼らの気を逸らせる。その隙にコイルを盗むチームを転送で送りこむの。」
チャコティ:「そのスフィアに関するデータがあれば、ホロデッキに船の内部を作り出せますね。そこで、シミュレーションができます。」
「任せるわ。」
トレス:「こっちのワープの痕跡を消さなきゃ。マキで使ってたちょっとした技があります。艦隊では認められてませんけど。」
「規則は二の次よ。かかって。スフィアまでは最大ワープで3日だから、コースをセットして。チャコティ、明日の朝までに大筋のプランを作って。一度はボーグと戦って勝ったのよ。2度だわね。だけど先制攻撃はいつも向こうだった。こっちから同化しに行ってもいい頃でしょ? ん? 解散。」

作戦室。ジェインウェイはセブンに尋ねる。「あなたの意見も聞きたかったんだけど、どう思う?」
「非常に野心的なプランだ。不確定要素が多い。だが可能性はある。」
「その不確定要素を減らしたいのよ。あなたのご両親がヒントをくれないかと思ってるんだけど。U.S.S.レイヴン※9で見つけた記録に目を通してるの。ご両親は膨大な観察ノートと詳細な日誌を残してる。入力は 900以上にもなるわ。」
「そんな情報は無意味だ。」
「その反対よ、セブン。2人は全てをボーグ研究に費やし、キューブを近距離で 2年も追跡した。」
「3年だ。」
「ご両親はエキスパートよ。2人の研究を調べて。戦略的に使えることがないかどうか。」
「両親は同化された。彼らの手法にミスがあったからだ。」
「ねえ。この記録は 1年以上もほこりを被ったままよ。無意味なんじゃなくて、あなた避けてるんじゃない? あなたが適任だけど、嫌ならチャコティにやらせる…」
「だめだ。あの記録は私のものだ。私が調べる。」 パッドを受け取るセブン。


※4: 元々は 2時間エピソードだったものを 2話に分けているため、タイトル表示は "Dark Frontier" のみですが、このサイトでは便宜上わかりやすくするため "Dark Frontier, Part I" で全て統一しています

※5: polytrinic alloy

※6: 「ユーリカだ!」と、この機具の名前がそうであるかのように訳されています。ユリーカ (eureka) は「あった!」「見つけた!」という意味のギリシャ語

※7: Tatarian

※8: Fort Knox

※9: U.S.S. Raven
NAR-32450。第74話 "The Raven" 「心の傷を越えて」に登場。このエピソードでは後に出てくるハンセンのセリフ (原語のみ) を含め「U.S.S.」とされています。しかし、それは宇宙艦隊所属の船を意味しますが、宇宙艦隊士官ではないハンセン一家しか乗っていないこと、船籍番号が NCC ではないことから、「S.S.」である方が正しいように思います。現に先日発売された公式雑誌 "Star Trek: The Magazine" 第22号では、全て「S.S.レイヴン」とされています

貨物室。作業中のセブンのところへ、箱を持ったニーリックスがやってくる。
セブン:「遅いぞ。」
「悪いねえ。ダウンロードに思ったより手間取っちまってさ。まだ最初の分だけだ。ほんとに研究熱心だったんだなあ。データはざっと分類しといた。観察ノートに、個人日誌に、生物動力学分析。聞いてもいいかな。あんたの親はボーグを研究してたって本当か?」
「ああ。彼らは宇宙生物学者※10だった。」
「そりゃすごいや。勇気があったんだなあ。」
「無謀だっただけだ。」
「……色あせたホログラム。…それだけが家族の思い出だ。姉※11の写真とな。」 胸を抑えるニーリックス。 「ここにはもっとあるけどね。こんな宝物があったら、どんなに嬉しいか。」
無言のセブン。
「さてと、残りのファイルに取りかかるか。」 出ていくニーリックス。
セブンはパッドの一つを手に取り、父親の残したノートを見る。『ボーグ観察ノート、宇宙暦 32611.4※12。やっと来た。宇宙生物学評議会※13から最終許可が下りた。艦隊はまだ安全を心配しているが、邪魔はしないと承諾した。出発のときだ。我々の仮説を証明してみせる。』

「ビューン、ビューン。」 ボーグ・キューブの模型を手にとって遊んでいる女の子。今のセブン、アニカ・ハンセン※14だ。
父のマグナス・ハンセン※15が部屋に入ってくる。「ああ、ああ。キューブを下ろして。これはね、おもちゃじゃないんだよ。」
アニカ:「壊さないから。」
「おいで。話があるんだ。ほら。」
アニカを隣に座らせるハンセン。「パパとママと 3人で、長い旅に出るんだって言ったよね。」
「うん。」
「それで、明日出発するんだ。地球には当分帰ってこられない。」
「ボーグに会えるの?」
「運が良ければね。」
「ボーグにも子供がいる?」
「わからないな。研究するのはパパたちが初めてなんだよ。」
「どんな顔をしてるの?」
「それもよくわからないんだ。でも人間によく似てると思うよ。だけど…体の中に、機械があるんだ。」
「体の中に…機械?」
笑うハンセン。「ああ。」
「仲良くなれる?」
「人間とは、だいぶん違う。しゃべり方も、考え方もね。だけど、仲良くなりたいと思ってる。」
「なれるといいね。」
アニカを抱きしめるハンセン。

『観察ノート、宇宙暦 32623.5。8ヶ月近く漂流シグナルを追ってるが、未だにボーグの船影は見えない。ボーグはただのセンサーの反射で、存在しないのかもしれない。』 通常飛行を行うレイヴン。
ブリッジにいる妻のエリン・ハンセン※16がいう。「マグナス。」
「このまま追い続けるんだ。レプリケーターを切って、環境制御のパワーを半分にすれば、20光年燃料補給なしで行ける。」
「補給に向かうべきよ。ここから 10日の場所にダイリチウムを含んだ小惑星群がある。」
「その 10日が無駄にできないんじゃないか。あと少しなんだ。ここで止まるなら、引き返して帰った方がよほどましだ。」
「帰る? どこへ? 私たちはフライトプランから外れ、中立地帯を越えてる。戻れといわれたのに命令に逆らってね。仲間には正気を失ったと思われてるのよ。帰る場所なんてないわ、マグナス。」
ドアの開く音がし、アニカが入ってきた。「眠れない。」
「おいで。」 抱き上げるハンセン。「なぜアニカは眠れないのか。今世紀の科学会、最大の謎だな。」
エリン:「仮説は立つわ。夜も親が騒々しいからなんじゃない?」
「うーん、可能性は高いねえ。」
コンピューターに反応がある。確認するエリン。「三重量子波※17よ。発生源は左舷前方 60万キロ。」
ハンセン:「亜空間の歪みだ。フィールド強度、2.9テラコクレイン※18。更に上昇中。アニカ、ベッドだ。」 アニカを下ろす。
エリン:「パワー効率曲線が左右対象だわ。」
「人口動力源の可能性が 0.98。」
出ていこうとしないアニカに「行って」というハンセン。しぶしぶ出ていくアニカ。
ハンセン:「トランスワープチューブ※19だ。でなきゃこんな数字が出るわけない。」
しかしアニカは、まだブリッジを見ていた。船が揺れた。
ハンセン:「接近するぞ。」
エリン:「ボーグ・キューブだわ。右舷前方、2,000キロの距離。」
「スクリーンに出す。」
スクリーンにキューブが映し出された。
魅入る 2人。エリン:「巨大だわ。体積 28立方キロ※20。乗員数は全部で 12万9,000名よ。スキャンされてるわ。」
アニカも見ている。
エリン:「こっちに向かって来ないわね。」
ハンセン:「僕らの仮説通りだな。近づいては来ないんだ。脅威とみなすか、標的でない限り。離れていくぞ。」
「このままついていきましょう。500万キロの距離を保って。」

アニカ、今のセブンは、ため息をついた。 チャコティの通信。『セブン、ブリッジへ。』
「すぐ行く。」

キムに尋ねるジェインウェイ。「探知されたの?」
「いえ。」
トゥヴォック:「映像が出ます。」
ジェインウェイ:「スクリーンへ。」 ボーグ・スフィアが映し出される。「拡大して。」
大きく損傷した船体を見て、チャコティが言う。「かなりやられてますね。」
ジェインウェイ:「まだ油断はできない。近づき過ぎないように。」
セブンがブリッジに到着した。
ジェインウェイ:「コースと速度を合わせて 1,000万キロの距離を保って。」
パリス:「はい、艦長。」
「セブン、船をスキャンして。状況を知りたいの。」
セブン:「兵器アレイは再生中。シールドとトランスワープは作動していない。」
「回復するまでの時間は?」
「およそ、72時間だ。」
「二度とない機会よ。逃せないわ。2交代制にして 24時間体制でシミュレーションを繰り返しましょう。急がないと。」
セブンはスフィアを見つめた。


※10: exobiologist

※11: アリクシア (Alixia) のこと。以前同様「妹」と訳されています

※12: 西暦 2355年。Q の力によりエンタープライズ-D がボーグと初めて出会ったとされる "Q Who" 「無限の大宇宙」の 10年前です

※13: Federation Council on Exobiology

※14: Annika Hansen
(Katelin Petersen) VOY第69話 "Scorpion, Part II" 「生命体8472(後編)」および第74話 "The Raven" 「心の傷を越えて」では Erica Lynne が演じました。声:出口佳代

※15: Magnus Hansen
(Kirk Bailey) 第4シーズンでは David Anthony Marshall が演じました。声:宮本充

※16: Erin Hansen
(Laura Stepp) 少なくとも前編では名前は言及されていません。第4シーズンでは Nikki Tyler が演じました。声:姉崎公美

※17: tri-quantum waves

※18: cochrane
亜空間の歪みを表す単位。1コクレインでワープ1 のフィールドを形成するのに必要な力となります。ワープの発明者、ゼフラム・コクレイン (Zefram Cochrane) にちなむ名前。TNG第79話 "Remember Me" 「恐怖のワープ・バブル」など

※19: トランスワープコンジット transwarp conduit

※20: 立方体なので、一辺は約3,037メートルとなります

多数のボーグが行き交うボーグ艦内を、セブンとジェインウェイが歩いている。フェイザーライフルを構えたジェインウェイ。
別の場所ではトゥヴォックとキムがチームを組んでいる。トリコーダーを使い、歩いていく。
コンピューターに「1:36」の文字が表示され、カウントダウンが続いている。連絡するチャコティ。「ブリッジより実行チーム。予定より、6秒ビハインド。」
トゥヴォックは機械の前に立った。「シールドマトリックス発見。スタンバイ。」
キム:「メインシールドジェネレーターだ。」
場所を指示するトゥヴォック。「爆薬※21を設置する。ここと、そこと、そっちだ。」
持ってきたケースのふたを開けるキム。
セブンたちも到着し、ジェインウェイは転送用のパターン強化機※22を設置する。
時間が 1分を切った。チャコティ:「残り、あと 55秒。」
爆薬を設置していくキム。3つを取りつけた。
トゥヴォックは連絡を行う。「トゥヴォックより艦長。爆薬セット。これより転送ポイントへ向かいます。」
セブン:「トランスワープコイルを外した。」
ジェインウェイ:「トゥヴォック、いいわ。」
トゥヴォック:「起爆装置作動。」
爆発が起こる。
ジェインウェイ:「ブリッジ、シールド消失。転送して。」
チャコティ:「トム。」
パリス:「ロックしました。」
機械の中心にあった部品が転送されていく。チャコティの通信。『コイルは確保。』
作戦チームはボーグの間を抜け、進んでいく。
残り時間は 10秒を切っている。チャコティ:「もう時間がない!」
ボーグ艦に警告音が響く。トゥヴォックたちの前にボーグが立ちふさがった。フェイザーを発射するトゥヴォック。キムも撃つ。
セブンは息を呑んだ。前方からボーグが迫る。ジェインウェイはライフルを発砲するが、既に適応されている。
ジェインウェイ:「もう効かない。行くのよ。」
茫然とし、動かないセブン。
ジェインウェイ:「セブン!」
セブンはジェインウェイの後をついていく。
合流地点に集まる 4人。トゥヴォックは通信を行う。「ブリッジ、転送のスタンバイを。」
ボーグが何人もやってきた。
キム:「急いで!」
転送地点に集合した。トゥヴォック:「転送しろ。」
パリス:「第1転送室に収容完了。」
だが、ブリッジにボーグが転送してきた。
チャコティ:「転送で戻せ!」
パリス:「ロックできません。転送周波数に順応してます。」
「コンピューター、全プログラム停止だ。」
ボーグの動きが止まった。ため息をつくチャコティ。「どういうことだ。」
パリス:「転送ビームに乗ってきたようですねえ。」
「チャコティより第2ホロデッキ。トランスワープコイルは確保。ただ、招かれざる客も来ました。」
転送室にいるジェインウェイ。「時間はどう?」
チャコティ:『2分12秒です。』
「12秒オーバーね。センサーグリッドを破壊してから再生するまで 2分しかないのよ。」
チャコティ:「特に問題があったのか?」
トゥヴォック:「いえ。」
セブン:「スムーズに動いた。」
キム:「トランスワープ室に、直接転送したら?」
ジェインウェイ:「シールドが強すぎる。」
トゥヴォック:「転送機を調整してはどうでしょう。」
「それは検討済みよ。不可能ね。」
キム:「12秒か…永遠に思えるな。」
セブン:「彼らは…ハンセン夫妻は、ボーグ・キューブで探知されずに数時間過ごせた。」
キム:「どうやった。」
「まだ不明だ。」
ジェインウェイ:「記録を調べて。」
「了解。」
「今日はもうシミュレーションは十分。プラン修正に移りましょう。2秒でも 3秒でも詰めるアイディアがあれば提案して。コンピューター、プログラム終了。」
背景の映像が消えた。

廊下をセブンと歩くジェインウェイ。「あなたはそうでもないんだろうけど、ボーグ船からヴォイジャーに戻れてほっとしてるの。」
「あれはホロデッキプログラムだ。」
「それでもよ。3時間もドローンとやり合ってたんですもの。平気だった?」
「何がだ?」
「動揺してるようだったけど。」
「最後にボーグ船にいた時はドローンだった。全く平静にとはいかない。」
「ご両親の研究を調べるのも渋々だったし、このミッションも気が進まないようね。無理をさせすぎたかしら。」
「適応する。」
「言うのは簡単だわ。これほど集合体と関わるのは 2年ぶりでしょ? ほんとに大丈夫? 全員にベストの力を出して欲しいのよ。」
「能力を疑うのか。」
「いいえ。ただはっきりさせておきたいだけ。」
「全く問題ない。」
「ならいいわ。ただ次はホロデッキじゃないわよ。」
「わかっている。」

貨物室。パッドを読む作業を続けるセブンのところへ、ナオミ・ワイルドマン※23がやってきた。
セブン:「ナオミ、どうした。」
「……怖い夢見たの。ちょっとここにいていい?」
「母親はどこだ?」
「機関室でお仕事。ニーリックスも仕事中だし。お願い、邪魔しないから。」
「いいだろう。」
作業に戻るセブン。ナオミはボーグ艦の残骸を見る。「これとそっくりだ。」
「何がだ?」
「怖い夢。ボーグのものがいっぱいあった。」
「…言ってみろ。」
「ボーグ船へ行くでしょ? ママが話してくれた。私も行って、失敗しちゃって、みんな同化されたの。」
「悪夢は不合理な恐怖のせいだ。現実ではない、怖がるな。無視すればいい。」
「何か盗みに行くんでしょ。」
「トランスワープコイルだ。」
「セブンも行くの?」
「ああ。」
「怖くない?」
「必ず成功する。」
「もし失敗したら? またドローンにされちゃったら?」
「ナオミ・ワイルドマン。邪魔しないと言ったはずだな?」
「ドローンになるって、どんな? 痛いの?」
「下らない質問には答えない。」
「ボーグに子供はいる? …どんな顔してるの? 仲良くなれる?」
「…今すぐ部屋へ戻るんだ。」
ナオミの声が低くなった。「抵抗は無意味だ。」
突然、ナオミの頬に、放射状にボーグのインプラントが現れた。驚くセブン。後ろを振り返ると、アルコーヴにボーグがいる。
コミュニケーターを叩くセブン。「セブン・オブ・ナインより保安部。侵入者だ。」
女性の声が響く。『聞こえはしない。』
「何者だ。」
『私はボーグ。セブン・オブ・ナイン、ユニマトリックス 0-1 の第3付属物。お前は弱くなった。』
「これは夢だ。再生中なのだ。」
逃げ出そうとするセブンの前に、ボーグが立ちふさがった。女性の声が続く。『夢ではない。お前のニューロトランシーバーにアクセスした。我々の思考は一つ。ヴォイジャーのスフィア侵略計画は知っている。が、失敗に終わる。』
「ではどうして早くヴォイジャーを同化してしまわない。」
『お前と取引しよう。集合体に戻ればヴォイジャーを見逃そう。』
「なぜ私を。」
『お前は、稀有だからだ。』
次の瞬間、貨物室は前のように戻っていた。


※21: 空間弾薬 spatial charges

※22: パターンエンハンサー pattern enhancer
宇宙艦隊転送システムにおいて、ビームを増幅するために使われる棒状の装置。TNG第115話 "Power Play" 「亡霊反逆者」など

※23: Naomi Wildman
(スカーレット・ポマーズ Scarlett Pomers) 前話 "Bliss" 「夢を食う謎のワームホール」に引き続き登場。声:永迫舞

『観察ノート、宇宙暦 32629.4。ボーグ・キューブを追跡して 3ヶ月、彼らはトランスワープに入った。我々も便乗した。センサーによれば、遥かデルタ宇宙域まで来たようだ。ボーグの故郷だ。』
ボーグ・キューブのすぐ後を追うレイヴン。
コンピューターの画面上に、ボーグ・キューブの内部が映し出されて入る。エリン:「通信が途切れそうよ。」
ハンセンの声が届く。『ただの生態電気の影響だ。待ってろ。良くなったか?』
映像が綺麗になる。エリン:「かなり。ジュニア※24は元気?」
ハンセンはボーグ艦の隅に潜み、状況を説明している。「プラズマコンジットの爆発で、かなりの重症だ。」
ゆっくりと歩くボーグを観察する。ハンセンの頭には手製の機械を装着している。「ジュニア」はアルコーヴに入った。
ハンセン:「今は再生してる。」 パッドに入力していく。
「ジュニア」に 2体のボーグが近づく。
ハンセン:「ちょっと待て。何する気かな。ビル※25と、ニードルフィンガー※26が今近づいていったぞ。おかしいな。ジュニアを修理している。」
エリン:「所属サブユニットの違うドローンとも接触するの?」
『ああ、そうらしい。』
倒れこむ「ジュニア」。
ハンセン:「機能停止させた。」
エリン:『どうして?』
「傷が、深すぎたんだろう。機械類を外してる。部品を回収してるんだ。」
ハンセンの周りのエネルギーフィールドが揺らいだ。
エリン:「バイオ・ダンプナー※27のパワーが落ちてる。そろそろ戻ってきて。」
ハンセン:『あと、まだ 1、2分は大丈夫だ。こんな行動は初めてだ。観察しておかないと。』
腕に取りつけた装置を調整するハンセン。

ヴォイジャーのコンピューターに、その機械の図が表示されている。説明するセブン。「この装置でボーグの探知を防いだ。バイオ・ダンプナーと名づけていた。体の周囲にフィールドを張り、ボーグと同じ生理機能の反応を作っていたんだ。」
トゥヴォック:「カモフラージュか。」
「その通りだ。」
「この装置が、4つ必要だな。いつまでに複製できる。」
ドクター:「2、3時間はいりますね。各人の生理機能に合わせたオーダーメイドだ。」
「すぐにかかってくれ。艦長に報告する。」 医療室を出ていくトゥヴォック。
ドクターは椅子に座り、セブンに話しかける。「独創的だね。」
「ハンセン夫妻は優秀だった。」
「両親に愛情が湧いてきたかな?」
「単なる客観的事実だ。」
「君の社会性を養う大事なチャンスだよ。この調査をただの任務だと思わない方がいい。むしろ自分の生い立ちの探求だ。」
「両親は集合体を過小評価したから殺されたのだ。その慢心のせいで、私はボーグに育てられた。」
何も言えないドクター。そのまま出ていくセブン。クルーを避けるように歩いていく。暗い場所に入り、息を荒げるセブン。

『艦長日誌、補足。フォート・ノックス作戦の準備はできた。全部署が待機中、午前 6時に作戦開始と通達を出した。』
ボーグ・スフィアの後を追うヴォイジャー。
作戦室で、セブンに話しかけるジェインウェイ。「コーヒーは? 飲んだ方が良さそうよ。」
「いや。」
「人間の悪癖だけど試してみて。シャキッとするの。」
「そのうちに。」
ジェインウェイは一口飲んだ。「明日の朝のゲームプランを見直してたところ。あなたをブリッジ任務に変更します。」
「艦長。」
「ヴォイジャーの安全が第一です。スフィアが攻撃してきたら、あなたの知識が必要になる。」
「私は実行チームのはずだ。」
「ベラナでも十分務まります。」
「不確定要素の対処はどうする。フィースフィールドに暗号に。対応できるのはクルーの中でこの私しかいない。」
「私たちを見くびってるわね。」
「艦長はボーグを見くびっている。」
「……戦闘時の問題だけじゃない。あなたの心を思ってのこと。それと任務の処理能力の問題もある。」
「能力の心配は無用だ。」
「そう? 私だけじゃないわよ。チャコティにニーリックス、ドクターもあなたの様子がおかしいのに気づいてる。どこか上の空で、落ちつかない。それにミスも増えてる。誤解しないで、努力は認めてるのよ。あなたは多いに貢献してる。……でもそれがたたってる。これほど動揺するとわかってたら、調査を無理強いしなかった。あなたの今の精神状態で集合体へは行かせられない。」
「確かに、この4、5日は容易ではなかった。だが、私は行かなければならない。二度とミスは犯さないと約束できる。」
「もう決定したことなの。」
「私が行かなければ作戦は失敗するぞ。」
「随分はっきり断言するのね。」
「ボーグを知っている。」
「あなたはどうなの? 何かがありそうね。どうかした?」
「……この 2年間で、私はヴォイジャーのクルーをよく知るようになっている。もうヴォイジャーが集合体だ。私にも艦長の生死は重要だ。成功の確率が上がるのであれば、私の心など問題ではない。実行チームに任命してくれ。……頼む。」
ジェインウェイはしばらく考えた後、ゆっくりうなずいた。
セブン:「感謝する。」
出ていこうとするセブンを呼びとめ、近づくジェインウェイ。「セブン。あなた個人としては目覚しく進歩した。この船のクルーとしても。あなたなしでは、今のヴォイジャーはなかった。」
作戦室を出たセブンは、しっかりと歩いていた。


※24: Junior

※25: Bill

※26: Needle Fingers

※27: bio-dampener

ボーグ集合体の声。『船影を探知。ユニマトリックス 4-2-4、グリッド 0-3。起動せよ。』
活動を始めるボーグたち。多数のボーグが行き交う船内。一人のボーグがコンピューターを操作する。ディスプレイにヴォイジャーのシャトルが表示された。『船籍確認。宇宙艦隊所属。第2級※28シャトル。生命体 3名。』
ブリッジの機関コンソールにいるトレスは報告する。「スフィア、コースを維持してます。」
チャコティ:「シャトルを接近させろ。」
コンピューターにシャトルとスフィアの位置が表示される。パリス:「ボーグはまだ、無視しています。」
ため息をつくチャコティ。「ブリッジより第2転送室へ。おとりにかかりません。」
トゥヴォック、セブン、キムと共に転送台に乗るジェインウェイ。「シャトルの状況は?」
チャコティ:『全システム、オン。偽の生命反応も安定。』
キム:「船首にフェイザーを撃ちますか。注意は引けます。」
セブン:「だめだ。シャトルを脅威とみなし破壊してしまう。」
ジェインウェイ:「副長、シャトルのワープシグナルのエネルギー出力を強化して。そうすれば標的とみなすでしょう。」
うなずくチャコティ。操作するパリス。
スフィア内のボーグ。『ワープシグナルを探知。同化の準備に入れ。有用なテクノロジーだ。トラクターパルス※29発射。』
パリス:「食いついた。引き寄せています。中央部に近いドッキングポートに向かってる。500メートル。200メートル。シールド解除しました。」
チャコティ:「転送しろ。」
実行するトレス。「完了。」
ドクターもブリッジにいる。「バイオ・ダンプナー安定。気づかれてません。」
チャコティ:「スフィアは。」
トレス:「シールドは再び起動。シャトルを同化してるわ。」
「実行チームにセンサーをロック。コースを維持しろ。」

トゥヴォックとキムがチームを組んでいる。トリコーダーを使い、歩いていく。
セブンとジェインウェイも進んでいく。立ち止まったセブンは、一瞬自分がドローンだったころのフラッシュバックを見た。
女性の声。『自分を忘れるな。』
またもフラッシュバック。
ジェインウェイが呼びかける。「セブン。」
その声に驚くセブン。
ジェインウェイ:「大丈夫なの?」
「先へ行こう。」

キムは目的のものを見つけた。「メインシールドジェネレーター。これだ。」
場所を指示するトゥヴォック。「爆薬を設置する。ここと、そこと、そっちだ。」
持ってきたケースのふたを開けるキム。
セブンたちも到着し、ジェインウェイは転送用のパターン強化機を設置する。
セブンはトランスワープエンジンを担当する。
設置を終えるキム。
トゥヴォック:「トゥヴォックより艦長。爆薬をセット。転送ポイントへ戻ります。」
セブン:「トランスワープコイルを外した。」
ジェインウェイ:「トゥヴォック、いいわ。」
トゥヴォック:「起爆装置、作動。」
キムはトリコーダーのボタンを押した。同時に爆発が起こる。
パリス:「シールド、消失しました。」
チャコティ:「コイルにロックして転送しろ。」
セブンの目の前から、トランスワープコイルが転送され、消えた。
チャコティの報告が入る。『コイルは確保。』
先を急ぐ上陸班の 4人。セブンにまた女性の声が聞こえる。『セブン・オブ・ナイン。』
立ち止まるセブン。
ジェインウェイは言う。「セブン! 早く来るのよ。」
「だめだ。私は残る。…私は集合体に戻る。」
「そんなことはさせない。」
「決めるのは私だ。」
フェイザーライフルを向けるジェインウェイ。「早く来なさい。これは命令よ!」
だがジェインウェイとセブンの間に、フォースフィールドが張られた。
セブン:「逃げろ!」
チャコティの連絡。『チャコティより実行チーム。スフィアがヴォイジャーを探知。インターセプトコースを取り、武器を装填中。大至急、転送ポイントへ。』
パリス:「40万キロ、更に接近中です。」
チャコティ:「全兵器装填。」
ジェインウェイはセブンを説得しようとする。「置いてはいかないわよ!」」
「では同化されるぞ。」
セブンの後ろからボーグがやってきた。ジェインウェイにも迫る。フェイザーで撃ち、走り出す。もう一度セブンに振りかえるが、セブンは何も言わない。ジェインウェイはその場を去った。
ボーグたちはセブンの隣に立った。

トゥヴォックとキムの前に、ボーグが現れる。トゥヴォック:「我々に気づいた。」
「何で?」 腕につけたバイオ・ダンプナーを確認するキム。
「わからない。」
別の道を通り、転送ポイントへ到着する。ジェインウェイも合流した。「ブリッジ、準備 OK。3名転送。」
チャコティ:『3名?』
「転送して!」
3人はヴォイジャーへ戻った。

ブリッジに入る。チャコティ:「セブンは?」
ジェインウェイ:「気が変わったようよ。報告を。」
「スフィアはコースを変更。撤退しています。」
トレス:「残りのトランスワープコイルを起動してます。」
ジェインウェイ:「追跡コース。エンジンに照準セット。」
だがボーグ・スフィアは、そのままトランスワープに入った。
パリス:「…逃げられました。」

ボーグに付き添われたまま歩くセブン。
スフィアはトランスワープを終え、通常空間に戻った。いくつものキューブが飛行する、宇宙に浮かんだ要塞状の区域の中を進んでいく。スフィアは入口に入った。
ひらけた部屋に通されるセブン。その中央で、天井からシリンダー状の構造物が下りてくる。中には女性の姿が上半身だけ入っている。目を見開く女性。床からはいくつかの部品に分かれた、胴体、腕、そして脚がすばやく組み立てられる。奇妙に動く脊髄から入っていき、2つの部分が合体した。上半身をつないでいたチューブが自動的に外れる。大きく息を吸い込む女性、ボーグ・クイーン※30。体の感触を確かめるように少し動かした後、シリンダーから下りてくる。
クイーンはセブンの前に立ち、手を頬に触れた。「よく帰った。」


※28: 「第2型」と訳されていますが、型 (type) は 9型であり、級 (class) が 2級 (このタイプの総称) です

※29: tractor pulse

※30: Borg Queen
(スザンナ・トンプソン Susanna Thompson TNG第124話 "The Next Phase" 「転送事故の謎」のヴァレル (Varel)、TNG第147話 "Frame of Mind" 「呪われた妄想」のジェイヤ収容者 (Inmate Jaya)、DS9第78話 "Rejoined" 「禁じられた愛の絆」のリナーラ・カーン博士 (Dr. Lenara Kahn) 役) ボーグ集合体の中心的存在。後編を観ないことには映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」に登場したアリス・クリーガ (Alice Krige) 演じたクイーンとの関係は不明ですが、とりあえず別人が演じていることは確かです。後にも登場。声:榊原良子

・To Be Continued...
・感想
前編だけなので詳しい感想は避けますが、話題性が豊富な内容というのは確かでしょう。
ただ、コイルの略奪を簡単に決めてしまうジェインウェイの突飛な行動 (誰も反対しない!) や、TNG からのボーグの扱いをないがしろにしてしまうような設定の変更は、やはり首を傾げざるをえません。過去の宇宙艦隊のボーグ対策をもあっけなく上回るハンセン夫妻の超人的頭脳もそうですし、年代の設定もセブンの年齢に合わせて無理矢理変えた感じが否めません。考えられる理由としては
  • その前にボーグの襲撃に遭ったエル・オーリア人などからおぼろげながら連邦がボーグの存在を知る
  • ハンセン一家は調査に向かったが (もちろん) 情報は連邦には届けられなかった
  • 結果として連邦はボーグの情報を得られないまま、その後にエンタープライズが公式に出会った
というこじつけです。映画とかでのタイムトラベルで歴史が変わってたりして?(笑)
果たしてそこまでする意味があったのかは、クイーンの謎の企みを含めて、後編を観てからのお楽しみですね。


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