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エンタープライズ エピソードガイド
第59話「兵器工場潜入」
The Shipment

dot

・イントロダクション
※1ズィンディ評議会の室内に、偵察機と似た球体の映像が空中投影されている。
デグラ※2:「カリンドラ星系※3の無人惑星で、この兵器をテストする。だがキモサイト※4がもっと必要になるだろう。…少なくとも、あと 100キロはいるだろうな?」
爬虫ズィンディ※5:「グレイリック※6に連絡しよう。テストが上手くいったとして、実際にいつこの兵器を配備できる。」
「…数週間後だな。」


※1: 後編などではありませんが、珍しく前話のあらすじが冒頭に挿入されています。本国での初放送時、2週間開いたせいかもしれません。当然その分、本編が短くなっているわけですが…

※2: Degra
(ランディ・オグルスビー Randy Oglesby) ENT第56話 "Rajiin" 「美しき潜入者」以来の登場。声:木村雅史

※3: Calindra System

※4: kemocite

※5: Xindi Reptilian
(John Eddins) この評議会の爬虫ズィンディは、前回の ENT "Rajiin" などに登場した時とは俳優が異なっています。今回の描写からは、同一人物なのか別人の設定なのか判別はできません。ですが服装も異なっており、別人の可能性が高いものと思われます。声:白熊寛嗣 (前回までと統一されており、同一人物と見なしているのかもしれません)

※6: Gralik

・本編
エンタープライズ。
リード:「防衛システムがないんですか?」
トゥポル:「センサーも人工衛星も感知していませんし、警備艇がいる様子もありません。」
アーチャー:「ズィンディの科学技術は、我々のとは違う。検知できないだけかもしれないぞ。」
リード:「この星で兵器を製造しているという情報が、本当とは限らない。ホシの友達を信用しすぎたかもしれませんよ?」
司令センターのモニターに、惑星の図を出すアーチャー。「大量のエネルギーだ。ここが兵器工場かもしれない。」
トゥポル:「雷雨の可能性もありますし、反磁性体の鉱脈か、もしくは…」
「ああ、センサーの異常かもしれない。…だがズィンディの兵器の手がかりを得る可能性があるなら、調べなきゃならない。」 アーチャーは図を縮小させる。「星系内に入ったら、月の裏側につける。見つからずに済む。…ヘイズ少佐にも、我々と偵察任務に来るように言え。2時間後に出発だ。」

シャトルポッドが惑星へ向かう。
アーチャー:「エンタープライズへ。」
トゥポル:『どうぞ。』 音声が乱れている。
「例のエネルギー発生場所の 12キロ北に着陸する。検知された形跡はあるか。」
『スキャン反応はまだありません。通信が途切れそうです。』
「進入角度が大きいし…」 シャトルが揺れた。前の窓は光っている。「船体をイオン化したからだ。スキャンされてもビームを分散できる。」
『了解。』
リード:「検知しても、流星と思うでしょう。」
軌跡を残していたシャトルポッドは、大気圏を抜けた。

暗いジャングルを進む 3人。
アーチャー:「距離は。」
リード:「800メートル。…その丘の、向こうです。」
歩くのをやめた。
リード:「エネルギーの発生場所は、あれですね。」
巨大な施設が見える。入口が開いた。
双眼鏡を使うアーチャー。毛長ズィンディが何人も出入りしているのが見える。
アーチャー:「ズィンディだ。」
ヘイズ※7:「爬虫類の?」
「いや、データベースにあった別の種族だ※8。」

エンタープライズは、衛星の影に隠れている。
アーチャー:『いろんな信号を検知してる。陽電子放射、反陽子バースト。何をしてるにしろ、大量のパワーだ。」
トゥポル:「ホーキンス伍長※9が、突入班と待機しています。」
『そのまま待機させておけ。まだ軍隊を送り込む段階じゃない。建物の周辺を調べてみた。知られずに侵入できると思う。建物内では、通信機のスイッチを切っておく。0400時に連絡する。以上だ。』

歩き出すアーチャーたち。

建物のそばまで来た。
リード:「警備関係の装置はありませんね。」
アーチャー:「生体反応は。」
「建物内におよそ 80名。付近には誰もいません。」
アーチャーはフェイズ銃の設定を調整し、柵に向けて撃った。切っていく。

機械や道具が並んだ部屋に入る 3人。
そばの窓から、内部の様子が一望できる。脇に隠れるアーチャー。
巨大な機械が稼働している。
並んだ筒の一つを手にするリード※10。「船長。放射線分解化合物ですが、我々には未知の物質です。この部屋の中に、数百キロあります。」
音がした。隠れる 3人。
声が聞こえてきた。「ここ 3サイクルの製品に不純物が混じっていたぞ。」 毛長ズィンディたちだ。
毛長ズィンディ1※11:「第3処理室の密閉が完全ではありませんでした、修理中です。」
「生産速度を 60%アップせねばならん。さらに 2チーム追加しろ。」
毛長ズィンディ2※11:「デグラの注文は無茶ですよ。この工場では、そんなに大量に生産できません。」
「…お前の仕事はキモサイトの合成だろ。不平より早く仕事に戻れ! …ここの製品を再検査だ。使えれば回収、残りは廃棄しろ。」
出ていく部下。リーダーは、筒が一つだけ取り出されていることに気づいた。
少し考えるが、元の場所に戻す。自分も部屋を後にした。

転送室に、筒が一本転送されてくる。手にするタッカー。
トゥポル:「収容しました。」
アーチャー:『最優先で分析してくれ。』
「わかりました。」

コミュニケーターを閉じるアーチャー。
リード:「船長。ここは、明らかに兵器造りに関わってる。すぐにでも機能を停止させるべきです。」
ヘイズ:「爆弾を 2発、軌道から撃ち込めばそれで破壊できます。」
アーチャー:「打撃にはなるだろうが…本来の目的がある。キモサイトをどこへ運ぶか知りたい。兵器のありかを突き止めるんだ。」

工場のドアが開き、毛長ズィンディのリーダーが独りで出てきた。

歩いてきたリーダーは、別の建物に入る。ライトをつけた。
テーブルにあった瓶を開ける。
そこへリードとヘイズが銃を向けながら近づいた。驚くリーダー。
アーチャー:「お前に聞きたいことがある。」


※7: ヘイズ少佐 Major Hayes
(スティーヴン・カルプ Steven Culp) ENT第53話 "The Xindi" 「トレリウムD」以来の登場。声:斉藤次郎

※8: データベースは ENT第54話 "Anomaly" 「オサーリア人の襲撃」、毛長ズィンディの情報は ENT第55話 "Extinction" 「突然変異」より

※9: Corporal Hawkins
ENT "Anomaly" など

※10: リードは右から 4番目の筒を抜いていますが、ズィンディが入ってくるシーンになると 3番目になっています

※11: ナマケモノその2 Sloth #2
(Jack Alsted)

ナマケモノその3 Sloth #3
(Sam Witwer) メイクが濃いため、俳優の判定はしません (恐らく本文中の毛長ズィンディ1 が Witwer =その3 だと思われますが…) 声:堀内賢雄 (毛長ズィンディ1)。前話のあらすじ部分でタークウィンが登場しているので、その兼任だと思われます

毛長ズィンディは尋ねた。「何者だ。……私に何の用だ。」
フェイズ銃を向けるアーチャー。「座れ!」
リード:「ほかに誰もいません。独り住まいのようです。」
「…外を見張っていろ。」
出ていくリードとヘイズ。
アーチャー:「名前は?」
毛長ズィンディ:「…グレイリック・ダール※12だ。」
「私はジョナサン・アーチャー。…地球から来た。」
ダール:「それが私のうちへ押し入ったことの説明になるのかね。」
「…キモサイトとは何なんだ?」
「…マルチフェイズ・アイソトープだ。」
「何に使う。」
「利用法は数多くある。精製のレベルにもよるがね。」
「…デグラという人物を、知ってるな。…何者だ。」
「君には関係のないことだ。」
アーチャーはドアを閉めた。「奴はキモサイトをどうする。」
ダール:「キモサイトには多用な利用法があると言っただろう! 客にいちいち何に使うか聞いたりはしない。」
「聞くべきだな! 兵器に使われ、私の種族が絶滅するかもしれない!」
「…何?」
「その兵器をどこで造ってる! いつ完成するんだ!」
「何の話なのかまるでわからん。」
アーチャーは銃を突きつけた。「答えを聞くまではここを動かないぞ!」

エンタープライズ。
ラボのトゥポル。「亜量子の痕跡を、何とか特定できました。ズィンディ偵察機のものと、一致しますね。」
タッカー:「船長、間違いないですよ。キモサイトは地球を攻撃した兵器に使われていました。」

アーチャーたちはダールの家の外にいる。
トゥポル:『尋問で何か、聞き出せましたか。』
アーチャー:「いや、今の情報が役立つ。」
タッカー:『船長、もう一つ。連中のライフル※13をスキャンしました。やっぱり量子痕跡が同じだった。分解する、許可をください。』
「…進めろ。2時間後に、また連絡を入れる。」
トゥポル:『了解。』
リード:「…おめでとうございます。…3ヶ月前この領域に来たときは、ズィンディが何者なのかもわからなかったのに、これで兵器工場を一つ破壊できます。」
アーチャー:「……戦争を止めに来たんだ、始めるためじゃない。」
「奇襲されたんですよ?」
「我々が攻撃すると聞かされたせいでな。向こうにすれば自衛手段だ。この工場を破壊すれば、やはり人類は残虐で危険だと思われる。」
「死んだ 700万人を忘れてらっしゃいませんか。」
「……ヘイズ少佐に、爆風抑制機※14を設置させろ。工場は爆破しても、ほかの場所にまで被害を出したくない。」
「……グレイリックはどうします。我々のことをバラしますよ。」
「…必要なときは私が対処する。我々の存在は誰にも知られたくない。」

ケースを運ぶタッカー。「船長こんなもん何に使うんだろうなあ。」
トゥポル:「どうしてもいるそうです。」
「量子分析ならもう 3度もしたんだぞ? 信用してないのかな。」 タッカーは転送台に置いた。
「事実を突きつけると言っていましたが。」 コンソールを操作するトゥポル。
ケースが転送された。

ダールは言った。「いつまでうちに閉じ込めておくつもりだ。」
ヘイズ:「アーチャー船長次第だ。」
「なら、私は書斎にいると言ってくれ。」
「悪いがここでジッとしててもらう。」
「仕事があるんだよ。」
「私も仕事だ。座ってもらいます。」
「…知ってることはもう、全部話した。」
ドアが開いた。
ダール:「ああ、船長。私のことを忘れたんじゃないかと思ったよ。」
合図するアーチャー。ヘイズは出ていく。
アーチャー:「兵器造りには関わってないと言ったな。」
ダール:「その通りだ。」
「これは何だ。」 アーチャーは持っていた物をテーブルに投げた。金属のかけらだ。
「…何だかわからんね。」
「これは 700万人を殺した偵察機の破片だ! …死んだパイロットは、ズィンディだった。そしてこの合金も、ズィンディ製だ。あんたが作ってる物質と、同じ量子痕跡をもってる! 惑星を破壊できるほどの更に強力な兵器を、造っているのはわかってるんだ! 製造場所を教えろ!」
「…君はうちに押し入り…ただのねじれた金属片を持ってきて、それだけで私を大量虐殺者というのか。」
アーチャーはフェイズ銃を取り出し、ダールを壁に押しつける。
ダール:「君の種族を以前に見たこともない。地球なんて星、聞いたこともない。信じようが信じまいが、数百万人が殺されたこととは無関係だ。」
手を離すアーチャー。

兵器室のフロックス。「少佐、お手伝いに呼ばれるのは光栄ですが、武器類は私の専門じゃありませんので。」
タッカー:「スキャンしてみたら有機的なパーツがあるんだよ。生き物関係は俺より、ドクターの畑だろ?」
ズィンディの銃の中には、イモムシのような生き物が入っていた。
タッカー:「どう思う?」
調べるフロックス。「神経インパルスを発生させていますねえ。」
タッカーは一匹を取り出す。「ああ…生きてるのか?」
フロックスは手の上に置いた。「ペットには不向きでしょうが…」 臭う。「確かに有機体です。」
小さく音が聞こえた。いま虫を取り除いたところに、また下から同じように出てきた。
フロックス:「繁殖能力も備わってるようだ。」

ダールの家。
ダール:「このキモサイトは極めて純度が高い。」
アーチャー:「ここの工場で作ったものか。」
「そうだ。…さまざまな種族と取引がある。ズィンディだけじゃない。使用法まで考えなかった。デグラが純度の高いものを注文してきたときには、祝ったもんだ。この収益で、コロニーの経済が潤うからな? だが高純度のものがいる理由までは思わなかった。欲に目がくらみ、兵器に使われる可能性が見えなくなっていたんだな。」
「デグラは爬虫類族か。」
「いいや。彼は霊長類ズィンディ※15だ。」
「ある鉱山で、一人会ったな※16。」
「君らに似てサルのようだ。…あの種族とはトラブルもなく、いつも信頼できた。だから、高純度のキモサイトは研究用だと言われて信じたんだ。爬虫類族同様、彼らももう信用できんようだな。」
「爬虫類族にも会った。」
瓶を開けるダール。
アーチャー:「一つの星で 5種族も、知性ある種が進化したとは驚きだなあ。」
ダール:「5種族? あ、ま今はそうだな。」 瓶とグラスを掲げる。
「いや、いい。」
「構わんか。」
「やってくれ。」
酒を口にするダール。「うーん。昔は、6種族だったんだ。鳥族※17だ。戦争で消えた。」
アーチャー:「消えた。」
「絶滅した。そう聞いている。母星が爆発するとき、逃げなかったんだ。」
「星の残骸は見た※18が、何があったんだ。」
「戦争が百年近く続いた。敵も味方もなく、同盟を結んではまた敵対。終戦の頃には、誰も戦争の原因すら覚えていなかった。だが終戦の理由は明らかだ。…政治的にも不安定だったがそれ以上に、我々の星は地質学的に不安定だった。…昆虫族と爬虫類族が、最後の手段に出たんだ。大量の爆発物を仕掛けたんだ、8つの巨大な地殻の裂け目にな。…星が吹き飛ぶことになるとは、知らなかったんだと思いたい。……祖父が住んでいた。以前は場所によって、空全部が鳥族で一杯だったそうだ。…だがもういない。」
「…5種族は、生き延びたんだな? こんな僻地のコロニーだけではないと思うが、その点は?」
「逃げ延びた者の子孫は、広く領域全体に散らばった。静かに暮らす者が多いがそういう奴ばかりではないようだな。」
ヘイズが入る。「船長。」
アーチャー:「すぐに戻る。」
「彼は。」
「…心配ない。」 外に出たアーチャー。
「抑制機設置しました。爆風は工場以外には及びません。ただ工場が騒がしくなってます。何かあるんじゃないでしょうか。」
呼び出しに応えるアーチャー。「アーチャーだ。」
トゥポル:『船長、この星に船が近づいています。構造が、我々を攻撃したズィンディ船※19と一致します。』
「…爬虫類族だ。」


※12: Gralik Durr
(ジョン・コスラン・ジュニア John Cothran Jr. TNG第146話 "The Chase" 「命のメッセージ」のニューダック艦長 (Captain Nu'Daq)、DS9第43話 "Crossover" 「二人のキラ」のテロック (Telok)、ゲーム「スタートレック・ボーグ」のドクター・ベニントン・ビラカ役。"Klingon" でも声の出演) 声:長島雄一、VOY ニーリックスなど

※13: ENT "Rajiin" より

※14: blast suppressor

※15: Xindi-Primate
この正式呼称が用いられるのは初めて

※16: ENT "The Xindi" で登場した、Kessick のこと

※17: ENT "The Xindi" より

※18: Avians
鳥類ズィンディ (Xindi-Avians)

※19: ENT "Rajiin" より

双眼鏡で、着陸した小型船※20を見ている。デグラたち人間ズィンディが、爬虫ズィンディと話しているのも見えた。
観察を続けるアーチャー。リードに双眼鏡を渡す。「見覚えはないか。」
爬虫ズィンディは、毛長ズィンディに向かって何かしゃべっていた。
リード:「爬虫類族は何やら怒っているようですよ?」

ズィンディの銃の構造が、医療室のモニターに表示されている。
やってきたタッカー。「いいニュースだって?」
フロックス:「ライフルの有機体部分をスキャン中です。どうやら神経経路がパワー出力の調整をするようですねえ。これほど進んだ、生物機械工学は初めてです。」
「それがいいニュースなのか?」
「ああいえ。免疫を破壊しようとやってみました。」
「…病気にするってことか?」
「うーん、しかし回復力が強かった。一通りのウイルスや病原菌に、免疫がある。そこで、次に放射性電磁波を照射してみたんです。」 虫が入った器を見せるフロックス。「デルタ線※21の放射で、効果が出ました。」
虫は全く動かない。
タッカー:「じゃ電磁波エミッターを持ってけば…爬虫類野郎が引き金引く前に銃をぶっ壊せるのか?」
フロックス:「理論的には。ただ残念ながら大量の放射線ですので、人間にとっても非常に危険です。」
「とは言えとっかかりだ。」
「うーん。」
「大発見だよ、続けてくれ。」
「ああそれと少佐、もう一つ。間違っても、オミクロン線※22は放射しないよう御用心を。増殖するんです、ご覧のように。」
大きな器の中に、何匹もの虫がうごめいていた。
タッカー:「覚えとくよ。」
フロックス:「うん。」

話すダール。「予定より早く来た。製品の引き渡しは 3日後のはずだ。これでは君らもどうすることもできないだろう。」
アーチャー:「それはどうかな?」
「彼らにキモサイトを提供して、半年近くだがこれが最後の出荷なんだ。船長。私はこの工場の主任技師だ。製品の受け渡しには立ち会うことになっている、技術的に全て注文通りか確認するためだ。…私を行かせれば例の、兵器のことについて聞き出せるかもしれん。」
「…だが危険じゃないのか?」
「…危険は承知の上だ。」
「……我々のことをしゃべらないという、保証があるのか。」
「私は、自分の技術に誇りをもっている。何年も心血を注いできたんだ。それをこんな風にして、汚されるのだけは許せない! …700万人もが、殺された。…客を慎重に見極めていれば、悲劇は防げたかもしれないんだ。同じ過ちは、二度と繰り返さない。」
コミュニケーターを取り出すアーチャー。「アーチャーだ。」
リード:『ズィンディ 2名の生体反応、こちらへ接近中です。』
フェイズ銃を出すアーチャー。

2人の毛長ズィンディがやってきた。ドアを叩く。
中で、ドアのそばに立っているアーチャー。
毛長ズィンディ1:「グレイリック、いないのか。」
声を出そうとはしないダール。
毛長ズィンディ1:「グレイリック!」 チャイムを押す。
2人は離れていった。近くに潜んでいたリードとヘイズ。
ダール:「デグラは私の不在を怪しむ。彼の連れは待つのが嫌いだしな。」
またドアを叩く音。
リード:「船長。…帰りました。」
ダール:「また来る。武装した爬虫類族とな。」
「あんたが仕事を休んだだけで?」
「この星の住人は 100人にも満たないんだ。誰か居所がわからなければ騒ぎになる。デグラは絶対に私が最終分析結果を見せるまでは帰らないぞ。私の提案を考慮すべきだ。」

部下に指示するタッカー。「そうだ、それでいい。」
トゥポル:「大丈夫なんですか。」
タッカー:「10センチ※23の分厚いデュラニウムだ。それがこいつでぶち破れるなら、思った以上にヤバいよ。」 ズィンディ・ライフルを持っている。
「…それにしても、実験場所をもっと慎重に選ぶべきじゃないんですか。」
「無人の小惑星なんか探しに行ってる暇はないんだよ。」
フロックス:「それに、少佐と私で可能な限り分析済みです。次は実際テストしてみるのが、論理的でしょう。」
「マルコムのフォースフィールド・エミッター※24を設置してある。」 起動させるタッカー。中央に板が設置されている。「これで破片が飛び散らない。」
トゥポル:「放射能や素粒子分散はどうなんです。詳細はわかっていないんですよ?」
「だからこそだ。ズィンディが乗り込んできたとき、手も足も出なかった。早いとここの銃の仕組みを解き明かさないと、次回奴らに勝てる見込みがまるでないだろ。」
トゥポルはフロックスを見た。「…用意できたら呼んで。」 兵器室を出ていく。
タッカー:「一時間くれ。」

窓から工場の様子を見ているデグラ。
爬虫ズィンディが司令室に来た。「…まだなのか。」
デグラ:「こちらが約束より早く来たんだ。」
「言い訳にはならんな。用意できていていいはずだ。全く何てのろまな連中だ。」
「彼らから学ぶこともある。例えば忍耐力だ。」
声を上げる爬虫ズィンディ。
デグラはやってきた毛長ズィンディに尋ねた。「グレイリックは。」
毛長ズィンディ1:「見当たりません。」
爬虫ズィンディ:「この規模のコロニーで見つからないわけがない。」
毛長ズィンディ2:「そこら中探しましたが誰も見てないんです。」
毛長ズィンディ1:「よくコロニーの外へ散歩に行きますので。」
爬虫ズィンディ:「散歩?」
デグラ:「彼の最終分析結果が必要だ。」
毛長ズィンディ2:「捜索隊を出す予定です。」
爬虫ズィンディ:「お前たちがノロノロ探すのを待ってなどおれんな。我々が自分で探し出す。」

明るくなったジャングルを進むアーチャーたち。ダールも一緒だ。
リードのスキャナーに反応がある。
アーチャー:「何だ。」
リード:「誰かが近づいてきます。400メートル。」
「爬虫類族か。」
「わかりません。350メートル。」
「彼を守れ。」
ダールを連れて急ぐヘイズ。
リード:「…まだ、接近中。200メートルです。150! すごい速さだ。」
走る 4人。
アーチャー:「隠れるぞ!」
空中を、2つの小型機が浮遊してきた。
辺りを捜索する。木の陰に熱反応を捉えた。
気づいたアーチャーは、フェイズ銃を発射した。落下する機械。
リードの背後に、もう一つが接近する。発射するが当たらない。
逃げていく小型機。ビームが命中したが、今度は効き目がないようだ。
機械はそのまま消えるように去った。
ダール:「シーカー※25だ。爬虫類族の偵察機だ。」 壊れたシーカーからは、生物的な触手のようなものも出ている。「戦争中は相当活躍したらしい。君らのことも、恐らく彼らに知られる。」
アーチャー:「…よく見られてないといいな。」
「この近くに洞窟がある。そこなら、隠れられる。またシーカーが来ないとも限らないからな。」
ダールについていく一行。

尋ねるタッカー。「用意いいか。」
フロックス:「はい。」
トゥポルも見ている。
フォースフィールドが起動した。
ズィンディ・ライフルを撃とうとするタッカー。だが何度やっても発射されない。
トゥポル:「何です。」
タッカー:「作動しない。そんなはずはないんだが。」
フロックス:「安全装置があるんでしょう。」
トゥポル:「何の音?」
「その銃から出ている。」
見ると、銃のランプが一つずつ消えていく。
タッカー:「カウントダウンみたいだぞ。」
スキャナーを当てるトゥポル。「エネルギーレベルが上昇しています。…オーバーロードになるわ。」
タッカー:「パワーを切れない、ブービートラップだ!」
「パワーセルを外して。」
「すぐ増殖するんだ!」
すると、タッカーは走り出した。兵器室を出ていく。

廊下を走る。クルーとぶつかり、倒してしまった。
転送台に銃を置くタッカー。残るランプは後一つしかない。
急いでコンソールを操作するタッカー。転送されるライフル。
宇宙空間に転送された直後、銃は爆発した。
ため息をつくタッカー。
トゥポルと駆けつけたフロックス。「素早い判断でしたねえ。」
タッカー:「俺のミスだ。…やっぱり無人の小惑星でテストすべきだった…。」

ブリッジ。
トゥポル:「ズィンディ船は未だ軌道上、ほかに船影はありません。」

洞窟のそばにいるアーチャー。「わかった。」 既に辺りは暗い。
トゥポル:『船長、ズィンディに存在を知られたのならすぐ船に戻られるべきかと思いますが。』

アーチャー:『心配はありがたいが、こっちでやっておくことがまだある。アーチャー、以上。』

尋ねるアーチャー。「来てるか。」
リード:「いいえ。シーカーは我々の位置を、送信できなかったのかもしれません。」
「…だといいがな。」 アーチャーは洞窟に入る。

焚き火のそばにいるダール。
アーチャー:「追っ手は来ていない。」
ダール:「ここなら見つからない。」 壁を指さす。「それは、トパリン※26の鉱石だ。スキャナーが妨害される。シーカーでもここは見つけられないだろう。…この後どうするつもりだ、船長。工場を破壊するのか? …私も工場と一緒に、吹き飛ばすか? それとも私は、ここで一思いに片づけるのか。」
「別の案を考えているところだ。」
「ぜひ、聞きたいものだな。」
「…このコロニーの人々は地球への攻撃とは全く関係がない。…君らに報復するのは間違っている。…協力すると言ったな。まだやる気は?」
「…私を信用するならな。」
「……キモサイトを奴らに渡そう。…だが注文とは違うものになる。」


※20: 母船であるはずの ENT "Rajiin" の爬虫ズィンディ船と比較すると、このシャトルが大きすぎるという指摘があります

※21: delta radiation
ENT "Rajiin" など

※22: omicron radiation
ENT第48話 "Cogenitor" 「第3の性」より

※23: 原語では「4インチ」

※24: ENT第22話 "Vox Sola" 「漂流生命体の叫び」より

※25: Seeker

※26: topaline
TOS第32話 "Friday's Child" 「宿敵クリンゴンの出現」より

命じるアーチャー。「うちへ送り届けろ。」
ヘイズ:「了解。」
ダール:「…私独りで行った方がいい。」
アーチャーは考えたが、うなずいた。「…頼むぞ。」
ダール:「……わかっている。」 歩いていった。
リード:「意見を述べても?」
アーチャー:「言ってみろ。」
「…彼を帰してよかったんでしょうか。」
ヘイズ:「仲間を連れてくるかもしれません。」
アーチャー:「君も意見を述べたいってわけか。」
「戦術上の判断を述べただけです。」
「わかった。…協力すると言った。…私は信じる。」

報告するサトウ。「船長です。…船長、どうぞ。」
アーチャー:『爆弾攻撃は待つように言え。計画を変更した。』
トゥポル:「大丈夫ですか。」

アーチャー:「2時間後に連絡するが、君とホシにやってもらいたいことがある。」

工場。
筒を用意する毛長ズィンディたち。
ダールが戻ってきた。
毛長ズィンディ1:「探してたんですよ。」
ダール:「もう積み込みは始めたのか。」
毛長ズィンディ2:「まだです。」
「よし! 最後にもう一度、純度のチェックをしたい。」
毛長ズィンディ1:「チェックは終了してます。欠陥品は 100万分の6 以下です。」
「彼らの要求を満たしているか確実にしておきたい。コロニー全体にとって重要なことだ。」
「ならすぐ始めないと。」
「君ら、アイソトープ分析をしてくれ。私は亜分子スキャンを行う。」
離れる部下たち。

アーチャーたちの前に、キモサイトの筒が転送されてきた。
アーチャー:「届いた。」
サトウ:『放射線分解を変えました。敵船に仕込めば、信号で追跡できます。』 トゥポルと転送室にいる。
「ご苦労。」 移動を始める 3人。

作業を続けるダール。
爬虫ズィンディが司令室に来た。「どこにいた。」
ダール:「私用です、あなたには関係ありません。」
「私用で出かけてうちのシーカーを一機撃ち落としたというのか?」
「コガネムシ※27を捕りに行ってたんです、シーカーでみんな逃げてしまった。」
「誰と一緒だった。」
「森へは独りで行くのが好きでしてね?」
「お前以外の生体反応も検知しているんだ。」
「独りでしたよ。」
デグラ:「シーカーで我々が来たのがわかったろ。なぜすぐ戻らなかった?」
「約束より 2日早い。」
「…何をしている。」
「最終テストですよ。」
爬虫ズィンディ:「何のテストだ! もう準備はできていると聞いたぞ。」
筒を置くダール。「私は 42年間、この工場を運営してきた。完璧な数値に達するまでキモサイト一グラムたりとも、この工場の敷地から外へ出したことはない。私の誇りだ。だがそれほど急ぐって言うならええどうぞ、もっていけばいいでしょう。だが品質が悪いからと一晩で 100キロ作り直せと言われても聞けませんからね? 我々にはほかの御客も、いるんですよ。」
デグラ:「…早く仕上げてくれ。」 爬虫ズィンディと共に出ていく。
作業に戻るダール。辺りをうかがう。

身体を低くするヘイズ。
リードは双眼鏡を使い、ズィンディの着陸船を見る。「2人いるな。コンテナを積んでる。」
ヘイズ:「船長、待機を。」

アーチャー:「わかった。」

コンテナが収容されていく。
リード:「戻っていった。」
ヘイズ:「OK です。」

アーチャーは建物に侵入した。見張っているリードたちの方に向かって、合図する。

銃を構えるヘイズ。
アーチャーが小型船の方へ近づくのが見える。

エンタープライズ。
リード:『こちら、リード。』
トゥポル:「…どうぞ。」
『船長がズィンディ船※28に潜入。』
「わかりました。」

ドアが開く。フェイズ銃を構え、中に入るアーチャー。
すぐに閉める。貨物が並んでいる。
アーチャーはその一つを開けた。

デグラたちが工場から出てくるのを見るリード。「船長。工場からズィンディ 3名出てきました。」

アーチャー:「了解。」

船長席に座るトゥポル。「リード大尉、報告を。」
リード:『ちょっとした問題発生、スタンバイを。』

リードはデグラ、ダール、爬虫ズィンディを監視する。

デグラ:「よくやってくれたな?」
ダール:「今後も御用命があればいつでも。」
「…また頼む。」

アーチャーはコンテナのキモサイト容器を、持ってきた物と入れ替える。ケースを閉めた。
外へ向かう。

ダール:「当分お会いできないとは残念ですね。」
爬虫ズィンディ:「行くぞ、デグラ。既に予定が遅れてるんだ。」
ダールはシャトルからアーチャーが降りてくるのを見た。デグラたちは気づいていない。
ダール:「特殊な作業で投資も、かさんだ。」
爬虫ズィンディ:「それに見合うだけの代金は払った。」
「十分すぎるほどもらってますが、こんな純度の高いものを何に使うのかうかがえませんか。」
顔を見合わせるデグラと爬虫ズィンディ。

アーチャーが小型船を離れるのを確認するリード。

ダール:「何かいけないことを聞きましたか。」
爬虫ズィンディ:「お前には関係がない。」
デグラ:「全員に関係ある。…我々に、危険が迫っていることがわかってな。」
ダール:「危険というと?」
「残虐な異星人の侵略だ。止めねばならん、絶滅の危機だ。」
ダールはアーチャーが見えなくなっていくのを確認した。
ダールの視線に気づき、振り返る爬虫ズィンディ。特に異常はない。
ダール:「…協力できて光栄です。」
デグラ:「ああ、誇りをもっていいぞ?」

工場を離れるデグラと爬虫ズィンディを、リードは見た。

エンタープライズ。
アーチャー:『こちらアーチャー。』
トゥポル:「どうぞ。」
『ズィンディ船の現在位置は。』
メイウェザー:「5分前に軌道を離脱しました。」
『追跡シグナルをキャッチしてるか。』
サトウ:「はい、はっきりと。」
『目を離すな。なるべく早く戻る。』
トゥポル:「わかりました。」

ダールの家。
グラスを受け取るアーチャー。「助かった。」
ダール:「ああ。」
「……どうかしたのか。」
「……同胞を、裏切ったのかもしれない。残虐な異星人のためにな。」
「…誓ってそんなことはない。信用してくれ。」
ダールはグラスを掲げた。「信頼に。」 乾杯し、口にする 2人。
アーチャー:「いずれ、デグラはキモサイトが注文通りじゃないことに気がつく。」
笑うダール。「兵器の製造は大幅に遅れるだろう。」
アーチャー:「ここへ戻ってくるぞ?」
「心配しなくていい。彼らの扱いなら心得てる。君は兵器の発見だけ考えればいいんだ。」
「…彼らは、軌道離脱後エネルギーのトンネルに入った。追跡シグナルが消えてしまった。」
「2、3光年しか移動できないはずだ。周辺をよく探せ。」
「……そろそろ船へ戻る。」
「地球攻撃の話が、もしも…全部本当のことなら、覚えておいてくれ。全てのズィンディが、敵ではないとな。」
「忘れない。」
ダールは深くうなずいた。出ていくアーチャー。

エンタープライズは衛星の影から、惑星を離れた。


※27: tree scarab

※28: 原語では「ズィンディのシャトル」

・感想
第3シーズン 7話目にして、初めてズィンディの居住地に至りました。当事者によって明かされる情報の数々に加え、以前から引き継いだライフルの件もあります。それは展開的には大事なものですが、面白いかと聞かれれば話は別です。「重要な話」と「名作」は比較的一致しがちではあるものの、近頃の ENT の状況ではそう単純にはいきません。DS9 が連続形式にして受け入れられたのとは真逆で、結局形だけ真似しても駄目なんですね。ただ先週あたりから、多少持ち直してきている雰囲気は感じています。それまでが悪すぎたんでしょうけど。
脚本は第4シーズンでは無担当の共同製作総指揮 Chris Black と、3話ぶり&最後のクレジットとなる監修製作 Brent V. Friedman によります。声優では VOY 以来と思われる、ニーリックス長島さんがメインゲスト。アーチャーと通じ合える善人異星人キャラがハマっていて、日本語吹き替え版ならではの楽しみです。


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