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エンタープライズ エピソードガイド
第63話「デトロイト2004」
Carpenter Street

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・イントロダクション
夜の街※1。止まった車から、男※2が出てきた。
アパートに入る。

部屋に入り、2つの鍵を閉めた男。持ってきた書類をテーブルに置く。
上着を脱ぎ、冷蔵庫からビール缶を取り出した。口にし、洗面台に置きっぱなしになっていたピザの残りを食べる。
電話が鳴った。動きを止める男。
ピザを置き、子機を手にした。「…もしもし。」
『次の獲物は決まったか。』
「ああ、目星はつけた。リクエスト通りだ。」
『期待して待っている。』
「で、金だけど前と同じだよな。」

相手の人物は、建物の中を歩いていた。「同じだ。鎮静剤の量に気をつけろ。前回は死ぬところだった。」
男:『わかってる、今度は間違えねえよ。』
「よし、頼んだぞ。」 電話を切る。
その姿は、爬虫ズィンディ※3だった。


※1: 今回のロケ撮影はロサンゼルスのダウンタウンで行われ、Lacy Street Production Center というスタジオで建物なども使われました。一部はパラマウントでの新規セットもあり

※2: ルーミス Loomis
(リーランド・オーサー Leland Orser DS9第30話 "Sanctuary" 「さまよえるスクリーア星人」の Gai、第67話 "The Die Is Cast" 「姿なき連合艦隊(後編)」のロヴォック大佐 (Colonel Lovok)、VOY第73話 "Revulsion" 「生命なき反乱」の Dejaren 役。映画「セブン」(1995)、「インデペンデンス・デイ」(96)、「エイリアン4」(97)、「デアデビル」、「ニューオーリンズ・トライアル」(2003)、ドラマ Xファイル「地底」(1994) などに出演) 声:家中宏、TNG ベシアなど

※3: 爬虫ズィンディその1 Xindi-Reptilian #1
(ジェフリー・ディーン・モーガン Jeffrey Dean Morgan) 声:白熊寛嗣。今まで評議会メンバーの爬虫ズィンディを演じた声優と、同じ方になっています。俳優も異なりますし、明らかに違うキャラクターです

・本編
車を運転する男。
脇に止めると、前に女性が立っていた。「客だよ。あんたに譲る。行っといで。」
娼婦※4:「じゃあお先。」
「どうぞ。」
男に近づく娼婦。「私と遊ばない?」
男:「あっちがいいなあ。」
「…後悔するよ、兄さん。」 娼婦は戻っていく。「ご指名よ。」
女性は代わりに近づいた。「うーん、私をお呼びかしら。…あんた知ってる。今朝会ったじゃない。リンゴジュースくれたわ。」
男:「ジュース?」
「病院で。」
「ああ、君か。思い出したよ。」 笑う 2人。「すごい偶然だ。」
「乗ってもいい?」
「ああ、もちろん。」
もう一人の娼婦に声をかける女性。「じゃあお先。」
娼婦:「はーいはい。」
助手席に座る女性。「…近くで車を停めてしよ。次の信号左。」
運転する男。「ジョージア・タンディ※5。O マイナス。」
タンディ:「血液型まで覚えてんの?」
男はすぐに停めた。
タンディ:「あ、まだ 2ブロック先よ。」
瓶から白い布を取り出す男。
タンディ:「ドラッグだったら私は興味ない。」 化粧をする。「…それ何なの?」
男:「来いよ。」 タンディの背後から手を回した。
苦しむタンディ。意識を失う。
男:「よーし、いい子だ。」 小瓶も入っている、箱の注射器を手にする。タンディの腕に刺した。「心配することはないぞ? 傷つけたりはしないそうだ。」

人影のない建物。
男が運転する車がやってきた。フェンスの前で運転席からボタンを押す。
爬虫ズィンディ:『誰だ。』
男:「ルーミスだ。」
フェンスが開いた。車が通ると、再び閉まる。

降りたルーミスは、タンディを抱えた。建物に入る。

ベッドや機材が並んでいる部屋。開いている個所に、タンディを降ろすルーミス。「よーし、いいぞ。ゆっくり寝ててくれ。」
腕に針を刺し、点滴を始める。タンディの頭に、手慣れた様子で装置を貼り付けた。

そばのカバンに、札束がいくつも入っていた。確認するルーミス。
カバンを持ち、部屋を後にした。

エンタープライズ。
部屋に明かりがつく。シャツ姿のアーチャーは、棚から食べ物の皿を取り出していく。
ポートスの吠える声が聞こえた。
アーチャー:「いい子だ。」 厨房のテーブルに皿を置く。「チーズは?」
投げられたチーズを、そのまま食べるポートス。
もう一切れ食べさせるアーチャー。「これで最後だぞ?」
振り向くと、突然ダニエルス※6がポートスをなでていた。「よしよし。…久しぶりだな。」 宇宙艦隊の制服を着ている。
チーズをポートスに投げたアーチャー。「やっぱり現れたか。前回君と会った後で、ミッションが随分方向転換した。」
ダニエルス:「知ってる。」
「2、3 質問に答えて欲しい。…まずはズィンディの兵器についてだ。」
「…我々は何も知らん。」
「だが君たちは、歴史を監視するのが仕事なんじゃないのか? 30世紀※7から来たなら、全て知ってるはずだ。」
「人間とズィンディの闘争について、歴史には何も刻まれていないんだ。」
「どうして。」
「出来事は時間が流れた結果であり、起こることを前提とはしていない。」
「でも現に起こっている!」
「確かにそうだが結果はまだ我々に届いていない。歴史に刻まれるまでには、時間がかかる。」
「あの男は。スリバンを雇ってた。」
「彼がどうした。」
「…兵器について教えてくれたのは彼だ。信じていいのか。」
「よくない理由はない。」
「君は、私が歴史を変える男だと言った※8。今がその時なのか?」
「そうだと言いたいが本当にわからんのだ。…言ったろ、結果はまだ届いてない。」
「じゃ来た意味がないだろ! …なぜ来た。」
「いてはならん場所で、ズィンディ 3名を感知した。」
「この辺はどこもかしこもズィンディだらけだ。」
「デルフィック領域じゃない。ミシガン州デトロイトだ。…150年前のな。」

ドアチャイムが鳴り、眠っていたトゥポルはライトをつけた。また鳴らされる。
ドアを開けると、アーチャーがいた。「遅くにすまんが、急用だ。」
トゥポル:「どうぞ。」
ポートスが先に入り、座った。
何も言わないトゥポル。
アーチャー:「…いま、ダニエルスが来た。…タイムトラベルに対する君の疑いは晴れそうだぞ。」
トゥポル:「というと?」
「ダニエルスが 3人の、爬虫類ズィンディを地球で発見した。21世紀初頭のだ。…私達で調査に行って欲しいと言っている。」
「私達。」
「同行者は一人しか、許されない。」
「…ダニエルスが本当にタイムトラベラーなら、彼が自分で行くべきです。」
「私と接触する許可を得るだけでも随分手間がかかったらしい。時間の節約だよ。」
「時間など、自在に操れるのでは?」
「3人のズィンディは、この時代から地球へ向かった。もう 2ヶ月経つらしい。…観光で行ってるわけがない。狙いを突き止めなければ。」
「どうすれば過去へ行けるのです。」
「明朝 8時、司令センター※9に来いとのことだ。」
うなずくトゥポル。
アーチャー:「うん。ポートス。…データベースで、2004年に合った服を探しておいてくれ。」 出ていく。
臭いを嗅ぐトゥポル。

廊下。
タッカー:「前回のタイムトラベルは、戻るのに一苦労でした※10。」
21世紀風の服装になっているアーチャーは、箱を手にしている。「これをくれた。合図を送ればすぐ戻れる。」 中には小さな物体が並んでいる。「中の時間タグをつければ、何でも※11この時代に持ってくることができるらしい。」
タッカー:「クルーに船長の居場所を聞かれたら? 船外任務と言っても、シャトルポッドはあるし。」
ターボリフトから、同じく服装を変えたトゥポルが出てきた。耳は髪で隠している。
アーチャー:「適当に頼む。トラブルは避けろよ。」
タッカー:「船長も。」
「これが、勤務表だ。」 パッドを渡すアーチャー。
「はい。」 タッカーは読み始める。
アーチャーとトゥポルは部屋に入った。

その瞬間、2人は夜の屋外にいた。車が走っている。
トゥポル:「…もう 90光年離れた地球に?」
アーチャー:「時代も 150年、さかのぼっている。」
「…すみませんがとても信じられません。」
「…直わかる。行こう。」
歩き始める 2人。


※4: 娼婦その1 Prostitute #1
(Erin Cummings) 声:水落幸子、森夏姫のどちらか?

※5: Georgia Tandy クレジットでは娼婦その2 Prostitute #2
(Donna Duplantier) 声:水落幸子、森夏姫のどちらか?

※6: Daniels
(マット・ウィンストン Matt Winston) ENT第27話 "Shockwave, Part II" 「暗黒からの衝撃波(後編)」以来の登場。声:津田英三 (継続)

※7: これまでは 31世紀のはずでしたが…大雑把に言ったんでしょうか

※8: ENT "Shockwave, Part II" より

※9: 吹き替えでは全て「司令」。この訳語が使われる区画はブリッジ後部の Situation Room であり、第3シーズンになって導入された司令センター (Command Center) とは別です

※10: ENT第26・27話 "Shockwave, Part I and II" 「暗黒からの衝撃波(前)(後)」より

※11: 原語では「過去にあってはいけないものは何でも」

道路の脇に、自動車が並んでいる。
アーチャー:「盗難防止装置が取り付けてある。」 スキャナーを使う。「これもだ。」
新たな反応がある。その車に近づき、スキャナーを操作するアーチャー。
ロックが解除された。「乗ろう。」
トゥポル:「…待ってください。…タイヤが、動かないように固定されています※12。」
駐車違反だ。
次の車に移るアーチャー。開いた窓から手を入れ、ロックを開けようとする。
すると突然、中にいた犬が吠えだした。トゥポルは中を見る。
吠え続ける犬。アーチャーは先頭の車を確認する。
中を見てから、ロックを解除した。トゥポルも助手席に座る。
スキャナーを使っていると、うるさい音楽が流れ出した。アーチャーがボタンをいろいろ押した後、やっとで止まる。
トゥポル:「この時代の乗り物は操縦できるんですか。」
アーチャー:「私はパイロットだぞ?」 スキャナーの画面と、計器を見比べる。「『R、N、D、2、3、4』…。」
「2 から始めることをお勧めします。」
ギアレバーを動かすアーチャー。トゥポルを見る。「足で操作するんだ。」
ブレーキを解除し、道路を走り出した。
トゥポル:「…外部のライトを点灯すべきではないですか。」
ライトがつけられる。
トゥポルは自分のスキャナーを使っている。
アーチャー:「その地図は何年のだ。」
トゥポル:「2002年です。この年に最も近いのがこれでした。」
「じゃあ、そう大して変わってないな。2年前だ。」
「24番通りを、右舷の方向へ。」
「それでスキャンできるのは半径 3キロずつだ。街全体を捜索するのに、どれくらいかかる。」
「…約80キロの走行でスキャンが完了するよう、コースを決めました。しかし、完了前にズィンディは見つかるでしょう。」

デトロイトの街を進み続ける車。
計器を見るトゥポル。「そのアイコンは?」
アーチャー:「ガソリンポンプだ。給油しないと。」
「どこで。」
「問題は場所じゃない。金だよ、アメリカ紙幣だ。」
「この時間に手に入れるのは無理では?」
外を見るアーチャー。「そうでもないさ。」

ATM の前で、スキャナーを操作するアーチャー。出てきた金を取る。「これを犯罪という。」
トゥポル:「余ったら返しましょう。」
笑うアーチャー。再び車に乗り込んだ。

ルーミスがドアを開けた。紙を見ながらアパートの中を歩く。
部屋の前でチャイムを鳴らし、ドアを叩く。
男:「はい。」
ルーミス:「ローレンス・ストロード※13、さん?」
ストロード:「あんたは。」
「…病院※14の者ですが、今日間違った書類にサインをいただいてしまって。」
「金を返す気はねえ。」
「いやいや、違いますよ。返す必要はない。こっちが、払わなきゃいけないないんです。あと 25ドル。だから改めてサイン下さい。」
「書類は。」
「それが担当者の前で書いてもらえって言われてて。受付の太った女です。…だから、お迎えに。」
「夜の 11時だぞ?」
「そうですがサインをもらえないとあなたの血液を明日朝一で検査に回せないんですよ。…25ドルももらえない。」
ストロードはチェーンロックを外した。帽子を被り、車椅子を動かす。「…すぐ終わるんだろ? コナン※15観たいんだ。」

車のトゥポル。「人々は化石燃料が枯渇しつつあることに、気づいているんでしょうか。」
アーチャー:「30年も前からね? だが 2061年になって、ついに…※16
トゥポルのスキャナーに反応が出た。「一キロ前方です。」

駐車場に入る車。
トゥポル:「左から 2棟目に、ズィンディが 3名います。」
アーチャー:「人間は?」
「…5名。別の建物内です。」
「とても住居には見えんな。」 アーチャーはフェイズ銃を取り出す。「殺人にセットしろ。…爬虫類ズィンディには、麻痺じゃ通用しない※17。」
設定するトゥポル。
アーチャー:「分かれて調べよう。私は向こうへ。」

フェンスの前でコミュニケーターを出すトゥポル。「どうぞ。」
アーチャー:『1階で、中性子パワー源を探知した。』
「電気式ロック構造の門を発見しました。…あれなら、解除は可能かと。」 外をうかがうトゥポル。「車が来ました。」

ライトで照らされる寸前、隠れるアーチャー。

入ってくるルーミスの車。

アーチャー:「確認。」

ボタンを押すルーミス。
爬虫ズィンディ:『誰だ。』
「ルーミスだ。」
フェンスが開けられる。その様子を見ていたトゥポル。

ベッドが並んだ部屋で、ルーミスはストロードを同じように寝かせた。車椅子を動かす。
爬虫ズィンディ:「手は消毒したのか。」
ルーミス:「仕事で一日中注射してんだ。患者に病気を移すようなことはしないよ。…金はどうした。」
爬虫ズィンディの顔は、ルーミスからは見えない。「最後の 3人分は一度にまとめて支払う。そう決めた。」
ルーミス:「話が違うじゃないか。一人ずつ払う約束だ。」
「残る 2種類の血液型がそろえば、報酬は支払う。」
「時間をおかないか? 少なくとも 2、3日は。実はここんとこ、サツに行方不明者の届けが出され始めてんだ。」
「2、3日など待っている余裕はない。最後の 2人を連れてこい。」
「行方不明者が全員病院の患者だってことがバレれば、誰だってまずは俺を疑う。」
「だったらとっとと仕事を終わらせることだ。」
「あんたらの狙いは知らないし、知りたくもない。俺は無関係だ。…だがサツはテロに手を貸した男に容赦はしない。危ない橋なんだよ。」
「最後の 3人の報酬は倍にしよう。…だが最後の 2人は明日までに届けてもらう。」
「2倍? …明日か? ああ…わかった。明日までに連れてくる。」 出ていくルーミス。

ライトの明かりが見えた。
車で待っているアーチャー。「来たぞ。」
ルーミスの車が出てくる。エンジンを動かすアーチャー。
追いかける。

部屋に戻り、鍵を閉めたルーミス。腕を組み、ビールを飲む。
ベッドに散らばっている書類を読み始めた。「9階。…127キロ※18。…ウイリアム・マイヤーズ※19。2階か。」
ドアを叩く音。

覗き穴の向こうに、アーチャーがいた。ため息をつき、外を見るルーミス。

スキャナーを確認するアーチャー。部屋の図の端に、生体反応が移動していく。
ドアを蹴破った。窓が開いている。
非常階段を下りていくルーミスが見える。アーチャーも続く。
下に着いたルーミスは、見上げた。だが振り向いた瞬間、小さく声を上げた。
前にいたトゥポルが、ヴァルカン首つかみをしていた。倒れるルーミス。
うなずくアーチャー。トゥポルは上を見た。


※12: 原語では「この機械は…乗り物を走行させないように設計されているようです」

※13: Lawrence Strode
(Michael Childers) 名のローレンスは訳出されておらず、クレジットも姓のみ。声:谷昌樹、高階俊嗣のどちらか?

※14: 吹き替えでは全て「病院」ですが、原語では「血液バンク」と言っている個所があります。単なる病院ではないことで、ズィンディがルーミスを選んだ理由がわかりやすくなっています

※15: NBC の深夜トーク番組 "Late Night with Conan O'Brien" のこと。公式サイト

※16: 具体的に何があったかはわかりません。この文脈からすると、石油に次ぐ新しいエネルギー源の発見・開発というのが自然な流れだと思われます。ファースト・コンタクトの 2年前ということもあり、核融合か反物質を扱う技術あたりでしょうか。ただ吹き替えでは「だが、危機感を抱くのは 2061年の…」と、独自の解釈がなされています。第三次大戦後の時代で、今さら危機感も何もないような気がしますが…

※17: ENT第56話 "Rajiin" 「美しき潜入者」より

※18: 原語では「280ポンド」

※19: William Meyers

部屋に戻ったアーチャー。「車椅子の男は? …なぜ真夜中に工場跡地なんかへ連れて行った。」
椅子に拘束されているルーミス。「ほんとに何のことかわからない。」
トゥポル:「…これは何。」
並んだ小瓶を見るルーミス。「ああ、病院から失敬してきた。ポーター通り※20の病院で、もう一年以上も働いてる。」
アーチャー:「なぜ盗んだ。」
「…小銭を稼ぐためさ。欲しがる奴は五万といる。」
スキャナーを使ったトゥポル。「本当に? メトエキシタル※21を欲しがる人間がそんなにいるんですか?」 また小瓶を見せる。
笑うルーミス。
アーチャー:「ドアをノックされたら、窓から逃げる習慣が?」
ルーミス:「サツは嫌いなんだよ。」
「…カーペンター通り※22の友達は誰だ。」
「そんなとこ行ってねえよ。」
アーチャーはルーミスに近づいた。「車椅子の男を連れて行ったはずだ。あの工場の中に誰がいる!」
書類を見るトゥポル。
ルーミス:「何のことかわからないって言ってるだろ? 弁護士を呼んでくれ、弁護士。」
アーチャー:「…ほどけ。」
トゥポルはアーチャーを見る。
ルーミス:「…聞こえたろ。ほどけよ!」
言われたとおりにするトゥポル。
ルーミス:「…助かったよ。」
だがアーチャーはいきなりルーミスを殴った。椅子ごと倒れる。
また座らせ、トゥポルがロープで縛る。
アーチャー:「縛ったまま殴るのは気が引けてな。友達は誰だ!」
ルーミス:「越権行為だ。」
「ほどいてくれ。」
「ああ、ちょっと待ってくれ、やめてくれ! 誰だか知らないんだ、神に誓う。多分医者だよ、未認可のワクチンを研究してるって言ってた。…実験や何かして。だから俺が、被験者を。」
トゥポル:「医療研究が工場跡地で行われていることについて、疑問をもたなかったんですか。」
「…そりゃもったさ。今夜なんてテロリストじゃないかとも思った。でも端から気づいてたら、手伝ったりなんかしねえよ。」
「この時代の最悪の資質を備えた男のようです。貪欲で、凶暴で。倫理のかけらもない。」
「奴は誰も傷つけないって言ったんだ。…さっきも患者を見たけど、無事だった。」
アーチャー:「何人いる。」
「5人だ。いや 6人だ、車椅子の男で 6人。」
「そいつはなぜお前を運び屋に?」
「病院に務めてるって言ったろ。…奴は全8種類の血液型の患者を欲しがった。…俺ならすぐ連れてこられるからな。」
書類をアーチャーに渡すトゥポル。「…しかも何の、良心の呵責もなくね。まさに適任だわ。」
ルーミスはため息をつく。
アーチャー:「報酬は?」
ルーミス:「一人 5,000ドル。最後の 3人は 1万だ。」
トゥポルはアーチャーに言った。「それが 21世紀の人の命の価値ですか。」
ルーミス:「…言ったろ、奴は誰も傷つける気はない。」
アーチャー:「外見は?」
「ほとんど、電話でしか話してない。会っても姿は隠したままだ。背は高かったが、それしかわからない。な、もういいだろ? 二度としないって誓うからさ。」
「いや、もう一度してもらう。刑務所にぶち込まれたくないならな?」
「どういうことだよ。」
「この AB プラスと B マイナスが最後なのか?」
「ああ。」
「よーし。私を連れて行け。血液型は B マイナスだ。」

道路を走るルーミスの車。
ルーミス:「あの工場に長時間いる気なら、腹ごしらえした方がいい。」
アーチャーが運転している。
トゥポル:「黙って。」
ルーミス:「別に高級料理食わせろなんて言わねえよ。バーガーとか、タコスとか。…近くに、ドライブスルーがある。サツだって腹は減るだろう? 金がないならおごってやるって。」
「黙れと言ったはずです。」
アーチャー:「…道のどっち側だ。」

ハンバーガーショップに入り、マイクのそばに近づく。
店員:『バーガーランド※23へようこそ、ご注文は?』
ルーミス:「ダブル・スーパービーフ、レタス抜き。」
アーチャー:「ダブル・スーパービーフのレタス抜きを、一つくれ。」
店員:『40セント追加でトリプルにできます。』
ルーミス:「そうする。」
アーチャー:「…いや、ダブルでいい。」
店員:『セットになさいますか?』
自分で答えるルーミス。「ああ、ポテト、ルートビアの M。」
店員:『ほかに御注文は?』
アーチャー:「…ハンバーガー、ケチャップだけ。」
『50セント追加でダブルにできます。』
「いや結構。」
『セットになさいますか?』
「いいやセットじゃなくていい。」
『ほかに御注文は?』
アーチャーに見られたトゥポル。「…『フィエスタ・サラダ』に、肉は入っていますか※24。」
店員:『いいえ、ですが 75セント追加でベーコン 3枚増やせます。』
「私は何もいりません。」
アーチャー:「ほんとに?」
「本当に。」

車は進み続ける。
ハンバーガーをほおばるルーミス。「一人で悪いなあ。…腹ペコなんだよ。これじゃ食いにくいったらありゃしねえ。逃げやしないのに。」 手はロープで結ばれている。
アーチャー:「そのまま食え!」
ルーミスは肉のかけらを落とした。それを見るトゥポル。
ルーミス:「あーあ、言ったろ? 自分で拾うよ。」 トゥポルに押しのけられる。「おーっと、危ねえ。」
トゥポルは肉を窓から投げ捨てた。
ルーミス:「フン。ベジタリアンだったな。じゃポテトなら、食えんじゃない?」
山盛りのポテトが置いてある。トゥポルはルーミスをにらんだ。
ルーミス:「ん、嫌ならいいさ。うん、うん。」

ベッドの部屋に、ルーミスが車椅子を押してやってきた。アーチャーが座り、うなだれている。
開いたベッドに寝かせ、点滴を始めるルーミス。小声でアーチャーに話す。「奴は一時間ごとに血液を採取する。…鎮静剤を打ちに来るのは、6時間ごとだ。何かするつもりならその前にするんだな。」
ドアが開いた。爬虫ズィンディだ。
ルーミス:「7人目だ。」
爬虫ズィンディ:「血液型は。」
「B。B マイナス。明日中には AB プラスも連れてくるよ。」
「その言葉を忘れるな。」 爬虫ズィンディは出ていった。
ルーミスも部屋を後にする。

車の中で、身を隠しているトゥポル。ルーミスが戻る。
トゥポル:「エンジンを始動し、次の場所に移って下さい。」 フェイズ銃を突きつけている。
ルーミス:「光線銃か。オモチャにしちゃ、よくできてる。」
トゥポルはルーミスの脇に発射した。「出して。」
運転を始めるルーミス。「最後の 3人は、1万ドルずつもらえるはずだったのに。」
トゥポル:「見えなくなるまで何もしゃべらないで。」

部屋に入る爬虫ズィンディたち。「新入りから 15ミリリットルだ。」
アーチャーに近づく。首に消毒液を塗るズィンディ。
眠った振りを続けるアーチャー。爬虫ズィンディは注射器で血液を採る。

工場跡地内を運転するルーミス。「捕まえたら俺は無罪放免だろ? これだけの危険を冒してるんだ。」
トゥポル:「詳しいことはパートナーが戻ったら決めます。」
「俺にとっちゃ大きな賭けなんだぞ。あんたの連れがミスれば、俺は奴らに殺される。誠意を見せてくれ。」
「人を売っているあなたに、誠意を望む権利があると?」

出ていく爬虫ズィンディたち。アーチャーはすぐに起きあがり、点滴を外した。
フェイズ銃を準備し、スキャナーを使いながら外へ出る。

車の中で動くルーミス。
トゥポル:「下がって。」
ルーミス:「いいだろ。タバコ吸うだけだ。」 火をつける。
「…何をしているの。」
「…あんたは知らねえが、俺は落ち着かねえんだ。」
「すぐに消して下さい。」
「嫌いなら窓開けろよ。」
フェイズ銃を突きつけるトゥポル。「早く。」
ルーミス:「ああ。」 窓を開ける。

大きな機材を使って、作業をしている爬虫ズィンディたち。アーチャーが上から覗き込む。

トゥポルのコミュニケーターから呼び出し音がした。「そこを動かないで。」 フェイズ銃をルーミスに向けながら、車を降りる。「トゥポルです。」
アーチャー:『バイオ・リアクターを持ち込んで、ウィルス性の病原体を合成してる。ラジーンの言ってた生物兵器だ※25。間違いない。』
「でもなぜわざわざ過去に。」
『ダニエルスは誰かから隠すためだと言ってた。ここなら見つかる心配はない。未来に持ち込むのを食い止めなければ。』
「そこから 3人全員倒せそうですか。」

アーチャー:「わからない。バイオ・リアクターを止めようとしたが、病原体を街にばらまくことにもなりかねん。」

トゥポル:「では、時間ビーコンを破壊して下さい。そうすれば、未来へは何も持っていけません。」

アーチャー:「早速探そう。」

トゥポル:「スキャナーをデルタ周波数に合わせて下さい。そうすれば、敵には気づかれません。」
トゥポルを見ていたルーミスは、密かに車のシートに隠していたナイフを取りだした。

隠れたまま、スキャナーで爬虫ズィンディが使っている機械を調べるアーチャー。スキャナーを納め、フェイズ銃を向ける。
発射した。気づくズィンディだが、そのまま撃たれて倒れる。
反撃する残りの 2人。機械から、中央の筒を取り出す。
爬虫ズィンディは逃げていった。
下に降り、連絡するアーチャー。「西側のドアから逃げた。」 ドアを開ける。「通りへ出たかもしれん。…ウィルスを持ってる。」


※20: Porter Street

※21: CC では methohezital になっていますが、メトヘキシタール (methohexital) の間違いかもしれません

※22: Carpenter Street
原題。実在する地名ですが、脚注※1 で書いたようにロケ地はロサンゼルス

※23: Burgerland
架空の店

※24: 吹き替えでは「『フィエスタ・サラダ』の、肉抜きはありますか」。これだと意味が逆になり、「ベーコンを追加できる」という店員のセリフにつながりません

※25: ENT "Rajiin" より

外を走るアーチャー。爬虫ズィンディが撃ってきた。
アーチャー:「トゥポル。」
トゥポル:『はい船長。』
「メインビル西側の路地だ。先回りしてくれ。」

トゥポル:「了解。」 キーを車に投げ入れる。「出して。」
ルーミス:「トラブル?」
「出しなさい。」
運転するルーミス。

逃げる爬虫ズィンディ。アーチャーが追う。

命じるトゥポル。「ゆっくり止まって。ここです。」
スキャナーとフェイズ銃を見るルーミス。「最近のサツはシャレたもん使うんだな。」
トゥポル:「窓を開けて。」
「相棒がヘマしでかしたんだろう。」
「黙って。来るわ。」 トゥポルはフェイズ銃を外へ向ける。

出てくる爬虫ズィンディ。

その時、ルーミスはクラクションを鳴らした。
止めるトゥポル。「やめて!」

車の方へ銃を向けるズィンディ。

かがんで隠れるトゥポル。
ルーミスも隠れながら、ナイフで襲ってきた。

爬虫ズィンディが背後から撃たれ、倒れた。アーチャーは最後の一人を追う。

トゥポルはルーミスの手を取り、顔を殴った。フェイズ銃の設定を変え、撃つ。
意識を失うルーミス。

追いかけるアーチャー。

トゥポルも車を降りる。

ズィンディは建物の屋上へ逃げている。

スキャナーを使うアーチャー。見上げた。
合流するトゥポルに言う。「こっちだ。」 アーチャーは、はしごを登りだした。

屋上の爬虫ズィンディは、下から湯気を出す換気扇を覗き込んだ。
筒を開け、ロックを解除する。そばにフェイズ銃のビームが当たった。
撃ったアーチャー。「ウィルスを撒き散らす気だ。」
撃ち合いになる。
トゥポル:「時間ビーコンを破壊され、もう未来には戻れません。…ああするしかないんでしょう。」
アーチャー:「…だが、あのウィルスでは人間を絶滅させることはできん。6種類の血液型にしか効かんからな。」
「地球人口の 4分の3 に感染させれば、人間が彼らの脅威になることはありません。」
「…暗闇を利用しよう。…発砲を続けろ。」 離れるアーチャー。
脇に回り込む。建物の間には隙間があるが、アーチャーはジャンプしてパイプにつかまった。
衝撃で一本が落ちていく。何とか登りきるアーチャー。
トゥポルと撃ち合っているズィンディ。
そばでアーチャーの声が響いた。「動くな!」
爬虫ズィンディ:「クソー!」
「武器を捨てろ。」
従うズィンディ。
アーチャー:「ウィルスをよこせ。」
爬虫ズィンディはアーチャーをにらむ。
アーチャー:「どこで使う気だった。」
爬虫ズィンディ:「お前らが我々の星を破壊することを絶対に許さない。…お前らの種族を絶滅させてやる。」
ズィンディはウィルスの筒に向かって飛びつこうとしたが、アーチャーのフェイズ銃の方が早かった。
それでも手を伸ばす爬虫ズィンディ。筒が転がっていく。
換気扇に入る寸前、アーチャーは筒を拾った。中身を封じる。

倒れた爬虫ズィンディに、時間タグの一つがつけられる。
アーチャー:「…行こう。」

廊下でパッドを確認しているタッカー。
アーチャーたちが部屋から出てきた。
タッカー:「問題でも?」
アーチャー:「…終わった。」
「船長。」
「アーチャーからリード大尉。」
リード:『どうぞ。』
「至急、保安チームを司令センターへ。」
『了解。』
「マルコムを待って、連中を第2貨物室へ。私はこれをフロックスに。」 ウィルスの筒を持っていくアーチャー。
タッカー:「何です。」
トゥポル:「こっちです。」
ドアを開けるトゥポル。司令センターには、爬虫ズィンディやバイオ・リアクターがあった。

夜が明けたデトロイトで、パトカーが集まる。
銃を向ける警官※26。「車から降りろ!」
警官2※27:「様子がおかしい。」
「早く降りろ、両手を上に上げろ! 早く、ほーら来い!」
車から出されるルーミス。「何なんだよ。おーいおい、俺は何もしてねえぞ。」
警官1:「タレコミがあったんだよ。」
警官2:「6人誘拐したってな。」
ルーミス:「…警官が 2人俺んちに来て、取引したいって言うから協力したんじゃねえか。」
警官1:「何のことかね。連れてけ!」
警官2:「はい。」
ルーミス:「あの、化け物は。トカゲ人間だ。まだこの辺にいる、探してくれ。」
「わかった、そうするよ。」
「気をつけろ。奴ら光線銃を持ってる。」
「光線銃ね、頭下げて。」 警官はルーミスをパトカーに入れた。
戻っていくパトカー。


※26: 警官その1 Officer #1
(Billy Mayo) 声:谷昌樹、高階俊嗣のどちらか?

※27: 警官その2 Officer #2
(Dan Warner) 声:谷昌樹、高階俊嗣のどちらか?

・感想
現代 (公開時の年代) へのタイムトラベルものといえば、映画 ST4 "The Voyage Home" 「故郷への長い道」、TOS "Tomorrow Is Yesterday" 「宇宙暦元年7・21」、VOY "Future's End" 「29世紀からの警告」と、名作が多かったものです。今回はズィンディと絡めて 2004年 (放送は 03年11月) に飛んだわけですが…この出来じゃ過去のエピソードを並べること自体が間違っていますね。「現代に飛ばせば面白いだろう」という、ワンアイデア的な浅はかさしか見えてきません。バーマン&ブラガコンビの脚本じゃ、それも仕方ないのでしょうか。21世紀になってみても 20世紀となーんにも変わらないどころか、セリフ中にもあるようなテロの恐怖に怯える暗い世界。それを描くことには成功しているんでしょう。多分。
吹き替えでは言葉遣いがラフになったダニエルス。再登場は予想できたといえ、全くもって不可解なセリフを発しています。「事件の影響は未来に届くまで時間がかかる」というのは以前のシリーズと反する上、ENT 内でアーチャーが消えた途端に 31世紀の地球が崩壊した事実とも矛盾してますね。まあ深く考えたらいけないんでしょうが。
ロケ撮影の煽りを食ってか、リードは通信のみ、その他の「下級」レギュラー (サトウ、メイウェザー、フロックス) はセリフすらありませんでした。監督はベテランの一人 Mike Vejar で、ENT では 7話目です。


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