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エンタープライズ エピソードガイド
第14話「名誉に生きる者」
Sleeping Dogs

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・イントロダクション
フェイズ銃を開け、部品をセットする。
壁に円形の機械を取り付け、起動する。空中に球状の映像が現れた。
リード:「射撃時間は 10秒だ。いいか。」
サトウ:「はい。」
「始め。」
空中を移動するターゲットを撃っていくサトウ。
リードはパッドでチェックする。「やめ。」
消滅するターゲット。
サトウ:「どうです?」
リード:「命中率はまだ 50%以下だなあ。もしも実弾だったら、隔壁を吹き飛ばしてるぞ?」
「EM-33※1 では苦労しなかったのに。」
「…これは全く新しい方式だ。EM-33 と違って、粒子のずれを補正する必要がない。ただ的に、真っ直ぐ向ければいいんだ。あと、肩の力を抜くことだ。狙いが定まりにくいからな。」
ため息をつくサトウ。リードは咳をする。
サトウ:「大丈夫ですか?」
リード:「何でもない。すぐ慣れるよ。今度は 20秒でいこう。」
低い音が響いた。
サトウ:「当分ワープ航行のはずですよねえ?」
リード:「ガス状巨星に向かっている。クラス9 だ。」
「訓練中止ですね。」
「また明日やろう。」


※1: EM-33
EM (電磁) 銃の種別。ENT第3話 "Fight or Flight" 「死のファースト・コンタクト」より。吹き替えでは「M-33」

・本編
探査機がガス巨星へ向かっていく。
トゥポル:「探査機、大気圏に入りました。」
乱れた映像が映っている。
アーチャー:「クリアにできるか。」
サトウ:「今やってます。電磁波の干渉が激しくて、何だか妙な…音がします。」
トゥポル:「強力な磁場があると、波形が乱れることが多いようですが。」
アーチャー:「聞いてみよう。」
奇妙な音がブリッジに流れる。人が叫んでいるようにも聞こえる。
メイウェザー:「これはサイレン※2だ! 子供の頃、そう呼んでたんです。ガス状巨星のそばを通ると、親父がスピーカーに流してた。」 笑う。「夢でよくうなされましたよ。」
音声を切るサトウ。
トゥポル:「メイウェザー少尉に悪夢を見せる以外、役に立ちそうなことはないようですが。ガス状巨星は太陽系にも 4つあります。」
アーチャー:「クラス9 のはないぞう? 見てみる価値はあるんじゃないか?」
コンピューターに反応が出た。
トゥポル:「大気圏下層に変則的なパワー特性を感知。生体反応もです。」
アーチャー:「…探査機を近づけろ。」
メイウェザー:「了解。」
スクリーンに見えてきたのは、一隻の宇宙船だった。

ティッシュを取り、クシャミをするリード。「…光速より速く飛べる時代なのに、風邪の治療法が見つかってないなんて。」
フロックス:「人間の風邪は、軽い方ですよ。以前に診た患者は確か、カマラザイト風邪※3で…あまりにクシャミがひどくて、松果体まで飛び出すかと思いましたよ。」
「でも、密閉状態の船の中にいて、風邪を引くなんて一体どういうことだ。」
「どこかにウィルスが付着していたか、密閉容器の中にでも潜んでいたのかもしれませんねえ。」
「冷却剤の容器を開けたけど?」
「では、冷却剤を詰めた人物が保菌者ですね。」
またクシャミするリード。「でも宇宙ドックで積み込んだのは、5ヶ月前だぞう?」
フロックス:「ウィルスの生命力を甘くみていますねえ? 休眠状態のままで、何ヶ月も生き延びることができるんです。うーん、これで楽になりますよう?」 ハイポスプレーを打つ。「でも、睡眠を取って休まないと、治りませんよ?」
「あーあ、しばらくは無理だ。あの、難破船の調査チームに入るように言われてる。」
「ああ、宇宙服を着てれば移す心配はない。ただ、ヘルメットでクシャミはねえ。」
リードはクシャミが出そうになるが、出なかった。「ああ…しないようにするよ。」

アーチャーはドアチャイムに応えた。「入れ。」
サトウが入る。
アーチャー:「ホシ。」
サトウ:「よろしいですか?」
「ああ、どうした。」
「…難破船です。あの異星人船にどんな生命体がいるか、まだ見当もつきません。それに、かなりの干渉波があります。調査班に通訳がいるんじゃないですか?」
「翻訳機があるし、通信も常時つないでおく。」
「コントロールパネルやハッチの表示がわからなかったら? それでは調査どころじゃないと思いますが。」
「つまり、言いたいことは?」
「私は、今までこのタイプの…任務には、必ずしも…志願はしませんでした。でもようやく覚悟が決まったんです。本当の宇宙飛行士に、やっとなれたと思います。」
「なると思ってたよ。…完璧なタイミングだ。トゥポルが君をチームに加えたいと言っている。置いてけぼりになる前に、出発ベイへ行け。」 アーチャーは微笑んだ。
「了解。」 作戦室を出るサトウ。

環境服を着るサトウは、何度もスイッチを押していた。
トゥポル:「宇宙服の扱いには慣れているのでは?」
サトウ:「ええ。バックアップシステムを確認しただけです。船に亀裂が入ったら、非常用酸素がいります。」
リード:「必要ないよ。亀裂が入ったら、すぐ気圧に押しつぶされて、このサイズだ。」 拳を見せる。
トゥポル:「…私が少尉を指名しましたが、もし気が進まないのなら…」
サトウ:「やる気なら、十分です。閉所恐怖症気味でしたけど…もう慣れました。ポッドに行ってます。」

発進するシャトルポッド。
惑星へ向かう。
リード:「目標は下方 100キロ。下降中です。」
トゥポル:「…重力に引き寄せられていますね。…ポッドの現在の高度で、大気圧は…15,000GCS。」
リード:「…船は十分もちますね。」
「当面はね。…船の下降速度を考えると、1時間しかありません。」
サトウ:「何だか、気が進まなそうですねえ。」
「事実を言っただけです。」
リード:「1時間あれば、余裕をもって船に戻れますよ。大事なシャトルポッドを気圧で潰されるのは嫌ですし?」
サトウ:「大事な士官 3人もいるし。」
シャトルが揺れだした。
トゥポル:「液体ヘリウムの渦に巻き込まれた。」 しばらくすると、揺れは収まった。「脱出。」
つぶやくサトウ。「大したことないわ?」
更に下降していくと、異星人船の姿が見えてきた。
トゥポル:「距離 100メートル。」
サトウ:「左舷にあるのがハッチ?」
リード:「らしいな。」
トゥポル:「50メートル。40。」
鳴りだした警告音について尋ねるサトウ。「それは?」
リード:「ただの接近警報だ。」
トゥポル:「20メートル。10。」 音が響いた。「ドッキングインターフェイス始動。」

ドアを開け、環境服を着た 3人が入る。
スキャナーで調べるトゥポル。「空気は酸素・窒素ベース。二酸化炭素のレベルは高い。でも無害です。…呼吸できます。」
サトウ:「先にどうぞ。」
リードは荷物を置き、ヘルメットを開けた。
トゥポルも続くが、あからさまに嫌な顔を示す。「外さない方がいいかもしれない。」
リード:「何か?」
サトウも咳き込んだ。「臭わないんですか?!」
リード:「ああ、風邪を引いてる。」
「運がいいですねえ。」 サトウは廊下を進むと、壁に文字が書かれているのを「2人とも、これを見て下さい。表示が、『第2デッキ、レッド・セクター』。」
「何語だ?」
「…クリンゴン語。」
3人はフェイズ銃を取り出す。
サトウ:「ヴァルカンは知ってると思ってました。クリンゴン船は見ればわかるって。」
トゥポル:「種類がかなり多いので、全ては把握していません。」
リード:「ここにクリンゴンが何人いるかはわかります?」
「生体反応は 3名。そっちです。反応はかなり弱い。」
サトウ:「どの程度?」

別の部屋に入る。
コンソールの上で目を閉じたクリンゴン人がいる。床に倒れた者も。
トゥポル:「まだ生きている。意識が戻る前に、立ち去るべきです。」
リード:「目覚めなかったら? この船はすぐ、大気圧でペシャンコですよ。」
サトウ:「助けるべきじゃないんですか?」
トゥポル:「望まないでしょう。」
「どうして?」
「クリンゴンです。殉職すれば死後の世界への道が約束される。助ければ、不名誉になるのです。」
リード:「不名誉だろうと何だろうと、まだ生きてる者はいるんですよ? 見殺しにはできません。」
「意図は立派ですが、的外れです。彼らが目覚めれば、我々は…殺されます。」

天井から動物がぶら下がり、食べ物がたくさん置いてある部屋。
そこにクリンゴン人がやってきた。女性だ。

アーチャーの通信が流れる。『何名だって?』
ヘルメットを外したトゥポル。「ブリッジに 3名。ですが船内全体では、生存者は 9名います。」
アーチャー:『何があったかわかるか。』
「二酸化炭素ベースの神経毒の残留物を検知しています。現在は分解しており、我々には影響ありません。」

命じるアーチャー。「待機しろ。」 通信を切る。「ポッドの船体は、どのくらいもつ。」
タッカー:「今の下降速度だと…30分でしょう。」
「…トゥポル。」
トゥポル:『はい、船長。』
「時間は…20分だ。救出法を探ってくれ。最善を尽くせ? いいな。」

クリンゴン船のトゥポル。「20分でできることがあるとは思えません。すぐ戻るべきかと。」
アーチャー:『まだ多少、余裕…』 音声が消えた。ノイズしか聞こえない。
「船長? トゥポルよりエンタープライズ。」
リード:「干渉波のせいだ。」
その時、クリンゴン女性が近づいてきた。
トゥポル:「通信圏外に出たせいです。」
サトウ:「まだ 20分あるわ?」
「当人たちが死にたがってるのに、救助は無意味です。」
リード:「何かできることがあるはずだ。この船の救難ビーコンを作動させるとか。」
女性は 3人が話すのを見ている。
トゥポル:「ビーコンはない。彼らは助けを求めません。」
サトウ:「乗せられるだけ、ポッドに乗せるのは? 3、4人は救えるでしょ?」
女性は去った。
トゥポル:「そして戻る途中に目覚めたらどうします?」
遠くから音が響いた。リードは武器を構え、ブリッジを出る。

廊下を歩くリード。
突然天井から、クリンゴン人が飛び降りてきた。フェイズ銃は当たらない。
女性に殴られるリード。

トゥポルたちも向かう。

ドアを開けるクリンゴン。
やってきたトゥポルとサトウは銃を撃つが、閉められるドアに当たってしまった。
起きあがるリード。「ああ…。」
音が響き、ドアのランプの色が変わった。
サトウ:「どういうこと?」
トゥポル:「我々のポッドで逃げたんです。」


※2: Siren calls
「サイレン」でも別に間違いではありませんが、「セイレーン」の方がわかりやすいかも。ギリシャ神話に登場し、歌声で船乗りを死に導く女性のこと。いわゆる「サイレン」の語源です

※3: Kamaraazite flu

通信コンソールで操作するタッカー。「いいですよ?」
アーチャー:「アーチャーよりトゥポルへ。現在の状況は。」 やはりノイズしか聞こえない。
「通信圏内のはずです。」
メイウェザー:「船長。」 スクリーンに、惑星から向かってくるシャトルポッドが見えた。エンタープライズへは近づかない。
アーチャー:「シャトルポッド1、応答を。」
メイウェザー:「船長、外宇宙へ向かってます。」
タッカー:「通信を傍受。」
理解できない言語が流される。
アーチャー:「クリンゴンみたいだなあ。」
タッカー:「翻訳機を、通します。」
タッカーが何とか操作すると、突然理解できるようになった。『戦艦は、応答を。未知の船に攻撃を受けた。船名、エンタープライズ NX-01。この付近の、戦艦は応答を。』
アーチャー:「追跡コースだ。」
メイウェザー:「了解。」
「グラップラー準備。」
シャトルポッドを追うエンタープライズは、グラップラーを打ち出した。命中し、シャトルの動きを止める。
タッカー:「キャッチ。」
アーチャー:「ブリッジより保安部。第1出発ベイへ行け。トリップ。トラヴィス、ここを頼む。」
メイウェザー:「了解。」

シャトル出発ベイに、フェイズ銃を持ったアーチャーたちが入る。
保安部員に指示しながら進むアーチャー。
その時、ポッドの中からクリンゴン人が保安部員を襲ってきた。
保安部員が落とした銃を拾おうとする。
タッカーはフェイズ銃で女性を撃った。
動きを止めたが、倒れない。
もう一発の発砲を浴び、やっとで倒れた。
アーチャー:「みんな無事か。」
起きあがる保安部員たち。
連絡するアーチャー。「アーチャーよりブリッジ。」
メイウェザー:『メイウェザーです。』
「難破船に、まだロックオンしてるか。」
『はい。』
「座標を出発ベイへ送ってくれ。調査班を救出に戻る。」
『クリンゴン船は、さらに 2,000メートル下降しました。シャトルの安全圏を超えてます。』
「…なら船体装甲を起動だ。エンタープライズで降りる。」

考えるリード。「何とかする方法があるはずだ。」
サトウ:「脱出ポッドは?」
「クリンゴンのポッドの船体強度は知らないが、ここにいた方がましだろうな。」
トゥポル:「ポッドはありません。クリンゴンは脱出ポッドを使わない。…船を捨てるのは臆病者の行為と見なされるんです。」
「この船の通信装置でエンタープライズに連絡するのは。」
「我々の通信機同様、この干渉波では無理でしょう。…操舵コントロールにアクセスできれば、船を安全軌道まで戻せるかもしれません。」
リード:「クリンゴン船の操縦経験はないので、何とも。」
「何とかやるしかありません。」
船全体に音が響く。
トゥポル:「少尉、パネルの表示を見て。『推進』、『操舵』、『航行』、そんな文字はありませんか?」
サトウ:「クリンゴンの書き言葉は、話し言葉とは全然違うんです。」
リード:「誰か起こして手伝ってもらいたいか?」
「…やります。」
コンソールの一つに近づくサトウ。「コラトゥ・チャク・タバク。『プラズマ…タンク』かしら?」
トゥポル:「確かですか?」
「…『タンク』です。間違いなく。」
隣の図に移るサトウ。「プダ・ダク・チャ。『光子魚雷』とかいう物ですけど。」
リード:「光子の魚雷? そんなの聞いたことないな。ほかには。」
「ここは全部武器システムみたいです。魚雷に、戦術センサー、ディスラプター砲列。」
トゥポル:「これは何です。」
サトウはトゥポルがいるコンソールに近づく。「『圧力』はわかります。カタル。これは多分壁』か、『障壁』。」
トゥポル:「『船体』では?」
「そうかも。」
リード:「これが船体強度とすると、もって 2時間だ。どんどん低下してます。」
トゥポル:「では急ぎましょう。これが操舵ステーションでは?」
サトウ:「そのようです。キー・ナガ、『インパルスドライブ』。」
リード:「いいぞ、ホシ!」 操作してみる。だが警報が鳴り始めた。「ホシ!」
出てきた文字を読むサトウ。「何とかの…圧力が落ちてます。ジュカット・バー。『融合マニフォルド』。何のこと?」
リード:「タッカー少佐風にいえば、『相当ヤバイ』ってことだ。」
通信が届いた。『アーチャーより調査班、応答を。』
サトウ:「聞こえます、船長。」

スクリーンに惑星が映っている。
アーチャー:「みんな無事か。」
サトウ:『何とか大丈夫です。ほっとしました。』
「…状況はどうだ。」

報告するトゥポル。「エンジンの再始動を試みていますが、今のところ成果はありません。」
アーチャー:『その必要はない。今から救助に行く。…トラヴィス。距離は。』

メイウェザーは言った。「1万メートルです。でも、船の座標になかなかロックオンできない。干渉波が多すぎて。」
アーチャー:「探査機は生きてるか。」
タッカー:「何とか。」
「三角測量で、座標を割り出せ。」
だが下降していた探査機は、突然爆発してしまった。
タッカー:「探査機、大破!」
船にも大きな音が響き渡る。
メイウェザー:「船長。船外気圧が、限界値に。」
通信するアーチャー。「救出プランに、ちょっとした穴があった。」
メイウェザー:「船体装甲、ダウンです。」
「…できるだけ早く戻ってくる…」

帰る準備をするトゥポルたち。
アーチャーの声が流れる。『…それまで、何とかみんなでがんばって…もちこたえてくれないか…そ…』 音声は途切れてしまった。
サトウ:「船長、聞こえません。船長?」



ベッドに拘束されているクリンゴン女性、ブカー※4。「これを外せ、臆病者! 殺すならせめて立たせろ!」 無理矢理動こうとする。
フロックス:「確かに、血液中に神経毒があります。治療しなければ 2日で死ぬでしょう。」
アーチャー:「治せるのか。」
「今やっています。」
タッカー:「ほかのはみんな意識不明らしいのに、何でこうイキがいいんだ。」
「低体温法の、効果でしょう。船内の気温の低い場所へ逃げたものと思われます。毒の効き目が遅くなりますからねえ。」
ブカー:「ここの船長と話をさせろ。」
タッカー:「リーダーが弱さを見せると連中、殺そうとするそうですから。」 アーチャーに拳を見せる。
アーチャー:「私だが?」
ブカー:「…お前たちがどの種族か知らないが、これでクリンゴン帝国を敵に回したな。」
「選択の余地がなかったのでねえ。君は私の部下を残し、ポッドを奪った。」
「我々の船を襲い、毒をまいたからだ。」
「毒などまいていない。君らの船を助けに行ったんだ。」
「嘘だ!」
「いいか? 何があったのか知らないが、我々は関知していない。それより君の船はまだ大気圏内を下降している。何とかしないと、気圧で潰される。」
「お前の手に落ちるより遥かにましだ。」
「…あの船には、私の優秀な部下が乗っている。彼らが手を貸す。エンジンの始動法さえ教えてくれれば、脱出できるんだ。」
「そしてその後は? お前の星へ運んで先進技術を盗むか?」
「いいや?」
「味方のバード・オブ・プレイ※5が来ればこんな船は終わりだ。」
アーチャーは医療室を出ていく。「人助けなんてするもんじゃない。」

クリンゴン船の図が表示されている。
メイウェザー:「ヴァルカンの、データベースで見つけました。ラプター級の偵察船※6ですね。」
アーチャー:「どのくらい、もちこたえられる。」
「外壁の厚さはエンタープライズの倍で、何らかの密着分子合金で強化されています。」
タッカー:「小型でもタフらしいな。とはいえあの気圧じゃあ、いつまでももたない。……シャトルポッドをデュラテニウム※7で補強するってのはどうです? 不格好ですが、3人を救出する間はもつと思います。」
「でなければ副官とリード大尉がクリンゴン船を修理して、自力で脱出するのを待つしかありません。」
アーチャー:「…医療室の客人からは助言を得られそうにない。補強の準備を始めろ。仲間のクリンゴン船が来ないか、見張れ。」
「了解。」

船の部品を見ているリード。「ああ…こういう時に限って、機関主任がいないんだ。」 環境服は脱いでいる。
コンソールについているサトウ。「見て下さい。」
集まるリードとトゥポル。クリンゴン人の映像が再生される。
サトウが翻訳機を調整すると、理解できるようになった。『…の惑星だ。敵を撃墜した。だが、こちらも左舷フュージョンインジェクターに損傷を受けた。現在、本艦はクタール・クラス※8の惑星の大気圏に向け下降中。上層で修理をし、ザランティン※9船に備えるためだったが…』 咳をし、酒を飲むクリンゴン船長※10。『全クルーが病気にかかり、未だ原因不明だ。これが…戦死であれば、名誉の死となったはずだ。しかし、原因不明の病に倒れ…この名もない星で、気圧に押しつぶされるなど…。』 記録は終わった。
リード:「左舷フュージョンインジェクターを探さないと。」
サトウ:「…見た覚えがあります。」 船体図を出す。「ここです、1階下で、場所は…リアクターピット。」
「リアクターピット? じゃあ機関室か。」
「多分。」

フェイズ銃を持ち、進むリードたち。
倒れたクリンゴン人を調べるトゥポル。
リード:「これか?」
サトウ:「いえ。それは、プラズマ誘導関係です。」
別のコンソールの上に突っ伏しているクリンゴン人。
サトウ:「これだわ? 『左舷フュージョンインジェクター』。」
リードたちはクリンゴンをどける。

溶接作業を行うアーチャー。「クリンゴンの扱い方を根本的に間違えていたらしい。威圧的でないと、対等だと見なされないらしい。」
タッカーもマスクを上げた。「クリンゴンの心理を調べたんですかあ?」
アーチャー:「3度目の遭遇だ。※11毎回いきなり牙を剥いてくるのは、どうしてか知りたくてねえ。」
「関わらないのが、一番かもしれませんよ?」
「今はそう言ってられない。協力を取り付けないと。後は何とか、難破船との通信チャンネルを確立して、あのクリンゴン女性から修理の指示を送ればいいんだ。だが、数千世代に渡る伝統で、彼女はよそ者を信じない。」
「クリンゴンになったつもりで考えないと。」

クリンゴン・ラプター。
汗をぬぐうリード。道具を取り落とす。思わず近くの熱い場所に触れてしまった。「あーっ!」
サトウ:「大丈夫ですか?」
「ああ…どうも頭がボーっとしてきた。ああ…暑さだろう。ああ…」
トゥポル:「脱水症状です。水分補給を。」
サトウ:「船内図に調理室があったわ? 第4デッキ、ブルー・セクター。何か探してきます。」
「独りではよくない。」
リード:「気をつけて。ああ…。」

ぶら下がった動物を見て、口を押さえるサトウ。「ああ…。」
容器にたくさんの小動物が入っている。
トゥポル:「ガフ※12です。クリンゴンの食物で、生きたまま食する。」
サトウ:「ミミズみたい。」
「ミミズです。」
調理室を歩くサトウは、鍋の中身をすくい上げた。
動物の頭骨が入っていた。滅入るサトウ。
トゥポルはフェイズ銃を持つよう指示する。
音がするドアに近づき、開けた。
中には鎖につながれた動物がたくさんいた。吠えかかってくる。
目を背けるサトウ。ドアは閉じられた。
トゥポル:「ターグ※13です。…クリンゴンはさばきたての肉を好むので。」
座り、ため息をつくサトウ。
トゥポル:「大丈夫ですか?」
サトウ:「しっかりするって決めたのに。」
「異星人の船の中で、危険な状況にいる。不安感に襲われて当然です。」
「…『人間なら』でしょ?」
「生まれもった特性です。」
「変かもしれませんけど……時々副官がうらやましい。それも人間の…邪魔な感情ですよね? 感情を全部無視できたら、どんなにいいかって思います。ヴァルカンみたいに、冷静になれる。」
トゥポルはライトを置いた。「手を取りなさい。」
サトウ:「何ですか?」
しゃがむトゥポル。「手を取って。」 サトウの手をつかむ。「目を閉じて。」
言われたとおりにするサトウ。
トゥポルはサトウの手に指を置いた。「荒れた海で揺られているのを想像して。でも自分で波をコントロールできる。」
サトウ:「…何だか知りませんけど、効いてません。」
「集中しなさい。波が収まってきた。水面が静かになる。……心も静かに。」
サトウは目を開けた。「……今の…驚きです。」
トゥポル:「…エンタープライズに戻ったら、独りでやる方法を教えます。」
「ありがとう。」
大きく船が揺れだした。
トゥポル:「リード大尉、報告を。」

火花が散る。
リード:「船体強度が限界です! 船はもうすぐ潰れる!」
ラプターの船体が、へこみ始めた。


※4: Bu'Kah (Bu'kaH)
(Michelle C. Bonilla) 声:唐沢潤

※5: Bird of Prey
映画 ST3 "The Search for Spock" 「ミスター・スポックを探せ!」で初登場したクリンゴン船のタイプ。もちろん同一の形状とは限りません

※6: Raptor Class scout vessel
ラプター=猛禽、略奪者といった意味があり、バード・オブ・プレイと似た命名ですね。クラス名でありながら「ラプター」とだけ呼んでいる箇所もあります。Star Trek: The Magazine 2003年1月号で特集

※7: duratanium

※8: Q'tahL Class

※9: Xarantine(s)

※10: Klingon Captain
(ヴォーン・アームストロング Vaughn Armstrong TNG第20話 "Heart of Glory" 「さまよえるクリンゴン戦士」のコリス司令官 (Commander Korris)、DS9第3話 "Past Prologue" 「スペース・テロリスト ターナ・ロス」のガル・ダナー (Gul Danar)、第171話 "When It Rains..." 「嵐の予兆」などのカーデシア人セスカル (Seskal)、VOY第7話 "Eye of the Needle" 「ワームホールの崩壊」のテレク・ルモール (Telek R'Mor)、第122話 "Survival Instinct" 「ボーグの絆を求めて」のトゥー・オブ・ナイン (Two of Nine)=ランサー (Lansor)、第143話 "Fury" 「帰ってきたケス」のヴィディア人船長 (Vidiian Captain)、第155話 "Flesh and Blood, Part I" 「裏切られたホログラム革命(前編)」のアルファ・ヒロージェン (Alpha Hirogen)、第171話 "Endgame, Part I" 「道は星雲の彼方へ(前編)」のコラス (Korath)、ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」などのアーチャーの上司フォレスト提督 (Admiral Forrest)、第22話 "Vox Sola" 「漂流生命体の叫び」などのクリタサン船長 (Kreetassan Captain) 役。ゲーム "Armada II"、"Bridge Commander"、"Starfleet Command III"、"Elite Force II" でも声の出演) 声:中田和宏

※11: 前の 2回は ENT第1・2話 "Broken Bow, Part I and II"、第5話 "Unexpected" 「予期せぬ侵入者」のこと

※12: gagh
TNG第34話 "A Matter of Honor" 「錯綜した美学」など

※13: targ
何度となく言及されていますが、姿が登場するのは TNG第6話 "Where No One Has Gone Before" 「宇宙の果てから来た男」以来初めて。今回は CG です

水を飲むリード。「上手くいきます。」
トゥポル:「間違いがあれば船は大破です。」
「…副官。ホシがいても、ただフュージョンインジェクターを探すだけに何時間もかかってるんです。もう時間がない!」
サトウ:「私は賛成ですけど。」
トゥポル:「まず戦術システムにアクセスできるんですか?」
リード:「ここじゃ右も左もわかりませんが、魚雷なら、任せて下さい。」

パッドを渡すタッカー。「出発前にもう一度だけ、船体強度をチェックします。」
アーチャー:「カプラー!」
「何ですって?」
「『成功を。』 助言通りクリンゴンになった気で考えることにしたんだ。ヴァルカンのデータベースには、900ページもの資料があったよ。」
「収穫は?」
「多かった。彼らは、戦士の思考で行動する。新たに出会った者は、まず敵と見なす。」
「どうりで彼女突っかかるわけですね。」
「それに忠誠心がとても強い。あと…『ハッ・チョ・ムラク・ター』。『不名誉の前に死を』。…チェックを頼む、医療室にいる。」
「成果をお試しに?」
「そんなとこだ。」 作戦室を出るアーチャー。

ハイポスプレーを手に取るフロックス。
アーチャーはうなずいた。
注射し、ブカーを押さえるフロックス。「落ち着いて下さい。拘束具をつけて暴れると怪我します。」
ブカー:「それは何だ。船の仲間にもそれを使ったのか。」
アーチャー:「ドクター・フロックスが調合した、体内の毒を中和する薬だ。」
「そうやって、信頼を得ようって作戦か。毒を盛っておいて魔法のように治してみせるわけだ。」
「…君は最近酒を飲んだか?」
「何!」
「君らの病気の原因である病原体は、アルコールに…含まれていたんだ。」
フロックス:「毒素は、ザランティン・エールに特有の分子と、結合していました。」
ブカー:「…戦利品だ。」
アーチャー:「それで? ……襲撃が難航して話したくないというなら、気持ちはわからないでもないな?」
「ザランティンなど我々の相手じゃない! 基地を襲い必要な物は手に入れた。」
フロックス:「その中に、ザランティン・エール※14も?」
うなずくブカー。
アーチャー:「クルー全員が飲んだのか?」
ブカー:「全員で勝ち得た勝利だ。」
「『イエス』ってことだろうなあ。病気の原因はその酒で、我々じゃない。…考えてみろ。病人が出始めたのはいつだ。その襲撃後だろ? 勝利を祝った直後じゃないのか?」
「引っかけだ!」
「そうかな? 気分はどうだ? 注射を打って、楽になったか? …クルー全員の分、同じ薬を作れる。まだ間に合えばな?」
無言を決め込むブカー。
アーチャー:「引っかけじゃなかったら? これが真実なんだ。このままなら仲間は、不名誉な死を遂げることになる。救うこともできるのなあ? それでもいいのか?」

クリンゴン・ラプターから、下方に向けて光子魚雷が発射された。
サトウ:「距離 1,000メートル。2,000メートル。3,000メートル。」 ボタンを押す。
魚雷は爆発し、衝撃波が発生した。
揺れが伝わる。
サトウ:「効果なし、まだ落ちてます。」
トゥポル:「衝撃波は届く前に消散した。」
リード:「次はもっと近くで起爆だ。」
「船体は既に相当の気圧を受けています。爆発が近すぎれば…」 船体が歪む音が響いている。
「じゃやめろと? 強い衝撃波で、船を軌道まで押し上げるしかないんです。爆発は大きく至近距離で! でないと意味がない。」
うなずくトゥポル。
サトウに命じるリード。「命令はわかったな。今度は 2本装填だ。」

シャトルポッドのアーチャー。「センサーの解像度がどんどん落ちている。」
後ろに座ったブカー。「お粗末な作戦だな。手探りで進み、船が見つかるかは運次第か。」
アーチャー:「君らをそうやって見つけた。」
軽い揺れが伝わる。
ブカー:「今のは?」
アーチャー:「…砲撃だ。」
「どこだ。」
「方位 2-9-7、マーク 2-6-1。2キロほど下になる。」

尋ねるリード。「どうだ。」
サトウ:「上がったけど、200メートルほどです。」
「たったの!」
また揺れが起こる。
サトウ:「1区画崩壊です。第3デッキ、グリーン・セクター。」
リード:「このままじゃ船全体が潰れる! 魚雷は後何本残ってる。」
「6本です。」
「2本装填。」
「それじゃ足りません。」
「いいから装填しろ!」
「やったけど無駄でした!」
「少尉!」
トゥポル:「正論です。2、300メートルずつ上昇しても、安全圏には届かない。」
「こうして議論している間にも、落下しているんですよ?」
サトウは言った。「全部いきましょう。6本全部爆発させたらどうなります?」
トゥポル:「上昇できたとしても、船は大破するでしょうね。」
「お二人は知りませんが、私は賭けてみたいわ?」
リード:「やってみよう。距離 800メートルで。」
「500 の方がいいと思います。」 リードたちに見られるサトウ。「だって名もないガス状巨星の大気に押しつぶされるために遥々来たんじゃありません!」
リードはうなずき、操作する。
サトウ:「魚雷 6門装填します。」
リード:「つかまって。」
「魚雷準備完了。」 スイッチを押すと、すぐに大きな衝撃が走った。

ブカーは言った。「何だ!」
アーチャー:「また爆発音だ。衝撃波が来るぞ、つかまれ!」
前の窓に破片が見える。

降りていくシャトルポッド。クリンゴン・ラプターが見えてきた。
トゥポルは呼び出しに応える。「トゥポルです。」
アーチャー:『何を撃ってるんだ。』
リード:「衝撃波を使って、高度を上げました。一時的にですが。この船を起動する方法がわからないと、また落ちるだけです。」

伝えるアーチャー。「その方法を知っている人物を連れてきた。今ドッキングする。」

ハッチから入るアーチャーとブカーを、トゥポルたちが出迎える。
アーチャー:「…既に会っているな? ブカー士官だ。…エンジンの状況は?」
トゥポル:「クリンゴンのクルーがほとんどの部分は修理していたようなんですが…左舷フュージョンインジェクターがまだ壊れたままです。」
ブカー:「船は私に任せてもらおう。」
アーチャー:「仲間と一緒に死なせるために連れ戻ったんじゃない。私の部下は命がけでこの船を救おうとした。仕事を終えるまで戻るつもりはないからな。」
ブカーは認めたようだ。

警告するメイウェザー。「高速ワープで、船が 2隻接近中。クリンゴンと思われます。」
タッカー:「何分で追いつかれる。」 船長席にいる。
「16分です。…通信が入ってます。船長からです。」
「スクリーンへ。」
アーチャー:『クリンゴン・ラプター級ソムロー※15より、エンタープライズへ。』 船長席のブカーのほか、みな映っている。『そちらに、4名の乗船許可を要請します。』
ため息をつくタッカー。「…いいんじゃないでしょうか?」

ブリッジ。
タッカー:「椅子をあっためときました。」
アーチャー:「すまん。」 笑う。「トラヴィス、軌道離脱準備。ここには十分すぎるほどいたからな?」
メイウェザー:「はい、船長。…ラプターからです。呼びかけてます。」
タッカー:「礼でも言う気かな?」
アーチャー:「それはないな。つないでくれ。…何か用かな?」
元気になったクリンゴン船長。『おとなしく船を明け渡せ。』
アーチャー:「ブカー士官が言い忘れたかもしれないが、あなたとクルーを救ったんだ。」
『我々の船に侵入し武器まで使った。』
「そうしなければあなたたちは圧死していたんだぞ。」
『ディスラプター用意!』
「武器を装填してます。」
スクリーンに近づくアーチャー。「戦えば、そっちは 10秒ともたないぞ。船体にいくつも亀裂が入っている。シールドは使えず、知るところでは魚雷も使い果たしているはずだ。私ならこれ以上不名誉な結果になる前に、さっさと帰るね。…一発でも撃てば、そちらが元いた場所へ吹き飛ばすがいいかな?」
クリンゴン船長はうなり、通信を切った。
メイウェザー:「離れていきます。」
アーチャー:「仲間が来る前に、こっちも退散しよう。」 船長席に座り、ため息をついた。

汚染除去室。
トゥポル、リード、サトウが座っている。3人とも下着姿だ。
呼び出し音が鳴る。鳴り続ける。
リード:「誰か出ろよ?」
サトウ:「近いでしょう?」
「ああ…。」
代わりに一番遠いトゥポルが立った。「トゥポルです。」
フロックス:『フロックスです。微生物も寄生虫も、完全に除去しましたよ? 汚染除去室から、解放です。』
リード:「本当に済んだのか? 何がいたかわかったもんじゃないぞ?」
サトウ:「スキャナーにかからない微生物がいるかもしれないわ?」
フロックス:『大丈夫、考え得る限りのテストをしましたから。』
サトウとリードは、トゥポルに必死に合図を送る。
トゥポル:「もう一度やってもらえますか? どうも軽い頭痛が…してきました。」
フロックス:『そうですか、いいでしょう。漏れがあっては困ります。』
「お願いします。」 通信を切るトゥポル。
リードはため息をついた。
元の場所に戻るトゥポル。
リード:「これで 30分は延長できる、フン。」
トゥポル:「…まる一日でも構いません。」
「うーん。前にメキシコでスパに…行ったんだ。あれはほんとに気持ちよかったけど、これにはかなわない。ああ…体中綺麗で最高だ。」
トゥポル:「非常に、快適です。」
サトウ:「…臭いします?」
「何も臭わないが。」
「その通り。」 笑うサトウ。
3人は再び、目を閉じた。


※14: Xarantine ale

※15: Somraw
吹き替えでは「ソムロー

・感想
パイロット版を含めて、これまでも 2度クリンゴン人が登場していましたが、完全に話の中心となるのは初めてです。時間冷戦/スリバンのストーリーと同様、こちらも一つの流れになっていきそうですね。
未来、つまり以前のシリーズとのつながりが興味深いことを除くと、いたって普通のストーリーでした。ああ、また視聴者サービスっぽいシーンはありましたけど。なお原題の意味ですが、"Let sleeping dogs lie." 「眠っている犬はそのままにしておけ=さわらぬ神にたたりなし」ということわざもあるそうです。
なぜか今回に限り、トゥポルに「副官」という言葉を多用していましたね。


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