USS Kyushuトップに戻る

ディープスペースナイン エピソードガイド
第3話「スペース・テロリスト ターナ・ロス」
Past Prologue

dot

・イントロダクション
レプリマット。
独りでグラスの茶を飲んでいたベシアのそばに、カーデシア人が近づいてきた。「ドクター・ベシアですね? やっと会えた。少し、お話ししていいですか。」 軍服姿ではない。
ベシア:「ああ…ええ、はいどうぞ。」
「私はガラック※1と言いまして、ご覧の通りカーデシアの生まれです。…このステーションには、私以外カーデシア人はおりません。ですから、なるべく多く友達を作りたいと思いましてねえ? こちらには赴任したばかりなんでしょ?」
「ええ、そうですが。」 笑うベシア。「…その、あなたの方はこちらに長いんですよね。」
ガラック:「ああ…ご存知でしたか。」
「ターカリアン・ティー※2でも、いかがです。いけますよ。」
「お若いのに気の利く方だ。声をおかけしてよかった。」
ウェイターを呼ぼうとするベシア。「…その、噂に聞いたんですが。DS9 に残ったのは、カーデシアに情報を流すためなんですか。」
ガラック:「ご冗談を。…ドクター、まさか…この私をスパイだと言うんじゃないでしょうね。」
「…いやあ、そんなつもりは。」
「いやあ、正直な方だ。深い知性が、感じられる。…ご存知とは思いますが私は衣類を扱ってます。何か御入り用の時にはブティックの方へいらして下さい。いやあ是非とも。見るだけでも構いませんので御遠慮なく。いつでも歓迎させていただきますよ。」
「ご親切に、どうもガラックさん。」
「いやあガラックと呼んで下さい。気など使わずに、ガラックと。」
声をそろえるベシア。「ガラックだね。」
ガラック:「では、お邪魔しました。」 ベシアの肩に手を置いた。「よかったですよ、あなたのようないい方とお近づきになれて。」 微笑み、歩いていく。
ベシアも席を立った。

司令室へ入るベシア。「ねえねえ、今お茶飲んでたら誰に声かけられたと思う?」
オブライエン:「少佐、第3目標塔を 48時間閉鎖します。」
うなずくキラ。
ベシア:「スパイだよ! 例のガラックって奴です。」
シスコ:「スパイだなんていうのはただの噂だ。」
「いいや違う、話せばわかります。向こうから名乗って、積極的に話しかけてきたんですよ。あれは僕に目をつけたんだ、絶対そうですよ。」
ダックス:「何のために目をつけたと言うの?」
「…わからないけど、医療機密かもしれない。僕は絶対漏らしませんからね。」
シスコ:「もちろん君を信じてる。」
「そうだ、ねえオブライエン。僕に監視装置をつけた方がいいよ。」
微笑むシスコ。オブライエンはあきれる。
ベシア:「万一のために。だって……狙われてるかも。」
シスコ:「そこまでする必要はないだろう、少し頭を冷やせ。」
警告音が鳴った。
キラ:「小型艇が回避行動を取っています。その後をカーデシア艦が追跡中。」
シスコ:「スクリーン、オン。」
逃げる船に向けて、武器が発射されている。
キラ:「ベイジョーの船※3よ。…カーデシアの連中がベイジョーを襲ってる、しかも我々の領域で!」 攻撃しているのはガロア級戦艦だ。
シスコ:「それは事実か。」
オブライエン:「確認しました、ベイジョーの領域です。」
「交信する、カーデシアを呼び出せ。」
「チャンネルオープン。」
「カーデシアに告ぐ、君たちは領空を侵犯している。すぐに退去しろ。繰り返す、退去しろ!」 近づいてくるカーデシア戦艦。
「返答はありません。…ベイジョー船から、通信です。」
「チャンネルオープン。」
ベイジョー人:『宇宙ステーション、聞こえるか。宇宙ステーション!』 映像はノイズだけだ。
オブライエン:「映像は受信できません。」
シスコ:「私はシスコ中佐。DS9 の司令官だ。君は誰だ、なぜ追われている。」
ベイジョー人:『頼む、今すぐ緊急着陸を許可してくれ。…頼む!』
ダックス:「ベイジョーの船はひどい損傷を受けています。このままではバラバラになるでしょう。爆発します!」 まだカーデシア艦の攻撃を受けている。
シスコ:「乗員を収容しろ。」
オブライエン:「了解。」
ベイジョー船は爆発した。
同時に、転送パッドに頭を抱えた人物が実体化する。
ベシア:「医療チーム、急行しろ。」
ベシアに抱きかかえられるベイジョー人。「私の名はターナ・ロス※4。…政治的保護を求める。」 顔を上げるターナ。「キラ。」


※1: Garak
(アンドリュー・ロビンソン Andrew Robinson ゲーム "DS9: The Fallen" でも声の出演。映画「ダーティハリー」(1971) の殺人鬼スコルピオ役。テレビ映画 "Liberace" にも出演) 初登場。声:大川透

※2: Tarkalean tea
初登場。ターカリア人が登場するのは ENT第49話 "Regeneration" 「覚醒する恐怖」

※3: 原語では「偵察船 (scout ship)」と言っています。第4シーズン以降のオープニングにも登場しているタイプ

※4: Tahna Los
(ジェフリー・ノードリング Jeffrey Nordling) 声:津田英三、ENT ダニエルスなど

・本編
反重力リフトで運ばれていくターナ。
キラ:「ターナ・ロスは、レジスタンス時代の同志です。」
オブライエン:「中佐、カーデシアからです。」
「はあ、やっと応答したわね。」
「冷静にいきましょう?」
シスコ:「オブライエン、チャンネルオープン。」
カーデシア人:『警告を与える、その男は凶悪な犯罪者だ。』 スクリーンに映っている。『直ちに我々に引き渡せ。』
「彼は保護を要請中だ。」
『聞き入れる気でいるのか。』
「正直言って決めかねている。」
『コー・マ※5の一員だぞ。ベイジョーとてあんなテロリストの保護はしないだろう。その男は我がカーデシアの同胞に憎むべき罪を犯したのだ。重ねて要求する、即刻身柄を引き渡せ。』
「事実は至急確認しよう。その前に、なぜベイジョーの領域を侵し、我々惑星連邦の施設を脅かしたのか…納得がいくよう説明してもらおう。」
『脅かすような真似など、した覚えはないぞ。』
「ならばいいだろう。交信を終える。…少佐と医療室へ行ってくる。ターナに話を聞くのが、先決だろう。カーデシアが押しかけたら、着陸規則を盾にしてしばらく外で待たせておけ。」
オブライエン:「わかりました。」
シスコと共にターボリフトに乗るキラ。「まさか本気でターナを奴らに突き出す気ではないですよね。」

動き続けるターボリフト。
シスコ:「君もコー・マにいたのか?」
キラ:「…テロ組織にいた人間が、政府の仕事なんかしてると思いますか?」
「コー・マの連中はカーデシア人だけでなく、邪魔なベイジョー人まで見境なく殺している。確か先月の政府高官暗殺にも、犯行声明を出していたはずだ。」 降りるシスコ。
「…でも、ターナは別です。」
「コー・マの一員か?」
「ええ。でも…」
キラの腕をつかむシスコ。「かばう気なら任務から外れてもらう。どっちつかずの気持ちで任務に当たられるのは御免だ。彼がコー・マのテロリストなら、このステーションを隠れ蓑にして破壊活動を続ける恐れがある。」
キラ:「私はベイジョーの利益を優先します。どっちつかずの気持ちじゃないわ、今のベイジョーにはターナ・ロスのような強い意志をもった人間が必要なんです!」
「カーデシアを倒せればテロも許すと言うのか。」
「我々が強力な独立国家をもう一度築くためには、コー・マのようなゲリラグループの力は言わば必要悪です。はっきり言えば、ターナは我々にとって、希望の光なんです。見殺しにはできません!」
2人は診療室へ入る。

ターナを治療しているベシア。
やってくるキラ。「様子はどう?」
ベシア:「2度の火傷、裂傷に脳震盪。でも過去の傷に比べれば軽いもんだ。」
シスコ:「過去の傷?」
ベシアがシーツをめくると、ターナの胸に大きな傷跡が残っている。「これが比較的新しい。恐らく 2、3年前のものでしょう。」
目を覚ますターナ。「2年半前だ、正確には。」
ベシア:「よく命がもったもんだ。」
キラ:「カーデシアは半殺しにして拷問するのよ。」
シスコに合図され、離れるベシア。
シスコ:「司令官のシスコ中佐だ。いくつか質問するから答えてくれたまえ。」
キラ:「中佐はあなたを保護するかどうか、まだ決定を下していないのよ。」
「少佐。…席を外してもらいたい。」
ターナ:「少佐?」
キラ:「…ここで、連邦との連絡将校を務めているの。…ベイジョーのために私なりに闘ってるつもりよ? …また後で来るわ。」 診療室を出て行く。
ターナ:「…何を聞き出そうってんです?」
シスコ:「君はなぜ追われていたんだ。」
「…生い立ちから話すことになりますよ。」
「コー・マのメンバーとして、破壊活動を働いていたのか。」
「人も大勢殺してきた、捕まれば死刑は免れないね。」
「カーデシアはベイジョーから撤退したんだぞ。」
「…知ってるとも。」
「なぜいつまでもテロ行為を続けるんだ。」
「…そうだな…自分でもわからない。50年以上も散々暴虐行為を働いてきた奴らに復讐してやりたいと思ってたが、もう嫌ってほど殺したよ。」
戻ってくるベシア。「すみませんが、休ませないと。」
シスコは出ていく。

自室のキラ。「提督、シスコ中佐は状況を短絡的にしか捉えていません。…問題の複雑さを理解していないんです。」
コンソールに映っている宇宙艦隊の提督。『よく報告してくれました、感謝します。今後も逐一報告して下さい?』
「わかりました。」 通信を終え、ため息をつくキラ。

戻ってきたシスコに報告するオブライエン。「中佐、カーデシアが到着しました。ダックス大尉がドッキング手続きで時間稼ぎをしていますので、まだ大丈夫です。」
シスコ:「頼むぞ。連中に会う前に、もう少しターナを調べたい。」
「中佐。…例の、テロリストのことはよくわかりません。でも、カーデシアと戦ったことがありますか?」
「いや。」
「…ベイジョー人の心情を、くみ取って寛大な処置を願います。…私は同情…」 コンピューターの反応に応えるオブライエン。「ロールマン提督※6から、亜空間通信が入っています。」
「オフィスで受ける。」 司令官室に入るシスコ。

シスコはコンソールを起動させる。
ロールマン:『ベンジャミン。あなたの補佐官のベイジョー人だけど、会議中に私を呼び出して、テロリストの保護問題であなたへの不満をぶつけてきたわよ。今のうちに善処すべきだわね?』
シスコ:「ご忠告をどうも。」

患者服のターナは、目を覚ました。
キラ:「大丈夫、私よ。」
ターナ:「……こんなところで会うとは奇妙なもんだな。」
「…共に戦った同志と再会できたなんて、嬉しいわ。」
「その制服※7を着ても過去は忘れてないか。」
「もちろんよ。」
「そうかな? 大きな組織にいたら昔の闘志もなくなっちまったんじゃないか?」
「シスコに聞いてもらえばわかるわ?」
「仲はいいのか?」
「…水と油よ。」
笑うターナ。
キラ:「疲れたわね、行くわ。」
ターナ:「キラ。…俺はカーデシアに渡されるのか。」
「死んでも私が守るわ?」
「確かに君は昔のままだ。」
診療室を出るキラ。ターナは微笑んだ。

カーデシア艦の艦長が、司令官室に入った。「一体いつまで船を待たせておく気だ。中佐、これ以上ドッキングの手続きを引き延ばすと交通に支障を来すことになるぞ?※8
シスコ:「申し訳ない。君たちから攻撃を受けて損傷した個所を直している。…そのために、時間がかかっているんだ。」
「謝罪は受け入れるが、そんな言い訳が通ると思うか。さっさとロスを渡せ。」
「もう少し、時間が欲しい。」
「…引き渡しの要求を受け入れねば外交問題に発展するだろう。あの男は残虐な犯罪を犯した危険人物だ。」
「ダナー※9。戦争時の残虐行為はお互い様だ。」
「奴を野放しにすれば今後さらに残虐行為が行われるのは火を見るより明らかだ。」
「彼の話では今ではコー・マを脱退して、国家の再建を手伝う気でいる。」
「…殺戮と破壊の限りを尽くしてきた男だ、その罪の報いは受けさせねばならん。絶対にあの男を生かしてはおけない!」
「君たちの気持ちはよく理解できる。しかしだ。彼はベイジョーの英雄だ。それを連邦側が、あっさり引き渡したとなれば…私達がここで築き上げてきた協力体制は一気に崩れる。つまり…申し訳ないが、とりあえずは保護を認めるしかない。彼の身柄は、ベイジョー政府に引き渡す。納得がいかないというなら、私ではなく…政府に掛け合うことだ。」 ドアを開けるシスコ。
ダナーはうなり、出ていく。


※5: Kohn-Ma
原語では綴りどおり、「コーン・マ」にも聞こえます

※6: Admiral Rollman
(スーザン・ベイ Susan Bay TOS スポック役レナード・ニモイの妻) 初登場。声はルーサ役の磯辺さんが兼任

※7: 吹き替えでは「連邦の制服」。キラはベイジョー軍部の制服です

※8: 吹き替えでは未だにカーデシア艦がドッキングしてないような印象を受けますが、原語では遅れたことに対して文句を言っているに過ぎません。また、次のシスコの「損傷した個所」というのは、カーデシアが DS9 撤退時に破壊していったこと

※9: ガル・ダナー Gul Danar
(ヴォーン・アームストロング Vaughn Armstrong TNG第20話 "Heart of Glory" 「さまよえるクリンゴン戦士」のコリス司令官 (Commander Korris)、DS9第171話 "When It Rains..." 「嵐の予兆」などのカーデシア人セスカル (Seskal)、VOY第7話 "Eye of the Needle" 「ワームホールの崩壊」のテレク・ルモール (Telek R'Mor)、第122話 "Survival Instinct" 「ボーグの絆を求めて」のトゥー・オブ・ナイン (Two of Nine)=ランサー (Lansor)、第143話 "Fury" 「帰ってきたケス」のヴィディア人船長 (Vidiian Captain)、第155話 "Flesh and Blood, Part I" 「裏切られたホログラム革命(前編)」のアルファ・ヒロージェン (Alpha Hirogen)、第171話 "Endgame, Part I" 「道は星雲の彼方へ(前編)」のコラス (Korath)、ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」などのアーチャーの上司フォレスト提督 (Admiral Forrest)、第14話 "Sleeping Dogs" 「名誉に生きる者」のクリンゴン船長 (Klingon Captain)、第22話 "Vox Sola" 「漂流生命体の叫び」などのクリタサン船長 (Kreetassan Captain) 役。ゲーム "Armada II"、"Bridge Commander"、"Starfleet Command III"、"Elite Force II" でも声の出演) 声:宝亀克寿、TNG イヴェック、ENT クリタサン船長 (同じ俳優) など

部屋に入るキラとターナ。
キラ:「ちゃんとしたベッドで寝るのは久しぶりでしょ?」
ターナ:「ベッドなんて物があるのも忘れていたよ。」
「…本当によかった。…あなたは必要な人よ?」
「俺の特殊技術が連邦の役に立つとは思えない。」
「ベイジョーが必要としてるのよ。…私のことを連邦の一員になってしまったと思ってるようだけど、誓って私は…」
「君はシスコの補佐官だろ?」
「そうよ、でも…」
「どう転んでも俺には絶対になれないね。」
「…誰かが臨時政府と連邦との折衝役を務めないことには始まらないわ? 少なくとも私がここに残ったことで…」
「なぜだ。なぜ連邦をここにおく、何のために。その臨時政府とやらは連邦が牛耳ってるんだろ?」
「わかるけど…」
「それじゃ闘ってきた意味がない! 我々が目指していたのは、完全な独立だ。同じじゃないか、カーデシアを追い出して連邦を入れただけに過ぎない。」
「ターナ、状況がすっかり変わったのよ。…ワームホールを発見してから。」
「またそれか、ワームホール。」
「聞いて? 私だってあなた以上に不本意だけど目的のために今のところは連邦の力が必要なのよ。私達だけでは、カーデシアはすぐここに舞い戻ってきてしまう。ワームホールも奪われるわ? あのワームホールにベイジョーの未来がかかっているのよ? 交通と商業の中心地となれば、富と権力が手に入るわ?」
「欲しいのは富や権力じゃない、ベイジョー人のための独立国家だ。我々の国を取り戻したい。」
「もう取り戻してるわ? この先の目標は、連邦なんかに頼らなくても国を守ることのできる力をもつことよ。…これまで、完全な独立を目指してきたことを思えば、多少の抵抗はあるだろうけど。…あなたのような人が先頭に立てば、きっと…」
「洗脳されてるな? 奴らに。」
「ターナ。あなたを守るために必死で闘ってるのよ? コー・マからは抜けたんでしょうね。」
「ああ。…信じろ、組織とはきっぱり手を切ったよ。」
「…あなたに特赦を与えてくれるよう、政府の高官数人に直訴したの。…ほかにもコー・マを抜ける人がいるなら、掛け合うわ。」
「何人かはいるだろうな。捕まらない保証があれば。」
「私に任せておいて。…必ず約束を取り付ける。」 出ていくキラ。

プロムナードで保安部員が銃を向けている。
相手はクリンゴン人女性 2人だ。
2人の間を割ってやってくるオドー。「どうした。」
保安部員※10:「実は、ちょっと揉めてまして。」
そばで別の保安士官が倒れているが、意識はある。
保安部員:「到着したばかりのクリンゴン人 2人が、どうしても…武器を渡さないんです。」
クリンゴン人:「クリンゴンは絶対に自分の武器を手放さない。」
オドー:「君たちの名は。」
「デュラス姉妹を知らないのか。ルーサ※11とベトール※12だ。」
「武器については特別な規則がある。武器を渡すかステーションを去るかだ。決めたまえ。…二つに一つだ。」
ベトール:「偉そうに。」
「…今すぐに答えを聞きたい。」
顔を見合わせる二人。ディスラプターをオドーに渡した。
オドー:「ようこそ DS9 へ。」
ベトール:「フン!」
歩いていく姉妹。

司令官室に入るオドー。「非常に興味深い客が来ました。デュラスとかいうクリンゴン人の生意気な姉妹です。」
シスコ:「ルーサとベトールだな。」
「ご存知でしたか。」
「クリンゴンの最高評議会を支配しようとして、内戦を引き起こした連中だ。…その後姿を消していたが。」
「保安記録を調べました。クリンゴンの危険人物リストに載っていましたよ。」
「再起のために資金稼ぎをしていると噂に聞いたが…何をしにここへ。」
「さあ。クワークの店にいますがギャンブルはしてませんね? フン、食事するでもなし、ただずっと座ってます。」
「不審だな。」
「いっそのこと…捕まえてクリンゴンに突き出してはいかがでしょうか。」
「オドー…」
「最高評議会を敵に回しているんでしょ?」
「ここで法を犯したわけじゃない。無実の者に手は出せない。」
「カーデシアがここを治めていた時ならああいう連中は…排除した。」
「目を離すな。」
「…もちろんですよ、司令官。」

クワークの店の 2階で、静かに飲んでいるルーサとベトール。1階にはモーンがいる。
その隅に、ガラックがいた。デュラス姉妹を見ている。
ベシアが近づく。「飲んでるようですねえ、ガラックさん。…すいません、『さん』は抜きでしたよね。ガラックでいきます。」
ガラック:「そう、呼び捨てで結構。かけて下さい、どうかお付き合いを。」
「偵察中なんでしょ? お邪魔じゃあないんですか?」
「まあ職業柄、どういう服が流行っているか常に観察して把握しなければなりませんからね。…クリンゴン人の装いのセンスには独特のものがあります。」
「ええ、ほんとに。」
「興味深い。中でも特に、あそこにいる 2人の服装は…研究してみる価値がありますね?」
見上げるベシア。
ガラック:「あの方は。」
店にターナがやってきた。
すると、ルーサとベトールが席を立った。1階に降りてくる。
その様子を見ているオドー。

デュラス姉妹とターナは、貨物室へやってきた。
ルーサ:「さーて、約束のものをもらおう。」 一匹のネズミがいる。
ターナ:「手配中だ。」
ベトール:「それでは話が違うじゃないか。」
「カーデシアに追われたせいで、手に入れられなかったんだ。」
ルーサ:「言い訳など聞きたくないね!」
ベトール:「金はどこにある?」
ターナ:「明日には必ず届く。」
「いいか? 私達をこんなところまで来させておいて…無駄足になったら命はないと思え。」
出ていくルーサとベトール。ターナも去る。
すると、ネズミが姿を変えていく。オドーになった。


※10: Bajoran Deputy
(リチャード・ライダー Richard Ryder) 初登場。声はガラック役の大川さんが兼任

※11: Lursa
(バーバラ・マーチ Barbara March) 声:磯辺万沙子、TNG ナチェフ、コンピューター、DS9 2代目ミラなど (TNG と統一)

※12: B'Etor
(グウィニス・ウォルシュ Gwynyth Walsh VOY第78話 "Random Thoughts" 「心の罪を裁く星」のニミラ主任調査官 (Chief Examiner Nimira) 役) 二人とも TNG第100・101話 "Redemption, Part I and II" 「クリンゴン帝国の危機(前)(後)」以来の登場。後に TNG第173話 "Firstborn" 「クリンゴン戦士への道」、映画第7作 "Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」にも登場。声:藤木 (藤生) 聖子、TNG ロー、VOY 3代目セスカなど (TNG と統一)

司令官室に戻ったシスコに話すキラ。「ターナの件で、聴聞会を要請しました。」
シスコ:「見通しは。」
「大臣 2人と大物閣僚 1人の賛成票を取り付けたので、ほかの方も右へならうでしょう。」
「そうか。」
「それに…安全が保障されるのならば、ターナを追ってコー・マを抜ける者が 2人はいるそうです。」
「そうか。」
「…それともう一つ。…最初は中佐を疑って……全て、中佐のお力添えがあったおかげです。…心から感謝しています。」
「ロールマン提督にも是非そう報告してもらいたいね。」
「…中佐?」
「知らないとでも思ったのか。信頼関係を大切にしたいな。」 司令官室へ入るシスコ。
キラは離れた。

司令官室のシスコ。「どうだオドー。…デュラス姉妹に動きはあったか。」
オドー:「ここには仲間がいるようです。」
「仲間?」
「元コー・マのメンバーがその一人です。」
「ターナか。つながりがあるのか。」
「何らかの取引があるらしく、支払いを迫られているようです。金が届くのを待っています。」
「コー・マを抜ける 2人が運んでくるんだな。」
「なぜ御存知で。」
「……その 2人のことはキラ少佐に聞いた。」 外のキラを見るシスコ。
「少佐にも話しておきますか?」
「しばらく待て。」

仕立屋にいるガラック。ルーサとベトールがやってきた。
ルーサ:「ここがお前のブティックか。」
ガラック:「ようこそいらっしゃいました。最新のファッションを御紹介いたしましょう。クラウス4号星※13の、シルクのランジェリーなどいかがでしょうか。」
ベトール:「調子に乗ってしゃべってると、その舌を引っこ抜いてやるよ!」 手を伸ばし、声を上げる。
ガラックは身構え、微笑む。「いやあ、お手柔らかに。クリンゴンの御客様は初めてなもので。では…どういった物をお探しなのでしょうか。」
ルーサ:「買い物に来たんじゃない。売りに来たんだ。」
ベトール:「聞いた話だが、お前はカーデシアの代表としてここに残ってるんだろう?」
ガラック:「とんでもない、私はただの洋服屋に過ぎませんよ。」
「下らん押し問答をしてる暇はない、ターナ・ロスの首を欲しくないのか!」
「あの男をカーデシア当局に渡してくれると言うんですか?」
ルーサ:「引き換えにいくらなら出す…」
ベトール:「ラチナム※14の延べ棒で払ってもらおう。」
パッドを使うガラック。ルーサに見せる。
つばを吐くルーサ。
ベトール:「フン!」
ルーサ:「バカにする気か!」
ガラック:「お二人ともお待ちを! …ここからが交渉でしょう。短気はいけません。私はいい交渉相手です、できるだけ御希望に添いますよ。…とにかく、腹を割っていきましょう。」

ドアチャイムに身体を起こすターナ。普段着に戻っている。「どうぞ?」
部屋に入り、微笑むキラ。「4人目の票を取れたの。これで聴聞会は決まったわ? あなたは無事に特赦を受けられるわよ?」
ターナ:「知らなかったよ、君は大した政治家だな?」
「私が? 政治家だなんてそんな、とんでもないわ?」
「まんまとシスコや連邦を操って、政府の連中を動かしたじゃないか。」
「騒いだだけだわ。あんまりうるさいから連中が根負けしたのよ。」
笑うターナ。「…我々の思惑通りだ。今の君なら、奴らを説得できると思ってた。」
キラ:「我々というのは? …私がいると知ってここに来たのね。…あなたを信じてたのに。」
「コー・マは、甘くない。…ベイジョーの自由のために戦っているんだ。君も昔は戦ってたろ。」
「今だって戦っているわ。」
「自分をごまかすのはよせ! …連邦の連中は信じられないとか、臨時政府はあてにならないと言っているが、その間で美味しい役を演じてるじゃないか。」
「ひどすぎるわ!」
「図星だろ、キラ少佐!」
「私だって連邦には頼りたくない、でも現状では…」
「連中が与えた柔らかなベッドに慣れたらもう出られないさ。戦いの場には戻れない。」
「それじゃ私に連邦を裏切って、彼らを武力で追い出せとでも言うわけね?」
「違う。流血沙汰はもう御免だ、本当だ。俺はこの先もう誰も傷つける気はない。…だから協力してくれ。」
「私をだましてたくせによく言うわ、これ以上利用されるのは御免よ。」
「目的を果たすためにワープできるシャトルが欲しい。…君だけを頼ってここまで来たんだ。」
「…どういう計画か聞きたいわ。」
「あと一歩で一滴の血も流すことなく、ベイジョーにとって理想の独立国家を築くことができるんだ。」
「方法は?」
「フン、リスクが大きすぎる。これ以上話すことはできない。」
「この私がシスコに、言うとでも思ってるの?」
「その時に初めて、君の本心がわかる。…そうだろ。」


※13: Kraus IV

※14: latinum
初言及

レプリマットにいるベシア。「やあ。ガラック、元気かい? よかったらこっちへ。」
ガラック:「誰かに、見られてる気がします。」
「スパイは大変だな?」
「人生には羽目を外して楽しむ時と、用心して行動すべき時がある。例えば今は、後者です。コー・マのテロリストが 2人ここに来ている。」
2階で、ターナが 2人のベイジョー人と話している。
ベシア:「テロリスト? …何をしに来たんだろ。」
ガラック:「私にも、わかりません。目的を知りたい。2人で組めば、きっと探り出せますよ。」
「僕はドクターなんだよ、そんな…」
「一旦彼らの狙いを突き止めてしまえば、絶対に対策が立てられるはずだ。」
「悪いんだけど、そろそろ行かないと。」
「待って、ドクター。そろそろ私のブティックに来ていただきたいですな。今夜はどうです? 20時55分に来てくれませんか。あなたを生まれ変わらせるような、素晴らしいスーツをお見せいたしますよ。」
「スーツ。」
「うん。」
「テロリストの話から、いきなりスーツの売り込みかい?」
「とにかく、是非ともいらして下さい。20時55分に新しいスーツを用意してお待ちしています。いいですね?」
「ああ…ああ、わかったよ。それじゃ、ひとまず失礼するよ。」
「うーん。」
話し続けるターナたちを見たベシア。「スーツね?」
ガラック:「うん。」

ベイジョー諜報ネットの情報を見ているキラ。コー・マの活動状況だ。
司令官室から出てきたシスコ。「少佐。」
慌てて画面を消すキラ。「何でしょう。」
シスコ:「…コー・マを脱退してきた 2人に、できるだけ早く会いたい。」
「はい。すぐに手配を。」
「2人の印象は。」
「…というと。」
「ターナ・ロスと同じくらいに、信用できる連中か。」
「もちろんです。」
ベシアが来た。「シスコ中佐。」
離れるキラ。
ベシア:「是非、相談したいことが。」
シスコ:「ああ、何だ。」
キラはシスコを見ながら、ターボリフトで去った。
ベシア:「例のカーデシア人の、ガラックですが。もうとても…僕の手には負えそうもありません。」
シスコ:「どうした。」
「スーツを売ると言うんです。」
「スーツ。」
「20時55分に来いと。」
「なぜ妙な時間に呼ぶ。」
「わかりませんが、こちらに来ているテロリストと関係がありそうです。ガラックは 2人で組んで、奴らの企みを探り出そうと言うんです。何で僕を誘うのかもわかりませんよ。」
「彼には何か含むところがあってそう言っているのかもしれない。我々に共通の敵が存在することを知らせたいんじゃあないのかな。」
「どうしたらいいんでしょう。」
「私の意見だが、その新しいスーツを買いに行くべきだ。」

保安室に入るキラ。「忙しい?」
オドー:「何の御用でしょう。」
「……その…議会へターナたちを連れて行く際の警備体制は大丈夫?」
「ご心配なく、ちゃーんとやっていますとも。」
「……そう?」 ドアへ向かうキラ。
「…ベイジョー人には…私などにはとても真似できない、能力が一つあります。」
「それは?」
「うわべを作る。虚勢を張る能力です。…本心を隠すことは私には非常に難しい。※15
「…私がいつもあなたに意見を求めるのは、そのせいよ? 率直な意見が聞ける。……私の過去を知ってる?」
「…かなり詳しく知っていますよ。」
「誇りに思えないようなこともしてきたわ。ハルという基地※16を襲ったことは、今も夢に見てうなされる。…でも少なくとも、当時は信念をもって行動していたわ。」
「……それでは…今は迷いがあるということですか?」
「私もあなたも連邦の人間じゃない。」
「というと?」
「…私には闘うべき相手がいるのに、自分を欺いて現状に甘んじてるのかもしれないわ?」
「どうやら苦しい選択を迫られているようですね? …どちらを選びます?」
「どちらかを裏切ることになるわ。」
「自分を裏切らない道を選ぶことです。」
「……とは言えターナたち仲間を裏切ることはできない。」
「仲間? …彼らは仲間ですか?」
「昔は、私もああだったわ。」
「…今はどうです。」
「協力を断ることもできるわ? 無視すればいい。」
「…知ってますか、ジョレニアン星のダチョウ※17は敵が来ると水に潜って姿を隠す。それで溺れ死ぬこともあります。」
「ターナたちが何をする気でいるのかはわからないけど、やっぱり隠れて見て見ぬふりをすることはできないわ。……本当の戦争の方が楽だったような気がする。」
オドーはコミュニケーターに触れた。「オドーから司令官。」
シスコ:『何だ。』
「今この部屋にいらっしゃる方からお話があるそうです。」

ガラックはベシアを迎え入れた。「ドクター、遅いですよ! 急いで、もう 20時57分です。」
ベシア:「ああ、あの…」
スーツを渡すガラック。「さあ、これを好きなだけ試着して下さい。ただしくれぐれも音は立てないように願います。」
ベシアは試着室に押し込まれる。「僕はただ…。」
仕方なくスーツを合わせてみるベシア。ドアが開く音がした。
ガラック:「時間通り、21時少し前だ。いらっしゃいませ。」
ベトール:「下らん挨拶など必要ない! 本気で取引する気はあるのか。」
「確認のためにもう一度聞かせてもらいたいのですが、支払いは例のベイジョー人の身柄と引き換えでいいんですね?」
ルーサ:「ターナ・ロスとは 4時間後に会って取引することになってる。」
「そちらの取引は、どんなものです…」
ベトール:「お前には、関係ない。」
「やはりカーデシアの代表として全てを把握していませんとね。関係はあるはずです。」
ルーサ:「…我々から奴に、ビリトリウム※18を売る予定だ。」
ベトール:「…ベイジョー8号星※19の衛星で落ち合う約束になっている。そこで奴を引き渡す。」
出ていくデュラス姉妹。ガラックは試着室を開けた。
ベシア:「ビリトリウムって。」
ガラック:「ああ、非常に珍しい水晶元素で、強力なエネルギー源となるのですが利用するためには…反物質変換機がいります。ターナ・ロスが、ここへ来る前にカーデシアに追われていたのは変換機のためです。盗んだのに。」
「じゃあ両方そろったら。」
「そう、おわかりでしょ? 爆弾を手に入れたも同然。それも、特にすさまじい破壊力をもつ爆弾です。」


※15: 原語では「あなた方の鼻を真似るぐらい難しい」と言っています

※16: ハル基地 Haru Outpost

※17: Joranian ostrich

※18: bilitrium

※19: Bajor VIII

司令室。
シスコ:「逮捕は無理だ。まだ罪を犯したわけじゃない。」
オドー:「共謀罪に当たります。」
ベシア:「何を共謀したんです。ターナの狙いすらわからない。」
オブライエン:「姉妹との取引が済んだら、爆発物の所持を理由に逮捕できますよ。明らかな証拠もあります。」
キラ:「その通りだわ、ターナを泳がせましょう。」
シスコ:「そうしよう。」
「…ターナと同行します。」
「それは許さない。」
「聞いて下さい。もしも一緒に行かなければ、ターナは何かあるのではと警戒するはずです。安心させるには、私も行くしかない。…それにターナが失敗しても、コー・マの連中はあきらめません。…少なくとも、組織の狙いは探っておくべきです。」
「オブライエン、私と 2人で一足先にベイジョー8号星へ行って、探知されないように張り込もう。」
オブライエン:「了解。」
「ダックス、君はカーデシアの動きを監視して、我々に連絡してくれ。奴らも必ず来る。」 キラに命じるシスコ。「…ターナと出発しろ。では現地で。」

保安室。
ターナとキラがエアロックにいる様子が、モニターに映っている。2人は乗り込んだ。
オドー:「2人はシャトルに乗りました。」

司令室のダックス。「了解。DS9 からガンジス※20。」
シスコ:『何だ。』

衛星のそばにいるガンジス内に、ダックスの通信が響く。『2人はヨウスコウ※21に乗り込み、発進準備にかかりました。』
シスコ:「了解した、大尉。メインパワー・システムを停止。」
軌道上で動きを止めるガンジス。
オブライエン:「…静かですね。」

ワープ航行するヨウスコウ。
キラ:「ベイジョー8号星までの距離、残り 12万キロ。通常エンジン。」
ターナは壁面に、何かの装置を取り付けた。
キラ:「それは何?」
ターナ:「反物質変換機だ。この船のワープドライブからパワーを充電する。」
「真正面にクリンゴン艦が姿を現したわ。」
「大丈夫だ。」
2つの衛星をもつベイジョー8号星のそばで、バード・オブ・プレイが遮蔽を解除した。
ターナ:「会うことになってる。」
キラ:「クリンゴンと? なぜ。」
「今にわかるさ。」

ガンジス。
オブライエン:「クリンゴンが転送準備しています。」
シスコ:「発進の準備をしろ。」

クリンゴン艦と向き合うヨウスコウ。
ターナの前に、ルーサとベトールが転送されてきた。
バッグを渡すターナ。「約束通り、延べ棒を持ってきた。13キロ※22ある。」
ルーサ:「ほーら、こっちもだ。」 容器を投げ渡した。
ベトール:「エ。ヒマッハ。」 デュラス姉妹は再び非実体化した。
キラ:「それは何?」
ターナ:「独立の鍵だよ。」

報告するオブライエン。「クリンゴン艦が、遮蔽して発進。」
シスコ:「…コースセット、キラのシャトルに接近する。」
「1分12秒後に、至近距離です。」
動き出すガンジス。

呼びかけるダックス。「DS9 からガンジス。」
シスコ:『どうした。』
「カーデシアの戦艦アルドラ※23が、国境を越えました。ヨウスコウに接近する模様。29秒後に、ベイジョーの領域へ入ります。」

応えるシスコ。「了解した。」
オブライエン:「ヨウスコウの、センサー域に入ります。」

通常航行中のヨウスコウ。
警告音に気づくターナ。「何事だ!」
キラ:「別のシャトルよ?」
「我々を待ち伏せしていたんだな? なぜバレた。」
「カーデシアの戦艦も 3分でやって来る。さっきのクリンゴンが売ったのよ。」 星図を見るキラ。
「ワープエンジンで発進しろ。」
「無駄よ、逃げ切れないわ?」
「手はほかにもある!」
立ち上がるキラを、ターナは殴り倒した。
壁面のフェイザーを手に取り、キラを椅子に座らせるターナ。「裏切ったな。DS9 へ針路を取れ。」
キラ:「嫌よ!」
「従わなければここで爆弾を使うぞ? ベイジョー8号星の住民は全員死ぬ。」
「…何千人もの仲間を犠牲にする気?」
「その命は君がコースをセットするかどうかにかかっているんだ。」
仕方なく操作を始めるキラ。

オブライエンは報告する。「ワープします。」
シスコ:「後を追え。ガンジスからヨウスコウ。減速しろ。従わねば攻撃する。」

ターナはビリトリウムをセットしている。
流れ続けるシスコの通信。『繰り返す、直ちに減速しなければ攻撃を開始する。』
ターナ:「部下が乗っているんだ、本気で撃ちはしないだろうが万一に備えよう。」 通信に応える。「よく聞け、こちらはコー・マだ。この船にはビリトリウムを使った爆弾装置を積んでいる。攻撃すれば、それが爆発するぞ。」

ワープで追うガンジス。
オブライエン:「もしもワープ中に爆発すれば、放射能汚染が広範囲に広がります。」
シスコ:「奴はステーションへ戻るつもりだ。こちらは連邦のシャトル、ガンジスだ。カーデシア艦、応答せよ。」
コンソールにダナーが映った。『中佐、やっと我々と手を組む気になったか。』
シスコ:「ガル・ダナー。ターナはヨウスコウというシャトルに、強力な爆発物を積んでいる。DS9 に向かうのを阻止できないか。」
『…ここからシャトルまで 2分14秒はかかる。』
オブライエン:「それでは 1分遅れます。」
『いい機会だからお前たちに一つ警告しておこう。』
通信を切るシスコ。「トラクタービームで引きつけるのは。」
オブライエン:「それは無理です。向こうは 27秒先行してます。撃墜するしかないでしょう。」
「…光子魚雷を準備しろ。ヨウスコウが減速したら発射する。」
「了解。」

ガンジスに追われるヨウスコウ。
キラ:「DS9 まで 10万キロに接近。…一滴の血も流さず解決するですって? ステーションにも何百人というベイジョー人が住んでいるのよ。」
ターナ:「この俺を信じることだ。」
「ハ。」
「コースを変更しろ、これから急いでワームホールの入り口に向かうぞ。」
「…ワームホール。…標的はステーションじゃないのね? あんな装置でワームホールを爆発できるとでも思ってるの?」
「爆破する気などない。入り口を潰すだけだ。」
「…そんなことをしてもベイジョーのためにならないわ。」
「ワームホールが消えれば、連邦もカーデシアも引き上げる。違うか? …針路を変更しろ、早く!」
キラはコンソールを叩いた。揺れるランナバウト。
方向を変えるヨウスコウ。

オブライエンは言った。「ワームホールへ突入する気だ! 振り切られます!」

ワームホールへ入るヨウスコウ。
キラはターナと取っ組み合う。
ヨウスコウはワームホール内部を進む。
ターナはスイッチを押そうとするが、止めるキラ。
ガンマ宇宙域側へ出てくるヨウスコウ。
ターナはスイッチを押した。
発射される爆弾。
動きを止めるヨウスコウの前で、大きな爆発が広がった。
続いてワームホールから出てくるガンジス。ヨウスコウに近づく。
キラにフェイザーを向けているターナ。「覚悟しろ。」
シスコ:『こちらシスコ。キラ少佐、無事か。』
「キラの命は俺に懸かっている! 無事に返したいなら俺の言うとおりにしろ!」
『いいかよく聞けターナ。今すぐ私に降伏しろ。もうすぐカーデシアの戦艦が来る。今度はお前を助けてはやらんぞ。…いいんだな。』

ターナの返答を待つシスコたち。

ターナはフェイザーをキラに渡した。
キラ:「中佐、ターナは降伏しました。」

オブライエンと顔を見合わせるシスコ。外にはヨウスコウが見える。

DS9。
キラにフェイザーを向けられ、エアロックを出るターナ。オドーが待っている。
手錠をかけられるターナ。
キラ:「ターナ。独立を手に入れるなら、別のやり方を取るべきよ。状況が変わったの。いつかあなたにもわかるわ。」
ターナ:「裏切り者。」 連行された。
シスコはキラに近づく。
2人は、歩いていった。


※20: U.S.S.ガンジス U.S.S. Ganges
ドナウ (ダニューブ) 級、NCC-72454。初登場。吹き替えでは「ガンジー」になっています (U.S.S.ガンジーはアンバサダー級、NCC-26632。TNG第150話 "Second Chances" 「もう一人のウィリアム・ライカー」など)。なおガンジスには上部後方に、いわゆる「ロールバー」という取り外し可能な構造物がついています。今後 2隻以上のランナバウトが同時に登場する際など、見分けるために使用されます

※21: なぜか吹き替えでは「スターゲイザー」になっています (U.S.S.スターゲイザーはコンステレーション級、NCC-2893。TNG第9話 "The Battle" 「復讐のフェレンギ星人」など。ただしこのスターゲイザーは、現在は就航していません)

※22: Aldara

※23: 延べ棒などの数ではなく、重さで言っています

・感想
本国放送では第3話ですが、日本や製作順では 4話目となるベイジョーのエピソード。パイロット版や第4話とは、オドーのメイクなどに違いが見られます。TNG からのルーサやベトールを含め、キャラクターそれぞれの立場が複雑に絡み合う…。こんなのが第3話というのが非常に DS9 らしいですね。対立するシスコとキラも、この時期ならではです。ただ最後のランナバウトのチェイスでもわかるように予算は費やしてはいるのですが、印象に残りにくい話ではあります。
ストーリー自体よりも、ガラックの最初かつ第1シーズンでは唯一の登場というのが重要ですね。初めてこの回を観た時、あの濃いキャラクターは確実に再登場するだろうと家族で予想したのを思い出します。演じ方が俳優のロビンソン本人に任せられたというだけはありますね。職業が仕立屋というのはドラマ「0011ナポレオン・ソロ」で、諜報組織アンクルの入り口が仕立屋「デル・フロリア」であることへのオマージュとなっています (なおプロムナードにある店舗一覧には、「デル・フロリアの店」という項目がお遊びで入っているそうです)


dot

previous第2話 "Emissary, Part II" 「聖なる神殿の謎(後編)」 第4話 "A Man Alone" 「宇宙ステーション殺人事件」previous
USS Kyushuトップ | DS9 エピソードガイド