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TOS エピソードガイド
第30話「惑星パイラスセブンの怪」
Catspaw

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・イントロダクション
※1※2惑星軌道上のエンタープライズ。
ウフーラ:「応答ありません。」
カーク:「続けたまえ。…どうもおかしい。連絡がまだ一度しかない。…スコットたちは 30分前に、定時連絡を入れてもいいはずだ。」
スポック:「連絡事項がないのでしょう。探知機によると我が上陸班以外の生命は存在していません。」
「しかし定時連絡を入れることは厳格なルールだ。…彼らも怠るはずはない。」
ウフーラ:「連絡が入りました。」
クルー:『ジャクソン※3から、エンタープライズへ。』
カーク:「エンタープライズ、カークだ。」 機関コンソールについているレズリー。
『1名転送願います。』
「1名? ジャクソン、スコットとスールーはどうした。」
『1名転送願います。』
「ジャクソン!」
ウフーラ:「明確にキャッチできなくなりました。」
「転送室に伝達して上陸班のメンバーを 1名転送準備。ドクター・マッコイを直ちに転送室へ出頭させたまえ。」 スポックと共にブリッジを出るカーク。
「はい。」※4

報告するミスター・カイル※5。「準備よし。」
カーク:「転送。」
マッコイも転送室に入る。「どうした。」
カーク:「事件らしい。」
クルーが転送されてくる。
カーク:「スコットたちはどうしたんだ。」
すると、ジャクソンはそのまま倒れてしまった。転送台を転がり落ちる。
脈を取ったマッコイ。「もう死んでる。」
声が響いた。『カーク船長、わしの声が聞こえるか。』 ジャクソンの開いた口から聞こえてくる。『お前の宇宙船には呪いがかかっている。速やかに立ち去れ。さもないと全員が死ぬぞ。』


※1: このエピソードは、第2シーズン・プレミアです (製作番号・日本放送順)

※2: ハヤカワ文庫のノヴェライズ版は、「宇宙大作戦 パイリスの魔術師」の表題作になります

※3: Jackson
(ジミー・ジョーンズ Jimmy Jones TOS第38話 "The Apple" 「死のパラダイス」のマロリー少尉 (Ensign Mallory)、第49話 "A Piece of the Action" 「宇宙犯罪シンジケート」の Mirt、第60話 "And the Children Shall Lead" 「悪魔の弟子達」などの技師 (Technician)、第66話 "Day of the Dove" 「宇宙の怪! 怒りを喰う!?」のクリンゴン人 (Klingon)、第72話 "The Mark of Gideon" 「長寿惑星ギデオンの苦悩」のギデオン人護衛 (Gideon Guard) 役) 声:野田圭一

※4: 第2シーズンから、ブリッジの機関コンソールにスコープ (ビューワー) が追加されています

※5: Mr. Kyle クレジットでは転送部長 Transporter Chief
(ジョン・ウィンストン John Winston) TOS第28話 "The City on the Edge of Forever" 「危険な過去への旅」以来の登場。声:嶋俊介

・本編
※6『航星日誌、宇宙暦 3018.2※7。部下のジャクソン※8が死亡したが、肉体的な原因は発見できない。スコットとスールーは依然として消息を絶ったままだ。このためアシスタントエンジニアのデサルにエンタープライズ※9の指揮を任せ、私達は惑星に降りることになった。消息不明の 2名を捜索し、ジャクソンが死亡した原因を探るためだ。』
惑星。
岩場に転送されるカーク、スポック、マッコイ。
カーク:「おかしいな、霧があるとはデータに出てなかった。」
トリコーダーを使うスポック。「雲の構成分子は認められません。…表面温度は変化なし。…この条件で霧が発生するのは異常だと思われます。…転送装置の記録によると、ジャクソンが転送されて戻ってきたのは丁度この位置からです。」
しゃがむカーク。地面に漂う霧の中を進んでいく。
カーク:「反応はあるか。」
スポック:「現在のところ、いや待って下さい。生命の反応が出ました。24度、マーク 7、距離 137.16メートル。複数の反応です。」
マッコイ:「スコットたちか?」
コミュニケーターを開くカーク。「カークからエンタープライズ。」
ウフーラ:『エンタープライズ、ウフーラ大尉※10です。』
「船の探知機にはどのような反応が出てる。」

ブリッジのデサル大尉※11。「ミスター・チェコフ※12。」
チェコフ:「現在、船長たち 3名の反応しか表れていません。※13…探知機の分析による限り、何の生命も存在しません。」
「…報告したまえ。」
ウフーラ:「船長、ほかの生命はキャッチしていません。」 ノイズが聞こえる。「船長、カーク船長!」

地表でも同じだ。
カーク:「大尉、聞こえるか!」
マッコイ:「…何だか知らんが段々濃くなってくるな。これが通信を妨害してるんじゃないのか?」
「わからん。しかし何か意味がありそうだな。船の探知機は我々しかキャッチしていないのに、我々はほかの生命をキャッチしてるんだ。反応はどうだ。」
スポック:「変化ありません。」
「…攻撃準備。」 フェイザーをセットするカークたち。
声が聞こえてきた。
マッコイ:「あれは。」
うめいているようにも聞こえる。
マッコイ:「何だろう、あの声は…」
カーク:「静かに!」
スポック:「見ろ。」
霧の中に、長髪の人物※14の姿が 3人見える。
その顔は醜く歪んでいる。「カーク船長…」「カーク船長…」「カーク船長…」
カーク:「何者だ。」
「帰れ…」「帰れ…」「帰れ…呪いを忘れるな。やがて風が吹き…」 「霧が晴れるだろう…」 「それまでに帰れ。さもなければお前たちは死ぬ…。」
笑う 3人。そのまま姿は消えた。
カーク:「スポック。…意見は。」
スポック:「趣味の悪いホステス※15ですね?」
「…もう少し、有益な意見を言いたまえ。」
「今のは幻影に過ぎません。」
「…やはりそうか。」
「しかしここから 100メートルほど進んだところに、実在する生命の反応が明確にキャッチできます。混沌として不安定ですが? 明確に反応しています。」
「よし、行ってみよう。」
突然風が強くなった。押し戻されるカークたち。
マッコイ:「ああいう幻影はもう二度と見たくないな? …カーク!」
岩場の奥に大きな建物が見える。その扉が、独りでに開き始めた。
調べるスポック。「生命の反応は明らかに、ここから表れてます。この中に存在するはずです。」
カーク:「…エンタープライズ。…エンタープライズ、応答しろ!」
マッコイ:「スコットたちもここで連絡を絶ったんじゃないのかな。」
「どう思う。…この建物のために通信が妨害されているんだろうか。」
スポック:「そうは、思われません。妨害されるようなものは我々の周囲に、何一つありませんね。」
「船の探知機にもその種のものはキャッチされてないな。」
「この中の生命の存在も、キャッチされていません。」
「何かの電磁スクリーン※16のようなものが張られていて、探知機の電波を妨害してるのかな。」
マッコイ:「だったら、スポックのも影響を受けるはずだよ。」
「そうかな? わからんぞ。」 向かうカークたち。

中世の城のような建物に近づいた 3人。指示するカーク。
扉のそばで構える。すると突然黒猫が鳴いた。
床にいて、※17こちらを見ている。しばらくすると離れていった。
マッコイ:「…3人の魔女。…そして城のような建物に黒いネコか。」
カーク:「もし行方不明や死亡などという事態が起きていなかったら、ハロウィン※18に引っかけたイタズラと思いたいところだ。」
スポック:「ハロウィンに引っかけた?」
「そう、ハロウィンだ。…君なら丁度…。いや、説明は後だ。まず中を見よう。」
「それが、順序ですね。」
「マッコイ、スポック。」

エンタープライズ。
チェコフ:「船長たちが消えてしまいました。…今まであった反応が、突然かき消すようになくなりました。」 ナビゲーターはハドレイだ。
デサル:「故障をチェックしろ。」
「どこにも故障はありません。」
ウフーラ:「ミスター・デサル。ミスター・スコットたちが消息を絶ったときも全く同じです。突然消えました。」
デサル:「消えてなくなるわけがない。多分電磁スクリーンか何かのために妨害されてるんだ。…ミスター・チェコフ、探知機を更にチェックしたまえ。援助が必要なら…」
チェコフ:「自分でできます、それくらいのことなら。」
「ウフーラ大尉は、船長たちとの交信回復に努力したまえ。」
ウフーラ:「わかりました。」
「船長たちは下にいる。…消えるはずがない。」


カークたちの後ろの扉が、突然音を立てて閉まった。
カーク:「この奥の方か。」
スポック:「反応ではそう出ています。」

廊下を走っていく黒猫。
あちこちに火が灯されているが、クモの巣も見える。
マッコイ:「ほこりにクモの巣。まさにハロウィン※19だ。」
黒猫は、3人の先を案内するように歩く。
黒猫が鳴いた。音が響き、姿勢を崩すカークたち。
落とし穴だ。黒猫は道を戻り、床に空いた穴を覗き込む。
下では 3人が意識を失っていた。離れる黒猫。

カークは暗い部屋※20で、壁に手をつながれている。スポックとマッコイも同じだ。
目を覚ますカーク。「…スポック。大丈夫か。」
スポック:「はい…。被害は、全く受けていません。」
マッコイは、同じ格好でつながれたままの白骨を目にした。
カーク:「マッコイ、君は※21。」
マッコイ:「ずいぶん手の込んだことをする相手だな。」
「…地下牢に、手かせ。断頭台※22、全て地球に存在したものだ。なぜだ!」
スポック:「想像できません。しかし、これらは全て幻影ではなく…」 手かせを引っ張る。「実物です。」
マッコイ:「地球と同じ過程を通って発展している惑星だろうか。」
カーク:「これは文化の発展とは関係ない。これは、悪夢だ。人類のな。」
スポック:「地球の人間に恐怖感を与えるには何が効果的であるかを知っていて、準備したようですね。」
「怪談だよ。妖怪や、悪魔に、地下牢に。」
足音が響いた。扉が開く。
やってきたのは、フェイザーを持ったスコットとスールー※23だった。
微笑むカーク。2人は無表情だ。
カークは笑った。「スコッティ、スールー。」
笑みが消えるマッコイ。
カーク:「…スコッティ。フェイザーをしまえ。…スコッティ!」


※6: 第2シーズンからオープニング映像に変更があり、デフォレスト・ケリーのクレジットも含まれるようになりました。「ア〜ア〜」というソプラノ声も追加されています。ただし現在使われている旧国内オンエア版 (2006年のニュープリント版を含む) では、第1シーズンでも第2シーズンと同じ素材を使用しています。また、エピソードのサブタイトルやエンドクレジットでも、タイトルなどと同じ字体が使われるようになりました

※7: 吹き替えでは「0402.3002」

※8: 原語では「ジャクソン乗組員」と呼んでいますが、実際は大尉の階級章をつけていました

※9: 吹き替えでは「エンタープライズ

※10: 吹き替えでは「尉」。TOS では基本的に中尉は存在しないと考えられます。第1シーズンでは「尉」でしたが、第2シーズンから吹き替えが変更されたようです

※11: Lieutenant DeSalle
(マイク・バリア Mike Barrier) TOS第25話 "This Side of Paradise" 「死の楽園」以来の登場。声はカイル役の嶋さんが兼任、前回は城山堅。DVD 補完では星野充昭、TNG ラフォージ、ジャックなど

※12: パヴェル・アンドレイヴィッチ・チェコフ Pavel Andreievich Chekov
(ウォルター・ケーニッグ Walter Koenig ドラマ「バビロン5」(1994〜98) にサイコップのベスター役で出演) 初登場、第2シーズンからのレギュラー。声:井上弦太郎 (太郎という表記もあり)、DVD 補完では樫井笙人、VOY ジョナスなど

※13: 第2シーズンから、ブリッジの科学コンソールに変更が加えられています。黒色だったのが灰色になり、横にダイヤルが追加されています

※14: 魔女その1 First Witch
(ローディー・コーガン Rhodie Cogan 2000年4月に死去)

魔女その2 Second Witch
(ゲール・ボニー Gail Bonney 1984年12月に死去)

魔女その3 Third Witch
(メアリエスター・デンヴァー Maryesther Denver 1980年6月に死去)

※15: 原語では「詩」。これは 3人の魔女が出てくることから、シェイクスピアの「マクベス」を意識した可能性があります

※16: 原語ではフォースフィールド

※17: TOS の旧国内オンエア分では、カット部分が存在しています。DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります (CS版との比較)。LD では基本的に、その部分だけ字幕収録です

※18: 原語では "trick or treat"。ハロウィンの決まり文句で、「お菓子をくれないとイタズラするよ」

※19: 吹き替えでは「万聖節」。ハロウィンは万聖節の前夜のため、厳密には異なります

※20: TOS第22話 "The Return of the Archons" 「ベータ・スリーの独裁者」の牢屋を再利用

※21: 原語ではカークはいつものように「ボーンズ (=骨)」と呼びかけ、白骨を目にしてすぐに「ドク」と言い直しています。なお白骨には頭のところに筋が入っています

※22: 原語では「鉄の処女」。拷問道具

※23: 今回スールーはセリフなし

観察するマッコイ。「薬を飲まされてるんだ。目を見ろ。…瞬きをしないぞ。」
スポック:「転送されてきたジャクソンも、確かしませんでしたね。」
カーク:「この 2人は生きている。スコッティ、聞こえるか! …スールー、私を知ってるな?」
うなずくスールー。
カーク:「何をされた!」
首を振るスールー。手に持っている物を見せる。
マッコイ:「おい、鍵を外してくれそうだ。」
スールーはマッコイの手かせを外した。続いてカークとスポックもだ。
スコットの合図を受け、外へ向かう 3人。
カークたちは素早くスコットたちに抵抗しようとする。

すると突然場所が変わった。5人の位置はそのままだ。
声が聞こえた。「やめろ!」 髪のない男が座っている。
そこは綺麗な一室で、盾や鎧などが飾られている。
壇上の玉座※24に座る男に話すカーク。「何者か知らんが、幻影を作り出す才能は十分に見せてもらった。なぜこんなことをする。私の部下に何をした。」
男:「諸君は何事にも抵抗するという、悪い趣味を身につけたんだね。…全ての物体を調査し全てに疑いをもつ。抵抗なく受け入れたらどうなんだ?」
「部下が 1名死亡しここにいる 2名が洗脳されたのに、抵抗なんか受け入れられるか!」
「洗脳されたのではなく単にコントロールされているだけだ、カーク船長。…もちろん君を知っとるよ、全員な※25。なあそうだったな。」 男の足の上にいる黒猫が鳴いた。
「何者だ。…なぜここへ連れてきた。」
「名前はコロブ※26だ。…連れてきた点については、諸君が自らの意思で来たのではなかったかな。帰れと警告したはずだ。」
「なぜだ。…何が狙いだ、この手の込んだバカげたこけおどしは。」
「こけおどし?」 鳴き始めた黒猫をなで、笑うコロブ。「いやいや、そういうつもりでやったんじゃないんだ…。」
スポック:「数年前に宇宙探検隊がこの太陽系を発見したが、パイラス7※27 には生命は存在しなかったはずだ。」
「我々が当初からこの惑星に生存していたとは限らん。」 黒猫を見るコロブ。「おお、ホストとしてもっと客を歓待しなくてはならんそうだよ。では諸君、ささやかながら味見をしていただこうかな。」
コロブについていく黒猫。
マッコイ:「あのネコは。」
カーク:「何かある。」
スポック:「うん、魔法使いとその仲間に関して地球には古い伝説がありますが。」
マッコイ:「伝説?」
「悪魔が動物に姿を変えて魔法使いに仕えるそうですよ。」
カーク:「迷信だ。」
「私が伝説を作ったのではありません。伝えたまでです。」
テーブルのそばに立つコロブ。「君はみんなと違っとるようだね、ミスター・スポック。船長たちとは考え方も異なり、そのロジックのパターンに色がない。言わば、白と黒だけだ。…いま自分の周りにあるもの、全て疑ってるな?」 壁にはクマの首の剥製が飾られている。
マッコイ:「私にも現実とは思えん。」
「しかしわしは現に存在するんだ※28。まあその話は次の機会にして。諸君、大いに歓迎しようではないか。」
コロブが杖を振ると先端の玉が光り、一瞬のうちにテーブルの上は料理であふれた。
スポック:「見事だ。」
コロブ:「座っていただこう。」※29
マッコイ:「…いま食べたくない。」
「不作法だぞ。」
席につく 3人。
カーク:「用件があるなら早く言いたまえ。」
コロブ:「まあまあ、今は御馳走を食べて楽しい時を過ごしてもらいたい。ドクター、ワインをどうぞ。お気に召すはずだ。」
「お前の素性と目的を告げなければ、我々としては協力できんな。」
「これで協力を惜しまぬようにならんかな。」
コロブは杖を振り、皿の上に山と積まれた宝石を出した。3人ともで、ほかの料理は消えている。
一つを手に取るマッコイ。「本物そっくりだ。」
コロブ:「間違いなく本物だ。ダイヤモンド、ルビー、エメラルド、サファイヤ。…諸君が何よりも憧れ大事に扱う宝石類だよ。…それを諸君に一皿ずつ進呈しよう。…このまま何も聞かずに帰るなら。」
カーク:「こんな物が欲しければ、船の中で何トンでも作れる。何の魅力もないな※30。」
「魅力がない? …おかしいな、わしが読んだところ…」
「何を読んだのかは知らんが間違ってる! …私達は帰りたいときに帰る。」
「諸君の行為は、予測が不可能だ。…ふーん。わしの計算が少し甘かったようだが、とにかく諸君はテストにパスした。」
マッコイ:「テスト?」
「そうだ。今も述べたようにわしたちの分析が多少間違ってたらしいが、とにかく諸君が我々の警告を無視して仲間を助けに来たのは友情と誠意の証だ。…勇気をテストしても諸君は決して動じなかった。さらに今の食事や宝石に関するテストで、諸君が買収に応じないこともわかった。…多くの面で諸君は尊敬に、値するな?」 黒猫を見るコロブ。「ん? ああ、そうだな行きなさい。」
部屋を出て行く黒猫。するとすぐ後に、黒いドレスを着た女性が歩いてきた。
コロブ:「諸君、わしの同僚…シルヴィア※31だ。」
シルヴィア:「ドクター・マッコイ、ミスター・スポック、そしてカーク船長ね? 私達はスコットたちに何をしたのか。…答えを言うならあなたたちのような生物の心を探るのは非常に簡単だってことよ。」
スポック:「心を探る。…催眠術か。」
「あなたたちは複雑な生物だと思ってるでしょうけど、それは思い上がりよ? …いろいろなレベルからあなたたちの心へ入り込めるわ。あなたたちには自分を防ぎきれないのよ。…つまり人間の心など、隙だらけってこと。」
黒猫がしていたのと、同じ形のペンダントを見つめるマッコイ。
スポック:「テレパシーか。」
シルヴィア:「正確にはちょっと違うわね? テレパシーには相手をコントロールする力がないけど、私はあなたたちの部下を思い通りに動かせるわ。」
カークはスコットにつかみかかり、フェイザーを奪った。
コロブ:「船長!」
カーク:「動くな!」 スコットを突き飛ばし、フェイザーをスポックに渡す。「見張れ。我々の武器と装備を全て返してもらおう。話はそれからだ。」
シルヴィア:「その武器を早く捨てなさい! …船長、あなたはそんなに私達の威力を見せてほしいの?」
シルヴィアは手に持っている物を見せた。ペンダントのようだが、先端はエンタープライズそっくりの模型※32になっている。「あなたたちの世界では、これは交感魔術と呼ばれているの。…例の船へ戻った部下ジャクソンは、なぜ死んだんでしょ。私が彼を心に描き、私の心の中にジャクソンという人間を造り上げたのよ。…そして私がその心の中のジャクソンを殺したとき、彼は死んだの。」
カーク:「…心で、人間は殺せない。」
「…通信機をどうぞ。」
テーブルにコミュニケーターが現れた。
シルヴィア:「さあ。船に連絡して?」
コロブ:「やめろ。よせ、シルヴィア!」
シルヴィアはペンダントのエンタープライズを、そばのロウソクの火に近づける。
カーク:「カークからエンタープライズへ。どうぞ。」

エンタープライズ。
警報が鳴る廊下※33

カーク:『エンタープライズ、カーク船長だ。応答しろ!』
ウフーラ:「船長、無事ですか、どこにいるんです。ドクターたちも一緒ですか。」

カーク:「それよりそちらに何か異常はあるか。」

汗をかいているデサル。「温度が急に、昇り始めました。何度上がった!」
チェコフ:「この 30秒間に、60度※34上昇しました。…今にも燃えそうです。」


※24: TOS第76話 "Requiem for Methuselah" 「6200歳の恋」で、フリント城の椅子として再利用

※25: ここでカークは名前を呼ばれて驚いたような素振りを見せますが、船でジャクソンから聞こえてきた声や、3人の魔女は既に使っていました

※26: Korob
(テオ・マーカス Theo Marcuse ドラマ「ミステリーゾーン」(1962)、「原子力潜水艦シービュー号」(64)、タイムトンネル「悪魔島」、「インベーダー」(67) に出演。1967年11月に自動車事故で死去) 声:島宇志夫、DVD 補完では沢木郁也、TNG 旅人など

※27: パイラス7号星 Pyris VII
TNG第25話 "Conspiracy" 「恐るべき陰謀」での宇宙艦隊本部の星図内にも、Pyrix VII として載っているそうですが画面上では読み取れません

※28: 原語では、マッコイ「スポックはハロウィン (trick-or-treat) を知らん」 (よってカークとスポックがマッコイを見る) コロブ「その言葉の意味はわからないな」

※29: ここだけ、先ほどつけたはずのロウソクの火が消えています (料理も?)

※30: TOS第19話 "Arena" 「怪獣ゴーンとの対決」では、大量のダイヤを「莫大な財産」と表現しています

※31: Sylvia
(アントワネット・バウアー Antoinette Bower ドラマ「スリラー」(1961〜62) に出演) 声:北浜晴子 (DVD 補完も継続)

※32: このミニチュアは、ジーン・ロッデンベリーによってスミソニアン国立航空宇宙博物館に寄付されました

※33: TOS第2話 "Where No Man Has Gone Before" 「光るめだま」の映像を使い回し。そのため、初期のタートルネック型制服が登場する最後のシーン

※34: 吹き替えでは「30度」

模型を見つめるカーク。「デサル。エネルギーを熱分散装置に直結しろ。」
デサル:『やってみましたが何の効果もありません。蒸し焼き寸前です。』
「わかった、こちらで何とかする。以上。」 カークはシルヴィアの手をつかみ、模型を奪った。
フェイザーと一緒にテーブルの上に置く。「負けだ。」
笑うシルヴィア。「もう心配いらないわ。船は大丈夫。」

報告するチェコフ。「温度が急激に下がり始めました。ほとんど正常ですね。」
デサル:「船長にもう一度連絡を取れ。」
ウフーラ:「エンタープライズから船長へ、応答願います。」 雑音しか返ってこない。「エンタープライズから船長へ、応答願います。…また連絡不可能な状態です。」

話すコロブ。「船長、我々の技術は見せた。次は君たちの番だ。」
カーク:「言ってることがわからんな。さっきは魔術だと言ってたのに、今度は技術か。…一体どっちが本当なんだ。」
「君はどう思う?」
「わからんね。…君たちにとっては、心は道具に過ぎんのか? 念力※35を使って、物の形を変えるなんて。」
「そうだ、我々は物体の分子構造を変え…」
シルヴィア:「コロブ、黙りなさい!」
シルヴィアを見るコロブ※36
マッコイ:「スコットたちは我々をおびき寄せるための餌※37だったのか。なぜ我々が来ると?」
コロブ:「彼らがそう信じてた、だからさ。」
シルヴィア:「そこまでよ? あなたたちは質問に答えればいいの。」
カーク:「あいにくと船と連絡が取れたんでね、すぐに捜索隊が駆けつけるさ。」
コロブ:「それはどうかな。…無理だと思うが?」
杖を使うコロブ。エンタープライズの模型が、四角い透明な容器に覆われた。
ぶら下げるカーク。
コロブ:「これで捜索隊は来られないぞ、カーク船長。…君たちの船を絶対に破れないスクリーンで包んだ。軌道は周回できるが、クルーは囚われの身同然だ。」

チェコフ:「突然、船がスクリーンのようなものに包まれました。こんな不思議な現象は初めてです。どこからともなくスクリーンが現れ、船を包むなんて。」


シルヴィア:「私達に協力した方がよさそうね? その気になれば知りたい情報をあなたたちの頭脳から抜き取るのは簡単だけど、大変な苦痛が伴うのよ。困るんじゃないかしら、廃人になったら。」
カーク:「協力する気はない。」
コロブ:「地下牢へ連れて行け。」 スコットにフェイザーを渡す。
一度シルヴィアの前に立ち、従うカーク※38
シルヴィア:「待って。…ドクターは残りなさい、次は船長だから楽しみにしててちょうだい? …2人を連れて行って。」
マッコイだけを残し、扉は閉められた。

尋ねるデサル。「周囲に電磁スクリーンを張られたな。」
チェコフ:「ええ、分析はできませんが※39。」
「しかし、あることは事実なんだ。何とか破る方法を考えよう。エンジニアリング。全エネルギーを船体外部に放出する態勢を取れ。同時に補助エンジンで最大限の熱を発生できるように準備しろ。無駄かもしれんが、宇宙艦隊パトロール艦の名に恥じぬよう全力を尽くそう。」

カークは再び地下牢につながれている。「どのくらい経った。」
スポック:「22分、17秒です。」
「そうか。マッコイをどうする気だろ。」
「答えは間もなくわかるでしょ。船長。…ここで我々が見たものは、あなたのような地球人※40にとっては見慣れたものだと思われますが。」
「と同時に、驚いたね? 理性に欠けてる。」
「その通り。心理学の分野で言えば潜在意識下にある、伝説とでも言いますか。…宇宙の神話、民話。」
「妖怪や魔女のことか。」
「地下牢に古城にそして黒猫。…全て意識と幻影の中間の世界に属するものです。」
「…そこから意識に食い込もうとした。」
「そして失敗しました。…潜在意識にしか触れられなかったんです。…コロブはかなり当惑していたようですよ。…彼が用意した環境に対する船長の反応を見て。」
「私が素直に受け入れると思ってたんだろ。それに彼らは、この惑星固有の生物ではない。」
「人類の科学に関する知識のなさも、彼らの大きな特徴ですね。ほかの異星人たちはかなり詳しいのに。」
「彼らにとって我々は、初めて出会った『生物』といったところらしいな。我々が単に生物なら…」 白骨を見るカーク。「彼らはどんな姿だろう。」
「我々の目からも、新しい生物でしょう。出会ったことのない。」
「その説には賛成だ。敵意をもった宇宙の生物が、我々の世界に強い興味を示しているのは歓迎できんな。…友好的な平和の使者とは思えん。…彼らを、追い返すんだ。永久に。」 手かせを引っ張るカーク。「しかしこれじゃな。」

「…どうすれば脱出できるか現在は考えつきません。」
扉が開き、マッコイたちがやってきた。フェイザーを持ったマッコイもスコットたちと同様、無表情になっている。
カーク:「ドクター。君もか。」
カークを解放するスールー。
カーク:「マッコイ。」
マッコイはカークを乱暴に引っ張った。

シルヴィアに詰め寄るコロブ。「我々の任務を忘れたのか、お前は。」
シルヴィア:「忘れてないわよ。でもあなたみたいな操り人形じゃないの…」
「裏切り者だ。」
「あなたは大バカ者よ。」 自分の姿を見るシルヴィア。「こういうものは何一つないのよ、私達の世界に。触って感じて享楽を身をもって体験できるわ。素敵じゃない。私はこれを捨てるのは嫌よ。」
「長老たち※41に対する義務を忘れたか。」
「彼らにはこの感覚がわからないのよ。全く新しい世界よ?」
「残酷だ、標本を虐待するのは。」
「それも初めて知った感覚よ、面白いわ。刺激的で。」
「間違ってる! お前は我々の約束事を全て破ってる!」
「私は自分の好きなように生きるのよ、あなたは間抜けな臆病者よ。」
「わしには力があるぞ?」
「でもそれを使うのは怖いんでしょ。空威張りしないで欲しいわ。…いつでも相手になるわよ? あなたなんていつでも叩き潰してみせるわ。…それもまた面白いかもしれないわね? …あまりいい気にならないでよ。」
カークが連れられてきた。
シルヴィア:「ああ、船長。…話し合いの時間よ? …コロブ、席を外して。みんなを連れてゆきなさい。」
エンタープライズの模型とコミュニケーターを手にするコロブ。「話は終わったわけではないぞ。」
シルヴィア:「あなたには用はないの、お爺さん。」
出ていくコロブたち。
カーク:「何の用だ。魔法の杖で、私の心も傷つけたいのか。」
シルヴィア:「大丈夫、傷というほどのものじゃないわ。知識と意思をもらうだけ。」
「それが『傷』ではないのか。」
「ええ、違うわ?」
「君は、同情を知らないのか。女なら、誰でも知ってるはずだ。君は女じゃないらしい…」
「訂正してもらいたいわね。今の私は立派な女よ。私は感覚のない世界から来たの。…この新しい世界が気に入ったわ? 刺激的よ、もっと欲しい。」
「我々が必要なのは、なぜだ。」
「私達にない知識をもっているから。私達はその知識を求めてるの。…あなたは力に興味がない?」
窓の外から見つめるコロブ。
シルヴィア:「力を欲しくない?」
カークはシルヴィアの肩に手を触れた。そして首、あご。「コロブはどうなる?」
シルヴィア:「あれはバカよ、彼なんか必要ない。…でもあなたは、あなたはなぜか違うの。あなたを殺そうと思ってもどうしてもできないの。」
離れるカーク。「ドクターのように私の心を奪ったら?」
シルヴィア:「いや。あなたにはしたくないの。あなたと…」 近づく。「一体になりたいの。…心の底で触れあいたいの。そうすればあなたは宇宙の秘密も知り偉大な力を手にできるわ、あなたの欲しいものは何でも私があげる。」
「魅力のある話だ。」 シルヴィアを後ろから抱くカーク。「その結果はどうなるんだ?」
「全ては私達二人のもの。誰かと全てを分かち合うなんて、考えたこともなかったわ。なぜあなただけ特別なの?」
「私にとっても君は特別。素晴らしい女性だ。」 カークは口づけした。
見つめるコロブ。
シルヴィア:「今の私がそんなに素晴らしい? …ほかの女にもなれるのよ。」 姿が変わった。手を広げる。
微笑むカーク。
さらに別の姿になる。「どう、こちらの方がいい? それとも、やはり元の私がいい?」 最初の姿に戻るシルヴィア。
カーク:「みんな美人で、そう簡単に選べないな。」 またキスをした。
離れるコロブ。
いちゃつきながら話すカーク。「君の世界には、美人は?」
シルヴィア:「いないわ。」
「君の仲間は、どんな人たちなんだ?」
「どんなって、トランスミューター※42がないと風に流される羽根みたい。」
「トランスミューター?」
「そう。そのうちに教えてあげるわ、今はダメ。」
「ものを作り出す、道具か何か?」
「それはただ形を作るだけ。心はあなたが教えてくれる。」
「もう自分の惑星に戻るつもりはないのか?」
「ここであなたと暮らすの、あなたと共に刺激と興奮にうずまって過ごすのよ。」 シルヴィアは口を離した。「…あなた私を利用してるのね! …私を抱いていてもあなたの心には炎が燃えてないわ! 私をだまそうとしたのね?」 ペンダントをつかむ。「読めるのよ、私にはあなたの心が。私を利用してるのよ!」
「当然だ! お前も私達を利用してるんだ。」
マッコイたちが戻ってきた。
シルヴィア:「みんな滅ぼしてやるわ。あなたも、部下も、宇宙船も…あなたの世界も!」
出ていくカーク。

エンタープライズ。
ウフーラ:「変化は起こりましたか?」
デサル:「ほんのわずかだが。」
チェコフ:「やはり何かの、電磁スクリーンのように思われます。一挙にとはいきませんが、少しずつなら破れると思います。」
「そのまま続けろ。反応炉※43の全エネルギーを中継ステーションに集積させるんだ。相手は少しずつ弱くなってきた。」

地下牢に入るコロブ。すると、カークを解放した。「ボトルシップをケースの中から出してやったぞ。これで周りの電磁スクリーンは消えた。」 続いてスポック。「君たちを逃がすのはわしの本意ではないが仕方がない。…さあ。」 装備を返す。「シルヴィアに感づかれる前に早く逃げろ。」
カーク:「部下を残しては行けん。」
「彼らはもうお前の部下ではない。シルヴィアの道具だ。もうコントロールできんのだよ、わしには。…何とかしなくては。お前たちに接して心を知り、刺激と興奮の世界に魅入られて狂って※44しまったのだ。…恐ろしいことだよ。これで一時中止だ。お前たちの銀河系に入る計画は。」
スポック:「船で来たのか。」
「トランスミューターを使ってだ。」
カーク:「そうだ、彼女もそれを言ってた。」
「さあ、説明してる暇はない。彼女に皆殺しにされるぞ? 今ならまだ逃げられる。さあ、急いで。」 外をうかがうコロブ。「早く。」

3人が進んでいくと、ネコの鳴き声が聞こえた。廊下の先に、巨大な影が見える。


※35: 原語での「テレキネシス」のアクセントが変だという指摘があります (本来はキではなくネにある)

※36: ここで挿入されるアップの映像は、コロブの後ろにテーブルがあるので本来は正反対です

※37: 原語では「ネコの足 (cat's-paw)」と言っており、「だしに使われる人」という意味があります。原題の由来であり、もちろん単に黒猫を指したダブルミーニングでもあります

※38: スコットは本来カーク、スポック、マッコイを外に出す必要がありますが、なぜかマッコイは通過してしまいます (まるで最初から残ることを知っていたかのように)

※39: 原語では、デサル「波長の分析は、ミスター・チェコフ」 チェコフ「分析はできません」。前のカットに関連して、訳が変更されたものと思われます

※40: 通常の human ではなく、Earthman と呼称

※41: Old Ones

※42: transmuter
transmute=変形する

※43: 吹き替えでは「原子炉」

※44: DVD では前の補完と一緒に吹き替えし直され、「おかしくなって」と修正されています

影を見るスポック。「またネコだ※45。」
カーク:「なぜだろう。」
「伝説ですよ。ネコは最も残忍で恐ろしい動物だと言われてました。それを知っているのでネコになったんでしょう。」
コロブ:「わしが何とかしてみる。」
カーク:「私達に任せろ。」 フェイザーを見る。「エネルギーがない。…彼女が抜いたんだ。そうとわかればスコットたちを恐れることはなかったのに。…どうするんだ。」
「わしが止める。わしの仲間なんだ。さあ、急いで。」 カークたちを奥に誘導するコロブ。
廊下いっぱいほども大きさのある黒猫が近づいてきた。
逃げるコロブ。近づく黒猫のシルヴィア。

3人は地下牢に戻ってきた。扉を閉めるコロブ。
天井を見るスポック。落とし穴の跡が見える。
カーク:「出られそうか。」
スポック:「はい、協力すれば。」
「やろう。」
スポックを持ち上げるカーク。コロブは外を確認する。
向かってくる黒猫。スポックは上に上がった。
コロブ:「駄目だ!」
吠える黒猫シルヴィア。
コロブ:「戻れ!」
地下牢が揺れ出した。
コロブ:「来るな、戻れ。やめろ!」
テーブルを穴の下に移動させるカーク。「ドアを壊されるぞ!」
コロブ:「やめろ、戻れ!」 扉が外れ、コロブはその下敷きになった※46
黒猫の顔が覗いている。
カークは近づき、扉をどけようとする。
コロブ:「逃げろ、早く!」
コロブは意識を失った。吠え続けるシルヴィア。
カークはコロブの杖を拾った。テーブルの上に立つ。
スポック:「船長、早く!」
カーク:「コロブはこれを大事そうに扱ってた。トランスミューターとは何だろう。」
カークが放り投げた杖を、受け取るスポック。「船長もう少し、敏速に御願いします。」 ジャンプしたカークを引き上げた。
スポック:「船長!」
棍棒を持ったマッコイが襲いかかってきた。スコットもスポックに殴りかかる。
カークはマッコイを殴り、意識を失わせた。「ドクター、ドクター!」
廊下の先にスールーが立って、空手のような構えをしている。手を挙げるカークだが、スールーは襲ってきた。
スポックはスコットにヴァルカン首つかみをした。
スールーの蹴りをかわすカーク。スールーはバランスを失い、頭を打って倒れた。
マッコイが起き上がろうとしている。
スポック:「船長!」
気づいたカークはマッコイの棍棒を蹴り落とし、殴った。
カーク:「…全員そろったな?」
スポック:「人数だけはです。現実には敵のロボットですが。」
ネコの鳴き声が響く。たいまつが消え、影が見えてきた。
スポック:「これは非常に好ましくない事態ですねえ。フェイザーガンにエネルギーさえあれば。」
カーク:「…いいものがある。」 引き返し、コロブの杖を持ってくる。
影に近づく。「シルヴィア。…トランスミューターを手に入れた、私のものだ。」
ネコの影が引き返していき、見えなくなった。周りを見るカーク。
シルヴィアの声。「あなただけのことはあるわ。」 目の前に人間の姿となって立っていた。「想像以上の人間ね。…利口で、勇気にあふれ、ハンサムで。」
スポック:「杖に触られないように注意して下さい。」
スポックを見るシルヴィア。ペンダントに触れる。
突然、カークとシルヴィアは消えた。
スポック:「船長!」

カークは広間にいた。「下らん遊びはいい加減にしたまえ。」
シルヴィア:「遊びじゃないわ、それを返して。」
「そうか、やはり私の思ったとおりだ。これがお前たちのエネルギー源のトランスミューターだな?」
「いいえ、いいえ、エネルギー源じゃないわ。それは単にものを作り出す製造機。命令を下すのは力よ。あなたにはそれを使えないわ。」
「だからどうしろと言うんだ。」
「今からでも遅くないわ、カーク船長? 私と一緒に暮らすのよ、私に教えてちょうだい。」
「何をだ。お前たちにないものを私から奪うつもりか?」
「人間の夢と野望があれば素晴らしい世界を作れるのよ。トランスミューターを返して。」
「嫌だ。」
「あなたはバカよ。人間の望むものは全てあなたの手に入るのになぜそれを拒むの。私を見て? 私は女よ、どんな女にでもなれるわ。」 すがりつくシルヴィア。
カークは手を離した。「姿は似ていてもお前は女ではない。私の部下を苦しめて心を奪い去り、愛を望んで苦痛を与える残酷な生物だ。」
シルヴィアはフェイザーを向けた。「そうじゃないわ。武器でも何でも返してあげる、だからそれをちょうだい。…早く返しなさい!」
カークは杖をテーブルにぶつけた。先端の玉が割れる。
爆発と共に辺りは一面、白くなった。

カークは岩場に立っていた。フェイザーを持っている。
近づいてくるスポック。
マッコイもいる。「どうなったんだ。」 スコットとスールーも一緒だ。
カーク:「一言では説明できんな。」
スコット※47:「全部消えましたね。」
「全部じゃない。」
変な音が聞こえる。すぐそばの地面で、2匹の奇妙な小動物※48が動いていた。
見つめる一同。片方の生命体は倒れた。
カーク:「あれがシルヴィアたちの本当の姿だ。…全て幻影だったんだ。…彼らの姿も城も、トランスミューターの力でそう見えていただけだ。」
スポック:「素晴らしい※45。我が銀河系にはいない未知の生物です。もし飼育して研究できたら…」
だが、動いていた方の生物も身体を横たえた。
マッコイ:「手遅れだ。…全てのことが、幻影で終わった。」
煙を上げる 2匹の生命体。
カーク:「一つ違う。…ジャクソンは死んだ。…カークからエンタープライズ。どうぞ?」
ウフーラ:『こちらエンタープライズ。』
「5名転送。」
生命体の残骸は、黒くなっている。

パイラス7号星を離れるエンタープライズ。


※45: "Fascinating."

※46: ドアはコロブの背中に倒れてきていますが、直後にコロブは仰向けになっています

※47: スコット役の声優は第2シーズンから、小林修さんに代わり内海賢二さんになりました (DVD 補完も継続)。ただし旧TMP〜ST3、新TMP〜STG、DS9 では初代の小林さんが演じています。内海さんは新旧ST3クルーグも担当

※48: カニのはさみや、パイプ用の掃除道具が使われています。発する音は TOS第8話 "Charlie X" 「セイサス星から来た少年」で登場した、爬虫類の声を再利用。この生命体は、DS9第4話 "A Man Alone" 「宇宙ステーション殺人事件」などでケイコの教室のパネルに描かれています

・感想など
第2シーズンで最初に製作されたエピソード。日本では幸いなことに未だに馴染みの薄い、ハロウィンに合わせて放送されました (リマスター版も)。内容的にも荒唐無稽というか、ストーリーの流れ自体が奇妙ですね。綺麗に跡が残っている落とし穴、大きなネコを表現するためのミニチュアの廊下、空手?で襲っときながら勝手に頭を打つスールーなど、TAS 的な「意図しない笑い」を楽しむのも一興かと。
まだおぼっちゃん風のチェコフ少尉がメンバーに加わり、早くも独自のキャラを描こうという意図がくみ取れます。吹き替えとしては、先輩格に当たる海外ドラマ「奥さまは魔女」のサマンサ役が起用されているのが面白いところです。人気順は 77位と、これまた低いですね…。


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