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TNG エピソードガイド
第38話「ホテル・ロイヤルの謎」
The Royale

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・イントロダクション
惑星に近づくエンタープライズ。
『航星日誌、宇宙暦 42625.4。我々は現在、セータ第116恒星※1系第8惑星の軌道に突入したところだ。クリンゴン船籍の巡航船から、この惑星の成層圏に奇妙な宇宙船の破片が浮かんでいるという報告を受け、当初の予定を変更して調査に来たのだ。』
ラフォージ:「ひどい星だ。窒素、メタン、液体ネオン。…惑星の表面温度は摂氏マイナス291度※2。おまけに風が秒速 312メートルですよ? フン。」
ライカー:「リゾート向けの星じゃないな?」
「…ええ、アンモニアの竜巻まである。」 図※3がブリッジのモニターに表示されている。「とりあえず、破片は見つけました。楕円の軌道を周回してます。」
「続けてくれ。…手早く調査を終えて、さっさとここから逃げ出したいからな。」
「同感ですね。」 身体を震わせるラフォージ。「ひどいな。」

作戦室のピカードは、ドアチャイムに応えた。「入れ。」 コンピューターをライカーの方に向ける。「フェルマーの大定理※4だ。覚えてるかね。」
ライカー:「ボンヤリとは。数学の時間は、ほとんど居眠りしてました※5から。」
「うーん。この公式はフェルマー※6が死んだ後、ノートの隅に書き殴ってあったものなんだ。…『n が 2 より※7大きい整数の時、x の n乗+y の n乗=z の n乗は整数解をもたない。』 そして、彼はこう書いて死んでいた。『以下がその、証明だ。』」
「思い出しました。…未だ証明は見つかっていない。」
「その通り。それ以来 800年、人はその謎を解こうとしている。」
「艦長も。」
「挑戦しがいがあるし、客観的な視点が身につく。つまり我々は偉大なる進歩を遂げたつもりだが、17世紀コンピューターもない時代に一人の数学者が発見した定理を、今に至るまでただの一人も証明できない。」
「例の破片を発見しました。軌道上です。」
「分析できるか。」
「いえ、破片の一部を収容しようと思ってますが。」
「では、そうしてくれ※8。」

転送室。
ピカードがやってきた。
ライカー:「マークがついてる破片を収容します。」
ピカード:「どんなマークだ。」
「わかりません。転送。」
操作するチーフ・マイルズ・オブライエン※9
板状の破片が転送されてきた。ライカーはオブライエンと共に、そのマークをピカードに見せる。
ピカード:「大きなパズルを拾ったようだな。」
ライカー:「どうやらそのようですね。」
そこにあるのはアメリカ合衆国の国旗※10と、「NASA※11」という文字だった。


※1: シータ116 Theta 116
原語では「これまでは探索されていない」とも言っています

※2: これでは絶対零度 (摂氏 -273.15度) を下回ることになり、マイケル・オクダらも見逃してしまったミスです。脚本では華氏 -291度 (=摂氏 -179.4度) になっていたので、それをそのまま摂氏にしたせいだと思われます

※3: セリフ中では言及されていませんが、惑星型として「Kクラス」と表示されています。TOS第41話 "I, Mudd" 「不思議の宇宙のアリス」より

※4: Fermat's last theorem
フェルマーの最終定理とも。このエピソードが放送されたのは 1989年ですが、93〜94年にプリンストン大学教授のアンドリュー・ワイルズが証明を発表しました。24世紀までに誤りが発見されたのでしょうか…。なお 95年の DS9第71話 "Facets" 「クルゾンの秘密」では、ワイルズの証明を踏まえた上での設定に変わっています (ちなみに、監督は今回と同じ Cliff Bole)

※5: 原語では「宇宙艦に乗る空想にふけってました」

※6: 原語ではピエール・ド・フェルマー (Pierre de Fermat)

※7: 吹き替えでは「z より」と誤訳

※8: "Make it so, Number One."

※9: Chief Miles O'Brien
(コルム・ミーニー Colm Meaney) 前話 "Contagion" 「埋もれた文明」に引き続き登場。声:辻親八

※10: これらの星条旗は、きちんと 52個の星がデザインされています。しかし左上の青地の広さが、現在のものとは異なっています (本来は青地のすぐ下が白ラインとなる。青地の高さは赤白ライン 7本分なのに、6本になっているため)。なおクロノロジーのイラストでは正しくなっています

※11: NASA
アメリカ航空宇宙局 (National Aeronautics and Space Administration)。映画第1作 "The Motion Picture" 「スター・トレック」では、技術支援としてクレジットされています。今回使われているロゴは、実際には 1992年以降は使われなくなりました

・本編
観察ラウンジ。
データ:「分析の結果、破片は地球で造られた船の一部に間違いありません。時代は 21世紀の半ばです。」
ピカード:「いやあ、そんなバカな。その頃の地球の船では、こんなに遠くまでは来られない。」
「しかし数値はそう示していますし、破片についていたマークもそう考えれば納得がいきます。」
トロイ:「破壊された原因は、何かわかった?」
「…それについては、破片そのものよりも明らかです。表面には、分子自体が破壊された形跡があります。」
ライカー:「分子を、どうやって。」
「24世紀の武器で、攻撃されたのです。」
ピカード:「謎が更に深まったな。」
ウェスリーの通信。『艦長、惑星表面に建物を発見しました。』
向かうピカードたち。

ブリッジのモニターに、建物の図が表示されている。
ウェスリー:「ビルのような形です。※12凍ったメタンの土台に建ってますね。…嵐の起こってる地域のど真ん中です。」
ライカー:「あの建物の周りだけ酸素が存在するんだ。」
ピカード:「あの建物と船の破片には、何らかの関係があるのか。」
ラフォージ:「不明です。」
「どう思う。」
ライカー:「降りて調べてみるしかないでしょう。」
「呼吸はできる。危険そうな生命体も、どうやら見当たらないようだし。最小人員で上陸しろ。」

オブライエンはやってきたライカーに言った。「…もう少し待って下さい、アクセスできるところが狭いんです。」
ライカー:「フェイザーを麻痺にセット。こっちは OK だ。」 データとウォーフも転送台に立つ。
「ロックしました。スタンバイ完了です。」
「転送。」
転送される 3人。

転送されてきたのは、真っ暗な場所だった。上空に大気の層らしきものが見える。
トリコーダーを使うデータ。「1キロ以内にアンモニアの嵐があります。しかしこの空気層は、吹き飛ばされそうにはありません。」
ライカー:「台風の目みたいだな。」
ウォーフ:「副長。…何でしょう。」
目の前に、回転ドアがあった。ドアだけがそこにあり、回っている。
ライカー:「ドアだ。」
データ:「建物はここですが、なぜ見えないんでしょう。」
コミュニケーターに触れるライカー。「エンタープライズ、無事上陸しました。この空間は非常に不思議なところです。風もありませんし、音もせず動きもない。すぐ近くに嵐が吹き荒れているのに。」
ピカード:『建物についてわかったことは。』
「それが、古い回転ドアがあるんです。きっと入口でしょ。」

ピカード:「回転ドアか。副長、用心して進め。」
ライカー:『了解。』

ライカー:「任務を遂行しよう。艦長、いま入ります。」

無言のピカード。

回転ドアを抜ける 3人。データはぶつかりそうになる。
中は広い部屋だった。人々の声も聞こえる。
フェイザーを納めるライカー。
カジノのテーブルがあり、カードゲームを楽しむ人であふれていた。20世紀風だ。
ウォーフを見るライカー。ウォーフはドアの方を振り返る。

ピカード:「エンタープライズから上陸班、応答しろ。」
ラフォージ:「向こうからの信号が全く入ってきません。」
「…転送室、上陸班をロックしてすぐ収容しろ。」
「ロックする目標がないんです。」

ライカー:「ライカーからエンタープライズ。建物に入りました。」
データはその光景に目を奪われている。
ライカー:「ライカーからエンタープライズ、どうぞ? …応答して下さい。」

ウェスリー:「惑星からの信号が途絶えたのは、回転ドアを入った瞬間です。」
ピカード:「何が障害になってる。」
ラフォージ:「不明です。」
「向こうは受信を?」
「いえ。全ての周波数を試して、使えるものを探してみます。」
「頼んだぞ。」
スクリーンの惑星を見るピカード。

データ:「副長、通信が途絶えたらすぐ艦に戻らないと。」
ライカー:「なぜだ、危険はない。少し見てから帰ろう。」
通りかかったベルボーイ※13。「チェックインでしたら、フロントの方へどうぞ。」
ライカー:「ということだ、お願いしよう。」
フロントへ向かうライカー。ベルを鳴らし、咳払いする。
副支配人※14が気づいた。「お待ちしていました。旅はいかがでした。」
ライカー:「…知ってるのか。」
「存じ上げてますとも。遠方からの 3人の御客様。」
「ああ、惑星連邦から来た。」
「そうでしょうとも。ホテル・ロイヤル※15へようこそ。」
先ほどのベルボーイが、そばのドアから出てきた。「失礼。リタ※16から電話は?」
副支配人:「後にしなさい。」
「後にしろ? 俺の命が懸かってるんです。リタからの電話は。」
ライカーたちに気を遣う副支配人。「ないよ。…君のためにも、ニタの方は早く忘れた方がいい。」
ベルボーイ:「ミッキー・D※17 なんか怖くない。」
「バカを言うな。ミッキー・D の怖さをわかってないだけだ。」
「電話があったら、教えて下さい。」 ベルボーイは戻っていった。
「フン。…うーん。若さとは困りものですな。ミッキー・D のようなゴロツキの情婦と駆け落ちしようだなんて。さあ。こちらがルームキーです。」
それぞれ受け取るライカーたち。
副支配人:「そして、ホテルからカジノのチップを御進呈します。…ごゆっくり?」
ウォーフ:「ここは何だ。…なぜこんなところにいるんだ。」
「ここはホテル・ロイヤルです。私がなぜここにいるかは、お話しする気はありません。」
ライカー:「惑星の名前を聞いてるんだ。」
「何とおっしゃいました。」
「この星だよ! 何と呼んでる。」
「地球です。お客様は何と?」
ウォーフ:「セータ8号星※18と呼んでる。」
「ほう、なるほど。」 仕事に戻る副支配人。
データはフロントを離れ、トリコーダーを使う。「副長。」
ライカー:「どうした。」
「誰にも生命反応が出ないんですが。」
ウォーフ:「生きていないってことか。」
ライカー:「じゃこれは一体。」


※12: 図の左下や右下に、「ケイ・ユリ係数 (Kei-Yuri factor)」と表示されます。日本のアニメ「ダーティペア」にちなんで

※13: Bellboy
(レオ・ガルシア Leo Garcia) 声:古田信幸、DS9 ダマール、VOY ホーガン、FC ホークなど。一部資料では誤って「田信幸」

※14: Assistant manager
(サム・アンダーソン Sam Anderson) 声:仁内建之、旧ST5 スポック、旧ST6 マッコイなど

※15: Hotel Royale
ジェームズ・ボンド作品の第一作である、「カジノ・ロワイヤル」にちなんだという説も

※16: Rita

※17: Mickey D

※18: シータ8号星 Theta VIII

ウォーフは尋ねた。「こいつらは、機械なんですか。それとも我々を欺くための幻影。」
データ:「いや、これは幻影ではない。存在はしているが、人でも機械とも分類されない何かだよ。例えばこちらの物体は、体内に DNA 構造をもっていません。」
テキサスハットを被った男※19。「おいおい。物呼ばわりとは、別れた女房の言い草だぜえ。いいねえ。俺も一発ビジネスだ。」
データ:「ここでどんな『ビジネス』を一発始めるんでしょう。」 ついていく。
微笑むライカー。

エンタープライズ。
ピカード:「どんな状況だ。」
ウェスリー:「いま、エンコード法を変えて試しているところです。」
ラフォージ:「これだけで、何百通りのパターンが増えます。」
ピカード:「知能をもつ存在が妨害しているのか。」
「うーん。いや、それはまだ断言できませんね。」
艦長席に戻り、制服の裾を伸ばすピカード。「帰ってこないとは、ライカー中佐らしくもない行動だ。エンタープライズとの通信が途絶えたら、即刻転送された地点に戻るという規則だ。」
トロイ:「危険な状況は感知されません。むしろ副長は向こうで遭遇した状況を、楽しんでるようです。」
「『楽しむ』。」 ため息をつくピカード。

ゲームを楽しむ先ほどの男。「ドーンとチップを盛ってくれ、お兄さん。」 笑う。
隣の女性、ヴァネッサ※20。「もう!」
近づいてきたデータに話す男。「お前初めてなんだろ?」
データ:「そうです。」
男は自分の帽子を被らせる。「とにかく座れ、俺がやり方を一から教えてやらあ…。…まずは張りな。」
チップを置くデータ。
男:「いいねえ。」
データの前にカードの束が置かれた。
ヴァネッサ:「あなたがカードを切るの。」
データ:「ああ、ポーカーですか。」
男:「いやいや、ブラックジャック。」
「…ブラックジャック? アクセス。」 目を動かすデータ。「ああ、またの名を『21』。合計数が 21 に近い方が勝ち。絵札は全て 10 に数え、エースは 1 または 11。そのほかのカードはそのまま。」
「その通り、わかってんな。」
データは見事なカード裁きを見せた。
口笛を吹くヴァネッサ。
男:「やーるじゃねえか。…さあいこう、一発稼がせてくれよう?」
配っていくディーラー。
ヴァネッサ:「21、21、21、21…」
男:「いいから手を見てみなって。さっきからずーっと負け続け。どれ。…お嬢さんの手は 15 で、ディーラーは 10 を持ってる。」
「どうしよう、テキサス。ヒット? スタンド?」
「勝ちたいんだろ? ヒットしなきゃ。」
「ヒットして。」
カードはキングだった。声を上げる 2人。
ヴァネッサ:「もう、いやあ!」
テキサス:「残念だねえ、ヒットだ。…21! よーし、もらった。いやあいいねえ…。」
データ:「ヒットして。もう一枚。」
「そのくらいでいいんじゃねえのか?」
「このゲームの目標が合計 21ポイントにすることなら、最低あと一枚は必要です。」
ヴァネッサ:「ああ。」
テキサス:「おい、最初から無理するんじゃねえよ。カードが 5枚の時のオッズをお前知ってるのか? わざわざ金をドブに捨てるようなものだ。」
データ:「ヒットして。」
データはカードを置いた。
テキサス:「お前!」
ヴァネッサ:「ああ!」
「こりゃまたたまげた。…へえ、ただカードをめくってるわけじゃねえんだな。」
データ:「カードの数値がそのまま賭けに結びつくなら、当然のことだと思われますが?」
ヴァネッサ:「…そうね?」
ライカーが来た。「楽しんでるか?」
データ:「楽しみ? ああ、ある種の楽しみは確かにありますね。でも私がここにきたのは調査のためで…」
「わかった、やめろ。すぐにここを出る。」
「了解しました。」
テキサス:「途中で抜けるのか。」
ライカー:「申し訳ありませんが。」
「チップは見張っとくよ。」
データ:「ああ、ご親切に。」
「おい待て! …帽子。」
「ああ。これは失礼。」
テキサスは帽子を返された。「さあいこう。」

ピカードは尋ねた。「変わりは。」
ウェスリー:「引き続き違うエンコードで試しています。周波数の範囲に難点があって。障害も非常に変則的です。」
ラフォージ:「あの建物を覆っている物質が、水素と炭素の螺旋状のパターンでできているんです。」
ピカード:「その物質が電波を拡散したり、乱反射してるのか。なるほど通らんわけだ。」
「その通りです。」
ブリッジのモニターの図を見るピカード。「こりゃまた思い切ったことをやってるな、大尉※21。」
ラフォージ:「あの物質とフェイザーとで、分子レベルの比較をしてます。」
「貫通できるのか。」
「それはまだ、断言できません。試してみますか?」
「そうしてくれ※22。」

ライカーは回転ドアへ向かった。ウォーフとデータも続く。
だが一周して、そのまま元のホテルに出てきてしまった。
ライカー:「もう一度。」
やはり同じだ。うなるウォーフ。
ライカー:「ほかの出口を探そう。」

スロットマシンを楽しむ老婆たち。
データは話しかけた。「失礼、ああ…」
離れる老婆。
もう一人に尋ねるデータ。「お伺いします。正面のドアのほかに出口があれば教えていただけますか。」
音が鳴り、喜ぶ老婆。
データ:「あの、すみません。」
ライカーもウェイトレスたちに話しかけるが、無視される。「失礼。…ああちょっとうかがいたいんですが、出…」

ウォーフはスロットマシンの後ろにある、木の窓を見つけた。押してみるがビクともしない。
近づくライカー。「こりゃまた随分丈夫そうだ。」
ウォーフ:「…フェイザーガンを使用しましょう。」
「いいだろう。」
調整し、発射するウォーフ。だが変化はない。
出力を上げても無駄だ。
データがやってきた。「副長、ほかに出口はありません。閉じ込められたんです。」


※19: テキサス Texas
(ノーベル・ウィリングハム Noble Willingham ドラマ、たどりつけばアラスカ「幽霊の置き土産」(1992) に出演。2004年1月に死去) 声:寺島幹夫、TNG スコットなど

※20: Vanessa
(ジル・ジェイコブスン Jill Jacobson DS9第98話 "Broken Link" 「可変種の脅威 第二幕(前編)」のシャラン・アロイヤ (Chalan Aroya) 役) 名前は訳出されていません。声:池本小百合

※21: 吹き替えでは「尉」。第2シーズンではラフォージは大尉に昇進しています

※22: "Make it so."

エンタープライズ。
『航星日誌、補足。未だ、セータ8号星の軌道上にいる。上陸班とは、連絡が途絶えたままだ。』
ラフォージ:「もうすぐです、艦長。あと何分かの内に、連絡が取れるはずですよ?」
トロイ:「向こうの状況の変化を感じます。」
ピカード:「…どのように。」
「ライカー副長が、緊張を感じています。狭いところに閉じ込められたと。」

報告するウォーフ。「フェイザーガンは何に対しても効果がありません。」
データ:「打開策は限られてきますねえ。」
ライカー:「確かにな。とにかく俺たちの力で出るしかない。あのフロントに話を聞こう。」

ベルボーイは銃を取り出し、装備した。
副支配人:「早まるんじゃない!」
ベルボーイ:「いえ。考えた末の決断です。」
「そんなものでミッキー・D を脅せると思ってるのか。」
ライカーがフロントに近づく。
ベルボーイ:「何としてもリタと別れさしてやる。」
副支配人:「お前には手の余る女だ。おまけに人の情婦だぞ。」
「ああ、それも今日限り。今夜が最後です。」
「なあいいか、お前の傷ついた姿は見たくない。よりによってあんな女のために。」
「リタが悪いんじゃない。なーに、ミッキー・D なんかにやられたりはしない。見てて下さい。」 ベルボーイは歩いていった。
ため息をつく副支配人。
ライカー:「教えてくれ。」
副支配人:「どうも、お楽しみ頂いていますか…」
「今すぐここから出たい。」
「出口のサインなら出てますが?」
「でも出られないんだ。」
「我々のサービスについて御不満がございましたら、支配人の方に御相談下さい。」
「ならばすぐ支配人を呼んでくれ。」
「今はちょっと忙しいもので。」 離れる副支配人。
ピカードの通信が届く。『ライカー、聞こえるか。』
ライカー:「はい。だいぶ雑音が入ってますが、ちゃんと聞こえてます。」

ピカード:「副長、なぜすぐそこを出ないのだ。」

ライカー:「試みてはみたんですが出られないんです。とりあえず、危険はないようなんですが。」

ピカード:「物質的な構造の影響で、通信が難しかったが今対策を講じている。」
ライカー:『では待機します。』
ウェスリー:「この周波数では不安定です。」
「ほかを探せ。」
「了解。」
「…状況がつかめんな。」

ライカーに話すデータ。「副長。この建物の中に一部だけ構造の異なるものが存在します。それも、人の DNA です。」
ライカー:「どこだ。」
「31.9メーター上空、丁度この真上です。」
ウォーフ:「向こうのターボリフト※23で行けるでしょう。」 エレベーターの前に立つ。「どうやら、故障してるようです。」
上行きボタンを押すデータ。ドアが開いた。
中に入り、外側に向かって真っ直ぐ立つライカー。

エレベーターを出る 3人。
データは部屋の一つ※24の前に立った。「DNA 信号はこの部屋から出ています。」
ノックするライカー。合図した。
フェイザーを取り出し、中に入るウォーフ。
データ:「反応が強くなっています。」
ベッドが見える。
ライカー:「生命反応はあるか。」
データ:「いいえ。」
ライカーは盛り上がった毛布をめくる。
そこには、ミイラ化した遺体があった。
データ:「…地球人です。男性。」
ライカー:「眠っている内に独りで死んだのか。」
ウォーフ:「何て死に方だ。」
データ:「死んでから、283年経過しています。腐敗がそれほど進んでいないのは、この安定した環境のおかげでしょう。」
ライカー:「しかし信じられないな。なぜこんなところで死んだんだ。」
ウォーフ:「副長。」 クローゼットから衣服を持ってきた。
データ:「これは御存知ですか?」
袖のマーク※25を見るライカー。「アメリカだ。」
データ:「星が 52個※10。」
「紀元2033年から 2079年までのの間だ※26。あの破片の年代と一致する。」 名札を見るライカー。「S・リッチー大佐。どうぞ、安らかに。」
リッチーの遺体を見る 3人。
通信が入った。『ピカードから副長。』
ライカー:「つながった。ライカーです、どうぞ。はっきり聞こえてます。」

ピカード:「現在の状況は。」
ライカー:『この建物は、明らかに20世紀の地球の様式です。外に出られないのが難点ですが。』

ピカード:『こちらもまだ転送を使えないんだ。』
ライカー:「もう一つ、ここで地球人の死体を見つけました。…確認を願います。リッチー大佐、アメリカ人。イニシャルは『S』、破片と同じ年代です。」

ピカード:「調べろ。」

棚を開けたウォーフ。「副長。こんな物が。」
ライカー:「本か。小説だ。ホテル・ロイヤル。要約してくれ。」
本をめくり、一気に読んでいくデータ。

ウェスリー:「情報の確認完了。」
ピカード:「副長。」
ライカー:『どうぞ、艦長。』
「先ほどの情報が出た。大佐、スティーブン・リッチー※27はアメリカの宇宙探査船カリブデス※28の船長だった。探査船の打ち上げは紀元2037年7月23日。太陽系を越えての有人飛行としては、3度目の試みだった。遠隔測定の失敗で地球には帰還せず。…しかし本当に、そのリッチー大佐の死体なのか。」
『ええ、艦長。ほかに小説も見つけました。トッド・マシューズ※29の、題はホテル・ロイヤル。この建物の名前です。データ。』

データ:「艦長。これはギャンブルに取り憑かれた人間たちが、やがて犯罪の罠に落ちていく物語です。語り手はヤクザな色事師ミッキー・D。彼はクライマックスで登場して、顔色一つ変えずにホテルのベルボーイを射殺します。ほかの章では中年の男が若い女と共謀して、女の夫を殺害します。女はその遺産を浪費して…」
ライカー:「艦長つまりは今データが言ったような本の内容が、そのままここの状況なんです。」

ピカード:「おかしな話だ。」
ライカー:『それから、一日だけつけた日記が一冊。リッチー大佐が書いたものです。』

ピカード:『読んでくれ。』
ライカー:「はい。『いつかこの日記が、人の目に触れることを願って。我々の探査船は明らかに異星の生命体によって汚染され、乗っ取られてしまった。乗務員は私以外全員殺されたのだ。気がつくと私は、ここホテル・ロイヤルにいた。部屋にあった小説に書かれたとおりの場所だ。それから 38年間、私はここで生きた。そしてようやく理解した。ここは我々を壊滅させた異星人が、償いのつもりで創ったのだ。彼らは我々のシャトルに残されていたこの小説が、地球での日常生活や習慣を描いているものと思ったのだろう。これが私の故郷と思っているに違いない。この環境で生きるのは地獄の苦しみだったが、異星人たちには何の恨みもない。悪いのはこの二流小説だ。飾ったセリフと中身のない人間ばかりで…いっそ喜んで死を受け入れよう。』」

ピカード:「…なるほど、よくわかった。そのホテルが存在するわけはな。でもなぜ出られない。」

データと顔を見合わせるライカー。


※23: 吹き替えでは「エレベーター」

※24: 画面上では読み取りにくいですが、脚本では「727号室」

※25: ミッションパッチはアポロ17号 (アポロ計画最後) のものを流用しており、サーナン、エヴァンス、シュミットの名前も見えます

※26: 州が増えたのか、減ったのか、もしくはアメリカ自体が消えたのかは不明

※27: スティーブン・リッチー大佐 Colonel Stephen Richey
画面上には登場しませんが、モニターの表示によればミドルネームのイニシャルは「G」(書籍「スタートレック ネクストジェネレーション コンティニューイング・ミッション」にオクダグラムが掲載)

※28: Charybdis
カリブデス (カリュブディス) はギリシア神話に登場する、メッシーナ海峡のそばの洞窟に棲んでいた怪物。吹き替えでは「カリブデス」。前項目のオクダグラムによれば、カリブデスのクルーは 15名、次のミッション船は「ジェイコブ (Jacob)」

※29: Todd Matthews

エンタープライズ。
ピカード:「副長。」
ライカー:『はい。』
「ラフォージの提案なんだが、フェイザー砲を使ってホテルを覆う空間に亀裂を入れられるそうだ。」

ライカー:「ということは、この惑星の大気も入ってきますね。」
データ:「酸素が確保できるのは、それから約12秒間です。」

観察ラウンジにはポラスキー※30も来ている。「その通り。蘇生装置もあまり当てにはしない方がいいわ?※31
ライカー:『でも蘇生は可能なんですね。』
「ええ、理論的には。」

ピカード:『ただ副長、誤解はしないで欲しい。我々は必要なら何ヶ月でも待つが、非常手段も考えておかねばなあ。』

ライカー:『今のが我々のやる気を出させるためでしたら、相当効きましたよ?』

部屋の電話が鳴った。
受話器を取るウォーフ。「何だ。……副長、女がルームサービスはどうかと聞いていますが。」
データ:「…恐らく、部屋の掃除のことではないでしょうか?」
ライカー:「断れ。」
ウォーフ:「結構だ。」
「何か言ったか。」
「キッチンは 24時間空いてるのでいつでも電話を掛けろと。」
「ホテル内を調査してみよう、二手に分かれるんだ。君たちはロビーに降りてもう一度くまなく調べろ。客と話して、何か情報をつかめ。私はほかの階を見る。」
ドアを閉めて出ていくウォーフ。

エンタープライズ。
作戦室に入ったピカードは、コンソールを使う。「コンピューター、検索して欲しい。21世紀の小説でホテル・ロイヤル、作者はトッド・マシューズ。」
コンピューター※32:『アクセスします。』
「あの建物が、小説通りなのだとしたら出方も小説の中にあるはずだ。…ああ。『それは暗い嵐の夜だった。※33』 …暗雲立ちこめてきたな。」
トロイ:「あきらめないで。」

エレベーターを出るデータとウォーフ。
データ:「この人たちの中に紛れてみるのはどうだろう。自然に近づいて、何気なく質問する。名案かもしれない。」 独りで歩いていく。
データは誰かを見つけたらしい。
ヴァネッサ:「絶対よ、絶対 4 よ。もう!」
まだブラックジャックを楽しむテキサス。「ああ、惜しいねえ。」
ヴァネッサ:「悔しい。いくらもってんのかしら。」
「賭けのテーブルでチップを数えるのは縁起が悪いんだぞ。」
「ほんと?」
テキサスの肩をつつくデータ。「失礼します。…何でもないんですが、ご出身はどこです。」
テキサス:「そらあテキサスよ※34。」
「ああ…ここへはどうやって?」
「ヴェガスへ? …車で来た。91年型のキャデラックでほんの一っ走りさ。」
「いま、その自動車は。」
「外に停めてある。そんなこと聞いてどうしようってんだ。」
「そこへ連れてって下さい。」
ヴァネッサ:「ヒットして。…お財布空っぽよ。」
テキサス:「そりゃまた今度にしてくれ。…お嬢さんを助けるんで手一杯なんだ。」
データ:「あなたもこの中に囚われたんですよ? 私もそうです。」
「負けてるときはそう感じるもんだ。俺も何とかツキを変えてこのお嬢さんを助けようとしてるんだがね。いま何とかしねえとドン詰まってにっちもさっちもいかなくなっちまう。…ま、どうなるか見てな。」 ヴァネッサに顔を近づけるテキサス。
ヴァネッサ:「…これ、スタンドよね?」
「ヒットだ。」
データ:「…オッズから言って、待った方がいいかと。」
データを睨むテキサス。
ヴァネッサ:「どうすればいいの?」
テキサス:「…ヒットしたいんだろ?」
「…ヒットして。」 オーバーした。「もう、またダメよ!」
テキサス:「ああ。」
「ほんとにスッカラカンだわ。…私どうしよう。」
「ああよーし、よしよしよし…。」 データを見るテキサス。

ライカーもロビーに戻ってきた。「わかったか。」
ウォーフ:「何も。」
副支配人の声。「リタが電話してきた。」
ベルボーイ:「ほんとに? …彼女何て。」
「何と言ったらいいか、その泣いてた。」
「泣いてた?! クソッ、ミッキー・D は何でも自分のものだと思ってる。それも今日限りだ。」
音に振り向く副支配人。回転ドアから、大袈裟な態度の男性が入ってきた。
見続けるベルボーイ。
近づくミッキー・D※35。「お前か。」
ベルボーイ:「あんたに電話したんじゃない! リタにしたんだ!」
「もうやめてくれって言ってたぜ。」
副支配人:「いいか、2人とも落ち着け。ここでトラブルは困るんだ。やるなら外でやってくれ。」
「いいぜ? …やってやろう。覚悟はできてるな。決着をつけてやろうじゃねえか。」

その会話を、作戦室でもピカードとトロイが聞いていた。
ベルボーイ:『昔は俺もあんたらに憧れてたんだ。スーツや、ピカピカの靴。それさえありゃ一人前になれると思った。でも違ったよ。お前なんか何でもねえ…』
音量を下げるピカード。
トロイ:「こんな会話信じられません、ほんとにこんな風に話すんですか?」
ピカード:「現実ではないんだ。いいか、ここで起こってることは全てリッチー大佐が言うところの二流の小説なんだ。」
ベルボーイ:『…今お前のせいで彼女泣いてばかりいるが、でもリタは彼女には才能がある…』
トロイ:「もう行ってよろしいですか。」
ミッキー:『あの女は俺の女だ。』
ベルボーイ:『いい加減認めろよ。リタがあんたといるのは、入院費を払ってくれるからだ。リタを自由にしてくれ。』

ミッキー:「少し、外へ出て話をしようじゃねえか。」
副支配人:「…気をつけろよ。」
ベルボーイ:「大丈夫です。」
フェイザーを取ろうとするウォーフ。
ライカー:「小説の中の話だ。放っておけ。」
ドアへ向かうベルボーイ。するとミッキーは銃を取り出した。
ベルボーイは背後から撃たれる。驚く客。
近づき、銃を納めるミッキー。「命を懸けるほど、価値のある女なんかいねえよ。…殺すのはいい。殺されちゃダメだ。」 出ていった。
ミッキーが戻ってくる気配はない。
ライカー:「ライカーからエンタープライズ。」

ピカード:「どうした、副長。」
ライカー:『奇っ怪なことが起こりました。』
「知ってるよ、ミッキー・D がベルボーイを殺したんだろ。」

ライカー:「そのミッキー・D が、出られなかったドアから出たんです。」

コンピューターを操作するピカード。「小説だと、244ページだ。」

ライカー:「そうだ、小説。結末は。」

ピカード:「…二人の恋物語は男が殺されて終わり。で、ホテルは買収されめでたしめでたし。そんなとこだ。」

ライカー:「ホテルを買収、誰がです。」

ピカード:「…誰とは書いてない。…ただ『外国の資本家』とだけ出てきている。購入価格は 1,250万アメリカドルだ。責任者に、副支配人を任命して帰ったとある。」

ライカー:「…艦長。出方がわかりました。ここを買えばいいんです。」


※30: 当初はこの辺りで、"I'm a doctor -- not a magician." 「私は医者よ、マジシャンじゃないわ」というセリフがありました

※31: 原語では「ほぼ瞬間的に低温化が行われるわ」

※32: 声はヴァネッサ役の池本さんが兼任

※33: "It was a dark and stormy night..." は、元々はエドワード・ジョージ・ブルワー・リットン作 "Paul Clifford" (1830年) の書き出し。史上最悪の導入文とされており、スヌーピーが登場するマンガ「ピーナッツ」でもネタにされています

※34: 原語では「テキサス州ラボックよ」

※35: Mickey D
(グレゴリー・ビークロフト Gregory Beecroft) 声:檀臣幸、TNG ヒューなど

シータ8号星。
データ:「こういうのは確率の問題なんです。一定の条件下で連続して行う場合は単純ですよ。」
ライカー:「説明しろ。」
「2つのサイコロで 7 か 11 を出せばいい※36ということは、その確率を考えればいいわけですが。7 か 11 を出す組み合わせは 8通りあります。全体として考えると、36通りの内の 8通りで…」
「よし、わかった。…いけるか。」
「できますとも。」
テーブルにはテキサスがいる。「よーしいけ、もう一回 8 だ。勝負を懸けろ、いけいけ!」
サイコロを投げるヴァネッサ。両方 1 だ。
テキサス:「あー、ピンゾロか。」
データ:「2 か 3 か 12 が出た場合は、その場で負けです。」
ヴァネッサ:「スッカラカンじゃない。」
テキサス:「気にすんな、たかが金だ。」
「あなたが負けちゃったら私、今夜どこで寝りゃあいいのよ。」
「心配すんな、全くよう。俺が何とかしてやっから。」
テキサスにお尻を触られ、飛び上がるヴァネッサ。
ヴァネッサに続いてサイコロに息を吹きかけるテキサス。「さあいけ、投げろ! さあどうだどうだ! ああ、ちくしょう。…お前の番だ。」
ライカー:「任務だぞ?」
「こいつがツキを変えるかもしれん。」
データはサイコロを手に取り、ヴァネッサに息を吹きかけさせた。投げる。
胴元※37:「6、6 がナンバーです。」
テキサス:「いいか、6 なんかうちの婆ちゃんでも出せるぞ。いけ、投げろ!」
ライカー:「7 か 11 を出すんじゃないのか。」
データ:「6 も、ポイントとして有効なんです。ただし振り続けて、7 を出す前に同じ 6 を出せばですが?」
「しかし 6 のみ有効となると、だいぶ確率が下がるな。」
「ものには必ず偶然ということがあります。だからギャンブルと呼ぶのでしょ?」
ヴァネッサ:「そうね?」
サイコロを振るデータ。
胴元:「7 で流れました、次の方。」
ヴァネッサ:「ツキが変わるなんて嘘ばっかり。」
テキサス:「もう一度やってみろ、何か起こる気がするんだ。」
サイコロを手にするデータ。「副長。このサイコロはバランスが不適当です。このバランスですと出やすい目が変わって…」
ライカー:「修正できるか。」
「…ええ、できますが? …もう一度試してみます。」 データは握り締めた。「ではビジネスを始めましょう。」 息を吹きかけて投げ、指を鳴らす。
テキサス:「11 だよ! 見ろよ! もう何回か勝って、景気づけてくれよな!」 笑う。
また投げるデータ。
胴元:「7 で勝ちです。」
テキサス:「まただー! …こりゃ縁起がいいや、続けていけほらー!」
してやったり、という顔をするデータ。
ライカーも笑い、チップを置く。「このまま全部、さあいけ!」
テキサス:「さあもう一発、頼むぞ坊や!」
サイコロを投げたデータは、拳を握り締めた。同じ仕草をし、手を引くライカー。
2人を見るウォーフ。
テキサス:「やったぜ、まだまだだ!」

エンタープライズ。
艦長席のピカード。「副長、報告しろ。」

ライカー:「いい調子で勝ってますよ、艦長。」 騒ぐ声が聞こえる。
ピカード:『あまりケチケチするんじゃないぞ。』
「え?」

ピカード:「本で、その外国の投資家はどう書かれてると思う。『気前のよさは天下一品』だ。」

ライカー:「了解、心得ました。」
副支配人がチップの箱を運んできた。
テキサス:「ほい、セブン! やるもんだー!」
ヴァネッサ:「テキサスったらー。あったまいいのね。」
「…顔だっていいだろ、え?」
ウォーフ:「もう十分では。」
ライカー:「いや、まだまだ足りないよ。計算してるか。」
データ:「もちろん? 1,230万です。…ですから次には、70万賭けましょう。」
「いいや、全部賭けろ。」
「しかし、ここの価格は 1,250万ドルですが?」
「どっさり御祝儀をやるんだよ、データ。」
「え?」
「いいから賭けろ。さてと、どうも御苦労様だね※38。」 チップを配っていくライカー。「カクテルを配ってくれた君も。これを外の駐車係に渡してくれ。」
ボーイ:「かしこまりました。」
副支配人:「お気遣いどうも。」
ライカー:「君にも、ツキを呼んでくれた御礼だ。」
ヴァネッサ:「ありがとう。」
「列車が来たらみんなで乗ろうってな。」
テキサス:「そうか? 俺はこの駅で降りるぜ。18回も連続で勝ちゃもう、この坊主のツキも落ちるはずだ。出ない方に賭ける!」
ヴァネッサ:「バッカじゃないの?」
データ:「賢明な賭け方とは言いかねますが。」
テキサス:「そうさ。これがギャンブルってもんだ、転がせ!」
息を吹きかけたデータ。ヴァネッサにもさせる。
投げたデータは、サイコロを見ずに指を鳴らした。
胴元:「7 で勝ちました。」
大歓声が上がる。
副支配人:「こいつは本物だ。」
テキサス:「7 が出るってわかってやがったな。知っててハメやがったんだ。」
データ:「ご忠告したはずですが?」
「どうしてなんだ。俺に、恨みでもあるのか? 車を見せなかったからか?」
ケースを渡すライカー。「もういい。」
データ:「現金にしていただけます?」
副支配人:「残念ですがそんな現金は。」
ライカー:「じゃあ 1,250万ドルは取っといてくれ。残りは、みんなに御祝儀だ。」 喜ぶ客。
「ではあなた方が外国の。」
「そうだ。」 小説を見せるライカー。「俺たちがここの、全てを買い取った。あとは君に任せたぞ?」
テキサス:「あんたら気に入ったよ、イキじゃねえか。酒でもおごらせてくれ。」
「いやどうぞ、ごゆっくり。ダイスのツキは譲った。」 ライカーは小説をテーブルに投げ、歩いていく。
「任せとけ!」 口笛を吹くテキサス。
ドアの前に立つ 3人。
通過すると、外に出ることができた。
ライカー:「上陸班よりエンタープライズ、ホテルを出ました。転送を。」

ピカード:「お帰りの時間かな。転送室、上陸班準備完了した。収容しろ。」

転送されるライカーたち。ドアは回り続ける。

エンタープライズ。
ドアチャイムに応えるピカード。「入れ。」
ライカー:「艦長。」
「ご苦労だったな。」
「おかしな経験でした、ほんとに。それにまだ、なぜリッチー大佐の船がこんな遠くまで来れたのか。…不可能だったはずなのに。」
「これは推測だが、ホテルを創った異星人に連れてこられたのかもしれんな。…恐らく、人間という存在がとてももろいものだとは知らなかったんだ。…殺すつもりはなかった。」
「それにしても不可解です。」
「フェルマーの定理のように、解けない謎もあるものさ。」
シータ8号星を離れるエンタープライズ。


※36: クラップスというゲーム

※37: 声はオブライエン役の辻さんが兼任。エキストラ

※38: 原語では、ここでスタッフの名前を「ズィギー (Ziggy)」と呼んでいます。エキストラ

・感想など
いかにも初期らしい雰囲気で、ロッデンベリーの「人造人間 (アンドロイド) クエスター」(1974) に似たカジノのシーンで楽しませてくれる話です。本国より、日本の方が好意的に受け入れられているような感じがします。
ありえない温度、今や証明されてしまったのに最初と最後でネタにされているフェルマーの定理、その誤訳、NASA の使われなくなったロゴ、少しおかしい星条旗、そしてどう見ても人間っぽいデータ…といったツッコミどころが多く、それがまた不思議な印象を出しているとも言えます。なぜか最後まで登場しないホテルの支配人は、元々は種明かし役として出てくるはずでした。脚本クレジットの Keith Mills は Tracy Torme のペンネームであり (LD 解説では逆)、このエピソードで共同製作総指揮の Maurice Hurley と対立したため、その後一話だけを担当して TNG を離れました。


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