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TNG エピソードガイド
第156話「謎のエイリアン部隊」(前)
Gambit, Part I

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・イントロダクション
異星人が集まる、薄暗い酒場。
バーテンダー※1はウェイターにグラスを渡した。「で? あんた、どういうわけでその男を探し回ってるんだい?」
カウンターにいるトロイは、私服姿だ。「取引の相手なんだけど、支払いがまだなの。」
バーテンダー:「うーん、金を払わねえとはひでえ奴だなあ。取引すんなら、俺みたいのとしなよ。」
「それも悪くなさそうね、考えておくわ?」
笑うバーテンダー。
トロイ:「でもその前にあいつを見つけ出して、払うもの払ってもらわないとね。」
バーテンダー:「もうすぐ店を閉める時間だから、話の続きを…どっかで二人きりでしようじゃねえか。」
「あいつを捜すのが先。知らないならよそを当たるわ。」
「そうか。」
「ほんとに一度も、見かけなかった?」
「さあねえ? 身長が 2メートルぐらいで…頭がツルツルの、うーん。いや? そんな地球人には覚えがないな?」
「嘘ね。」
「…あんたベタゾイドか。…そうだと思ったよ。いいかい? ここに来る連中は…みんな本当の素性を明かさない奴らばかりだ。たとえ知っててもペラペラしゃべるわけにはいかん。…相手があんたみたいな美人でもな? …そうだろ? そんなことしたら商売できなくなる。…あんたも商売やってんなら、わかってくれるだろ…?」 バーテンダーは離れていく。
ため息をつくトロイ。

別の場所で異星人と話すライカー。「そいつはいいや。ケンカする時はその手でいこう。」 笑う異星人。
やはり制服を着ていないライカーはため息をつき、ウォーフに近づいた。「…どうだ。」
ウォーフ:「ええ。あのテーブルにいる男が何か知ってるようです。」
異星人が独りで座っている。
ウォーフ:「艦長のことは知らないと言っていますが、ただナフィアの遺跡※2を訪れた者は必ずこの酒場にやってくると言っていました。何かほかにも知ってるようです。」
ライカー:「行くぞ。」
「ああ…副長。」
異星人の前に座るライカー。「俺たちの捜してる男をほんとに知らないのか。」
異星人はイリディアンだ。「…俺にも妹がいるから、同情はするけどな。」
ライカーの隣りに座るウォーフ。後ろでトロイが様子を見ている。
ウォーフ:「…教えたんですよ、あなたの妹を孕ませて逃げた男を捜してると。」
うなずくライカー。「じゃあわかるだろ、俺の気持ちが。」
イリディアン:「わかるとも、俺だってもし妹を汚されたら…何をしてでも、大金を払っても相手の男を捜すね。」
「『大金』ってのはどの程度だ。」
「そうだな。まラチナム※3の延べ棒 5本ぐらいは出すだろう。」
バーテンダーが近づき、イリディアンの肩に手を回した。「お前ちょっと飲み過ぎてるんじゃないか? …帰った方がいい。そうだろ、イラナック※4?」
バーテンダーにフェイザーが突きつけられた。クラッシャーだ。「悪いけど、まだ帰られちゃ困るのよ? 座って。」
ライカー:「…妹だよ、気をつけな? えらく気が立ってるから、逆らうなよ?」
バーテンダー:「一言でもしゃべりやがったら、命はないぞ。」
イラナック:「助けたいのは山々だがこっちも自分の身が大事でね。」
ウォーフ:「フン。じゃあ後いくらぐらい金を出せば、危険を冒してしゃべる気になるんだ?」
「金の問題じゃないさ。俺の妹もな、ひどい跳ねっ返りだからあんたには同情するが。どうやって来た。船があるのか。」
ライカー:「そうだ。」
「乗せてってくれ。…それが条件だ。」
「…いいだろう。…さあ話せ。」
「そいつなら何週間か前に見た。このテーブルにいたエイリアンどもに何やら尋ねてた。」
「その『エイリアン』は何者だ。」
「わからんが、そのうち連中…ケンカを始めた。…あんたの捜してる男は 3人なぎ倒したところで…あの壁に投げつけられ、倒れたよ。」
離れるクラッシャー。トロイが代わりにフェイザーをバーテンダーに向ける。
クラッシャーはトリコーダーで壁を調べる。「…ユニフォームの繊維の跡が見られるわ。地球人の細胞も。」
ライカー:「DNA 鑑定できますか。」
「何かおかしいわね? 細胞構造が破壊されてるの。まるで高エネルギービームを受けたみたいに。」
ウォーフ:「…武器で撃たれたんですか。」
「多分ね。…床の表面がかすかに削り取られて、結晶の破片が散らばってるわ。でもどんな武器でやったのかわからない。」
イラナック:「あんたら何者だ。」
ライカー:「武器のこと隠してたな。」
「話はこれからだよ。…その連中…よっぽどカッカしてたらしくて、突然銃を抜いてその男を撃ったんだ。男は…シュワーッと消えちまった。」
トロイ:「…嘘は言ってないわ。」


※1: Bartender
(スティーブン・リー Stephen Lee TNG第57話 "The Vengeance Factor" 「復讐の虜」のチョーガン (Chorgan) 役) 声はチェコーティ役の仲野さんが兼任

※2: ruins of Nafir

※3: ラチナムが TNG で言及されるのは初めて。吹き替えでは「5 (ファイブ) ラチナム」

※4: Yranac
(アラン・アルトシュルド Alan Altshuld TNG第144話 "Starship Mine" 「謎の潜入者」のポメット (Pomet)、VOY第47話 "False Profits" 「救世主フェレンギ」のタカール人靴職人 (Takarian sandal maker)、第71話 "Day of Honor" 「名誉の日」の Lumas 役) 声:広瀬正志、旧ST4 クリンゴン大使など

・本編
惑星軌道上のエンタープライズ。
ライカー:『艦長代理記録※5、宇宙暦 47135.2。残っていた DNA は、間違いなくピカード艦長のものだった。艦長の死を認めざるを得ない。』
パッドを扱っていたライカーは、制服に戻っている。ドアチャイムに応えた。「入れ。」
トロイ:「…大丈夫?」
「何とかね。」
「…クルーはガックリきてるわ。告別式を行うんだけど、弔辞を読むのはあなたがいいと思うの。」
「…そういう役は俺がやるより、ドクターは。長い付き合いだし。」
「口で言うほど簡単にはいかないけど、現実を受け止めて前を見つめなくちゃいけないわ? …今の指揮官はあなたよ。みんなあなたの言葉を待ってるわ?」
「何と言われようと、弔辞を読むのは断る。告別式には出ないからな。」
「みんなの心を傷を癒す意味でも、告別式は必要なのよ。…区切りをつけて歩き始めるために…」
「区切りなどつけたくない。傷も癒したくないね。」
「ウィル…」
「まるで地獄だよ。」 自分の胸を指すライカー。「ここが、血を流してるんだ。このままで構わない。平気な振りなんかするつもりはない。」 立ち上がる。
「怒りで一杯ね。」
「怒ってるさ! …ピカード艦長を殺した奴を見つけ出すまでは、絶対にこの怒りを忘れるもんか。」
「…自分のことしか考えてないのね。…辛いのは自分だけだと思ってるの!? ほかの人が何も感じてないとでも思うの? …甘ったれないでよ、ウィル! …怒りのやり場がないのは、ほかのみんなだって同じよ! あなたには指揮官として、クルーを引っ張っていく責任があるのよ? 怒りに任せて復讐に走るなんてそんなの勝手すぎるわ!」
「もういい黙れ、カウンセラー。」
外へ向かうトロイ。
ライカー:「ディアナ。……悪かった。…これは復讐じゃない。正当な裁きだ。…わけもなく艦長を殺した奴を放っておけるか。犯人を見つけ出すことが、俺の区切りだ。」
ライカーの部屋を出ていくトロイ。

ブリッジのウォーフ。「副長、第227宇宙基地※6のチェコーティ提督から、通信が入ってます。」
艦長席のライカー。「作戦室で受ける。」 制服の裾を伸ばす。
副長席にはデータが座っている。
ウォーフ:「了解。」

作戦室に入ったライカーは、一度ピカードの椅子を見た。置物を手にし、座る。
コンソールを起動した。「…提督。」
チェコーティ※7:『報告書は読んだよ。…実に惜しい人物を亡くした。彼の死は連邦にとって、大きな痛手だ。』
うなずくライカー。
チェコーティ:『アーガス星域※8の調査任務を延期したいそうだが、理由は?』
ライカー:「ピカード艦長の死亡事件の調査を私に、やらせていただきたいのです。」
『今回の事件はデシカ2号星※9の管轄だ。』
「わかっています。ですが彼らに任せておいて、何かわかるとはとても思えません。捜査当局は腐敗しています。」
『懸念はもっともだが、君は今のその状態でやれるのか。』
「…艦長の死はショックでしたから、私情を全く挟むなと言われても難しいでしょう。でもやれるのは私しかいません。犯人を見つけるまで、あきらめません。」
『よくわかった。』 コンソールに触れるチェコーティ。『エンタープライズは特別任務扱いとする。行動は君の裁量に任せる。…頼むぞ?』
「感謝します。」 ライカーは通信を終えた。

部屋で料理をつまむイラナック。「うん。」
ドアが開いた。
イラナック:「やあ、ライカー副長。いいところへ来てくれた。できればもっと、いい部屋に変えてもらえないかな。どうもインテリアが気に入らん。」
微笑むライカー。「…これが一番いい部屋だ。」
イラナック:「フン!」 グラスに口をつける。
「だいぶくつろいだようだから、最初は思い出せなかったエイリアンの人相とか細かいことを思い出した頃じゃないのかな?」
「それが最近、記憶力が衰えてな。」
「……酒場の客が、大勢が見てる前で人が殺されたってのに、あんた何一つ覚えてないってのか。」
「一つ思い出した、奴らこう言ってた。…余計なことをしゃべれば殺すってな。」
「どこへ逃げた。」
笑みを浮かべるイラナック。
ライカー:「フン。…知ってるんだな? 奴らが何者かも。」
イラナック:「ああ、多分ね。」
ライカーは顔を近づけた。「何が欲しい。」
イラナック:「大したもんじゃないよ、シャトルを一機。…ちょいとあちこち乗り回して旅がしたいんだ、わかるだろ。」
ライカーは微笑みながら、裾を引っ張った。「シャトルだって? 交換条件なら、もっといいのがある。時間と交換だ。」
イラナック:「時間?」
「20年ぶち込まれるところを 5年で勘弁してやるっていうのはどうだ?」 ライカーはイラナックをつかみ、壁に押しつけた。「クリンゴン帝国での詐欺罪および窃盗罪で逮捕状が 12枚も溜まってるんだろ? …知ってることを吐けば、悪いようにはしない。罪が軽くなるよう口を聞いてやろうって言ってるんだ。」
「…何でもしゃべる、クリンゴンには引き渡さないでくれ!」
「お前次第だ。」
「頼むよ。送るなら連邦の囚人用コロニーにしてくれ!」
ライカーはイラナックを椅子に戻した。「話せ!」
イラナック:「…奴ら金で雇われた傭兵だよ。ここ 6ヶ月ぐらいずっと、この星域※10にいた。」
「今どこにいる。」
「バラダス星系※11の話をしてたから、多分そこだろ。」
「多分?!」
「…それしか知らん!」
コミュニケーターに触れるライカー。「ライカーよりデータ。」
データ:『はい、副長。』
「コースをセットしろ。これよりバラダス星系へ向かう。…ワープ6 だ。」
『了解。』
笑みを浮かべ、イラナックの部屋を出て行くライカー。イラナックは視線を落とした。


※5: 通常の航星日誌が "Captain's Log" であるのに対し、"Acting Captain's Log"

※6: Starbase 227

※7: チェコーティ提督 Admiral Chekote
(ブルース・グレイ Bruce Gray) DS9第22話 "The Circle" 「帰ってきた英雄 パート2」以来の登場。その際の吹き替えでは「チェコテ提督」。声:仲野裕、DS9 Gelnon、ヴェラルなど。DS9 では稲葉実 (兼任)

※8: Argus sector
TNG第93話 "The Nth Degree" 「謎の頭脳改革」でアーガス情報基地 (Argus Array) が登場

※9: Dessica II

※10: 吹き替えでは「星

※11: Barradas system

ワープをやめるエンタープライズ。
データ:「バラダス星系で、Mクラスの星は 3号星※12だけです。記録では住民はゼロですが、センサーで調べたところ地表より断続的なエネルギー信号が出ています。」
ライカー:「出所は。」
ラフォージ:「位置の特定は困難ですが、一種のパワーコンバーターの放射だと思われます。」
ウォーフ:「基地か船があるに違いありません。」
ライカー:「…そのほかに 3号星の情報は。」
データ:「約2,000年前、この星はデブルーン人※13の基地として使われていました。連邦の考古学者の調査により、数多くの遺跡が発見されています。」
「…ウォーフ、上陸班を出すので保安部員を同行させてくれ。」 制服の裾を伸ばすライカー。「私も行く、ジョーディも来てくれ。…データ、ブリッジを頼む。」
「了解。副長! …艦長代理であるあなたは、ブリッジを離れるべきではないと思うのですが。…もしピカード艦長が…」
「もういない。」
「もしいらしたとして、ピカード艦長が上陸班に加わると言われたらあなたも止めるはずです…」
「いつもならな。…今は違う。」 観察ラウンジを出ていくライカー。
データは首をかしげた。

バラダス3号星。
茂み※14を歩くライカー。「少尉、向こうを頼む。」 裾を引っ張る。
保安部員:「了解。」
「…どうだ。」
ラフォージ:「センサーの感度が悪いですねえ、ずいぶん干渉が激しいみたいです。」
「原因は。」
「わかりません。広範囲なので、大気が原因かも。」
「うん。…これは何だ。」
地面のくぼみに近づくラフォージ。「うん。ここの遺跡はかなり古いものですけど、土が削られたのは最近みたいですねえ。戦場だったのかもしれない。」
ライカー:「だが爆破の跡には見えないな。形が整いすぎてる。」
「副長。この辺り一帯に、結晶の破片が飛び散ってます。ピカード艦長がやられた、あの酒場の床にも同じような反応が出ていました。」
ウォーフ:「副長!」
向かうライカーたち。
ウォーフ:「見て下さい。」
割れた壺のような物が、まとめて転がっている。
ライカー:「誰かが落としたみたいだな。」
その時、それを調べていた保安部員がビームで撃たれて倒れた。
岩場に隠れるライカーたち。相手の 2人は次々と撃ってくる。
ラフォージ:「エンタープライズ、何者かに攻撃を受けた。」

エンタープライズに響くラフォージの通信は乱れている。『…繰り返す、何者かに攻撃を…』
オプスのジュスティ少尉※15。「少佐、上陸班からの通信が切れました。」
艦長席のデータ。「システムの故障か?」
ジュスティ:「いえ、妨害波が出されているんです。」
「発信源は。」
「地上からのようです。」
「ブリッジより、第2転送室。上陸班をロックオンしろ。」
転送部員※16:『干渉が激しく、ロックオンできません!』

攻撃し続ける異星人たち。もう一人が加わり、壺を拾う。
反撃する保安部員。壺を手にした女性はロミュランのようで、再び隠れた。
双方撃ち合いになるが、誰にも当たらない。
保安部員に話すライカー。「俺はあの木のところへ行く。向こうとこっちから挟み撃ちにするぞ。」
ラフォージの前の岩が攻撃を受け、煙を上げた。
別方向へ向かうライカー。だが前の岩もビームを浴び、噴き上がった煙に吹き飛ばされる。
相手の 3人は意識を失ったライカーに近づいた。そのまま 4人は転送で消えた。
どうすることもできないウォーフやラフォージ。


※12: バラダス3号星 Barradas III

※13: Debrune

※14: グリフィス・パークにあるヒマラヤスギ林でロケ撮影。爆発などの効果は合成で挿入されました

※15: Ensign Giusti
(サブリナ・ルブーフ Sabrina LeBeauf ドラマ「コスビー・ショー」のサンドラ・ハクスタブル役。STファン) 名前はエンドクレジットに含まれるだけで、言及されていません。原案・脚色の Naren Shankar の友人にちなんで。声:増田ゆき

※16: LD ではナリク役の安田さんの兼任として、「ヒクソン」「ホイス」というキャラクターが掲載されています。格闘家のヒクソン・グレイシー、ホイス・グレイシーから (勝手に) 名づけたものと思われます。片方はこの転送部員を指しているのかもしれませんが、もう一人は確認できません

集まるラフォージたち。ウォーフはライカーの落としたフェイザーを拾う。
通信が届く。『データより上陸班、応答せよ。』
ラフォージ:「やられたよ、データ。寄せ集めの傭兵だと思う。ライカー副長が連れ去られた。」
ウォーフ:「少佐、敵は転送で逃げました。近くに基地か船があると思われます。センサーに映っていませんか。」

ジュスティ:「いま軌道を離脱した船があります。」
データ:「なぜ今までわからなかった。」
「惑星を盾にして隠れていたんです。…相手が攻撃準備を開始しました。」
「防御スクリーン。非常警報。」 艦長席に座るデータ。
バラダス3号星※17から上昇してきた異星人船※18が、エンタープライズをビームで攻撃する。
データ:「被害状況は。」
ジュスティ:「左舷ディフレクターに被弾、異常ありません。逃げていきます。スピードはワープ8.7 で一定。…最大スピードと思われます。」
「ワープ9 で追跡しろ。フェイザー砲、ロックオン!」
「フェイザー砲射程距離まで後 23秒。」
その時、オプス席に映っていた船影が消滅した。
ジュスティ:「長距離スキャナーに切り替えます。センサー上の船の姿が薄れていきます。消えました。…長距離スキャナーでも発見できません。見失いました、すみません。」
データ:「センサーフィールドの帯域を広げろ、側面センサーも使って探せ。」
「…駄目です、信号がありません。本当に、消えたようです。」
「…バラダス3号星に引き返してくれ。上陸班に帰還準備をしろと伝えろ。」
「了解。」

バラダス3号星に戻るエンタープライズ。

観察ラウンジのデータ。「艦隊情報部によればこの船は傭兵部隊のものであり、最近この星域の各地で略奪を行っているらしい。すぐにセンサーからは消えてしまったが、その前に船の構造をスキャンすることができた。…船は何らかのエネルギー吸収剤で覆われており、肉眼では見えるが距離が離れてしまうと長距離センサーで捉えることは事実上不可能だ。」 モニターに傭兵船の構造が表示されている。
トロイ:「追跡する方法はあるはずだわ?」
ラフォージ:「データ。時間はかかると思うけど長距離センサーのシステムに手を加えて、その船を探知できるように改造できるかもしれない。」
データ:「…エネルギー吸収剤の構造がはっきりわかるまでは、やたらに改造しても成功する確率は非常に少ない。」
立ち上がるウォーフ。「少佐。副長がさらわれたんですよ、悠長に考え込んでる場合じゃない! 動きましょう。」
データ:「こんな場合だからこそ…考えることが重要なんだよ。」 席についた。
ウォーフも仕方なく座り、ため息をつく。
データ:「…ほかに効果的な方法がないので、再び上陸班を派遣し傭兵たちがあの星で何をしていたのか調べる。…彼らの目的を示す手がかりを集めるんだ。…調査チームを組み私に報告してくれ。以上だ。」 両手の指先を合わせる。
出ていく 3人。

ワープを止める傭兵船。
リーダーらしき男。「エンジンはどうなってる。」
バラダス3号星にいた異星人のナリク※19。「あれほど無茶はやるなと言ったのに、パワー分岐装置がイカレちまったぞ。これじゃワープ6 を出すのが精一杯だ。」
ロミュランのタレラ※20に連れてこられたライカーは、手を振り払った。
リーダー:「修理にどれくらいかかる。」
ナリク:「何とかワープコアを調整してみるが、11時間はかかるだろうな。一度エンジンを全部停止しなきゃならん。」
「そいつはできん。動けないところを狙われたら終わりだ。…5時間以内にワープ8 が出せるようにしろ。…言い訳は通用せんからな。」
不満そうな様子で離れるナリク。
タレラにリーダーの方を向くように手をつかまれ、ライカーはまた振り払った。コミュニケーターは取られている。
リーダー:「バラダス3号星で何をしていた。」
ライカー:「宇宙艦隊中佐、ウィリアム・ライカーだ。SC-231-427。」
「なるほど。…私はアークタス・バラン※21。…番号はないがね。あの星で何をしていたのか答えてもらおうか。」
「…遺跡の調査をしてただけさ。そういうのも我々の任務のうちでね?」
バラン:「ふざけたことを言うな。あの遺跡は何百年もかけ調べ尽くされている。今さら何を調べることがある。」
「お前たちこそ何をしてた。」
バランは腰につけた装置を起動させた。その瞬間、ライカーが苦しみ出す。
首につけられた部品に手を触れる。
バラン:「無駄だよ、中佐。そいつは外れない。君の神経に直に接続されているんだ。どれだけの苦痛を与えるかは、私の思いのままだ。通常は今の程度だが、必要とあれば自由自在に変えることができる。」 また装置に触れた。
首の神経サーボ※22が反応し、一層痛がるライカー。その様子を見ているタレラ。
バラン:「これは私の前の艦長が造ったものでな。部下を支配するには便利な道具だ。」
ライカー:「前の艦長だと。」
「今はこの私が艦長だ。」
地表に来ていたもう一人の異星人女性。「こんなことしてても時間の無駄だ、今すぐ殺しちまいなよ。」
バラン:「気が短すぎるぞ、ヴェコール※23。こいつは利用できる。そのうちな。」 タレラに指示する。「しばらくそこで痛みの余韻に浸らせておけ。頭も冷えるだろう。」
ナリク:「ヴェコールの言うとおり、いま殺すべきだ。艦隊の奴を乗せておくのは危険すぎる!」
「危険だと、むしろその反対だ。艦隊の士官なんて願ってもない人質だよ。」
ヴェコール:「人質なんか役に立つもんか、そいつを連れてたら艦隊に追っかけられるだけさ。」
バランは腰の装置に触れた。神経サーボを押さえるヴェコール。
バラン:「私に口答えするな。自分の持ち場に戻れ。」
別の男の声が響いた。「よく考えろ、バラン。」 コンソールから振り向いたのは、ピカードだった。「みんなが言うとおり、そいつは殺すべきだ。…今すぐ。」
振り返ったライカーは、目を開いた。


※17: NASA による地球の資料写真を利用

※18: ミニチュアは Ricardo F. Delgado がデザインした、ミラドーン船の再利用 (DS9第12話 "Vortex" 「エイリアン殺人事件」)

※19: Narik
(キャメロン・ソア Cameron Thor) 名前は後編で言及されます。声:安井邦彦、DS9 2代目バライルなど

※20: Tallera
(ロビン・カーティス Robin Curtis 映画 ST3 "The Search for Spock" 「ミスター・スポックを探せ!」、ST4 "The Voyage Home" 「故郷への長い道」のヴァルカン人サーヴィック大尉 (Lt. Saavik) 役) 声:弘中くみ子、DS9 イエイツなど

※21: Arctus Baran
(リチャード・リンチ Richard Lynch) 声:筈見純、DS9 イヴェック、VOY コロパック、旧ST5 カーク、旧ST6 チャンなど

※22: neural servo
原語では前のバランのセリフで言及されていますが、特に訳出されていません

※23: Vekor
(ケイトリン・ブラウン Caitlin Brown DS9第9話 "The Passenger" 「宇宙囚人バンティカ」のタイ・カジャダ (Ty Kajada)、ドラマ「バビロン5」のナーン大使副官ナターフ役) 声:藤木聖子、TNG ロー、TNG/DS9 ベトール、VOY 3代目セスカなど

ピカードも傭兵の姿をしている。「役に立たんのなら生かしておいても邪魔になるだけだ。それがわかっていないのはお前だけだぞ、バラン?」
バラン:「艦長は私だ、ガレン※24。お前の指示は受けん。」
ライトが暗くなり、警報が響く。
バラン:「どうした。」
ナリク:「後部プラズマ接続バイパス。2、3秒でパワーが戻ると思う。」
復旧するライト。
バラン:「もっと広い視野をもってものを見ろ。ライカーは将来役に立つときがくる。」
ピカード:「お前の考えてるほど役には立たん。私が話に聞いたあのライカーならな?」
ライカー:「どのライカーだって?」
「エンタープライズ副長。その前は U.S.S.フッド※25のクルーだった。」
「そうだが?」
「噂は聞いてるぞ? 命令に従わないことでは有名だ。…ミノス・コーヴァ※26の一件では艦長に反抗し、副長を首になったこともある。」
バラン:「なぜそんなに詳しい。」
「こう見えても連邦の目を盗んで何年も密輸をやってるんだ。…商売をやってく上で、宇宙艦隊の知り合いから情報をもらうことも多くてねえ。…こいつは放っておけば、そのうち軍法会議いきになっただろう。」
ライカー:「ここの方がマシかもな?」
「…わかっただろ? こんな役立たずは殺せ。…俺が殺してやる。」 近づくピカード。
その時、船が揺れた。スクリーン※27の星の軌跡が変わり、ワープが加速したらしい。
部下の傭兵に頼むタレラ。「見張ってて。」 席につく。「加速してる。」
バラン:「何をやった。」
ナリク:「修理したところとは関係ない。多分エンジン部の混合タンクの故障だろう。」
タレラ:「プラズマ圧力が上がってる。」
バラン:「故障個所はどこだ!」
ナリク:「システムは 30 にも分かれてるんだ、そう簡単にわかるか。時間がかかる。」
タレラ:「そんな時間はないわよ。もう圧力は限界まできてる。」
バラン:「タンクをシールドで封鎖しろ!」
ヴェコール:「駄目だ、オーバーライドが効かなくなってるよ。」
ピカード:「反物質フロー調整機も動かないぞ。」
タレラ:「サブシステムも全然起動しないわ。」
その様子を見ていたライカー。
ピカードのコンソールにつくバラン。「ええい、どけ!」
タレラ:「プラズマ圧力限界値を超過、8%オーバー。上昇中。」
ナリク:「エンジンコアを捨てるしかない。」
バラン:「ここに立ち往生になる!」
ライカーを見ながら話すピカード。「フロー調整機はまだ動かない。」
ライカー:「俺にやらせろ。…この手のシステム異常は何度も経験してる。何とかできるかもしれん。」
タレラ:「プラズマ圧力 11%オーバー。…貯蔵フィールドが崩壊し始めたわ。」
バラン:「やれ!」
ナリク:「フロー調整機もマニュアル操作が効かないんだ。貯蔵フィールドも長くはもたんぞ。」
コンソールを見るライカー。「ロジック回路が閉塞してて外部入力を受け付けないんだ。」 揺れた。「…プラズマフロー転換機への、バイパス回路を作ってみる。おい、フロー調整機からのフィードバックを取れ。…6秒遅れでくるようにな。」
操作パネルを引き出すライカー。
ナリク:「何だと? お前の指図は受けんぞ。」
バラン:「言ったとおりにしろ。」
タレラ:「プラズマ圧力現在 14%オーバー。」
「もししくじったら…」
ライカー:「死ぬときは一緒だな? あと 2、3秒が勝負だ。」
見守るピカード。ライカーは操作を終えた。
タレラ:「プラズマ圧力低下。」
小さな揺れの後、ライトが戻った。
タレラ:「安全レベルに戻ったわ。」
パネルを納めるライカー。ピカードはうなずく。
ライカー:「また同じ目に遭いたくなきゃ、調整機のサブコンプレッサーをリセットしなおすことだな。混合タンクのフルチェックもやっといて損はないぞ?」
バラン:「やれ。」
離れるナリク。
バラン:「船室に連れて行け。」
ピカードに近づくライカー。「役に立つだろ?」

バラダス3号星地表のウォーフ。「各チームの報告が入りました。複数の遺跡がありましたが、いずれも略奪された後です。」
ラフォージ:「この辺り一帯に結晶の破片が散らばっているが、多分それは高エネルギーの転送ビームを受けた影響だろう。ただわからないのはこの遺跡にはもうガラクタしか残っちゃいないのに、一体誰が何を盗みに来たかってことだ。」
データ:「ガラクタでも、ロミュランには大きな意味があるのかもしれない。」
ウォーフ:「…ロミュランに?」
「…この遺跡を造った古代デブルーン人は、遥か昔にロミュランから派生した種族だ。艦長が殺されたデシカ2号星も、元々はロミュランの領土だった。」
「我々を襲った中にもロミュランがいた。奴らが兵を雇ってるんでしょう。」
「問題はなぜ、発掘品を狙っているかだ。」

エンタープライズ。
データ:「この星域には、ロミュランを起源にもつ様々な種族の遺跡がいくつも存在する。…そしてこれが傭兵に襲われた惑星のリストだ。」 星図が表示された。
ラフォージ:「片っ端から行ってるわけか。」
「うん。…残っているのはカルダー2号星※28、ヤダラ・プライム※29、ドレイケン4号星※30。」
「ヤダラとドレイケンは星域の外れだけど、カルダー2号星なら最大ワープで行けば一日かからないな。」
「次のターゲットは多分そこだ。」
「でもこの星は、連邦の基地がおかれてるんだぞ?」
「基地と言っても小さな科学基地だ。防衛設備もたかが知れている。…傭兵船の攻撃を受ければ、ひとたまりもないだろう。…ウォーフ、カルダー2号星の連邦基地に連絡を入れてくれ。傭兵船と思われる船が接近してきたら、できる限り時間稼ぎをして我々が行くまで待つようにと。パイロット、軌道を離脱するぞ。カルダー星系に針路を取れ。ワープ9 だ。」 データは艦長席についた。
操舵士官※31:「了解。」
ワープに入るエンタープライズ。

神経サーボに触れるライカー。
ドアが開き、ピカードが入った。「あまり時間はない。」 隣の部屋を確認する。「…驚いたよ。こんなところで会えるとは…。」
ライカー:「私こそ、艦長は死んだものとばかり。撃たれて消滅したと聞いたんです。」
「あの傭兵どもは転送装置と連動したビームガンを使っているんだ。そのガンで撃つだけでターゲットを一瞬にして転送できる。だからはたから見れば、消滅したように見える。」
「奴ら一体何者です。なぜ艦長が、奴らと一緒にいるんですか。」
「私が調査に行った遺跡は、踏み荒らされていた。発掘品もことごとく盗まれて、惨憺たる有様だったんだよ。どうしても犯人を突き止めたくてな。…デシカ2号星のあの酒場で聞き込みをしたんだがどうも私はしつこく聞きすぎたらしい。奴ら作戦を、感づかれたと思って私を捕まえたんだ※32。」
「で、一味になったんですか。」
「うん…私は、闇の密輸商人。名前はガレンだ。…盗んだ発掘品の鑑定を手伝うともちかけて取り入ったんだが…連中はただの、遺跡泥棒じゃない。奴らはロミュランに関係のある遺跡を片っ端から襲い、発掘品を盗んでいる。そして盗品を一つ一つ私に分析させ、ある素粒子反応が出ないか調べてる。つまり、何か特別な発掘品を探しているんだ。」
「なぜ。」
「そこまではまだわからん。…鍵はバランが握っている。ほかの連中には知らされていないことでもバランならば知っている。だから奴に近づき、信頼を勝ち取って欲しい。」
「それでエンジンを故障させ、私に直させたんですね。」
うなずくピカード。「それに君が艦隊のはみ出し者だという話も信じたようだ。それらしく振る舞ってくれ? …バランは…どうしても、私のことが気に入らないようでね。だが手出しはできないさ。なぜなら、分析には私の力が必要だ。君は私を敵に回せ。そうすればバランに接近するチャンスも増える。」
ライカー:「わかりました。…やってみましょう。」
ドアが開いた。ピカードはいきなりライカーを殴り倒す。
驚いた表情でピカードを見るライカー。
入ってきたのはバランだった。「何をしてる。」
ピカード:「口を割らせてた。あんたに任せちゃおけんからな。」
装置に手を触れるバラン。ピカードは声を上げ、ひざまずく。
バラン:「私の許しを得ずに拷問を行うことは、誰だろうと許さん。わかったら行け。」
ピカードは息をつき、バランを睨む。出ていく前にライカーを蹴っていった。
ため息をつくライカー。


※24: Galen
ピカードの恩師で、考古学者のリチャード・ガレンにちなんで。TNG第146話 "The Chase" 「命のメッセージ」より

※25: U.S.S. Hood
エクセルシオ級、NCC-42296。TNGパイロット版 "Encounter at Farpoint" 「未知への飛翔」など

※26: Minos Korva
TNG第137話 "Chain of Command, Part II" 「戦争種族カーデシア星人(後編)」より

※27: エンタープライズの戦闘ブリッジ用のスクリーンセットを使い回しているようです

※28: Calder II

※29: Yadalla Prime
吹き替えでは「ヤダラ1号星」

※30: Draken IV
TNG第140話 "Face of the Enemy" 「ロミュラン帝国亡命作戦」より

※31: 吹き替えでは女性の声で訳されており、操舵士官ではなくオプスのジュスティが応えているようにも聞こえます。実際は男性の声で、別のシーンで後ろ姿が映っています

※32: 冒頭で「ユニフォームの繊維 (原語では宇宙艦隊の繊維)」の跡がデシカ2号星の酒場に残っていたことが言及されていますが、この状況からすると制服だったとは考えにくい気もします

ブリッジのバラン。「次の目的地はこれまでより、手応えがあるかもしれん。カルダー2号星にあるサケイザン人※33の古墳を狙う。」
ピカード:「何だと?! …あの星には連邦の基地があるのを知らんはずはあるまい。それでもやるつもりか。」
「何の問題がある。」
「宇宙艦隊が必ず出てくる。…これまでのように、入り放題盗り放題というわけにはいかんと思うがね。」
「連邦の手の内など知り尽くしているさ。」
ヴェコール:「基地の防衛設備は。」
「取るに足らんよ。タイプ4 のシールド※34を張って基地と遺跡を守っているだけだ。」
ピカード:「バカを言え、それだけなものか。少なくともフェイザー砲 2機と、光子魚雷は装備してるはずだ。…それでも取るに足らんか?」
タレラ:「なぜそんなに基地の設備に詳しいのだ。」
「2年前、あの星からサケイザンの墓碑を持ち出そうとしたことがあってね。あの時は危なかったよ。」
バラン:「我々の武器をもってすれば恐れるに足りん。…あんなちっぽけな基地などほんの 15分もあれば壊滅させてやれる。その後でタレラが部下を連れ、遺跡に入るんだ。」
「ライカーを使え。…基地と話させろ。艦隊の士官の命令なら基地の連中も従うに違いない。基地のシールドを解除させて、その隙に発掘品をこっちへ転送すればいい。」
ヴェコール:「ライカーが協力するわけないね。連邦でつまはじきにされてるからって裏切ってこっちにつくと思う?」
「…お前が断れば基地を皆殺しにすると脅かしてやればいい。腐っても艦隊の士官だ。罪もない者が犠牲になるのには、耐えられないはずだ。」
バランに近づくタレラ。「艦隊にはこの前仲間を一人やられてる。これ以上犠牲を出すのは好ましくない。…戦いが避けられるならその方がいい。」
バラン:「…わかった、やってみよう。5時間後にカルダー2号星に着く。やることはわかってるな、戦闘準備もしておけ。失敗したときに備えてな。」 ピカードを見て、ブリッジを出ていく。
タレラはピカードを見つめる。

傭兵船。
ケースを持って座るピカード。「コンピューター、次のサンプルの分析だ。ロットナンバー、478-B。」 中央の装置に遺物を置く。「スペクトル分析と、モード3 スキャン開始。」
ため息をつくピカード。
コンピューター※35:『スキャン完了。テリコン素粒子の崩壊※36度が、指定の範囲に該当しません。一致の可能性、0.04%。』
ピカードはパッドに入力し、遺物を取る。「分析パラメーターリセット。次のサンプルは、ロットナンバー 369-B。スペクトル分析および、モード2 スキャン。」 服の裾を伸ばす。
部屋にタレラが入った。「バランが分析を急げと言ってるわよ。ちょっと時間がかかりすぎじゃない?」
ピカード:「バランに言っとけ、これ以上早くしろと言うなら自分でやれとな。正確な結果が欲しければ、待ってろ。」
分析装置のスイッチを切るタレラ。「あなた命を粗末にするのが好きなわけ? バランはスイッチ一つであなたを殺すことだってできるのよ?」
ピカードは笑う。「そんなことにはならんさ。…私が分析するようになってから精度が今までの 10倍に上がったんだからな。私がいなくなって困るのはバランの方だ。殺しはしないさ。」 作業を続ける。
タレラ:「今のところはね? でも言っとくけど、バランだっていつまでも甘い顔はしてないわよ。おとなしく言われたとおりの仕事をやることね。」
「…話が見えないのは嫌いでね。この任務の目的は何なんだ? それがわかれば分析もしやすい。」
「教えた方が効果的ならバランがとっくに教えているはずよ。」
「……あんたは知ってるのか?」
微笑むタレラ。「私が知らないことはないわ。」
ピカード:「じゃあ教えてくれ。なぜ命懸けでこんなガラクタを集めてるんだ。狙いは何だ。」
「あなたにそれを教える必要はないわ? …でもガッカリしないで。バランにも必要じゃない情報は一切教えていないから。例えば? ここでの私達の会話は、秘密にしておいてあげる。」
「別に隠すことはないだろ? バランにどんどん言えばいい、私が奴をバカにしていたとな。」
「バランは何年もリーダーをやってきてるのよ?」
「奴からあのコントロールスイッチをもぎ取ってみろ、5分とクルーをまとめていられるものか。…みな仕方なく従ってるだけだ。…バランなど、あの装置がなけりゃ何一つできやしない。」
「反逆でも起こしたそうな口振りね?」
「誰かが反逆を起こせば…皆そっちにつくだろう。」
「やっぱりあなた、命を粗末にするのが好きなのね。…私はあなたが好きよ。だからわがままも大目にみてあげる。でも限度があるわ。私は何があろうとこの任務を成功させなきゃならないの。…もしあなたがその邪魔をする気なら、この手で始末してやるわ。」 タレラは出ていった。

惑星に近づく傭兵船。
モニターに映る宇宙艦隊士官、サンダース大尉※37。『中佐、連邦科学省の認可を得ていない者の上陸を許可するわけにはいかないのです。』
ライカー:「そんなことはわかってるよ、大尉。…だが君たちの基地に危険が迫ってるんだ。これは非常事態だ、防衛のためそちらに保安部員を転送したい。さあ。今すぐシールドを解除しろ。」
『申し訳ありませんが、規則は規則ですのでできません。よろしければ、科学省の確認が取れるまでお待ち下さい。ただ現在、干渉波が激しいので通信状態が悪…』
バランは横から通信を切った。「時間稼ぎだ。誰かが我々のことを、警告したに違いない。ディスラプター砲スタンバイ。…基地を破壊する!」
ピカード:「やめろ、そんな暇はない! すぐに艦隊がやってくるぞ。」 ヴェコールの代わりに操作する。
「何をしてる。」
「…ディスラプタービームの代わりにフェイズ共鳴パルスを出す。周波数を合わせて基地のシールド発生装置を撃てば、一発でシールドが消えるはずだ。発射。」
見つめるライカー。
ピカード:「シールド消失。」
バラン:「発掘品を探せ。遺跡の何箇所かに、バラバラに置いてあるはずだ。」
タレラ:「スキャン中。…見つけたわ。」
「座標をロックしてこっちに転送しろ。」
脇の転送台に、遺物が現れた。
バラン:「まだ後 2つあるはずだ。」
タレラ:「…転送ロックが効かないわ。」
ピカード:「シールドが復活したせいだ。」
バラン:「何としても手に入れなければ。…ディスラプターの照準をセットしろ。今度はこの基地を完全に破壊するのだ。」
コンソールに手を伸ばすピカード。その時、船が揺れた。

傭兵船に近づくエンタープライズ。
ウォーフ:「後部ディフレクターに命中。破壊はしていません。」
データ:「少尉、コミュニケーターの信号をスキャンしろ。…ライカー副長は乗っているか。」
ジュスティ:「わかりません。船の内部はスキャンできないんです。」
「交信しろ。」
ウォーフ:「どうぞ。」
「こちらは、宇宙艦隊エンタープライズだ。ただちに武装を解除せよ。抵抗はやめ、シールドを降ろせ。」

バラン:「そうか、お前だな。お前が奴らを呼んだんだな。」
ライカー:「一体いつそんなチャンスがあった。」
「逆らえば殺す。奴らに撤退するよう言え。…映像を出せ。」
スクリーンにエンタープライズが映っている。

エンタープライズのスクリーンには傭兵船。
ライカーだけが映った。
データ:「副長。ご無事ですか。」

バラン:「言え。」
ライカー:「……データ、ここから撤退しろ。命令だ。」

データ:「それはできません。その船は、連邦の領域を侵犯しています。止める義務があります。」
ライカー:『これは上官命令だ、即刻エンタープライズを撤退させろ。わかったか。』
トロイと顔を見合わせるデータ。「副長、事情説明を。」

ライカー:「命令するのにいちいち事情を説明する必要もないし、する気もない!」 通信を切り、データの映像は消えた。「大丈夫だよ、俺に考えがある。エンタープライズと通信リンクをつなげれば、俺のパーソナルコマンドで防御スクリーンを解除できる。」
バラン:「やれ。」
ナリクをどかせ、コンソールを操作するライカー。

ウォーフ:「少佐、傭兵船から何らかのシグナルが発信されていますが…ライカー副長のアクセスコードです。…防御スクリーンを消そうとしています。」
トロイ:「自分が捕らえられた時点で、コードも無効になってるのはわかってるはずなのに。」
データ:「わかってやったのです。副長は。ウォーフ。防御スクリーン解除。」
ウォーフ:「…少佐。それでは無防備になります。」
「承知の上だ。」
「でも、攻撃を受けたら…」
「実行するんだ。これは命令だ。」
「…了解。」

ライカー:「…やったぞ。…防御スクリーンが消えた。」
バラン:「撃て。」
ピカードは、ボタンに触れた。
ディスラプターを発射する傭兵船。
エンタープライズのワープナセルを直撃する。


※33: サケイザン Sakethan

※34: 船 (エンタープライズ) のシールドはまだ「防御スクリーン」と訳されているにも関わらず、基地の方はなぜか「シールド」

※35: 声はクラッシャー役の一城さんが兼任。一城さんはエンタープライズ (連邦) のコンピューター役を兼任することも多いので、傭兵船のものとしては不適切な配役かも

※36: terikon particle decay
吹き替えでは「テリン…」と聞こえます

※37: Lt. Sanders
(デレック・ウェブスター Derek Webster) 名前はエンドクレジットに含まれるだけで、言及されていません。声はチェコーティ役の仲野さんが兼任

・To Be Continued...
・感想など
TNG に 4つあるシーズン半ばでの前後編としては、初めて取り扱うことになります。ピカードが死んだという導入に始まり、どうせそれが間違いだろうということは誰にでも想像はつくんでしょうが、犯人側についているというのは面白いところですね。さらに艦長に加え、副長まで失うことに。特にシーズンをまたがない 2時間ものは冗長なこともありがちなものの、2代目サーヴィック役を含む多数のゲストのおかげもあってか、上手くいっている方だと思います。
本来 SF にありがちな「宇宙海賊」という設定は、ロッデンベリーが禁止した要素でした。第7シーズンならではですね。彼からの脱却・転換を図ったシリーズといえば紛れもなく DS9 でしょうが、このエピソードにも今までと異なった、悪く言えば違和感のある雰囲気が含まれるように感じました。冒頭の酒場での描写、地球人の密輸商人が問題なく受け入れられていることなどストーリー自体もそうですが、ほかにも DS9 との関連が多く見受けられます (ラチナムの言及、DS9 に先に登場した提督、異星人船はミラドーン船の使い回し、「宇宙囚人バンティカ」のメインゲストが出演)。
前シーズンに大学生が売り込んだ脚本が元で、当初はライカーは無関係でした。監督は製作者の Peter Lauritson で、TNG では今回以外に "The Inner Light" 「超時空惑星カターン」しか担当していません。


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