USS Kyushuトップ | hoshi.sa.to

エンタープライズ エピソードガイド
第64話「選ばれし領域」
Chosen Realm

dot

・イントロダクション
※1デルフィック領域にある、単一金属の球体。
表面の近くを、シャトルポッドが飛行している。
画像を見るタッカー。「前の 2つ※2と同じだ。細かい数値まで完全に一致してる。」
メイウェザー:「大量生産の製品みたいですね。」
「そんな工場があればな。…よし、これでスキャンは終わりだ。トゥポルにじっくり分析してもらおう。」
シャトルは球体を離れ、遮蔽フィールドの中に消えた。

シャトルポッド内のライトが明滅する。
メイウェザー:「パワー変動です。」
揺れる。一旦暗くなった。
タッカー:「…この状況にも慣れた。」
メイウェザー:「もう間もなく、遮蔽フィールドを出ます。」

フィールドからシャトルポッドが出てくる様子を、異星人※3が観ていた。「出てきました。船に戻るようです。」
命じるリーダーの男※4。「映せ。」
スクリーンにエンタープライズが映し出される。
リーダー:「どんな武器を積んでいるか調べろ。…捜し物を見つけたぞ。」


※1: このエピソードは、VOY トレス役ロクサン・ドースンの監督作品です。ENT で担当した 10話中、第58話 "Exile" 「孤独な亡命者」に続いて 7話目となります

※2: それぞれ ENT第54話 "Anomaly" 「オサーリア人の襲撃」、"Exile" より

※3: ヤリック Yarrick
(ヴィンス・グラント Vince Grant) 声:小野塚貴志

※4: ディジャマット D'Jamat
(コノー・オファレル Conor O'Farrell DS9第79話 "Little Green Men" 「フェレンギ人囚わる」のジェフ・カールソン教授 (Professor Jeff Carlson)、ENT第18話 "Rogue Planet" 「幻を狩る惑星」のブーザン (Burzaan) 役) 声:菅生隆之、TOS補完・新録スポック

・本編
司令センターのモニターに映った、球体の分布図を見ているアーチャー。
トゥポル:「これで、ひずみの位置をより正確に予測できます。…領域内の球体の数も、厳密に割り出せるでしょう。」
アーチャー:「造られた目的は?」
「まだ不明です。」
リードの通信。『ブリッジより船長。』
アーチャー:「…どうした。」
『船が 1隻向かってきます。救難信号を発しています。」

戻ったアーチャーに報告するリード。「ひずみの塊にはまったようです。エンジンに被害。」
アーチャー:「映像を。」
スクリーンに船が映される。
トゥポル:「生体反応は、23。」
アーチャー:「呼び出せ。…こちらは、エンタープライズ※5のアーチャー船長だ。救援が必要か?」
乱れたリーダーの声が聞こえた。『エンタープライズ。ダメージがひどい。エンジンが故障して生命維持装置も使えない。救助を頼む。』
アーチャー:「相手の武器は。」
リード:「わずかです。」
「…ひずみを抜けられるか?」
トゥポル:「安全なコースを割り出します。」
「フルインパルス。」

異星人船に近づくエンタープライズ。
リード:「…生命維持はダウンしてます。」
アーチャー:「万全の警戒態勢を取れ。…武装していないか、確認しろ。」 ブリッジを出ていく。

船はエンタープライズとドッキングしている。
医療室の異星人に話すフロックス。「すぐに良くなる。ちょっと失礼?」
異星人:「ありがとうございます。」
「船長。」
アーチャー:「どうだ。」
「バイオ・スキャンができないのが困りものです。」
「なぜ。」
「彼らは未知の医療行為を一切拒否する。何か、宗教的な理由だとか。…しかし一部の軽傷者を除いては、どうやらほとんどが軽い栄養失調のようですから? すぐに回復します。」
異星人の一人の顔に刻まれた跡を見るアーチャー。「ひずみにはまったのは初めてじゃないな、古い傷跡が。」
フロックス:「何人かに同じような傷があった。数ヶ月は、球体の付近にいるんじゃないでしょうか。」
「船長は誰だ。」
「…船長ではなく、プリナム※6です。やはり、宗教的な呼び名だと。」
アーチャーはそのリーダーに話しかける。「船長のアーチャーです。ようこそ。」
リーダー:「ディジャマットです。」 握手する。「もう、何と御礼を言っていいか。命の恩人だ。」
「長い間この辺りにいるようですが?」
「第12の球体へ巡礼に行く途中で。1年ほど旅をしています。」
「技術士官に船を見せたが、損傷が激しい。」
「うーん、古い船だが造りは丈夫です。あいにく我々は巡礼者で…機械には詳しくありませんが。」
「球体に関する情報なら、交換できるかもしれない。…もしよければ、うちの科学士官を呼ぶので一緒に夕食でも。」
「喜んで御一緒させていただきます。」

船長用食堂のディジャマット。「母星はトリアノン※7という星で、ここから 6.3光年先のマラタス星団※8にあります。ご存知ですか。」
アーチャー:「我々は、デルフィック※9のことはあまり。」
「デルフィック。…選ばれし領域※10ですね。」
「恐らく、同じものでしょう。」
笑うディジャマット。
アーチャー:「ある種族について、調べてましてね。ズィンディという名を、聞いたことは?」
ディジャマット:「…初めて聞きますね。我々はほかの種族のことにあまり、その…関心がないもので。…宇宙船で旅をするのも、単なる巡礼のための手段でしかないんです。」
トゥポル:「ずっと球体の研究を?」
「研究などしていません。祈りを捧げるだけです。…祈りと瞑想こそが創造者※11を聖域に呼び戻せるすべだと、信じています。」
アーチャー:「創造者?」
「球体を創った主です。…ここに、その存在の証が。」
腕をめくり、傷跡を見せるディジャマット。
トゥポル:「空間のひずみのことですか?」
ディジャマット:「創造者の息吹だ。…真実を形作り、神の世界へと…我々を、導いてくれる。」
「自分の船を破壊されかけたんですよ。」
「注意を怠ったせいだ。球体の付近では心が乱れやすい。」
アーチャー:「我々も驚いた。見つけたのはまだ 3つですが。」
「…こんな速い船があってうらやましい。私が目にすることができるのは数千の内のごくわずかだろう。」
トゥポル:「…計算によれば、領域に存在する球体の数は 59 です。」
「それはちょっと計算が甘い。」
「そうでしょうか。」
「創造者に疑いは無用だ。」
「科学の進歩には疑問をもつことが不可欠です。」
「科学の進歩は、人々を駄目にするだけだ。」
アーチャー:「まあ…この話は、また今度にするとしよう。」
ディジャマットを見るトゥポル。
ディジャマット:「そうですね。」
アーチャー:「うちの技術士官が、あなた方の船を直せそうだと言っています。…2、3日もあれば修理は済む。」
「それはありがたい。…もし機会があれば、ぜひこの御恩をお返ししたいものです。」

医療室に、トリアノン人の女性※12が入った。
フロックス:「ご用ですか?」
女性:「話したいことがあって。」
「…何でしょう。…どこか具合でも?」
「実はある処置について、聞きたいことが。…ごめんなさい? ちょっと、話しづらいことなの。」
「…まあ、かけたらどうです? うん? もしよければ、ジャナラン・ティー※13でもどうです?」
「ええ。いただくわ。」

食堂にいるディジャマット。
トリアノン人※14:「配置は万全か。」
船にいたトリアノン人のヤリック。「ああ。全員指示を待っています。」
ディジャマット:「…迷いがあるようだな。」
「…すみません。ですが…本当にこれが正しいんでしょうか。」
「…この船に遭遇したのは偶然だと思うか。これは創造者の御意思にほかならない。」
「でも彼らは、命の恩人ですよ。」
「聖なる球体を汚したのだぞ!」 エンタープライズのクルーに気を遣うディジャマット。「こうして罪を清めてやることは彼ら自身を救うことにもなる。…不安な気持ちはわかる。我々も母星を離れて久しい。だが悲劇の時代を、終わらせるためには今やらねばならないのだ。…創造者を疑うな。」
「疑いません。」

作戦室。
アーチャー:「創造者は彼らにとって神のような存在だ。1,000年前に球体を創り出したと。」
トゥポル:「確かに球体が造られたのは、およそ 1,000年前です。」
「その球体の力で創造者は領域を再構築して楽園にし、そこに戻ってくるということらしい。」
「…神話の多くは、事実に基づいています※15…」
ドアチャイムに応えるアーチャー。「どうぞ。」
ディジャマット:「お邪魔でしたか。」
「いや?」
トゥポル:「失礼します。」 出ていく。
ディジャマット:「…助けていただいた御恩をお返ししようと思いまして。」
アーチャー:「その必要はない。」
「もう始まっています。…アーチャー船長。あなたと、この船のクルーにはこれから名誉ある任務を遂行していただく。…実は今、私の部下たちを船中 (せんちゅう) に配備してあるんです。我々の体内には、強力な有機爆弾が仕込まれている。…私の命令一つで、彼らは喜んで命を捧げます。」 通信機を取り出すディジャマット。「ヤッシ・ミリク・オカーラ。」

廊下を歩いていたトリアノン人※16。「カラ デターシュ。」 床にひざまづく。
通りかかったクルー※17は、その様子に足を止めた。
トリアノン人は何かを唱えながら、服につけていた道具を手にした。先が尖っており、そのまま左腕に突き刺す。
道具を回転させると、腕の血管が太く見えるようになった。見つめ続けるクルー。
変色していく血管は、首から頭に達する。目をつぶるトリアノン人。
クルーはまだ動かない。トリアノン人の顔の血管が変色し、目を薄く開いた。
船外に達する爆発。船体の一部が吹き飛ばされる。

揺れるブリッジに戻るアーチャー。
リード:「Cデッキで爆発。船体が破損!」
アーチャー:「デッキを封鎖しろ。保安部員を!」
続いて出てきたディジャマット。「待て。ワープリアクター※18の付近にも 2人配備した。私に指揮権を渡さなければ、船を破壊する。」


※5: 吹き替えでは「エンタープライズ

※6: Pri'Nam

※7: Triannon

※8: Muratas Star Cluster

※9: 原語では「領域 (The Expanse)」。次の脚注の "Realm" も「領域」という同じ訳語を使っています

※10: Chosen Realm
原題

※11: Makers

※12: 名前は Indava (Lindsey Stoddart) ですが、言及されていません。声:引田有美

※13: Janaran tea

※14: 名前は Jareb (Tayler Sheridan) ですが、言及されていません。声:高階俊嗣、大久保利洋のどちらか?

※15: これとほぼ同じセリフを、TOS第33話 "Who Mourns for Adonais?" 「神との対決」でスポックが話しています

※16: ND トリアノン人 ND Triannon
(Matt Huhn) 声優なし

※17: 乗組員 Crewman
(Kim Fitzgerald) セリフなし

※18: 「ワーリアクター」と吹き替えされているような…

兵器室の銃を手にしていくトリアノン人。
リードたちは見張られている。

ブリッジも制圧され、サトウは席を立った。

廊下で連行されるクルーや MACO。部屋に入れられる。

負傷したクルーが何人もベッドにいる。ハイポスプレーを打ったフロックスは、トリアノン人に押しのけられた。
フロックス:「ひどい火傷をしてるんだぞ! 後の 2人も急激な減圧で重傷だ、すぐに処置しなければ。」
ヤリック:「俺は全員を自室に連行するようにと指示されている。」
「治療が済むまでここは離れない。」
「…監視しろ。」 出ていくヤリックたち。

ワープコアの上にもトリアノン人がいる。
アーチャー:「奴らは船を破壊する気だ。脅しじゃない。」
タッカー:「言いなりになるんですか?」
「この船を失ったら地球は終わりだ、選択の余地はない。」 タッカーの腕をつかむアーチャー。「とにかく決して抵抗はするな。いいな。」
「…はい。」
「…あきらめはしない。」 ディジャマットたちが見ている中、アーチャーは機関室を後にする。
「どうぞ御自由に。」
ディジャマットも去った。

自室に入るアーチャー。
ディジャマットも続く。「正しい選択をしたな。約束しよう、クルーには手を出さない。」
アーチャー:「既に部下を 1人殺しただろ。」
「…我々の決意を示す必要があった。」
「…船をどうする気だ。」
「まずは安全の確保が先だ。後でゆっくり答えよう。」 ドアを開けるディジャマット。「私も爆発で仲間を 1人失った。彼らに安らかな眠りを。」 出ていく。
「黙れクソ野郎※19。」

ブリッジに戻るディジャマット。「トリアノンの座標は聞いたか。…コースセット、最大ワープで進め。」
トゥポルの承諾を得てから、操作するメイウェザー。
ディジャマット:「魚雷を 2発装填、狙いは…私の船のリアクターだ。……聞こえただろ。」
従うトゥポル。
ディジャマット:「ドッキングクランプを解除。」 船長席に座る。
トリアノン船が離れた。その後、光子性魚雷※20で破壊される。

球体のデータを見ていたディジャマット。
司令センターにアーチャーが連れてこられる。外で見張るヤリック。
ディジャマット:「説明する約束だったな。では話そう。」
アーチャー:「どこへ向かうつもりだ。」
「我々の星だよ。3日で到着する。ここ 100年の間、横暴な異端者たちの反乱が後を絶たなかったが…この船さえあれば決定打を与えられる。争いを終わらせるのだ。」
「戦争か。それがあんたの言う『名誉ある任務』というわけだな。」
「仲間を守るためだ。」
「その『異端者たち』も同じ気持ちじゃないか。」
「かもしれんな? だが異端者に変わりはない。真実の敵だ。」
「あんたのな。」
「真実は一つだ。」
「この船で何人の人々を殺すつもりだ※21。」
笑うディジャマット。「君たちは何かといえば、数字にこだわる。そもそも宇宙の神秘が科学で、解明できると思っていることが大きな間違いだ。…残酷かもしれないが、異端者が何人死のうと関係ない。創造者の意思を、信じる者だけが生き残るのだ。不信心な者は一掃される。…聖域にいる、全ての種に当てはまることだ。」
アーチャー:「そんな教えを信じれば、違う意見をもつ者を殺すのも簡単だろう。」
「それは違う。…簡単ではない。もしそうなら悩むことなどなかった。……この船の記録を見たが、君たちは恐ろしい罪を犯している。3つの球体の遮蔽フィールドに入り込んだばかりか表面に着陸し、内部に侵入した。創造者の意思に従えば、本来ならこれほどの冒涜者は船ごと破壊し、壊滅させるべきだろう! しかし! …君たちが危険を冒し、我々の命を救ったことも事実だ。私も心を動かされた。」
「フン。」
「君は立派な男だ。…だから私はあえて船を破壊せず、刑を軽くしようと思う。…君に犠牲になるべきクルーを、一人だけ選ばせてあげよう。」
「本気で言ってるのか。」
「選べないなら、私が選ぶ。…好きでこんなことをするわけではないんだ。」
「考える時間をくれ。」
「6時間だけやろう。その間自分自身をよく見つめ直すといい。…下らん嘘に踊らされるな。君たちが集めた『データ』は…」 操作を始めるディジャマット。「全て、この世から消しさるべきだ。」
画面が乱れ、映像が消えていく。
うろたえるアーチャー。
ディジャマット:「では 6時間後に。」 出ていく。
モニターには「ファイル消去」と表示されている※22
アーチャーはため息をついた。

アーチャーの部屋。
※23のそばで、落ち着かない様子のアーチャー。
ヤリックが入り、パッドを持っている。「この船の修理状況だ。ディジャマットが報告してやれと。」
アーチャー:「それは御親切だな。…待て。…ヤリックというのは君か。」
「そうだが?」
「奥さんが、医療室に来たそうだぞ。…いろいろ話したらしい。妊娠してると。」
「ああ。」
「だが、どうも彼女は中絶を望んでるらしい。」
「あんたには関係ない。」
「ドクターの印象では彼女は、ディジャマットの教義の解釈に賛成してないようだなあ。…それどころか、彼のやり方に反感さえ抱いているようだと。」
「そんなことはない!」
「彼女だけじゃない。君も、同じ気持ちなんじゃないのか?」
「…ディジャマットは俺たちのリーダーだぞ。命を捧げる覚悟だ。」
「この調子では、本当に命を捧げることになるぞ。」
出ていくヤリック。

廊下で部屋の見張りについている、ヤリックの妻。
ヤリックが近づいた。「ドクターのとこに行ったのか! 何考えてるんだ、船長も知ってた。」
妻:「ディジャマットにも?」
「まだ伝わってない。…子供を堕ろしたのか。」
「生理機能を調べないと、処置はできないって。…見張りもついてるし…もう無理だわ。」
「丁度いい。」
「まさか気が変わったの?」
「本当に堕ろすべきなのか。」
「子供が…戦争で死ぬところなんて、見たくないわ!」
「この船さえあれば、戦争なんてすぐ終わるさ!」
「あなただって、こんなやり方反対でしょ?」
ヤリックは歩いていった。

作戦室でコンソールを見ていたディジャマットは、ドアチャイムに応えた。「入れ。」 アーチャーが入る。「ああ。来てくれたか。…航星日誌を読んでいたところだ。君たちは我々ととてもよく似ている。」
アーチャー:「どの辺りが。」
「ここへ来たのは、仲間を…救うためだろ? …目的は、我々と何ら変わりない。」
「私は星を守ろうとしているだけだ。自分と違う考えをもつ者を殺したりはしない。」
「君が思っているほど大きな違いではない。」
「あんたのような殺人者と一緒にするな。」
「拷問なら、いいのか? エアロックを使って囚人を尋問した※24と、いま読んだ日誌に書いてあったが?」
「任務に不可欠な情報を得るためだ。危害は加えてない。」
「君の立場はよくわかる。苦渋の決断を下した経験はある。…若い頃、軍を率いたことがあってね。私の指揮で、異端者たちの本拠地となっていた村に潜入したんだ。陰で敵の動きを探り、情報を送るという任務だったが…村人の一人に見つかってしまった。…幼い少年だ。まだ 6つぐらいだった。その子を逃がせば、任務は失敗に終わる。…だが捕らえても、安全の保障はない。取るべき手段は一つ。…仕方なかった。」
「それが自慢なのか。」
「…創造者の下では、あらゆる行為が神聖なのだ!」
「創造者などいない。…あんたの勝手な都合だ。あの球体は、計り知れない目的のために造り出された機械だ。」
「まるで昔の私だ。君もいずれわかる。…私は願っていたんだ、君が真実を受け入れられるようにと。…だがどうやら、無駄だったようだ。……もう決めたかね?」
「決めた。」
「では誰を犠牲者に選ぶ。」
「犠牲者は私だ。…誰かを殺すなら、私を殺せ。」


※19: 昨今のアーチャーなら不思議ではない言い方かもしれませんが、原語では「黙れ」という意味のこと ("Save your breath.") しか言っていないので、ちょっとやりすぎかもしれません

※20: ENT第52話 "The Expanse" 「帰還なき旅」同様、ナセル間にある構造物から発射されているように見えます (そのエピソードの脚注※30 参照)

※21: 吹き替えでは「何人の人々を殺してきた」。今まではなく、これからのことを言っています

※22: その下に「消去された総容量:19.3XB」と書かれています。B はバイトとしても、X という単位接頭辞は現時点ではありません

※23: 窓から見える星が左から右に流れているため、アーチャーの部屋は右舷側にあることがわかります

※24: ENT "Anomaly" で、オサーリア人の Orgoth に対して行ったもの

ディジャマットは言った。「考え直した方がいい。」
アーチャー:「責任者は私だ。部下を犠牲にする気はない。」
「任務はどうなる。…クルーには優秀な船長が必要だ。」
「トゥポルに、任せる。」
「やはり、君と私は似ているな。…私も同じことをしただろう。…決断を尊重しよう。」
「だが、一つ頼みがある。」
「何かな?」
「我々地球人には、独自の習慣がある。…この船には、ある…危険物を廃棄する装置が設置されている。ごく稀なケースだが必要に応じて、それを処刑にも使うんだ。…安楽死の手段として。」
「……その装置はどこに?」

転送台から、一つの箱が転送されて消えた。驚くディジャマットとヤリック。
アーチャー:「物質を分子に分解するんだ。痛みはない。」
ディジャマット:「…気は変わらないか。」
「…あんたの気が変わらんようにな。」
「いいだろう。始めろ。」
トゥポル:「……船長。」
アーチャー:「フロックスに、ポートスの世話をしてくれと。…船を頼んだぞ。」 台に立つアーチャー。「これで終わりはしない。」
うなずくアーチャー。コンソールを操作するトゥポル。
アーチャーの姿は非実体化した。
ディジャマットは何かをつぶやき、頭を下げた。まだ転送台を見ているトゥポルに言う。「気持ちは察する。クルーにも伝えるといい。知る権利がある。」
ヤリックも歩いていく。

司令室。
ディジャマット:「おとなしいな。」
ヤリック:「…先のことを考えていたんです。」
「ごまかせないぞ? 何があった。」
「…この短時間で、もう 3人も犠牲者が。」
「気に病んでるのか。」
「おかしいですか。…彼らは敵ではないのに。」
「彼らは、信者ではない。つまり我々の敵だ。」
「なぜです。」
「…私の言葉は、創造者の言葉だと信じているか?」
「はい。」
「私への疑問は創造者への疑問だ。疑いをもつ者は、『異端者』だ。…ヤリック。敵に同情すればいつかは、敵側に回ることになるぞ。」
うなずくヤリック。

フロックスは、コンピューターが発する音に気づいた。画面のボタンを押すと、「チーズは食べさせるな」と表示されている。
医療室の片隅にいるポートスを見るフロックス。微笑んだ。
続いて「今、話せるか」と映った。「どうぞ」と入力するフロックス。

アーチャーはコンピューター室にいた。
「彼らの有機爆弾の成分を中和できないか?」と入力する。

フロックスは返す。「生体構造を調べる必要があります」
見張りのトリアノン人が近づいてくるのに気づき、会話画面を隠した。
フロックス:「何か。」

廊下を歩くトリアノン人。背後の天井から、アーチャーが降りてきた。
トリアノン人の首を絞め、落とした銃で殴る。意識を失ったトリアノン人を引っ張っていくアーチャー。

アクセスチューブでスキャナーを使うアーチャー。拘束されたトリアノン人は抵抗する。
アーチャー:「わかってるよ。医療スキャンは禁止されてるんだろ? …創造者は気にしないさ。」
脇のコンピューター室で操作を始める。

再び医療室のコンソールに反応がある。フロックスがボタンを押すと、人体の構造図が表示された。
拡大させるフロックス。

また作戦室でコンソールを見ているディジャマットは、ドアチャイムに応えた。「入れ。」
食堂にいたトリアノン人が入る。「ライアール※25が、持ち場にいません。」
通信機を使うディジャマット。「…ライアール。…ライアール。船の内部センサーで探し出すぞ。」 ブリッジに出る。「部下の居場所を調べたい。」
するとライトが明滅した。
メイウェザー:「ワープが解除された。」
トゥポル:「パワーが妨害されています。」
ディジャマット:「どこからだ。」
「…場所は、特定できません。」

回路の配線を変えているアーチャー。

機関室のタッカー。「俺は何もしてない。あいつに聞いてみろよ。ずっと後ろで見張ってたんだ。」
トリアノン人※26:「確かに、何もしてません。」
ディジャマット:「…とても偶然の事故とは思えん。」
「プリナム。Dデッキの EPS マニフォルドに異常が。セクション J-15※27 です。」
「ヤリック。…見てこい。」

ヤリックについて廊下を歩くトリアノン人。「左だった。」
後ろから現れたアーチャー。「こっちだ!」 トリアノン人を撃つ。
フェイズ銃を向けようとするヤリック。
アーチャー:「君には撃てん。」
ヤリック:「無駄だぞ。…死ぬ運命だ。」
「君が救える。」
「無理だ。」
「わかってるんだろう。こんなのは間違ってる。一緒に全てを終わらせるんだ。」
「教えには逆らえない。」
「その教えに裏切られてもか? これが創造者の意思か。何千人もの人々を殺すことが? …そんな教えを信じるのか!」
「…いいや。」
「ならば手を貸せ。…協力しなければ、妻と子供を死なせることになるぞ。悲劇は避けられないだろう。ディジャマットの定める身勝手な真理を、信じ続ける限り。戦争は免れない。」

ブリッジに戻るディジャマット。「ライアールは見つかったか。」
トリアノン人:「船中のシステムがダウンして、センサーが使えないんです。」
操舵席でアラームが鳴った。
ディジャマット:「何だ。」
メイウェザー:「船が 4隻、接近してます。」
「…映像を出せ。」
映し出されたのはトリアノン船だ。

コンピューター室に戻ったアーチャー。「異端者たちとは、どんな食い違いがあった。」
ヤリック:「選ばれし領域は 9日で創られたはずなのに、奴らは 10日だと。」
「…フン。それだけで 100年も戦争を?」 画面にコンソールの写真が表示される。「これだ。」
「何だ?」
「環境制御を医療室に切り替えたいんだが、ブリッジからしか操作できない。君がやるんだ。」
「俺が?」
「ドクターが作った薬を、船中にまく。それで有機爆弾の酵素を中和してしまえば…爆発は起きない。」

トゥポルは言う。「呼びかけてきます。」
うなずくディジャマット。
スクリーンにトリアノン人が映された。ディジャマットたちとは反対に顔の左側に模様を刻んでおり、その色も異なっている。
ディジャマット:「降伏しろ。」
トリアノン人※28:『こちらは 4隻いるんだぞ。』
「たとえ 10隻で向かってきても勝ち目はない。スキャンして攻撃力を確かめるんだなあ。…降伏すれば、悪いようにはしない。」
『俺たちを異端者呼ばわりするが…あんたの本性はよくわかってる。』 トリアノン人は通信を終えた。
ディジャマット:「先頭の船を狙え! …早くしろ!」
トゥポル:「嫌です。」
部下に指示するディジャマット。トゥポルの代わりに座った。
ディジャマット:「魚雷発射準備をしろ。」
トリアノン船に近づくエンタープライズ。


※25: Lyaal
エキストラ

※26: 名前は Nalbis (David Youse) ですが、言及されていません。声:高階俊嗣、大久保利洋のどちらか?

※27: 吹き替えでは「セクション15」のみ

※28: 名前は Ceris (Gregory Wagrowski DS9第154話 "Take Me Out to the Holosuite" 「がんばれ、ナイナーズ!」のソロック艦長 (Captain Solok) 役) ですが、言及されていません。声:白熊寛嗣、ENT 爬虫ズィンディ

エンタープライズが発射した光子性魚雷は、トリアノン船の一隻に命中した。相手も攻撃してくる。
揺れるブリッジ。
トリアノン人:「1隻のエンジンを破壊。」
ディジャマット:「メインリアクターを撃て。」
トゥポルはトリアノン人に飛びかかってやめさせようとするが、別の者に離された。武器を向けられる。
うなずくディジャマット。武器を発射するトリアノン人。
魚雷によって、トリアノン船は爆発した。残りの船が撃ってくる。

医療室も揺れている。その時フロックスは、カゴの一つのふたを開けた。
中にいたピリシアン・コウモリ※29が飛び出す。部屋を飛び続ける。
見張りのトリアノン人が身構える。
フロックス:「大丈夫、何もしない。…脅かさなければね。」
コウモリに怯え、身をかがめるトリアノン人。

フェイズ銃を構えながら廊下を進むアーチャー。部屋のロックを解除した。
リード:「船長。」
銃を投げるアーチャー。「兵器室へ行くぞ。船を取り返す。…軍事部隊※30を。」

ブリッジに入ったヤリック。「プリナム!」
ディジャマット:「始まったぞ。エンジンの状態はどうだ。」
「いま、故障個所を修理中です。…2、3時間後には、ワープ可能になります。」
トリアノン人:「敵が退却。」
ディジャマット:「後を追え。」
従おうとしないメイウェザー。
フェイズ銃を突きつけるディジャマット。「言うとおりにしろ!」
メイウェザーはトゥポルを見た。操縦を行う。
ヤリックは独り、司令室のコンソールへ歩いていく。
ディジャマット:「射程内まで近づくぞ。照準を合わせておけ。」

コウモリを怖がるトリアノン人。
フロックスは叫んだ。「気をつけろ、噛まれたら死ぬぞ!」
向かってくるピリシアン・コウモリに、頭を下げるトリアノン人。
フロックスは素早く近づき、ハイポスプレーを打った。トリアノン人は倒れる。
フロックス:「今夜は雪虫※31を、うんと奮発してやるからな。」
すぐに一つの装置から、液体の入った筒を取り出した。下にある「環境」と書かれたパネルを開ける。
筒を設置するフロックス。

周りに気づかれないよう、操作を続けるヤリック。
メイウェザー:「敵は最高速度ですが、追いつけます。」
ディジャマット:「よし。一隻ずつ片づけよう。」
ヤリックはボタンを押した。反応がある。

医療室の筒から、液体が減っていく。ため息をつき、微笑むフロックス。

ドアを開け、部屋の中に向けて武器を構えるアーチャーとリード。中から撃ってきた。
兵器室のトリアノン人たちと撃ち合いになる。一人を倒した。
もう一人は柱に隠れた。「撃つな!」
トリアノン人は密かに胸の道具を外し、銃をアーチャーたちに向かって掲げた。
姿を見せ、武器を捨てる。階段を下りてくるトリアノン人。
リード:「止まれ。」
その時、トリアノン人は道具を腕に刺して回した。何をしているのかわからないアーチャーとリード。
だがトリアノン人の有機爆弾は発動されない。階段を上って逃げようとする。
リードに撃たれ、後ろ向きに倒れた。落ちてくる身体を支えるアーチャーとリード。

報告するトリアノン人。「射程内です。」
ディジャマット:「…武器をロックしろ。」
エンタープライズの光子性魚雷によって、トリアノン船のワープナセルが吹き飛んだ。

機関室に入るアーチャー。占拠しているトリアノン人たちと撃ち合う。
MACO も続く。

MACO を引き連れ、廊下を歩くリード。トリアノン人を見つけた。
撃ち合いながら追いかける。

ワープコアにいたトリアノン人は後ろへ逃げ出した。アーチャーは移動し、アクセスチューブに入る。
隠れて爆弾を起動させようとするトリアノン人。だが駆けつけたアーチャーに横から撃たれた。

トリアノン人を撃つリード。MACO は逆に撃たれる。
反撃しようとするリードだが、銃のエネルギーが切れた。銃を投げ、トリアノン人を壁に押しつける。
MACO が近づくが、2人が取っ組み合っているため撃つことができない。別の道からトリアノン人がやってきた。
トリアノン人に気づいた MACO は銃を払い落とす。だが床に倒された。
リードはトリアノン人を殴り倒した。MACO が撃たれるという時、相手のトリアノン人が背後から撃たれた。
そこにいたのは、ヤリックの妻だった。

通信コンソールから音がする。
近づこうとしたトゥポルを払いのけるヤリック。「呼びかけてきました。降伏する気です。」
ディジャマット:「攻撃を続けろ。」
トリアノン人:「…武器が反応しません。」
通信が入る。『アーチャーよりブリッジ。いま指揮系統を機関室に移した。…武器はオフラインだ。』
ディジャマット:「奴を見つけろ!」
操作するトリアノン人。

アーチャー:「君たちの体内の有機爆弾も中和した。」
ディジャマット:『嘘をつくな!』
「どうかな? 自分で試すといい。やってみろ! …怪我をする前に降伏した方がいいぞ。」

ディジャマット:「降伏などするか。」
トリアノン人:「プリナム! 敵がこっちに。」
揺れる船。
ディジャマット:「敵が攻撃してきた!」 ブリッジでは火花が飛ぶ。「早く武器を戻さなければやられるぞ!」
攻撃を続ける 2隻のトリアノン船。
ディジャマット:「自分の部下たちが犠牲になってもいいのかー!」
その時、ブリッジに来た者が銃を撃った。すぐに身を低くするメイウェザーとトゥポル。
MACO やリードだ。トリアノン人と撃ち合う。
さらに駆けつけた MACO によって倒されるトリアノン人。身をかがめていたヤリックは、密かにトゥポルにフェイズ銃を渡した。
後ろから、自分の代わりにコンソールを操作していたトリアノン人を撃つトゥポル。ディジャマットもフェイズ銃を持っていたが撃たれ、倒れた。
立ち上がるメイウェザーたち。
リード:「船長、リードです。ブリッジを制圧。…武器をオンラインにしていただけますか。」
アーチャー:『わかった。』
フェイズ砲で反撃するエンタープライズ。
メイウェザーは倒れたディジャマットから、フェイズ銃を奪い返した。
ブリッジに戻るアーチャー。トゥポルはヤリックに銃を向けている。
アーチャー:「呼び出せ。」
通信席に座るトゥポル。
アーチャー:「船長のアーチャーだ。ディジャマットは、もうこの船の指揮を退いた。応答してくれ。」
映し出される「異端者」のトリアノン人は、怪我をしている。
アーチャー:「船は取り返した。指揮官は私だ。」
トリアノン人:『信じると思うか?』
「武器は全て停止させる。」 リードを見るアーチャー。
操作するリード。
アーチャー:「自分で確かめろ。」
コンピューターを操作するトリアノン人。通信は終わった。
トゥポル:「…去っていきます。」
ため息をつくアーチャー。

ワープ航行に戻ったエンタープライズ。
拘束室で、ディジャマットは瞑想している。
ドアを開けるアーチャー。「トリアノン星の軌道に入った。降りるぞ。」
ディジャマット:「君は大変なことをした。聖なる戦いを妨害したのだ。100年に渡る争いに…この手で終止符を打ち、平和をもたらすはずが!」
「平和だと? 私の部下たちにあんな危害を加えておいて!」
「取るに足らぬことだ! 全ては神聖なる真実のため。」
「フン。真実か。…私が見せてやろう。」

軌道上のエンタープライズから、茶色の惑星に 2隻のシャトルポッドが向かっていく。

ハッチを開けるアーチャー。トリアノン人は驚いた表情だ。
ディジャマットも降りる。続くトリアノン人や MACO。
辺りは完全に荒廃していた。わずかに残骸が残るだけで、人影は全くない。
もう一隻のシャトルから降りたヤリックや妻も、呆然としている。トゥポルも地表を歩く。
妻を抱き寄せるヤリック。
ディジャマットに話すアーチャー。「この街が滅びたのは、8ヶ月ほど前らしい。双方全滅だったようだ。大都市は全て壊滅し、数百万人が死んだ。」
目を閉じるディジャマット。
アーチャー:「あんたは平和をもたらすと言ったが、これが真実だ。」
離れるアーチャー。


※29: Pyrithian bat
ENT第3話 "Fight or Flight" 「死のファースト・コンタクト」、第31話 "A Night in Sickbay" 「小さな生命の灯」など

※30: 吹き替えではこのように訳されていますが、原語では Military Assault Command Operation の略称である MACO (メイコー) が、セリフ中で初めて使われました

※31: snow beetle
ENT第52話 "The Expanse" より。吹き替えでは「餌」

・感想
2話前の "Similitude" 「ライサリア砂漠幼虫」に続いて、共同製作総指揮マニー・コトの脚本。明らかに TOS の怪作 "Let That Be Your Last Battlefield" 「惑星セロンの対立」を意識した作り (2派が些細なことで争っている、顔の模様の違い、ラスト) となっており、加えて現実の宗教的な自爆テロをそのまま描いた「問題作」としたかったんでしょう。さらにドースン監督による今シーズン 2話目のエピソードでもありますが、出来としては至って普通作ですね。球体を崇めるという設定は、まあ面白いのですが…。
ちなみに撮影当時、カリフォルニアでは大きな山火事が起こりました。ハリウッドでも煙が上空を覆ったそうです。今回サトウはセリフなしでした。邦題が珍しく直訳でしたね。


dot

previous第63話 "Carpenter Street" 「デトロイト2004」 第65話 "Proving Ground" 「アンドリア人の協力」previous
USS Kyushuトップ | hoshi.sa.to | ENT エピソードガイド