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エンタープライズ エピソードガイド
第60話「留められない記憶」
Twilight

dot

・イントロダクション
※1眠っているアーチャー。船が揺れた。
アーチャーは目を覚ました。揺れは収まらない。
ライトをつけるアーチャーは、上半身裸だ。「…アーチャーからブリッジ。」
応答はない。

クルー※2が、部屋から出てくるアーチャーに近づいた。「すみません。出すなと命令を受けています。」
アーチャー:「命令? …誰から。」
「船長です。」
揺れは続く。アーチャーは保安部員を殴った。

船長席のトゥポルは、宇宙艦隊の制服を着ている。
リード:「船首プレートにダメージ。」
トゥポル:「エンジンを狙って。」
「…効果なし。」
アーチャーがブリッジに入る。「これはどういうことだ!」
トゥポル:「誰か彼を早く部屋に戻しなさい!」
抵抗するアーチャー。
リード:「武器システムダウン!」
サトウ:「船長!」
異星人船の後ろに、巨大な球状の兵器が現れた。ズィンディ偵察機を何倍も大きくしたようなものだ。
その先には地球。兵器は軌道上に留まり、ビームを発射した。
見ていることしかできないエンタープライズのクルー。
ビームは海を蒸発させ、地表に赤い亀裂を作っていく。見る見るうちに広がる亀裂。
地球全体に広がり、ついに爆発した。
衝撃が船にも伝わる。うろたえるアーチャー。


※1: このエピソードは、VOY パリス役ロバート・ダンカン・マクニールの監督作品です。ENT で担当した 4話中、第47話 "The Breach" 「理由なき憎しみ」以来 3話目となります (参考)

※2: 保安部員 Guard
(Richard Anthony Crenna 故リチャード・クレンナの息子) 声:高階俊嗣

・本編
アーチャーは目を覚まし、伸びをした。服が替わっている。
部屋には水球やコクレインの像などが飾られているが、エンタープライズの自室ではない。ふと鏡に目が留まった。
アーチャーは白髪が増え、目じりに皺ができている。音が聞こえた。

女性が食事を準備していた。窓からは木々が見える。
近づくアーチャー。「あの…。」
振り返ったトゥポルは、髪を後ろで結んでいた。「早いのね。」
アーチャー:「…トゥポルか。」
「…驚くのも無理はありません。今から全て説明します。…とりあえず、朝食を召し上がってください。」
「…ここはどこだ。」
「…ジョナサン、お願い座って。…質問には全部答えるから。…今日はとても大切な日なんです。…話すことは山ほどあるわ。……最後に覚えているのは?」
「……私は司令センター※3で、長距離スキャンを見ていた。」
「司令センターを出た後のことを、何か覚えています?」
「……廊下を歩いてた。君と。ブリッジに向かってた。」
「信じられないかもしれないけど、それは……12年前のことよ。」

エンタープライズの廊下を歩くアーチャー。「映画会へは?」
トゥポル:「行く気ありません。」
「だったら上級士官は強制参加にするかな? 今夜は、ローズマリーの赤ちゃん※4だ。きっと…」
船が揺れた。
連絡するアーチャー。「ブリッジ、報告しろ。」

船長席のリード。「右舷ナセルにパワーサージ。空間のひずみのせいかと。」
アーチャー:『ワープ停止。』
メイウェザー:「…反応がありません。…右舷インジェクターが焼けました。」
サトウ:「前方に新たなひずみ。」
リード:「コース変更、左に 20度。」
揺れは続く。

トゥポルは後ろを振り向いた。アーチャーも気づく。
空間のひずみが、近づいてきた。逃げ出し、脇道に飛び込む 2人。
はがれた壁が、トゥポルの足の上に落ちた。痛むトゥポル。
金属を持ち上げようとするアーチャー。足は抜けない。
またひずみの音が聞こえてきた。
トゥポル:「早く逃げてください!」
アーチャー:「そうはいかん!」
やっとで少し持ち上がり、トゥポルは足を取ることができた。また空間異常が迫ってくる。
アーチャーはトゥポルに手を伸ばしたが、ひずみがアーチャーの身体を吹き飛ばした。
倒れたアーチャーを通過していく。揺らめく頭。
トゥポルは無事だ。

医療室のベッドで、アーチャーは目を開いた。
近づくフロックス。「ご気分は。」
アーチャー:「…頭の上にシャトルが載ってるようだ。…ほかに負傷者は。」
「いません。いくつか、質問をさせてください。」
「後にしてくれ。ブリッジへ行きたい。」
「質問が先です。…タッカー少佐と最後に話をしたのは?」
「…今朝の会議でだが? …なぜだ?」 制服を持ってくるアーチャー。「…何だよフロックス。」
「船長を襲った空間のひずみが、土産を残していった。」 フロックスはモニターに脳の状態を表示させる。「これは、船長の海馬のスキャン結果です。パラサイト群が、複数に渡って海馬に巣くってる。細胞組織には無害ですが、一定のシナプスに機能障害が。記憶をほんの短期間しか、残しておけないのです。」
「短期間しか?」 モニターの映像には黒く変色した部分がある。
「感染前の記憶を思い出すことはできます。だがその後の記憶は、数時間で消えてしまう。あなたはこの 3日間医療室にいます。…タッカー少佐と最後に話されたのは 7時間前になる。この場所で。」
「……それは、もう除去できないのか。」
「従来の治療法では効果がありません。…ですが、現在合成中の抗原には希望が。どんなに時間が掛かろうと、必ず除去してみせます。」
トゥポル:「ドクターはその後数週間治療法の発見に専念し、タッカー少佐と私は連日任務の進行状況を報告し続けました。」

船長用食堂のタッカー。「ズィンディ船を発見したと思ったんです。追跡装置を取り付けたやつです。だが…ただの廃棄物運搬船でした。」
トゥポル:「ズィンディと同じサインを発する荷物を積んでいたんです。」
アーチャー:「…今朝報告を受けた後、思いついたことがある。反物質の誘導装置を、アップグレードする方法だ。」 パッドをタッカーに渡す。「…かなり燃料を節約できる。」
無言のタッカー。トゥポルも何も言わない。
アーチャー:「…もうこの話はしてたようだな。」
タッカー:「一週間前に。でも、効果は絶大でした。」 咳払いする。「…じゃあ、機関室に戻ります。ああ、また後ほど。」 タッカーは出ていった。
「こういうことよくあるんだろ。…『日課報告』はやめにした方がよさそうだ。君の時間が無駄になる。…トリップも。」
トゥポル:「反対です。…船長の知識が必要なんです。あなたはこのミッションの成功に欠かせません。」
「…仕事が溜まってるんだろ。私は、部屋に戻る。」
「…あの時…私は足を挟まれ、あなたに逃げてくれと言いました。…もしそうしていたら…記憶障害に陥っていたのは私だったはずです。」
「君の命令を聞く義務はないよ。」
「船長。…今まできちんと御礼を言ったことがありませんでした。」
「私に礼など言う必要はない。……どうせすぐに忘れるんだ。」 出ていくアーチャー。

廊下を歩いているトゥポル。
サトウの通信。『ブリッジからトゥポル。』
トゥポル:「…何です。」
『亜空間ブイから通信が入りました。宇宙艦隊です。』
「すぐに行きます。」
トゥポル:「私が期待していた内容ではありませんでした。」

12年後のアーチャー。
トゥポル:「…フォレスト提督からあなたの健康状態に関する報告書を評議会で検討し、船長を解任したと。私が任務を引き継ぎました。」
アーチャー:「…君が船長に。おめでとうと言うべきだろうな、ずいぶん遅れたが。…どうやら……その…パラサイトの駆除は容易じゃないらしい。」
「フロックスによればそのパラサイトは、通常の時空外の生物だそうです。…時空と時空の間に存在するとか。既存の方法では、駆除は無理です。」
「……ズィンディは。兵器は見つかったのか。」
「…数ヶ月の後、兵器の製造場所を特定しました。しかしズィンディに気づかれ、パトロール船に行く手を阻まれたのです。」

エンタープライズを攻撃する、複数のズィンディ船。
船長席を降りたトゥポルは、床に倒れたメイウェザーが死んだことを確認した。
リード:「ワープエンジンをやられました!」
サトウ:「敵が右舷ポートにドッキングしています!」
トゥポル:「すぐ保安チームを送って。」

廊下を進む爬虫ズィンディ。MACO と撃ち合いになる。

保安部員を撃った爬虫ズィンディ。ドアのロックに向けて発砲した。
アーチャーの部屋に入ってくる。誰もいない。
奥のドアを開けた。するとアーチャーが飛び出してきた。
コクレインの像で殴りかかり、ズィンディの銃を振り落とした。
取っ組み合いになる。

サトウ:「C、D、Eデッキに 23名の侵入者を探知。」
トゥポル:「Bデッキに保安部員を送り、侵入を阻止。」

アーチャーは爬虫ズィンディと殴り合う。落とした銃を拾おうとするズィンディ。
アーチャーはコクレインの像を握った。爬虫ズィンディに飛びかかり、像を胸に突き刺す。
ズィンディは苦しみ、絶命した。

リード:「…武器ダウン。」
トゥポル:「…まだ船はドッキングしているの?」
「してます。」
操舵士官と交代するトゥポル。
ズィンディ船※5を連れたまま、動き出すエンタープライズ。
トゥポルは操縦を続ける。
エンタープライズはもう一隻のズィンディ船に近づき、ドッキングしている船を衝突させた。
離れるズィンディ船。エンタープライズのナセルも破損した。
リード:「…2隻とも破壊!」

右舷ナセルが故障したままのエンタープライズ。
フロックス:「クルー 13名死亡。重軽傷者 22名です。」
トゥポル:「……ズィンディは。」
リード:「9人捕獲しました。しかし、拘束室は 2人用です。残りはどうしたらいいか。」
タッカー:「エアロックから放り出せ。」
タッカーを見るサトウ。
トゥポル:「…乗務員室に入れ、厳重な警備を。…修理の状況は?」
タッカー:「プレートと魚雷は数時間で修理できますが、ワープドライブがひどい。右舷ナセルのコイルが、半分焼けてしまっています。」
「修理期間は?」
「木星ステーションなら 3週間。ここだと、一からコイルアセンブリを造り直す。最低で半年です。…ワープ 1 ポイント 7 が精一杯ですね。」
リード:「それじゃ大して進めやしない。」
トゥポル:「……針路は変えません。解散。」
司令室を出ていくクルー。
タッカー:「ワープエンジン一つでどうやって飛び続けるんです。」
トゥポル:「仕方ありません。」
「なぜズィンディ船に船をぶつけたりしたんです。」
「…論理的な行動を選んだだけです。」
「…アーチャー船長が倒れてから、ミッションがどんどん悪い方向に向かっている。」
「…私に船長の資格がないと考えるなら、フォレスト提督にそう伝えてください。」 歩いていくトゥポル。

年取ったアーチャー。「兵器を発見したと言ったじゃないか。…ワープエンジンなしで、戦えたのか。」
トゥポル:「発見したのは製造場所です。あの偵察機を造った。…しかしもう遅すぎました。」
「…地球は?」
「壊滅しました。」
唇を震わせるアーチャー。
トゥポル:「…攻撃は地球だけに留まらず、奴らは人間のあらゆる居住地を襲いました。…火星、アルファ・ケンタウリ※6、ヴェガ・コロニー※7。全て滅びました。」
アーチャー:「……生き残った人間は。」
「…6,000人弱です。」
「クソー…。」 うろたえ、外に出るアーチャー。
辺りには、粗末な家が並んでいるだけだった。


※3: 吹き替えでは全て「司令」。この訳語が使われる区画はブリッジ後部の Situation Room であり、第3シーズンになって導入された司令センター (Command Center) とは別です

※4: Rosemary's Baby
1968年

※5: この爬虫ズィンディ船は、ENT第56話 "Rajiin" 「美しき潜入者」の際と比べ、推定 200m ぐらいに大きくなっているようです

※6: Alpha Centauri
太陽系に最も近い恒星。TOS第31話 "Metamorphosis" 「華麗なる変身」など。同星系にあるのが異星人の惑星ではなく、地球人のコロニーとして正式に設定されるのは初めてだと思われます。吹き替えでは「アルファ・ケンタウルス」となっていますが、そういう言い方は本来しないはず。「ケンタウルス座アルファ星」ならわかりますが

※7: Vega Colony
ENT第10話 "Fortunate Son" 「復讐の虜」など

外に出たトゥポル。「ここは、セティ・アルファ星系※8の第5惑星。…デルフィック※9は遥か彼方です。」
アーチャー:「ほかのクルーはどうした。」
「ほとんどがまだエンタープライズに。…この軌道上で、パトロールをしています。」
「……ここには、生き残った全員が?」
「生存者は、ズィンディの攻撃から逃れようと避難場所を探したのです。」

エンタープライズを先頭とし、さまざまな船※10が進んでいる。
トゥポル:「複数の船団がこの星系を選び、そのうちの一団はエンタープライズが先導を。」
リード:「高速で船体が接近中。ヴァルカン船です。」
サトウ:「…呼びかけてます。」
トゥポル:「…ソヴァル※11大使。」
スクリーンに映るソヴァル。「君に話したいことがある。」

作戦室を歩いていたトゥポル。「どうぞ。」
ソヴァル:「…その制服は似合わんぞ? 『船長』。」
「私の服装を批判するためにわざわざここまで?」
「…一緒にヴァルカンへ戻って欲しい。」
「あなたの命令に従う義務はありません。」
「命令ではなく、頼んでいるのだ。君のためにな。…2週間前、我々はムタラ星系※12の地球船団から救難信号を受けた。だが救助船が着いたときには、船の残骸だけが散らばってたそうだ。武器はズィンディのものだった。…君の船がセティ・アルファへたどり着くことができても、ほぼ間違いなくズィンディの船が待ち伏せている。」
「応戦する備えはあります。」
「……以前この船を去れと命じたのは間違いだった。君を頑なにしてしまっただけだ。…いま私と戻るのなら、以前の階級のままで迎え入れる用意がある。」
「…船を選びます。」
「船? 彼では? …ヴァルカンにはアーチャーを介護するスペシャリストもいる。」
「…彼も一緒に?」
「君が戻るのなら。…人間に義理はないぞ。見切り発車で旅立ったのは彼らだ。我々の忠告を受けてたら、この悲劇は避けられただろう。」
「それは違います。」
「…なぜだ。」
「彼らのワープ技術を 100年間抑圧したのは? あなた方司令部の、方針では? もしワープ技術の開発に手を貸していれば…こんなことには。」
「アーチャーを思うあまり、論理的思考力を失ってるようだ。……30時間はこの領域に留まっている。冷静に考えたまえ。」 出ていくソヴァル。

ポートスがベッドの上にいる。ドアチャイムに応えるアーチャー。「入れ。…ヴァルカン側の用件は。」
トゥポル:「なぜソヴァル大使が来たと…」
「この窓からは船内がよーく見渡せる。だからこの部屋を選んだ。用件は何だ。」
「…物資の補給に来ただけです。」
「…ヘ。…この病状について考えてた。私に、船を指揮する能力はない。だができることもあるはずだ。…機関室で、トリップの助手をするよ。」
「…既に何ヶ月か前に試してみましたが、居心地が良くないようでした。」
「じゃあ、一日中部屋にこもってなければならないのか?」
「よくポートスを散歩に連れて行っています。…Dデッキにある教室で、子供たちにかつてのミッションの話をすることも。」
「仕事には、首を突っ込むなか?」

惑星へ近づくエンタープライズ。他の船が続く。
トゥポル:「その約一年後、この星系に到着。…私達の船団だけでした。ほかの船団は全てズィンディの餌食に。」
作戦室のタッカー。「辛うじて人間が生きていける環境※13だ。もっと条件のいい星を選ぶべきだった。調査チームを連れて、コロニーの場所を探したいんですが。」
トゥポル:「ここにいてください。…民間人の指導者が会いたがっています。」
「船長の、仕事では。」
「…私は船を降ります。」
「…あ、本気なんですか。」
「…アーチャー船長は船を降りた方が幸せです。…お世話をする者がそばにいないと。一度に二つのことはできません。」
「船長の犠牲になる気ですか。…なぜ。」
「…個人的理由です。」

未来のトゥポル。「民間の船を分解して材料にし、生存者たちの家を建てました。…そしてこのコロニーを作ったのです。」
壁に触れるアーチャー。
トゥポル:「この話をすると、あなたは自分は手の込んだ偽装工作にだまされているんじゃないか※14と考えるようです。」
アーチャー:「…今も頭をかすめたよ。」
「…マーガレット・マリン※15。24歳の時、サンフランシスコの飛行学校で出会った女性ですね? そして卒業式の前夜、ウエストゲート・アベニュー※16の彼女のアパートの前でプロポーズした。…でも断られました。艦隊士官はいつ死ぬかわからないからと。」
「なぜ知ってるんだ?」
「12年間暮らしていれば関係も、深まります。」
「…一体どのくらい、深い関係になったんだ?」
トゥポルはアーチャーを見た。

コロニーに降下してくる異星人シャトル※17

フロックス:「最後に検査をしたときから変わっていません。」 アーチャーを調べる。
アーチャー:「私の検査のためにわざわざ…デノビュラから?」
「言ってないんですか?」
首を振るトゥポル。
フロックス:「…コロニーができあがった後、ここにいてはあなたの治療法を見つけることができないと悟ったので母星に戻り、デノビュラで最も優秀な神経外科医や量子学者に助言をもらいました。彼らが言うには? 亜空間内で爆発を起こしあなたを消し去らない限り、パラサイトは消えない。…それ以外の方法で駆除を可能にする技術は、存在しないと。確かにその通りでした。可能にするのに、10年かかりました。やっと試せるときがきた。…実行するには膨大な量のエネルギーを必要とします。…ワープ機能を搭載した宇宙船の、リアクターが必要です。」
トゥポル:「エンタープライズへ向かいます。」


※8: Ceti Alpha system
セティ・アルファ5号星 (Ceti Alpha V) は、TOS第24話 "Space Seed" 「宇宙の帝王」など

※9: 原語では「領域」

※10: 右下はイントレピッド (ENT第52話 "The Expanse" 「帰還なき旅」、脚注※19・26 も参照)、左中央・下中央の 2隻は名称・クラス不明の宇宙艦隊船 (ENT "The Expanse"、脚注※26 も参照)。左下は Jクラス貨物船 (ENT第46話 "Horizon" 「兄弟の地平」)。その Jクラス貨物船とエンタープライズの間に見える船は、北極で使われていた輸送船 (ENT第49話 "Regeneration" 「覚醒する恐怖」)。右上は Yクラス貨物船 (ENT第10話 "Fortunate Son" 「復讐の連鎖」)。また、左上はハザリ船 (VOY第114話 "Think Tank" 「頭脳集団クロスの陰謀」) の使い回しのようです

※11: Soval
(ゲイリー・グラハム Gary Graham) ENT第52話 "The Expanse" 「帰還なき旅」以来の登場。声:山路和弘 (継続)

※12: Mutara system
映画 ST2 "The Wrath of Khan" 「カーンの逆襲」で、ムタラ星域・星雲 (Mutara Sector / Nebula) が登場

※13: 原語では「辛うじてミンシャラ・クラスだ」

※14: ここまで話した時点で、トゥポルの言っていることが全て嘘で、何かの陰謀ではないかと疑い始めるという意味。吹き替えでは「あなたは自分は艦隊の犠牲者なんじゃないか」となっており、これではまるでアーチャーが宇宙艦隊に恨みをもつようにも取れ、全く彼らしくありません。真実ということを悟らせるため、トゥポルは次にマーガレット・マリンの話をするわけです

※15: Margaret Mullin

※16: Westgate Avenue

※17: これはデノビュラのシャトルだと思われます。ENT第23話 "Fallen Hero" 「追放された者の祈り」に登場した、マザールのシャトルを改造したデザインの可能性あり

ボースン・パイプが鳴らされる。
年取ったタッカーは、エアロックに進み出た。「お久しぶりです。」
握手するアーチャー。「タッカー船長。…もう敬語など、使う必要はない。」
タッカー:「習慣ですから。…薄暗くて、すみません。パワーを節約中なんです。反物質が手に入りにくいもので。」
「指揮官になってからどのくらい経つ。」
「…9年です。…あなたに、ご挨拶をしたがってる者がいます。」
握手するリードは、ひげを生やしている。「お元気そうで。」 他のクルーも廊下に並んでいる。
笑うアーチャー。「ありがとう。副長だな。」
リード:「…最近、船長に昇進しました。」
タッカー:「ラミレス※18から、イントレピッド※19を引き継いだんです。」
アーチャー:「みんな自分の船をもつようになったのか。」
サトウ:「みんなじゃありません。」 階級は大尉になっている。
「ホシ…。」 抱き合うアーチャー。
タッカー:「食堂で、歓迎会の用意をしています。いかがですか。」
フロックス:「まずは機関室で、治療の説明を。」

機関室の隅に、カプセルが置かれている。
フロックス:「反陽子ビームを局所に高圧で照射し、パラサイトを駆除します。今日は、このパラサイト群から始めましょう。」
アーチャー:「一度に全て、駆除できないのか。」
「初めて行う作業です。慎重を期さなければ。」
トゥポル:「いつ始めます。」
「一時間以内に、準備しましょう。」

セティ・アルファ5号星軌道上のエンタープライズ。
自室だった部屋にいるアーチャーは、ドアチャイムに応えた。「…どうぞ。」
トゥポル:「…歓迎会は続いていますよ。」
「耐えられなくてね。…クルーが感じている懐かしい感覚が、私にはない。」
アーチャーの肩に手を触れたトゥポル。
アーチャー:「…君も苦労したろ? 12年間、同じ話を繰り返して。」
トゥポル:「手を抜くこともありますから。」
「…前にも、言ったことがあるといいんだが…君の行為全てに、心から感謝してる。…もし治ったら…」
通信が入る。『フロックスからアーチャー船長。』
アーチャー:「……私だ。」
フロックス:『始めましょう。』

ブリッジに流れる警告音。
リード:「断続的に、デュラニウムサインを感知。」
タッカー:「船か。」
「…わかりません。恒星付近の軌道上です。」
「調べるぞ。」 操舵士官に命じるタッカー。「コースセット。」

カプセルの中に入っているアーチャー。頭部に機械が当てられている。
パッドを持っているフロックス。「800ミリコクレイン※20に上げてくれ。」
操作する機関部員。アーチャーは目を開けている。
トゥポルもついている。
モニターのパラサイト群の一つに焦点が当てられ、明滅する。
フロックス:「850。」
音が大きくなる。苦しむアーチャー。
パラサイトは消え去った。合図するフロックス。
カプセルが開けられた。

恒星へ近づくエンタープライズ。
リード:「彩層の外側に、小型船を発見!」
タッカー:「…ズィンディか。」
「船の形態が一致しません。生体反応は 1名。」
「…回線オン。…チャールズ・タッカー船長だ。我々に何か用なのか?」
サトウ:「……逃げました。」
「追え。」
リード:「…ワープで逃げる気です。」
「ナセルを狙え!」
恒星を離れる異星人船※21。エンタープライズはフェイズ砲を発射した。
ナセルに当たり、停止させる。
タッカー:「出発ベイに収容しろ。」

医療室のフロックス。「私のシミュレーション通りだ。一つ目のパラサイト群が消えています。…全てが成功したら、ヴァルカンまで送りますよ。」
トゥポル:「…私はしばらく、コロニーに残ります。完全に回復するまで、お世話をしないと。」
「…船長に伝えたんですか? あなたの想い。……顔見てればわかりますよ。…恥ずかしいことじゃない。ヴァルカン人にだって普通の感情はある。単に隠すのが上手いだけです。」
「何も『隠して』ません。…命の恩人に、その恩を返しているだけです。」
「……さぞお辛いでしょうねえ。あなたは 12年かけて船長への想いを募らせてきたが、彼の気持ちは…病気になった日と同じだ。…だが、もしこれが成功したら…事態は変わる。」
トゥポルはコンピューターを操作した。「…過去のスキャンに違いが見られます。」
フロックス:「どこです。」

拘束室の異星人※22。「ライジェルのフレームジェム※23を売りに来ただけだよ。あんたらに攻撃されたときはバイヤーを待ってたんだ。」
タッカー:「なぜわざわざあんなところを選んだ。」
リード:「お前の船を調べたが、貨物は載ってなかった!」
異星人:「全部外に捨てちまったんだよ、てっきり逮捕されると思ってな。フレームジェムは、この領域じゃ違法だろ?」
「データベースでお前らについて調べたよ。イリディア人※24は情報の売買が得意らしい。」
タッカー:「誰に雇われた。ズィンディか。」
イリディア人:「…ズィンディ?」
「…もっとよく船を調べた方がよさそうだ。プラズマトーチを持って、出発ベイへ戻れ。船を切り刻んで調べ直すんだ。…今こいつに聞いた話が本当だという証拠が、見つかるまで。」
「俺の船を壊すってのか?」 リードを止めるイリディア人。「狙いはあんたらじゃない。…デノビュラ人だ。」
リード:「フロックス?」
「ツケるために雇われた。」
タッカー:「誰に雇われたんだ!」
「わかんねえよ、仲介者を通して受けたんだから。あのデノビュラ人が母星を離れたら、それを追って情報を送れって。」
タッカーはイリディア人をつかんだ。「どんな情報だ! …答えろ!」

惑星に戻ったエンタープライズ。
タッカーは医療室に入った。「どうしたんだ。」
フロックス:「機関部員に船長の治療を止められたんです。」
「私の命令だ。私だって船長を救いたい、だが緊急事態なんだ。」
「船長を救わねば何も解決はしません。」
トゥポル:「人類と地球を救う最大のキーが、このパラサイトの駆除なんです。」
タッカー:「地球は消えた。」
フロックス:「この画像は、ついさっき撮ったものです。最初に根絶した、パラサイト群の跡が見えます。この画像からはすっかり消えてる…」
「ドクター!」
「こっちは 12年前に撮影した画像なんです。このパラサイト群は、12年間撮りだめた全ての画像から消えています。」 同じ個所のパラサイトは、全て消えていた。「初めから何もなかったかのように。」
トゥポル:「…今このパラサイトを根絶すれば、過去の存在も消すことができます。」
「パラサイトが別の空間から来たのは明らかです。この時間のものでもない。ここでこのパラサイトを根絶できれば、船長の感染が起こることはありません。」
「歴史が変わるでしょう。アーチャー船長はエンタープライズの指揮官を続け、領域でのミッションは全く違ったものになります。」
「2、3時間パワーを貸していただければ、完全にパラサイトを駆除できるんです。」
タッカー:「すまないが、武器システムを優先させてくれ。」
トゥポル:「ズィンディが相手では…勝てる見込みはほとんどありません。」
「黙って待ってるわけにはいかん。」
サトウの通信。『ブリッジからタッカー船長。すぐに来てください。』
タッカー:「すぐに行く。この話は後だ。」 出ていく。
首を振るフロックス。

ブリッジに戻るタッカー。
サトウ:「探査機の一つが信号を感知しました。…ズィンディ船 6隻が星系内に。」


※18: Ramirez
ENT "The Expanse" に登場

※19: Intrepid
同じく ENT "The Expanse" に登場 (脚注※26 も参照)

※20: millicochrane
コクレインは亜空間のゆがみを表す単位。TNG第79話 "Remember Me" 「恐怖のワープ・バブル」など

※21: このイリディア船は、VOY第108話 "Bliss" 「夢を食う謎のワームホール」に登場したクワタイの船の使い回し

※22: 名前は Yedrin Koss (Brett Rickaby テレビ映画「バットマン&ロビン ザ・リターン」(2003年。「バットマン&ロビン 生涯現役宣言!」とも) でフランク・ゴーシンを演じました。ゴーシンは TOS第70話 "Let That Be Your Last Battlefield" 「惑星セロンの対立」のベレ役) ですが、言及されていません。声:小形満

※23: Rigelian flamegem
ライジェルは ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」など。TOS第42話 "The Trouble with Tribbles" 「新種クアドトリティケール」では、スピカの光る石 (Spican frame gem) が登場

※24: Yridians
TNG第142話 "Birthright, Part I" 「バースライト(前編)」など。ENT 初言及・初登場

エンタープライズは、ズィンディ船に近づく。さまざまな種類が見られる。
リード:「フェイズ砲起動。」
タッカー:「…戦闘準備は。」
サトウ:「…完了です。」
リード:「射程距離内に進入。」
タッカー:「発射!」
「…こちらのシールドは維持。すごい耐久性です。」
「シュラン将軍※25に礼を言わなきゃな。…針路変更。310、マーク 27。フルインパルス。」
サトウ:「2隻針路を変更。…追ってきます。」
「ほかの船は。」
「惑星に向かっています。」
衛星のそばを飛行するエンタープライズ。それを追うズィンディ船を、他の宇宙艦隊船が攻撃した。
リード:「昆虫族船に命中。パワー消失中です。」
タッカー:「2隻目を狙え!」
別のズィンディ船を、フェイズ砲で攻撃するエンタープライズ。
リード:「エンジン破壊しました。」
サトウ:「…残りの船もこちらに向かっています。」
タッカー:「……新しいシールドの限界を試すことになりそうだ。」
ブリッジが揺れた。

医療室も同じだ。
アーチャー:「トゥポル。」 カーテンを開けて出てくる。「何が起きてる。」
トゥポル:「ジョナサン、寝てなきゃ駄目よ。…どこへ行くの!」
「ブリッジだ。わずかしかいない人間の危機に寝てなんかいられるか!」 廊下を走っていくアーチャー。
フロックスに言うトゥポル。「…あなたはここにいて。」 追いかけた。

地球船とズィンディ船の戦闘が続く。昆虫ズィンディ船が破壊された。
リード:「…前方シールド、52%。」

ターボリフトを開けようとするアーチャー。「ターボリフトは使えない。」

シャフトを開け、はしごを上り始める。

宇宙艦隊船のナセルが大破した。
サトウ:「イントレピッド※26が被弾しました。左舷ナセル、ダウン。」
タッカー:「退却を指示しろ。」
リード:「…フェイズ砲、ダウン!」

上り続けるアーチャーとトゥポル。

リード:「シールドが崩壊してます!」
サトウ:「Bデッキで船体に亀裂! Cデッキもです!」
「…ブリッジを狙ってます!」
タッカー:「左にかわせ!」
集中攻撃を浴びるエンタープライズのブリッジ。その部分が吹き飛び、中が剥き出しになった。
宇宙空間に吸い出されるクルー。

大きな揺れがシャフトにも伝わる。落ちそうになるトゥポルの手をつかむアーチャー。

上り終えたアーチャーは、コンピューターを操作した。船体の図上に、真っ黒なウィンドウが表示される。
アーチャー:「ブリッジが消えた。」
トゥポル:「…トゥポルからフロックス。」
フロックス:『どうぞ。』
「…機関室にすぐ来て。治療を完了させます。」
『わかりました。』
アーチャー:「そんなことをしてる暇はないはずだ。」
トゥポル:「今こそすべき時です。来てください、説明します。」

負傷したクルーが廊下を歩いている。
そこへ爬虫ズィンディが転送されてきた。クルーを撃つ。
抵抗する間もなく、何メートルも吹き飛ばされる士官たち。

倒れたクルーがいる機関室に、フロックスが入る。アーチャーとトゥポルも駆けつけた。
火花が散る。
フロックス:「チェンバーが、ダメージを受けています。」
アーチャー:「……亜空間内で爆発を起こせば、駆除できると言ってたな。」
「それは、そうですが…」
「起こせないか。」
トゥポル:「プラズマインジェクター 3機をオーバーロードさせ、リアクターからフィードバックパルスを送れば。」
フロックス:「船を壊す気ですか!」
アーチャー:「いずれにしろ、船は助からん。君らはシャトルで逃げろ、人間を守るんだ。私が失敗しても、望みをつなげる!」
トゥポルはアーチャーの横に立った。
アーチャー:「これは命令だ。」
トゥポル:「…お言葉ですが、あなたに指揮権はありません。」
フロックスもその場を動こうとしない。
アーチャー:「…インジェクターが一機動かない、替えが必要だ。『C』ロッカーに入ってる、上の階だ。」
うなずき、上るフロックス。

爬虫ズィンディが廊下を進む。

フロックスはケースをアーチャーに渡した。

MACO が爬虫ズィンディと撃ち合っている。だが横から狙われ、倒された。

インジェクターを収納するアーチャー。「準備を頼む。」
爬虫ズィンディが忍び込んできた。気づいたフロックスは、フェイズ銃で撃つ。
隠れるアーチャー。反撃されたフロックスは、2階から落下した。
アーチャー:「フロックス!」 フロックスが落とした銃で反撃する。「フロックス。」
ズィンディを撃ちながら、ワープコアに戻るアーチャー。「まだかかるか。」
トゥポル:「終わりました。」 レバーを上げていく。だがトゥポルは背後から爬虫ズィンディに撃たれた。
反撃して倒すアーチャー。まだズィンディの姿が見える。
トゥポルを寝かせるアーチャー。操作を続けるが、撃たれてしまう。
それでも次のレバーを上げ、ズィンディを倒した。痛みに耐えながら、ボタンを押す。
未だ残っているズィンディは、さらにアーチャーを撃った。フェイズ銃を落とし、倒れ込むアーチャー。
だが何とか手を伸ばし、最後のレバーを上げた。トゥポルの上に倒れ込むアーチャー。
エンタープライズの船体が、爆発し始めた。すぐに広がり、全体が炎に包まれる。

制服姿のアーチャーは、目を開けた。
近づくフロックス。「ご気分は?」
アーチャー:「……頭の上にシャトルが載ってるようだ。…現在の状況は?」
トゥポル:「異常空間は抜けました。右舷ナセルが軽く損傷しただけで、一時間以内には直ります。」
フロックス:「軽い脳震盪を起こしています。一晩はここにいてください?」
アーチャー:「…ああわかった。」
離れるフロックス。
トゥポル:「…大怪我をしていたかもしれません。早く逃げてくれと言ったはずです。」
アーチャー:「幸い君の命令を聞く義務はないよ。」
「ご覧になりますか?」
パッドを見るアーチャー。「ローズマリーの赤ちゃん?」
トゥポル:「楽しみにしていらしたはずです。今夜の映画鑑賞会は、無理そうですから。」
「…ありがとう。」 アーチャーはトゥポルを呼び止める。「ああすまんが、枕をもう一つ。」
ロッカーから取り出し、重ねるトゥポル。
アーチャー:「ああ。ライトをもう少し暗くしてくれ。」
操作するトゥポル。「…ほかに御用は。」
パッドを手にするアーチャー。「いや、もう十分だ。…トゥポル。…君はいいナースになるよ。」 横になった。
医療室を出るトゥポル。
アーチャーは、映画を見始めた。


※25: General Shran
シュランは ENT第7話 "The Andorian Incident" 「汚された聖地」などに登場したアンドリア人。これまでは司令官という肩書きでしか呼ばれたことはなく、この時点では将軍に昇進している設定だと思われます

※26: この映像の流れから、ENT "The Expanse" に登場した 3隻の宇宙艦隊船のうち、一隻しかないタイプ (円盤部が半円状) がイントレピッドだと確定されました。その際 2隻登場した、名称不明のタイプも戦闘に参加しています

・感想
名作が多い「可能性の未来」もの。アーチャーを含めて誰も記憶していない完全リセットという結末なこともあり、今回も過去のレベルに達しているかと言えば疑問ではありますが、とりあえず ENT の中ではとても目立つエピソードになっています。アーチャーの治療途中、寄生体の一団が過去も含めて消えたのなら、消したこと自体をフロックスたちが覚えているのは変という気もしますが…まあタイムパラドックスですから、深く考えてはいけないんでしょう。
脚本は共同製作の Mike Sussman。VOY から関わっている新参組にしては、質を保っているほうでしょうか。とはいえ第54話のように、箸にも棒にもかからないエピソードも担当していますが…。あっという間に殺されるメイウェザーは、自己皮肉かと思ってしまうほど。製作会社が変わってもソヴァル大使の吹き替え声優は統一されており、一安心でした。


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