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TOS エピソードガイド
第3話「謎の球体」
The Corbomite Maneuver

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・イントロダクション
※1※2※3ブリッジ※4
スクリーンに星が映っている。
ナビゲーター:「あと一度でオーバーラップ。」
スポック:「撮影準備。」
ナビゲーターはスイッチに手をかける。
スポック:「撮影。」
モニターで星を確認するスポック。
ナビゲーターはクリップボードを持って立ち上がった。「ああ、今日でもう 3日目ですからねえ。この辺の宇宙地図ならほかの船が作ってるんじゃないですか?」
スポック:「作ってるわけがない。ここへ来たのは我々が初めてだ。」
操舵コンソールで赤いライトが点滅する。
スールー※5:「障害物を発見しました。こちらへ向かってきます。…まだ肉眼では見えません。」
スポック:「周りに電磁スクリーンを張れ。」
「光の速度で接近中!」
ナビゲーター:「衝突針路。」
スポック:「針路を変更してかわせ。」
スクリーンには何も見えない。
スールー:「障害物も方向転換しました。向かってきます。」
通信士のウフーラ※6大尉。「…こちらに何の合図もありません。」
ナビゲーター:「依然衝突針路。…電磁スクリーンを突破しました!」
スポック:「非常警報。」
スールー:「速度が落ちてきました。」
「警報撤回。全エンジンを停止せよ。」
スクリーンに回転する物体が映っている。
ナビゲーター:「肉眼で確認!」
何色かに塗り分けられており、球体のようにも立方体のようにも見える。
クルーが見つめる中、次第に近づいてきた。
スポック:「微速前進。障害物の周囲を回れ。」
スクリーンから消えていく物体。見えなくなった。
だがしばらくすると、また中央に戻ってくる。
ナビゲーター:「妨害する気です!」
スポック:「ミスター・ベイリー※7、大声を出す必要はない。…全エンジン停止。非常警報。」
スールー:「ブリッジから全デッキへ、非常警報発令。全デッキ、非常態勢を取れ。船長は直ちにブリッジへ。」


※1: このエピソードは、1967年度ヒューゴー賞にノミネートされました

※2: ハヤカワ文庫のノヴェライズ版は、「宇宙大作戦 上陸休暇中止!」収録「はったり作戦」になります

※3: 冒頭のエンタープライズは以前の使い回し映像ですが、ナセル先端 (バサード・コレクター) が動いていません

※4: ブリッジに流れるコンピューター音が初めて使われました。元々は「ミステリーゾーン」の初期 (1960年「ある死刑囚」など) で使用されたもの

※5: 前話 "Where No Man Has Gone Before" 「光るめだま」では物理学者でしたが、今回からおなじみの操舵士に「転属」となりました

※6: Uhura
(ニシェル・ニコルズ Nichelle Nichols 映画「スノー・ドッグ」(2002)、ドラマ "The Lieutenant" (64、ゲスト) に出演) 今回と TOS第4話 "Mudd's Women" 「恐怖のビーナス」のみ、司令部門の黄 (金) 色の制服を着ています (ただし記章のマークは科学部門)。それ以降は一貫して赤色の機関部門です。吹き替えでは「ウラ」。声:松島みのり (DVD・完全版ビデオ補完も継続)

※7: デイヴ・ベイリー大尉 Lieutenant Dave Bailey
(アンソニー・コール Anthony Call) ファーストネームはエンドクレジットにあるのみで、エンサイクロペディアではデイヴィッド (David) と表記。階級は訳出されていません。声:朝戸正明 (現:朝戸鉄也)。DVD・完全版ビデオ補完では平田広明、ENT ロストフなど

・本編
※8物体はエンタープライズの目前で止まっている。
『航星日誌、宇宙暦 1512.2※9。宇宙地図の製作に取りかかってから 3日目に、不思議な形の物体が我々のゆく手を遮り、ミスター・スポックは非常警報を発令。私はその時、健康診断を受けていた※10。』
スクリーンを見つめるスポック。

カークは医療室のベッドで横になり、壁に備えつけられた装置を両足で交互に押していた。
ドクターのレオナルド・H・マッコイ※11。「もう少し頑張ってくれ。」
カーク:「まだやるのか。他人事だと思って。」
運動を続けるカーク。裸の上半身は汗をかいている。
マッコイ:「その調子で続けて。少しは汗を出した方が身体のためだ。」
マッコイは非常警報のライトが灯っていることに気づいたが、何も言わずにモニターを見る。
カーク:「もう勘弁してくれ。」
マッコイ:「…はいストップ。…疲れたかね?」
「これぐらいじゃ堪えんよ。」
カークはライトに気づいた。マッコイを一瞬見て、コンピューターに触れる。「カークだ、どうかしたか。」
映るスポック。『これを御覧下さい。』
物体の映像に切り替わる。マッコイも見た。
カーク:「何だ。」
スポック:『正体不明で、我々の針路を妨害しています。針路を変更すると後をついてきて。』
「宇宙船か何かか。」
『違います、きっと何かの装置でしょう。』
「すぐ行く。」 制服を羽織るカーク。「非常警報のライトが見えたはずなのに、なぜ黙ってた。」
マッコイ:「こっちは健康診断優先だね。私は医者で、宇宙特急列車の車掌※12とは違うんだ。」
カークは靴を持って出ていった。
マッコイ:「フン、ライトが点く度にいちいち驚いてたんじゃ話も満足にできん。」

廊下に通信が流れる。『全デッキ非常警報。全デッキ非常警報。』 ハドレイが歩いていく。
歩いてきたカークは、ターボリフトに入ってレバーをひねった。「ブリッジ。」 通信機に触れる。「カークからブリッジへ。」
スポック:『スポックです。』
「その後変化は。」
『ありません。我々をここへ釘付けにするつもりのようですね。』
「攻撃の気配は感じられるか。」
『いいえ。』
「じゃあ、先に着替える。以上だ。」

ランプに触れるスポック。「全デッキの非常態勢は整ったそうだ。」
ベイリー:「…はい。」 操作して消す。
「船長が現れたら、当然報告しなければならん。」
「物体の位置および距離ならすぐ出ます。…さっきは何も、怖くて声を出したわけじゃありませんから。誤解しないでください。宇宙人と違って僕には、人間の心があるって証拠ですよ。」
「ふーん、厄介なものをもってるね。切り取ってしまったらどうだね。」
「…そうですか。」
微笑むスールー。「彼とは言い合わない方がいいよ。議論じゃとても勝ち目はないね。」

制服を着ながら、モニターに触れるカーク。「カークからブリッジへ。」
スポックが映る。『スポックです。』
カーク:「生物の兆候は?」
『ありません。』
「通信は試みたのか。」
『はい、何の応答もありません。』
「各部のチーフをブリッジへ集めてくれ。」
『すでに待機しています。』
自室を出るカーク。

ブリッジ。
鳴り続ける警報。ターボリフトに乗ってきたカークは、スポックに近づいた。
スポック:「物質探知機の分析では固体と出ていますが、成分は理解できません。」
カーク:「ウフーラ大尉※13。」
ウフーラ:「宇宙周波はオープンにしてあります※14が反応はありません。」
スールーが振り返り、カークを見る。
カーク:「ナビゲーション。」
ベイリー:「物体までの距離、1,593メートル。位置に変化なし。」
スールー:「物体の一辺はそれぞれ 107メートル※15。重量は、11,000トンを少し下回ります。」
カーク:「スコッティ。」
スコット:「動力には、何を使っているかわかりません。」
「君の予想ではどうだ。」
「見当もつきませんね。…あんな四角い物体が我々の宇宙船をキャッチしてコースを妨害するなんて、常識では考えられないことです。それしか言えませんね。」
「生命科学部。」
マッコイ:「判断はできないよ。」
ベイリー:「ただバカみたいに待ってるだけですか? フェイザー光線でぶち壊せばいいでしょう。」
カーク:「その意見は考慮に入れておこう。いざというとき役に立つ。」
ため息をつくベイリー。

『航星日誌、宇宙暦 1513.8※16。宇宙地図ではこの付近に生物が生息する惑星は見当たらず、立方体の正体および目的は依然として不明である。静止状態で既に 18時間経過した。』
会議室。
飲み物が配られる。テーブルに肘をついているウフーラ。
眠っているスールー。
カーク:「ほかに何か意見は?」
スポック:「結論として 2つの可能性があると思いますね。…あれは、何かの宇宙ブイかあるいは…」
「何だ。」
「…ハエ取り紙です。」
「…これ以上付き合うのは危険かな。」
「何もできないと甘く見られるでしょう。」
「…では行動に移ろう。※17ミスター・ベイリー。」
ベイリー:「ブリッジからフェイザーガン砲座へ。」
「待ちたまえ、いかなる行動をとるかは私が決める。」
「すいません、てっきりそうと…」
「弁解するつもりか、弁解を求めた覚えはないぞ。…ナビゲーターとしての君に指示する。物体から遠ざかるために、螺旋形コースを取れ。」
「はい。」
「物体から脱出する。」
スールー:「はい。舵手よりエンジンルームへ、待機せよ。全デッキに告ぐ、物体から脱出する。」 テープ状のチップを集める。

ブリッジ。
ベイリー:「脱出コースをセットしました。」

依然として映っている物体。
カーク:「エンジン始動、スピード 4分の1。」
スールー:「2.5※18。」
位置に変化はない。
スールー:「コースを妨害してます。」
カーク:「相手の反応を見よう。ハーフスピード前進。」
「5.0 です。」
物体の位置がずれ始めたかと思ったが、すぐに中央へ戻る。
落ち着かないベイリー。警報は止まらない。
スポック:「放射能、スペクトル分析急激に増加中。」
カーク:「現在位置で静止。」
全く位置を変えない物体。
ベイリー:「…こちらに向かってきます! 距離 190メートル。」
スポック:「…放射能増加中。」 ブリッジに物体からの光があふれる。
カーク:「エンジン逆転、ハーフスピード。」
スールー:「5.0。」
物体の映像が乱れてきた。
スポック:「放射能増加して許容量に接近中。」
ベイリー:「駄目です、ピッタリついてきます。」
カーク:「エンジン逆転、フルスピード。」
スールー:「フルスピード。」
物体の回転速度が上がってきた。ブザーが鳴る。
目に手をかざすベイリー。「距離 125メートルに縮まりました!」 カークを見る。
カーク:「…ワープスピードに切り替えろ。」
スールー:「ワープ1。」
スポック:「放射能は許容量に達しました。」
「ワープ2。」
それでも物体は位置を変えない。
スールー:「現在速度、ワープ3。」
スポック:「放射能は許容量をオーバーし、致死量に増加しつつあります。」
ベイリー:「距離、51メートルで依然として接近中!」
カーク:「フェイザーガン発射準備!」
「発射準備できました!」
物体はスクリーン一杯に広がっている。埋め尽くされた。
スポック:「船長、これ以上放射能を浴びれば危険です。」
カーク:「フェイザーガンを目標にロック。…おい、ベイリー! フェイザーをロックしろ!」
ベイリー:「フェイザーガン、目標にロックしました! 至近距離まで接近!」
手をかざすカーク。「メインフェイザー発射!」
フェイザーが発射される。
スクリーンに光があふれ、大きく揺れた。

廊下も同じだ。

光と揺れはなかなか収まらない。


※8: オープニングナレーションが初めて使われました。ただし DVD 以外の日本語版 (オンエア、LD、完全版ビデオ) においては、前話 "Where No Man Has Gone Before" でも他のエピソードと共通の素材が使われているため、すでにナレーションも同様に入っています

※9: 吹き替えでは「0401.5042」

※10: 吹き替えでは「健康診断室にいた

※11: ドクター・レナード・H・マッコイ Dr. Leonard H. McCoy
(デフォレスト・ケリー DeForest Kelley 映画「OK牧場の決斗」(1957)、ドラマではローハイド「去り行く男」(59) に出演。1999年6月に死去) TNGパイロット版 "Encounter at Farpoint" 「未知への飛翔」にも登場。声:吉沢久嘉。DVD・完全版ビデオ補完では小島敏彦、DS9 2代目ブラントなど

※12: 原語では「月シャトルの車掌 (添乗員)」。まだ "I'm a doctor, not ..." という言い回しではありません

※13: 吹き替えでは「尉」。シリーズ中一貫して、ウフーラの階級は大尉です

※14: "Hailing frequencies still open, sir."
ウフーラのセリフとしておなじみで、特に今回は何度も言及される "hailing frequencies" が初使用

※15: エンタープライズは全長 289m ですから、同時に映っているシーンは明らかにスケールが変ですね

※16: 吹き替えでは「0401.5048」

※17: TOS の国内オンエア分では、カット部分が存在しています。完全版ビデオ (第1シーズンの一部) および DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります (スーパーチャンネル版との比較)。LD では基本的に、その部分だけ字幕収録です

※18: なぜか吹き替えでは全て「10=全速」ということになっていますが、原語ではもちろん「0.25」など

静止しているエンタープライズ。
『航星日誌、宇宙暦 1514.0※19。ついに謎の立方体は破壊されエンタープライズ※20は救われたが、調査飛行を続行するか否かが大きな問題になってきた。』
スポック:「異常ありません。周囲に障害物は何一つ、認められませんね。」
カーク:「このまま前進すればどうなるか予測できるかね。」
「予測。…まあ、進めば謎の物体を派遣した知能に出会うでしょうね。」 イヤーレシーバーをつけているスポック※21
「知能か。そりゃ人類よりも進歩してるかな。」
「多分、進歩してるでしょう。理論的な結論を下しましょうか?」
「いやあ、それはいい。我々の任務は宇宙の生命を発見し接触することにある。」
「…すでに決心していることなら、なぜ聞くんです。私の意見で左右されないことなら、聞いても無駄でしょう。」
「聞けば一応気が休まるからだ。」
スポックは微笑んだようにも見える。
カーク:「ナビゲーター。…前進コースをセット。」
修理しているベイリー。「はい。セットしました。」
カーク:「…前進。」
ターボリフトからマッコイが出てきた。
スールー:「前進、ワープ1。」
カーク:「ミスター・ベイリー、よく反省したまえ。君はフェイザーを目標にロックするのに手間取った。ミスター・スールー、エンジニア部門も行動が鈍いようだ。敵の攻撃を想定し反撃および脱出を訓練したまえ。いかなる場合も的確に行動できる自信をもてるまでは。」
スールー:「はい。」
ベイリー:「はい。」
マッコイ:「相変わらず厳しすぎるね。」 再びブリッジを出る。「みんな疲れてるんだ…」
カーク:「船長室。試練は、精神衛生のためにいいと言ったのは君じゃないのかね?」
「そんなことは言わんよ。」
ベイリーの通信が流れる。『こちらはブリッジ。仮想攻撃に備えろ…』
上を指差すマッコイ。「特にあのベイリーが心配だね。ナビゲーターの仕事はベテランと言えどもキツいもんだ。」
カーク:「彼なら立派にやれる。」
「ほう。どうしてわかる。彼とは何となく気が合うからか? 自分の若いときと共通点があるからか。そう、11年前と。」
「…ドクター。また心理学の本の読み過ぎか。」
「とにかく君はベイリーを早く進級させすぎたね。あの声を聞いてみろ。」
ベイリーの大きな声が響く。『…非常警報。戦闘配置につけ!』
ターボリフトを出る 2人。

カークの部屋。
ベイリーの声が流れている。『エンジニア部門、5番デッキ! フェイザー部門、遅いぞ急げ! フェイザー砲、準備はまだか!』
マッコイからグラスを受け取るカーク。「次は何だ。『彼らは機械じゃない』か?」
マッコイ:「その通り。こんな状況では彼らも…」
「おいおいマッコイ、どうしたんだよ。人間はどんな優秀な機械よりも優れていると言ったのは君じゃなかったのか?」
「私はそんなことは言わん。」
「いやあ、君だったぞ?」 呼び出しに応えるカーク。「カークだ。」
スポック:『…訓練の成功率は、94%です。』
「100%になるよう努力しろ。」
『了解。』
マッコイ:「どんなに頑張っても 6%残ったらどうする気だ。」
カーク:「その時は、この私が…」
ジャニス・ランド世話係※22が入ってきた。「失礼します、そろそろ御食事の時間ですよ。」
置かれた料理を見るカーク。「何だこれは、葉っぱだけか。」
ランド:「ダイエットメニューですわ? ドクター・マッコイの指示で作りました。ご存知では。」
マッコイ:「君は最近ちょっと太り気味だからな。」
カーク:「余計な御世話だ。」 グラスを取り上げられそうになる。「おいおいジャニス、待て!」
ランド:「お気に召さないなら取り替えますが。」
「ドクターの分も持ってこい。」
マッコイ:「いやいや、私はクルーが食べ終わってからでいい。」
「…ご苦労だった。」
ランド:「ごゆっくりどうぞ。」 出ていく。
ベイリーの通信が続く。『こちらブリッジ、もう一度シミュレーションを行う。さっきよりいい結果を出すよう努めろ。』
カーク:「艦隊司令部め、よくも私に女の世話係をつけてくれたなあ。」
マッコイ:「どうした、自制心が崩れそうか。」
「……女はエンタープライズ一人だけで十分だよ。」
ベイリー:『非常警報、戦闘配置につけ…』
別のクルーの声が入ってきた。『フェイザーステーション、警報撤回。新たに非常警報を発令。これは訓練ではない。繰り返す、これは訓練ではない。』
カーク:「カークだ。」
スポック:『障害物をキャッチしました。遥かに大きく、接近中です。』
「了解。」 サラダの上にナフキンを置き、部屋を後にするカーク。

ブリッジのスポック。「強烈な反応を示していますが、まだ見えません。」 スコープを覗く。
スクリーンには星しか見えない。
スポック:「分析の結果が出ました。同じような金属ですが、エネルギーは遥かに強烈です。」

スールー:「あれです。」
物体が見えてきた。
カーク:「ハーフスピード、脱出作戦準備。」
スールー:「ワープ2 に減速。」
突然船が揺れた。
スポック:「敵の強力な誘導光線に捕まりました。」
スールー:「エンジンが過熱してます。」
カーク:「全エンジン停止。」
「全エンジン停止。」
明滅する球体。
カーク:「フェイザー発射準備。」
ベイリー:「こちらブリッジ、フェイザー発射準備。」
クルー:『前方砲座準備よし。全砲座発射準備できました。』
近づいてくる球体。それはエンタープライズよりも遥かに巨大だった。
直前で停止する。
スポック:「素晴らしいな※23。」
スクリーンには球体のごく一部しか見えていない。
カーク:「ミスター・スポック、大きさは。」
スポック:「ここの計器では計りきれません。直径 2,000メートル※24あるでしょう。」
ベイリー:「5,000メートル以上も離れているのに、スクリーンからはみ出してる。」
カーク:「スクリーンに入るように縮小。」
呆然とするベイリーの代わりに操作するスールー。「2.5分の1 です。」 それでも上下が切れている。「18.5分の1。」
やっとで収まった。見つめるクルー。
カーク:「宇宙通信。」
ウフーラ:「宇宙周波オープンにしました。」
「こちら地球連合政府※25のエンタープライズ※20だ。あなたに敬意を表して応答を待つ。」 機関コンソールについているレズリー。
反応はない。
イヤーレシーバーをつけたベイリーは、何かに気づいたようだ。
カーク:「どうした、ベイリー。」
ベイリー:「メッセージが。ナビゲーション光線に乗ってきます。」
「キャッチしろ。」
ウフーラ:「スイッチを入れます。」
声が響く。『我々の宇宙に侵入しようとした。こちらは第一連合※26の宇宙艦隊※27旗艦、フェサリアス※28の司令官ベイロック※29だ。…明らかに原始的な文明の所産と思われるお前たちの宇宙船は、警告ブイを無視したのみならずその警告ブイを破壊して、我々に敵意を抱いていることを証明した。したがって我々はお前たちを、宇宙船もろとも破壊する。』
カーク:「宇宙通信。」
ウフーラ:「宇宙周波オープンにしました。」
「こちらエンタープライズ※20の船長だ。…あれが君たちの警告ブイであるとは知らなかった。我々の針路を妨害したので迂回しようとしたのだが…」
大きなノイズが響いた。イヤーレシーバーを外すベイリー。
スポック:「船長、船全体が敵の強烈な分析光線にキャッチされています。電気経路の組織も、エンジン部門も。」
ベイロック:『我々は今後お前たちの通信を無視する。お前たちが少しでも敵対行動を示せば、ただちに宇宙船を破壊する。』
「……我々の装置を向こうでコントロールしています。信じられん。素晴らしい頭脳だ、地球人とは比較になりません。」
カーク:「レコーダー※30はこの事件を記録してるのかね。」
「はい、現在までは正確に。」
「よし、レコーダーを放出しろ。」
動かないベイリー。
カークは近づいた。「ミスター・ベイリー!」
ベイリー:「ああ…レコーダーを放出しました。」
スポック:「レコーダー放出、我々が進んできたコース…」
再び船が揺れ、青い光が走る。
ベイロック:『レコーダーは破壊した。お前たちの行動は全てこちらにわかる。…次は宇宙船を破壊する。…お前たちは救いを求めるために精神的な支えとして、神のようなものをもっているはずだ。…したがってその時間を与えるために地球で呼ばれている時間の単位で 10分だけ待とう。』
スポック:「…あの声の出所がつかめれば、相手の姿を見られるんですがね。」
ブリッジにマッコイとスコットが入った。
マッコイ:「…今の脅迫は全員に聞こえてしまってるよ。」
カーク:「…こちら船長、この船に乗り組んでいる諸君は宇宙の生物に遭ったことが何度かあるはずだ。」 立ち止まって聞く廊下のクルー※31。「我々にとって一番危険なのは、我々自身だ。未知のものに理由のない恐怖を抱くことが一番怖い。未知のものはいずれ理解できるはずだ。…しかもほとんどの場合彼らは、文明と発達した知能をもち我々の平和的な態度を理解してくれた。したがって今回の相手も必ず、我々の目的を理解できる能力をもっているはずだ。…全デッキは、待機せよ。以上だ。宇宙通信。」
ウフーラ:「宇宙周波オープンにしました。」
「エンタープライズの、船長から慎んで伝える。我々は友情を求め、無断侵入する意思はない。友情を証明するため、我が宇宙船は現在位置より引き返す。我々は…」 低い異音が響いてきた。「何だ。」
イヤーレシーバーを取るウフーラ。
合図するカーク。「ミスター・ベイリー、コースをセット。」
ベイリー:「何です。」
代わりに操作するスールー。
ベイリー:「ああ、コース。」
スールー:「コース、セットしました。」
カーク:「後退、スピードワープ1。」
「ワープ1。…反応ありません。」
「補助エンジンに変更。」
「全エンジンおよび、攻撃装置反応ありません。」
スポック:「スクリーンのスイッチを入れます、何者かをキャッチしました。」※32
フェサリアスの映像がゆっくりと切り替わる。異星人の乱れた姿が映った。
口を動かすベイロック。『時間と努力を無駄にするだけだ。脱出する方法はない。地球時間で後 8分猶予を与える。』
スポック:「…どんな相手か是非見たかったですね。」
カーク:「特に君はだろ。」
ベイリー:「どういうことなんですか、これは。船長もミスター・スポックも、ただ座って待ってるだけだ。…何とかしろよ。誰か早く何とかしたらどうなんだ!」
マッコイ:「冷静になれ。」
「奴は一体俺たちに何の用があるんだ。それを確かめなきゃ話にならんだろ…」
カーク:「これは彼らの挑発だ、乗ってはならん…」
「あと 8分で皆殺しにされるんだぞ…」
スールー:「7分41秒だ…」
「何、秒読みするほど待ち遠しいのか…」
マッコイ:「ベイリー、見苦しいぞやめろ!」
「みんなどうした、気でも狂ったのか? 何が見苦しいだ、みんな殺されるんだぞ?※33 お前たちはロボットか、おもちゃの兵隊なのか! 殺されるんだぞ、みんな。規則だとか命令に従って殺してくださいって待つだけか!」
カーク:「ベイリー、解任する! …ドクター、彼の部屋へ連れて行け。」
近づくマッコイ。「…行こう。」
ベイリーは自らターボリフトに入った。マッコイもついていく。
カーク:「宇宙通信。」
ウフーラ:「宇宙周波オープンにしました。」
「…私はエンタープライズ※20の船長だ。我々地球人にとって、可能な限り誤解を解くのは習慣である。…我々は単に自己防衛のために宇宙ブイを破壊した。ブイから遠ざかろうとしたら、我々人類に有害な放射能を放出してきたからだ。…疑うなら、この船やテープを調査してもらえば全て事実とわかる!」
また妨害するように音が鳴り始めた。
ベイロック:『地球時間で後 7分与える。』


※19: 吹き替えでは「0401.5050」

※20: 吹き替えでは「エンタープライズ

※21: このエピソードから制服がシリーズ中で一貫して使われるタイプに変わりましたが、通信席に座っているクルーなどは以前のタートルネック型のものを着用しています

※22: ジャニス・ランド秘書 (下士官) Yeoman Janice Rand
(グレース・リー・ホイットニー Grace Lee Whitney) 初登場。VOY第44話 "Flashback" 「伝説のミスター・カトー」にも登場。吹き替えでは「ジェニー」。声:此島愛子、TNG/DS9 ラクサナ、旧ST2 マーカスなど。DVD・完全版ビデオ補完では榎本智恵子、DS9 リータなど

※23: "Fascinating."
初言及

※24: 原語では「1マイル」(約1,600m)

※25: 「惑星連邦」の訳語ではなく (この時点ではまだ設定されていない)、原語でも "United Earth Ship (Enterprise)" と言っています。これだと略称が "U.E.S." になってしまいますし、もちろん船体や後のセリフでも "U.S.S." です

※26: First Federation
この時点では連邦 (Federation) は設定されていませんでした。吹き替えも「連」にしておいてよかったですね

※27: 原語では「宇宙艦隊」に相当する言葉はありません

※28: Fesarius
ミニチュアはマット・ジェフリーズのデザイン

※29: Balok
声はテッド・キャシディ (Ted Cassidy TOS第10話 "What Are Little Girls Made of?" 「コンピューター人間」のラック (Ruk) 役。ドラマ「アダムスのお化け一家」(1964〜66) のラーチ役。1979年1月に死去)、吹き替えでは高塔正康

※30: レコーダーマーカー recorder marker
前話 "Where No Man Has Gone Before" より

※31: レズリーはブリッジ (赤シャツ) にいるはずですが、ここでも登場しているような?(黄シャツ)。このシーンでいる赤シャツの人物も、黄シャツ姿でブリッジにいるかも

※32: マッコイがブリッジに来たときは普通の制服でしたが、ここから医療士官用のチュニックになっています。ですがベイリーをいさめるシーンでは元に戻ります

※33: DVD・完全版ビデオでは「みんなどうした、何をノンビリしてる! 見苦しいだって、みんな殺されるんだぞ?」と修正されています

ブリッジ。
スールー:「あと 4分30秒です。」
スコット:「ミスター・スールー。君は時間に対して、人一倍異常な趣味をもってるようだね。」
スポック:「……船長。」
ベイロック:『…あと、4分。』
カーク:「どういうつもりなんだろう。…我々に敵意はないのに。」
スポック:「我々が遥かに劣っていることも知ってるはずです。」
「逃れる手は何かあるはずだ。必ず何かある。」
「チェスではこの場合明らかに勝負がついて、詰み※34です。」
「そんなことしか言えないのか。」
「すいません。…ほかに何にも考えつかないのが残念ですね。」
マッコイが戻ってきた。「もし無事に地球へ戻れたら…」
カーク:「必ず戻ってみせる。」
「…ベイリーのことだがね、カルテには『単なる過労』と記録させてもらうよ…」
「それは私が決める。」
「だが事実は違う。ベイリーに期待しすぎてここまで追い込んだのは船長だ…」
「やめたまえ、命令だ。いま君のセオリーや哲学を聞いている暇はない。」
「何度も注意したのになぜベイリーを休養させなかった。医者として君の行為を訴えてやる。これは脅迫じゃない…」
「脅迫でも何でもしたまえ!」
カークを見る一同。
ベイロック:『あと、3分。』
カーク:「…時間があれば、あとでゆっくり話し合おう。」
離れるマッコイ。スポックは無言でカークを見る。
カーク:「チェスなら負けるかもしれないが…これは違う。…ポーカー※35だ。…宇宙通信。」
ウフーラ:「宇宙周波オープンにしました。」
「…こちらエンタープライズ※20の船長だ。我々は人類以外の生命をも尊重するため、あえてこの警告を与える。…実は地球の全ての宇宙船の記憶バンクには、編入されていない最も重大な秘密事項がある。…人類が宇宙探検に乗り出した当初より、全ての宇宙船には秘密兵器が装備されている。それは恐るべき物質、コーボマイト※36だ。…これはいかなる敵の攻撃からも、我々人類を守るためのものである。…もし破壊的なエネルギーが宇宙船に触れると同じ量のエネルギーが逆作用によって創り出され、ただちに…」
ベイロック:『警告する。あと 2分だ。』
「ただちに敵を破壊するのだ! 参考のために言うが、最初にこのコーボマイトを使用して以来すでに2世紀以上も経っているが、攻撃を加えてきた者は全てこの犠牲者と成り果てた。我々は死など、何ら恐れない。それを承知の上でするなら、早く攻撃したまえ。愚かな君たちに人類は同情する。」 通信を切るよう合図したカーク。
フェサリアスからの動きはない。
スポック:「…素晴らしい演技でしたね。…できればベイロックをもっと研究したかったな。私の父と似ている点があるようだ。」
スコット:「結婚したママに同情するね。」
「見当違いだね。母は口癖のように、幸せな地球人だと言ってた。」
マッコイはカークの肩に手を触れた。
カーク:「ドクター。すまなかった。」
マッコイ:「いやあ、こんな時にもちだした私がいけないんだよ。君の立場も考えないで下らんことを言ったもんだ。」
カウンター※37を見るスールー。「あと一分。どう出ますかね※38。」
ターボリフトのドアが開き、ベイリーが出てきた。
カウンターは減り続ける。
スールー:「えー、参考のために言いますが後 30秒です。」
ベイリー:「任務に戻る許可を与えてください。」
カーク:「…よし、戻りたまえ。」
ゆっくりとナビゲーター席に座るベイリー。
スールー:「11、10秒。…9、8、7、6、5、4、3、2、1!」
それでもフェサリアスはそのままだ。時が流れる。
フェサリアスを直接見ようとしないベイリー。
スポック:「ポーカーは、面白いゲームですね? 好きですよ。」
カーク:「チェスよりためになる点があるようだね?」
マッコイ:「ぜひ教えたいな。」
ベイロック:『…こちら、フェサリアス※39の司令官だ。』
カーク:「きたぞ。勝負を懸けるのかな。」
『お前たちの宇宙船の破壊は延期する。お前たちがコーボマイトと称する兵器を所持する確証を示すならば、破壊を中止してもよい。』
「そのまま! 少しじらせよう。」
微笑むスールーやスコット。
カーク:「宇宙通信。」
ウフーラ:「オープンにしました。」
「示す意思はない!」 それだけで通信を切らせるカーク。
スポック:「またスクリーンにキャッチしました。」
フェサリアスの映像がベイロックに変わる。『…お前たちの宇宙船に対する我々の決定は、やがて通知する。…我々の姿を見ようとする原始的な努力に応じてやったため、お前たちの好奇心も十分満足できたと思う。…次に、我々が優れている事実を再び証明してみせる。』
フェサリアスの映像に戻った。
ランドが飲み物を運んできた。
マッコイ:「エネルギーは全て使えないはずなのに。」
ランド:「携帯用のハンドフェイザーを使いました。」
フェサリアスから、小さな物体が離れたのが見える。
スールー:「船長、何でしょうあれは。」
コーヒーを受け取ったカークは、スクリーンを見た。
その物体は停止した。
カーク:「小型の船だ。」
スポック:「重量は約2,000トンです。」
小型船を残し、フェサリアスは小さくなっていく。
ベイロック:『お前たち地球人を、我が第一連合のある惑星に連れ去ることに決定した。地球人が生存しうる条件を備えた星だ。…そこに、お前たちを上陸させ監視する。宇宙船はもちろん破壊する。』
スポック:「エンジン関係が動き始めました。」
『この誘導宇宙船は本船同様の強烈な破壊力をもっている。小型だと思って甘く見るな!』
揺れた。
スポック:「誘導光線です。」
ベイロック:『これよりお前たちの宇宙船を全て平常通りに作動させる。しかし我々の定めた目的地へ、我々の力によって誘導されているため脱出は不可能である。…脱出または誘導船の破壊を試みた場合は、ただちに乗組員全員と共にエンタープライズ※20を破壊する!』
スールー:「誘導されています。」
誘導船の後を航行するエンタープライズ。
誘導船を見つめるクルー。

船は進み続ける。


※34: 吹き替えでは「王手」。よくあるミスのようですが、チェックメイト=詰み、チェック=王手

※35: poker
初言及

※36: corbomite
初言及

※37: 分を表示する部分のタイミングがズレており、2:01→1:00→1:59となっています。しかもこれだと残り 2分のはずですが、実際は 1分の場面です

※38: 原語では「(ベイロックが) そうするとわかってました」。この直前にベイロックが残り一分と告げるシーンが入るはずでしたが、スールーがスクリーンを見る仕草とセリフだけが残ってしまいました

※39: 吹き替えでは「フェサリアス

『航星日誌、宇宙暦 1514.1※40。エンタープライズ※20は誘導され、現在まで我々は何の抵抗も試みなかった。誘導宇宙船が小型のため、やがてどこかに無理がくるはずだ。私はそれを待っている。その時に脱出するのだ。』
ブリッジ。
ベイリー:「誘導船との距離が遠くなりました。」
スポック:「誘導光線が鈍くなった。」
スールー:「スピードが、光の 0.6倍に落ちました。」
カーク:「そろそろ整備を頼むぞ。私が合図したら、直角に脱出する。」
ベイリー:「はい。」
「エンジンも私の合図で全開だ。」
スールー:「はい。」
スクリーンの誘導船を見つめるクルー。
カーク:「始動。」
操作するスールー。
エンタープライズは誘導船の後を進み続ける。
エンジンの音が大きくなっていく。スールーは手元の冷却材温度の表示を見ていく。
スールー:「抵抗があります。オーバーヒートしてます。」
カーク:「レベルを上げろ。」
スポック:「スーパーヒートです。エンジン内部温度が 7,400度に上がりました。…7,500。7,600。…8,000度に上昇。」
船は移動を試みるが、逃れられていない。
揺れが大きくなってきた。

廊下の一方へ偏るクルー。

誘導船の光が強くなる。

今度は反対側に傾く廊下。


カーク:「直角に脱出!」
それでも前方に誘導船が見えたままだ。
ベイリー:「駄目です!」※41
スポック:「危険レベルを 2,000度オーバーしました。…8,400。8,500。…8,600! 間もなく、爆発します。」 ブザーの音が高くなっていく。
カーク:「エンジン全開、補助エンジンを使え!」
一瞬戸惑うスールー。

翻弄される廊下のクルー。

モニターが点滅する。音が下がり始めた。
ベイリー:「脱出できそうです!」
ついに誘導船の後ろから離れるエンタープライズ。

大きく揺れる廊下。

カーク:「エンジン停止。」
スールー:「エンジン停止しました。」
ターボリフトから出るスコット。「エンジンを修理しなければ危険です。2、3時間待っていただけますか。」
スポック:「それは無理だな。もし母船が事件の報告を受けたら。」
カーク:「しかしエンジンも大事だ。」
ウフーラ:「…船長、信号です。かすかに、ベイロックだわ?※42 フェサリアス※39への救助信号です。エンジン、故障。…生命を維持するのに危険な状態。繰り返し発信しています。」 スクリーンには活動を止めた誘導船が見える。
「応答は。」
「ありません。信号が弱くなりました。フェサリアス※39まで届きそうもありません。」
「誘導船にコースを取れ。」
スポック:「…誘導船に?」
「正面だ。」
顔を見合わせるベイリーとスールー。
カーク:「船長より伝える。危機に陥った第一連合の誘導船に乗り込む。これは生死の問題だ、人類以外の生命だが生命に変わりはない。以上だ。」
ベイリー:「コースを変更、セットしました。」
「スコット、転送ルームの準備を頼む。」
スコット:「はい。」 出ていく。
「ミスター・スールー、100メートル以内に接近させろ。微速前進だ。」
スールー:「微速前進。」
マッコイ:「…カーク、よく考えて…」
カーク:「もう宇宙船の任務を忘れたのかね、ドクターは。…宇宙の生命を探し接触することだ。…このチャンスを逃したら我々は何のために調査飛行に出ているかわからなくなる。質問は。2名連れて行く。治療が必要だと思われるので、ドクター・マッコイとミスター・ベイリーだ。」
ベイリー:「……は?」
「未知の生物がいる。君に是非見せたい。」
「…はい。」
スポック:「船長、私も同行させて…」
カーク:「駄目だ。…もし、これが罠なら君はここで必要になる。」
ターボリフトに入る 3人。

転送機を操作するスコット。
転送室にカークが入った。「転送準備は。」
スコット:「できましたが大丈夫でしょうか。メインデッキらしい場所を選びましたが。」
「エアーはどうだ。」
「あります。我々のエアーよりも、酸素をたくさん含んでますねえ。通信機。」
ベルトを装着し、コミュニケーターを受け取るカーク。「よーし。」
スコット:「ハンドフェイザーです。」
「ありがとう。準備いいか。」
トリコーダーを準備するマッコイ。「よくないと言っても連れて行くだろ。」
スコット:「少しかがんでください、向こうはあまり広くないらしいですよ?」
背を低くするカークたち。
スコット:「転送準備よし。」
カーク:「転送。」
転送されるカーク、マッコイ、ベイリー。

天井が低い場所に実体化する※43。ドアをくぐる 3人。
カークはフェイザーを向けた。その先には、スクリーンに映っていたベイロック。
近づくカーク。「何だ。人形だ。操り人形か。」
ベイロックの声が響いた。『ベイロックだ、よく来てくれたな。』
辺りを見渡すと、奥に子供のような人物がいた。手元の装置でカーテンが自動的に開く。
カーク:「カーク船長だ。」
ベイロック※44は本人の声になった。「それに、ドクター・マッコイとベイリー。どうぞ、まあ座りたまえ。…どうしたね、遠慮はいらん。」
そばからグラスが出てきた。
ベイロック:「乾杯しよう。記念すべき瞬間だ。私と共に是非祝って欲しいな。」
オレンジ色の液体が入ったグラスを手にする 3人。
カーク:「ベイロック司令官。」
自分にも容器からトローニヤ※45を注ぐベイロック。「ああ、まあ待ちたまえ。質問が山ほどあるってんだろ。まずは諸君、乾杯だよ。」
口をつけようとしないカークたち。
ベイロックは微笑んだ。「…失礼だぞ。」 口にし、声を上げた。
トローニヤを飲んでみる 3人。意外と美味しいようだ。
カーク:「司令官。あの人形は。」
ベイロック:「言うなれば、あれは私の分身※46。…君たちの文明では、私がジキル※47で人形がハイドといったところだ。どうだね、効果的だったろ? あれを見れば誰でも一応は驚く。…それに先ほどの救助信号もいい考えだろ? 全て君たちを試すテストだったんだ。」
ベイリー:「テストだって?」
カーク:「なるほど。」
ベイロック:「君たちの本当の目的を知りたくてね。」
「記憶バンクを探ったでしょ。」
「計算機の記憶バンクなど素直に信用できんよ。」
マッコイ:「乗組員は。」
ベイロックは大きく笑った。「乗組員などいないね、ドクター。…全て私がやる、この小型宇宙船から母船を操るんだよ。だから寂しくて、相手が欲しくてね。たとえほかの生物でも大歓迎だ。どうだろう君たちの誰か、当分私と付き合ってくれんか。情報を交換しようじゃないか。文明も。」
カーク:「賛成だな、お互いにうるところがあるだろう。…しかし誰を残すか、一度エンタープライズに戻らなければ。」
ベイリー:「…船長、自分にやらして下さい。」
ベイロック:「はあ、じゃ君が地球人の優等生ってわけか?」
「いいえ、とんでもありません。いつもミスばかり犯してます。」
カーク:「でもその方が人間研究に役立つだろう。しかも本人はこれで大きく成長するし。」
また笑うベイロック。「…なるほど。」 カークと手を握った。「我々は似た者同士らしいな。よろしく。」
マッコイとも手をつなぐ。「さてフェサリアスを呼び戻す前に、この宇宙船を案内しよう。こんなに楽しいことは滅多にないことだ。船長、君も自分の船が自慢だろ? その点でも似た者同士だ。」 笑うベイロック。※48


※40: 吹き替えでは「0401.5051」

※41: 原語ではこのセリフはありません

※42: 原音ではこの個所で、変なきしむような音 (一説によるとどこかの椅子が回転する音) が聞こえます。吹き替え版では編集されており、聞こえません

※43: マッコイが転送される際に膝に手を置いていますが、実体化する時は離れています

※44: Balok
(クリント・ハワード Clint Howard DS9第58話 "Past Tense, Part II" 「2024年暴動の夜(後編)」のグレイディ (Grady)、ENT第19話 "Acquisition" 「獲物たちの罠」のミュック (Muk) 役。ロン・ハワード監督の弟で、彼が監督した映画「アポロ13」(1995) では NASA ミッションコントロール技師のサイ・リーバーガットを演じました) 声は当時 7歳のハワード本人ではなく、ジーン・ロッデンベリーの意向でヴィクター・H・ペリン (Victor H. Perrin TOS第16話 "The Menagerie" 「タロス星の幻怪人」の飼育係 (The Keeper) の声、第19話 "Arena" 「怪獣ゴーンとの対決」のゴーン人/メトロン人 (Gorn/Metron) の声、第37話 "The Changeling" 「超小型宇宙船ノーマッドの謎」のノーマッド (Nomad) の声、第39話 "Mirror, Mirror" 「イオン嵐の恐怖」の Tharn 役。1989年7月に死去) によってアフレコされています

※45: トラーニャ tranya
初登場。実際はグループフレーツのジュースで、ベイロック役ハワードは苦手だったとか。訳出されていません

※46: alter ego ですが、吹き替えでは「エゴ」

※47: 吹き替えでは「リギル」とも聞こえます

※48: 資料によると、このエピソードにはクルーの女性 Crew women 役としてミッティ・ローレンス (Mittie Lawrence)、エナ・ハートマン (Ena Hartman)、グロリア・カロミー (Gloria Calomee)、クルーの男性 Crew men 役としてブルース・マーズ (Bruce Mars TOS第17話 "Shore Leave" 「おかしなおかしな遊園惑星」のフィネガン (Finnegan)、第55話 "Assignment: Earth" 「宇宙からの使者 Mr.セブン」のチャーリー (Charlie) 役)、ジョン・ガブリエル (John Gabriel)、ジョナサン・リッペ (Jonathan Lippe)、スチュワート・モス (Stewart Moss TOS第7話 "The Naked Time" 「魔の宇宙病」のジョー・トーモレン (Joe Tormolen)、第50話 "By Any Other Name" 「宇宙300年の旅」のハナール (Hanar) 役)、ジョージ・ボックマン (George Bochman) が出演しています。しかしいずれもノンクレジットであり、どのエキストラクルーを指しているのか、そもそも本当に出演しているのかは確認できません

・感想など
2本のパイロット版に次ぐ、初のレギュラーエピソード。マッコイとウフーラが初登場して全員そろうほか (ジェニーことランドも初)、衣装やセットも含めておなじみの設定に統一されます。まだスポックの眉などは少し違いますけどね。なお製作順・日本順ではパイロットの直後ですが、米国放送順では全く異なります。
ストーリーは未知の異星人との関わりを描いた、極めてオーソドックスなものと言えるでしょう。警告ブイ→とてつもなく大きな球体→誘導船という流れも、よく考えられています。率直に言って、間延びしているとしか思えないシーンが多いのは確かですけどね (やたらとスクリーンを見つめたまま)。このエピソードだけを監督したジョセフ・サージェントは、のちに「地球爆破作戦」(1970)、「ザ・マン/大統領の椅子」(72)、「サブウェイ・パニック」(74)、「アメリカを震撼させた夜」(75、ニコラス・メイヤー原案) などを手がけました。


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