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TOS エピソードガイド
第4話「恐怖のビーナス」
Mudd's Women

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・イントロダクション
※1※2『航星日誌、宇宙暦 1329.8※3。エンタープライズ※4は正体不明の宇宙船を追跡した。』
ブリッジ。
スールー※5:「ほら、あそこです。…スクリーンにキャッチ。」
遠くに小さく映っている船。
スールー:「まだ、脱出を試みてます。」
カーク:「絶対に逃がすな、ミスター・スールー。」
「はい。」
移動を続ける宇宙船。
カーク:「地球の宇宙船かな。」
スポック:「それは、ちょっとわかりませんね。認識信号を出してきませんので。」
スコット:「地球のなら、そろそろオーバーヒートしますよ?」
ナビゲーターのジョン・ファレル大尉※6。「エンジンの回転が限界を超えています。」
スールー:「またコースを変更。やはり感づいてます。」
カーク:「どこまでもついていけ? 連絡は。」
イヤーレシーバーを着けているウフーラ※7。「あらゆる周波を使いましたが応答してきません。…聞こえないのなら別ですが。」
カーク:「いやあ、聞こえてるはずだ。」
スポック:「…船長、小惑星帯に接近中。シラー反応※8、3-5。」
「電磁スクリーンを張れ。」
スールー:「相手も気づいたようです。」
「逃がすな? 突っ込むつもりだ。」
小惑星※9が流れる。
スールー:「でも、もしぶつかったら。」
スポック:「物質探知機の回答が出ました。相手は地球の小型 Jクラス貨物船※10と思われます。…予想通り、エンジンはスーパーヒート。」
カーク:「警告しろ、いま故障したら…」
ファレル:「エンジンが故障しました。」
スールー:「小惑星帯の中で漂っています。」
「危険です。我々が電磁スクリーンを張って、守ってやらないと。」
スコット:「船長、こっちのエンジンがオーバーヒートしますね。遠すぎますよ。」
船を見たカーク。「電磁スクリーンを張って保護したまえ。…スコッティ、スポック、ただちに転送ルームで待機。」
スコット:「はい。」
ファレル:「スクリーンを張りましたが、長くはもちません。」
スールー:「…オーバーヒート気味です、エンジン温度上昇中。」
点滅する操舵席のライト。


※1: 原案は、ジーン・ロッデンベリー自らによります

※2: ハヤカワ文庫のノヴェライズ版は、「宇宙大作戦 マッドの天使たち」収録「マッドの美女」になります

※3: 宇宙暦が 1300台なのは、TOS第2話 "Where No Man Has Gone Before" 「光るめだま」と今回だけ (1400台はなく、次は 1500台)。これは元々この話が、「光るめだま」同様に第2パイロット版の候補だったせいかもしれません (脚注※21 も参照)。吹き替えでは「0401.7201」

※4: 吹き替えでは「エンタープライズ

※5: 声は通常の富山敬さんではなく、納谷六朗さん (VOY スールー、TNG レミック、DS9 初代ウェイユンなど) が代役で担当しています

※6: Lieutenant John Farrell
(ジム・グッドウィン Jim Goodwin) 初登場。原語ではファーストネーム由来の愛称としてジョニーオー (Johnny-O)、ジョニー (Johnny) と呼ばれていますが、訳出されていません。声:井上弦太郎?、TOS チェコフなど

※7: ウフーラが金色 (黄色) 制服なのは、前話 "The Corbomite Maneuver" 「謎の球体」と今回のみ

※8: Schiller rating

※9: TOS第1話 "The Cage" 「歪んだ楽園」の使い回し

※10: class-J cargo ship
Jクラスは TOS第16話 "The Menagerie" 「タロス星の幻怪人」でも言及。ENT で登場する地球貨物船も Jクラスと設定されているため (ENT第10話 "Fortunate Son" 「復讐の連鎖」、第46話 "Horizon" 「兄弟の地平」)、同じ種類である可能性もありましたが、結局リマスター版では全く違う船として描かれました

・本編
ブリッジ。
スクリーンを見るカーク。
機関部員:『こちらエンジンルーム、温度が危険ラインを越えました。』
ファレル:「電磁スクリーンが弱くなります。これ以上張るのは無理です。」
ショートするような音が響き、ブリッジの明かりが暗くなった。
すぐに復旧する。
スールー:「リチウム結晶※11回路が一つ切れました。」
カーク:「ブリッジから転送ルーム、乗員を早く収容しないと危険だ。」
スコット:『合図に応答しません。位置不明。』
再びライトが落ちる。
スールー:「また一つ切れました。」
ウフーラ:「…船長、相手の遭難信号をキャッチしました。」
カーク:「スコッティ、遭難信号をキャッチしたぞ。」

スコット:「位置判明、転送します。」
転送される人物。テキサスハットを被った、小太りの男だ。「別に異議を申し立てるつもりはないが、ここはどこなのかできれば御教授願いたいな。」
マッコイ:「宇宙パトロール船、エンタープライズ※4だよ。」
「ああ、世にこのような素晴らしい船があったのか。いやあ実に立派な船だあ。ああ、自己紹介をいたそう。レオ・ワルシ船長※12だ。」 手を差し出すワルシ。
無視するスポック。「ほかに、乗組員は。」
ワルシ:「いやほんの 2、3人だよ。」
スコット:「船がバラバラになりかかってんのに、早くその連中を助けないと。」
「果たして諸君が敵か味方かわからなかったのでな。ご心配あるな、今頃は 3人とも転送を待っとる。」

ブリッジでは異常が続く。
スールー:「また一つ切れました。バッテリーエネルギーで補足します。」
カーク:「スコッティ、もう何人収容した。」
スコット:『まだ一人です。残り 3名はこれから収容します。』

明滅する転送機。
マッコイ:「どうした。」
スコット:「はっきりわかりませんが、リチウム結晶回路が 3つも切れたので。」
スポック:「バッテリーでは、時間がかかります。」
マッコイ:「こういう装置は、信用できんな。」

ファレル:「破壊されました。」
光を放つ貨物船。
スールー:「小惑星と、正面衝突して。」 消える船。

カーク:『ブリッジから転送ルーム。船は小惑星によって破壊された。乗員は収容したか。』
スコット:「いえ、まだです。手応えはあるんですが。」
赤い光と共に、3人が実体化した。
振り返る一人。いずれもドレスを着た、若い女性だ。
微笑むワルシ。スコットとマッコイが目を奪われている様子を見るスポック。
カーク:『転送ルーム、報告しろ!』
女性は並び※13、こちらを見つめている。目を離せないスコットとマッコイ※14
スポックは無言で腕を組んだ。
ワルシ:「心配はいらん。悪い人たちではないんだ。」

カーク:「ブリッジから転送ルーム。」
ファレル:「小惑星帯を、脱出します。」
「電磁スクリーンを消して出力調整。…カークから転送ルーム、どうしたスコット聞こえないのか。」

見とれたままのスコット。ワルシはカークの声を聞き、上を見る。
カーク:『カークから転送ルーム、何名収容した。』
スコット:「…ああ。あの、全部で 4名です。」
『船長が歩ける状態なら、至急私のキャビンへよこしたまえ。…訂正。たとえ歩けなくても連れてこい! カーク、アウト。』
ワルシ:「誰だ今のは、かなり (いか) っとるようだな。」
女性から目を離さずに微笑むマッコイ。「そう、そうらしいな。」
スポック:「…変だな。間違いなく、乗組員はこれだけか? …ほかにはいないのか。」
ワルシ:「そう、これで全員勢揃いだ。わしの船は美人の乗組員を採用する規則でなあ。」
「弁明は船長にしてもらいたい。」
「いやあ。」
外へ向かうスポック。女性たちも、スコットやマッコイと視線を交わしながら出ていった。
動かないマッコイ。「…思いがけない客が来たな。」

作業中のクルーが、女性に気づく。
ワルシ:「宇宙パトロール船クラスの船になると実に素晴らしいな。しかし、何に乗ろうと男はむさ苦しくていかん。おい君、人生は楽しまんといかんぞ?」
廊下の男性士官が、女性たちを見る。スポックたちはターボリフトに入った。
スポック:「12番デッキ※15。」
ワルシ:「あんた、ヴァルカン星人※16と混血※17だな。」
「うん。」
「ははあ、となるとどんな美人にも一切興味はなしってわけか。感情がないそうだからな。…ハハ、でもみんなは気をつけろよ? いざとなるとこういうタイプが一番怖いんだ。」
到着する。
外に出る前、赤いドレスの女性イヴ・マクヒューラン※18が言った。「失礼なこと言ってごめんなさい? 人の売り買いをしてると自然にああいう…」
ワルシ:「でしゃばるなよ、話はわしに任せとけって。」
女性について行く保安部員※19

クリップボードに記入しているカークは、ノックに応えた。「どうぞ?」※20
スポック:「貨物船の責任者と乗員を連れてきました。」
「よし。…まず聞かせてもらいたいのは…」 振り返るカーク。
近づく女性。
イヴ:「こんにちは。」
カーク:「…やあいらっしゃい。これが君の部下か。」
ワルシ:「いやいや? 正確に言うと、これは大事な荷物でしてな。うん。」


※11: lithium crystal
TOS "Where No Man Has Gone Before" と今回のみ、船の航行に必要な物質がダイリチウムではなくリチウムとなっています

※12: Captain Leo Walsh (ロジャー・C・カーメル Roger C. Carmel 1986年11月に死去) 声:富田耕生 (DVD・完全版ビデオ補完も継続)

※13: ここで 3人が横に並んだはずですが、その後で再びルースが後ろに立っています

※14: マッコイがアップになるときだけ、それ以外の普通の制服ではなく、医療用チュニックに変わっています。あとの医療室のシーンを挿入したため

※15: のちにカークの部屋は、第5デッキになります

※16: 原語では通常の Vulcan ではなく、Vulcanian と呼んでいます

※17: 見ただけで半ヴァルカン人と判断していることから、元々はスポックの見た目が純粋なヴァルカン人とは異なっている設定だった可能性があります。実際は同じでした

※18: Eve McHuron
(カレン・スティール Karen Steele 1988年3月に死去) 姓は訳出されておらず、「ミス・マクヒューラン」も「ミス・イヴ」と訳されています。女性が着ている服は、TOS第41話 "I, Mudd" 「不思議の宇宙のアリス」でも使用。声:平井道子。DVD・完全版ビデオ補完では野沢由香利、FC ボーグ・クイーンなど

※19: Security Guard
(ジェリー・フォックスワース Jerry Foxworth)

※20: 今回以降、初期のエピソードではカークの部屋に窓がありますが、その後は見られません

『航星日誌、宇宙暦 1329.1※21。我々は登録されていない貨物船の船長、および謎の女性 3名を収容した。そしてこの女性たちは、不思議な磁石のように我々を惹きつけたのだ。理由は、まだわからない。』
カークの部屋。
出ていく女性。スポックはカークに向かって首を振り、去った※22
ワルシ:「ああ…まさかこれがパトロール船だなんてわかるはずがないでしょう! こっちは綺麗な荷物を 3つも積んでるんだ! そこへ得体の知れない船が近寄ってきたら、泡食って逃げるのが当たり前でしょ? パトロールだろうが何だろうが、俺たちを小惑星群の中へ追い込むなんてのは明らかに行きすぎた行為だね!」
カーク:「名前をどうぞ。」
「ワルシ、レオ・ワルシだ。遭難したのはあんたのためだぞ?」
「あなたの取った行動に関して審問会を開く。…必要な法律知識はミスター・スポックが与えるだろ。弁護は自由だ。」
「どこまで石頭なんだ、あんたは!」
「あなたが嘘をつくからだ。…もう話し合うことはない。…入れ!」 保安部員に命じるカーク。「ミスター・ワルシを部屋に案内して監視しろ。」
連れて行かれたのを見て、微笑むカーク。

船長席でチップ状のテープを扱うスポック。
ブリッジに戻ってきたスールーは、一緒に来たファレルが壁に近づくのを見る。「ファーレル、しっかりしろ。任務を忘れるな?」 指を鳴らした。
コンソールに向かうファレル。「いやあ、あの目で見つめられると痺れてくるんだよ。金縛りにあったみたいでさ。気がついたか?」
スールーはスポックを気にしながら話す。「当たり前だ、僕も男だぞ? 見損なうなよ。」
スコット:「ミスター・スポック、大変ですよ。」
スポック:「言われなくてもわかってる。」
「リチウム結晶は後一個しかなく、しかもそこに割れ目が入ってしまいました。」
「補助回路を使うしかない。」
「駄目です。そんなことしたら変圧機が吹き飛んでしまいますね。」
カーク:『カークだ。』
スポック:「至急、ブリッジへどうぞ。」

会議室で集まって話している女性。「何してんのかしら…」「何かあったの…」
ワルシが入ってきた。「ああ我らが船長さんの、おかえりだぞ?」 騒ぐ女性たちに言う。「ああ、ちょっと静かになあ。あの、外で待っててくれないかね。」
連れてきた保安部員※23。「駄目です。」
ワルシ:「あ、そう。いいか? …何を聞かれても正直に答えるんだぞ?」 小声で言う。「ああ、その場で適当にごまかせよ。それに健康診断…」 笑うワルシ。「どこも悪いところはないんだから健康診断など必要はないわけだ…。」
青いドレスのマグダ※24。「もし変なこと聞かれたら?」
ワルシ:「大丈夫、この船の船長さんは親切だあ…」
緑色のドレスのルース※25。「でもその内私達も…」
ワルシ:「いやいや大丈夫、嫌なことは全部わしが引き受けるから心配するなって。美人が慌てるとみっともない、必ず着いてみせる。」
イヴ:「どこへよ、この船は今逆の方に進んでんのよハリー。」
「レオだ、いやわしはレオだぞ? わしの名前はレオ・ワルシだから気をつけろよ、ヘヘヘ。どうだね? みんな美人ばかりだろう。考えることも親に似て可愛くてね、いつもにっこり笑って男を楽しくしてくれるんだよ。ほらこの通り。…みんなわしの保証つきだ。」

ブリッジに戻るカーク。
スポック:「エネルギーは全て、一個のリチウムから取っている状態です。」
カーク:「…補助回路に切り換えろ。」
スコット:「補助回路はスーパーヒートの時に焼けました。あのワルシとかいう海賊みたいな奴は、自分の船をバラバラにしただけじゃ足りなくて私達の…」
「まあここで言っても始まらんよ。責任は後で十分に取らせる。」
「問題は今ですよ。100万トンもある宇宙船の運命を、こぶし大の結晶一個に託して平気でいられますか?」
スポック:「しかも、割れ目の入った結晶です。…長持ちしないことは、明らかですね。」
カーク:「だからどうするんだね。」
「ライジェル12号星※26にリチウム鉱山があります。良質という噂ですが?」
「位置および距離は?」
「コースを選定させたら、2日以内で行けそうです。」
「ライジェル12号星に向かえ。」
「ライジェル12号星に変更。コースをセットしろ。」
操作するファレル※27

『航星日誌、宇宙暦 1329.2※28。いよいよ貨物船の船長の審問会が開かれることになったが、女性群が発散する麻薬のようなものに何か謎があるように思えてならない。』
審理室。
カーク:「審問会を開く。宇宙暦 1329.2、エンタープライズ※4船内において。審問を受けるのは貨物船船長、レオ・ワルシ。…コンピューター、スタート。」
操作するスポック。モニターに波形が表示される。
スポック:「まず、姓名をどうぞ。」
ワルシ:「レオ・フランシス・ワルシ※29。」
コンピューター※30:『間違いです。』
スポック:「本名をどうぞ?」
ワルシのはずだった男。「いや…バカバカしい! こんな子供だましの機械の言うことを聞いて血の通ってる人間の言葉を信用しないのかい?」
スポックはため息をつく。「どうぞ正しい姓名を名乗って下さい。」
男:「いやあ…ハリー・マッド。」
コンピューター:『間違いです。』
「ハルコート・フェントン・マッド※31!」
スポック:「何か前科はありますか、ミスター・マッド?」
「あるわきゃない、わしゃ真面目一本の実業家なんだ。」
コンピューター:『間違いです。』
「何だと、このくたばり損ないめが!」
『フルデータをスクリーンに出します。』
マッドの写真つきで、データ※32が表示された。前科の一覧だ。
ルース:「人の心まで読めるんじゃないの?」
マッド:「バカ、そんなことできるか。ただ記録をよく知ってるだけだよ。」
コンピューター:『罪名、密輸。判決、執行猶予。盗品の売買、偽造紙幣で宇宙船購入。判決、精神療法。しかし効果に疑問あり。』
ぶつくさ文句を言うマッド。
カーク:「ミスター・マッド、あなたは飛行プランをもたずに銀河内を通行し、認識信号を使用せずパトロール船の合図を無視して応答しなかった。その結果宇宙に混乱をもたらし…」
マッド:「何? わしのあのゴミみたいに小さな船が、宇宙に混乱をもたらしただと? そんな…」 大笑いする。
「それだけではない! 船長免許証をもたずに宇宙船を飛ばした!」
「嘘だ、免許書ぐらいちゃんともってる。」
コンピューター:『間違いです、宇宙暦 1116.4※33 に取り消されてます。』
「またまた、もう。いやそのいやほんとを言うと、この旅で船長を務めるはずだったレオ・ワルシがその突然に…死んじまって、時間も迫ってたので仕方なくわしが代わったんだ。だからそのつまり、名前も一応レオということにしてだな、つまり敬意を表してだ。レオは実に立派な男だった、惜しい男を亡くしたよ全くままならぬ世の中だなあ。」
マッドが話している間にも、女性に見とれるマッコイやスコット。
カーク:「旅行の目的および目的地は。」
マッド:「惑星、オファイカス3号星※34へ花嫁を届けるのさ?」
「もう一度言いたまえ、何だって?」
「わしゃ花嫁紹介業をやっとるんだよう。なかなか難しいがやりがいのある仕事でね、ヘヘ。」
「証明データ。」
操作するスポック。女性たちにライトが当てられ、スキャンされる。
コンピューター:『データなし。』
カーク:「身体の状態を調べろ、異常は認められるか?」
『女性には特に異常はありませんが、この船の乗組員たちに大きな変化が認められます。…呼吸作用が異常に激しく、発汗率が上昇し脈拍も増加。血圧も上昇しています。』
カークはマッコイを見る。指摘された方はバツが悪そうだ。
汗をぬぐうファレル。
カーク:「その辺でいい、今のは記録から除きたまえ。」
スキャンが終わる。
マッド:「ほら見たことか、わしの言ったとおりだ。この 3人は世界一だよ。この美人が何と健気にも孤独な開拓者たちと共に生き、そして献身的な妻として彼らが一番飢えている愛を、暖かい家庭を与えようとしてるんだよ、うん。…諸君? わしはこの仕事を、社会奉仕だと信じとる。だからわしの一生を捧げてきた。」
コンピューター:『間違いです。』
「…いやつまりこれからわしの一生を捧げようと思っとるんだよ!」
カーク:「3人は自分の意思で来たのかね。」
「当たり前だ。いやあの紹介すると、このルースは海の牧場と言われる惑星から来て、マグダはヘリウム実験ステーション※35で働いていたんだ。」
イヴ:「みんな恋人がいなくて、とても寂しかったんです。…私は農場星にいました。周りはほとんど機械で、兄弟が一組いただけ。その兄弟のために、ボロを繕ったり食事を作ったりして泥まみれになって働いてました。」
「うーんもうよくわかったとさ。」
「いいえ、最後まで言わせて? こんな私達と、喜んで結婚しようとして下さる男性が待ってんのに邪魔するのはひどいわ? …おまけに私達を、ハーレムの女※36か何かみたいにジロジロ。」
「イヴ、もうやめろ!」
カーク:「…罪を問われるのは、要約すればただ一つ。…宇宙船の不法操作に関してだ。何か弁明をしたいかね?」
「神のみぞ事実を知るだ。もう話すことはないね。」
スポックと顔を見合わせるカーク。「審問会を終わる。ミスター・マッドは可能な限り早い機会に、関係当局の手に引き渡す。」
うろたえるイヴは、カークに詰め寄る。「私達はどうなの? 私達は、どうなるのよ! …助けて、お願い。みんな助けて…」
カーク:「失礼、仕事がある…」
音が響き、ライトが明滅する。
戻るスコット。「最後の結晶が焼けました。」
スールー:『船長、生命維持装置は全てバッテリーに切り換えたと報告がありました。』
カーク:「ミスター・スポック。ああ君、邪魔をしないでくれ。」
イヴ:「お願い!」
「やめたまえ。ミスター・スポック、ライジェル12号星の鉱夫に連絡をし、至急リチウム結晶を準備しておくように伝えてくれ。」 部下と共に出ていくカーク。
マッド:「そうか、これでわしにも運が向いてきたぞ。宇宙はまだわしを見捨てなかった。聞いたろ、ん? リチウム鉱夫だ。わからんのか鈍いなあ。リチウム鉱夫といや宇宙の果てで働いてる労働者だが、金は腐るほどもってる! どうだ、金持ちになれんだぞ? ん? イヴ! お前が結婚するはずだった船長なんて問題じゃない! 今度の相手は星ごと全部買ってくれるぞ? …マグダ! お前はやがて伯爵夫人、ルースは公爵夫人になれる! そしてわしゃあ…このでっかい船を分捕ってやるぞう! おいこらカーク船長! 次の船長はこのハルコート・フェントン・マッドだからな、ああ? 思い切りこき使ってやるう!」 テーブルに足を投げ出し、笑い出した。


※21: ここと次の宇宙暦 (脚注※28) は、最初の宇宙暦 (脚注※3) より小さな数字になってしまっています。そのため各種資料で今回のエピソードを表す宇宙暦として、1329.8 と 1329.1 が混在しています。吹き替えでは「0401.7208」で、以降も増え方の矛盾はありません

※22: このような「感情的」な仕草は、初期ならでは

※23: 右側は保安部員 Guard
(フランク・ダ・ヴィンチ Frank Da Vinci TOS第3話 "The Corbomite Maneuver" 「謎の球体」などのクルー (Crewman)=ブレント (Brent)、第23話 "A Taste of Armageddon" 「コンピューター戦争」のエミニア人護衛 (Eminiar Guard)、第34話 "Amok Time" 「バルカン星人の秘密」のヴァルカン人ベル演奏者 (Vulcan bell carrier)、第44話 "Journey to Babel" 「惑星オリオンの侵略」のヴァルカン人助手 (Vulcan Aide)、第52話 "Patterns of Force" 「エコス・ナチスの恐怖」の党兵士 (Soldier at Party)、第1話 "The Cage" 「歪んだ楽園」のスタント) 名前をヴィンチ (Vinci) とする見方もあります。初登場。セリフなし、ノンクレジット

※24: Magda
(スーザン・デンバーグ Susan Denberg 映画「フランケンシュタイン死美人の復讐」(1967) に出演。プレイボーイ 1966年8月号で、「今月のプレイメイト」に選ばれました) 1966年5月26日づけの脚本最終稿では、姓はコヴァックス (Kovacs) とされています。声:池田昌子 (DVD・完全版ビデオ補完も継続)

※25: Ruth
(マギー・スレット Maggie Thrett) 脚本最終稿では、姓はボナヴェンチャー (Bonaventure) とされています。ある雑誌の記事で、この会議室のシーンで「ローズ」と間違って呼ばれているとありますが、そのような事実は原語・吹き替え共に確認できません (そもそもこの場面では名前を呼ばれておらず、別のシーンの原語での愛称ルーシー (Ruthie) の聞き違い?) 声:武藤礼子 (DVD・完全版ビデオ補完も継続)

※26: Rigel XII
ライジェル星系は TOS "The Cage" など。今回のライジェルは辺境の惑星という言及があるため、他のエピソードの星系とは別の可能性もあります (ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」ですら、10号星を訪れている)。実際に非正史の書籍 "Star Trek: Star Charts" では、10号星などを太陽系から 800光年ほど離れたライジェル=リゲル (オリオン座ベータ星) とは別の星系として説明づけています

※27: この時、ファレルの制服に記章がついていません。次話 "The Enemy Within" 「二人のカーク」でも同じミスがあります

※28: 吹き替えでは「0401.7212」

※29: Leo Francis Walsh
吹き替えでは「レオ・フランシ・ワルシ」と聞こえます

※30: コンピューター音声 Computer voice
(メイジェル・バレット Majel Barrett) ノンクレジット

※31: ハルコート・フェントン・「ハリー」・マッド Harcourt Fenton "Harry" Mudd
初登場。脚本初期稿では、アンタレス・パイ4号星 (Antares Pi Four) 生まれの 47歳となっていました。映画 ST4 "The Voyage Home" 「故郷への長い道」の連邦評議会シーンや、TNG に冷凍睡眠で現れる案もありました (カーメルは TNG 開始前に死去)。書籍「アート・オブ・スタートレック」(日本語版 152ページ) で、DS9 のラクタジーノの瓶に「ハルコート・フェントン・マッド輸入」と記されています

※32: 写真のマッドは今回と同じ服を着ている上、左右が反転しています (イヤリングが逆)。マッドの「未来前科コード」は X731248、身長は 6フィート1インチ (185cm、実際のカーメルは 191cm)、体重は 260ポンド (118kg)

※33: 吹き替えでは「0401.6816」

※34: Ophiucus III
綴りは異なりますが、Ophiuchus =へびつかい座

※35: Halium experimental station
気体のヘリウムとは関係ありません

※36: 原語では土星のハーレムの女 (Saturnius harem girl)

『航星日誌、宇宙暦 1330.1※37。ライジェル12号星まで後 14時間だが、エンタープライズ※4は補助エンジンに頼りしかも燃料は底をつきかけている。一刻も早くリチウム結晶を手に入れなくてはならない。』
ブリッジ。
険しい表情のカーク。

廊下をマグダと歩くファレル。コミュニケーターを見せている。
カーク:『一方マッドの美人たちは謎の魅力で乗組員たちを惹きつけてゆき、マッドは部屋に軟禁されていた。』

医療室のモニターを切るマッコイ。
ルース:「入っていいかしら。」 入口の壁に寄り添っていた。
マッコイ:「どうぞ。君なら大歓迎だよ。…コナーズ※38、もう行ってもいいぞ?」
ルースを見ながら出ていく技師。
ルース:「診療室ってどんなところかと思って。」
モニターの前に立つと、装置が反応した。目を見張るマッコイ。
ルース:「素晴らしいとこね?」
マッコイ:「あの、すまんがもう一度そのパネルの前に立ってくれないか。」
マッコイの肩に手をかけるルース。「何の前?」
マッコイ:「…その検査用の装置だ。」
「どうして? 身体検査する気じゃないでしょうね?」
「いやあ、そうじゃなくてちょっと…信じられないことがあったんで、ただ立ってくれればそれでいいんだ。」
従うルース。同じ反応が出る。
マッコイ:「こんなバカなことが!」
ルース:「…それはそうと、ライジェル12号星の鉱夫たちの健康診断するの?」
「必要ならするよ?」
「というとまだ決まってないの、病人は一人もいないの?」
「…何、ああいないね。報告によれば、3人とも元気だ。」 首をなでられるマッコイ。
「ああ、3人。」
「君は、何か特別なものでもつけてるのかね? 変わった香水とか、放射能を帯びてるものとか。」
「いいえ? 何もつけてないわ?」
「信じられん、なぜあんな反応が出るんだろう。」

※39自室に戻るカーク。
イヴ:「船長? …お邪魔じゃなかった?」 ベッドで横になっている。起き上がった。
カーク:「歓迎はできないなあ、ミス・イヴ。」
「散歩しようとしたんだけど、途中で仕方なくここに逃げ込んだの。…だってみんな変な目で私を見て、追いかけようとしてくるんだもの。」
「そうか。部下には、よく言っとくよ。」 笑うカーク。「みんな普段なら、そんなことはしないんだがね。君たちの場合は何て言うか、特別で。」
「そう? きっとみんな、孤独なのね? その気持ちはよくわかるわ?」
「ああ。…じゃあ、申し訳ないが私は失礼するよ?」
「もしかしたらあなたが、孤独を一番よくわかってる人じゃない? …こんな大きな船を独りで指揮する立場で、いつも大きな責任を背負って行動してるんでしょう?」 カークの肩に手を回すイヴ。「クルーにも尊敬されなきゃならないし、大変な御仕事だわ?」
「…大変そうに見えるだろうが、実はそれほどでもない。」
「…へえ。」
笑うカーク。
イヴ:「指揮官は道徳心の権化だってよく言うけどそんな人会ったことないわ?」
カーク:「…私もだ。」
「そんな人いるわけないもの。中には、道徳心のある振りをする人もいるけど。」
「ああ。」
「あなたは、どうなの?」 口を近づけてくるイヴ。
「いやあミス・イヴ、私は…。」
「ああ、ダメよ。ああ。私にはできないわ、ハリーに何て言われても。あなたが好きだもの。…とてもそんなことできない。もういや、こんなの! ああ。」 イヴは出ていった。

男性に見られながら廊下を歩くマグダ。部屋の前に立っている保安部員に近づいた。
脇へどく保安部員。マグダは中に入る。
中にいるマッド。「たった 3人しかいない?!」
ルース:「ええ、3人とも元気で若い男だって?」
「よーし、そいつはいいぞ。マグダ、通信係※40と仲良くなったか。」
マグダ:「リーダーの名前は、ベン・チルドレス。あとの 2人は、ゴセットとベントン※41よ?」
「それでいつから。」
ルース:「そろそろ丸 3年になるって、行ってから。」
「完璧だ、お膳立ては。飢えた男が 3人、ハリー・マッドの美女たちも丁度 3人ときた。そして問題のリチウム結晶は、ダイヤの 300倍も値打ちがあると相場が決まってる。金に換えたら何千倍にもなるぞ?」
「でも相手は鉱山の中、私達は遥か上の宇宙船の中じゃしょうがないわ?」
マグダ:「しかも部屋の外には見張りが頑張ってて、あんたは一歩も出られないのよ?」
マッド:「ところが違うんだな、お前たちがもうちょっと頑張ってくれたら外へ出られないのはわしじゃなくて、ここのお偉い船長ジェイムス・カークさんになる。」

イヴが涙を浮かべて入ってきた。「…あんたなんか大っ嫌い。…私もう、こんな仕事するのは御免だわ。」 頭を押さえる。
マッド:「カーク船長が好きになったか。…あいつを見る目つきが違うようだな。」
「そういう目つきをしろと言ったのは誰よ。」 壁にもたれかかるイヴ。「ねえハリー…気分が悪くなってきたわ。…そろそろ時間なのよ、お願い。」 息をつく。

ブリッジのカーク。「軌道進入コースを取れと言ったはずだぞ。ミスター・ファレル。」
ボーッとしていたファレル。「軌道進入コース、セットしました。」
カーク:「もう命令は二度と繰り返さないから、そのつもりでいたまえ! バッテリーエネルギーも残り少ないんだ。」
スコット:「何とかいけるでしょうが、安定した軌道は取れません。」
「結晶を 6個受け取るまで何とか保てばいい、望みはそれだけだ。」
「頑張ってみます。」
「…バカらしい。みんな熱病みたいだ。検査はしたのか、イヴを。調べたのか。」
マッコイ:「断られたよ。」
「…医者ならもっとしっかりしろ。…何なんだ。なぜ彼女たちは、あんなに魅力があるんだ。…とても、この世のものとは思えん。」
「果たしてそうかな。…一つ冷静に考えてみろ。ほかの女性より君が知ってる女性より、どこが綺麗でどこが優れてる。…ひょっとすると彼女たちはただ、綺麗に見えるだけかもしれん。目先にごまかされちゃあダメだ。」
話を聞いているスポック。
カーク:「一体何者なんだ。」
マッコイ:「何者って、変装した宇宙人とかそういう意味かね?」
「可能性はあるか。」
「いやあ、もし宇宙人の仕業なら診療装置の前に立ってボロを出すようなことはしないね。」
「ボロを出す?」
「あとで話す※42。」

コミュニケーターを持つマグダ。「連絡は宇宙周波 3-9 よ。」
マッドは受け取り、操作する。「…ライジェル12号、ライジェル12号。」
男:『こちらライジェル12号、エンタープライズどうぞ。』
「そう固くこられると困るんですがね、ハリー・マッドと言うもんでして。すいません、そちらどなたでしょうかな。」
呆然としているイヴ。

惑星に近づくエンタープライズ。
スクリーンにライジェル12号星が映っている。
スールー:「出力カーブが、下がり続けてます。」
ファレル:「軌道には乗れます。…不安定ですが。」
カーク:「乗ろう、コンピューター。」
スポック:「この軌道を維持できるのは、3日と 7時間と答えが出ました。」
「それで十分だ。ライジェル12号星に連絡、代表者と直接会ってこちらの要求を伝えたい。キャンプの上を通過するときに転送だ。」
ウフーラ:「はい。」

棚で荷物を探るマッド。
ルースの顔は、年老いた姿になっていた。「どうなってるのよ、私の顔見て?」
マッドは何かを探す。
マグダも疲れている。「早く薬をちょうだい。」
皺だらけのイヴ。
ルース:「こんなとこ誰かに見られたらどうなるの。」
イヴ:「こんなことでだませるわけないわ。…私達をよく見てよ。みんなは美人だと信じてる。詐欺よ。…あんた、よく平気でいられるわね。人をペテンにかけて。」
マッド:「本気でカークが好きになったか。断っとくが奴はお前なんぞ相手にせんぞ? 身分が違う。第一船長って奴ら船が恋人なんだ、のぼせるな!」
ルース:「…昔の、醜い私に戻ってきたわ。…助けて。」
マグダ:「お願い、綺麗になりたいのよ私。」
「どうして薬を隠したの、信用してないのね。」
マッド:「隠したりするもんか、奴らに見つからないとこに置いただけなんだ。」
マグダ:「ハリー、早く見つけて。」
「思い出したぞ! …ほらあった!」
すぐに口にする 2人。
ルースたちは大きく息を吸う。
マッドはイヴにも差し出した。「どうしたイヴ、飲めよ。詐欺だなんてとんでもない。…こりゃ奇跡だ。お互いに幸せになるためじゃないか。…ためらうことはないんだよ。」
身体を伸ばすルースとマグダ。
イヴは薬を手にした。
マッドが見ると、ルースたちは元の若さを取り戻していた。
うなずくマッド。イヴが手にしている薬は、赤くきらめいている。
微笑むマッドを見て、イヴは薬を強く握り締めた。

鉱物を手にするスポック。「焼けてヒビが入っていても、綺麗ですね。こんなものを破壊するなんて。」
カーク:「仕方がなかったんだ。あの時もしこの結晶にこだわっていたら、彼らは船と共に飛び散っていた。」 ブザーに応える。「入れ。」
保安部員:「船長、ヘッドのベンさんとゴセットです。」
「よし、入れろ。」
会議室に入る男たち。
カーク:「エンタープライズ※4のカーク船長だ、こちら科学主任のミスター・スポック。」
チルドレス※43:「早速商売といこう。リチウム結晶ならいくらでもあるぞ。」
「結構だな、妥当な値段で買い取りたい。」
「まだ売るとは言ってねえぞ。…取り替えようじゃねえか。」
「面白いな、何とだ。」
「…マッドの女※44だ。」
ゴセット※45:「…もし気に入ればだぜ、まず品定めってのが相場だからな。」
「そうだ、早く連れてきな。…それにマッドのことだが、いい加減に許してやったらどうだ。…でなきゃ断るぜ。」
呆れるスポック。
カークは笑った。「ふざけちゃ困るな。」
チルドレス:「…嫌ならそれでいいんだ。…上陸班を降ろして探さしても、結晶の一っかけらもねえからな。」
「…断る! ……君たちは長い間宇宙にいた。医療品をはじめとする物資に欠乏し、補給を必要としているはずだ。事実をよく考えてみたまえ。」
マッドがやってきた。「さあレディさんたち入った入った。…あなたがベンさんですな、さあさあズズーっと中へどうぞ…。」
ゴセットの肩に手をかけるルース。「じゃああなたがゴセットさんなのね?」
ゴセット:「そうだ、よろしく頼むぜ?」
チルドレス:「おめえも大した野郎だなあ、こんなすげえの。…いいぞ。文句なしだ。」
イヴの顔も元に戻っている。
カーク:「取引には応じられん!」
またライトが暗くなった。
スポック:「バッテリーエネルギーが半減しました。」
マッド:「ああ、聞いたところじゃこの船は後 3日でエンジンが止まって落ちるそうだなあ。」 舌打ちする。「船長さんに辛い思いをさせたくないがこの際ほかにどうしようもないからな。…落ちるのが嫌なら、目をつむってでも取引しなきゃならないんだなあ。そうだろ、船長さん?」


※37: 吹き替えでは「0401.7231」

※38: Connors
(エディー・パスキー Eddie Paskey TOS第2話 "Where No Man Has Gone Before" 「光るめだま」などのレズリー (Leslie)、第6話 "The Man Trap" 「惑星M113の吸血獣」などのライアン大尉 (Lt. Ryan)、第23話 "A Taste of Armageddon" 「コンピューター戦争」のエミニア人護衛 (Eminiar Guard) 役) 普段レズリー役を演じるパスキーのキャラクターの名前が呼ばれるのは初めてで、コナーズというのは今回が唯一。セリフなし、ノンクレジット

※39: TOS の旧国内オンエア分では、カット部分が存在しています。完全版ビデオ (第1シーズンの一部) および DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります (CS版との比較)。LD では基本的に、その部分だけ字幕収録です

※40: マグダがファレルにつけいるシーンでわかる通り、ナビゲーターだけでなく通信も担当している設定のようです。実際に TOS第12話 "Miri" 「400才の少女」では、通信士官として任務に就いています

※41: Benton

※42: 原語では、カーク「意味がわからんが」 マッコイ「私もだ」

※43: ベン・チルドレス Ben Childress
(ジーン・ダイナスキー Gene Dynarski TOS第72話 "The Mark of Gideon" 「長寿惑星ギデオンの苦悩」のクロダク (Krodak)、TNG第15話 "11001001" 「盗まれたエンタープライズ」のオーフィル・クインテロス中佐 (Cmdr. Orfil Quinteros) 役) 声:小林清志 (DVD・完全版ビデオ補完も継続)。意図したものかは微妙なところですが、TNG のクインテロスも小林さんが担当です

※44: 原題

※45: ハーム・ゴセット Herm Gossett
(ジョン・コアル Jon Kowal) ファーストネームは訳出されていません

風が吹きすさぶ地表※46
『航星日誌※47。我々は、リチウム結晶を手に入れるためライジェル12号星へ転送された。さらに難題が待ち受けてるような気がする。』
建物のそばに転送される、カーク、スポック、マッド。
中に入った。新しいドレスを着たマグダが、鉱夫の前で笑っている。
厳しい表情を浮かべるチルドレス。カークたちは埃を払う。
カーク:「この勝負は君の勝ちだ。…リチウム結晶をもらおうか?」
チルドレス:「まだ早い、慌てるな。」 笑い、イヴに近づく。
「ベン!」
「いま手がふさがってんだよ。」
カークを見つめるイヴ。
スポック:「もう、一刻の猶予もならない状態です。」
カーク:「だからどうしろと言うんだ!」
イヴに話すチルドレス。「…外はいつも、ああなんだ。」
窓から荒れた様子を見るイヴ。
チルドレス:「もう何べん迷子になったかわかんねえぜ。急に吹いてきやがって。」
妙な音が響く。
チルドレス:「磁気嵐だ。となると、これからが本番だな。」
ベントン※48に話すマグダ。「…私と踊って?」 抱きつく。
その様子を満足げに眺めるマッド。
チルドレス:「踊らねえか。」
イヴ:「いや…」 咳き込む。
チルドレスに見られ、マッドは困った表情をする。
イヴ:「あとで。…ごめんなさいね、砂が喉に入っちゃって。」
チルドレス:「ここじゃあいつもこうなんだ、朝から晩まで!」
チルドレスは、ゴセットと踊っていたルースを抱き寄せた。笑う 2人。
イヴはまだ苦しそうだ。
ゴセットはマグダを渡すよう、ベントンに近づいた。「おい。」
ベントン:「うるせえな。」
「いいじゃねえか!」
「しつこい野郎だ!」
「フン。」 マグダに近づくゴセット。
「野郎! この!」
小競り合いを始めたのを、止めるカークとスポック。
チルドレスも間に入る。「やめろ! のぼせやがって!」
笑うマグダやルース。
その時、イヴは外へ向かう。「くじ引きでもしたらどうなの、私はもう御免だわ!」
追いかけようとするカークとスポック。
チルドレス:「よせ、いま出たら死んじまう!」
カーク:「戻るまでに結晶を用意しておけ。」
マッドも続いた。

嵐の中を歩くイヴ。倒れた。
追いかけるカーク。イヴは再び立ち上がる。
カーク:「イヴー! イヴー!」
チルドレスも外に出ている。


エンタープライズ。
『航星日誌、補足※49。赤外線探知機で捜査するため、とりあえずエンタープライズ※4に帰還した。だが猛烈な磁気嵐のため探知機の性能が半減され、捜査は捗らない。こうして貴重な 3時間18分が経過した。』
汚れているスポックやカーク。マッドもブリッジにいる。
ファレル:「第3 および、4 地区を走査。」
スールー:「チェック。…あまり期待できません。」
スポック:「磁気嵐が空気をイオン化してます。それを通すのは、難しいですねえ。」
スコット:「船長、またバッテリーが弱くなりました。…リチウム結晶さえあったら。」
カーク:「無理を言うな! ないものはない、自分でやってみろ! そんなに欲しいんならな。」
ウフーラ:「…鉱夫との連絡も難しくなりそうです。…磁気嵐がひどくなってきました。」
「ベンから連絡はあったか。」
「ありません。イヴもまだ行方不明です。」
「…すまなかった。」
うなずくスコット。
カーク:「エネルギーは後どのくらい。」
スコット:「5時間分しかありません。」

建物にイヴを運んでくるチルドレス。中に入った。
イヴを抱き上げ、寝かせる。イヴは意識を失っている。
チルドレスも、椅子の上で横になった。

エンタープライズ。
『航星日誌、補足※49。エネルギーは後 43分しかもたない。すでに 7時間31分捜査したにも関わらず、イヴとベンは遂に発見できなかった。』
スポック:「赤外線反応。平行線 3、右 0-4-0。」
ファレル:「鉱山キャンプから、121 方向 18キロ※50です。」
スールー:「ベンの山小屋です。」
スポック:「熱を発散してますねえ、ストーブ※51かもしれません。」
カーク:「マッドを至急、転送ルームへ連れてこい。」
「マッドを?」
「張本人をだ。」

嵐は弱くなっている。
料理するイヴ。
目を覚ますチルドレス。「……勝手にいじらねえでくれ。」
イヴ:「食べ物をもらった御礼に作ってあげるのよ。」
「俺のはてめえで作る!」 鍋に触れてしまうチルドレス。「あっ! ああ。…おめえには指一本触れてねえぞ、よく覚えとけ!」
「へえ? 銀河を半分も横切ってこんな宇宙の果てに来てても、言うことは地球の男とおんなじね?※52 はい、嫌ならいいのよ。」
「ここで涙を流してよう、一口食って目を丸くして、『あー、やっぱり違う』って言って欲しいんだろ。」 口にするチルドレス。「…よっぽどうめえや、てめえで作った方が。」
「あなたが作ったのも少し入ってるわよ? フライパンにカスがこびりついてて、取れなかったから。」
「しょうがねえだろ? ここにはロクに水もねえんだぞ。」
「だったらそうよ、フライパンを外へ吊せばいいんだわ? …そしたら砂が綺麗に洗ってくれるわよ、もっと頭を使ったらどう?」
「フン!」

たくさんのフライパンや鍋を、外でひもに吊しているチルドレス。
首を振り、中に戻る。
丸いトランプで遊んでいるイヴ。
チルドレス:「ありゃあいい手だ。」 イヴの顔の変化に気づく。「占い※53か?」
イヴ:「ダブル・ジャックよ。」
「その、赤の 8 は黒の 9 につくぜ。」
「ダブル・ジャックは違うの。」
「…いちいちケチつけやがってこの出しゃばり野郎が! …どうしたんだよ、その小汚ねえ顔は!」
「あんたがあんまり下らないんで、ガッカリしたからよ。」
「何抜かしやがるんでえ、この婆が!」 詰め寄るチルドレス。「俺は女王だって買えるほど結晶をもってんだぜ。誰がてめえなんか!」
そこへ、カークたちがやってきた。
チルドレス:「触ってねえぜ。」
マッド:「よかった、見つけてくれて。」
「減らず口ばっかり叩きやがってよう。」
カーク:「座れ。さあ、ハリー。話してやれ。」
マッド:「ああ。あの、何をそ…」
「ヴィーナス薬※54のことだ。」
チルドレス:「ヴィーナス薬? …聞いたことあるが、ただの話じゃなかったのか。」
「本当にあるんだ。密造品だが。」
マッド:「そう、たまげることはないさ。別に害があるわけじゃないしな。」
イヴ:「『害がない』?!」
「いやその、つまり一口に言えば内にもってるものを引き出す薬なんだ。だから、男が飲めば筋肉隆々とするしな。女はふっくらとして、男は強く女は優しくなって。」
カーク:「イヴたちはその薬を飲まされているんだ。」
チルドレス:「じゃあ後の、こいつみてえなのか。」
マッド:「ちょっと待ってくれ…」
「どうなんだ、そうなのか。」
イヴ:「そうなのよ、みんな私と同じよ!」

「…ゴセットたちはどうなったんだ。」
カーク:「あの後すぐ自分たちの小屋へ帰っていった。そして 2人とも結婚した、亜空間ラジオでな。」
マッドにつかみかかろうとするチルドレスを止めるカーク。「これは詐欺なんだ、だから取り消せる。」
マッド:「その気になりゃだ。」
チルドレス:「貴様あ…。」
「女のせいにするのは酷だよ。」
「うるせえ! …俺たちは死ぬ覚悟で、ここまできたんだぜ。普通の野郎なら死んでるのに、俺たちは頑張り通したんだ。それでやっと一財産手に入れたのによう。化け物の女なんぞもってきやがって!」
イヴ:「化け物で悪かったわね。…あんたこそ何なの、美人ならどんな女でも構わないの? …これからの私をよーく覚えとくのね、一生かかっても手に入らない美人よ。本物じゃないんだもの!」
マッドから手にした薬を見せ、口にした。
それを見つめている一同。カークは目を奪われるチルドレスの様子を見て、微笑む。
イヴは美しい姿に戻った。「あなたが欲しいのはこういうタイプの奥さん? 一緒に泣きも笑いも、何もできない人? お料理も、洗濯も、お掃除も※55。…こんな女?」 チルドレスの膝に座る。「わがままで、見栄っ張りで気が短い。…ほんとにそういう女が欲しいの? ならどうぞ、ここにいるわ?」
カーク:「素晴らしい女性だ。」
チルドレス:「偽もんだ、薬で作られた。」
「いや本物だ。薬は飲んでない。」
イヴ:「…ちゃんと飲んだわ。」
「ただのゼリーだ。」
マッド:「本物の薬は全部取り上げられて持ってたのはゼリーなんだい。」
イヴ:「…そんなバカなこと。」
カーク:「二人といない女性だよ。」
マッド:「自分で変えられるんだからな。」
「信じる心が自然に、そうさせたんだ。…さあこれ以上お前と付き合って貴重な時間を無駄にはできん。約束のリチウム結晶を早くもらおう! カークからエンタープライズ。」
スポック:『船長、スポックです。』
「待機しろ。…捜査班を転送させようか。」
チルドレス:「いや、結晶はここに隠してある。喜んで出そう。」
「そのまま待機しろ。待望のリチウム結晶を持って帰るぞ。」
スポック:『計何名ですか。』
チルドレス:「イヴは残る。…今日だけでも…話がしたいんだ。」
カーク:「どうする?」
イヴ:「…エンタープライズの暮らしは、とっても素敵だったわ?※56
「私とマッドの 2名だ。さあ、仕度をしろ。」
マッド:「いやあその…あのなあものは相談だがね、わしも一緒にここに残るってのはどうだろう。罪の償いはそれで十分だと思うがな。」
「それはできない相談だな、しかし裁判で証人になってやるのは考えてもいいぞ? お前が望むんならな?」
「死刑にでもするつもりじゃないのか?」

ライジェル12号星を離れるエンタープライズ。
スクリーンに映る宇宙空間。
マッコイ:「下の話し合いはさぞ面白かったろうな。商売でもやったらどうだ? 薬の特許を取って。」
カーク:「船に乗ってる方が楽しいよ。」
スポック:「終わってホッとしましたね。きっと長く、思い出に残るでしょう。」
マッコイ:「心の、奥深く刻まれてか? …こりゃ失礼、君の場合は心というのは…」 身体の左側面を指す※57。「ここだったな。」
「内部構造があなた方と変わってるのが、自慢ですからね? 一緒にしないで下さい?」
ファレル:「コースをセット、全装置異常ありません。」
スールー:「エンジン作動、舵反応よし。」
「軌道を離れました。」
カーク:「全速前進。」
スールー:「全速前進!」
マッコイは、ブリッジを出ていった。


※46: 荒れた模様を現す背景効果は、次話 "The Enemy Within" のアルファー177 でも使われています

※47: 吹き替えでは「宇宙暦 0401.7233」と付け加えられています

※48: Benton
(シーモン・グラス Seamon Glass)

※49: 原語では、いずれも「補足」は含まれません

※50: 原語では 11マイル

※51: 原語では調理用ストーブ

※52: 後ろにある 3本の筒は、TOS第6話 "The Man Trap" 「惑星M113の吸血獣」でマッコイの部屋の物として使い回し

※53: 原語ではソリティア (Windows にも付属するトランプゲーム)

※54: Venus drug

※55: 原語では「お料理も、縫い物も」

※56: 原語では「あなたには上に御相手がいるわ、エンタープライズっていう名の」

※57: TOS第45話 "A Private Little War" 「カヌーソ・ノナの魔力」で、はっきりと「心臓が地球人の肝臓の位置にある」と言及されます

・感想など
ハリー・マッド初登場の巻。男性クルーが美人にうつつを抜かすという描写は後のエピソードにもあり、例えば ENT "Bound" 「誘惑の甘い罠」あたりは顕著に真似されていました。あのカーク船長が、意外と自制していたのも特筆すべきことですかね。ラストは妙に寓話的で、いくら自分の力で若くなったとはいえ、以前飲んだ薬の影響は否定できないと思うのですが。男性を異常に惹きつけた理由も、明確には語られていませんでした。
採用された「光るめだま」、第2シーズンの「細菌戦争の果て」と共に、セカンドパイロットの候補作でした。脚色の Stephen Kandel は、今後も (TAS 含め) マッドの話を担当しています。撮影中に「危険な過去への旅」のハーラン・エリスンが訪問したそうです。補完吹き替えでは、ほぼ全ての声優が当時の配役のまま担当しているのが良いですね。


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