USS Kyushuトップに戻る

TOS エピソードガイド
第55話「宇宙からの使者 Mr.セブン」
Assignment: Earth

dot

・イントロダクション
※1※2※3※4地球軌道上のエンタープライズ。
『航星日誌。光の速度を破るスピード※5で、エンタープライズは 20世紀の過去へ戻った。そして今 20世紀の人類に探知されないように、電磁スクリーンでカバーして地球周回軌道に乗っている。使命は、歴史上の調査だ。我々の地球が 1968年※6の重大なる危機をいかにして乗り越えたかを知るために、地球の通信を今モニターしている。』
スクリーンに映る地球。レズリーが機関コンソールについている。
日誌の記録を終えるカーク。突然ブリッジが揺れた。
カーク:「非常態勢。…スクリーン最高レベル。…探知機で周囲を調査。」
スポックの通信。『船長、転送ルームです。』

カーク:『カークだ、どうした。』
スポック:「エンタープライズの船体が、偶然何者かの転送光線に接触したと思われます。強烈なエネルギーです。」

カーク:「ありえないことだ。20世紀の地球にはそんな…」

転送台が光り始めた。
スポック:「船長、何かがここへ転送されようとしています。」

カーク:「すぐ行く。」

スコープを覗くスポック。「転送光線は少なくとも 1,000光年の彼方から発信されている。」
スコット:「そんなに、届くわけありませんよ。現在の我々の装置でも無理なのに。」
カークが入った。「何が起こってるんだ。」
スコット:「…転送装置が何者かに、ロックされました。」
警告灯が灯る。音を発する転送機。
台の上に実体化する姿が見えてきた。
カーク:「何者だ。こっちへ転送されてきたぞ。」
そこに現れたのは、スーツを着た男性だった。
手元に抱いた黒猫が鳴き声を上げる。
こちらを見つめる男性。


※1: このエピソードは、第2シーズン・フィナーレです

※2: また、1969年度エミー賞で撮影編集賞にノミネートされました

※3: ハヤカワ文庫のノヴェライズ版は、「宇宙大作戦 地球上陸命令」の表題作になります

※4: 共同原案はジーン・ロッデンベリー自らによります

※5: light-speed breakaway factor
TOS第21話 "Tomorrow Is Yesterday" 「宇宙暦元年7・21」で導入された、スリングショット効果を使ったものだと思われます。今回のように任務としてタイムスリップしているのは、最初で最後でしょうね

※6: 吹き替えでは全て「1975年」。原語での 1968年は放送年と同じですが、日本で放送されたのは 1973年であり過去となってしまうため、変更されたものと思われます

・本編
転送室。
転送台を降りる男性。スポックは片眉を上げる。
男性:「なぜ私の邪魔をした。」
カーク:「保安部。」
保安部長※7:『…保安部です。』
「至急転送ルームへ出頭。」
『わかりました。』
男性に近づくカーク。
男性:「何者だ、君たちは。」
カーク:「これは地球連邦宇宙船※8エンタープライズ、私はカーク大佐だ。指揮官だ。」
鳴いているネコに話しかける男性。「私にも聞こえたよ、アイシス※9? 宇宙船にいるそうだ、どっから来た。」
カーク:「…地球だ。」
「信じられん、この時代に地球人は…」
スポックはまた眉を上げた。
男性:「ヴァルカン人がいるな。君たちは未来から来たんだ。…即刻私を地球へ帰したまえ。」 コンソールに近づく。
保安部員たちがやってきた。
カーク:「フェイザー、麻痺にセット。」
男性はフェイザーを見る。声を上げ、近づこうとするアイシス。
男性:「早まるな。」
アイシスはおとなしくなる。
男性:「よろしい、名を明かそう。…私はゲリー・セブン※10と言って、20世紀に生きる地球の人間だ。いま私は…」
カーク:「20世紀に生きる人間には、宇宙空間を転送したりできる技術はないはずだ。」
「遥かに進歩したある惑星へ行っていた。そして今地球へ転送されるところだった。」
「惑星の位置と名前は。」
「それは極秘事項で言えん。…未来の君たちにも明かせないことだ※11。」
スコット:「いくら隠しても調査すればいずれはわかる。」
「君たちの技術では無理だ、私はこの時代に住む人間だが君たちは違う。…私がこれからしようとすることをもし邪魔すれば、歴史が変わってしまうぞ。…地球は破壊され、君たちは存在しなくなる。」
スポック:「…もし彼が事実を告げているなら、一秒の遅れが地球の破滅につながります。」
カーク:「もし、嘘をついていたら。」
セブン:「…今は地球の歴史において最も危険なときなんだ。私の惑星は地球を救おうとしている。」
「君は地球征服を企む宇宙の侵略者かもしれん。」
スポック:「…人類の運命を左右する判断ですね。」
「…君の主張を証明する証拠がない限り、転送はできん。…保安部に監禁しろ。」
保安部長:「こちらへどうぞ。」
カーク:「…診療室。」
セブンは素早く保安部員を倒した。近づき、ヴァルカン首つかみをしようとするスポック。
アイシスが飛び上がり、保安部員に乗っかった。
マッコイ:『カーク、カーク! …おい、どうしたんだ。』
スポックやスコットを弾き飛ばすセブン。カークはフェイザーを拾った。
コンピューターを操作しようとするセブンを、カークは撃った。
倒れるセブン。
マッコイ:『転送ルーム、応答せよ。』

医療室のマッコイ。「おいカーク、何があったんだ。」

連行されるセブン。
カーク:「ドクター、保安部に監禁されている人間をチェックしろ。宇宙人なのか地球人なのか、分析の結果を知りたい。」

『航星日誌、補足。20世紀の背広を着た男は果たして何者なのか。スポックの特技、ネック・ピンチ※12も彼には通じなかった。フェイザーがなかったら我々は全員倒れていただろう。私にはミスター・セブンが地球人であるとは信じられない。もし地球人だとしたら。』
会議室。
アイシスをなでているスポック。
カーク:「そのネコについてはどう思う。」
スポック:「非常に可愛い動物です。不思議に惹きつけられる感じですね。」
「カーク船長だ。科学、技術、および管理関係のスタッフは会議室にチャンネルを回せ。我々が迫られている決断は単に我々のみならず、地球の未来を左右する重要なものだ。この件に関する情報は既に与えた、その分析結果が判明したら直ちに報告して欲しい。」 各所で聞くクルー※13。「ナビゲーション、報告。」
モニターに映るチェコフ。『転送光線の方向を分析しましたが、宇宙地図には該当区域に惑星の存在は記されていません。』
スポック:「我々には発見できないと言っていましたね。」
カーク:「技術部。」
機関室のスコットが映る。『光線の分析はまだできません。あまりにも強烈なために記録装置のヒューズが飛びました。膨大な距離の転送はもちろんのこと、時間の壁も破れるでしょう。我々には想像つきません。』
カーク:「スポック、歴史的観察。」
スポック:「この時代の地球には重要な問題が山積しています。今日は大問題となる暗殺事件が起こり※14、またアジアの某国でクーデターが行われるでしょう。…さらに地球にとって危険なのは、合衆国によって核弾頭を装備した衛星が打ち上げられることで、これが成功した場合反対勢力も対抗手段に出るでしょう。」
「確かこの時代は、核装備衛星が最も重大な問題となっていたな?」
「はい、そうです。もし空が水爆で一杯になった場合、万一わずかなミスでその一つが落下したら地球は核戦争へ自滅してしまいます。」

医療室で呼び出しに応えるマッコイ。「マッコイだ。」
カーク:『ドクター、報告を急げ。分析結果を持って、会議室へ来たまえ。』
「了解。」

保安部員は横を向いた。拘束室の中で、セブンが立ち上がっている。
フォースフィールドに触れるセブン。
保安部員は視線を前に戻した。
セブンは上着から、ペン状の道具※15を取り出した。調整する。
引っ張ると出てきたアンテナが一瞬光り、音を発する。外に向けると、フォースフィールドが消失した。
気づく保安部員。フェイザーを向けるが、セブンは道具を保安部員に向けて使った。
保安部員はなぜか微笑む。手を下ろし、壁にもたれかかった。
外に出るセブン。「当分寝てるんだな。」
保安部員は倒れた。

会議室に入るマッコイ。「…全ての反応が良すぎてかえっておかしいね。地球人と全く同じなんだが、どこにも欠陥が見当たらない。…完全無欠の身体だよ。」
カーク:「宇宙人が作った身体だろうか。」
スポックから離れるアイシス。
スポック:「作るとなれば完璧なものを作るでしょうね。…しかしもし彼が、事実を言ってるとしたら…」
カーク:「証拠が必要だ! 今の段階では、彼が事実を言っているとも嘘と…」
ドアが開き、アイシスが出ていった※16
保安部長:『非常警報、非常警報。捕虜が脱走した、デッキ閉鎖!」
カーク:「船長だ、速やかに…」
ウフーラ:『船長、転送装置が地球上にロックされています。』
「スイッチを切れ、閉鎖しろ。」 出ていく 3人。

笑って眠っている保安部員たち。セブンは転送機を操作する。
転送室に入るアイシス。警報が鳴っている。
アイシスを抱くセブン。「慌てるな、彼らが来る前に逃げられる。」
音を発する転送機。セブンは台に乗った。
転送開始される。中に入るカークたち。
消えゆくセブン。カークはコンソールを操作するが、セブンの姿は完全に見えなくなった。


※7: Security Chief
(ポール・バクスレー Paul Baxley TOS第17話 "Shore Leave" 「おかしなおかしな遊園惑星」の黒騎士 (Black Knight)、第38話 "The Apple" 「死のパラダイス」の原住民 (Native)、第42話 "The Trouble with Tribbles" 「新種クアドトリティケール」のフリーマン (Freeman)、第43話 "Bread and Circuses" 「もう一つの地球」の警官その1 (Policeman #1)、第45話 "A Private Little War" 「カヌーソ・ノナの魔力」のパトロールリーダー (Patrol Leader)、第52話 "Patterns of Force" 「エコス・ナチスの恐怖」の兵士その1 (First Trooper)、第60話 "And the Children Shall Lead" 「悪魔の弟子達」の保安部員 (Secutiry Guard)、第64話 "The Tholian Web" 「異次元空間に入ったカーク船長の危機」のデファイアント船長 (Defiant Captain) 役。スタント代役、スタント調整) フリーマンと同一人物かもしれません。エンサイクロペディアでは「マッキンレー乗組員 (Crewman McKinley)」となっています

※8: 原語では Federation が含まれているわけではなく、United Space Ship の訳語。"U.S.S." は、現在では United Star Ship の略と考えるのが一般的なようです

※9: Isis
エジプト神話の女神、イシスにちなんで?

※10: ミスター・ゲリー・セブン Mister Gary Seven
(ロバート・ランシング Robert Lansing 映画「4Dマン」(1959)、「巨大蟻の帝国」(77)、ドラマ「87分署」(61〜62)、「頭上の敵機」(64〜65)、「過去のない男」(66) に出演。1994年10月に死去) 声:村越伊知郎、TAS マッコイなど。DVD 補完では石田圭祐

※11: 複数の小説やコミックでは、このセブンが従事する種族もしくは組織の名前は「イージス (Aegis)」とされています。もちろん非正史です

※12: 吹き替えでは「ネック・ンチ」

※13: 冒頭のブリッジでは赤服だったレズリーが、廊下では黄服になっており、直後の機関室では機関部員の赤い作業服を着ています。ちなみに後で保安部員として、また赤服になります

※14: 脚注※6 でも書いたとおり、今回の年代は放送年と同じ 1968年という設定で、このエピソードが放送されたのは 3月29日でした。そのわずか後の 4月4日、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアが暗殺されています。さらにこの日は、サターンV ロケットを使ったアポロ6号が打ち上げられた日でもあります (脚注※29 参照)

※15: 原語では「サーボ (servo)」と呼ばれています

※16: 人間が通る時ドアは全開状態になるにも関わらず、ここでネコのサイズ分だけ開くのは変だという指摘もあります

地上の街。
誰もいない部屋の壁が勝手に開き、中には金庫のような厳重な扉がある。ハンドルとダイヤルが回り、そこも開いた。
中の部屋には青い煙のようなものが浮いており、奥から現れたセブンが歩いてきた。回転するハンドル。
※17扉と、グラスが並んだ壁は元に戻った。
カーテンを開けるセブン。ビルの下には人や車の往来が見える。
アイシスに話すセブン。「お前の言うとおり原始的だな。…この状態で存在できるとは信じられん。…しばらくの我慢だ、すぐ終わる。…コンピューター、オン。」
本棚が移動し、奥に隠された装置が現れた。『コンピューター、オン。』
セブン:「201 および 347号※18の仕事を報告。」
音と光が発せられるコンピューター。『自己紹介を、どうぞ。』
セブン:「私のボイスパターンをチェックしたまえ。監査官 194※19、暗号名ゲリー・セブンだ。」
『…ボイスパターンは一致しますが、ゲリー・セブンが当惑星に派遣された記録はありません。』
「私はファーストクラスの監査官だぞ? 君は自分の職務を忠実に遂行し、私の質問に答えればよろしい。」
『わたくしはベータ5 コンピューター※20で事態を分析し、判断を下す権利を与えられています。…情報部員の特徴と使命を明らかにして、あなたが監査官であることを証明して下さい。』
「警告しておくが私はベータ5 コンピューターに好感をもっていないんだが、慎みたまえ?」
コンピューターは静かになった。
セブン:「わかった。部員は男性と女性、彼らは約6,000年以前に地球から持ち帰った人類の子孫で、この使命のために特殊訓練を受けている。現状、地球の技術と科学は政治および社会的知識より早く発達しすぎた。使命の目的。地球の文明が平和社会へ成熟するまでに自滅するのを防ぎ、その過程を見守ることだ。」
コンピューター:『…不足していますが、承認します。…情報部員の位置は、この 3日間報告されていません。』
「なぜそれを早く言わん。…いやいや、答えなくてもいい。至急捜査を開始したまえ。ラジオ、テレビのニュースをチェックし、政府関係の暗号通信を解読し…」
『捜査の方法はよく知っています。…教えを受ける必要はありません。』
あきれるセブン。

エンタープライズ。
転送室のスコット。「奴の転送先から 1,000メートル以内は、測定できます。」
カーク:「我々を転送すれば、位置を突き止められるか。」
「はい。」
スポック:「いま上陸するのは非常に危険です。我々の行動が歴史を変えてしまう恐れがあります。」
カーク:「わかってる、だが確かめねばならん。…奴が嘘をついていたら大変なことになるんだ。20世紀の服を用意させろ。転送の準備だ。」

話すベータ5 コンピューター。『アメリカ合衆国は反対勢力の核装備衛星打ち上げに対抗し、本日複数の核弾頭を搭載できる準軌道用プラットフォームを打ち上げる予定にあります。…その目的は、勢力均衡の維持。』
セブン:「オミクロン4号星※21も同じパターンで壊滅状態になった。」
『はい、その通りです。地球もそれと同じ状況。…201号および 347号の任務は、アメリカ合衆国のロケット打ち上げを阻止すること。』
「その任務は無事遂行されたのか?」
『…いいえ。進展ありません。』
「…打ち上げはいつだ。」
『現在より、1時間27分12秒後です。』
腕時計を見るセブン。
アイシスはセブンに飛び乗った。
セブン:「記録してくれ。2人が戻らなかった場合は私が任務を遂行する。」


人々に紛れて街を歩く、カークとスポック。スポックは帽子を被っている。
密かにコミュニケーターを取り出すカーク。『スコッティ、セブンが降りた位置は。誘導したまえ。』

転送室のスコット。「了解。195度方向へ進んで下さい。」

歩き出す 2人。

通りを歩く一人の女性。前から来た老人と鉢合わせになるが、移動しようとする方向が同じでなかなか前に進めない。
ため息をつき、やっとで建物に入る女性。

装置が光り、物体が実体化した。コンピューターから取り出すセブン。
その身分証には、「CIA 特別捜査官」と書かれている。次は「NY 市警・警部補」。最後は「国家安全保障局大佐」だ。
一緒に現れた地図を広げるセブン。「マッキンレー・ロケット基地※22」とある。
先ほどの女性が部屋に入った。「…おはよう!」
無言のセブン。
女性:「誰もいないの? …今日は朝からツいてるみたいね。遅刻したのごまかしちゃおっと。」
セブンに気づく女性。
セブン:「どこへ行っていた。」
女性:「ああ、地下鉄が遅れちゃって。」
「この 3日間どこへ行ってたんだ?」
「ちょっと待って? 何でそんなこと聞くの、あなた何者なのよ。」
「347号は。」
「……347?」
「私を警戒する必要はない、201号。」
「…ちょっと、何よ。お巡りさんに来てもらった方がいいんじゃないの?」 電話に手をかける女性。
「座れ。」
「何様だと思ってんのよ。」
「早く座りたまえ。」
「…変な人。」
「君は徹底して自分の役になりきっているな。…しかしもうその必要はないぞ? 私は監査官 194、暗号名ゲリー・セブンだ。…早く報告したまえ。」
「『報告』?」
「報告だよ。…地球時間で 3日間自分がどこで何をしていたかだよ。」 タイプライターを示すセブン。
「ああ。したことを全部?」
セブンは紙を渡す。「したことを全部だ。」
女性:「そう。…えーっと、何だっけ。」
「指を使うな。」 タイプライターに触れるセブン。
「じゃあどうやって打つのよ、鼻を使うの?」
勝手に打ち出され始めた。
女性:「今の見た? …私が考えていることを勝手に。」 続くタイプ。「いま言ってること、もう打ってるわよ! やめて。」 タイプライターを叩く。「もうストップ、ストップ!」
止めるセブン。
女性:「たくさんよ、もう辞めさせてもらうわ。」
セブン:「おーい、ちょっと待った。それは…」
「こんな仕事はもうたくさんよ。」
「まだ演技をしてるのか。」
「演技? 冗談じゃないわ。…さようなら。」
ドアへ向かう女性。セブンはペン状の道具を使った。
女性はドアノブに手をかけた。「ねえ、ちょっと! ちょっと!」 開かなくなっている。
テーブルのランプに触れるセブン。「コンピューター、オン。」
コンピューター:『コンピューター、オン。』
「この女性の素性を明らかにしたまえ。」
『ロバータ・リンカーン※23、地球人。…職業、秘書。347 と 201号に雇わる。』
笑うリンカーン。
コンピューター:『特徴。年齢、20歳。身長、169センチ。体重、59キロ※24。髪の毛は現在、ブロンドに染色。…性格は移り気の傾向あり。知能指数、比較的高し。…身体のあざ、左肩に小型の球形のもの。』
リンカーン:「ねえ?」
『星形をした、比較的大型のものが…』
ランプに触れて止めるリンカーン。「ちょっと! …失礼ねえ、何なのよ。…どういうこと?」
セブン:「…ミス・リンカーン。……あなたはその…君を雇った人たちは、ここでどんな仕事をしてると君に言っていた?」
「百科事典のための調査よ? …違う? …違うの。」
「違う。…行ってもよろしい。」 セブンはドアに向けて道具を使った。「祖国を裏切るような真似をしたければだ。祖国を愛してるだろ。」
「当ったり前じゃないの、何だと思ってんの?」
「残念ながら君がどんな人間かわからんからな。ただ一つ明らかなのは私の不注意によって、祖国の機密保持に重要なある装置を見せてしまったことだ。」
「ふーん? あなた一体何なのよ。FBI? …秘密情報部員か何か?」
アイシスが入ってきた。
セブンは身分証を取り出した。
それを見るリンカーン。「中央情報局、特別捜査官※25。…かっこいいわね。」
セブン:「ありがとう。」 アイシスに話す。「ああわかったよ。すぐ行く。」
戻るアイシス。
セブン:「慣れてるんだ、丁度ほら番犬のようなもんだよ。」
リンカーン:「本当?」
「ああ、仕事をするから誰も入れるな。」
「はーい。」

歩くカーク。「スコッティ、位置を確認してくれ。」

スコット:「わかりました。ロックした位置は、地上から離れています。概算で、約30メートル上です。」

ビルを見上げるカーク。「了解。」
スポックと共に中に入った。

話し続けるベータ5 コンピューター。『事件、交通事故。位置、州道 949号線。マッキンレー・ロケット基地より北 16キロ※26の地点。情報部員 347、201号は共に即死。』
セブン:「何という不合理なんだ。…交通事故のような、全く意味のないことで命を奪われるとは。…確認したのか。」
『しました。死体の特徴は、完全に一致します。』

エレベーターを降りるカーク。「この先は。」
スコット:『247度方向へ、5メートル進んで下さい。』
スポックはトリコーダーのプローブを持っている。
ドアチャイムを鳴らすカーク。

気づくセブン。「コンピューター、オフ。」
回転して本棚に戻るベータ5 コンピューター。

リンカーンはドアを開けた。
カーク:「ミスター・セブンは?」
リンカーン:「何あなたたちは図々しいわね、帰ってちょうだい…」
「ミスター・セブンはどこだ。」

リンカーンの声がセブンの部屋にも響く。「何の話かわかんないわ、帰ってよ。」
セブンはテーブルのペンを倒した。棚が開き、移動装置が見える。
アイシスを抱くセブン。
リンカーン:「ちょっと何よあなたたち、ここは政府の事務所で誰も入れないのよ。」

リンカーン:「…早く帰らないと軍隊か警察を呼ぶわよ…」
カーク:「ミスター・セブンはどこにいる。」
スポック:「この奥です。」
リンカーン:「何すんの、聞こえないの?」 受話器を手にする。「警察を呼んで? 東 811※27 の 12-B よ。」
カーク:「よこしたまえ!」

リンカーン:「何すんのよ、離してヤらしい。」
ダイヤルを回すセブン。
リンカーン:「なれなれしく触らないでよ。」

リンカーン:「…離して、何すんのよこの人殺し。」
カーク:「スポック!」
「セブンさん、助けてちょうだい。」

リンカーン:「…誰か早く来て。」
操作を続けるセブン。

リンカーン:「離してったら。…ダメ、入っちゃダメ! 何のつもりよ。」 スポックに押さえられる。「何よ、早く離してったらこの人殺し!」
スポックの帽子を取ってしまった。
リンカーンは耳を目の当たりにした。「…お化け!※28
フェイザーをドアノブに向けて使うカーク。火花が飛んだ。

移動装置の中へ入っていくセブン。煙が現れ、姿は消えた。
セブンの部屋に入るカーク。壁は元に戻るところだ。

「警告/液体水素」と書かれたガレージの入口が開き、煙が現れた。セブンが出てくる。
歩いていく人々。そばの移動販売車に集まっている。
放送が流れる。『打ち上げ地域の関係者は、退去準備を開始して下さい。現在、打ち上げ 60分前。マイナス60、秒読み続行中。』
打ち上げ台には、ロケットがあった※29。見つめるセブン。


※17: TOS の国内オンエア分では、カット部分が存在しています。DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります (CS版との比較)。LD では基本的に、その部分だけ字幕収録です

※18: agents 201 and 347

※19: Superviser 194

※20: Beta 5 computer
声はバーバラ・バブコック (Barbara Babcock TOS第18話 "The Squire of Gothos" 「ゴトス星の怪人」のトリレーンの母親 (Trelane's Mother) の声、第23話 "A Taste of Armageddon" 「コンピューター戦争」のメア 3号 (Mea 3)、第64話 "The Tholian Web" 「異次元空間に入ったカーク船長の危機」のロスケーニ司令官 (Commander Loskene) の声、第67話 "Plato's Stepchildren" 「キロナイドの魔力」のフィラナ (Philana) 役。ドラマ「ヒル・ストリート・ブルース」(1981〜85) に出演) エンサイクロペディアなどではバブコックはアイシスとコントロール回路の声、メイジェル・バレットがコンピューターの声になっていますが、誤りだと思われます。TOS第53話 "The Ultimate Computer" 「恐怖のコンピューターM-5」の、M-5 の部品が流用されています。声:DVD 補完では山川亜弥

※21: Omicron IV

※22: McKinley Rocket Base

※23: Roberta Lincoln
(テリー・ガー Terri Garr 映画「未知との遭遇」(1977)、「トッツィー」(82) に出演) 声:恵比寿まさ子

※24: 原語では、それぞれ「5フィート7インチ (=170cm)」「120ポンド (=54.4kg)」

※25: この読み上げる声は、原語にはありません

※26: 原語では「10マイル」。以降全てのマイル表記は、km に換算されて訳されています

※27: 原語では「東 68番街 811」。ニューヨーク東 68番街は、ドラマ「アイ・ラブ・ルーシー」でルーシー&リッキー・リカード夫妻が住んでいる場所

※28: 原語では「あなた何者? (What are you?)」

※29: NASA ケネディ宇宙センターの資料映像と、パラマウントでの撮影を合成したもの。以降のシーンでも初期のサターンV ロケットの映像が使われます (サターンV を初めて使用した、アポロ4号の打ち上げ)

セブンの部屋。
地図を見て手にするカーク。部屋を出、リンカーンに尋ねる。「セブンはどこだ。」
リンカーン:「警察に捕まってもいいの、あんたたち…」
「マッキンレー・ロケット基地配置図。」

エレベーターを出る警官※30たち。「この部屋だな? おい、警察だ。」

リンカーン:「助け…」 スポックに口をふさがれる。

銃を手にする警官。「早く開けろ、警察だ!」

カーク:「スコッティ、大至急転送を頼む。スポック、来い!」
叫ぼうとするリンカーンを椅子に座らせ、ついていくスポック。
リンカーン:「あそこよ!」 ドアを開けた。「あそこよ!」
なだれ込む警官。「おい、何してるんだ…」
カーク:「転送開始。」

操作するスコット。

転送されていくカークたち、それに警官も一緒だ。

姿を見るスコット。
カークとスポックは転送台を降りた。
カーク:「逆転しろ。」
口を開けたままの警官、チャーリー※31
警官:「何だこりゃ。」
再び非実体化する 2人の警官。
カークはスコットやスポックと顔を見合わせた。

セブンの部屋に転送されてくる警官たち。リンカーンの目の前だ。
互いを見る警官。

巨大な建物。
管制室で作業する人たち※32
『現在、打ち上げ 50分前。マイナス50、秒読み続行中。全装備異常なし、全装備異常なし。打ち上げ地域の最終検査準備。』
ロケットの映像が中継されている。

「発射台監査官」の名札が掲げられた自動車。そばにセブンが立っていた。
話しかける警備兵。「おい、ここで何をしてる。」
セブン:「怪しいもんじゃない。これを見て。」
警備兵は身分証を見る。「国家安全保障局※25。…一応確認させていただきます。」
セブン:「どうぞ?」
「あのう、ネコを下ろして手を真っ直ぐ垂らして下さい。」
「よろしい。」
警備兵は電話を使う。「保安部の身元確認係を頼む。」
セブン:「アイシス? 踏まれないように気をつけろ?」
「ああ、どうも。保安部か。」
突然大声で鳴くアイシスに驚く警備兵。その隙にセブンは道具を取り出して使った。
目を見開いたまま動きを止める警備兵。
代わりにセブンが受話器を手にし、警備兵の名札を見た。「ああ、こちらリプトン軍曹※33だが現在全て順調で異常は認められない。…そうだ、どうもありがとう。さあリプトン君。ゆっくりとあちらを向いて?」 笑顔のリプトンを押していく。「そのまま歩いてもらおう。…当分ここに座って昼寝でもしていてくれ。」
言われたとおりに座るリプトン。
『現在、打ち上げ 45分前。マイナス45、秒読み続行中。』
車に近づくセブン。
『全装備異常なし、全装備異常なし。打ち上げ地域最終検査開始。』※34

管制官のミスター・クロムウェル※35。「発射台へ行く。第1警報。」

警報が鳴る。発射台から離れる作業員。
『第1警報、第1警報。発射台区域の退却作業開始。発射台区域の退去作業開始。』

出てきたクロムウェルは自動車に近づく。
『関係者は全員退去して下さい。繰り返します、関係者は全員退去して下さい。発射台区域の退去作業開始。』
運転を始める。


エンタープライズ。
転送室のモニターを操作するスコット。「我々の下に旧式の気象衛星が回っていますが、それを避ければ鮮明な映像が出ます。」 はっきりとした地表の映像になった。「出ました。」
拡大され、ロケットが見える。切り替わる映像。
スコット:「もう少し寄りましょう。」 ロケットの一部になる。「これで彼を見つけたら転送できるんですがねえ。」
スポック:「外にいればいいんだがね。発射台やコントロールセンターに入っていたら万事休すだ。」
カーク:「打ち上げまで、あと 40分だ。私達を降ろしてくれ、捜査は続けたまえ。」

警報が鳴るロケット基地。
『打ち上げ区域、完全退去準備。』
作業を続ける管制室の職員たち。

クロムウェルの車はロケットに近づく※36
『安全確認。打ち上げ監督官は、発射台関係者の退避を確認して下さい。地上ステーション 3、4 および 11 は、最終チェックのスタンバイ。繰り返します、打ち上げ区域完全退去準備。』
車を降りるクロムウェル。「どうだ?」
部下のジャック※37。「異常ありません。」
クロムウェル:「…こちら発射台、これより最終チェックを行う。」
『現在、打ち上げ 35分前。マイナス35、秒読み続行中。』
車のトランクが開き、セブンが出てきた。

管制室に流れる放送。『カナリア諸島確認、打ち上げ準備よし※38。』

発射台。
『全ての地上ステーション、以上なし。』
クロムウェルが車のところに戻ってきた。
ジャック:「エレベーターを一番上で止めろ、退去の時間だ。」
『発射台関係者、退去。繰り返す、発射台関係者退去。』
上昇していくエレベーター。
クロムウェルやジャックは車に乗り、離れていく。

エレベーターの中にはセブンがいた。外を見下ろす。
ネクタイを緩めるセブン。

目を覚ましたリプトン。音が響き、転送されてくるカークとスポック。
スポックはまた違う帽子を被っている。
リプトンは銃を向けた。「動くな、動けばその場で撃つぞ!」

エンタープライズ。
ロケットの映像を随時切り替えて確認するスコット。
次々と映るロケットの各所。

管制室に赤いランプが灯る。
『侵入者発見、侵入者発見。保安部員は打ち上げ監督官の下へ。侵入者発見、男性 2名。秒読みを延期されたし。』

怒っているリンカーン。「何とか言ったらどうなの?」 コンピューターのランプに向かって話しかけている。「私もう辞めさせてもらうわ? …でもここのことは誰にも言わないから大丈夫よ、わかった? セブンさんにそう言っといてちょうだい。」
ランプから変な音が鳴った。
リンカーン:「お元気でね。もう…。」
テーブルの上に座ったとき、ペンを倒してしまった。開く壁。
リンカーンはペンがスイッチになっていることに気づいた。
移動装置に近づく。

打ち上げの様子を見守る人々。
『現在、打ち上げ 20分前。マイナス20、秒読み続行中。』

発射台。
『全装備異常なし。繰り返す、全装備異常なし。』
セブンは足場を這い、ロケットの真横に来ていた。上に乗るアイシス。
「…ありがとう、開け方なら私も知ってる。」
道具を使うとパネルが外れた。
「…あまり時間がないことも知ってる。」
中の回路をいじるセブン。

フェイザーとコミュニケーターが 2つずつ置かれている。
ジャック:「これだけしか持ってませんでした。」
『マイナス15、秒読み続行中。』
「よしもう一度聞こう、しかしこれが最後だぞ。答えればできるだけ穏やかな処置を取ってやる。君たちは一体何者で何をしにここへ来たんだ。』
答えないカークとスポック。
クロムウェル:「計器に異常は表れていない。…監督官は全装備異常なしと認める。」
『コントロールから監督官へ確認。』 管制室に流れる声。『全装備異常なし。宇宙飛行状態に支障ない模様。』
「秒読みを続けろ。」
『秒読みを続行。繰り返す、秒読みを続行。全装備異常なし、全装備異常なし。』

作業を続けるセブン。
『マイナス14、秒読み続行中。』
セブン:「…アイシス? あまり急かさないでくれよ。…わかった、わかった。…できるだけ早くするよ。」

捜索を続けるスコット。

『マイナス13、秒読み続行中。計器に異常なし。燃料系統異常なし、全て良好。全装備異常なし。』
どうすることもできないカークたち。

まだ終わらないセブン。

スコットはロケットの上部を拡大させる。セブンの姿が映った。
「保安部、大至急 2名よこしてくれ。」

『マイナス8、秒読み続行中。全装備異常なし、全て良好。』
スポックと顔を見合わせるカーク。

リンカーンはダイヤルを回している。突然ハンドルが反応し、驚く。「ハーヤーヤ!」
ドアが開いた。

保安部員に話すスコット。「彼を転送収容する。」
操作を始める。

状況に気づくセブン。

スコットの操作が続く。

セブンはアイシスを抱いた。

転送室に現れるセブンの姿。

リンカーンが装置をいじっている。

実体化しそうになったセブンが、消えた。
慌てるスコット。「失敗だ、何かに邪魔された!」

音にビックリするリンカーン。
煙が現れ、セブンが立ち上がった。「まだ、仕事は終わっていないんだ!」
リンカーン:「…ごめんなさい、偶然そのボタンを押したらこうなっちゃったの。」
「エンタープライズも私を収容しようとしていたんだ。コンピューター、オン。」 現れるベータ5 コンピューター。「ロケット基地に合わせろ。」
モニターに映るロケット。
コンピューター:『打ち上げ一分前です。』
リンカーン:「まあ、大変だわ!」

同じ映像は管制室にも出ている。
『航星日誌、補足。私とスポックは捕虜となった。事実を話しても、彼らは信じてくれないだろう。我々はミスター・セブンのなすに任せていいのか。水爆衛星の打ち上げを妨害すべきなのか、全く判断できないのだ。』
放置されたままのフェイザーとコミュニケーター。

読み上げるベータ5 コンピューター。『打ち上げ 30秒前。』
リンカーン:「どういうことなの、CIA だってこんなすごいことはできないはずよ?」

『マイナス20秒、ステーション打ち上げ準備よし。自動装置、オン。今後完全自動になります。』

コンピューター:『打ち上げ 15秒前。…10秒前。』

『9、8、7、6、5、4、3、2、1、点火!』
火を噴くロケット。『点火成功。』 ゆっくりと上昇していく。
ロケットの映像が見える。
『高度、400メートル。全て良好、異常なし。軌道正常。』
カークはスポックを見た。


※30: 警官その2 Second Policeman
(テッド・ゲーリング Ted Gehring 2000年9月に死去)

※31: Charlie クレジットでは警官その1 First Policeman (ブルース・マーズ Bruce Mars TOS第17話 "Shore Leave" 「おかしなおかしな遊園惑星」のフィネガン (Finnegan) 役) 名前は (スコットの吹き替え名と被るためでしょうが) 訳出されていません。セリフなし

※32: コップを運ぶ手前の人物を演じているエキストラは、普段はクルーのハドレイ役である William Blackburn

※33: Sergeant Lipton
(リンカーン・デミアン Lincoln Demyan 1991年10月に死去)

※34: スピーカーの声は、DVD 補完では小形満

※35: Mr. Cromwell
(ドン・キーファー Don Keefer) 名前は訳出されていません。声:DVD 補完では千田光男

※36: この個所はロケットも一緒に映っているので資料映像ですが、車種は全く違和感がありません

※37: 名前はジャック Nesvig 大佐 Col. Jack Nesvig (モーガン・ジョーンズ Morgan Jones) ですが、階級と姓は言及されておらず、ファーストネームも訳出されていません。声:DVD 補完では石森達幸と判明していますが、元々の担当も同じ方だと思われます (資料では「石森達」と誤記)

※38: 吹き替えでは「ニューヨーク異常なし」

報告するベータ5 コンピューター。『ロケット、30キロ地点を通過。加速中。』
セブン:「コンピューター、ロケットの修正は完了していないんだ。予定通りにロケットをコントロールできるか。」
『コントロール回路※39を、手動装置に切り替えれば可能です。』
「手動に切り替えた。…軌道にロックしてくれ。…映像オフ。」
離れるリンカーン。アイシスが部屋に入ってきた。
リンカーンは電話を手にした。声を上げるアイシス。
気づいたセブンは、道具を使った。電話線が焼き切れる。
セブン:「無駄なことは考えるな、全て鍵を掛けてある。」
鳴き続けるアイシス。
セブン:「焼き餅焼いてるのか? …お前らしくないぞ?」
アイシスは出ていった。
コンピューター:『ロケットの高度、160キロ。予定の故障を起こす準備はできました。』
セブン:「第3ステージに故障を起こせ。」
『…コントロール回路、90.08。』
「90.08。」
『第2ステージ離脱準備よし。』
「映像オン。」
ロケットからの映像に切り替わった。丸い地球の一部が見える。
コンピューター:『第2ステージ、離脱します。』
切り離される後部。
コンピューター:『第3ステージ、点火。』
セブン:「故障を起こしてコースを外せ。」
『故障設定部分、良好。…ロケット、予定のコースを外れます。』

管制室の警報が鳴る。
クロムウェル:「計器をチェックしろ。」
ジャック:「何です。」
「故障らしい、ロケットが予定のコースを外れ始めた。」
『ロケット爆破チーム待機。』『予定のコースを外れています。故障確認。ますます外れます、誤差は次第に拡大!』『全ステーション直通回線で報告、直通回線で報告。』

セブン:「弾頭をセット。」
コンピューター:『…完了。核弾頭の、安全弁を外しました。』
リンカーンはテーブルに置かれた箱に触れた。
コンピューター:『コントロール回路、セット。91.218。』
セブン:「回路セット、91.218。」
箱を手にするリンカーン。

様々な言語の音声を聞いているウフーラ。
スコット:『スコットだ。』
チェコフ:「ロケット核弾頭の安全弁が外れました。」
スールー:「現在のコースを進めば、ユーラシア大陸の中心部に落下します。」
「今なら接近して、フェイザーで破壊できるチャンスがあります。」
ウフーラ:「地球では全世界が騒然としています。主要諸国が臨戦態勢を整えました。」

スコット:「危険だが船長に連絡する。ウフーラ大尉※40、チャンネルを開けろ。」

ウフーラ:「はい。」

『軌道を確認。核弾頭の安全弁が外れた。繰り返す、核弾頭の安全弁が外れた。全ステーション現状を報告。ロケット破壊準備、破壊電波送信用意。』
ジャック:「なぜ安全弁が外れたんです。」
クロムウェル:「わからん。」
「破壊できるんでしょうねえ。」
「もしできなければどこかに水爆を落とすことになる。…ロケット破壊準備。…破壊!」
『破壊電波を送信せよ、破壊電波を送信せよ。』
カークは密かにコミュニケーターを手にした。
気づくリプトン。「向こうへ下がってろ。」

リンカーンは後ろから箱でセブンを殴った。倒れるセブン。
リンカーン:「ねえ、ごめんなさい? でも私はあなたに言われたように、祖国を裏切れないのよ。あなたは CIA じゃないわ?」 道具を取り上げる。
コンピューター:『軌道用プラットフォーム離脱。』
セブンに道具を向けるリンカーン。「ダメよ。」
セブン:「コンピューター、ロケットの現状は!」
「ダメ、動かないで。ロケットを自分の思い通りにしようなんて、あなたはどこのスパイなの…」
コンピューター:『安全弁は、依然外れています。…落下まで後 6分。』
「本気よ、私は! 勝手な真似はさせないわ!」
セブン:「私の使命を遂行させろ、このままでは後 6分で第三次大戦が始まる!」
コンピューター:『ロケット落下 5分45秒前。』

『破壊装置も故障、安全弁を外して落下を続けています。落下と同時に爆発します。』
クロムウェル:「何? あきらめるな、破壊電波を送れ!」
『送信しました、繰り返し送ります。』
移動するパラボラアンテナ。
『コントロール、いま破壊電波を送信しました。繰り返します、最高レベルの破壊電波を送信しました。』
スコットの声がコミュニケーターから聞こえてくる。『船長、聞こえますか。セブンの転送収容を図ったら何者かに邪魔されました。』
手にするリプトン。「もしもし、応答しろ。…誰だお前は!」
スポックが近づいた。「聞こえませんよ、このダイヤルを回すんです。」
ヴァルカン首つかみをした。気づかれないように装備を取り返すカーク。
『最高レベルの破壊電波を送信しても反応がありません。破壊装置も故障です。』
クロムウェル:「全ての回路を完全にチェックして確認しろ。」
『追跡ステーションも破壊電波に対する反応がないと報告しています。』
カーク:「スコッティ、私達をセブンのアパートへ転送しろ。」
転送される 2人。
『補助送信チーム、ロケットはまだ爆破されてない。繰り返す、ロケットはまだ破壊されてない。核弾頭の安全弁が外れたままだ。破壊しろ、ロケットは落下中。』『バミューダ地上ステーションはロケットを確認。南アフリカ地上ステーションも、破壊電波に対する反応を認めていません。』
クロムウェルは電話を取った。「大統領につなげ。」

コンピューター:『ロケット、加速して落下中。194号、わたくしに与える指示はないのですか。』
セブン:「ロバータ、私を信じろ。もし地球の破壊をもくろむんなら、こんな面倒なことはしない。我々は地球を自滅から救うために君たち人類を研究してきたんだ。そのために 6,000年前に人類を持ち帰り彼らを啓蒙して、地球に危機が訪れたときに…」
リンカーン:「ちょっと待って、私はその言葉を信じたいわよ? …このまま自滅するのを知ってるわ、だからこそ私と同じ世代に、反抗的な人が大勢いるのよ。…だって何年生きられるかわからないんだもの。」
コンピューター:『ロケット落下 2分前です。』
カークの声。「ミスター・セブン、そこを動くな。」 部屋に入った。
リンカーン:「また?」
「君の分野だ、この装置でロケットを爆破できるか。」
スポック:「努力しましょう。」
コンピューター:『高度 850キロ。』
操作するスポック。
セブン:「船長、私も弾頭を爆破したいんだ。…安全高度ギリギリの 160キロで爆破すれば、人類は己の間違いに気づいて愚かな争いをやめるだろう。」
スコット:『船長、世界の主要国はミサイル攻撃の準備を整えました。…ロケット落下と同時に攻撃を開始します。』
コンピューター:『ロケット高度 740キロ。』
カーク:「スポック。」
スポック:「ある程度は推測できますが、もう少し時間が必要です。」
セブン:「それでは間に合わん、私に任務を遂行させろ!」
カーク:「君の任務とは何だ! 私達がここから爆破できないようにセットすることじゃないのか?」
道具をカークに向けるリンカーン。「セブンさんに近寄らないで!」
リンカーンの手を取るセブン。「ロバータ、気をつけろ! 殺しにセットしてあるんだ。」 道具をカークに渡した。
コンピューター:『ロケット高度、620キロ。』
「…時間がない、早く私にやらせろ!」
リンカーン:「セブンさんはほんとのこと言ってるのよ?」
コンピューター:『地上落下、55秒前。』
カーク:「スポック、できなければ彼を信用する以外にない。」
スポック:「どちらを選択するべきか、難しいですね。」
コンピューター:『…地上落下 40秒前。』
「事実がないと、論理的な決断を下せません。人間の直感に、頼るよりないでしょう。」
『ロケット高度、470キロ。加速して、落下中。』
カーク:「やれ。」
コンピューター:『地上落下 30秒前。』
セブン:「映像を出せ!」
迫る地表。
セブン:「高度を報告。」
コンピューター:『現在高度、340キロ。…320キロ。…300キロ。…280キロ。260キロ。…240キロ。…220キロ。…200キロ。』
モニターが白く光った。
コンピューター:『爆破高度、165キロ。』
安心する一同。

自動的に打たれるタイプライター。
セブン:「偶然未来から飛来した地球の宇宙船が妨害したにもかかわらず、使命は全うされた。」
微笑むリンカーン。ソファーにいるアイシスが鳴く。
制服に戻っているスポック。「訂正願いましょう、結局我々は妨害しませんでした。1968年のこの日に地球で起こった事件の、歴史的証人となりえただけですよ。」
リンカーンは気づいた。アイシスがいたところに、黒い服を着た女性※41が座っている。
カーク:「歴史のテープには、この事件が明確に記録されているんだ。合衆国によって打ち上げられた水爆衛星が故障を起こし、地上 165キロで爆発している。」
セブン:「…歴史に記録されているように終わったわけだ。」
人間になったアイシスに近づくリンカーン。アイシスはネコの声を上げ続けている。
スポック:「付け加えますがこの事件によって、やがて地球では核兵器使用を禁止する国際協定が結ばれたと記録されています。」
リンカーンはセブンに詰め寄った。「ちょっと、誰なのあの人。」
セブン:「人ではなくて、私のネコだよ。」
「ネコ…。」
リンカーンが見ると、元の姿に戻っていた。足で身体を掻くアイシス。
セブン:「ほかに、どんなことが記録されている。」
カーク:「これ以上未来の歴史を教えるわけにはいきませんね?」
スポック:「ミスター・セブンとミス・リンカーンは未来の一部を覗いた。…貴重な体験をもったことになりますね。」
「ああ、そういうことになりそうだな? 2名転送。」
「ミスター・セブン、今後の御健闘を祈ります※42。」
「お元気で、ミス・リンカーン。転送。」
リンカーンを見るセブン。
2人は転送された。眉をしかめるリンカーン。

エンタープライズは、地球を離れた。


※39: exceiver

※40: 吹き替えでは「尉」。TOS では基本的に中尉は存在しないと考えられます

※41: (Victoria Vetri) エキストラ。一連の描写から、アイシスが流動体生物であるとする説もあります

※42: "Live long and prosper, Mr. Seven."

・感想など
第2シーズン最終話。いきなり任務としてタイムスリップしているという、後のシリーズも含めて驚くような導入から始まります。それもそのはず、本来のストーリーはエンタープライズとは関係なく、30分番組として考えられていたドラマのパイロット版のものでした (同じ "Assignment: Earth" というタイトルで、ゲリー・セブンがオメガ人と戦う)。セブンやロバータ役の俳優も同じで、TOS のスピンオフになる可能性もありましたが、結局ボツに。黒猫アイシスや堅物のコンピューターも含め、魅力的に思える設定が多いだけにちょっと残念ですね。その名残かもしれませんが、セブン役ランシングのゲストテロップは、シリーズ中唯一オープニングタイトルの直後に入っています。一部の設定は (これも元々パイロット版の) テレビ映画、「人造人間 (アンドロイド) クエスター」(1974) に引き継がれました。
その反動と言ってはなんですが、エンタープライズ側は見事に何の役にも立ってないのが思い切ってますね。むしろ邪魔したことで歴史通りに収まったと言えるんでしょう。全編が過去の世界で描かれているのは、今回と ENT "Storm Front, Part I" 「時間冷戦(前編)」のみです。


dot

previous第49話 "A Piece of the Action" 「宇宙犯罪シンジケート」 第58話 "The Paradise Syndrome" 「小惑星衝突コース接近中」previous
USS Kyushuトップ | 「未踏の地」エピソードガイド