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ディープスペースナイン エピソードガイド
第36話「幻影の村」
Shadowplay

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・イントロダクション
ランナバウト※1
ダックス:『科学士官日誌、宇宙暦 47603.3。私はシスコ司令官の命令で、ワームホールの向こう側にある、異常な分子界の調査に向かった。このガンマ宇宙で、オドーは自分のルーツを探りたいと言っている。』
操縦するダックス。「マンワリング少尉※2は、フレイラ※3がストレク中尉※4を愛してると思って、貨幣検査オフィスに顔を出さなかったけど、ストレクは保安士官のシーリー※5とデートをしていて、フレイラはマンワリングに誘われるのを待ってたの。」
オドー:「そういえば、シーリーは最近任務に専念していないな? 基地に戻ったら早速彼女と、その件を話し合おう。」
「それじゃまるで私が告げ口をしたみたいじゃない。」
「…断っておくが、これは前から思っていたことで、君から何を聞こうが関係ない。人間の下劣な愛の感情など、この私には何の興味もないことだ。」
「私はねえ、愛は目の前にあっても気づかないことが多いと言いたかっただけ。」
「愚かなことだよ。」
「こういう例もあるのよ? リシア・アーリン※6を知ってる?」
「ジャムジャ※7売店を経営しているボーリア人か?」
「彼女、最近よく保安室に出入りするようになったでしょう。」
「保安関係の仕事に進みたい、いとこがいるんだ。」
「あら、ほんとに?」
「君はリシアが私に興味を抱いているとでも言いたいのかね? …ハ、馬鹿らしい。初めて聞いたよ。」
「あなたが気づかないだけ。」
「君の勘違いだ。」
「どうしてそう言い切れるの。」
「私に興味を抱く女性などいないからだ。」
「…女の友達をもったことないの?」
「キラ少佐は女の友人だ。」
「そういう関係じゃなくて、もっと…何て言うか、親しい間柄よ。」
「…ずいぶん、失礼なこと聞くね。」
「ごめんなさい、7回の人生を生きた私は不感症になったみたいね?」
「フン。」
「…分子界を見つけたわ? …オミクロン分子※8よ?」
「ならどうしたんだ。」
「オミクロン分子は非常に珍しく、あるタイプの物質と、反物質の反応だけで作り出されるの。システムの、第2惑星から出てるようね。接近してみましょう。」

惑星へ近づくランナバウト。
ダックス:「おかしいわ? 分子が、小さな丘に集中してる。」
オドー:「センサーには、生命体の反応はない。」
「分子が、センサーを妨害してるのよ。降りて、詳しく調べましょう。」

夜の集落※9
誰もいない広場に近づく、ダックスとオドー。
ダックス:「トライコーダーも作用してない。きっと分子界が妨害してるのね? …分子はここから出てるみたい。」 中央に巨大な機械がある。「…これが分子界の源よ? 多分何かの物質と反物質の原子炉だわ?」
オドー:「早く戻ろう。ウロウロしていると、持ち主に発見される。」
「ちょっと待って。」
オドーは、2人に銃が向けられていることに気づいた。「どうぞごゆっくり、急ぐ必要はない。」
一人の異星人が立っていた。


※1: 脚本およびエンサイクロペディアではオリノコ

※2: Ensign Manwaring

※3: Freyla

※4: Lieutenant Strek

※5: Seelee

※6: Lysia Arlin

※7: jumja
DS9第20話 "In the Hands of Prophets" 「預言者の導き」より

※8: omicron particles
VOY第6話 "The Cloud" 「星雲生命体を救え」でも

※9: この風景は、後に TNG第176話 "Preemptive Strike" 「惑星連邦“ゲリラ部隊”」の惑星ロナラ (Ronara) として再利用

・本編
誰もいない店に、クワークが独りでいる。ドアチャイムが鳴った。「待たせやがって。入れ! どこウロウロして…」
入ってきたのは、キラだった。
クワーク:「少佐か。ああ…悪いけどもう閉めたんだ。明日出直してきてくれ。」
キラ:「飲みに来たんじゃないわよ。あなたの従兄弟のコノ※10が、基地に現れたという報告があったの。」
「コノがここに? そりゃ知らなかった。」
「でも帰ったわ? 見つけたら慌ててテラライト※11の貨物船に飛び乗ったそうよ。」
「そりゃきっと人違いだ。あいつが何しに来るんだ?」
「私もそれが気になって少々調べてみたの。…そしたら彼は美術館強盗容疑で手配されてるわ? 盗品をあなたに処分してもらおうと思って来たんじゃないの?」
「言いがかりだ、何の証拠もないくせに。」
「クワーク、腐った頭に叩き込んでおきなさい。オドーが留守の間に悪事をはたらこうなんて、絶対に許さないわよ。…監視してるから。」
出ていくキラに話しかけるクワーク。「少佐。俺が嫌いみたいな口ぶりだな?」
キラ:「よくわかったわね。カーデシア人とは共謀する。客からはだまし取る。あなたは基地の疫病よ。嫌いも嫌い、見ただけでもう…吐き気がしてくるわ!」 出ていった。
「聞かなきゃよかった。」

ジェイクは尋ねた。「仕事? 何のためにする?」
シスコ:「もう 15歳なんだ。自分に責任もたなきゃならんよ?」 私服姿だ。「…なあ、ノーグは働いてるよ?」
「まあね?」
「年はほとんど変わらないだろう? お父さんもその年で働いた。とてもいい勉強になったよ。」
「…いいよ、ノーグに頼んでクワークの店を紹介してもらう。」
「クワーク? それより、オブライエンを手伝った方がいいんじゃないのか?」
「なーに、オブライエンを?!」
「…オブライエンは嫌いじゃないだろう?」
「だけど、技術のことなんて何も知らないよ。」
「だから勉強する絶好のチャンスだ。それに宇宙艦隊アカデミーに応募する時、大きな武器になる。」
「……わかった、やってみる。」
「悪いことは言わん。」

広場に集まっている、異星人のヤデラ人※12たち。
室内のオドーは尋ねた。「私達が何か犯罪を犯したというのか?」
さっき銃を向けた男、コリウス※13。「…そうじゃないのか?」
ダックス:「今着いたばかりよ!」
「信用できんな。」
「じゃあ航海日誌を見てちょうだい? そしたらわかるわ?」
「…日誌は、いかようにも改竄できる。保安士官なら、それぐらい知ってるだろ?」
オドー:「いい加減にしてくれ。もし私達が悪事をはたらいたんなら、いつまでもこんなところにはいないよ。証明してやる! コンピューター、1人転送だ。」
そのままオドーは転送されていった。
驚き、銃を構えるコリウス。
ダックス:「……大丈夫、戻ってくるわ?」
また同じ椅子に、オドーが実体化した。手を広げる。
ダックス:「言ったでしょ?」
コリウス:「なおさら怪しくなったな? 実はこれまでに 22人が今のように消えていなくなったんだ。」
オドー:「…何だと、22人も? 一度にみんないなくなったのか。」
「いや、秋から始まった。最後の犠牲者はつい 6時間前だった。」
ダックス:「その頃私達はこの星系※14にいなかった。疑うなら私達の基地へ来てちょうだい? 嘘じゃないことがはっきりするわ?」
ため息をつくコリウス。
オドー:「ほかに容疑者はいないのかね。」
コリウス:「いない、君たちだけだ。そりゃあここにも悪い奴はいるよ? 盗みをはたらいたり暴力を振るったり。しかし誘拐や、殺人は、それはありえない。ここの人間にはできん。」
「なるほど。それで…転送が行われたという痕跡はないのか。」
「真っ先に調べたよ。でも、お手上げだ。…私は、10年間ここの総督として納得のいく仕事をしてきた。みんな私を信頼してくれてるよ。しかしこの事件の首謀者は私より遥かに頭がいい。残念だが、私に解決できそうもない。」
「力を貸せば、できるかな?」
「…ありがとう。」

広場に戻ってきたコリウス。「ラリガン※15!」
別の老人が出てきた。「そうか。…これが噂の異邦人か。なぜ刑務所に入れん。」
コリウス:「私の判断では 2人は消滅事件に関係ないし、オドーは運良く保安士官でな? 協力してくれるそうだ。」
ラリガン:「何をするんだね。」
オドー:「最後の犠牲者はあなたの、娘さんでしょ? 最後に見たのはいつです?」
「今朝の食事の時だ。しかしテヤは昼頃に、仕事部屋で見たと言ってる。」
「テヤ?」
「孫娘だ。コリウス、娘のアネトラ※16も同じだ。見つからんよ。」
「どうしてわかります?」
「見つかった者はまだ一人もいない。」
ダックス:「転送活動の痕跡を調べてみます。念のため。」
コリウス:「ああ、どうぞ。」
トリコーダーを使うダックス。「…まだ正常に作動しないわ? 原子炉から排出された、オミクロン分子が機能を妨害してるの。」
コリウスは自分の装置を取りだした。「ああ、機械の故障じゃないのか。これはきちんと動いてるよ?」
借りるダックス。「種類によっては、周りに…静電気を残す転送機があるの。アネトラの仕事部屋は?」
うなずくラリガン。ダックスを案内するコリウス。
オドー:「できればあなたのお孫さんの話を聞きたい。」
ラリガン:「構わんよ、さっき広場にいたようだ。案内する。」

オドーを連れて行くラリガン。「テヤ※17。」
こまで遊んでいたテヤは、オドーを見てラリガンに抱きついた。
ラリガン:「怖がることはない。この人は…コリウス総督の友達でね。お前に聞きたいことがあるそうだ。」
テヤ:「…どうしても?」
「嫌なら、いいんだよ?」
オドー:「できたら、答えてくれないかな。消えたお母さんを、見つけるためだよ。」
テヤ:「消えたんじゃない。…帰ってくるわ。」
「…最後に、会った時お母さんの様子はどうだった? 普段と変わってたかい? 心配事があるような様子とか。」
「変わってない。」 ラリガンに尋ねるテヤ。「ママはいつ帰るの?」
ラリガン:「あ…いつだろうね。さ、もう寝る時間だよ?」
オドー:「いや、もう少し聞きたいことがあるんですが。」
「…明日にしてくれ。」 テヤを連れて行くラリガン。
振り返るテヤ。


※10: Kono

※11: Tellarite
TOS第44話 "Journey to Babel" 「惑星オリオンの侵略」などに登場した連邦の一員

※12: Yaderans

※13: Colyus
(ケネス・マース Kenneth Mars 「パララックス・ビュー」(1974) に出演) 総督=Protector。声:島香裕、ST5 スコットなど

※14: 吹き替えでは「宇宙」

※15: Rurigan
(ケネス・トビー Kenneth Tobey 「遊星よりの物体X」(1951)、「水爆と深海の怪物」(1955) に出演) 声:石森達幸、DS9 初代ジョセフなど

※16: Anetra

※17: Taya
(ノリー・ソーントン Noley Thornton TNG第122話 "Imaginary Friend" 「イマジナリィ・フレンド」のクララ・サッター (Clara Sutter) 役) 声:川田妙子

一緒に司令室へやってきた、シスコとジェイク。
シスコ:「チーフ、新しい訓練生だ。」
オブライエン:「はい、いらっしゃい。…じゃ、早速仕事だ。これから基本システムコアのチェックをするところだ。」
「ミスター・シスコ。忘れていた。これを。」 コミュニケーターを渡す。
喜ぶジェイク。「あ…ありがとう。」
シスコ:「基地関係者であるという、証拠だ。」
出ていくジェイクを、シスコは見送った。

店で話しているクワーク。
診療室のベシア。「クワークの動きを監視しろ? スパイしろという命令ですか。」
キラ:「いえ何もスパイしろとは言ってないわ。ただちょっと…オドーがいない間、見てて欲しいの。気が進まない?」
「いえ、そんなことはありません。」
「やってくれる?」
「もちろんです。偵察の技術をガラック※18から習ったばかりなので、試すチャンスですよ。」
笑うキラ。
通信が入る。『シスコからキラへ。』
キラ:「はい、キラです。」
シスコ:『君に伝えたいニュースがある。バライルが基地へ来るという報告が入った。』
「バライルがいつ!」
『第12ドッキングベイに着く頃だ。』

DS9 に係留しているベイジョー船。
エアロックから出てくるキラ。「前もって言って下さったら、正式なレセプションを用意しましたのに。」
バライル※19:「それを避けるためにあえて知らせなかった。」
「今度の御用件は?」
「基地の神殿で説教をするように、リット※20に頼まれて。」
「ああ。」
「それは口実で…君に会えるチャンスを、探してたんだ。」
「本当に? …光栄ですわ。」
「うん、光栄か? そう。もっと喜んでくれると、期待してたのに。」
「喜んでます。…嬉しいわ。」

プロムナードに来たキラとバライル。
キラ:「ダックスとオドーは、今留守にしてますの。」 話しながら歩いていく。
その様子を見ていたクワーク。

また、こまで遊んでいるテヤたち。
オドー:「こんにちは。」
他の子供たちは逃げてしまった。
オドー:「覚えてるかい? 夕べ会ったおじさんだ。」
テヤ:「聞きたいことがあるんでしょう?」
「そうなんだ。お母さんのことをね? …お母さんを最後に見たのは君だってね?」
「そうみたい。…その顔、どうしたの?」
「…別に、どうもしないよ? おじさんはシェイプシフターだ。…だから、顔はどうでもいいんだ。……自分の姿を何にでも変えられる力がある。」
「可変種※21なの?」
「うん、言うなれば。」
「嘘だい、可変種なんていないわ? あれは作られたおとぎ話よ。」
「いや? 私はおとぎ話じゃない。」
「ほんと? じゃあ姿を変えて見せて?」
「…それは後だ。その前に、君の話を聞きたい。」
「私が可変種なら、いつも姿を変えるわ? 友達が大勢できるもの。」
「ああ、だったらいいんだけどね?」
「そうじゃないの?」
「…おじさんが若かった頃、姿を変えて見せろって…みんなにせがまれた。友達だからと言われてね? でも実はおじさんが椅子や動物になるのを、見たかっただけ。友情なんてかけらもなかった。」
「…きっと怖がってたのよ。」
「そういう人もいたと思う。」
「私は怖くないわ?」
「嬉しいね? ありがとう。」
「両親も可変種だった?」
「両親に会ったことはないんだよ。…だからずっと探し続けてる。」
「…パパは 4つの時に死んだ。だからよく覚えてないわ? …最後にママを見た時、ママは仕事部屋で…陶器を作ってた。私が食事を取りに行ってる間に、いなくなったの。」
「その時、ママの様子は? 楽しそうだった?」
「とっても。パン屋のデプネン※22さんに花瓶を作ってたの。…優しいパン屋さんで、いつも美味しいグリーンパン※23をママにくれたの。」
「ママはこれまでに、どこかに旅行したことは? みんなと、一緒でいい。」
「したことないわ?」
「一度も?」
「誰も丘を離れたことない。」
「どうして。」
「離れる必要ないの。…ここに何でもあるから。」
「…なるほど。」
「……ママはもう戻ってこないのね。」
「どうしてわかる?」
「…おじいちゃんがそう言ってるわ。」
テヤの手に触れるオドー。「テヤ。ママの居所は…まだわからないけど、おじさんはね、ママを見つけて取り返すために全力を尽くす。これは約束だ。」


※18: 「ギャラック」と訳されているような…

※19: ヴェデク・バライル Vedek Bareil
(フィリップ・アングリム Philip Anglim) DS9第23話 "The Siege" 「帰ってきた英雄 パート3」以来の登場。声:安井邦彦

※20: プライラー・リット Prylar Rhit

※21: なぜか「百面体」と訳されています。恐らく全176話中でも、changeling がこう訳されたのはこのエピソードだけだと思います。その他の用語 (トリコーダーじゃなくてトライコーダーなど) といい、この話の翻訳は独特な印象を受けます

※22: Depnen

※23: greenbread

並べられたアイソリニアロッド。
オブライエン:「もう一度いくぞ? これはイソリニアロッドと呼ばれて、白いラベルのロッドには技術に関するシステム制御のデータが入ってる。赤いラベルは資料と情報がぎっしり詰まってる。次は、ブルーのラベルだ。」
ジェイク:「…とても覚えられないよ。」
「ゆっくり覚えりゃいいさ。私も一年間は何が何だかさっぱりわからなかったよ。だって、明日アカデミーのテストを受けるわけじゃないだろ?」
ため息をつくジェイク。
オブライエン:「どうした。」
ジェイク:「別に? どうしてみんな、僕アカデミーに行くと決めちゃうの?」
「だって、行きたいんだろ?」
「……でもないよ。」
「…お父さんに言った?」
「言っても無駄だよ。」
「ああ、わかるなあ。父※24が私に期待したのは、音楽だよ。」
笑うジェイク。
オブライエン:「いやあ、ほんと。チェロ奏者になれと言われた。で毎日特訓だ。…結構上手くなったよ? そして 17歳の時、録音テープを有名な…アルデバラン音楽院※25に送った。」
ジェイク:「受かったの?」
「受かったよ…父は泣いて喜んだ。だから嫌だとは、その時言い出せなくて。…そして入学の 2日前に、私は独断で宇宙艦隊に志願した。」
「お父さんは?」
「怒りまくったよ。…でも、静まったら私の気持ちをわかってくれてね。最近はうちへ帰ると、誇らしげにこうだ。『皆さん、息子は宇宙艦隊のテクニカルチーフ※26をやっとるんですぞ。』 …いいかい? 人生は自分のものだ。」
「パパをガッカリさせたくないよ。」
「ああ、パパはいい人だ。わかってくれる。それを待とう?」

バライルに話しているベイジョー人※27。「とても有意義なお話でした。ありがとう。」
神殿から出てくるキラに、バライルは近づいた。「うん。それで……どうだった?」
キラ:「あなたの説教?」
「うん。」
「立派だったと思いますわ? 内容以外は。」
「第8の預言の解釈に、異論があるのかい?」
「『異論』というのは控えめな表現ね? 『真っ向から反対』と言った方が適切よ。あなたの主張では、第8の預言に対する従来の解釈は間違っていて、それを実証するいろいろの…」
「いい意見だ。ああ、素晴らしい。」
笑うキラ。「…私怒ってますのよ?」
バライル:「…恐ろしいから話題を変えよう。」
「何に?」
「さあ、イルヴィアのカターポッド※28の収穫とか、そうだねえ、ヘドリクスプール※29の自然保護問題とか、うん? いや? じゃあ、スプリングボール※30選手権の予測はどうだい?」
「スプリングボールのファン?」
「宗教的な見地から、見させてもらってる。昔は自分でやったよ。」
「私もよ? オブライエンにホロスイートプログラムを開発させたの。」
「本当に? じゃあ行こう!」
「スプリングボールをするの?」
「…そうだよ? それとも、ほかに約束でもあるのかい?」
「もちろん、何もないわ?」
「よかった。久しぶりだよ。」

ヤデラ2号星※31
尋ねるオドー。「確かこのコロニーは、あなたが…最初に、入植なさったんですね?」
ラリガン:「そうだ。今や一番の長老だ。」
「開拓し、家族を育てたこの村はかけがえのない大事なところでしょうな。」
「…村はわしの誇りだ。」
「そこで不審に思うんですが、今コロニーには重大な事件が起こっている。あなたの娘も消えてしまった。なのに、あなたは非常に冷静だ。」
「わしの力ではどうにもならん。あきらめるしかない。ほかになければ、わしはもう行くぞ?」
「何か隠してやしませんか?」
「何を隠すんだ。」
「激しい苦痛に耐えているようだ。」
「どうしてわかる。」
「…目が物語っている。しばらくここで休んでいった方がいいんじゃないですか?」
「何をしても無駄だ。死にかけとるんだ。」
「…気の毒に。」
「自分の、人生に悔いはない。娘にはもう一度会いたいが。もういいな、行くぞ?」
「実は、もう一つ腑に落ちないことがある。…どうして、誰も村を出ないんです。この丘を離れたことのある人は一人もいないようだ。なぜですか。」
「それは多分、みんな旅をするのが嫌いなんだ。第一行くところがない。」
「どうしてわかります? あなたは出たことがあるんですか?」
「みんなと同じだ。ないよ。」
「丘の向こうを探したかとコリウスに尋ねたら彼は、驚いた様子だった。考えもつかなかったようで。そこが私にはわからない。私達なら当然周りをくまなく探すだろう。」
「そうだ、彼は探しても無駄なことを知っとるんだ。いくら探しても、丘の向こうにはいない。」
「…ほんとですか。」
「絶対におらん!」 出ていくラリガン。

※32を歩くテヤ。「そしてミンラ※33は、悪い可変種にこう言ったの。『あなたは山や恐竜や竜巻に、姿を変えることが…できるかもしれない。でも大きいものに姿を変えるのは易しいんだ。悔しかったら小さいものになってみろ。グリーンパンは無理だろう。』 そしたら可変種は、『できるさ!』ってなっちゃったの。その先を知りたい?」
オドー:「ミンラはそれを食べてしまった。」 ダックスもいる。
「どうして知ってるの?」
「その可変種は頭が悪かったんだよ。」
「……おじさんはグリーンパンになれる?」
「…もちろんなれるよ?」
「…なってみせて?」
「それで君に食われるのかい? その手には乗らんよ? フン。」
「その木ねえ、時々それで遊ぶの。これ以上遠くへ行ったことはないわ。」
「待ってなさい。」
「私も一緒に行きたい!」
「言うとおりにして。ダックスは私と来てくれ。」
コリウスのスキャナーで調べるダックス。「生命体の反応は何もないし、エネルギー源も見つからないわ?」
その時、手の上に置いていたスキャナーが忽然と消えてしまった。
ダックス:「今の見た? 突然消えたわ? そこの、ブッシュを越えたら突然よ?」
テヤが木になった果物を摘んでいる。
ダックス:「テヤが…。」
近づこうとするテヤ。
オドー:「テヤ! それ以上近寄るな!」
テヤ:「ハリッド・ベリー※34を摘んだの。」 腕を伸ばすと、ベリーと同時に腕も消えてしまう。「ああ…。」
手を戻すと、再び現れた。


※24: マイケル・オブライエン (Michael O'Brien) のこと。TNG第105話 "Disaster" 「エンタープライズ・パニック」など

※25: Aldebaran Music Academy
アルデバランは、おうし座アルファ星のこと。TOS第2話 "Where No Man Has Gone Before" 「光るめだま」など

※26: 原語では "Senior Chief Specialist" (上級主任特技兵) という階級が用いられています。"Chief Petty Officer" を使いたくなかったための造語ですが、結局この一度限りで無視された設定となりました (第4シーズンで CPO と言及)

※27: エキストラ。声はメラコ役の中さんが兼任

※28: Ilvian katterpod
地名イルヴィアは DS9第5話 "Babel" 「恐怖のウイルス」など。カターポッド (キャターポッド) 豆 (katterpod beans) は DS9第15話 "Progress" 「第五の月“ジェラドー”」より

※29: ヘドリクスプール地区 Hedrikspool Province

※30: springball
初言及。実際に試合が登場するのは DS9第94話 "For the Cause" 「裏切り者は誰だ」

※31: Yadera II
エンサイクロペディアではヤデラ2号星と呼ばれていますが、劇中ではヤデラ・プライムと同一の星系であるかは不明です

※32: ブロンソン峡谷で撮影

※33: Minra
この話は「三枚のお札」のオチみたいですね

※34: Harrid berries

ダックスに近づくコリウス。「蒸発事件の謎がわかったとオドーが言ってるが。」
ダックス:「ええ、そうよ? 百聞は一見にしかず。説明よりまずお見せするわ? クロークをちょっと。」 原子炉を操作していた。
「あ、クロークを?」
「そうよ?」
「ああ、じゃあ。」 布を渡すコリウス。
「ありがとう。」 近くに置くダックス。「そこにいて?」
「どうしたんだ。」
「そんなに慌てないで。よく見てて下さい?」
すると、クロークが消えた。
コリウス:「…一番気に入ってるクロークなのに。」
オドー:「おっと動かないで?」
また元に戻った。
一旦指を触れてから、手にするコリウス。「誰かが原子炉を転送機に使って人間を消したというのかね?」
ダックス:「いいえ、転送機ではなくてホログラフプロジェクターです。まずオミクロン分子界を作り出してから、その中で物質を形成するんです。例えばそのクロークのように。」
「それが蒸発事件とどう関係がある。」
「…人間も、オミクロン分子で作られています。」
「じゃあ人間も…幻影なのか。」
「そういうことね? 分子界を構成している要素が弱くなって分解を始めたので、人間が次々に消えてしまうんです。」
「そんな馬鹿なこと。私の友人や甥っ子も犠牲者に含まれてるんだぞ!」
「恐らく住人だけではなく村そのもの全てが、幻影だと思います。」
「ハ! 蒸発事件もえらいことになったもんだ。」
オドー:「冷静に聞きたまえ。冗談でこんなこと言うと思うか。」
「…クロークが消えたくらいじゃ自分が実在しない幻影だなんてとても信じる気にはなれんな。」
「気持ちはよくわかるが確実な証拠があるんだ。」
「どんな証拠だ。」
ダックス:「…ホログラフフィールドは、村の近くで終わっています。今日テヤが、その境界から手を伸ばしたら、腕が消えたんです。」
「あの子は無事か!」
オドー:「心配ない。腕をすぐ中に戻したら、元通りになった。」
「…その境界とやらはどこだ。」
ダックス:「よければ、案内しますわ?」
「教えてくれ。」

DS9。
身軽な服装をしているキラ。「ごめんなさいね?」
バライルも同じだ。「謝ることはない。私が、うっかりしてたんだ。一体どこで練習したんだい?」
笑うキラ。「シンガの難民キャンプ※35で、弟たちとね? それしかなかったのよ。」
バライル:「私は、レリケス※36にいた。…昔の話はよそう。会えてよかった。……いや、あ…美味しかった。ごちそうさま。」
「あ……よかった。」
「私が片づける。」
「いえ、いいの。肩が痛いでしょ?」 手を触れあう 2人。
「そんなものは忘れてたよ。」
「…じゃ、手伝っていただくわ。」 口づけするキラ。「…あなたを招待したプライラー・リットにお礼を言わなきゃね?」
バライルもまたキスする。「早く言わないと、リットは…ベイジョーに帰るんだ。…のめりこんでしまったらしい、ダボ・ゲームに。」
キラ:「…バカねえ…。」
「うん。ギャンブルで、多額の借金を作ったそうだ。それが、ヴェデク議会で問題になってねえ。」
「……ちょっと待って? あなたをここに招待したリットは、クワークに…借金してる?」
「誰に?」
「ダボ・テーブルを経営してる悪党よ。行くわ!」
「どうしたんだ!」
「リットに話があるの。あなたを招待した理由がわかったわよ。」 出ていくキラ。
皿を両手に持たされたままのバライル。

騒いでいるヤデラ人たち。
コリウス:「みんな静かに! 静かに! やめなさい、静かにして!」
声が上がる。「探して下さい、ねえお願いです。」
男性の村人、メラコ※37。「いつになったら探し出してくれるんだ、早くしてくれ!」
コリウス:「静かに、静かに! 大事な話なんだ、冷静になろう。」
メラコ:「私の妻も蒸発したんだ、早く捜索隊を出してくれ!」
女性の村人※38。「よそ者の話など聞いている暇はないわ!」
コリウス:「フィールドの境界で起こる不思議な現象を今見てきたばかりだろ? メラコ! お前の手が消えるのを見たぞ?」
メラコ:「あれはきっとトリックだ。」
ダックス:「トリックじゃありません。」
女性:「じゃどうして今までわからなかったの?」
オドー:「誰も丘から出ようとしなかったからだ。」
コリウス:「ひょっとしたら、私達は丘から出ないようにプログラムされているのかもしれない。…プロジェクターを閉鎖して、早急に修理しないとこの村は消えてしまう。」
話を聞いているラリガン。
コリウス:「ダックス。もしマシーンを修理できたら、消えた連中が戻ってくるだろうと言ったな?」
ダックス:「そう祈ります。」
ラリガン:「一時閉鎖するのはいいが、もし修理に失敗したら。」
ダックス:「村は、そのまま消えてしまいます。」 動揺が広がる。「マシーンは、どうせ後数ヶ月で壊れる運命なんです。だったら、修理に賭けたらどうですか?」
テヤ:「おじいちゃん、お願い。そうしましょう?」
メラコ:「どう思う?」
ラリガン:「何とかしなきゃいかん。彼女に修理を頼んでみよう。」
コリウス:「反対意見はあるか?」
首を振る村人たち。
コリウス:「じゃ、決定だ。」
喜ぶテヤ。「早くママに会いたいわ!」 オドーに近づく。「見慣れると怖くないわよ? おじさん優しいもの。」
オドー:「…どうもありがとう。」
ラリガンのもとに戻るテヤ。
ダックス:「さあ、始めましょう?」
原子炉を操作すると、人物に続いて村も消え去った。
岩場だけが残る。
だが、一人だけ残っていたことに、ダックスは気づいた。「オドー?」
ラリガン:「驚くことはない。わしは本物だよ。」


※35: Singha refugee camp
初言及

※36: Relliketh

※37: Merruk
(マーチン・キャシディ Martin Cassidy) クレジットでは男性の村人 Male Villager。声:中博史、VOY ドクターなど

※38: Female Villager
(トルーラ・M・マーカス Trula M. Marcus) 声:棚田恵美子、DS9 モリーなど

話すラリガン。「ヤデラ・プライム※39で幸せに暮らしていたのに、ドミニオン※40に占領されてから…何もかも変わってしまった。」 顔を見合わせるダックスとオドー。「…わしはそれに耐えきれず、祖国を捨てる決心をして、ここに来たんだ。そしてなくした幸せをこの、ホロジェネレーター※41で…そっくりこの地に再現した。それ以来 30年近く、ここで暮らしている。村人たちは…結婚し、子供を産み…年を取り、実在の人間のように、生活を営んできた。…それも終わった。おしまいだ。できることなら、わしをヤデラに連れて帰ってくれ。」
オドー:「でも、村の住人やお孫さんはどうなるんだ。」
「みんな幻影だ。」
「科学的には確かにそうだ。テヤは幻影で、実在する人間ではない。記憶はコンピューターにインプットされ、肉体はオミクロン分子で作られている。しかし、それを否定する権利が、私達にあるんだろうか。テヤは私達と何一つ変わりはない。感情だってもっている。」
「そう思えるだけだよ。全ては幻影なんだ。作られた幻だ。」
「村を作り出して 30年、あの子はまだ 10歳だ。」
「…子供が欲しかったら作れるようにプログラムしておいたんだ。」
ダックス:「とするとテヤは、両親からその人格を受け継いでいることになりますね?」
オドー:「あの子にはあなたに関わりない、自分の人生がある。」
ラリガン:「でも、幻影なんだ。」
「かもしれない。しかしあなたは悲しむ彼女の手を握り、恐れおののいた時には優しく抱いてやった。」
「…あの子を守ってやりたかった。」
「幻影なら放っておけばいいだろう。」
「そうはいかん。大事な子だ。」
「実在しない幻だぞ? どうして大事なんだ。」
「……愛しているからだ。」
ダックス:「…彼女もよ?」
オドー:「わかったかね? テヤはあなたにとって、実在するんだ。幻影なんかではない。今さら背を向けることはできない。」
ラリガン:「ああ…。」

DS9。
部屋に戻るジェイク。
シスコ:「ジェイク、どうだった。」
ジェイク:「まあね? チーフは優しい人だね。でも、なかなか覚えられなくて。」
「焦るな。」
「…そうだね。」
「そのうちに面白くなる。」
「…そうね。パパ? ……艦隊には入りたくない。」
近づくシスコ。「入りたくない?」
ジェイク:「嫌なんだよ。…艦隊は、パパみたいに完璧すぎて。自分に合うことをしたい。僕が間違ってる?」
「間違ってない。」
「ほんとに?」
「自分の人生なんだ。自分で選ぶといい。パパの望みはただ一つ。自分の愛するものを見つけて、ベストを尽くすことだ。」
「がんばるよ。」
「よし、誇れる息子になってくれ。」
「うん、じゃあ仕事しよう。イソリニアロッドって難しいんだ。」
ため息をつくシスコ。

働くクワークに、キラが声をかけた。「忙しそうね。」
クワーク:「少佐。おいでいただけるとは光栄だ。」
「あなたの従兄弟が、また基地に忍び込もうとしたところを、捕らえたわよ? 何を隠し持ってたと思う? 骨の彫刻よ。カーデシア5※42 の美術館から盗まれたね?」
「悪いことをする奴だよ。」
「できればあなたと一緒に捕らえたかったのに。」
笑うクワーク。「人生思うようにはいかんものさ。」
キラ:「そうそう。あなたリットにバライルを招待しろとしつこく迫ったんですって?」
「…悪いか?」
「ぜーんぜん? 彼に会えて嬉しいわあ? でも忘れてないわよ? …あなたのことを。」
歩いていくキラは、バライルと一緒になって去った。
クワーク:「今に足をすくってやるぞ?」

原子炉を調整するダックス。「さあ、修理は終わったわ? スイッチを入れたらどうなるか。」
ラリガン:「待ってくれ。大尉…頼みがある。わし独りが実在することは、内緒にしてくれ。みんなの仲間として暮らしていきたい。」
オドー:「…わかった。」
離れるラリガンは、うなずいた。
原子炉を操作すると、再び村が現れた。
自分の姿を確認する村人たち。
テヤはアネトラ※43を捜す。「ママー? ママー? ママー!」 見つけ、抱きつく。
その様子を見守るダックスとオドー。
コリウス:「やった! 素晴らしい。」
ダックス:「メモリーコアをパワーアップして組み替えてみました。これでもう誰も消えないと思います。」
「みんな幻影であることを忘れないでおこう。」
ラリガン:「家族や友人が戻ったんだ、それで十分だよ。」
「うん、それにしても誰の計画だろう。」
オドー:「…その人に感謝したいですね?」
「全くだ。オドー、来てくれて助かったよ。この銀河系を通った時は是非また顔を見せてくれ。」
「楽しみにしてます。」
「ほかに来てくれる人がいない。」 ラリガンも笑った。
テヤ:「おじさん! ママが戻ったわ?」
オドー:「よかったね?」
ダックスは離れた。
テヤ:「行っちゃうの?」
オドー:「仕事があるんだ。」
「…寂しいわ。」
オドーはかがみ、目線をテヤに合わせた。「私もだよ。」
テヤ:「…ママを見つけてくれてありがとう。あなたも早く見つけてね?」
「…そうしたいね。ありがとう。」 離れるオドー。
テヤはラリガンに近づいた。
オドーは立ち止まった。「テヤ。」
身体を回転させ、オドーは大きなこまに変身して回り始めた。※44
喜び、拍手するテヤ。
元に戻るオドー。
ダックス:「コンピューター、2名を転送。」 転送されていく。
手を振るテヤ。

ランナバウトは、ヤデラ2号星を離れた。


※39: Yadera Prime

※40: Dominion
DS9第27話 "Rules of Acquisition" 「フェレンギ星人の掟」より

※41: hologenerator

※42: カーデシア5号星 Cardassia V

※43: エキストラ

※44: 合成シーンの撮影で、オドー役オーバージョノーが耳の病気を患ってしまったため、彼が回る量を減らしたそうです

・感想
邦題はとんでもないネタバレですが、それを先に知ってしまったとしても、よくできた話です。とはいえ原題の "Shadowplay" も一語では辞書に見あたりませんでしたが、"shadow play" で「影絵芝居」という意味になりますから、似たようなものですが。旧題は "Persistence of Vision" 「残像」で、後に VOY「ボーサ人の攻撃」のタイトルとして使われますね。
オドーとテヤの交流だけでなく、珍しく合わせて 3つのストーリーを形成しています。「実はホログラム」「実は宇宙艦隊に入りたくないジェイク」「実はバライルを呼ばせたのはクワーク」と、全部それなりに shadowplay ですね。
当初のストーリーは全く違っていて、仮想現実の刑務所に囚われ、逃げても逃げても出られないというものだったそうです。後に "The Search, Part II" 「ドミニオンの野望(後編)」や "Hard Time" 「つくられた記憶」として別の形で描かれることになります。


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