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エンタープライズ エピソードガイド
第56話「美しき潜入者」
Rajiin

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・イントロダクション
ズィンディ評議会の人間ズィンディ1※1。「研究所はいくつ※2破壊されたのだ。」
人間ズィンディ2:「ほとんど全部だ。そして、研究員が 3名死亡した。」
爬虫ズィンディ※3:「デグラ、研究への打撃は。」
デグラ※4と呼ばれた人間ズィンディ2。「データがどれだけ失われたか把握できていない。だが遅れが出るのは必至だろう。」
昆虫ズィンディ1:「(どの程度?)」
「数ヶ月、まだ正確には言えない。」
「(人間※5を野放しにはできん)」
爬虫ズィンディ:「奴らはトレリウム鉱山を攻撃※6したんだぞ、これ以上待てん。」
デグラ:「よさんか、無茶を言うのもいい加減にしろ! 星を一つ破壊するだけの、兵器を造るんだぞ。…これがどれだけ困難で、危険なプロジェクトかわかっているのか。」
「お前はこれ以上責任を負えんと言うつもりか。」
水棲ズィンディ:「(もめても解決にならん。多少の遅れは計算済みだ)」
毛長※7ズィンディ:「その通りだ。ここまで来て今さら計画変更はできん。」
人間ズィンディ:「それに、ほかに代案もない。」
爬虫ズィンディ:「いいや、代案ならあるとも。」
「…その案はもう評議会で否決されたはずだ。」
昆虫ズィンディ2:「(全会一致じゃない)」
爬虫ズィンディ:「彼らの提案をもう一度見当し直してみるべき時じゃないか。」
人間ズィンディ:「それには人間についての情報が不十分なのだ。」
「それなら何とかできる。」
水棲ズィンディ:「(危険すぎる)」
毛長ズィンディ:「同感だな。」
不満な爬虫ズィンディ。
毛長ズィンディ:「デグラにもっと時間を与えよう。」
うなずくデグラ。
水棲ズィンディ:「(それで進展がない場合には…手段を選んではいられない)」


※1: Xindi-Humanoid
(タッカー・スモールウッド Tucker Smallwood) ENT第53話 "The Xindi" 「トレリウムD」以来の登場。声:竹田雅則

※2: 「いくつ」よりも「どれほど」が適切かもしれません。なおこの研究所の破壊はエンタープライズとは関係なく、兵器を造るのが難しいことを示したセリフです

※3: Xindi-Reptilian
(スコット・マクドナルド Scott MacDonald) ENT "The Xindi" 以来の登場。声:白熊寛嗣

※4: Degra
(ランディ・オグルスビー Randy Oglesby) ENT "The Xindi" 以来の登場。名前は初言及。声:木村雅史

※5: また訳が戻りましたね

※6: ENT "The Xindi" の出来事。吹き替えでは「破壊」となっていますが、言い過ぎですね

※7: Xindi-Arboreal
(リック・ワーシー Rick Worthy) ENT "The Xindi" 以来の登場。声:田中英樹

・本編
エンタープライズ。
ろうそくが焚かれる中、寝間着姿のトゥポルはタッカーの顔に手を伸ばしている。「強さはこれでいい?」
タッカー:「もうちょっと強くていい。…うーん。気持ちいい。……次は首のがいい。何て言ったっけ。」
「カヴォータ姿勢※8?」
「ああ、それだ。」
「できますか?」
「呼吸法なら練習したよ。」
手の位置を変えるトゥポル。タッカーは定期的に息をする。
トゥポル:「本当に練習したのね。」
タッカー:「……トゥポル。」
「しゃべらないで。…あごの力を抜いて? …それでいいわ。…次はスラタン※9を。」
「…トゥポル、本当に話があるんだよ。」
「問題でも?」
「あいやいや違う。いや…よく効くし、時間を割いてくれてありがたいんだが…もうやめた方がいいと思うんだ。」
「これでよく眠れるのでは?」
「ああほんと。」
「ではなぜやめたいんです。」
「…噂になってるんだ。…俺たちのこと。毎晩部屋に行ってるってね。…神経マッサージだけじゃないと、みんな思ってる。」
「…気になるんですか。」
「ほっときゃいいんだけどさ。…密閉インジェクターアセンブリの清掃作業してたとき、マルコムが言ったんだ。俺の魔法の指先で頼むって。」
「ゴシップなど気にすることはありません。」
「…気にならないのか?」
「…上級士官同士です。万が一恋愛関係にあるとしても、リード大尉が口を挟むようなことでは…ないでしょう。」
「…まあそうだけど。」
「続けましょうか?」
笑うタッカー。「うん。」

アーチャーの部屋。
暗い部屋で、アーチャーのうめき声が聞こえる。ポートスが目を覚ました。
身体をかくアーチャーは、ライトをつけた。鏡を見ると、腕に皮膚が変形した部分がある。
あごをかきむしる。

フロックス:「またかいたんですね?」
医療室のアーチャー。「…かゆくて眠れなかったんだ。」
フロックス:「軟膏はちゃんと使ったんですか?」
「…最初はな。あれは臭いがちょっときつすぎるよ。」
またかこうとするアーチャーの手を叩くフロックス。「かけばかくほど治りが遅くなるんですよ? …トレリウムD 入手のメドがついたとか。」
アーチャー:「デューテリアム基地で会ったヴラディアン人※10の化学者が、合成法を知ってると言ってるんだ。」
「だといいですね? カトラー乗務員※11も例の…異常現象のせいで、腕を折ったんですよ。トレリウムD で船体を覆えば、異常現象は防げる。」
「鋭意努力中だ。」
「わかってます。」
仕方なく、フロックスが差し出す薬を塗るアーチャー。
フロックス:「うん。ほかには、何か症状は?」
アーチャー:「…後は…悪夢だ。…何度も、あの異星人の街へ戻る…夢を見る。」
「別の種に変身させられたんです。悪夢も仕方ありませんよ?」
寝間着を着て、軟膏を受け取るアーチャー。

惑星へ近づくエンタープライズ。シャトルポッドが発進する。
海ばかりの惑星だ。

島のように浮かぶ建物へ向かうシャトル。

さまざまな種族の異星人がいる。「いかがですか、甘くて美味しいですよ?」 寒冷地用の制服を着たアーチャーたちに話しかける。「お一ついかが…」
また別の商人。「どうです?」
アーチャー:「結構だ。」
「美味いですよ…」
タッカー:「いやあ、遠慮しとく。」
次々と商人や客が通りかかる。
アーチャー:「化学者の店は 12番はしけだ。」
動物の鳴き声が聞こえる。カゴに入れられていた。
タッカー:「…フロックスが見たら大喜びだ。」 ぶら下がっている動物もある。
アーチャー:「残念ながら今は土産を探してる暇はない。」
商人※12:「見かけない種族ですね、初めてですか? ようこそ。」
「どうも。12番はしけにいる化学者、ブラット・ウドを探してる。」
「せっかく来ていただいたんだから、この星の動物を紹介しないわけにはいきません。」
「い、いやその必要はない。」
「うん、ザンサン・マーモット※13です。ペットに最適ですし、食料にしてもジューシーで美味しいですよ?」
「いや結構だ! …化学者の…」 通行人とぶつかるアーチャー。「居場所を教えてくれ。」
そっけなく答える商人。「12番はしけならそっちだ。2階だよ。」

店内にいる異星人。「もう閉店だ。」
アーチャー:「予約してある。…ノレラス※14の、デューテリアム基地で会ったろ?」
ウド※15:「また後で来てくれ。」
「トレリウムD の、合成法を売ってくれると言った! …ここまでわざわざ来たのは、無駄足か?」
「アーチャー船長か。思い出したよ。元気でしたか。」
「社交辞令の暇はない。」
「でしょうなあ。トレリウムA※16 ならどこででも手に入るし、合成するのも簡単だ。だがトレリウムD は非常に貴重で、工程が難しい。」
タッカー:「だから高いか?」
「適正価格で、間違いなく折り合えると思ってますよ? …そう言えば思いだしたんですが、確かズィンディのことを随分と知りたがっていましたね。なぜまたそう興味があるんです。」
アーチャー:「…外交上の任務があるんだ。」
「外交上のですか。」 笑うウド。「先週、ズィンディがここへ来ました。…興味があるんじゃないかと思いましてね?」
リード:「どこにいるんだ。」
「別の商人と取引をしてた。」
アーチャー:「誰と。」
「もちろん教えますとも。少々謝礼をいただければね。」
「…謝礼として渡せる品物や、装備のリストをタッカー少佐が持っている。それを信じてもらうとして、先にその商人の居場所を教えろ。それから、タッカーと謝礼の詳細を詰めればいいだろう。」
タッカー:「間違いなく折り合えると思うね。」 パッドを置く。「適正価格でな。」

腕に札をつけ、肌が露わな白いドレスを着た女性。そのほかにも異星人の女性が何人もいる。
見ている男性たち。「これが気に入ったのか?」
アーチャーとリードが来た。
女性たちの中にいた異星人の男※17が立ち上がった。「聞かれる前に答えましょう。無料サンプルは残念だが、提供できませんよ。」
アーチャー:「ブラット・ウドからあんたの話を聞いた。」
「紹介のお客さんは安心でいい。どんなのがお望みで?」
「ちょっと前に、ズィンディ人と取引をしたそうだな。」
「実にいい客だった。…ウタニ星のヘビ女※18を 2人買っていった。今は残念ながら切らしてますが代わりにヌヴィアンのハーレム女※19は、いかがかな。」 近くにいる女性のことを話す商人。「これが、かなりのテクニシャンだ。」
「いや興味はない。そのズィンディにどこで会えるか教えて欲しい。」
「2日前にもう軌道を離れたはずだ。」
「…どこへ向かった。」
「客の情報を誰にでも漏らしてるようじゃこの商売長く続かないんでねえ。…だがこの女たちはいろんな星から来てる。もしかしたら…ズィンディをよく知ってる女がいないとも限らんなあ。」
女性たちを見るアーチャー。後ろを向いたが、ふと白いドレスの女性に目が留まった。
アーチャーを見つめる女性。
商人:「お客さんさすがにお目が高い。…あの娘は、何でも言うことを聞くよ?」
女性は降りてきた。
アーチャーは呼び出しに応えた。「アーチャーだ。」
タッカー:『ブラットと謝礼の折り合いがつきました。すぐに船に戻って取りに行かないと。』
「了解、シャトルの場所で落ち合おう。」 歩いていくアーチャー。
商人:「あんな美人をこのままおいていく気か。」
アーチャーはまた女性を見た。「…時間を取らせたな。」

異星人とぶつかったリード。「早く除菌室に入りたくてたまりませんよ。」
さっきの商人の声が響いた。「捕まえろ!」
音が響き、白いドレスの女性が走ってくる。
周りの者とぶつかる。「ああ、危ないな!」「気をつけろ!」
女性:「連れて逃げて、お願い!」 アーチャーに抱きつく。
商人が追いついた。「どうしても今日売られていきたいようだ、店へ戻って支払いの手続きをしようか。」
首を振る女性。
アーチャー:「そのつもりはない。」
商人:「なら商品は持って帰るぞ。」
「彼女の方は一緒に戻りたくないらしい。」
「そいつがそんなに心配なら金を払って買うんだな。でなきゃ、商売の邪魔をするな。」 女性をつかむ商人。
アーチャーは商人を押しやった。銃を取り出す商人。
手を取るアーチャー。リードは女性を守り、フェイズ銃を構える。
アーチャーは商人を動物のカゴにぶつける。2人とも倒れた。
殴り合いになる。商人が拾おうとした銃を、足で踏むリード。
アーチャーは近くにあった布で商人の首を絞め、店の外へ放り投げた。意識を失う商人。
アーチャー:「船へ戻るぞ!」
リード:「喜んで。」

上昇するシャトルポッド。
エンタープライズへ近づく。

女性の目に装置が当てられる。鋭い女性の視線。
フロックス:「素晴らしい目ですねえ。網膜の構造が驚くほど複雑だ。」
医療室に入るアーチャー。「…どんな様子だ。」
フロックス:「初めて出会った種族ではありますが、健康状態は良好です。」
「……君の、名前を…聞いてなかったな。」
女性:「…ラジーン※20といいます。助けてもらって感謝しています。心を込めて、お仕えします。」
「…はっきりさせておきたい。我々は人を所有物のようには、扱わない。…どこでも好きなところへ行っていいんだ。君の生まれた星は、どこなんだ。」
ラジーン:「わかりません。オランタク※21って星と聞いたけど、覚えてないんです。」
「家族はいないのか。」
「ご主人様なら大勢。」
「…この領域の、データが多少あるのでその星を探してみよう。オラン…タクか。…可能なら君を連れて帰ろう。部屋と、必要なものを用意してやってくれ。」
フロックス:「わかりました。」
ラジーン:「船長? …ありがとう。」


※8: Khavorta posture

※9: surah'tahn

※10: V'radian

※11: カトラー乗組員 Crewman Cutler
ENT第4話 "Strange New World" 「風が呼んだエイリアン」など。原語では「宇宙生物学ラボで」と場所を言っています。なおカトラーを演じたケリー・ウェイマイヤさんは、2003年11月に死去されました (このエピソードが放送されたのは 10月)

※12: 異星人商人 Alien Merchant
(B.K. Kennelly)

※13: Xanthan marmot

※14: Norellus

※15: B'Rat Ud
(デル・ユーント Dell Yount DS9第87話 "Sons of Mogh" 「モーグの息子たち」の Tilikia 役) 声は爬虫ズィンディ役の白熊さんが兼任

※16: trellium-A

※17: 名前は Zjod (Steve Larson) ですが、言及されていません。声は人間ズィンディ役の竹田さんが兼任

※18: U'tani serpent women

※19: Nuvian concubine
ヌヴィアンは ENT第23話 "Fallen Hero" 「追放された者の祈り」で言及、初登場 (エキストラ)

※20: Rajiin
(Nikita Ager テレビ映画 "Mermaids" (2003) などに出演)

※21: Oran'taku

タッカーはケースを開ける。「俺の星じゃ…これを巡って戦争が起きた。」 色とりどりの容器が入っている。
ウド:「うーん? ああ…」 笑い、一つを開ける。
リード:「気をつけろ?」
中の粉を鼻の前に落とすウド。クシャミをした。
あきれるタッカー。
ウド:「…何ていう物質なんだ。」
タッカー:「黒コショウだ。」
「うーん。」
「それにパプリカ、マスタードシード、俺のお薦めカイエンペッパー。…とても珍しい品だ、貴重だぞ。」
「うーん。」
リード:「それじゃ渡してもらおうか。」
「ああいいとも。そっちの、技術力の詳細は確認させてもらったよ? 液体トレリウムD を作るのに必要な装備は、一応揃っているようだ。」 パッドを取り出すウド。
「液体?」
「トレリウムは液体の状態でしか合成できないものなんだよ。液体も天然の鉱石と効果は同じだ。」
タッカー:「なら配合法さえわかればいい。」
「ああ、一つだけ言っておく。」
ため息をつくリード。
ウド:「ここにある指示に、寸分のたがいなく従うことだ。」
タッカー:「でないと?」
「まあ簡単に言えばだ、液体の状態ではトレリウムD は極度に不安定な物質なんだよ、うーん。」 パッドを渡すウド。
ウドはまたクシャミをして、大笑いする。「おお。」
タッカーとリードは店を出て行く。

軌道上のエンタープライズ。
アーチャー:「部屋の居心地はどうだ。」
ラジーン:「…こんないい待遇初めて。」 着替えており、アーチャーの前で食事している。「前に乗ってた船では、貨物室暮らしだったし。何度か船長の部屋へ呼ばれた以外は。」
「…うん…いくつかは、立ち入り禁止の場所もあるが…ほかは自由に歩き回っていい。」
「クルーは気にしない?」
「…問題ないと思うよ?」
「…みんな地球人なの?」
「…ほとんどだ。ドクター・フロックスはデノビュラ人だし、私の副官はヴァルカンだ。」
「…重要な任務の途中だと、ドクターに聞きましたけど。」
「ズィンディという種族と、連絡を取らなきゃいけないんだ。…何か知ってることはないかな。」
「少しだけね。見た目は爬虫類みたいだったわ? それに、愛想のいい方じゃなかった。私には興味がなかったみたいで助かったんだけど。…何の用があるの?」
「…誤解を解かなきゃならなくてね。」
船長用食堂に通信が入る。『タッカーよりアーチャー船長。』
アーチャー:「アーチャーだ。」
『もう始められます。』
「いま行く。」 アーチャーはラジーンに言った。「すまない。」 出ていく。

尋ねるアーチャー。「危険なのか。」
タッカーは構造図を見ていた。「一つ間違えばかなりの被害が出ますね。」
アーチャー:「そんな物質を船体全部に塗るのか?」
「液状だと危険なだけです。船体内部に塗装し固まりさえすれば、安定します。まず合成するときが厄介なんですよ。」
トゥポル:「極めて正確な計算を要しますが、私とタッカー少佐で合成できると思います。」
話している機関部員。「今のうちにワープドライブをチェック…」
アーチャー:「始めろ。」
トゥポル:「Eデッキの非常用隔壁内に、ラボを造るのがいいかと。…念のためです。」
機関室を出ていくアーチャー。

シャツ姿のアーチャーは、自室でコンソールを見ていた。まだ身体をかいている。
ドアチャイムが鳴る。「入れ。」
誰も来ない。アーチャーは中から開けた。
ラジーンが立っていた。「こんばんは、船長。」
アーチャー:「何かあったかな?」
「お邪魔してごめんなさい。ちょっと、お話しできないかと思って。」
「ああ…いや、今いろいろと…どうぞ。…知らせようと思ってたんだが、いいニュースがある。入手したデータベースから、トゥポルが君の星を見つけたんだ。ほんの 2日の距離だ。…あまり嬉しそうじゃないな。」
「私すごく小さい頃に連れ去られて、その星をよく覚えてないの。私を覚えてる人もいないだろうし。」
「…わからないぞ? 私ならとても君を忘れられない。」
近づくラジーン。「助けてくれてほんとに感謝してるの。…親切にしてもらった、お礼がしたい。」
アーチャー:「そんな必要はないよ。」
「わかってる。」 アーチャーの顔に触れるラジーン。
「ラジーン…」
「私には、特別な力があって…さらわれたのはそれでよ? どんな力か見たい?」
「…いや…私はそんなつもりじゃ…」
ラジーンはキスする。「いいのよ。」
アーチャーの頭に両手をかざすラジーン。すると内部の骨などの構造が、透けたように見える。
ラジーンは手を下ろしていく。特に抵抗する素振りも見せないアーチャー。
アーチャーのシャツをまくり、脊髄にも手を這わせる。
ラジーン:「船長?」 離れたところに立っていた。「どうかしました?」
アーチャー:「いや。」
「…もう一度、お礼を言いたかっただけなんです。」
「…もうすぐ軌道を離れるから。」
「おやすみなさい。」 ラジーンは出ていく。
「おやすみ。」

ワープ航行中のエンタープライズ。
タッカー:「今の分子圧は。」
トゥポル:「1,100 に上がったわ。」
「ほんとに厄介だな。」 容器が置かれている。「シータ放射を 6%。あ、いや 7%だ。」
「圧力は更に上昇、1,400。1,430。」
「クソ! …シータ放射※22を停止してくれ。」
モニターを見るトゥポル。「変化はなし。…すぐここを出て、封鎖すべきだわ。」
タッカー:「デルタ放射※23を持続的に当てれば止まるかもしれない。」
「保証はないわ。すぐ退避すべきよ。」
「80%増加だ。」
「…変化はなし。」
「出てっていいぞ。」
「圧力が 2,000 に上昇したわ! …少佐!」
警報が鳴り響く。ラボを出る 2人。
爆発した。中の物は粉々になる。
ドアを開けたタッカーは、ため息をついた。全て黒こげだ。
トゥポル:「きっと計算結果に微妙な、誤差があったんでしょう。」
タッカー:「また振り出しだな?」
「…6時間作業し通しです。終わりにしましょう。」
「それは賛成だ。」
「…では 30分後に部屋で、マッサージの訓練を続けましょう。」
「俺はいいよ。」
「明日の作業の前によく眠っておいて欲しいんです。」
「…うん。」

廊下を独りで歩くラジーン。転送室の前に来た。
操作台に触れる。
通りかかるサトウ。「何か用?」
ラジーン:「…船長が見て回っていいとおっしゃったので。ラジーンです。」
「知ってる。…噂が伝わるの早いから。ホシ・サトウ少尉よ。」 手を差し出すサトウ。
「どうぞよろしく。」 ラジーンは両手で握る。「私、食堂を探してたの。」
「…私も丁度行くところだから。」 手をつないだまま歩く 2人。
「…あなたの御仕事は?」
「私? 私はこの船の通信士よ。」
「そうなの。」
「…お国の言語を聞きたいわ。」
ターボリフトに入るラジーン。「言葉なら、いくつも話せるわ?」

トゥポルは部屋で、ろうそくをつける。
ラジーン:「あなたがトゥポルね?」
中にいた。


※22: theta radiation
映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」より

※23: delta radiation
TOS第16話 "The Menagerie" 「タロス星の幻怪人」など

話すラジーン。「おどかす気はなかったの。私はラジーンよ。」
トゥポル:「それは知っています。…何をしてるの。」
「ドアの鍵が開いてたの。」
「それはありえませんね。」
「よかったら、ちょっとおしゃべりできない?」
「…船の規則をよく知らないのだとは思いますが、許可なく個人の部屋へ入ることは禁じられているんです。」
「そう。でも構わないでしょ?」
「…すみませんが…」
「ヴァルカン人が、人間だらけの船にいる。なぜ?」 顔に手を這わせてくるラジーン。
「…地球とは同盟関係にあります。…出ていってもらえますか。…何をしているの。」
「逆らわないで。」
「…今すぐ出てって…。」
「…精神鍛錬してるのね? 感情をほとんど抑圧してる。解き放つの。…そうよ?」
頭から手をかざしていくラジーン。身体の中が透ける。
シャツのボタンを外し、腹に手を置く。
トゥポル:「…やめて。」
ラジーン:「解き放つの。」
脊髄が見える。
ドアチャイムが鳴った。やめないラジーン。

外にいるのはタッカーだ。またボタンを押す。

トゥポルはラジーンを押しのけた。だが立ち上がれない。
ラジーンに倒される。
伸ばしてくる両手をつかみ、抵抗するトゥポル。「いや。…やめて!」

タッカー:「タッカーよりブリッジ。」
サトウ:『どうぞ?』
「トゥポルは今どこにいる。」
『お部屋に、いらっしゃいます。』
タッカーはボタンを操作し、パネルに親指を押しつけた。
ドアが開く。
中でトゥポルが倒れていた。首で脈を取るタッカー。
その時、ラジーンが置物で殴ってきた。粉々になる。
逃げていくラジーン。
タッカーはコンソールに触れた。「タッカーより、保安部。」

廊下を歩きながら、装置を取り出すラジーン。「迎えに来てちょうだい。」
『成功したのか。』
「言われたことはしたわ。ここの転送機で脱出できるけど、船で 1万キロ※24以内に来て?」
『用意できたら合図しろ。』
ターボリフトに入ろうとするが、保安部員※25が立っていた。腰のフェイズ銃に手を伸ばす。
ラジーン:「何か、あったんですか?」
保安部員:「船長が君をお呼びなのだ。」
その手に自分の手を重ねるラジーン。「わずらわせる必要ないわ。船長を。」 そのまま中に入る。
保安部員:「命令を、受けてる。」
「こっちもね、シーッ。」 ラジーンは顔に手を這わせた。

ターボリフトを出る、リードたち保安部員。ラジーンが撃ってきた。
追いかけるリード。前から保安部員が現れた。
途中のドアに入る。はしごが延びている。
ため息をつくリード。部下に指示する。

ドアを開けたラジーンは、機関部員を撃つ。保安部員と撃ち合いになる。
そのまま 2階から飛び降りるラジーン。身体をひるがえしながら撃つ。
床に背中から着地した。双方とも武器を命中できない。
別のドアに入るラジーン。

転送機に近づくラジーン。「近くにいるの?」 通信機の音は乱れている。「応答して!」
アーチャーがフェイズ銃を向けた。「もう行くのか?」
保安部員も駆けつける。
アーチャー:「…信号は妨害した。仲間には聞こえない。相手は誰だ。」
答えないラジーン。
アーチャーはラジーンをコンソールから離し、武器と通信機を奪った。「拘束室へ。」
連行されるラジーン。アーチャーはため息をつく。

トゥポルについているフロックス。「神経スキャンした方がいい。」
タッカー:「俺は平気だ。トゥポル、何された。」
「全く推測も尽きません。大脳皮質が全体的に破壊されています。…彼女が人間かデノビュラ人ならとうに死んでいますねえ。」 脳の状態が表示されている。「だが、ヴァルカン人の脳は我々のものより遥かに回復力がある。」
アーチャー:「トゥポルと話がしたい。」
「まず、治療するのが先ですよ。」
「いつ終わる。」
「2、3時間後かと。」
イメージングチャンバーに入れられるトゥポル。
タッカーに言うアーチャー。「ちゃんと傷を診てもらえ。」 医療室を出る。

拘束室に入るアーチャー。保安部員に合図し、出ていってもらう。
独房にラジーンがいる。
通信機を見せるアーチャー。「誰に連絡しようとしたんだ。」
ラジーン:「ごめんなさい。」
「質問に答えろ!」
「答えられないの。」
「……トゥポルに一体何をした。」
「逆らわなきゃよかったのに。」
中に入るアーチャー。「何者なんだ。」
ラジーン:「言ったでしょ? 私はラジーンよ。」
「そうだったなあ? 子供の頃拉致され、ずーっと奴隷として暮らしてきた。私が市場にいたとき君が逃げ出したのは、ただの偶然だったのか?」 ラジーンを立たせるアーチャー。「私がズィンディの情報を欲しがっているのを知り、誰かが君をあそこへ送り込んだのか。」
「一つだけ言えるのは、危険だってことよ?」
「もっと詳しく教えてもらおうか。」
「それ以上言ったら、殺されるわ?」
「誰に。ズィンディか。」 顔を近づけるアーチャー。「ここで同じ目に遭うか?」
「…だましたのは認めるわ? …それでも、あなたが助けようとしてくれたことは感謝してる。…危険な目には遭って欲しくないの。いま私を逃がすのが、一番いいのよ。」
「誰に連絡を取ろうとしたんだ。」 アーチャーはラジーンの肩をつかむ。「誰だ!」
リードの通信。『ブリッジより船長へ。』
アーチャー:「…何だ。」
『船尾から船が 2隻接近中。船長、生体反応が地球を襲ったズィンディの遺伝特徴と一致します。』
「防御プレートフルパワー、兵器スタンバイだ。…爬虫類のズィンディが、君を送り込んだんだな?」
ラジーン:「…そうするしかなかったの。」


※24: ENT第48話 "Cogenitor" 「第3の性」では、転送可能距離は 2,000km 前後とされていました。ENT第52話 "The Expanse" 「帰還なき旅」で、地球に帰った際に改良されたのでしょうか

※25: Security Guard
(Ken Lally) ENT第54話 "Anomaly" 「オサーリア人の襲撃」以来の登場

ワープ中のエンタープライズをビーム兵器で攻撃する、ズィンディ船。ワープナセルが狙われる。
メイウェザー:「ワープエンジン、停止です。」

互いに攻撃する。
拘束室も揺れる。
アーチャー:「君を迎えに来たらしい。」
ラジーン:「…私をこのまま行かせれば、攻撃されないわ?」
「君を信用しなくて申し訳ないが、彼らは地球で 700万人殺してるんだ!」
リード:『ブリッジより船長。』
「…何だ!」
『一隻※26が、右舷ドッキングポートに接近してきます。』
「エアロックを封鎖し保安チームを送れ。すぐに向かう。」 独房のドアを閉めるアーチャー。「何をしに来た。」
やはり答えないラジーン。出ていくアーチャー。
だがラジーンは駆け寄った。「情報収集よ!」
アーチャー:「何の。」
「…人間のよ。…彼ら武器を造ってる。」
「それは知ってる。」
「別なのよ。…生物兵器なの。」
「それで?」
「あなたの種族のデータがいるのよ。それを造るために。」
「どこでその武器を造る。」
「知らないわ。」
「いつ完成する。」
「知らないのよ。」
ため息をつき、出ていくアーチャー。
ラジーン:「それ以外は何も聞いてないわ!」
外の保安部員に命じるアーチャー。「ここに保安チームをつけろ。…絶対連れて行かせるな。」

廊下を走る MACO たち。エアロックの近くにつく。
ドアが吹き飛ばされた。破片が飛び散り、火が起こる。
入ってきた者は、いきなり撃ってくる。MACO も反撃する。
相手は何人もいる。
MACO※27:「撤退して!」
一発が MACO に命中してしまった。吹き飛び、息をつく。
仲間に運ばれる MACO。追ってくる爬虫ズィンディたち。
さらにエンタープライズに乗り込んでくる。

先頭を進むリード。「3班乗船。一班最低 5名です。」
合流したアーチャー。「彼女を連れに来たんだ。阻止しろ! …一緒に来い。」 MACO を連れ、リードと分かれる。

銃声が聞こえ、構えるリードたち。静かになったが、姿は見えない。
そこに昆虫ズィンディが現れた。銃から巨大なエネルギーが発射される。
MACO の一人に命中し、吹き飛ばされた。リードはスタン爆弾を投げる。
逃げるズィンディ。爆発する。
MACO の脈を取るリード。

ドアの前にいる保安部員たち。爬虫ズィンディが見えた。
フェイズ銃が当たっても、大して効いていない。ズィンディの一人が武器を撃った。
それは保安部員の横を抜け、後ろの壁に当たる。粘着性の物質がついた。
見る見るうちにそれがふくらみ、無数に針のようなものが飛び出してきた。全身に浴び、保安部員は全員倒れた。
向かってくる爬虫ズィンディ。

独房にいるラジーン。音が聞こえた。
ドアのロックが爆破される。中に来た爬虫ズィンディは、無言で独房のドアに装置をつけた。
ラジーンも隅に隠れる。高音を発する装置。
耳をふさぐラジーン。するとドアが砕け散った。
残った部分を壊し、中に入るズィンディ。ラジーンを連れて行く。

撃ち合う MACO。アーチャーは相手に命中させた。
ラジーンが連行されるのが見える。追うアーチャー。
倒したはずの爬虫ズィンディが MACO を突き飛ばし、アーチャーに飛びかかった。閉まるドアの中に、ラジーンがいるのが見える。
アーチャーのことが心配なようだ。MACO はズィンディを殴り、電撃を与えた。
エアロックを開けようとするアーチャーだが、ブザーが鳴るだけだ。
通信機に触れる。「アーチャーよりブリッジ。」
メイウェザー:『どうぞ。』
「奴らの船を逃がすな、追跡しろ!」

メイウェザー:「了解。」
エンタープライズを離れるズィンディ船。追うエンタープライズ。
2隻のズィンディ船は、そのまま宇宙空間の中へ消えてしまった。

爬虫ズィンディを倒した MACO。「死んでます。」
メイウェザー:『船長。敵機は何らかの空間の、渦に…消えました。』
息をつくアーチャー。

ワープ中のエンタープライズ。
モニターを指さすフロックス。「この分泌腺が、血液中に致死量の神経毒を放出したんです。」 爬虫ズィンディの死体がある。
タッカー:「自殺用の器官をもって生まれた種族ってことか?」
「そうじゃない。手術で改良されてます。改良と、呼べればですが。」
アーチャー:「徹底的に分析しろ、ドクター。それからマルコムに武器を分解させるんだ。射程距離、出力、全て知りたい。そして防御策を立てろ。」
渡された武器を持って、医療室を出ていくタッカー。「了解。」
アーチャー:「大丈夫か。」
トゥポル:「…はい。」
「よーし。ならズィンディ船をスキャンした結果を、すぐに分析してもらいたい。それから彼らが逃げ込んだ渦のことも調べろ。また前触れなしに現れて欲しくない。以上だ。」
ズィンディを見て、ため息をつくアーチャー。

評議会の毛長ズィンディ。「我々の計画を危険にさらしたのだ。」
人間ズィンディ:「それに正体を知られることになった。兵士が一人人間に捕まった。」
爬虫ズィンディ:「ああ、あれならもう死んでる。」
デグラ:「こちらの結果を待つはずだった! …生物兵器を造るにはデータが全く足りないのだ。」
立ち上がる爬虫ズィンディ。「そうかな? …連れてこい!」
部下に連れてこられるラジーンは、黒い服だ。
爬虫ズィンディ:「…見せてやれ。」 音を出す。「早くしろ!」
テーブルに両手を置くラジーン。すると空中に、地球人の構造が表示された。
それを見つめるズィンディたち。詳細な図だ。
爬虫ズィンディ:「確か人間に関するデータが十分にないから、生物兵器の製造に着手できないとホザいたな。…データはここにある。」
水棲ズィンディ:「(では両方の可能性を探ろう)」
人間ズィンディ:「我々が礼を言うとでも思ったか、評議会に背いたのだぞ?」
声を上げる爬虫ズィンディ。
人間ズィンディ:「これで連中に発見される危険が増したのだ。」
ラジーン:「人間には、こんなスキャンデータだけじゃわからないことがたくさんあるわ!」
爬虫ズィンディ:「もう用は済んだ。…連れて行け。」
連行されるラジーン。


※26: 吹き替えでは幸い訳出されていませんが、原語では「小さい方の船」と言っています。画面で見る限り 2隻は全く同じ船であり、CGI 製作班との連携が取れなかった可能性があります。130m ぐらいの大きさと推測できるようです

※27: エキストラ。声:森夏姫?

・感想
スキャナー人間とでも言うべき異星人の女性が登場します。ネタバレ邦題が気にならないぐらい、実にストレートな展開です。先週とは違って早速本流に戻りましたが、前回の変質ネタ自体は受け継いでいます。無意味に官能的なシーンが続くのも相変わらずであります。
脚本の一人に初めてクレジットされている Brent V. Friedman は、このシーズンから顧問製作者に加わったスタッフです。「ダーク・スカイ」(1996) や「トワイライト・ゾーン」(2002) に関わりました。ただ脚本に関わっているのは今回と、第3シーズンの後一回だけですが。
当初出回ったタイトルとして、"Enemy Advances" (敵の進出)、綴り違いの "Raijin" もありました。先週から声優クレジットが復活しましたが、過去のシリーズ出演歴も見当たらないため特定はおあずけとしました。公式サイトに役名を載せている白熊さんを除き、後の 5人 (谷昌樹、竹田雅則、木村雅史、田中英樹、高階俊嗣) は脚注に掲載していません。デグラ、人間ズィンディ=Zjod、毛長ズィンディ、異星人商人、保安部員の 5キャラクターに相当すると思われるのですが… (前の 3人は前回と同じ方)。


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